JP3850626B2 - カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブの製法、接触型帯電器及び画像形成装置 - Google Patents

カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブの製法、接触型帯電器及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの製法、カーボンナノチューブを像担持体表面に接触して帯電させる接触型帯電器及び接触型帯電器を搭載した画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
帯電手段により像担持体を帯電するのに、従来の帯電方式はコロナ放電によるコロトロン、スコロトロン方式が主流であった。しかしコロナ放電は空気中で高電界をかけるためオゾンやNOXなど有害物質を大量に発生し、また帯電効率が低いため消費電力が多く、更に4〜6kVの高圧電源が必要なためコストが高くかつ人体に対し危険性があるという問題があった。近年の環境に対する配慮からこのような帯電方式を改善することは急務であり、接触型のローラー帯電へと移行されつつある。
【0003】
ローラー帯電は、導電性ゴムローラーを像担持体である感光体に接触させ、感光体と帯電ローラーの微小空隙で放電を起こし、感光体表面を帯電させる方法であり、コロトロン方式と比較してオゾンが著しく低減(1/100〜1/500に低減)される。
【0004】
しかし、ローラー帯電においても感光体と帯電ローラー間の微小空隙に電圧を加え、コロナ放電を起こさせるのであるから、原理的にオゾン発生をゼロにはできない。またオゾンやNOXが感光体近傍で発生するためオゾンやNOXによる感光体の劣化が依然として問題として残る。このため、オゾンやNOXを全く発生させない帯電方式が強く望まれ、最近では電荷注入による帯電方式が注目されている。
【0005】
電荷注入による帯電方式は、接触型帯電器を用い、放電を起こさないで該接触型帯電器から直接電荷を感光層に注入する方法である。そのため原理的にオゾンは発生しない。電荷注入による帯電方式では、接触型帯電器と感光体との接触抵抗や微小空隙の容量が電荷を注入する際の注入速度に影響を与えるため、接触抵抗は低い程、よいとされる。
【0006】
そのため、特開平6−75459号公報に開示されるように、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を高分子ネットワークに置換し、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムで帯電ローラーを作る方法が知られている。
【0007】
しかし、香川、古川、新川氏等によるJapan Hardcopy‘92,pp287〜290(日本画像学会予稿集)の報告では、図13に示すように、80%RHの高湿下では有機感光体(以後、OPCと略す)において十分な帯電電位が得られるが、30〜50%RHの湿度化では印加電圧の半分までしか帯電されず、電荷の注入速度が遅いことがわかる。これは帯電ローラーの接触面積(ニップ幅)が小さいことや導電性ゴムが十分低抵抗化していないためと考えられる。
【0008】
つまり、低抵抗の導電性ゴムを得るには電荷移動錯体を多量にドーピングする必要があるが、ドーピング量が多くなると高分子自体のネットワークの柔軟性が減少し、ゴム硬度が大きくなるのではないかと思われる。例えば特開平6−75459号公報に開示されるように、導電性ゴムの抵抗は106Ω・cmとなっており、適度なゴム硬度を維持しながら導電性ゴムを低抵抗化することは高分子材料の選択の点から容易ではない。
【0009】
また、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムを帯電ローラーとして用いている図13に示す例では、帯電電位が湿度に敏感であるため、環境を厳密に制御する必要があり、接触型帯電器の構造が複雑化してしまう。
【0010】
例えば、帯電ローラーとして、吸水性のスポンジローラーを用いる場合、ローラーの含水率がローラー抵抗や電荷の注入速度に大きな影響を与えるので、ローラーからの水分蒸発によって帯電電位が変動するおそれがある。このため、帯電電位の変動を抑えるためにはローラーからの水分蒸発を長期にわたり厳密に制御する必要があり、接触型帯電器の構造が複雑になり、安価に製造することができない。
【0011】
また特開平9−101649号公報には、図14に示すように金属芯2111の周囲に放射状に設けた導電性繊維からなる帯電ブラシ2110を基体2101上に設けた感光層2102と接触回転させ、導電性繊維2112をエッチング繊維ないしは分割繊維にすることによって導電性繊維2112と感光体2100との接触面積を増加させて電荷注入の速度を向上させることが提案されている。なお、金属芯2111には電源2103によりバイアスが印加されている。
【0012】
ここで、エッチング繊維は導電性繊維の成分の一部を薬液で溶解し、1本の導電性繊維を径方向で複数本に分割した繊維である。また分割繊維は加熱時の各部の熱収縮の差を利用して1本の導電性繊維を径方向で分割した繊維である。
【0013】
これらの処理によって実質的により細い径の導電性繊維を用いたことになり、感光体2100との接触面積を増加できることになる。
しかし、分割された繊維の引っ張り強度は分割前の導電性繊維と比較し、分割された分だけ小さくなり、その結果、感光体と接触した場合、分割された繊維は破断されやすくなり、長期の使用では帯電電位のバラツキを起こし、接触型帯電器の寿命を低下させる原因となってしまう。逆に長寿命の接触型帯電器を得ようとすると、導電性繊維の分割数を多くできないために、接触面積を著しく大きくすることはできず、電荷の注入速度の著しい向上は期待できない。
【0014】
また、接触型帯電器の別の構造として磁気ブラシを挙げることができるが、一般的に磁気ブラシは磁性導電粒子の直径を大きくするとマグネットロールからの規制力が大きくなり、帯電ブラシや帯電ブレード、帯電ローラーよりも大きなニップ幅を形成できるものの、磁性導電粒子の直径が大きくなると逆に感光体との接触面積が減少してしまう。そのため最適な磁性導電粒子の大きさが存在する。
【0015】
磁性導電粒子の形状については、特開平8−6355号公報によれば、図15(a)に示すように、固定磁石2211aとこの固定磁石2211aのまわりに設けた非磁性導電性のスリーブ2211bからなるマグネットロール2211上に表面が平滑な磁性導電粒子2213と表面に凹凸のある磁性導電粒子2214を混合したものを用いている。
【0016】
また、特開平8−691491号公報によれば、図15(b)に示すように、マグネットロール2211上に2つの粒径分布を持つ磁性導電粒子、つまり、粒径大の磁性導電粒子2215と、粒径小の磁性導電粒子2216を用いる。何れの例でも、マグネットロール2211の規制力を維持し、大きなニップ幅を確保しながら磁性導電粒子の接触面積を増加させる試みがなされている。
【0017】
しかしながら、接触面積の増加に寄与する磁性導電粒子は、用いた磁性導電粒子2213、2214、2215、2216のうち凹凸のある磁性導電粒子2214と粒径の小さな磁性導電粒子2216だけなので、接触面積の著しい増加は期待できず、高速の画像形成装置では十分な帯電電位が得られにくかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、電荷注入によって像担持体を帯電させる接触型帯電器においては、速い注入速度で像担持体に十分な帯電電圧を与えることができ、かつ湿度等の環境変動に対し十分な耐性を有し、かつ長期の使用において帯電電位の変動が小さい接触型帯電器を提供することにある。
【0019】
また、像担持体との微小空隙でのコロナ放電を利用する接触型帯電器においては、オゾンやNOXの発生を低減でき、かつ外部電源の低電圧化を実現できる接触型帯電器を提供することにある。
【0020】
加えてオゾンやNOXを発生させないで、かつ帯電システムの外部電源を低電圧化しつつ良好な画像を得ることができる画像形成装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、以下の構成とした。
(1).像担持体表面と接触し、像担持体に電圧を印加することによって像担持体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、像担持体とは対向するよう配置された前記接触型帯電器は基板と触媒層とカーボンナノチューブとからなり、像担持体と接触するようにカーボンナノチューブが前記基板表面とは垂直に保持され、かつカーボンナノチューブの長さが20μm以上の構成とした(請求項1)。
(2).(1)記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブが、基板の表面(以下、基板面という)に形成された少なくともFe、Ni、Co、Ni合金、Fe酸化物、Ni酸化物またはCo酸化物の1種からなる触媒層上に、前記基板面からほぼ垂直に成長させたものからなることとした(請求項2)。
(3).(2)記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブが、Feからなる触媒層上に、アセチレンを用い、前記基板の温度が675〜750°CのCVD法によって作製されたものとした(請求項3)。
(4).(2)又は(3)記載の接触型帯電器において、前記触媒層が前記基板面上で離散して配置され、かつ離散した前記各触媒層の最大間隔Sが前記カーボンナノチューブの長さLとを、S≦2Lの関係とした(請求項3)。
(5).(4)記載の接触型帯電器において、前記離散した各触媒層の長さのうち、CVD法で用いられる不飽和炭化水素ガスの流れと平行な方向の長さを200μm以下とした(請求項5)。
(6).(2)、(3)、(4)又は(5)記載の接触型帯電器において、前記触媒層が形成された前記基板面を、前記像担持体と対向する面として構成した(請求項6)。
(7).(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)記載の接触型帯電器において、前記基板が円柱形状であり、かつ円柱の円周面に前記触媒層を形成した(請求項7)。
(8).(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブを機械的外力によってバンドルから分割されたもので構成した(請求項8)。
(9).(8)に記載の接触型帯電器において、前記機械的外力として超音波振動を用いた。
(10).像担持体を帯電手段により一様に帯電させてから画像情報に応じて前記一様な帯電状態に変化を与えて潜像を形成し、この潜像を可視像化して画像を得る画像形成装置において、前記帯電手段として(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(9)記載の接触型帯電器を搭載した(請求項10)。
(11).少なくともFe、Ni、Co、Ni合金、Fe酸化物、Ni酸化物またはCo酸化物の1種からなる触媒層をアニールして微粒子化することにより触媒として機能させ、更にアセチレン(C)又はエチレン(C)を導入し、675〜700°CでCVD(chemical vapor deposition)を行うことによりカーボンナノチューブを成長させることとした(請求項11)。
【0022】
【発明の実施の形態】
[例1]
図1において、本発明の接触型帯電器110は基板としての金属芯111と触媒層112と、カーボンナノチューブ120からなる。金属芯111は軸方向が紙面と垂直で軸方向に長さを有する円柱状をしていて、この金属芯111の表面(基板面)は、像担持体としての感光体100と対向して配置されている。
【0023】
触媒層112は、金属芯111の円周面上に略一定の厚さで形成されている。触媒層112上には金属芯111の軸心方向(金属芯の表面と略垂直)に極細い棒状の多数のカーボンナノチューブ120が保持されている。
【0024】
カーボンナノチューブ120の長さ(軸方向の大きさ)を符号Lで示すとすると、長さLは20μm以上あれば十分である。実際には、100μm程度のものを得ることは比較的容易である。
【0025】
接触型帯電器110の主体をなるのはこのカーボンナノチューブ120であり、感光体100の表面に接触している。なお、一部では触媒層112や金属芯111が直接、感光体100の表面と接触していても何ら構わない。
【0026】
感光体100はドラム形状のCuからなる基体101と、この基体101の上に設けた有機感光層102とから構成されている。必要に応じて基体101と有機感光層102の間に電荷注入阻止層が設けられることがある。
【0027】
金属芯111は外部の直流電源103に接続されていて、主にカーボンナノチューブ120から有機感光層102に直接電子を注入(つまり負帯電の電荷注入)することで感光体100を帯電させる。
【0028】
ここで、一部の電子は有機感光層102と直接接触する触媒層112や金属芯111から注入されてもよく、またカーボンナノチューブ120から電子が電界放出によって引き出され、有機感光層102を帯電する構成でもよい。
【0029】
カーボンナノチューブ120の長さLと感光体100の帯電電圧の関係を調べた結果、カーボンナノチューブ120の長さLが20μm以上の場合に実用的な帯電電圧を得ることができた。
【0030】
一般的にカーボンナノチューブはnmオーダーの極細の直径とμmオーダーの長さを持つアスペクト比の非常に大きな材料であり、またカーボンナノチューブは大きな弾性を有している。カーボンナノチューブ120において、長さLが大きい場合、感光体100に接触すると、カーボンナノチューブ120は撓り、該カーボンナノチューブ120の先端部のみではなく、先端部から基端部側に寄った中間部の側面も有機感光層102と接触するようになる。
【0031】
その結果、カーボンナノチューブ120と有機感光層102との接触面積が大きくなり、効率的な電荷注入が可能になる。カーボンナノチューブ120の長さLが20μm以上の場合、カーボンナノチューブの側面が接触する割合が多くなり、実用的な帯電電圧を確保することができた。
【0032】
カーボンナノチューブについて説明する。
一般的にカーボンナノチューブの大きさは直径が0.7〜500nm、長さが10nm〜1mmであり、より合成しやすい大きさとしては直径が0.7〜50nm、長さは30nm〜10μm程度であるが、カーボンナノチューブの一般的な合成法であるアーク放電やベンゼンの熱分解法、レーザー蒸着法では種々の長さのカーボンナノチューブが一緒に合成されるため、本発明に使用される長さ20μm以上のカーボンナノチューブを安定にかつ多量に合成することは困難であった。また合成されたカーボンナノチューブから長さ20μm以上のカーボンナノチューブを選別することも考えられるが、選別作業自体を短時間で行うことが困難であり、コストを考えると実用的ではない。
【0033】
そこで本発明者は、カーボンナノチューブの新しい合成法について検討を重ねた結果、以下の合成法を見出した。つまり、少なくともFe、Ni、Co、Fe合金、Ni合金、Co合金、Fe酸化物、Ni酸化物またはCo酸化物の1種からなる触媒層をアニールして、触媒層を微粒子化し、更にアセチレン(C22)、エチレン(C24)等の不飽和炭化水素ガスを導入し、700℃前後でCVD(chemical vapor deposition)を行うと、触媒層が形成された基板からほぼ垂直にカーボンナノチューブが成長することを見出した。また、この合成法によるカーボンナノチューブは合成時間の間は絶えず成長し続けるため、合成時間によって長さを制御するのが容易であることを見出した。
【0034】
図1の例におけるカーボンナノチューブ120は、金属芯111の円周面上に形成された触媒層112について上記のCVD法が適用されて作製されたものである。
【0035】
これらの合成法を用いることにより、本発明で必要とされる長さLが20μm以上のカーボンナノチューブを安定的にかつ多量に得ることができる。但し、前記の合成法を用いても長さLが20μm未満のカーボンナノチューブが若干ではあるが合成されてしまう。しかし合成されるカーボンナノチューブの多数が20μm以上の長さLを持つため、長さLが20μm未満のカーボンナノチューブを取り除かないで感光体とカーボンナノチューブを接触させる場合でも十分な帯電電圧を与えることができる。
【0036】
本発明は感光体と接触する面に保持されるカーボンナノチューブの全てが、長さLが20μm以上である必要はなく、十分な帯電電圧を与えることができれば、長さLが20μm以上あるカーボンナノチューブの他に長さLが20μm未満のカーボンナノチューブが感光体と接触する面に保持されていても本発明に含まれるものとする。
【0037】
上記の方法で合成されたカーボンナノチューブは孤立している場合もあるが、互いにファンデアワールス力でバンドルを形成している場合もある。バンドルを形成したカーボンナノチューブもある程度の弾性があるため、有機感光層と接触すると撓り接触面積の拡大に寄与するが、バンドルから個々のカーボンナノチューブへ分割した方が接触面積拡大の効果が大きい。
【0038】
バンドルはファンデアワールス力で形成されているため結合力は大きくない。そのため機械的外力によって容易にバンドルは分割でき、個々に分割されたカーボンナノチューブが得られる。最も簡便な方法はカーボンナノチューブに超音波振動を与える方法である。例えばカーボンナノチューブは水や一般的な有機溶媒に不溶であることから、カーボンナノチューブを水ないし有機溶媒に浸積し、超音波発振器により超音波振動を与えることによって、バンドルから個々のカーボンナノチューブを分割できる。その結果カーボンナノチューブと有機感光層の接触面積が拡大し、より効率的な電荷注入が可能になる。
【0039】
本例では、図1に示したように、触媒層112が形成された基板面、つまり金属芯111の円周面が感光体100と対向する面となっていて、この基板面にはカーボンナノチューブが垂直に設けられていて、該カーボンナノチューブ120が感光体100に接触する構成であるので、接触型帯電器110に感光体100と接触する面を新たに設ける必要がなく、接触型帯電器の構造を簡素化できる。
【0040】
更に図1に示すように、金属芯111が円柱形状であり、かつ円柱の円周面に前記の触媒層112を形成しているため、金属芯111の円周面全てにカーボンナノチューブ120が保持される。その結果、接触型帯電器110を回転させれば、感光体100を均一に帯電できる。
【0041】
図1に示された接触型帯電器110の作製法を、触媒層112としてFeを使用した場合を例にとり、図2により説明する。
(工程1):図2(a)において、 SUSからなる金属芯111にFeを真空蒸着法によって膜厚2〜40nmに成膜し、触媒層112を形成する。なお、この例では、金属芯111が円柱構造であるので、金属芯111を回転させながら成膜し、触媒層112を金属芯111の円周面上の全てに成膜する。ここで、金属芯111としては、上記のSUSのほか、Fe、Cu等の金属や合金を使用することができる。また、上記真空蒸着法に代えてスパッタリング法を用いることもできる。
(工程2):図2(b)において、その後、触媒層112が形成された金属芯111を紙面に垂直な軸方向の両端が開放された石英管131に挿入し、ガスの流れK1で示すように紙面に垂直な方向にヘリウム(He)ガスを流す。同時に、石英管131を包囲するように設けた電気炉130を用い、700〜800°Cで10分間アニールを行い、触媒層112を大きさが数十nmの粒子に微粒子化する。
【0042】
その後、石英管131に白抜き矢印で示すようにC22ガスを導入し、金属芯111による基板温度を675〜750°CとしてC22ガスを熱分解して、触媒層112上にカーボンナノチューブ120(孤立したカーボンナノチューブとバンドルを形成したカーボンナノチューブが混在)を成長させる。
【0043】
またC22ガスの導入と同時にHe、アルゴン(Ar)等の不活性ガスや、水素(H2)ガスを導入してもよく、CVDは減圧下ないし大気圧下のどちらで行ってもよい。また、石英管131内にプラズマを発生させC22ガスの熱分解を促進させてもよい。
【0044】
なお上記の基板温度範囲より低い場合はカーボンナノチューブの成長速度は著しく低く、長いカーボンナノチューブを得ることが困難となる。一方、上記の基板温度範囲よりも高い場合は著しく径の太い堆積物が網目状に形成され、金属芯111からほぼ垂直に成長するカーボンナノチューブを得ることができない。
(工程3):図2(c)において、触媒層112上に所望の長さのカーボンナノチューブ120が成長できたら、石英管131内のC22ガスをHe、Ar等の不活性ガスで置換し、室温まで冷却して金属芯111を取り出し、水またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン等の有機溶媒141が満たされ、超音波発振器142の付いた超音波洗浄槽140に浸積して、超音波振動を加え、バンドルを形成しているカーボンナノチューブ120を、図2(d)に示すように枝分かれ状に個々のカーボンナノチューブ120aに分割する。
(工程4):図2(c)において、超音波洗浄槽140から金属芯111を取り出し、図2(d)に示すように、接触型帯電器110を得る。
【0045】
なおカーボンナノチューブ120を成長させた後、酸化雰囲気で600〜700°Cで加熱し、僅かに析出するカーボンパーティクル等を除去してもよく、また超音波振動を加える前または加えた後、必要に応じて低粘度の接着剤を触媒層112の上に薄く広げ、接着剤を硬化させ、カーボンナノチューブ120と触媒層112との固着強度や触媒層112と金属芯111の密着強度を向上させてもよい。
【0046】
触媒層112としてはFe以外にNiやCo、Fe合金やNi合金やCo合金、Fe酸化物やNi酸化物またはCo酸化物が使用することができる。CoやFe合金、Co合金、Fe酸化物、Co酸化物の場合はアニールして微粒子化することによって触媒となるが、Ni、Ni合金、Ni酸化物の場合は触媒層をアンモニア等の還元性ガスのプラズマに晒し表面を還元しておくか,不飽和炭化水素ガスと同時に還元性ガスを石英管131に供給する必要がある。
【0047】
またC22ガスの代わりC24等の不飽和炭化水素ガスを用いても同様に触媒層112が形成された金属芯111からほぼ垂直に成長するカーボンナノチューブ120を得ることができる。なお、触媒層112や不飽和炭化水素ガスの種類によってカーボンナノチューブ120が触媒層112が形成された金属芯111からほぼ垂直に成長する温度範囲は変化する。
【0048】
次に本発明に用いられる感光体100について説明する。
図1に示した感光体100は、ドラム形状のCuの基体101上に酸化チタン微粒子をバインダー樹脂に分散させたホール注入阻止層をディップコーティング法により厚さ1〜5μmで形成し、その後、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層の有機感光層102を形成したものの一部を示したものである。
【0049】
電荷発生層は電荷発生材料をプチラール樹脂、熱硬化型の変性アクリル樹脂、フェノール樹脂及びポリエステル樹脂などのバインダー樹脂に分散させたものからなり、ディッピングコーティング法により厚さ0.1〜1μmで形成した。電荷発生材料としては波長740〜780nm付近に感度を持つスクエアリリウム色素、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、アズレニウム塩色素、及びアゾ顔料等や、635〜650nm付近に感度のあるチアピリリウム塩や多環キノン系、ペリレン系又はアゾ顔料系等を使用することができる。
【0050】
電荷輸送層は正孔輸送材料をビスフェノール系ポリカーボネイト樹脂等のバインダー樹脂に分散させたものからなり、膜厚は10〜40μm程度でディッピングコーティング法によって形成した。正孔輸送材料としてはオキサジアゾール誘導体、ピラリゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ブタジエン誘導体などが用いられる。本例は機能分離型の感光体を例に取り説明したが、本発明は機能分離型に限定されるわけではなく、単層型の感光体でも何ら構わない。
【0051】
また本例はドラム形状の感光体を例示しているが、Cuの基体101の代わりに表面に導電層を形成したベルトを採用し、ベルト状の感光体としてもよい。さらに、シート状の感光体でもよい。
なお、図1において、接触型帯電器110は直流電源103に接続されているが、電源は直流に限定されるものではなく、直流と交流が重畳されるように電源を構成することもできる。
[例2]
本発明の接触型帯電器の別の例を図3、図4により説明する。図3は接触型帯電器410と像担持体としての感光体400を軸方向から見た図であり、図4は接触型帯電器410の斜視図である。
【0052】
これら図3、図4における接触型帯電器410は、基板としての金属芯411上に触媒層412が離散して配置されていて、触媒層412上に金属芯411とほぼ垂直なカーボンナノチューブ420が保持されている。カーボンナノチューブ420の長さLは20μm以上となっている。
【0053】
図3に示す接触型帯電器410では主にカーボンナノチューブ420が感光体400の表面と接触している。なお、一部では触媒層412や金属芯411が直接感光体400の表面と接触していても何ら構わない。
【0054】
感光体400はドラム形状のCuからなる基体401と有機感光層402から構成されており、必要に応じて基体401と有機感光層402との間に電荷注入阻止層を設けることができる。
【0055】
接触型帯電器410の金属芯411は外部の直流電源403に接続され、主にカーボンナノチューブ420から有機感光層402に直接電子を注入(つまり負帯電の電荷注入)することで感光体400を帯電させている。
【0056】
なお、一部の電子は有機感光層402と直接接触する触媒層412や金属芯411から注入されてもよく、またカーボンナノチューブ420から電子が電界放出によって引き出され有機感光層402を帯電しても構わない。
【0057】
ここで、図3、図4において、離散して配置された触媒層412の最大間隔をSとすると、カーボンナノチューブ420の長さLとの間に以下の関係がある。
【0058】
S≦2L
なお、図4において、離散して配置された触媒層412及びこの触媒層412上に形成されたカーボンナノチューブ420は図示の関係で、平面状に展開した金属芯411上に設けられた状態で図示している。
【0059】
図5を用いて上記の式を説明する。前記[例1]の合成法によると、カーボンナノチューブ420は触媒層412上からのみ成長する。よって、図4に示すように触媒層412を離散して配置した場合、触媒層412と触媒層412との間にはカーボンナノチューブ420は成長せず、触媒層412と触媒層412との間ではカーボンナノチューブ420と有機感光層402が接触しない領域が発生する。
【0060】
図5に示すように、カーボンナノチューブ420は弾性を有するため有機感光層402と接触すると撓り隣接する触媒層412側に延びるので、カーボンナノチューブ420と有機感光層402が接触しない領域を狭めることができる。
【0061】
しかし、カーボンナノチューブ420の長さがLであるため、最大でも触媒層412から長さLまでの領域しか接触することができない。よって、触媒層412と触媒層412との最大間隔をSとすると、カーボンナノチューブ420を有機感光層表面に隙間なく接触させるためには、カーボンナノチューブ420は片側で最大で長さLだけ有機感光層402と接触できる。よって、S≦2Lとする必要がある。
【0062】
図6に、離散して配置された触媒層612上に保持されたカーボンナノチューブ620を持つ接触型帯電器610の別の例を示す。前記図3、図4、図5に示した例では、触媒層412等は縦方向、横方向共に離散されて配置されていた。
【0063】
これに対し、図6において、円柱状の基板としての金属芯611上に形成された触媒層612は軸方向に長さを有し、円周方向の一方向にのみ離散して配置されており、これら触媒層612が形成された金属芯611からほぼ垂直に、つまり、円柱状の軸心に向く方向でカーボンナノチューブ620が触媒層612上に保持されている。
【0064】
図6においても、離散して配置された触媒層612及びこの触媒層612上に形成されたカーボンナノチューブ620は図示の関係で、平面状に展開した金属芯611上に設けられた状態で図示して、この例では、触媒層612の最大間隔Sは、金属芯611の円周方向に表れている。本例でも、カーボンナノチューブ620の長さをLとすると、S≦2Lとなっている。
【0065】
このように触媒層は図6に示すように一方向に離散され、或いは、図3、図4、図5に示すように縦横の二方向に離散された配置とすることができる。或いは、千鳥模様で配置されてもよく、離散した触媒層の配置について、何ら制限はないが、触媒層の最大間隔をS、カーボンナノチューブの長さをLとすると、S≦2Lとなっていなければならない。
【0066】
次に矩形ブロック状の接触型帯電器の作製方法を図7により説明する。
(工程1):図7(a)において、SUSからなる基板としての矩形ブロック状の基板としての金属芯311の触媒層が形成される面に対向させてシャドウマスク315を配置する。なお、金属芯311としては、上記SUSに代えて、Fe、Cu等の金属や合金を用いることもできる。
(工程2):その後、図7(b)において、金属芯311の表面にFeまたはFe−Ni合金を用い真空蒸着法によって膜厚が2〜40nmで成膜し、触媒層312を形成する。この場合、Feはシャドウマスク315の開口部のみを通るため、金属芯311表面には、離散した状態で触媒層312を形成することができる。なお、Feは真空蒸着の場合は原子或いはクラスターの状態、スパッタリングの場合は原子の状態でシャドウマスクを通過させる。
(工程3):図7(c)に示すように、こうして離散した状態で形成された触媒層312を有する金属芯311を円筒状の石英管331に挿入する。石英管331のまわりは電気炉330で包囲されている。石英管331内に軸方向に沿ってガスの流れK2の向きにHeガスを導入しつつ、電気炉330を用い金属芯311の温度を750°Cまで昇温させ、その後、石英管331にC22ガスとHeガスを導入してC22を熱分解し、離散した各触媒層312上に図7(d)で示すようにカーボンナノチューブ320を成長させる。
(工程4):図7(d)に示すように、離散した触媒層312上に所望の長さのカーボンナノチューブ320が成長できたら、石英管331内のC22ガスをHe、Ar等の不活性ガスで置換し、室温まで冷却して金属芯311を取り出し、接触型帯電器310とする。
【0067】
このような接触型帯電器310は単体として感光体の帯電用に使用することができる。
【0068】
必要に応じて、水又はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、トルエン等の有機溶媒が満たされ、超音波発振器の付いた超音波洗浄槽に接触型帯電器を浸積して、超音波振動を加え、バンドルを形成しているカーボンナノチューブ320をさらに細い個々のカーボンナノチューブ(図2(d)に準じた細分化した構成)に分割することもできる。
【0069】
低粘度の接着剤を離散した触媒312の上に薄く広げ、接着剤を硬化させ、カーボンナノチューブ320と離散した触媒層312との固着強度や離散した触媒層312と金属芯311との密着強度を向上させることもできる。
【0070】
図7に示した例では、離散した触媒層312をシャドウマスク315を用いて形成したが、この例の他にFeを、金属芯311の全面に形成した後、一般的なフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって離散した状態の触媒層312を形成することもできる。このように、離散した触媒層312の作製方法として種々の方法を採用することができるので作製法によって本発明は何ら制限されるものではない。
【0071】
本例[例2]に用いられた感光体400(図3参照)に代えて、前記[例1]における感光体100(図1参照)を用いることができる。図3の接触型帯電器410には直流電源403に接続されているが、電源はかかる直流電源に限定されるものではなく、直流と交流を重畳して印加できる電源を接続することもできる。
[例3]
本発明の接触型帯電器の別の例を図8により説明する。図8において、接触型帯電器810には、基板としての金属芯811上に触媒層812が離散して配置されていて、これら触媒層812上に金属芯811と略垂直なカーボンナノチューブ820が保持されている。各カーボンナノチューブ820の長さLは20μm以上となっている。また、離散して配置された触媒層812の長さのうち、CVD法で用いられる不飽和炭化水素ガスの流れK3と平行な方向の長さWが200μm以下となっている。よって、カーボンナノチューブ820の成長速度を大きくでき、合成時間の短縮化を計ることができ、その結果、接触型帯電器を安価に製造することができる。
【0072】
接触型帯電器810は、図9に示すように、感光体100との組み合わせにより図5に示した例に準じて使用することができる。以下に、図8におけるような接触型帯電器810の合成法について図10、図11により説明する。
【0073】
前記した[例1]、[例2]で説明した合成法によると、図10に示すようにカーボンナノチューブ920は触媒層912上からのみ成長するが、成長速度は均一ではなく、一つの触媒層912で見ると白抜きの矢印で示す不飽和炭化水素ガスの流れ方向の下流側でカーボンナノチューブ920の成長速度が大きい。つまり、ガスの流れK4で示す不飽和炭化水素ガスの流れ方向の下流側で、長いカーボンナノチューブ920が得られる。
【0074】
カーボンナノチューブ920の成長速度が特に大きい領域を一つの触媒層912で見ると、不飽和炭化水素ガスの流れの下流側端から200μmであった。そこで金属芯911上に形成された、離散した触媒層912の長さのうちCVD法で用いられる白抜きの矢印で示す不飽和炭化水素ガスの流れと平行な方向の長さWを変化させ、成長するカーボンナノチューブ920の長さLを測定した結果、Wが200μm以下の場合に長いカーボンナノチューブが得られることが判った。
【0075】
よって、図11に示すように、電気炉1030で囲まれた円筒状の石英管1031内に保持された金属芯811上に離散して配置された触媒層812の長さのうち、CVD法で用いられる不飽和炭化水素ガスの流れK5と平行な方向の長さWを200μm以下とすると、カーボンナノチューブ820の成長速度が大きく、長さLが20μm以上のカーボンナノチューブ820を短い合成時間で得ることができ、カーボンナノチューブ820の製造コストを抑えることができる。その結果、接触型帯電器810を安価に製造できる。
【0076】
なお、[例3]における接触型帯電器810の製法を、前記[例2]における接触型帯電器310、410、610の製法に適用することができる。また、本例[例3]により作製された接触型帯電器810は、図9に示したように感光体100と組み合わせて使用できるほか図3に示した感光体400と組み合わせて使用することができる。
[例4]
像担持体としての感光体を接触型帯電器からなる帯電手段により一様に帯電させてから画像情報に応じて前記一様な帯電状態に変化を与えて潜像を形成し、この潜像を可視像化して画像を得る画像形成装置の例を図12によりに説明する。
【0077】
図12は、デジタル式の画像形成装置の主要部断面示す。図12において、符号100は回転体からなる像担持体の一例であってドラム状をした感光体を示している。この感光体100のまわりには、矢印で示す時計回りの向きの回転方向順に、接触型帯電器110、露光手段の一部を構成するミラー3、現像ローラー4aを具備した現像手段4、記録媒体としての転写紙Sを保持して搬送する転写搬送ベルト5、感光体100の周面に摺接するブレード6aを具備したクリーニング手段6等が配置されている。感光体100上であって接触型帯電器110と現像ローラー4aとの間の位置にはミラー3を介して露光光Lbが走査されるようになっている。この露光光Lbの照射位置を露光部15と称する。
【0078】
転写搬送ベルト5は無端状のベルトであって、2つの支持ローラー5a、5bに支持されている。これら支持ローラー5a、5bにより支持された転写搬送ベルト5の中間の位置には感光体100の下面が接している。この接している部位が転写部7であり、この転写部7における転写搬送ベルト5の裏側には転写バイアスを印加する転写手段としての転写ローラー8が設けられている。
【0079】
転写搬送ベルト5は矢印で示すように反時計回りの向きに回転駆動されるようになっている。該転写搬送ベルト5の上側ベルト部の上流端のさらに上流側の位置には一対のレジストローラー9が設けられている。このレジストローラー9に向けて、図示しない搬送ガイドに案内されて図示しない給紙トレイに収納された転写紙Sが給紙コロ11から送り出されるようになっている。転写搬送ベルト5の上側ベルト部の下流端のさらに下流の位置には、定着装置12が配置されている。
【0080】
転写搬送ベルト5の上側ベルト部の上流端部において該転写搬送ベルト5を支持している支持ローラー5aの上方には、該転写搬送ベルト5に当接するようにして吸着手段としてのブラシローラー20が矢印で示す時計回りの向きに回転駆動されるようにして設けられている。
【0081】
ブラシローラー20が回転すると、ブラシは転写搬送ベルト5に摺接する。このブラシローラー20には図示しないバイアス印加手段により、転写紙Sを転写搬送ベルト5に吸着する極性のバイアス電流を印加するための電位が与えられるようになっている。
【0082】
この画像形成装置において、画像形成は次のようにして行われる。
感光体100が回転を始め、この回転中に感光体100が暗中において接触型帯電器110により均一に帯電され、露光光Lbが露光部15に照射、走査されて作成すべき画像に対応した潜像が形成される。この潜像は感光体100の回転により現像装置4に至り、ここでトナーにより可視像化されてトナー像が形成される。
【0083】
一方、給紙コロ11により給紙トレイ上の転写紙Sの送給が開始され、破線で示す搬送経路を経て一対のレジストローラー9の位置で一旦停止し、感光体100上のトナー像と転写部7で合致するように送り出しのタイミングを待つ。かかる好適なタイミングが到来するとレジストローラー9に停止していた転写紙Sはレジストローラー9から送り出される。
【0084】
レジストローラー9から送り出された転写紙Sは転写搬送ベルト5とブラシローラー20との間にくわえられ、バイアスによる静電気力およびブラシの弾性力により押されて転写搬送ベルト5に吸着され、転写搬送ベルト5の移動と共に転写部7に向けて搬送される。
【0085】
感光体100上のトナー像と転写紙Sとは、転写部7で合致し、転写ローラー8により転写搬送ベルト5に印加されたバイアスと感光体100との電位差から形成される電界により、トナー像は転写紙S上に転写される。
【0086】
こうして感光体100まわりの画像形成部でトナー像を担持した転写紙Sは転写搬送ベルト5と共に搬送され、やがて該転写搬送ベルト5の上側部の下流端部で転写搬送ベルト5から分離されて定着装置12に向けて送り出される。転写紙S上のトナー像は定着装置12の加熱ローラー21と加圧ローラー23間にくわえられつつ搬送される間に当該転写紙Sに定着されて図示省略の排紙部に排紙される。
【0087】
一方、転写部7で転写されずに感光体100上に残った残留トナーは感光体100の回転と共にクリーニング装置6に至り、該クリーニング装置6を通過する間に清掃されて次の画像形成に備えられる。
【0088】
上記例において、感光体100に代えて感光体300を使用することができ、接触型帯電器110に代えて、接触型帯電器310、410、610、810等を用いることができる。
【0089】
本例の画像形成装置では、本発明の接触型帯電器を搭載しているので、感光体と接触する面に20μm以上の長さLのカーボンナノチューブが垂直に保持されている。そのため感光体へ効率的な電荷注入を行なうことができ、大きな帯電電位を確保することができる。その結果、外部電源を低電圧化しても良好な画像記録を行なうことができる。また、帯電プロセス中にオゾンやNOが発生しないため、環境への悪影響がなく、かつ、感光体の劣化を抑制することができる。さらに、微小空隙でのコロナ放電によって感光体を帯電させる場合も、カーボンナノチューブを用いることによって放電開始電圧が小さくなるので、外部電圧の低電圧化を実現できる。その結果、帯電プロセス中でのオゾンやNOを抑制することができる。
【0090】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、カーボンナノチューブの側面が像担持体と接触する割合が増加して像担持体へ速い速度で十分な帯電電圧を与えることができ、湿度等の環境変化にも十分な耐性を有し、効率的に電荷を可能とする。
【0091】
請求項2、11記載の発明では、接触型帯電器に使用できる長さ20μm以上のカーボンナノチューブを安定的にかつ多量に得ることができる。
【0092】
請求項3記載の発明では、合成時間を制御することによって長さが20μm以上あるカーボンナノチューブを安定にかつ多量に得ることができる。
【0093】
請求項4記載の発明では、カーボンナノチューブが感光体と接触して撓るときに、感光体の表面と隙間なく接触し、感光体表面の帯電ムラを防止することができる。
【0094】
請求項5記載の発明では、カーボンナノチューブの成長速度を大きくでき、合成時間の短縮化を計ることができる。その結果、接触型帯電器を安価に製造できる。
【0095】
請求項6記載の発明では、カーボンナノチューブを像担持体に接触させ得る構成であるので、接触型帯電器に像担持体と接触する面を新たに設ける必要がなく、接触型帯電器の構造を簡素化することができる。
【0096】
請求項7記載の発明では、円柱状の基板の円周面に触媒層が設けられているので、基板の円周面の全てにカーボンナノチューブを成長させることができ、接触型帯電器を回転させて、像担持体を均一に帯電できる。
【0097】
請求項8記載の発明では、機械的外力により容易にバンドルからカーボンナノチューブを分割し、個々に分割されたカーボンナノチューブによりバンドルのときよりも像担持体との大きな接触面積を得て、より効率的な電荷注入を可能にする。環境変化に対する耐性も十分である。
【0098】
請求項9記載の発明では、超音波振動を用いることで、バンドルからカーボンナノチューブの分割作業を簡便に行なうことができる。
【0099】
請求項10記載の発明は、像担持体への効率的な電荷注入が行え、大きな帯電電位が確保でき、外部電源を低電圧化しても良好な画像記録が行えるほか、帯電プロセス中にオゾンやNOXが発生しないため、環境への悪影響が無くかつ像担持体の劣化を抑制できる。さらに、カーボンナノチューブを用いることによって放電開始電圧が小さくなるので、外部電圧の低電圧化を実現でき、帯電プロセス中でのオゾンやNOXを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】接触型帯電器及び感光体の断面図である。
【図2】接触型帯電器の作製工程を示した図であり、図2(a)は金属芯の断面図、図2(b)は石英管及び電気炉内における金属芯及びカーボンナノチューブを示した断面図、図2(c)は超音波洗浄槽中の接触型帯電器を示した断面図、図2(d)はバンドルから分割されたカーボンナノチューブを模式的に示した図である。
【図3】接触型帯電器及び感光体の断面図である。
【図4】接触型帯電器の斜視図である。
【図5】カーボンナノチューブが撓る様子を模式的に示した図である。
【図6】接触型帯電器の斜視図である。
【図7】接触型帯電器の作製工程を示した図であり、図7(a)は金属芯及びシャドウマスクの断面図、図2(b)はシャドウマスクからFeを流入させる様子を説明した図、図7(c)は電気炉で覆われた石英管内の金属芯にHe、C22ガスを吹き付ける様子を説明した斜視図、図7(c)は接触型帯電器の正面図である。
【図8】離散型の触媒層からなる接触型帯電器の製法を説明した図である。
【図9】固定ブラシタイプの接触型帯電器を感光体と共に示した断面図である。
【図10】カーボンナノチューブの長さと不飽和炭化水素ガスの流れ方向との関係を説明した図である。
【図11】接触型帯電器の製法を説明した図である。
【図12】画像形成装置の概略構成図である。
【図13】従来の帯電ローラーによる帯電特性を説明したグラフである。
【図14】従来の帯電ブラシによる帯電手段を説明した図である。
【図15】従来の磁気ブラシによる帯電手段を模式的に示したもので、図15(a)は表面状態が異なる磁性導電粒子のマグネットロール上での態様を示した模式図、図15(b)は粒径分布が異なる磁性導電粒子のマグネットロール2211上での態様を示した模式図である。
【符号の説明】
100、400 (像担持体としての)感光体
110、310、410、610、810、 接触型帯電器
111、311、411、611、811 (基板としての)金属芯
112、312、412、612、812 触媒層
120、120a、320、420、620、820 カーボンナノチューブ

Claims (11)

  1. 像担持体表面と接触し、像担持体に電圧を印加することによって像担持体に所定の表面電位を与える接触型帯電器において、像担持体とは対向するよう配置された前記接触型帯電器は基板と触媒層とカーボンナノチューブとからなり、像担持体と接触するようにカーボンナノチューブが前記基板表面とは垂直に保持され、かつカーボンナノチューブの長さが20μm以上であることを特徴とする接触型帯電器。
  2. 請求項1記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブが、基板の表面(以下、基板面という)に形成された少なくともFe、Ni、Co、Ni合金、Fe酸化物、Ni酸化物またはCo酸化物の1種からなる触媒層上に、前記基板面からほぼ垂直に成長させたものからなることを特徴とする接触型帯電器。
  3. 請求項2記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブが、Feからなる触媒層上に、アセチレンを用い、前記基板の温度が675〜750°CのCVD法によって作製されたものであることを特徴とする接触型帯電器。
  4. 請求項2又は3記載の接触型帯電器において、前記触媒層が前記基板面上で離散して配置され、かつ離散した前記各触媒層の最大間隔Sが前記カーボンナノチューブの長さLと以下の関係にあることを特徴とする接触型帯電器。
    S≦2L
  5. 請求項4記載の接触型帯電器において、前記離散した各触媒層の長さのうち、CVD法で用いられる不飽和炭化水素ガスの流れと平行な方向の長さが200μm以下であることを特徴とする接触型帯電器。
  6. 請求項2、3、4又は5記載の接触型帯電器において、前記触媒層が形成された前記基板面が、前記像担持体と対向する面として構成されていることを特徴とする接触型帯電器。
  7. 請求項2、3、4、5又は6記載の接触型帯電器において、前記基板が円柱形状であり、かつ円柱の円周面に前記触媒層が形成されていることを特徴とする接触型帯電器。
  8. 請求項2、3、4、5、6又は7記載の接触型帯電器において、前記カーボンナノチューブは機械的外力によってバンドルから分割されたものであることを特徴とする接触型帯電器。
  9. 請求項8に記載の接触型帯電器において、前記機械的外力が超音波振動であることを特徴とする接触型帯電器。
  10. 像担持体を帯電手段により一様に帯電させてから画像情報に応じて前記一様な帯電状態に変化を与えて潜像を形成し、この潜像を可視像化して画像を得る画像形成装置において、前記帯電手段として請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の接触型帯電器を搭載したことを特徴とする画像形成装置。
  11. 少なくともFe、Ni、Co、Ni合金、Fe酸化物、Ni酸化物またはCo酸化物の1種からなる触媒層をアニールして微粒子化することにより触媒として機能させ、更にアセチレン(C)又はエチレン(C)を導入し、675〜700°CでCVD(chemical vapor deposition)を行うことによりカーボンナノチューブを成長させることを特徴とするカーボンナノチューブの製法。
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