JP4154790B2 - 低融点ガラスの用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛成分を含有しない低融点ガラスに関し、さらにこれを用いた、ブラウン管のパネルとファンネルとの封着やプラズマディスプレイパネル(PDP)や蛍光表示管(VFD)における封着に用いる封着用組成物、基体の被覆用組成物、PDPやVFDの隔壁形成用組成物等に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブラウン管のパネルとファンネルとの封着には、特公昭36−17821に開示されるタイプのPbO−B23 −ZnO−SiO2 系結晶性低融点ガラスを用い、440〜450℃の温度に30〜40分程度保持し封着していた。こうして封着されたパネルとファンネルは気圧10-6Torr以下という高真空を得るため300〜380℃に加熱されつつ排気される。
【0003】
また従来、PDPやVFDにおけるガラス基板の封着には、低融点ガラスを用い、440〜500℃で封着していた。こうして封着されたパネルは、VFDの場合は、真空を得るために250〜380℃に加熱されつつ排気され、封止される。また、PDPの場合は、やはり250〜380℃に加熱されつつ排気され、Ne、Ne−Xe、He−Xe等の放電ガスが100〜500Torrになるように封入される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の封着用粉末ガラスには鉛成分を含有するガラスが用いられていたが、最近では鉛成分を含有しないガラスが求められている。
また、従来の封着用粉末ガラスは、バルブやガラス基板と熱膨張係数がマッチングせず、パネルが割れたり、排気のときの加熱によりガラスが流動したり、発泡したり、シール部分が割れたりしていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、実質的にモル表示で、SnOに換算したスズ酸化物:2〜37.5%、ZnO:32〜73%、P25 :25〜50%、Li2 O+Na2 O+K2 O:0〜9%、Al23 :0〜20%、B23 :0〜30%、SiO2 :0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO:0〜30%、からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比(以下、モル比SnO/ZnOという)が1未満である低融点ガラスを提供する。
本発明の低融点ガラスは、ブラウン管、PDP、VFDの封着用、基体の被覆用、PDP、VFDなどの隔壁形成用等の組成物として用いるのに適する。
本発明は、実質的にモル表示で、SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、ZnO 32〜73%、P 2 5 25〜50%、Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜9%、Al 2 3 0〜20%、B 2 3 0〜30%、SiO 2 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末50〜100重量%と、低膨張セラミックスフィラー粉末0〜50重量%とからなる、基体の被覆用組成物、を提供する。
また、実質的にモル表示で、SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、ZnO 32〜73%、P 2 5 25〜50%、Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜9%、Al 2 3 0〜20%、B 2 3 0〜30%、SiO 2 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末50〜100重量%と、低膨張セラミックスフィラー粉末0〜50重量%とからなる、プラズマディスプレイパネルまたは蛍光表示管用の隔壁形成用組成物、を提供する。
また、無機成分が、実質的にモル表示で、SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、ZnO 32〜73%、P 2 5 25〜50%、Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜9%、Al 2 3 0〜20%、B 2 3 0〜30%、SiO 2 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末1〜50重量%、導電性粉末50〜99重量%および低膨張セラミックスフィラー粉末0〜10重量%からなる、導電性ペースト、を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本明細書で、ガラスが低融点であるとは、軟化点が600℃以下のものであることをいう。さらに、低膨張セラミックスフィラーとは、50〜300℃における平均熱膨張係数が70×10-7/℃以下のセラミックスフィラーをいう。
【0007】
本発明における低融点ガラスの組成範囲について説明する。
スズ酸化物は、流動性を向上させる効果があり、含有量がSnOに換算して2モル%未満では、軟化点が高くなりすぎ、流動性が悪く、封着部の強度、気密性が損なわれ、400〜600℃では封着できないおそれがある。好ましくは3モル%以上、より好ましくは7モル%以上、特に好ましくは10モル%以上である。その含有量が37.5モル%超では、ガラス化が困難になる。好ましくは37モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
【0008】
ZnOは耐水性を向上させ、封着物の熱膨張係数を低下させる作用があり、含有量が32モル%未満では、熱膨張係数が大きくなり、封着対象物の熱膨張係数とマッチングせず、割れやすくなるおそれがある。また、ZnOの含有量が多くなると、熱膨張係数をマッチングさせるための低膨張セラミックスフィラー粉末の含有量が増え、緻密な焼結体ができにくい場合がある。好ましくは33モル%以上である。含有量が73モル%超では、失透しやすくなり、また軟化点が高くなりすぎて400〜600℃では封着できなくなるおそれがある。好ましくは71モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。
【0009】
本発明のガラス組成物においては、モル比SnO/ZnOが1未満とされる。この比が1以上になると、ガラスの熔解性が低下し、ガラスの熔解時に表面に被膜状の未融物が残りやすくなるおそれがある。好ましくは、この比は0.97以下、より好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.8以下である。
【0010】
25 の含有量が25モル%未満では、ガラス化が困難になるおそれがある。好ましくは、27モル%以上である。50モル%超では、封着物の耐水性が低下するおそれがある。好ましくは40モル%以下である。
【0011】
本発明の低融点ガラスには、必須ではないが、Li2 O、Na2 O、K2 Oの1種以上を含有することにより、流動性を向上させうる。流動性向上の効果を確実に得るためには、合量で、0.1モル%以上含有することが好ましい。一方、この合量が9モル%超では、熱膨張係数が大きくなり、封着対象物の熱膨張係数とマッチングせず、割れやすくなるおそれがある。また、Li2 O、Na2 OまたはK2 Oの含有量が多くなると、熱膨張係数をマッチングさせるための低膨張セラミックスフィラー粉末の含有量が増え、緻密な焼結体ができにくい場合がある。なお、低融点ガラスの焼成体に高電気抵抗性が特に要求される用途では、Li2 O、Na2 OおよびK2 Oは含有させないことが好ましい場合がある。
【0012】
Al23 は必須成分ではないが、含有させることによって、封着物の熱膨張係数を低下させうる。熱膨張係数低下の効果を確実に得るためには、0.1モル%以上含有することが好ましい。一方、低融点ガラスの軟化点を非常に低くする必要のある用途では、含有しないことが好ましい場合がある。含有量が20モル%超ではガラスの軟化点が高くなりすぎ、流動性が悪くなり、封着部の強度や封着後のブラウン管またはパネルの強度が損なわれる。より好ましい含有量は10モル%以下である。
【0013】
23 は必須成分ではないが、含有させることによって、封着物の熱膨張係数を低下させうる。熱膨張係数低下の効果を確実に得るためには、0.1モル%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.5モル%以上である。一方、低融点ガラスの軟化点を非常に低くする必要のある用途では、含有しないことが好ましい場合がある。含有量が30モル%超ではガラスの軟化点が高くなりすぎ、流動性が悪くなり、封着部の強度や封着後のブラウン管またはパネルの強度が損なわれる。より好ましい含有量は20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。
【0014】
SiO2 は必須成分ではないが、含有させることによって、封着物の熱膨張係数を低下させうる。熱膨張係数低下の効果を確実に得るためには、0.1モル%以上含有することが好ましい。一方、低融点ガラスの軟化点を非常に低くする必要のある用途では、含有しないことが好ましい場合がある。含有量が20モル%超ではガラスの軟化点が高くなりすぎ、流動性が悪くなり、封着部の強度や封着後のブラウン管またはパネルの強度が損なわれる。より好ましい含有量は10モル%以下である。
【0015】
MgO、CaO、SrO、BaOはいずれも必須成分ではないが、これらのうち、1種以上を含有させることによって、封着対象物と封着用組成物との接着性を向上させうる。接着性向上の効果を確実に得るためには、合量で0.1モル%以上含有することが好ましい。一方、低融点ガラスの軟化点を非常に低くする必要のある用途では、含有しないことが好ましい場合がある。含有量が合量で30モル%超ではガラスの軟化点が高くなりすぎ、流動性が悪くなり、封着部の強度や封着後のブラウン管またはパネルの強度が損なわれる。より好ましい含有量は合量で20モル%以下である。
【0016】
本発明の低融点ガラスを、ブラウン管のパネルとファンネルとの封着(以下、単にブラウン管の封着ともいう)用の組成物に用いる場合は、この低融点ガラスの粉末の含有量は、低融点ガラスの粉末と低膨張セラミックスフィラー粉末との総量に対して60〜100重量%の範囲が好ましい。低膨張セラミックスフィラー粉末を含有させると、熱膨張係数を小さくする効果があり、パネルおよびファンネルと熱膨張係数を合わせやすくなる。低融点ガラスの含有量が60重量%未満では、ガラス分が少なく流動性が悪くなり、封着部の気密性が損なわれる。上記理由により、より好ましくは65〜99重量%、特に好ましくは70〜99重量%である。
【0017】
一方、低膨張セラミックスフィラー粉末は必須ではないが、低融点ガラスの粉末と低膨張セラミックスフィラー粉末との総量に対して0〜40重量%で含有されることが好ましい。低膨張セラミックスフィラー粉末の含有量が合量で40重量%超では、封着時の流動性が悪くなる。より好ましくは1〜35重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。
【0018】
こうした低膨張セラミックスフィラーとしては、アルミナ、ムライト、ジルコン、コージェライト、チタン酸アルミニウム、β−スポジュメン、シリカ、β−石英固溶体またはβ−ユークリプタイトが取り扱いの点で好ましく、これらは単独で使用したり、または2種以上を併用したりできる。
【0019】
低膨張セラミックスフィラーのうち、アルミナ、ムライトおよびジルコンの合量が封着用組成物量に対して9重量%以下であることが好ましい。平均熱膨張係数(50〜350℃、単位:×10-7/℃)が、アルミナは65〜75、ムライトは50〜60、ジルコンは42〜48、であり、熱膨張係数が比較的大きく、ガラスと混合しても熱膨張係数を調整する効果が他の低膨張セラミックスフィラーより小さいためである。
【0020】
低膨張セラミックスフィラー粉末の含有量を上記の好ましい範囲にすると、ガラス成分の量をさほど減らすことなく、所望の熱膨張係数が得られるので、耐圧強度の向上に効果がある。この場合、アルミナ、ムライトまたはジルコンは1種以上含有されていてもよく、いずれも含有されていなくてもよい。
【0021】
参考としてその他の低膨張セラミックスフィラーの平均熱膨張係数(50〜350℃、単位:×10-7/℃)は、次に示すとおりである。
コージェライト 10〜 20、
チタン酸アルミニウム 10〜 20、
β−スポジュメン 8〜 15、
シリカ 5〜 6、
β−石英固溶体 −10〜+10、
β−ユークリプタイト −60〜−80。
【0022】
ブラウン管の封着用組成物では、焼成後の50〜300℃における封着用組成物の平均熱膨張係数は80×10-7〜110×10-7/℃の範囲とされるのが好ましい。平均熱膨張係数がこの範囲外では、パネルガラスまたはファンネルガラスまたは封着部に引張応力が強く働き、バルブの耐圧強度が低下する。
【0023】
また、本発明の低融点ガラスを、PDPまたはVFDの封着用組成物に用いる場合は、低融点ガラスの粉末の含有量は封着用組成物の全量に対して50〜100重量%の範囲が好ましい。低膨張セラミックスフィラー粉末を含有させると、熱膨張係数を小さくする効果があり、PDPまたはVFDの基板と熱膨張係数を合わせやすくなる。50重量%未満では、ガラス分が少なく流動性が悪くなり封着部の気密性が損なわれる。上記理由により、より好ましくは55〜99重量%、特に好ましくは60〜98重量%である。
【0024】
一方、この場合の低膨張セラミックスフィラー粉末は、必須ではないが0〜50重量%含有されるのが好ましい。より好ましくは1〜45重量%、特に好ましくは2〜40重量%である。
【0025】
こうした低膨張セラミックスフィラーとしては、ブラウン管の封着組成物と同様に、アルミナ、ムライト、ジルコン、コージェライト、チタン酸アルミニウム、β−スポジュメン、シリカ、β−石英固溶体またはβ−ユークリプタイトが取り扱いの点で好ましく、これらは単独で使用したり、または2種以上を併用したりできる。
【0026】
また、低膨張セラミックスフィラーのうち、アルミナ、ムライトおよびジルコンの合量が封着用組成物量に対して9重量%以下であることが好ましい。この場合、アルミナ、ムライトまたはジルコンは1種以上含有されていてもよく、いずれも含有されていなくてもよい。アルミナ、ムライトおよびジルコンは、前述のとおり、熱膨張係数が比較的大きく、ガラスと混合しても熱膨張係数を調整する効果が、他の低膨張フィラーより小さいためである。低膨張セラミックスフィラー粉末の含有量を上記の好ましい範囲にすると、ガラス成分の量をさほど減らすことなく、所望の熱膨張係数が得られるので、耐圧強度の向上に効果がある。
【0027】
PDP、VFDの封着用組成物では、焼成後の50〜250℃における封着用組成物の平均熱膨張係数は60×10-7〜90×10-7/℃の範囲にあるのが好ましい。平均熱膨張係数がこの範囲外では、基板ガラスまたは封着物に引張応力が強く働き、耐圧強度が低下する。
PDP、VFDの封着用組成物には、表示の見栄えを向上するために、着色剤として顔料を添加することもできる。
【0028】
基体の被覆用に用いる場合は、低融点ガラスの粉末を50〜100重量%とし、低膨張セラミックスフィラー粉末を必須ではないが0〜50重量%とした組成物とすることが好ましい。こうした被覆用組成物は400〜700℃で5分〜1時間程度の加熱で基体の被覆ができる。ここで、基体の材料としては、ガラスやセラミックスなどの耐熱材料を使用できる。また、低膨張セラミックスフィラー粉末としては、封着用組成物と同様のものを使用できる。
【0029】
PDP、VFD用の隔壁形成に用いる場合は、低融点ガラスの粉末50〜100重量%と、必須ではないが低膨張セラミックスフィラー粉末0〜50重量%とからなる組成物とすることが好ましい。場合に応じて白色顔料(例えばTiO2 )、黒色顔料(例えばFe−Mn系、Fe−Co−Cr系、Fe−Mn−Al系の顔料)を添加できる。また、低膨張セラミックスフィラー粉末としては、封着用組成物と同様のものを使用できる。
【0030】
本発明の低融点ガラスの粉末やこれを用いた各種用途の組成物粉末は、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル樹脂、ポリα−メチルスチレン樹脂、ブチラール樹脂などの樹脂成分やα−テルピネオール、酢酸イソアミル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、フェノキシエタノール、エチルセロソルブ、ジブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の適当な溶剤を含むビヒクルと混練してぺースト化して使用できる。
【0031】
また、本発明の低融点ガラスは導電性ペースト、抵抗ペースト、誘電ペーストなどのバインダとして使用できる。例えば、導電性ペーストのバインダとして用いる場合は、低融点ガラスの粉末1〜50重量%と、導電性粉末50〜90重量%と、必須ではないが低膨張セラミックスフィラー粉末0〜10重量%とからなる導電性組成物とすることが好ましい。
【0032】
導電性ペーストとして用いるためには、適宜有機質のビヒクルを加えて、ぺースト状にすることが好ましい。ここで、導電性粉末としてはAg、Pd、Al、Ni、Cu、Au、またはこれらの混合物等の導電性を持つ粉末が挙げられる。こうした導電性ペーストは400〜900℃、5分〜1時間程度の加熱焼成をすることにより、導電体を形成できる。
【0033】
【実施例】
低融点ガラスの成分のうちP25 成分を除く固体原料中に、85%正リン酸を滴下することによって得られた原料スラリをよく混合した後に、120℃で乾燥することによって粉末バッチを作成した。この原料を石英ルツボ中に入れ、ふたをして900〜1200℃で溶融した後、水砕またはローラーを通すことによりフレーク状のガラスにした。次いでこれをボールミルにて所定時間粉砕し、表1の「ガラス組成」欄に示す組成の低融点ガラスの粉末を製造した。
【0034】
これらの低融点ガラスの粉末と低膨張セラミックスフィラー粉末とを表1の「構成」欄の「ガラス」と「フィラー」に示す重量割合で混合し、封着用組成物を調製した。ここで例1〜例8は参考例、例9、例10は比較例であり、例11はガラス組成物としては、本発明の範囲内のものであるが、封着用組成物としては本発明の範囲外のものである。この封着用組成物について、フローボタン径、接着残留歪、平均熱膨張係数を測定した結果を表1に示す。
【0035】
フローボタン径:封着時の組成物の流動性を示すものである。封着用組成物の試料粉末を、ブラウン管用は5.5g、PDP用は3.5g、VFD用は3.5gとり、直径12.7mmの円柱状に加圧成形後、表1に記載した焼成温度(単位:℃)に、30分間保持したとき、封着組成物が流動した直径(単位:mm)である。このフローボタン径はブラウン管封着用途においては26.5mm以上、PDP、VFD用途においては20.0mm以上が望ましい。
【0036】
残留歪:封着用組成物とビヒクル(酢酸イソアミルにニトロセルロース1.2%を溶解した溶液)とを重量比6.5:1の割合で混合してペーストとした。このペーストをブラウン管封着用の場合はファンネルガラス片の上、PDP用、VFD用の場合は基板ガラス片の上に塗布し、フローボタン径の場合と同条件で焼成後、ガラス片と封着用組成物との間に発生した残留歪(単位:nm/cm)をポーラリメーターを用いて測定した。「+」は封着用組成物が圧縮歪を受ける場合、「−」は封着用組成物が引張歪を受ける場合をそれぞれ示す。この残留歪は−100〜+500nm/cmの範囲が望ましい。
【0037】
平均熱膨張係数:封着用組成物をフローボタン径の場合と同条件で焼成後、所定寸法に研磨して、熱膨張測定装置により昇温速度10℃/分の条件で伸びの量を測定し、50〜300℃(ブラウン管封着用途)または50〜250℃(PDP、VFD封着用途)までの平均熱膨張係数(単位:×10-7/℃)を算出した。ブラウン管封着用途では、熱膨張係数のマッチングを考慮すると、この平均熱膨張係数は80×10-7〜110×10-7/℃の範囲が望ましい。PDP、VFD封着用途では、PDP用基板ガラス、VFD用基板ガラスとの熱膨張係数のマッチングを考慮すると、この平均熱膨張係数は60×10-7〜90×10-7/℃の範囲が望ましい。
【0038】
また、この封着用組成物を25型のファンネルとパネルの間に介在させ、400〜500℃に30分間保持してファンネルとパネルを封着してバルブを製造した。また、この封着用組成物をあらかじめ電極や隔壁リブを形成したPDPの基板の端部に介在させ、400〜600℃で30分保持して封着しPDPを製造した。また、電極等を形成したガラス基板の端部の間にグリッドを設置して介在させ400〜600℃で30分間保持してガラス基板どうしを封着し、VFDパネルを製造した。これらのバルブ、パネルについて、耐水圧強度、耐熱強度を測定した結果を表1に併せて示した。それぞれの測定法は次のとおりである。
【0039】
耐水圧強度:バルブまたはパネルの内外に水による圧力差を与えて破壊するときの圧力差を測定した(単位:kg/cm2 、5個の平均値)。バルブまたはパネルとしての強度を保証するために、通常この耐水圧強度は3kg/cm2 以上が望ましい。
【0040】
耐熱強度:バルブまたはパネルの内外に水と湯による温度差を与えて破壊するときの温度差を測定した(単位:℃、5個の平均値)。ブラウン管、PDP、VFDを製造する際の熱処理工程で発熱する熱応力を考慮すると、通常この耐熱強度は45℃以上が望ましい。
【0041】
例1、2は、熱膨張係数の比較的大であるジルコンおよびアルミナの合量が少ないため、耐水圧強度が例4より高めであり、例6も熱膨張係数の比較的大であるジルコン、ムライトおよびアルミナの合量が少ないため、耐水圧強度が例7より高めである。
【0042】
【表1】
Figure 0004154790
【0043】
また、本発明の低融点ガラスを基体被覆用、導電性ペーストのバインダ用、隔壁形成用として用いた場合の例を表2に示す。表ではそれぞれ「被覆」、「導体」、「隔壁」として示した。それぞれ、表中の焼成温度で焼成した場合の焼結性と平均熱膨張係数とを記載した。例12〜20は実施例、例21は比較例である。なお、焼結性の評価は、焼成後の焼結体の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、ボイド割合(空孔割合)が20%未満のものを焼結性良とし、20%以上のものを焼結性不良とした。
【0044】
被覆用に用いる場合として表2に示す割合で低融点ガラスの粉末と低膨張セラミックスフィラー粉末を混合し、エチルセルロースを溶解させたα−テルピネオールからなるビヒクルと混練し、ペースト化した。そのペーストをスクリーン印刷し、乾燥後、表の焼成温度で焼成した。焼結性、平均熱膨張係数(50〜250℃)を表2に示す。
【0045】
導電性ペーストに用いる場合としては、表2に示す割合で、Ag、Al等の導電性粉末と低融点ガラスの粉末を混合し、エチルセルロースを溶解させたα−テルピネオールからなるビヒクルと混練し、ペースト化した。そのペーストを所定のパターンにスクリーン印刷し、乾燥後、表の焼成温度で焼成し、導体パターンを形成した。焼結性、平均熱膨張係数(50〜250℃)を表2に示す。
【0046】
PDP、VFDの隔壁用に用いる場合としては、表2に示す割合で、低融点ガラスの粉末と低膨張セラミックスフィラー粉末を混合し、エチルセルロースを溶解させたα−テルピネオールからなるビヒクルと混練し、ペースト化した。そのペーストをスクリーン印刷し、乾燥後サンドブラストによりパターニングを行った。あるいはペースト中に感光性樹脂を混合し、スクリーン印刷し、乾燥後、露光し、エッチングによりパターン形成してもよい。パターン形成後、表の焼成温度で焼成し、所定の隔壁を形成した。焼結性、平均熱膨張係数(50〜250℃)を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 0004154790
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、鉛を全く含まず、ブラウン管、PDP、VFDの封着用、基体の被覆用、PDP、VFDなどの隔壁形成用の組成物、導電性ペーストなどの機能性ペースト等として用いるのに適する低融点ガラスが得られる。

Claims (6)

  1. 実質的にモル表示で、
    SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、
    ZnO 32〜73%、
    2 5 25〜50%、
    Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜 9%、
    Al 2 3 0〜20%、
    2 3 0〜30%、
    SiO 2 0〜20%、
    MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、
    からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末50〜100重量%と、低膨張セラミックスフィラー粉末0〜50重量%とからなる、基体の被覆用組成物。
  2. 低融点ガラスのP 2 5 が40モル%以下である請求項1記載の基体の被覆用組成物。
  3. 実質的にモル表示で、
    SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、
    ZnO 32〜73%、
    2 5 25〜50%、
    Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜 9%、
    Al 2 3 0〜20%、
    2 3 0〜30%、
    SiO 2 0〜20%、
    MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、
    からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末50〜100重量%と、低膨張セラミックスフィラー粉末0〜50重量%とからなる、プラズマディスプレイパネルまたは蛍光表示管用の隔壁形成用組成物。
  4. 低融点ガラスのP 2 5 が40モル%以下である請求項3記載の隔壁形成用組成物。
  5. 無機成分が、実質的にモル表示で、
    SnOに換算したスズ酸化物 2〜37.5%、
    ZnO 32〜73%、
    2 5 25〜50%、
    Li 2 O+Na 2 O+K 2 O 0〜 9%、
    Al 2 3 0〜20%、
    2 3 0〜30%、
    SiO 2 0〜20%、
    MgO+CaO+SrO+BaO 0〜30%、
    からなり、SnOに換算したスズ酸化物のZnOに対するモル比が1未満である低融点ガラスの粉末1〜50重量%、導電性粉末50〜99重量%および低膨張セラミックスフィラー粉末0〜10重量%からなる、導電性ペースト。
  6. 低融点ガラスのP 2 5 が40モル%以下である請求項5記載の導電性ペースト。
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