JP4154112B2 - 緩衝器付きキャスター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベビーカー、車椅子等の台車に取り付けられる緩衝器付きキャスターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、キャスターに加わる衝撃を吸収する構造として、車体側に結合されるブラケットと、ブラケットに回動可能に連結され車輪を支持するリンクと、ブラケットとリンクの間に介装されるクッションゴムを備えるものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のキャスターにあっては、クッションゴムのバネ特性によって載せられる荷重および衝撃吸収効果が決まり、クッションゴムが堅すぎて初期作動が悪化したり、クッションゴムが柔らかすぎて沈み込みを起こす等の問題点があった。
【0004】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、キャスターに適した緩衝機構を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、車体側に結合されるブラケットと、ブラケットに回動可能に連結されるリンクと、リンクに回転可能に連結される車輪と、リンクの回動に伴ってピストンロッドが伸縮作動する油圧ダンパとを備え、油圧ダンパはシリンダチューブ内にガス室を設けることなく、作動油としてシリコンオイルを封入し、シリコンオイルの圧力によりブラケットに懸かる荷重を支持し、油圧ダンパが収縮するのに伴ってピストンロッドの侵入体積分だけシリコンオイルが圧縮され、シリンダチューブ内の圧力が上昇することにより油圧ダンパが車体に加わる荷重を支持するスプリングの機能を果たし、油圧ダンパは、ブラケットにシリンダチューブが連結し、さらにピストンロッドが、リンクのブラケットに対する連結点と車軸に対する連結点とを結ぶリンク中心線に対して交差し、かつ中心線を越えた位置で、リンクに対して連結し、またピストンロッドのリンクに対する連結点を、リンクの車輪に対する連結点よりもブラケットに対する連結点に近い位置に設けた。
【0010】
第2の発明は、第1における油圧ダンパにおいて、前記シリコンオイルの初期圧縮比の可変機構を設けた。
【0011】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、車体に加わる荷重に応じて油圧ダンパがシリコンオイルを圧縮しながら収縮し、リンクの傾きが決まる。車体に加わる荷重が大きい場合、油圧ダンパが収縮するのに伴ってシリコンオイルの圧縮特性により圧力が急上昇し、キャスターの沈み込みが抑えられ、リンクの動きを確保できる。シリコンオイルの初期圧縮比を変えると油圧ダンパの圧力上昇カーブも変わり、種々の減衰特性が得られる。シリコンオイルは一般の油圧機器に用いられる作動油に対して圧縮率が高いため、油圧ダンパの内部にガス室等を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0015】
第2の発明において、シリコンオイルの初期圧縮比の可変機構を設けたので、車体に加わる荷重に対応して圧縮比を調整し、適正な圧縮比で台車等を用いることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、キャスター1は台車等の車体に締結されるブラケット2と、ブラケット2に回動可能に支持されるリンク3と、リンク3の先端部に回転可能に支持される車輪4とを備える。車輪4はリンク3の先端部に締結されるボルト6により図示しないベアリングを介して回転可能に支持される。
【0018】
図2に示すように、ブラケット2はコの字形断面を持ち、その上部を貫通するボルト5によりベアリング7を介して車体に締結される。ブラケット2は垂直軸まわり(左右方向)に回動して車輪4が進行方向を向くようになっている。
【0019】
リンク3はボルト10を介してブラケット2に対して水平軸回り(上下方向)に回動可能に支持される。リンク3の回動基端部にはスリーブ11が固着され、スリーブ11はボルト10を介してブラケット2に回転可能に連結される。
【0020】
ブラケット2とリンク3の間には片ロッド型油圧ダンパ20が介装され、油圧ダンパ20はリンク3の回動に伴って伸縮するようになっている。
【0021】
図3に示すように、油圧ダンパ20は、ブラケット2にピン25を介して連結されるシリンダチューブ21と、リンク3にピン26を介して連結されシリンダチューブ21に摺動可能に嵌合するピストンロッド22と、ピストンロッド22に結合されるピストン23とを備える。
【0022】
シリンダチューブ21の開口端内面にねじ部21aが設けられて、円筒状のエンド部材29が螺合され、エンド部材29の内側にピストンロッド22が摺動可能に嵌合する。エンド部材29とピストンロッド22の間にはシールリング34が介装され、シリンダチューブ21内の密封がはかられる。
【0023】
ピストン23はシリンダチューブ21内を二つの油室27,28に仕切り、シリンダチューブ21とピストン23の間に各油室27,28を連通する環状隙間24が画成され、ピストン23の外周面はシリンダチューブ21の内周面に対して全周に渡って非接触となっている。
【0024】
そして本発明の要旨とするところであるが、油圧ダンパ20のシリンダチューブ21内に高粘度作動油としてシリコンオイルを充填する。シリコンオイルはジメチルポリシロキサン構造を持った合成油で、圧力を受けると粘度が急速に増加し、有機系オイルに比べて非常に大きな圧縮率を示す。シリコンオイルの圧縮率が高いため、油圧ダンパ20の内部にガス室等を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0025】
油圧ダンパ20が収縮するのに伴ってピストンロッド22の侵入体積分だけシリンダ チューブ21内のシリコンオイルが圧縮され、シリンダチューブ21内の圧力が上昇する。これにより、図4に実線で示すように、油圧ダンパ20が静止状態で支持する荷重はストローク(収縮量)に応じて増大し、この荷重のストロークに対する増加率はシリコンオイルの圧縮比に応じて高まる。
【0026】
油圧ダンパ20の収縮作動時に、環状隙間24を通るシリコンオイルが剪断と粘性抵抗を付与し、油圧ダンパ20の支持荷重が静特性の値より増大する。一方、油圧ダンパ20の伸張作動時に、環状隙間24を通るシリコンオイルが剪断と粘性抵抗を付与し、油圧ダンパ20の支持荷重が静特性の値より減少する。
【0027】
以上のように構成され、車体に加わる荷重に応じて油圧ダンパ20がシリコンオイルを圧縮しながら収縮し、リンク3の傾きが決まる。車体に加わる荷重が大きい場合、油圧ダンパ20が収縮するのに伴ってシリコンオイルの圧力が急上昇することにより、キャスター1の沈み込みが抑えられ、リンク3の動きを確保できる。
【0028】
車輪4が路面から受ける入力に応じて油圧ダンパ20が伸縮作動し、環状隙間24を通過するシリコンオイルの粘性抵抗が作動速度に応じて発生することにより、リンク3の揺動が有効に減衰される。
【0029】
こうして、油圧ダンパ20が車体に加わる荷重を支持するスプリングの機能と、リンク3の振動を減衰するダンパ機能を果たすため、キャスター1の部品点数を削減し、コンパクト化がはかれる。
【0031】
シリコンオイルが充填された油圧ダンパ20の開口端内面にねじ部21aを設け、ここにエンド部材29を螺合し、油室容積調整機構を構成する。この場合、エンド部材29をねじ部21aに沿って進退することができ、油室の容積を変更し、シリコンオイルの初期圧縮比を可変とすることができる。
【0032】
次に図5に示す第2の実施の形態を説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0033】
ピストン30はシリンダチューブ21の内周面に対して環状隙間24をもって対峙する円盤部31と、ピストンロッド22に嵌合しナット33を介して締結される円筒部32とを有する。
【0034】
この場合、ピストン30は、図3に示すピストン23に比べて小型化されている。ピストン30の体積が減少する分、油圧ダンパ20に充填されるシリコンオイルの体積が増加し、油圧ダンパ20を柔らかな緩衝特性にできる。
【0035】
また、ピストン30は円筒部32を介して軸方向の寸法を図3に示すピストン23と同等に形成することにより、ピストンロッド22等の設計変更をすることなく、ピストン30と23を交換することが可能となり、油圧ダンパ20の減衰特性を容易に変更できる。
【0036】
次に図6、7に示す第4の実施の形態を説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。なお図7において、図中上方向が油圧ダンパの圧縮方向、下方向が伸張方向である。
【0037】
本実施の形態は第1の実施の形態のピストン構造を変更したものである。すなわちピストン35にその軸方向に貫通する貫通通路40を設け、さらにピストン35の油圧ダンパの伸び側端面に貫通通路40に連通するように環状溝42を形成した。
【0038】
一方、ピストン35を取り付けるために、ピストンロッド22には、その油室側端部に小径の段部22aを設け、この段差に突き当たるようにスペーサ36を設置し、スペーサ36にスリーブ37を介してピストン35が取り付けられる。ピストンロッド22の段部22a側端部から円盤状の弁体38、ピストン35の順に挿入し、ピストンロッド22の段部22a側端部に形成された雄ネジにナット33を締結し、ピストン35が固定される。ここで弁体38の内径はスリーブ37の外径よりも大きく設定されており、ナット33の締結によっては、弁体38は固定されない。
【0039】
弁体38は、弁体38とスペーサ36の間に設置されたスプリング39の付勢力によって弁体38がピストン35側に押付けられて固定され、ピストン35の端面に設けられた環状溝42を閉鎖する。
なお弁体38の一部には環状溝42と油室50とを連通するオリフィス41が形成されている。
【0040】
このように構成されて、ピストンロッド22が伸び側に移動する時にはオリフィス41を通じて作動油が、油室50から環状溝42、貫通通路40を通じて油室51に移動するのみであり、発生する減衰力は比較的高い減衰力を発生する。
【0041】
一方、ピストンロッド22が縮み側に移動する時には、油室51の作動油が貫通通路40と環状溝42を通じてオリフィス41から油室50に導入されるとともに、環状溝42内の油圧がスプリング39の弁体38への付勢力より大きくなるとスプリング39が縮み、弁体38が軸方向に移動し、環状溝42が開放される。よって発生する減衰力は、貫通通路40によってのみその特性が決定されることになると考えてよい。すなわち圧側の減衰特性は貫通通路40をオリフィスとして考えて決定することができる。
【0042】
このような構成とすることで、より正確に減衰力を発生することができるとともに、減衰力のチューニングの範囲をより広範囲にかつ容易に行うことができる。
【0043】
なお本実施形態においてはピストン35に環状溝を設けたが、これにとらわれることはなく、通常のピストンの如く、ピストンを貫通するオリフィスと、同じく貫通する通路を設け、この通路の開口を開閉する弁体を設けてもよい。
【0044】
さらに油漏れを防止するため、シール部に砂や泥等のダストが侵入しないように、リンク3に接続される側のピストンロッド22の取付端部44の外周と、シリンダチューブ21の外周との間を覆うダストカバー43が設けられている。
【0045】
なお、前記キャスター1は荷物を運搬する台車に限らず、例えば車椅子、ベビーカー等にも用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すキャスターの側面図。
【図2】同じくキャスターの正面図。
【図3】同じく油圧ダンパの断面図。
【図4】同じく油圧ダンパのストロークと荷重の関係を示す特性図。
【図5】第2の実施の形態を示す油圧ダンパの断面図。
【図6】第3の実施の形態を示す油圧ダンパの断面図。
【図7】第3の実施の形態の要部拡大図。
【符号の説明】
1 キャスター
2 ブラケット
3 リンク
4 車輪
20 油圧ダンパ
21 シリンダチューブ
22 ピストンロッド
23 ピストン
24 環状隙間
30 ピストン
31 円盤部
32 円筒部
Claims (2)
- 車体側に結合されるブラケットと、前記ブラケットに回動可能に連結されるリンクと、前記リンクに回転可能に連結される車輪と、前記リンクの回動に伴ってピストンロッドが伸縮作動する油圧ダンパとを備え、前記油圧ダンパはシリンダチューブ内にガス室を設けることなく、作動油としてシリコンオイルを封入し、前記シリコンオイルの圧力によりブラケットに懸かる荷重を支持し、前記油圧ダンパが収縮するのに伴って前記ピストンロッドの侵入体積分だけ前記シリコンオイルが圧縮され、前記シリンダチューブ内の圧力が上昇することにより前記油圧ダンパが車体に加わる荷重を支持するスプリングの機能を果たし、前記油圧ダンパは、前記ブラケットに前記シリンダチューブが連結し、さらに前記ピストンロッドが、前記リンクの前記ブラケットに対する連結点と前記車軸に対する連結点とを結ぶリンク中心線に対して交差し、かつ前記中心線を越えた位置で、前記リンクに対して連結し、また前記ピストンロッドの前記リンクに対する連結点を、前記リンクの車輪に対する連結点よりもブラケットに対する連結点に近い位置に設けたことを特徴とする油圧緩衝器付きキャスター。
- 前記シリコンオイルの初期圧縮比の可変機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器付きキャスター。
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