JP4152454B2 - アルカリ亜鉛電池用セパレータ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータとこれを用いたアルカリ亜鉛蓄電池に関するもので、さらに詳しく言えば、負極に亜鉛を使用し、電解液にアルカリ水溶液を使用する、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、マンガン−亜鉛蓄電池、空気−亜鉛蓄電池等のようなアルカリ亜鉛蓄電池に適用できるセパレータとこれを用いたアルカリ亜鉛蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
負極に亜鉛を使用し、電解液にアルカリ水溶液を使用するアルカリ亜鉛蓄電池は、高エネルギー密度を有し、カドミウムや水銀等の有害物質を含まず、安価であるといった長所を有しているため、実用化が期待されている。
【0003】
しかしながら、電解液であるアルカリ水溶液に対して亜鉛が高い溶解度を示すことに起因して、負極のシェイプチェンジや負極におけるデンドライトの発生といった問題があり、その結果、上記したアルカリ亜鉛蓄電池は容量低下や内部ショートが生じやすく、実用化に至っていないのが現状である。
【0004】
このような問題を解決するため、従来のアルカリ亜鉛蓄電池ではセパレータにセロハンが用いられていた。セロハンは電解液中で容易に膨潤し、抵抗も比較的低く、しかもアルカリ水溶液によってセロハンが劣化するまでは十分内部ショートを防止する効果があった。ところが、セロハンがアルカリ水溶液によって劣化すると、上記した効果を維持することが困難になるという問題があった。これは、セロハンを構成するセルロースの高分子主鎖間のアセタール結合がアルカリ水溶液によって分解されて、セルロース骨格が切断されるためであると考えられている。
【0005】
一方、セロハンに代わるものとしてはポリビニルアルコール膜がある。このポリビニルアルコール膜は高分子主鎖内にアセタール結合を含まないため、セロハンに比べて耐アルカリ性にすぐれており、内部ショートを防止する効果もある。しかし、ポリビニルアルコール自体は水に可溶性であるため、アルカリ水溶液中で徐々に溶解して、上記した効果を維持することが困難になるという問題があった。そこで、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間を架橋し、アルカリ水溶液中での溶解による劣化を抑制する試みがなされてきた。このような架橋構造を有するポリビニルアルコール膜の代表的なものとして、硼酸等の無機物、アルデヒド、ジアルデヒド等の有機物を架橋剤として添加した化学架橋によるものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような化学架橋によって得た架橋構造を有するポリビニルアルコール膜は、架橋剤とポリビニルアルコールのアルコール基との間にアセタール結合またはこれに準ずる結合を作ってポリビニルアルコールの高分子主鎖間を結合しようとするものであった。しかし、アセタール結合は前述した如く、アルカリ水溶液中で比較的容易に分解されてしまうため、内部ショートを防止する効果の持続性に欠けるという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、架橋構造を有するポリビニルアルコール膜を備えたアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記架橋構造を有するポリビニルアルコール膜は、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間がエーテル結合によって直接架橋された構造と、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間が炭素−炭素結合によって直接架橋された構造とを備えたこと、および、前記架橋構造を有するポリビニルアルコール膜を60℃、8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に40日間浸漬した後、負極と正極と銅メッシュに酸化亜鉛を塗布してなるショートセンサーとを正極/不織布/セロハン/ショートセンサー/不織布/試料/不織布/負極のように配置して極群とし、電解液として8モル/lの水酸化カリウム水溶液を注液し、正極の容量が30mAh/cm 2 、負極の容量が120mAh/cm 2 となるようにしたモデルセルに組み込み、このモデルセルを60℃の雰囲気下で300mA/cm 2 の電流密度で通電して充電し、前記ショートセンサーの負極に対する電位が低下し始める時点の電気量(ショート発生充電電気量またはSMC値)が70mAh/cm2以上であることを特徴とするものである。ポリビニルアルコールの高分子主鎖間にアルカリ水溶液中で安定な炭素−炭素結合やエーテル結合が形成され、アルカリ水溶液中で長期間安定なポリビニルアルコール膜を得ることができる。
【0009】
また、請求項1記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいては、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間が直接架橋された構造は、架橋構造を有するポリビニルアルコール膜のアルカリ水溶液中での膜抵抗が350mΩ・cm2 以下であることが好ましく、これにより、アルカリ水溶液中で、充放電に伴うイオンの移動に与える影響を小さくすることができるポリビニルアルコール膜であることが判別できる。
【0010】
また、請求項1記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいては、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間が直接架橋された構造は、架橋構造を有するポリビニルアルコール膜をアルカリ水溶液中に浸漬させた後、イオン交換水中での煮沸前の乾燥重量に対する煮沸後の乾燥重量(ゲル分率)が67%以上であることが好ましく、これにより、アルカリ水溶液中で長期間安定なポリビニルアルコール膜であることが判別できる。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいて、エーテル結合によって直接架橋された構造および前記炭素−炭素結合によって直接架橋された構造は、ポリビニルアルコール膜を沸点以下のアルカリ水溶液に浸漬し、水洗し、乾燥する工程を含むことによって、前記ポリビニルアルコール膜の一部分を酸化する第1工程と、前記一部分を酸化したポリビニルアルコール膜に電子線を照射する第2工程とによって得られたものであることを特徴とするものであリ、前記第1工程によってポリビニルアルコールの一部分に共役二重結合を生成させ、前記第2工程によって前記共役二重結合をポリビニルアルコールの高分子主鎖間が直接架橋された構造に変化させて、アルカリ水溶液中で長期間安定なポリビニルアルコール膜を得ることができる。
【0012】
また、請求項2記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいては、第2工程は脱酸素雰囲気下で電子線を照射する工程を含むことが好ましく、これにより、ポリビニルアルコールの一部分に生成した共役二重結合を容易にポリビニルアルコールの高分子主鎖間が直接架橋された構造に変化させることができる。
【0014】
また、請求項1〜2のいずれか一項記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータを備え、このアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータのポリビニルアルコール膜を負極側に対向させたことにより、内部ショートが生じることのないアルカリ亜鉛蓄電池を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
本発明の実施の形態に係るアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータに関し、種々の架橋構造を有するポリビニルアルコール膜について以下の評価試験を行った。
【0018】
(評価試験1)
市販の未架橋のポリビニルアルコール膜(試料A)、試料Aのポリビニルアルコール膜に特開昭52−35839号公報に示された方法で硼素架橋した膜(試料B)、試料Aのポリビニルアルコール膜に特開昭53−95241号公報に示された方法でアセタール結合を生成させた膜(試料C)、試料Aのポリビニルアルコール膜に温度が20℃、酸素濃度が100PPM以下の雰囲気下で総照射線量100Mradの電子線を照射した膜(試料D)、試料Aのポリビニルアルコール膜に温度が180℃の空気中で1時間熱処理した後、温度が20℃、酸素濃度が100PPM以下の雰囲気下で総照射線量100Mradの電子線を照射した膜(試料E)、試料Aのポリビニルアルコール膜を温度が80℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に18時間浸漬した後水洗し、乾燥させた後、温度が20℃、酸素濃度が100PPM以下の雰囲気下で総照射線量100Mradの電子線を照射した膜(試料F)、試料Aのポリビニルアルコール膜を温度が80℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に18時間浸漬した後水洗し、乾燥させた後、180℃の空気中で1時間熱処理した後、温度が20℃、酸素濃度が100PPM以下の雰囲気下で総照射線量100Mradの電子線を照射した膜(試料G)を準備し、それぞれの5cm×5cmのサンプルを温度が60℃の雰囲気下で1時間乾燥させた乾燥重量に対する、前記サンプルをイオン交換水200mlを沸騰させた中に入れ、5分間煮沸させた後60℃の雰囲気下で1時間乾燥させた乾燥重量(ゲル分率)を測定し、結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から、未架橋のポリビニルアルコール膜(試料A)、硼素架橋した膜(試料B)、未処理で電子線照射した膜(試料D)はゲル分率が0%であった。このことは試料Aは未架橋であり、試料Bは架橋の強度が小さく、試料Dはほとんど架橋していないため、沸騰水中でポリビニルアルコール膜が溶解したことによるものである。これに対し、アセタール結合を生成させた膜(試料C)、熱処理後電子線照射した膜(試料E)、水酸化カリウム水溶液中に浸漬した後水洗し、乾燥させた後電子線照射した膜(試料F)、水酸化カリウム水溶液中に浸漬した後水洗し、乾燥させた後、熱処理した後電子線照射した膜(試料G)はゲル分率が85%以上あった。このことは試料Cのアセタール結合、試料E,F,Gで生成した架橋は架橋の強度が大きく、沸騰水中でも不溶分がゲルとして残ったことによるものである。
【0021】
(評価試験2)
評価試験1で作製した試料C,E,F,Gを温度が60℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に5日間浸漬した後、水洗し、乾燥し、評価試験1と同様の方法でゲル分率を測定し、結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から、試料E,F,Gで生成した架橋のものはゲル分率がほぼ95%以上であったのに対し、試料Cのアセタール結合のものはゲル分率が67%になったことがわかる。このことは試料E,F,Gで生成した架橋を有するポリビニルアルコール膜はアルカリ水溶液中に浸漬しても架橋がほとんど切断されずに安定に存在していることを示し、試料Cのアセタール結合を有するポリビニルアルコール膜はアルカリ水溶液中に浸漬したことによって架橋が切断されたことを示している。
【0024】
(評価試験3)
評価試験1で作製した試料C,D,E,F,Gを白金電極間に介在させ、温度が25℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中で周波数1000kHzの交流信号を印加し、その電気抵抗の変化分から膜抵抗を測定し、結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3から、試料Cは膜抵抗が154mΩ・cm2 で最も大きかったが、アルカリ水溶液中でのイオンの移動に与える影響が大きくなり、負極のシェイプチェンジが加速されて容量の低下が生じやすくなる350mΩ・cm2 以下であるので、膜抵抗だけで判断する限りではいずれの試料もイオンの移動に与える影響は小さく、負極のシェイプチェンジが加速されて容量の低下は生じにくいと考えられる。
【0027】
(評価試験4)
評価試験1で作製した試料A〜Gおよびセロハン(試料H)について、その 耐ショート性を定量化するために次のようなモデルセルを作製し、その充電時に発生するショート時の電気量(ショート発生充電電気量またはSMC値)を測定した。すなわち、前記モデルセルは、厚みが0.1mm、寸法が2cm×2cmの銅のパンチングメタルを集電体とし、その両面に酸化亜鉛粉末80部、亜鉛粉末20部、ポリテトラフルオロエチレン粒子3部からなる負極活物質を塗布し、多孔度を50%とした負極と、寸法が2cm×2cmの水酸化ニッケルを主体とする焼結式ニッケル極からなる正極と、寸法が2cm×2cmの銅メッシュに酸化亜鉛粉末100部、ポリテトラフルオロエチレン粒子3部からなる活物質を塗布し、多孔度を50%としたショートセンサーとを、正極/不織布/セロハン/ショートセンサー/不織布/試料/不織布/負極のように配置して極群とし、電解液としての8モル/lの水酸化カリウム水溶液を、極群が完全に浸漬される程度まで注液したもので、正極の容量が30mAh/cm2 、負極の容量が120mAh/cm2 になるようにしたものである。なお、前記試料A〜Gおよびセロハン(試料H)は、それぞれを温度が60℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に40日間(温度が20℃であれば2年間に相当する期間)浸漬した後モデルセルに組み込んでいる。そして、このモデルセルを60℃の雰囲気下で、300mA/cm2 の電流密度で正極から負極に通電して充電し、ショートセンサーの電位が低下し始める時点の電気量をショート発生充電電気量またはSMC値として測定したもので、測定した結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】
表4から、未架橋のポリビニルアルコール膜(試料A)、硼素架橋した膜(試料B)、アセタール結合生成させた膜(試料C)及びセロハン(試料H)のSMC値はほぼ同程度であったことがわかる。また、未処理で電子線照射した膜(試料D)も前記した試料A,B,C,HのSMC値より高いもののほぼ同程度であったことがわかる。このことは、前記試料A,B,C,D,Hは耐ショート性の点で不十分であるということである。これに対し、熱処理後電子線照射した膜(試料E)、水酸化カリウム水溶液中に浸漬した後水洗し、乾燥させた後電子線照射した膜(試料F)、水酸化カリウム水溶液中に浸漬した後水洗し、乾燥させた後、熱処理した後電子線照射した膜(試料G)は前記試料Aに対して3〜10倍高い耐ショート性を有していることがわかる。このことは、前記試料E,F,Gで生成した架橋は内部ショートを防止する効果にもすぐれているということである。すなわち、60℃の8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に40日間浸漬することによって、試料B,Cの架橋の効果はほとんど失われてしまうのに対し、試料E,F,Gの架橋の効果は十分維持できるということである。
【0030】
一方、セロハン(試料H)を、温度が60℃、濃度が8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に2時間浸漬した後前記モデルセルに組み込み、同様の方法でSMC値を測定したところ、70mAh/cm2 であり、初期においてはセロハンは十分耐ショート性を有しているから、前記試料E,F,Gのものは初期のセロハン以上の耐ショート性を長期間維持していることになる。
【0031】
また、評価試験2で測定したゲル分率と本評価試験4で測定したSMC値との相関性は不明であるが、試料Cは評価試験2で測定したゲル分率が67%、言い換えれば約3分の1の架橋が切断されたことになり、その結果本評価試験4で測定したSMC値が23mAh/cm2 となったことから、少なくとも67%以上のゲル分率が必要であると判断することもできる。
【0032】
(評価試験5)
評価試験1の試料Eを作製する際に行った熱処理の時間を1時間とし、熱処理の温度を120〜220℃の範囲で変化させ、評価試験2で測定したゲル分率、評価試験3で測定した膜抵抗および評価試験4で測定したSMC値をそれぞれ測定し、結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】
表5から、熱処理の時間を1時間とした場合、ゲル分率は140〜220℃の温度範囲で80%以上であり、膜抵抗は120〜200℃の温度範囲で104〜199mΩ・cm2 であり、SMC値は140〜220℃の温度範囲で120mAh/cm2 以上であることがわかる。このことから、熱処理の時間を1時間とした場合の温度は140〜200℃の範囲が最も好ましく、必要に応じて120〜220℃の範囲で選択することができる。
【0035】
(評価試験6)
評価試験1の試料Eを作製する際に行った熱処理の温度を180℃とし、熱処理の時間を5分間〜3時間の範囲で変化させ、評価試験5と同様にゲル分率、膜抵抗およびSMC値をそれぞれ測定し、結果を表6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
表6から、熱処理時間を5分間〜3時間の範囲で変化させても、ゲル分率、SMC値はほとんど変化しないが、熱処理時間を3時間にすると膜抵抗は前記評価試験5における熱処理温度を200℃とした場合と同程度に高くなることがわかる。このことから、熱処理時間は膜抵抗を考慮して5分間〜3時間とすることが好ましい。
【0038】
(評価試験7)
評価試験1の試料Eを作製する際に行った照射線量を総量10〜200Mradの範囲で変化させ、評価試験5と同様にゲル分率、膜抵抗およびSMC値をそれぞれ測定し、結果を表7に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
表7から、膜抵抗は照射線量が総量10〜200Mradの範囲でほとんど変化はなく、その値もイオンの移動に与える影響が大きくなる350mΩ・cm2 以下であるが、ゲル分率とSMC値とは照射線量が総量30Mrad以上であればそれぞれ78%以上、120mAh/cm2 以上になることがわかる。このことから、照射線量は総量が30〜200Mradの範囲とするのがよいことがわかる。なお、前記評価試験7では、1回の照射線量を10Mradとして1〜20回としたが、必要に応じて1回の照射線量を増減させて照射する回数を増減できることは言うまでもない。
【0041】
(評価試験8)
評価試験1の試料Fを作製する際に行った水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を8モル/lとし、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させ、評価試験5と同様にゲル分率、膜抵抗およびSMC値をそれぞれ測定し、結果を表8に示す。
【0042】
【表8】
【0043】
表8から、水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を8モル/lとし、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させても、ゲル分率は96%以上、膜抵抗は81mΩ・cm2 以下、SMC値は71mAh/cm2 以上であることがわかる。同様の試験を水酸化カリウム水溶液の温度を60℃,40℃、濃度を8モル/lとして行った場合、水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を2モル/l,4モル/lとして行った場合は、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させても、さらに良好な結果が得られた。このことから、浸漬する水酸化カリウム水溶液の温度は40〜80℃、濃度は2〜8モル/lで、浸漬する時間は1日〜1週間とするのが最も好ましく、必要に応じて温度は20〜80℃、濃度は2〜10モル/lで、浸漬する時間は1時間〜1か月間の範囲で選択することができる。
【0044】
(評価試験9)
評価試験1の試料Gを作製する際に行った水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を8モル/lとし、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させ、評価試験5と同様にゲル分率、膜抵抗およびSMC値をそれぞれ測定し、結果を表9に示す。
【0045】
【表9】
【0046】
表9から、水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を8モル/lとし、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させても、ゲル分率は92%以上、膜抵抗は138mΩ・cm2 以下、SMC値は102mAh/cm2 以上であることがわかる。同様の試験を水酸化カリウム水溶液の温度を60℃,40℃、濃度を8モル/lとして行った場合、水酸化カリウム水溶液の温度を80℃、濃度を2モル/l,4モル/lとして行った場合は、浸漬する時間を1時間〜1か月間の範囲で変化させても、さらに良好な結果が得られた。このことから、浸漬する水酸化カリウム水溶液の温度は40〜80℃、濃度は2〜8モル/lで、浸漬する時間は1日〜1週間とするのが最も好ましく、必要に応じて温度は20〜80℃、濃度は2〜10モル/lで、浸漬する時間は1時間〜1か月間の範囲で選択することができる。
【0047】
上記した評価試験5〜9から、熱処理時間を5分間〜3時間、温度を140〜200℃とし、電子線の照射線量を30〜200Mradとし、浸漬するアルカリ水溶液の温度を40〜80℃、濃度を2〜8モル/l、浸漬する時間を1日〜1週間とすれば、ゲル分率は67%以上、SMC値は70mAh/cm2 以上、膜抵抗は350mΩ・cm2 以下となることがわかる。このことから、試料E,F,Gの架橋の効果はゲル分率、SMC値、膜抵抗のいずれの面から見ても耐ショート性にすぐれたものであり、しかもその効果を長時間維持できることがわかる。この架橋は、ポリビニルアルコール膜を熱処理する工程または沸点以下のアルカリ水溶液に浸漬し、水洗し、乾燥する工程の、少なくとも一方を含む第1工程でポリビニルアルコールの高分子主鎖間に共役二重結合を導入し、脱酸素雰囲気下で電子線を照射する第2工程で前記共役二重結合間を炭素−炭素結合やエーテル結合に変化させて高分子主鎖間を架橋させる直接架橋であり、そのためアルカリ電解液中でも長期間安定性を維持できるという特徴を有している。
【0048】
次に、本発明のセパレータを用いたアルカリ亜鉛蓄電池の充放電サイクル寿命を調査するために、評価試験4で作製したモデルセルとは、寸法が15cm×10cmであること以外は同じ構成である正極と参照電極に対応する負極を用い、電解液として8モル/lの水酸化カリウム水溶液を全空隙に対して90〜95%注液して容量が30Ahの蓄電池を作製した。なお、作製した蓄電池(a)〜(e)の正極、負極間の構成は以下のとおりである。
【0049】
(a)正極/厚み100μmセルロース系不織布/ポリオレフィン系微孔膜/試料Eの直接架橋ポリビニルアルコール膜/厚み100μmセルロース系不織布/負極
(b)正極/厚み100μmセルロース系不織布/ポリオレフィン系微孔膜/試料Fの直接架橋ポリビニルアルコール膜/厚み100μmセルロース系不織布/負極
(c)正極/厚み100μmセルロース系不織布/ポリオレフィン系微孔膜/試料Gの直接架橋ポリビニルアルコール膜/厚み100μmセルロース系不織布/負極
(d)正極/厚み100μmセルロース系不織布/ポリオレフィン系微孔膜/試料Aの未架橋ポリビニルアルコール膜/厚み100μmセルロース系不織布/負極
(e)正極/厚み100μmセルロース系不織布/ポリオレフィン系微孔膜/セロハン/厚み100μmセルロース系不織布/負極
【0050】
上記した各蓄電池を、温度が25℃の雰囲気下で、充電電流3A、平均放電電流9Aの電気自動車走行時の放電パターンをモデル化した放電深度(DOD)80%で充放電サイクル寿命試験を行い、100サイクルまでの放電容量の変化を測定し、結果を図1に示す。
【0051】
図1から、本発明のセパレータを用いた蓄電池(a)〜(c)は100サイクル経過後も容量が初期容量の90%程度あり、未架橋のポリビニルアルコール膜やセロハンといった従来のセパレータを用いた蓄電池(d),(e)より初期容量の低下が小さくなることがわかる。このことから、直接架橋されたポリビニルアルコール膜をセパレータに用いたことにより、内部ショートを長期間に渡って十分抑制することができるとともに、充放電サイクル寿命も改善できることがわかる。
【0052】
上記した実施例では、直接架橋されたポリビニルアルコール膜の正極側にポリオレフィン系微孔膜を配設しているが、これは過充電時に発生する酸素ガスによりポリビニルアルコール膜が酸化を受けるのを抑制するためのものである。電池の充電方法によっては必ずしも必要とするものではなく、ポリオレフィン系微孔膜と正極との間、直接架橋されたポリビニルアルコール膜と負極との間に不織布を介在させているが、この不織布は正極、負極が電解液に均一にかつ十分に濡れるようにするためのものでポリオレフィン系微孔膜や直接架橋されたポリビニルアルコール膜によって正極、負極が電解液に均一かつ十分に濡れるようであれば、特に必要とするものではない。
【0053】
【発明の効果】
上記した如く、本発明のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータは耐ショート性が高く、その効果も長期間持続させることができ、これを用いたアルカリ亜鉛蓄電池は充放電サイクルの経過に伴う容量低下も小さく、アルカリ亜鉛蓄電池の用途の拡大に寄与するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータと従来のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータを用いたアルカリ亜鉛蓄電池の充放電サイクルと放電容量との関係を示した図である。
Claims (2)
- 架橋構造を有するポリビニルアルコール膜を備えたアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記架橋構造を有するポリビニルアルコール膜は、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間がエーテル結合によって直接架橋された構造と、ポリビニルアルコールの高分子主鎖間が炭素−炭素結合によって直接架橋された構造とを備えたこと、および、前記架橋構造を有するポリビニルアルコール膜を60℃、8モル/lの水酸化カリウム水溶液中に40日間浸漬した後、負極と正極と銅メッシュに酸化亜鉛を塗布してなるショートセンサーとを正極/不織布/セロハン/ショートセンサー/不織布/試料/不織布/負極のように配置して極群とし、電解液として8モル/lの水酸化カリウム水溶液を注液し、正極の容量が30mAh/cm 2 、負極の容量が120mAh/cm 2 となるようにしたモデルセルに組み込み、このモデルセルを60℃の雰囲気下で300mA/cm 2 の電流密度で通電して充電し、前記ショートセンサーの負極に対する電位が低下し始める時点の電気量(ショート発生充電電気量またはSMC値)が70mAh/cm2以上であることを特徴とするアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータ。
- 前記エーテル結合によって直接架橋された構造および前記炭素−炭素結合によって直接架橋された構造は、ポリビニルアルコール膜を沸点以下のアルカリ水溶液に浸漬し、水洗し、乾燥する第1工程と、前記第1の工程を経たポリビニルアルコール膜に電子線を照射する第2工程とによって得られたものであることを特徴とする請求項1記載のアルカリ亜鉛蓄電池用セパレータ。
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JP19946396A JP4152454B2 (ja) | 1996-07-29 | 1996-07-29 | アルカリ亜鉛電池用セパレータ |
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