JP4155484B2 - 接触型帯電器および画像形成装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置の接触型帯電器および、この接触型帯電器を搭載した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の帯電方式はコロナ放電を用いたコロトロン、スコロトロンが主流であった。しかし、コロナ放電は空気中で高電界をかけるためオゾンやNOx などの有害物質を大量に発生し,また帯電効率が低いため消費電力が多く、更に4〜6kVの高圧電源が必要なためコストが高く、かつ人体に対し危険性があるといった欠点があった。近年の環境に対する配慮から、このような帯電方式を改善することは急務であり、ローラー帯電へと移行しつつある。
【0003】
ローラー帯電とは、導電性ゴムローラーを感光体と接触させ、感光体・帯電ローラー間の微小空隙で放電を起こし感光体表面を帯電させる方法であり、コロトロンと比較し、オゾンが著しく低減(1/100〜1/500に低減)されている。
【0004】
しかしながら、帯電ローラーも感光体と帯電ローラー間の微小空隙に電圧を加えコロナ放電を起こさせることから、オゾン発生量をゼロにすることは原理的にできない。またオゾンやNOX が感光体近傍で発生するためオゾン、NOX による感光体の劣化は依然として課題として残る。よってオゾンやNOX が全く発生しない帯電方式が強く望まれ、最近では電荷注入が注目されている。
【0005】
電荷注入とは、放電を起こさないで接触型帯電器から直接電荷を感光層に注入する方法である。そのため原理的にオゾンは発生しない。電荷注入では、接触型帯電器と感光体との接触抵抗や微小空隙の容量が電荷を注入する際の注入速度に影響を与えるため、接触抵抗は低いほど良いとされる。
【0006】
そのため特開平6−75459号公報では、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を高分子ネットワークに置換し、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムで帯電ローラーを作っている。
【0007】
しかしながら香川、古川、新川らによるJapan Hardcopy‘92,pp287〜290の報告では、80%RHの高湿下では有機感光体(以後OPCと略すことがある)は十分な帯電電位が得られるが、図11に示すように、30〜50%RHの湿度下では印加電圧の半分までしか帯電されず、注入速度が遅いことが判る。これは、帯電ローラーの接触面積(ニップ幅)が小さいことや、導電性ゴムが十分低抵抗化していないためと推察される。図11は相対湿度をパラメータとする、印加電圧と帯電電圧との関係を示すグラフである。
【0008】
つまり、低抵抗の導電性ゴムを得るには電荷移動錯体を多量にドーピングする必要があるが、ドーピング量が多くなると高分子自体のネットワークの柔軟性が減少し、ゴム硬度が大きくなるのではないかと考えられる。例えば特開平6−75459号公報では、導電性ゴムの抵抗は106 Ω・cmとなっており、適度なゴム硬度を維持しながら導電性ゴムを低抵抗化することは、高分子材料の選択の点から容易ではないと考えられる。また、図11に示すように、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムでは帯電電位が湿度に敏感であるため、環境を厳密に制御する必要があり、接触型帯電器の構造が複雑化する。
【0009】
一方、特開平7−140729号公報では、吸水性のスポンジローラーを用いて感光体に電荷を注入している。吸水性のスポンジローラーを用いる場合、ローラーの含水率がローラー抵抗や電荷の注入速度に大きな影響を与えるので、ローラーからの水分蒸発によって帯電電位が変動する恐れがある。帯電電位の変動を抑えるためには、ローラーからの水分蒸発を長期にわたって厳密に制御する必要があり、接触型帯電器の構造は複雑になり、安価に製造することができない。
【0010】
また特開平9−101649号公報には、図12に示すように、帯電ブラシ2110の導電性繊維2111をエッチング繊維または分割繊維とすることによってこの導電性繊維2111と、感光体2100の有機感光層2102との接触面積を増加させ、電荷注入の速度を向上させることが提案されている。図12において符号2101はAl基体、符号2103は直流電源である。
【0011】
上記エッチング繊維とは、導電性繊維の成分の一部を薬液で溶解し、1本の導電性繊維を径方向で複数本に分割した繊維である。また分割繊維とは、加熱時の各部の熱収縮の差を利用し、1本の導電性繊維を径方向で分割した繊維である。これらの処理によって、実質的により細い径の導電性繊維を用いたことになり、感光体との接触面積を増加させることができる。
【0012】
しかしながら、分割された繊維の引張り強度は、分割前の導電性繊維と比較して、分割された分だけ低くなる。その結果、感光体と接触した場合、分割された繊維は破断しすくなり、長期の使用では帯電電位のバラツキを起こし、接触型帯電器の寿命を低下させる原因となってしまう。逆に長寿命の接触型帯電器を得ようとしても、導電性繊維の分割数を多くすることはできないため接触面積の大幅な増大は難しく、電荷注入速度の著しい向上は期待できない。
【0013】
また、接触型帯電器の別の構造として磁気ブラシが挙げられるが、一般的に磁気ブラシは磁性導電粒子の直径を大きくするとマグネットロールからの規制力が大きくなり、帯電ブラシや帯電ブレード、帯電ローラーよりも大きなニップ幅を形成できる。しかしながら、磁性導電粒子の直径が大きくなると、逆にOPCとの接触面積が減少する。このように、磁性導電粒子の粒径を最適値に設定する必要があった。
【0014】
この磁性導電粒子の形状について説明すると、特開平8−6355号公報に記載の技術では図13(a)に示すように、表面が平滑な磁性導電粒子2213と、表面に凹凸のある磁性導電粒子2214を混合して用いている。また特開平8−691491号公報の技術では図13(b)のように、粒径大の磁性導電粒子2215と、粒径小の磁性導電粒子2216とを用いて、マグネットロール2211の規制力を維持し、大きなニップ幅を確保しながら磁性導電粒子の接触面積を増加させるようにしている。
【0015】
しかしながら、接触面積の増加に寄与する磁性導電粒子は、用いた磁性導電粒子2213〜2216のうち、凹凸のある磁性導電粒子2214と粒径の小さな磁性導電粒子2216だけなので、接触面積の著しい増加は期待できず、高速の画像形成装置では十分な帯電電位を得るのが難しかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記問題点に鑑みなされたもので、その第1の目的は、電荷注入によって感光体を帯電させる接触型帯電器においては、電荷注入速度が速いため感光体に十分な帯電電圧を与えることができ、かつ湿度等の環境変動に対し十分な耐性を持ち、しかも長期の使用においては帯電電位の変動が小さい接触型帯電器の構造を提供することにある。
【0017】
本発明の第2の目的は、感光体・接触型帯電器間の微小空隙でのコロナ放電を利用する接触型帯電器においては、オゾンやNOX の発生を低減でき、かつ外部電源の低電圧化を実現できる接触型帯電器の構造を提供することである。
【0018】
本発明の第3の目的は、オゾンやNOx を発生させないで、かつ帯電システムの外部電源を低電圧化しつつ良好な画像を得ることができる画像形成装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、感光体表面と接触し感光体に電圧を印加することによって感光体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、感光体と接触する面にカーボンナノチューブが保持され、かつカーボンナノチューブの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されていることを特徴とする接触型帯電器である。
【0020】
また、前記の接触型帯電器のうち負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であって、前記の電荷輸送材料は電子輸送材料であり、かつ電子輸送材料の電子親和力をEA (CTM)、有機感光体の電子親和力をEA (OPC)とすると、次式:EA (OPC)<EA (CTM)となる電子親和力を有することを特徴とする接触型帯電器である。
【0021】
また、前記の電子輸送材料が下記の化学式(1)〜(4)で表される化合物または、その誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする接触型帯電器である。
【0022】
【化9】
Figure 0004155484
【0023】
【化10】
Figure 0004155484
【0024】
【化11】
Figure 0004155484
【0025】
【化12】
Figure 0004155484
【0026】
さらに、前記接触型帯電器のうち正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であって、前記電荷輸送材料は正孔輸送材料であり、かつ正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルをIp(CTM)、有機感光体のイオン化ポテンシャルをIp(OPC)とすると、次式:Ip(OPC)>Ip(CTM)となるイオン化ポテンシャルを有することを特徴とする接触型帯電器である。
【0027】
また、前記正孔輸送材料が、オキサジアゾールおよびその誘導体、ピラゾリンおよびその誘導体、トリフェニルメタンおよびその誘導体、オキサゾールおよびその誘導体、ヒドラゾンおよびその誘導体、トリアリールアミンおよびその誘導体、ブタジエンおよびその誘導体ならびに、ポリシランおよびその誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする接触型帯電器である。
【0028】
さらに、前記接触型帯電器において、前記帯電器が金属芯と導電性繊維からなる帯電ブラシであり、該導電性繊維に前記カーボンナノチューブが保持されていることを特徴とする接触型帯電器である。
【0029】
さらに、感光体表面と接触し、感光体に電圧を印加することによって該感光体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、前記感光体との接触面にカーボンウイスカーが保持され、かつ該カーボンウイスカーの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されていることを特徴とする接触型帯電器である。
【0030】
さらに、前記接触型帯電器が負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、前記電荷輸送材料が電子輸送材料であり、かつ電子輸送材料の電子親和力をEA (CTM)、有機感光体の電子親和力をEA (OPC)とすると、次式:EA (OPC)<EA (CTM)の関係が成立つことを特徴とする接触型帯電器である。
【0031】
さらに、前記電子輸送材料が上記化学式(1)〜(4)で表される化合物または、その誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする接触型帯電器である。
【0032】
さらに、前記接触型帯電器が正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、前記電荷輸送材料が正孔輸送材料であり、かつ正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルをIp (CTM)、有機感光体のイオン化ポテンシャルをIp (OPC)とすると、次式:Ip (OPC)>Ip (CTM)の関係が成立つことを特徴とする接触型帯電器である。
【0033】
さらに、前記正孔輸送材料が、オキサジアゾールおよびその誘導体、ピラゾリンおよびその誘導体、トリフェニルメタンおよびその誘導体、オキサゾールおよびその誘導体、ヒドラゾンおよびその誘導体、トリアリールアミンおよびその誘導体、ブタジエンおよびその誘導体ならびに、ポリシランおよびその誘導体から選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする接触型帯電器である。
【0034】
さらに、上記接触型帯電器において、前記帯電器が金属芯と導電性繊維からなる帯電ブラシであり、該導電性繊維に前記カーボンウイスカーが保持されていることを特徴とする接触型帯電器である。
【0035】
さらに、本発明の画像形成装置は、上記接触型帯電器を搭載したことを特徴とするものである。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を図面に示す実施例により、更に詳細に説明する。
<実施例1>
図1は接触型帯電器の模式的断面図である。この接触型帯電器は帯電ブラシ110を用いたものであり、負帯電のOPCに用いられる。この帯電ブラシ110では金属芯111に導電性繊維112が接続しており、さらに各々の導電性繊維112にはカーボンナノチューブ120が保持され、カーボンナノチューブ120の表面には電荷輸送材料121が吸着または化学結合している構造を持つ。上記電荷輸送材料121は、電子のドリフト移動度が正孔のドリフト移動度よりも著しく大きい材料である電子輸送材料である。なお、ここで述べる吸着とはvan der Waals 力や静電力等による物理的な吸着を意味し、化学結合とは共有結合やイオン結合等を意味する。そして、帯電ブラシ110は主にカーボンナノチューブ120に吸着または化学結合された電子輸送材料121でOPC100の表面と接触している。なお、一部ではカーボンナノチューブ120や導電性繊維112が直接OPC100の表面と接触していても何ら構わない。
【0037】
OPC100はドラム形状のAl基体101と有機感光層102から構成されており、必要に応じてAl基体101と有機感光層102の間に電荷注入阻止層が設けられている。なお、帯電ブラシ110の金属芯111は外部の直流電源103に接続され、主に電子輸送材料121から有機感光層102に直接電子を注入(つまり負帯電の電荷注入)することでOPC100を帯電させている。また、一部の電子は有機感光層102と直接接触するカーボンナノチューブ120や導電性繊維112から注入されても良く、またカーボンナノチューブ120から電子が電界放出によって引き出され有機感光層102を帯電しても構わない。
【0038】
電荷注入は接触型帯電器と有機感光層の接触部で直接電荷の授受を行うため、実用的な注入速度を得るためには接触型帯電器と有機感光層の接触面積を大きくしなければならない。
【0039】
しかしながら、一般的に帯電ブラシの導電性繊維の直径は10〜20μm程度であり、OPCが高速回転する高速な画像形成装置では十分な接触面積を確保することはできなかった。そこで本発明者らは、導電性繊維にカーボンナノチューブを接続し、接触面積を向上させることを提案している。
【0040】
カーボンナノチューブを導電性繊維に配置する場合、軸方向で導電性繊維に密集して配置できる。またカーボンナノチューブは高い弾性を持つため有機感光層と接触すると撓めることができ、カーボンナノチューブの先端のみではなく、側面でも有機感光層と接触することができ、その結果十分な接触面積を確保することが可能になった。
【0041】
しかしながら、導電性繊維にカーボンナノチューブを保持した帯電ブラシを更に高速な画像形成装置に用いた場合、高い帯電電位が取れない場合が生じた。そこで本発明者らは、これについて検討を行った。
【0042】
OPCへの電荷注入(本例の場合は電子注入)は、カーボンナノチューブと有機感光層のバインダー樹脂中のトラップ準位の間のホッピング伝導によってなされる。そのため、カーボンナノチューブと有機感光層が十分な接触面積を持つ場合でも、カーボンナノチューブとバインダー樹脂の間で電子に対するバリアが高いと、電子の輸送が妨げられ高い帯電電位が取れない懸念がある。特にカーボンナノチューブとバインダー樹脂は異種材料であるため、バリアが高い可能性がある。
【0043】
そこで、カーボンナノチューブの表面に有機感光層と同種の材料で、かつ電子を輸送できる材料(つまり電子輸送材料)を吸着または化学結合させることによって、帯電電位の向上を試みた。その結果、電子輸送材料の電子親和力EA (CTM)とOPC表面の有機感光層の電子親和力EA (OPC)との関係によって、良好な帯電が実現できることを見出した。
【0044】
カーボンナノチューブ表面に電子輸送材料を付けた場合のバンドの概略図を図2に示す。OPC表面の有機感光層のLUMO(the lowest unoccupied molecular orbital)、HOMO(the highest occupied molecular orbital)をそれぞれLUMO(OPC)、HOMO(OPC)とし、カーボンナノチューブの表面に付けた電子輸送材料のLUMO、HOMOをそれぞれLUMO(CTM)、HOMO(CTM)とする。
【0045】
カーボンナノチューブからの電子が電子輸送材料を通って有機感光層へ注入されるためには、LUMO(CTM)にある電子がLUMO(OPC)へ遷移する必要があるが、電子輸送材料と有機感光層の間で電子に対するバリアを低くし、電子がスムーズに輸送されるためには、LUMO(OPC)がLUMO(CTM)よりもエネルギー的に低い準位にあることが望ましい。
【0046】
ここで真空準位とLUMOのエネルギー差は電子親和力EA に相当するので、電子輸送材料の電子親和力をEA (CTM)、有機感光層の電子親和力をEA (OPC)とすると、前記の条件は以下のように記述される。
EA (OPC)<EA (CTM)
よってEA (OPC)<EA (CTM)となる電子親和力を有する電子輸送材料をカーボンナノチューブ表面に吸着または化学結合させると、電子の輸送が妨げられず、帯電効率が向上する。
【0047】
なお、有機感光層が1層から構成される場合は、その層のLUMO、HOMO、EA がLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)に相当し、有機感光層が多層からなる機能分離型のOPCの場合は、最表層(表面を形成する最上層)のLUMO、HOMO、EA がLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)に相当する。一般的に負帯電の機能分離型OPCの表面には電荷輸送層が配置されるので、LUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)は電荷輸送層のLUMO,HOMO,EA である。
【0048】
上記の条件を満たす電子輸送材料としては正帯電のOPCで用いられる電子輸送材料等がある。一般的に正帯電OPCの電子輸送材料としては、上記化学式(1)〜(4)で表される化合物または、その誘導体があるので、カーボンナノチューブ120表面に、上記化合物または誘導体から選ばれた少なくとも一つを含む電子輸送材料121を吸着または化学結合させることによって、より効率的な電荷注入が可能になり、高い帯電電位が得られる。
【0049】
なお、EA (OPC)<EA (CTM)とするためには、OPCの有機感光層のEA (OPC)にも影響されるが、一般的には上記化学式(1)〜(4)で表される化合物またはその誘導体に適切な置換基を導入し、LUMO(CTM)のエネルギー準位を動かすことによって実現するのが良い。なお、上記化学式(1)〜(4)で表される化合物または、その誘導体はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低く、カーボンナノチューブ120表面に電子輸送材料121を吸着または化学結合させるコストを抑制することができ、その結果帯電ブラシ110を安価に製造できる。
【0050】
また、図1ではカーボンナノチューブ120の先端にのみ電子輸送材料121が吸着または化学結合されているが、複数の電子輸送材料が吸着または化学結合されているか、またはカーボンナノチューブ120の側面にも電子輸送材料が吸着または化学結合されていると、有機感光層102と接触する電子輸送材料の数が増え、カーボンナノチューブと有機感光層との間にバリアの低い領域が広く形成できるのでより望ましい。
【0051】
次に、本発明に用いられるカーボンナノチューブについて説明する。本発明に用いられるカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのどちらでも良い。単層カーボンナノチューブの大きさは触媒によって異なり、直径が0.7〜50nm、軸方向の長さ(以後長さと略す)は10nm〜1mmであり、より合成しやすい大きさは直径が0.7〜5nm、長さが30nm〜100μmである。一方、多層カーボンナノチューブは直径が1〜500nmで、長さが10nm〜1mmであり、より合成しやすい大きさは直径が2〜50nmで、長さが300nm以上である。なお、本発明のカーボンナノチューブは前記の大きさの範囲に限定されるものではなく、直径が1μm未満のカーボンナノチューブであれば本発明に含まれる。
【0052】
カーボンナノチューブは以下の方法によって作製される。単層カーボンナノチューブは、陽極としてグラファイトにFe,Co,Ni,Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt,La,Y等の金属触媒を混合したコンポジット棒を用い、陰極としてグラファイト棒を用い、100〜700Torr(1.33×104 〜9.31×104 Pa)のHe,ArまたはH2 雰囲気でのアーク放電により合成する。単層カーボンナノチューブは金属触媒の種類によってチャンバー内壁の煤(チャンバー煤)か、または陰極表面の煤(陰極煤)の中に存在する。
【0053】
また、前記のコンポジット棒を電気炉中で1000〜1400℃に加熱し、500Torr(6.65×104 Pa)のAr雰囲気で、Nd:YAGパルスレーザーを照射して単層カーボンナノチューブを合成しても良い。合成された単層カーボンナノチューブは種々の不純物を含むため、水熱法、遠心分離法、限外ろ過法等によって80%以上の純度に精製するのが良い。
【0054】
一方、多層カーボンナノチューブは、陽極、陰極ともグラファイト棒を用い、100〜700Torr(1.33×104 〜9.31×104 Pa)のHe,ArまたはH2 雰囲気でのアーク放電を用いて合成する。多層カーボンナノチューブは陰極上の円柱状堆積物の中心に存在する。またベンゼン、エチレン、アセチレン等の炭化水素をH2 またはHeガス流下で600〜1500℃で熱分解することによっても得られる。多層カーボンナノチューブも合成後は種々の不純物が含まれるため、有機溶媒や界面活性剤が添加された水溶液に分散させた後、遠心分離法や限外ろ過法によって高純度に精製するのが良い。なお、カーボンナノチューブの先端は閉管、開管のどちらの形状でも良い。
【0055】
次に、カーボンナノチューブ120表面に電子輸送材料121を吸着または化学結合させる方法について説明する。最も簡便な方法は、電子輸送材料を極低粘度の高分子樹脂に分散させ、この分散液にカーボンナノチューブを浸漬し、カーボンナノチューブの一部または全面を高分子樹脂で被覆して、電子輸送材料をカーボンナノチューブ表面に吸着する方法である。この方法では電子輸送材料は高分子樹脂を介してカーボンナノチューブに物理的に吸着されている。
【0056】
高分子樹脂としては電子輸送材料が分散しやすい材料であれば良く、例えばポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルブチラール等が用いられる。また、高分子樹脂を有機溶媒に溶解し低粘度化させると、カーボンナノチューブを被覆する高分子樹脂層を薄く形成できるので更に望ましい。本方法は単純なプロセスから成るため、電子輸送材料をカーボンナノチューブに固定するための製造コストを抑えることができる。その結果帯電ブラシを安価に製造することができる。
【0057】
一方、電子輸送材料をカーボンナノチューブと化学結合させる場合、カーボンナノチューブは不活性であるため、初めにカーボンナノチューブに活性な官能基を導入する必要がある。官能基を導入する方法には、例えば図3(a)〜(d)に示す方法がある。
【0058】
図3(a)の方法では、カーボンナノチューブを空気中で酸化すると、末端が開管してカルボキシル基が形成される。図3(b)の方法では、カーボンナノチューブをクロロホルムと水の混合溶媒に分散させ、その後水酸化ナトリウムを加え還流を行うと、カーボンナノチューブにジクロロカルベンが導入される。また、図3(c)の方法においては、カーボンナノチューブにアンモニア水を加え、Liを添加し還流を行うと、カーボンナノチューブにアミノ基が導入される。さらに、図3(d)の方法では、カーボンナノチューブにエチレンジアミンとLiを加え、100℃に保持して攪拌を行うと、カーボンナノチューブにアミノ基が導入される。
【0059】
上記の反応によってカーボンナノチューブに官能基を導入した後、電子輸送材料(例えば上記化学式(1)〜(4)で表される化合物)の末端の官能基と、カーボンナノチューブに新たに付けた官能基とを化学反応によって共有結合させることによって、カーボンナノチューブに電子輸送材料を化学結合できる。
【0060】
本方法によると、電子輸送材料とカーボンナノチューブが共有結合しているため、電子輸送材料が強固に固定される。そのため帯電ブラシがOPCと摺動する際にカーボンナノチューブ表面から電子輸送材料が脱離しにくく、長期にわたって安定的な帯電が実現できる。その結果帯電ブラシの長寿命化が可能になる。なお、カーボンナノチューブに官能基を導入する方法は図3に示す方法に限定される必要はなく、また電子輸送材料に活性な官能基を導入した後、直接カーボンナノチューブと電子輸送材料を共有結合させても何ら構わない。
【0061】
次に、本発明に用いられるOPC100について説明する。ドラム形状のAl基体101上に、酸化チタン微粒子をバインダー樹脂に分散させたホール注入阻止層を、ディップコーティング法により厚さ1〜5μmで形成し、その後電荷発生層と電荷輸送層からなる積層の有機感光層102を形成した。
【0062】
電荷発生層は電荷発生材料をブチラール樹脂、熱硬化型の変性アクリル樹脂、フェノール樹脂及びポリエステル樹脂などのバインダー樹脂に分散させたものからなり、ディッピングコーティング法により厚さ0.1〜1μmで形成した。電荷発生材料としては波長740〜780nm付近に感度を持つスクエアリリウム色素、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、アズレニウム塩色素、及びアゾ顔料等が、635〜650nm付近に感度のあるチアピリリウム塩や多環キノン系、ペリレン系又はアゾ顔料系等が使用できる。
【0063】
電荷輸送層は正孔輸送材料をビスフェノール系ポリカーボネイト樹脂等のバインダー樹脂に分散させたものからなり、膜厚は10〜40μm程度でディッピングコーティング法によって形成した。正孔輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、ピラリゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体などが用いられる。
【0064】
また、本例では機能分離型のOPCを例に取り説明を行ったが、本発明は機能分離型に限定されるわけではなく、単層型のOPCであっても何ら構わない。また、本例はドラム形状のOPCであるが、Al基体の代わりに表面に導電層を形成したベルトを採用し、ベルト状のOPCとしても良い。またシート状のOPCでも良い。
【0065】
次に、本発明に係る帯電ブラシ110の作製法の一例を図4(a)〜(d)をもとに説明する。この図4は帯電ブラシの断面の一部を示し、帯電ブラシ110は円柱構造をしており、導電性繊維112は金属芯111の側面全てに接続されている。
【0066】
図4(a)に示すようにSUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯111に導電性繊維112を電気植毛によって植え付ける。導電性繊維112としては直径が5〜20μmの導電性レーヨン、導電性ナイロン、導電性ポリエステル等が使用でき、植毛の密度としては一般的な帯電ブラシと同様に50〜300本/mm2 程度にするのが良い。
【0067】
繊維に導電性を付与する方法としては、カーボンブラックや金属微粒子を高分子繊維の中に分散させる方法もあるが、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を、高分子ネットワークに置換し高分子繊維全体に導電性を付与しても良い。
【0068】
導電性繊維112はもともと5〜20μmの径で使用するため、従来の導電性ゴムと異なり適度な弾性を維持する必要がない。そのため種々の高分子材料が使用でき、容易に低抵抗の導電性繊維が得られる。また導電性繊維112をパイル地にして、テープ状に切断したのち、金属芯111に巻き付けても良い。
【0069】
その後、図4(b)に示すように、導電性繊維112の先端にのみ導電性接着剤130を厚さ2〜10μmで塗布し、図4(c)のように、静電力を利用して電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを導電性繊維120に吸い上げて接触させた後、図4(d)のように導電性接着剤130を熱硬化させ、電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブ120を固定し、帯電ブラシ110を完成させる。
【0070】
なお、導電性接着剤の代わりに導電性繊維自体を加熱し、カーボンナノチューブと融着させて固定しても良い。また、1本の長い導電性繊維に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを導電性接着剤で接着した後、導電性繊維を1〜2mmに切断し、導電性繊維を電気植毛によって金属芯に植え付けて帯電ブラシとしても良い。更に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを固定した長い導電性繊維をパイル地にして、テープ状に切断したのち、金属芯に巻き付けて帯電ブラシとしても良い
【0071】
帯電ブラシの別の作製法を図5(a)〜(d)に示す。なお、図5は帯電ブラシの断面の一部を示し、帯電ブラシ110は円柱構造をしており、導電性繊維112は金属芯111の側面全てに接続されている。
【0072】
図5(a)に示すようにSUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯111に導電性繊維112を電気植毛によって植え付ける。また、導電性繊維112をパイル地にして、テープ状に切断したのち、金属芯111に巻き付けても良い。図5(b)のように、導電性繊維112の先端にのみポリメチルフェニルシラン140を厚さ0.1〜3μmで塗布し、その後超高圧水銀灯により波長400nm程度の光を照射し,ポリメチルフェニルシラン140のSi−Si結合を切断する。
【0073】
その後、図5(c)のように、イソプロピルアルコール中に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを分散させた溶液141(以後、この溶液をIPA溶液と略す)中に導電性繊維120を浸漬し、金属芯111を外部電源143に接続し、Al電極を対向電極142として負電圧を印加して、電気泳動により電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブ120を導電性繊維112に接触させる。
【0074】
電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブ112は印加された電界と平行な方向に移動し、導電性繊維120に接触してSi−Si結合の切れたポリメチルフェニルシランに突き刺さり、固定化される(以後、電気泳動法と略す)。なお、金属芯111の側面にある全ての導電性繊維112に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブ120を固定化するためには、IPA溶液中で金属芯111を円周方向に回転させれば良い。その後、図5(d)のように、導電性繊維112をIPA溶液141から引き上げ、イソプロピルアルコールを蒸発させ、帯電ブラシ110を完成させる。
【0075】
なお、図3で説明したように、1本の長い導電性繊維に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを電気泳動法によって固定化してから、導電性繊維を1〜2mmに切断し、その後導電性繊維を電気植毛によって金属芯に植え付けて帯電ブラシとしても良い。更に、長い導電性繊維に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブを電気泳動法により固定化した後、導電性繊維をパイル地にして、テープ状に切断したのち、金属芯に巻き付けて帯電ブラシとしても良い。
【0076】
本例ではロール状の帯電ブラシについて説明したが、固定した帯電ブラシ(固定ブラシ)であっても本発明の効果は同様に得られ、帯電ブラシの形状は何ら問わない。加えて、図1の帯電ブラシ110は直流電源103に接続されているが、電源は直流に限定されるものではなく、直流と交流が重畳されていても構わない。
【0077】
<実施例2>
図6は接触型帯電器の形状として、固定した帯電ブラシ(固定ブラシ)を用いたものであり、正帯電のOPCに用いられる。本発明の帯電ブラシ(固定ブラシ)610は金属芯611と導電性繊維612が接続しており,さらに各々の導電性繊維612にはカーボンナノチューブ620が保持され、カーボンナノチューブ620の表面には電荷輸送材料(本例の場合は正孔輸送材料)621が吸着または化学結合している構造を持つ。なお、ここで述べる化学結合とは共有結合やイオン結合等を意味し、吸着とはvan der Waals力や静電力等による物理的な吸着を意味する。そして帯電ブラシ(固定ブラシ)610は主にカーボンナノチューブ620表面に吸着または化学結合した正孔輸送材料621でOPC600の表面と接触している。なお、一部ではカーボンナノチューブ620や導電性繊維612が直接OPC600の表面と接触していても良い。
【0078】
OPC600はドラム形状のAl基体601と有機感光層602から構成されており,必要に応じてAl基体601と有機感光層602の間に電荷注入阻止層が設けられている。なお、帯電ブラシ(固定ブラシ)610の金属芯611は外部の直流電源603に接続され,主に正孔輸送材料621から有機感光層602に直接正孔を注入(つまり正帯電の電荷注入)することでOPC600を帯電させている。また、一部の正孔は有機感光層602と直接接触するカーボンナノチューブ620や導電性繊維612から注入されても良い。
【0079】
本例の場合は、OPCへの電荷注入(本例では正孔注入)はカーボンナノチューブと有機感光層のバインダー樹脂中のトラップ準位の間のホッピング伝導によってなされるので、有機感光層と同種の材料で、かつ正孔を輸送できる材料(つまり正孔輸送材料)をカーボンナノチューブの表面に吸着または化学接合させることによって、正孔に対するバリアを小さくしている。特に正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルIp(CTM)とOPC表面の有機感光層のイオン化ポテンシャルIp(OPC)との関係を制御することによって、良好な帯電が実現できる。
【0080】
図7は、カーボンナノチューブ表面に正孔輸送材料を付けた場合のバンドの概略図である。OPC表面の有機感光層のLUMO、HOMOを各々LUMO(OPC)、HOMO(OPC)とし、カーボンナノチューブの表面に付けた正孔輸送材料のLUMO、HOMOを各々をLUMO(CTM)、HOMO(CTM)とする。カーボンナノチューブからの正孔が正孔輸送材料を通って有機感光層へ注入されるためには、HOMO(CTM)にある正孔がHOMO(OPC)へ遷移する必要があるが、正孔輸送材料と有機感光層の間で正孔に対するバリアを低くし、正孔がスムーズに輸送されるためには、HOMO(OPC)がHOMO(CTM)よりもエネルギー的に高い準位にあることが望ましい。
【0081】
ここで、真空準位とHOMOのエネルギー差はイオン化ポテンシャルIpに相当するので、正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルをIp(CTM)、有機感光体のイオン化ポテンシャルをIp(OPC)とすると、前記の条件は以下のように記述される。
Ip(OPC)>Ip(CTM)
よってIp(OPC)>Ip(CTM)となるイオン化ポテンシャルを有する正孔輸送材料をカーボンナノチューブ表面に吸着または化学結合させると、正孔の輸送が妨げられず、帯電効率が向上する。なお、有機感光層が1層から構成される場合は、その層のLUMO、HOMO、IpがLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、Ip(OPC)に相当し、有機感光層が多層構成からなるOPCの場合は、最表層のLUMO、HOMO、IpがLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、Ip(OPC)に相当する。
【0082】
前記の条件を満たす正孔輸送材料としては負帯電のOPCで用いられる正孔輸送材料等がある。一般的に負帯電のOPCの正孔輸送材料にはオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体がある。よってカーボンナノチューブ620に、上記誘導体から選ばれた少なくとも一つを含む正孔輸送材料621を吸着または化学結合することによって、より効率的な電荷注入が可能になり、大きな帯電電位が得られる。
【0083】
なお、Ip(OPC)>Ip(CTM)とするためには、OPCの有機感光層のIp(OPC)にも影響されるが、一般的にはオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体等に適切な置換基を導入し、HOMO(CTM)のエネルギー準位を動かすことによって実現するのが良い。
【0084】
またオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体はOPCで広く用いられているため、量産効果により材料コストが低く、カーボンナノチューブ620表面に正孔輸送材料621を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、その結果帯電ブラシ(固定ブラシ)610を安価に製造できる。なお、本例においても実施例1と同種のカーボンナノチューブ620が使用でき、またカーボンナノチューブ620と正孔輸送材料621の吸着方法や化学結合の方法としては、実施例1と同様の方法が採用できる。
【0085】
次に、本発明に用いられるOPC600について述べる。本例では光によって発生するキャリアのうち電子を用いるOPCであるため、前例のOPCとは異なる構成をしている。具体的にはドラム形状のAl基体601上に酸化チタン微粒子をバインダー樹脂に分散させた電子注入阻止層をディップコーティング法により厚さ1〜5μmで形成し、その後順次電荷輸送層、電荷発生層を形成し、有機感光層602を完成させた。
【0086】
電荷輸送層は正孔輸送材料をビスフェノール系ポリカーボネイト樹脂等のバインダー樹脂に分散させたものからなり、膜厚は10〜40μm程度でディッピングコーティング法によって形成した。正孔輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、ピラリゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体などが用いられる。
【0087】
電荷発生層は電荷発生材料をブチラール樹脂、熱硬化型の変性アクリル樹脂、フェノール樹脂及びポリエステル樹脂などのバインダー樹脂に分散させたものからなり、ディッピングコーティング法により厚さ0.1〜1μmで形成した。電荷発生材料としては波長740〜780nm付近に感度を持つスクエアリリウム色素、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、アズレニウム塩色素、及びアゾ顔料等が、635〜650nm付近に感度のあるチアピリリウム塩や多環キノン系、ペリレン系又はアゾ顔料系等が使用できる。
【0088】
本例は最表層が電荷発生層であるため、大きな耐刷性が得られにくく、高耐久な画像形成装置には適していない。そこで電子輸送材料を用いて以下のようなOPCを用いることも可能である。
【0089】
ドラム形状のAl基体501上に、酸化チタン微粒子をバインダー樹脂に分散させた電子注入阻止層を、ディップコーティング法により厚さ1〜5μmで形成し、その後順次電荷発生層、電子輸送層を形成し、有機感光層602を完成させる。電荷発生層は前記と同じ構成とし、電子輸送層は電子輸送材料をビスフェノール系ポリカーボネイト樹脂等のバインダー樹脂に分散させたものからなり、膜厚は10〜40μm程度でディッピングコーティング法によって形成した。電子輸送材料としては上記化学式(1)〜(4)の化合物または、その誘導体が使用できる。
【0090】
なお、本例では機能分離型のOPCについて説明したが、本発明は機能分離型に限定されるわけではなく、単層型のOPCであっても何ら構わない。また本例はドラム形状のOPCであるが、Al基体の代わりに表面に導電層を形成したベルトを採用し、ベルト状のOPCとしても良い。またシート状のOPCでも良い。
【0091】
次に、本発明の帯電ブラシ(固定ブラシ)610の作製法について説明する。帯電ブラシ(固定ブラシ)610は図4,5と同様の方法で作製しても良いが、図8(a)〜(c)に示す方法によって作製しても良い。
【0092】
図8(a)に示すように、導電性繊維612を製造するためレーヨン、ナイロン、ポリエステル等の高分子樹脂630にカーボンブラックまたは金属微粒子を分散させるが、これらの分散と同時に正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を所望の配合比率で分散させる。
【0093】
その後、図8(b)のように、正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を分散させた高分子樹脂630を紡糸し、導電性繊維612とする。紡糸の際に導電性繊維612の表面を研磨(繊維表面を研削)して、導電性繊維612表面に正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を突出させる。また他の方法として、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を高分子ネットワークに置換し高分子繊維全体に導電性を付与し、この時同時に正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を分散させ、紡糸しても良い。なお、前述と同様に、紡糸する表面を研磨して、導電性繊維612表面に正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620をに突出させる必要がある。
【0094】
研磨プロセスでは遊離砥粒を用いる。具体的には酸化セリウム、ウレタン等のパッドで導電性繊維612を挟み、導電性繊維612に1〜500g/cm2 の荷重を印加し、その間に粒径1μmのアルミナを供給し導電性繊維612を片側から引き出し研磨する。パッドは導電性繊維612の巻き取り速度により、一段を使用するか、または対角上に設置した二段もしくは複数段を組み合わせて使用する。
【0095】
正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620の分散量は表面突出密度が0.01本/μm2 以上となる量を配合するのが望ましく、1本/μm2 以上となる量を配合すれば安定した帯電が可能である。なお、正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620の分散量としては1〜50wt%程度が良い。また、導電性繊維612に正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を分散する際、精製したカーボンナノチューブ620を用いると電荷注入の効率が向上するので更に望ましい。なお、導電性繊維612の直径は一般的な帯電ブラシと同様に5〜20μmとするのが良い。
【0096】
次に、図8(c)のようにSUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯611に、正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620が表面から突出している導電性繊維612を電気植毛によって植え付ける。植毛の密度としては一般的な帯電ブラシと同様に50〜300本/mm2 程度にするのが良い。また、導電性繊維612をパイル地にして、テープ状に切断したのち、金属芯611に巻き付けても良い。
【0097】
本例は導電性繊維612の表面を研磨して、正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を導電性繊維612の表面から突出させているが、導電性繊維612を酸素プラズマに晒し,母材である高分子樹脂を灰化して正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を導電性繊維612の表面から突出させても良い。更にこれらのプロセスを複合し、紡糸後研磨を行い、引き続き酸素プラズマ処理を行っても良い。
【0098】
このように本発明は、正孔輸送材料621を吸着または化学結合したカーボンナノチューブ620を、導電性繊維612の表面から突出させるプロセスを限定するものではなく、一般的な方法であれば本発明に含まれる。
【0099】
上記実施例1,2では帯電ブラシを用いて本発明を説明した。帯電ブラシは金属芯に多数の導電性繊維が植え付けられた構造である。また導電性繊維は先端以外に側面にもカーボンナノチューブを保持できる。そのため接触型帯電器として帯電ブラシまたは帯電ブラシ(固定ブラシ)を選択した場合、カーボンナノチューブの密集度を著しく高くすることができる。その結果カーボンナノチューブに結合した電荷輸送材料と有機感光層との接触面積が大きく取れ、より効率的な電荷注入が可能になる。
【0100】
しかしながら帯電ローラー、帯電ブレード、磁気ブラシ等の他の形状の接触型帯電器の場合も、カーボンナノチューブが接続されていない接触型帯電器と比較して、電荷輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブが有機感光層と接触するため、電荷注入の効率が向上する。よって本発明は帯電ブラシに限定されるわけではなく、帯電ローラー、帯電ブレード、磁気ブラシ等の他の形状の接触型帯電器も本発明に含まれる。
【0101】
<実施例3>
負帯電用の帯電ブラシを2種類作製した。帯電ブラシAは電子輸送材料として上記化学式(1)で表される化合物を用い、電子輸送材料をポリカーボネイト樹脂に分散し、カーボンナノチューブを被覆したものである。
【0102】
帯電ブラシAの作製は以下のように行った。SUS製の金属芯に導電性ナイロン繊維を電気植毛によって植え付けた後、導電性ナイロン繊維の先端にのみエポキシ樹脂製の導電性接着剤を塗布し、その後静電力を利用して電子輸送材料が吸着したカーボンナノチューブを導電性ナイロン繊維に吸い上げて接触させ,導電性接着剤を熱硬化して,電子輸送材料が吸着したカーボンナノチューブを固定化した。
【0103】
帯電ブラシBは以下のようにして作製した。カーボンナノチューブを空気中700℃で酸化し、末端を開管しカルボキシル基を形成した。また電子輸送材料として上記化学式(2)で表される化合物を用い、イソプロピル基の近傍にアミノ基を導入しておく。その後、カーボンナノチューブのカルボキシル基と、上記化学式(2)で表される化合物のアミノ基とを反応させ、カーボンナノチューブに電子輸送材料を共有結合させた。その後電子輸送材料が共有結合したカーボンナノチューブとカーボンブラックをナイロン樹脂に分散させ、直径15μmの導電性ナイロン繊維に紡糸した。その後、ウレタンパッドとアルミナの遊離砥粒を用いて、導電性ナイロン繊維の表面を研磨し、表面に電子輸送材料が共有結合したカーボンナノチューブを突出させた。そして導電性ナイロン繊維をパイル地にして、SUS製の金属芯を被覆し帯電ブラシとした。帯電ブラシA,Bの詳細を表1に示す。
【0104】
【表1】
Figure 0004155484
【0105】
帯電ブラシA、Bと−500Vの直流電源をOPCの帯電システムとして複写機に搭載して,テストチャートの複写を行った。現像は白黒の2値現像とし、階調はドット数で表示した。帯電ブラシA、Bを載せた複写機で複写を行った結果、通常のアナログ表示の複写機と比較して解像度、階調が向上していた。また帯電ブラシA、Bを載せた複写機では感光体の帯電プロセス中にオゾンやNOx がほとんど検出されなかった。よって本発明の接触型帯電器を搭載した複写機はオゾンやNOx を発生させないで、かつ帯電システムの外部電源を低電圧化しつつ良好な画像記録が行えることが確認された。
【0106】
また、帯電ブラシBを搭載した複写機で連続複写試験を行った結果、A4用紙で20万枚複写を行った後でも良好な画像が得られ、帯電ブラシの長期信頼性が優れていることが判った。またこれにより帯電ブラシの交換頻度を少なくできることが判明した。
【0107】
以上の結果から、本発明に係る電荷輸送材料を吸着または化学結合したカーボンナノチューブを接続した接触型帯電器は、将来カーボンナノチューブの製造コストが低減できれば、複写機のトータルコストを低減することができる可能性があると言える。なお、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置においても、同様の効果が期待できる。
【0108】
<実施例4>
実施例1〜3では帯電は主に電荷注入によって行われていた。高い帯電電位(600V〜1kV程度)が必要とされる場合、OPCの帯電は主にOPC・接触型帯電器間の微小空隙でのコロナ放電によって行われる。本発明の接触型帯電器においても、カーボンナノチューブとOPC間の微小空隙に放電開始電圧Vth以上の電圧が印加されると、カーボンナノチューブとOPC間の微小空隙でコロナ放電が発生し、OPCが帯電される。
【0109】
特に、カーボンナノチューブは極細の針状の形状を持つため、カーボンナノチューブ先端での不平等電界が強くなり、放電開始電圧Vthを下げることができる。実際に実施例3の帯電ブラシBでVthを測定したところ、カーボンナノチューブが保持されていない帯電ブラシより小さなVthを持つことが確認され、従来の帯電ブラシより印加電圧を小さくできることが判った。
【0110】
また、微小空隙でのコロナ放電によってOPCを帯電させる場合に発生するオゾンやNOx を測定した結果、帯電ブラシBはカーボンナノチューブが保持されていない帯電ブラシよりもオゾンやNOX が少なかった。これは、カーボンナノチューブの先端のみでコロナ放電が起きるため、帯電ブラシBでは放電空間が狭く、かつ印加電圧が低いため、オゾンやNOX の発生が抑えられたものと考えられる。よって電荷輸送材料を吸着または化学結合したカーボンナノチューブを保持した接触型帯電器は、コロナ放電によってOPCを帯電させる場合も、オゾンやNOX の低減、外部電源の低電圧化といった利点を持っている。
【0111】
以上のように、本発明は電荷注入や電界放出、微小空隙でのコロナ放電といった帯電方式に制限されるものではなく、本発明の構造が含まれる全ての接触型帯電器について言及している。
【0112】
<実施例5>
実施例1〜4ではカーボンナノチューブを用いた接触型帯電器について説明したが、カーボンナノチューブと同様に炭素から構成され、かつアスペクト比が大きな針状の形態をしているカーボンウイスカーを用いても、同様な効果が期待できる。カーボンウイスカーを用いた接触型帯電器の例(すなわち本発明の別の例)を図9に示す。図9は接触型帯電器の形状として帯電ブラシを用いたものであり、負帯電のOPCに用いられる。
【0113】
本発明の帯電ブラシ910は金属芯911に導電性繊維912が接続しており、さらに各々の導電性繊維912にはカーボンウイスカー920が保持され、カーボンウイスカー920の表面には電荷輸送材料921(本例の場合は電子輸送材料が用いられる)が吸着または化学結合している構造を持つ。なお、ここで述べる吸着とはvan der Waals 力や静電力等による物理的な吸着を意味し、化学結合とは共有結合やイオン結合等を意味する。そして、帯電ブラシ910は主にカーボンウイスカー920に吸着または化学結合された電子輸送材料921でOPC900の表面と接触している。なお、一部ではカーボンウイスカー920や導電性繊維912が直接OPC900の表面と接触していても何ら構わない。
【0114】
OPC900はドラム形状のAl基体901と有機感光層902から構成されており、必要に応じてAl基体901と有機感光層902の間に電荷注入阻止層が設けられている。なお、帯電ブラシ910の金属芯911は外部の直流電源903に接続され、主に電子輸送材料921から有機感光層902に直接電子を注入(つまり負帯電の電荷注入)することでOPC900を帯電させている。また、一部の電子は有機感光層902と直接接触するカーボンウイスカー920や導電性繊維912から注入されても良く、またカーボンウイスカー920から電子が電界放出によって引き出され有機感光層902を帯電しても構わない。
【0115】
ここで実施例1と同様に、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合された電子輸送材料921は、電子輸送材料921の電子親和力をEA (CTM)、有機感光層902の電子親和力をEA (OPC)とすると、
EA (OPC)<EA (CTM)
となる電子親和力を持っている。
【0116】
そのため、有機感光層902のLUMOは電子輸送材料921のLUMOよりもエネルギー的に低い準位になり、電子輸送材料921と有機感光層902の間で電子に対するバリアが低くなり、電子が帯電ブラシ910から有機感光層902へスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。なお、有機感光層が1層から構成される場合は、その層のLUMO、HOMO、EA がLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)に相当し、有機感光層が多層からなる機能分離型のOPCの場合は、最表層のLUMO、HOMO、EA がLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)に相当する。一般的に負帯電の機能分離型OPCの表面には電荷輸送層が配置されるので、LUMO(OPC)、HOMO(OPC)、EA (OPC)は電荷輸送層のLUMO,HOMO,EA である。
【0117】
上記の条件を満たす電子輸送材料としては、実施例1と同様に正帯電のOPCで用いられる電子輸送材料等がある。一般的に正帯電OPCの電子輸送材料として、上記化学式(1)〜(4)の化合物または、その誘導体があるので、カーボンウイスカー920表面に上記化合物または、その誘導体から選ばれた少なくとも一つを含む電子輸送材料921を吸着または化学結合させることによって、より効率的な電荷注入が可能になり、高い帯電電位が得られる。
【0118】
なお、EA (OPC)<EA (CTM)とするためには、OPCの有機感光層のEA (OPC)にも影響されるが、一般的には上記化学式(1)〜(4)の化合物に適切な置換基を導入し、LUMO(CTM)のエネルギー準位を動かすことによって実現するのが良い。また、上記化学式(1)〜(4)の化合物はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低く、カーボンウイスカー920表面に電子輸送材料921を吸着または化学結合させるコストを抑制することができ、その結果帯電ブラシ910を安価に製造できる。
【0119】
また、図9ではカーボンウイスカー920の先端にのみ電子輸送材料921が吸着または化学結合されているが、複数の電子輸送材料が吸着または化学結合されていたり、またカーボンウイスカー920の側面にも電子輸送材料が吸着または化学結合されていると、有機感光層902と接触する電子輸送材料の数が増え、カーボンウイスカーと有機感光層との間にバリアの低い領域が広く形成できるのでより望ましい。
【0120】
次に、本発明に用いられるカーボンウイスカーについて説明する。カーボンウイスカーは炭素原子から構成され、ほぼ完全にグラファイト化した繊維状の物質であり、カーボンナノチューブよりも多様な結晶構造を持っているが、グラファイトシートが繊維軸の周りに幾重にも積み重なり、中空構造をしている場合が多い。また、カーボンウイスカーの大きさは、直径が0.1〜200μm、長さは数mm以下であり、大きさはカーボンナノチューブよりも大きいが、カーボンナノチューブと同様に非常にアスペクト比の大きな針状の形態をしている。
【0121】
また、カーボンウイスカーは不活性ガス中でグラファイト棒を電極としてアーク放電を行うことによって合成される。また遷移金属を触媒としてベンゼンやアセチレン等の炭化水素を熱分解することによっても合成できる。合成されたカーボンウイスカーもカーボンナノチューブと同様に種々の不純物を含むため、精製を行っても良い。カーボンナウイスカー920表面に電子輸送材料921を吸着または化学結合させる方法に関しては、表面がカーボンナノチューブと同様にグラファイト化しているため、実施例1と同様の方法を用いることができる。
【0122】
次に、本例の帯電ブラシ910の作製法について説明する。基本的には、実施例1、2と同様に本例の帯電ブラシ910も図4,5,8と同様な方法を用いることができる。
【0123】
例えば図4と同様な方法を用いる場合の作製手順は、以下の(1)〜(4)のようになる。
(1)SUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯に導電性繊維を電気植毛によって植え付ける。導電性繊維としては直径が5〜20μmの導電性レーヨン、導電性ナイロン、導電性ポリエステル等が使用でき、植毛の密度としては一般的な帯電ブラシと同様に50〜300本/mm2 程度にするのが良い。繊維に導電性を付与する方法としては、カーボンブラックや金属微粒子を高分子繊維の中に分散させる方法もあるが、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を高分子ネットワークに置換し、高分子繊維全体に導電性を付与しても良い。
【0124】
(2)その後、導電性繊維の先端にのみ導電性接着剤を厚さ2〜10μmで塗布し、(3)静電力を利用して、電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーを導電性繊維に吸い上げて接触させ、(4)その後、導電性接着剤を熱硬化させ、電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーを固定し、帯電ブラシを完成させる。
【0125】
また、図5と同様な作製方法を用いた場合の作製手順は、以下の(11)〜(14)のようになる。
(11)SUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯に導電性繊維を電気植毛によって植え付ける。(12)その後、導電性繊維の先端にのみポリメチルフェニルシランを厚さ0.1〜3μmで塗布し、その後超高圧水銀灯により波長400nm程度の光を照射し、ポリメチルフェニルシラン140のSi−Si結合を切断する。
【0126】
(13)その後、イソプロピルアルコール中に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーを分散させた溶液(以後IPA溶液と略す)中に導電性繊維を浸漬し、金属芯に外部電源を接続し、Al電極を対向電極として負電圧を印加して、電気泳動により電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーを導電性繊維に接触させる。電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーは印加された電界と平行な方向に移動し、導電性繊維に接触してSi−Si結合の切れたポリメチルフェニルシランに突き刺さり、固定化される。なお、金属芯の側面にある全ての導電性繊維に電子輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーを固定化するためには、IPA溶液中で金属芯を円周方向に回転させればよい。
【0127】
(14)その後導電性繊維をIPA溶液から引き上げ、イソプロピルアルコールを蒸発させ、帯電ブラシを完成させる。
【0128】
また、図8と同様な作製方法を用いた場合の作製手順は、以下の(21)〜(23)のようになる。
(21)導電性繊維を製造するためレーヨン、ナイロン、ポリエステル等の高分子樹脂にカーボンブラックまたは金属微粒子を分散させるが、これらの分散と同時に電子輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーを所望の配合比率で分散させる。
【0129】
(22)その後、電子輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーを分散させた高分子樹脂を紡糸し、導電性繊維とする。紡糸の際に導電性繊維の表面を研磨(繊維表面を研削)して、導電性繊維表面に電子輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーを突出させる。研磨プロセスでは遊離砥粒を用いる。具体的には酸化セリウム、ウレタン等のパッドで導電性繊維を挟み、導電性繊維に1〜500g/cm2 の荷重を印加し、その間に粒径1μmのアルミナを供給し、導電性繊維を片側から引き出し研磨する。パッドは導電性繊維の巻き取り速度により一段を使用するか、または対角上に設置した二段もしくは複数段を組み合わせて使用する。
【0130】
電子輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーの分散量は表面突出密度が0.01本/μm2 以上となる量を配合するのが望ましく、1本/μm2 以上となる量を配合すれば安定した帯電が可能である。なお、正孔輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーの分散量としては1〜50wt%程度が良い。なお、導電性繊維の直径は一般的な帯電ブラシと同様に5〜20μmとするのが良い。
【0131】
(23)次にSUS,Al,Fe,Cu等の金属や合金からなる金属芯に、電子輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーが表面から突出している導電性繊維を電気植毛によって植え付けて、帯電ブラシを完成させる。植毛の密度としては一般的な帯電ブラシと同様に50〜300本/mm2 程度にするのが良い。なお、本例はロール状の帯電ブラシについて説明したが、固定した帯電ブラシ(固定ブラシ)であっても本発明の効果は同様に得られ、帯電ブラシの形状は何ら問わないものとする。加えて図9の帯電ブラシ910は直流電源903に接続されているが、電源は直流に限定されるものではなく、直流と交流が重畳されていても構わないものとする。また、本例に用いられるOPC900は負帯電のOPCであるから、実施例1と同様のものが使用できる。
【0132】
<実施例6>
次に、正帯電のOPCに用いられるカーボンウイスカーを用いた接触型帯電器について説明する。本発明の接触型帯電器の別の例を図10に示す。図10は接触型帯電器の形状として帯電ブラシ(固定ブラシ)を用いたものであり、正帯電のOPCに用いられる。
【0133】
本発明の帯電ブラシ(固定ブラシ)1010は金属芯1011と導電性繊維1012が接続しており,さらに各々の導電性繊維1012にはカーボンウイスカー1020が保持され、カーボンウイスカー1020の表面には電荷輸送材料1021(本例の場合は正孔輸送材料)が吸着または化学結合している構造を持つ。なお、ここで述べる化学結合とは共有結合やイオン結合等を意味し、吸着とはvan der Waals 力や静電力等による物理的な吸着を意味する。そして帯電ブラシ(固定ブラシ)1010は主にカーボンウイスカー1020表面に吸着または化学結合した正孔輸送材料1021で、OPC1000の表面と接触している。なお、一部ではカーボンウイスカー1020や導電性繊維1012が直接OPC1000の表面と接触していても良い。
【0134】
OPC1000はドラム形状のAl基体1001と有機感光層1002から構成されており,必要に応じてAl基体1001と有機感光層1002の間に電荷注入阻止層が設けられている。帯電ブラシ(固定ブラシ)1010の金属芯1011は外部の直流電源1003に接続され,主に正孔輸送材料1021から有機感光層1002に直接正孔を注入(つまり正帯電の電荷注入)することでOPC1000を帯電させている。
【0135】
なお、一部の正孔は有機感光層1002と直接接触するカーボンウイスカー1020や導電性繊維1012から注入されても良い。ここで実施例2と同様に、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合された正孔輸送材料1021は、正孔輸送材料1021のイオン化ポテンシャルをIp(CTM)、有機感光層1002のイオン化ポテンシャルをIp(OPC)とすると、
Ip(OPC)>Ip(CTM)
となるイオン化ポテンシャルを持っている。
【0136】
そのため、有機感光層1002のHOMOは正孔輸送材料1021のHOMOよりもエネルギー的に高い準位になり、正孔輸送材料1021と有機感光層1002の間で正孔に対するバリアが低くなり、正孔が帯電ブラシ(固定ブラシ)1010から有機感光層1002へスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。
【0137】
なお、有機感光層が1層から構成される場合は、その層のLUMO、HOMO、IpがLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、Ip(OPC)に相当し、有機感光層が多層構成からなるOPCの場合は、最表層のLUMO、HOMO、IpがLUMO(OPC)、HOMO(OPC)、Ip(OPC)相当する。
【0138】
前記の条件を満たす正孔輸送材料としては負帯電のOPCで用いられる正孔輸送材料等がある。一般的に負帯電のOPCの正孔輸送材料はオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体がある。よってカーボンウイスカー1020に、これらの誘導体から選ばれた少なくとも一つを含む正孔輸送材料1021を吸着または化学結合することによって、より効率的な電荷注入が可能になり、高い帯電電位が得られる。
【0139】
なお、Ip(OPC)>Ip(CTM)とするためには、OPCの有機感光層のIp(OPC)にも影響されるが、一般的にはオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体等に適切な置換基を導入し、HOMO(CTM)のエネルギー準位を動かすことによって実現するのが良い。
【0140】
またオキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリシラン誘導体はOPCで広く用いられているため、量産効果により材料コストが低く、カーボンウイスカー1020表面に正孔輸送材料1021を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、その結果帯電ブラシ(固定ブラシ)1010を安価に製造できる。
【0141】
なお、本例においても実施例5と同種のカーボンウイスカー1020が使用でき、またカーボンウイスカー1020と正孔輸送材料1021の吸着方法や化学結合の方法は、実施例5と同様の方法が採用できる。また、本発明に用いられるOPC1000は光によって発生するキャリアのうち電子を用いるOPCであるため、実施例2と同様なOPCが使用される。また、本発明の帯電ブラシ(固定ブラシ)1010の作製法としては,実施例5と同様の方法が採用できる。
【0142】
<実施例7>
カーボンウイスカーを用いた負帯電用の帯電ブラシ(固定ブラシ)Cを以下のようにして作製した。電子輸送材料として上記化学式(4)の化合物を用い、電子輸送材料をポリカーボネイト樹脂に分散し、カーボンウイスカーを被覆した。その後、電子輸送材料が吸着したカーボンウイスカーとカーボンブラックをレーヨン樹脂に分散させ、直径10μmの導電性レーヨン繊維に紡糸した。その後ウレタンパットとアルミナの遊離砥粒を用いて、導電性レーヨン繊維の表面を研磨し、表面に電子輸送材料が共有結合したカーボンウイスカーを突出させた。そして導電性レーヨン繊維をパイル地にして、SUS製の金属板の片面に導電性接着剤で貼り付け,帯電ブラシ(固定ブラシ)とした。帯電ブラシ(固定ブラシ)Cの詳細を表2に示す。
【0143】
【表2】
Figure 0004155484
【0144】
帯電ブラシ(固定ブラシ)Cと−500Vの直流電源を、OPCを用いたレーザープリンターの帯電システムとして搭載し,テスト信号の印刷を行った。現像は白黒の2値現像とし、階調はドット数で表示した。帯電ブラシ(固定ブラシ)Cを載せたレーザープリンターで印刷を行ったところ解像度、階調とも良好な結果が得られた。またOPCの帯電プロセス中にオゾンやNOX はほとんど検出されなかった。よって本発明の接触型帯電器を搭載したレーザープリンターは、オゾンやNOX を発生させないで、かつ帯電システムの外部電源を低電圧化しつつ良好な画像記録が行えることが確認された。以上の結果から、本発明が提案した電荷輸送材料を吸着または化学結合したカーボンウイスカーを保持した接触型帯電器は印刷機のトータルコストを低減できる。
【0145】
【発明の効果】
請求項1に記載の接触型帯電器は、感光体と接触する面にカーボンナノチューブが保持され、かつカーボンナノチューブの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されているため、OPCへの電荷注入において有機感光層とカーボンナノチューブの間のバリアを小さくできる。その結果、より効率的な電荷注入が可能になり、大きな帯電電位が得られる。
【0146】
請求項1に記載の接触型帯電器において、該接触型帯電器は負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、カーボンナノチューブの表面に吸着または化学結合している電荷輸送材料は電子輸送材料であり、かつ電子輸送材料の電子親和力をEA (CTM)、有機感光体の電子親和力をEA (OPC)とすると、EA (OPC)<EA (CTM)となる電子親和力を持っている。そのため、OPCのLUMOは電子輸送材料のLUMOよりもエネルギー的に低い準位になり、電子輸送材料とOPCの間で電子に対するバリアが低くなり、電子が接触型帯電器からOPCへスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。
【0147】
前記の負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器では、カーボンナノチューブの表面に吸着または化学結合している電子輸送材料が、上記化学式(1)〜(4)の化合物または、その誘導体の少なくとも一つを含んでいる。これらの誘導体はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低い。その結果カーボンナノチューブに電子輸送材料を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、接触型帯電器を安価に製造できる。
【0148】
請求項1に記載の接触型帯電器において、該接触型帯電器は正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、カーボンナノチューブの表面に吸着または化学結合している電荷輸送材料は正孔輸送材料であり、かつ正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルをIp(CTM)、有機感光体のイオン化ポテンシャルをIp(OPC)とすると、Ip(OPC)>Ip(CTM)となるイオン化ポテンシャルを持っている。そのため、OPCのHOMOは電子輸送材料のHOMOよりもエネルギー的に高い準位になり、正孔輸送材料とOPCの間で正孔に対するバリアが低くなり、正孔が接触型帯電器からOPCへスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。
【0149】
前記の正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器では、カーボンナノチューブの表面に吸着または化学結合している正孔輸送材料が、オキサジアゾールおよびその誘導体、ピラゾリンおよびその誘導体、トリフェニルメタンおよびその誘導体、オキサゾールおよびその誘導体、ヒドラゾンおよびその誘導体、トリアリールアミンおよびその誘導体、ブタジエンおよびその誘導体ならびに、ポリシランおよびその誘導体から選ばれる少なくとも一つを含んでいる。上記化合物および、その誘導体はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低い。その結果、カーボンナノチューブに正孔輸送材料を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、接触型帯電器を安価に製造できる。
【0150】
請求項に記載の接触型帯電器は電荷輸送材料が吸着または化学結合したカーボンナノチューブが導電性繊維に保持された帯電ブラシである。帯電ブラシは金属芯に多数の導電性繊維が植え付けられた構造をもつ。また導電性繊維は先端の他に側面にもカーボンナノチューブを固定できる。そのため帯電ブラシは帯電ローラー、帯電ブレードと比較しカーボンナノチューブの密集度を著しく大きくできる。その結果カーボンナノチューブ表面に吸着または化学結合した電荷輸送材料とOPCとの接触面積を大きく取れ、より効率的な電荷注入が可能になる。
【0151】
請求項に記載の接触型帯電器は、感光体と接触する面にカーボンウイスカーが保持され、かつカーボンウイスカーの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されているため、OPCへの電荷注入において有機感光層とカーボンウイスカーの間のバリアを小さくできる。その結果、より効率的な電荷注入が可能になり、大きな帯電電位が得られる。
【0152】
請求項3に記載の接触型帯電器において、該接触型帯電器は負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合している電荷輸送材料は電子輸送材料であり、かつ電子輸送材料の電子親和力をEA (CTM)、有機感光体の電子親和力をEA (OPC)とすると、EA (OPC)<EA (CTM)
となる電子親和力を持っている。そのため、OPCのLUMOは電子輸送材料のLUMOよりもエネルギー的に低い準位になり、電子輸送材料とOPCの間で電子に対するバリアが低くなり、電子が接触型帯電器からOPCへスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。
【0153】
前記の負帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器では、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合している電子輸送材料が、上記化学式(1)〜(4)の化合物または、その誘導体の少なくとも一つを含んでいる。これらの化合物および、その誘導体はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低い。その結果、カーボンウイスカーに電子輸送材料を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、接触型帯電器を安価に製造できる。
【0154】
請求項3に記載の接触型帯電器において、該接触型帯電器は正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器であり、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合している電荷輸送材料が正孔輸送材料であり、かつ正孔輸送材料のイオン化ポテンシャルをIp(CTM)、有機感光体のイオン化ポテンシャルをIp(OPC)とすると、Ip(OPC)>Ip(CTM)となるイオン化ポテンシャルを持っている。そのため、OPCのHOMOは電子輸送材料のHOMOよりもエネルギー的に高い準位になり、正孔輸送材料とOPCの間で正孔に対するバリアが低くなり、正孔が接触型帯電器からOPCへスムーズに輸送される。その結果帯電効率が向上する。
【0155】
前記の正帯電の有機感光体に用いられる接触型帯電器では、カーボンウイスカーの表面に吸着または化学結合している正孔輸送材料が、オキサジアゾールおよびその誘導体、ピラゾリンおよびその誘導体、トリフェニルメタンおよびその誘導体、オキサゾールおよびその誘導体、ヒドラゾンおよびその誘導体、トリアリールアミンおよびその誘導体、ブタジエンおよびその誘導体ならびに、ポリシランおよびその誘導体から選ばれる少なくとも一つを含んでいる。上記化合物および、その誘導体はOPCで広く使用されているため、量産効果により材料コストが低い。その結果カーボンウイスカーに正孔輸送材料を吸着または化学結合させるコストを抑制でき、接触型帯電器を安価に製造できる。
【0156】
請求項に記載の接触型帯電器は電荷輸送材料が吸着または化学結合したカーボンウイスカーが導電性繊維に保持された帯電ブラシである。帯電ブラシは金属芯に多数の導電性繊維が植え付けられた構造をもつ。また導電性繊維は先端の他に側面にもカーボンウイスカーを固定できる。そのため帯電ブラシは帯電ローラー、帯電ブレードと比較しカーボンウイスカーの密集度を著しく大きくできる。その結果カーボンウイスカー表面に吸着または化学結合した電荷輸送材料とOPCとの接触面積を大きく取れ、より効率的な電荷注入が可能になる。
【0157】
請求項に記載の画像形成装置は、感光体と接触する面にカーボンナノチューブまたはカーボンウイスカーが保持され、かつカーボンナノチューブまたはカーボンウイスカーの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合している接触型帯電器を搭載しているので、OPCへ効率的な電荷注入が行え、高い帯電電位が確保できる。そのため外部電源を低電圧化しても良好な画像記録が行える。また帯電プロセス中にオゾンやNOX が発生しないため、環境への悪影響が無く、かつOPCの劣化を抑制できる。更に、微小空隙でのコロナ放電によってOPCを帯電させる場合も、カーボンナノチューブまたはカーボンウイスカーを用いることによって放電開始電圧が低くなるので、外部電圧の低電圧化を実現できる。その結果帯電プロセス中でのオゾンやNOX を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の接触型帯電器の一例(帯電ブラシ)を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の電子輸送材料のバンドを表す概略図である。
【図3】カーボンナノチューブへの官能基導入方法の一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る帯電ブラシの作製方法の一例を示す工程説明図である。
【図5】本発明に係る帯電ブラシの作製方法の別例を示す工程説明図である。
【図6】本発明の接触型帯電器の別例(固定ブラシ)を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の正孔輸送材料のバンドを表す概略図である。
【図8】本発明に係る帯電ブラシ(固定ブラシ)の作製方法の別例を示す工程説明図である。
【図9】本発明の接触型帯電器の別例(帯電ブラシ)を示す模式的断面図である。
【図10】本発明の接触型帯電器の別例(固定ブラシ)を示す模式的断面図である。
【図11】従来の帯電ローラーの性能を示すグラフであって、相対湿度をパラータとする、印加電圧と有機感光体の帯電電圧との関係を示すものである。
【図12】従来の接触型帯電器の一例(帯電ブラシ)を示す模式的断面図である。
【図13】従来の接触型帯電器の別例(磁気ブラシ)を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
100 OPC
101 Al基体
102 有機感光層
103 直流電源
110 帯電ブラシ
111 金属芯
112 導電性繊維
120 カーボンナノチューブ
121 電荷輸送材料
130 導電性接着剤
140 ポリメチルフェニルシラン
141 IPA溶液
142 対向電極
143 直流電源
600 OPC
601 Al基体
602 有機感光層
603 直流電源
610 帯電ブラシ(固定ブラシ)
611 金属芯
612 導電性繊維
620 カーボンナノチューブ
621 電荷輸送材料(正孔輸送材料)
630 高分子樹脂
900 OPC
901 Al基体
902 有機感光層
903 直流電源
910 帯電ブラシ
911 金属芯
912 導電性繊維
920 カーボンウイスカー
921 電荷輸送材料(電子輸送材料)
1000 OPC
1001 Al基体
1002 有機感光層
1003 直流電源
1010 帯電ブラシ(固定ブラシ)
1011 金属芯
1012 導電性繊維
1020 カーボンウイスカー
1021 電荷輸送材料(正孔輸送材料)
2100 感光体
2101 Al基体
2102 有機感光層
2103 直流電源
2110 帯電ブラシ
2111 導電性繊維
2211 マグネットロール
2213 磁性導電粒子
2214 磁性導電粒子
2215 磁性導電粒子(粒径大)
2216 磁性導電粒子(粒径小)

Claims (5)

  1. 感光体表面と接触し、感光体に電圧を印加することによって該感光体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、前記感光体との接触面にカーボンナノチューブが保持され、かつ該カーボンナノチューブの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されていることを特徴とする接触型帯電器。
  2. 請求項1に記載の接触型帯電器において、前記帯電器が金属芯と導電性繊維からなる帯電ブラシであり、該導電性繊維に前記カーボンナノチューブが保持されていることを特徴とする接触型帯電器。
  3. 感光体表面と接触し、感光体に電圧を印加することによって該感光体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、前記感光体との接触面にカーボンウイスカーが保持され、かつ該カーボンウイスカーの表面に電荷輸送材料が吸着または化学結合されていることを特徴とする接触型帯電器。
  4. 請求項3に記載の接触型帯電器において、前記帯電器が金属芯と導電性繊維からなる帯電ブラシであり、該導電性繊維に前記カーボンウイスカーが保持されていることを特徴とする接触型帯電器。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の接触型帯電器を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
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