JP2001250529A - アルカリ二次電池 - Google Patents

アルカリ二次電池

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JP2001250529A
JP2001250529A JP2000058330A JP2000058330A JP2001250529A JP 2001250529 A JP2001250529 A JP 2001250529A JP 2000058330 A JP2000058330 A JP 2000058330A JP 2000058330 A JP2000058330 A JP 2000058330A JP 2001250529 A JP2001250529 A JP 2001250529A
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Japan
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oxide
positive electrode
separator
secondary battery
alkaline secondary
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JP2000058330A
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English (en)
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Juichi Ino
寿一 猪野
Shuhei Nagakubo
周平 長久保
Yoshiyuki Okui
良幸 奥井
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
Original Assignee
Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 セパレータの正極側または正極に無機物を存
在させることにより、正極側でのセパレータの耐酸化性
が向上し、セパレータの親水基の正極側における劣化を
防止、さらに負極側での酸素ガス吸収反応よくすること
でサイクル寿命特性のよいアルカリ二次電池を提供す
る。 【解決手段】 セパレータの正極側または正極に無機物
が存在することを特徴とするアルカリ二次電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、長期サイクル特
性および自己放電特性に優れたアルカリ二次電池に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年における各機械工具の電化、通信機
器の小型携帯化および自動車をはじめとする輸送車両の
電動化に伴い、さらに小型でかつ大容量の電池が市場か
ら求められるようになってきている。現在、利用形態に
適合させた各種の電池が存在するが、例えば小型携帯機
器には、漏液に対する安全性や取り扱いの簡便さなどか
ら密閉型電池が主に使用されている。また、自動車用蓄
電地、電気自動車用電池または電動工具などには、鉛蓄
電地、ニッケルカドミウム電池またはニッケル水素電池
が使用されている。これら電池の中でも、最近の環境問
題に対する配慮から、地球に優しいニッケル水素電池
が、各利用分野で採用され始めており、その採用率も日
増しに高くなってきている。ニッケル水素電池は、最近
話題のハイブリッド電気自動車に搭載されており、その
需要が大きく伸びるものと予想される。
【0003】また、電池性能に対する要求は高まる一方
であり、小型大容量化と共に、従来以上の過酷な条件下
で十分な性能を発揮しうる耐久性が求められている。
【0004】従来のアルカリ二次電池は、正極と負極の
間に電解液を保持するものとしてポリアミド繊維の不織
布やポリオレフィン系繊維の不織布が主に使用されてお
り、電解液の保液性(以下、単に「保液性」とする)を
よくするために表面に親水化処理、例えば界面活性剤の
付与、コロナ放電もしくはプラズマ放電、親水基のグラ
フト重合化またはスルホン基(-SO3H)を導入するなどが
行われている。
【0005】ところが、ポリオレフィン不織布に上記の
親水化処理を施した場合では、保液性が充分でなかっ
た。特に電池が高温になるような場合やまた過充電時に
正極で発生する酸素ガスに触れるなど過酷な状態におか
れた場合、高濃度のアルカリに曝される電解液中におい
ては、親水基が反転や分解して親水性を保つことができ
なかった。
【0006】そのため電解液の保持性が不充分となり、
長期サイクルや高温サイクル時に充分な特性が得られな
かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題を解決す
るために、特開平11−126595号公報では不織布
表面に無機酸化物微粒子を付着させ良好な親水性を得て
いるが、負極側も同じ構造であるため、負極表面で必要
以上に保液性がよく、必要な気相−液相−固相の3相界
面を形成することが難しかった。そのため酸素ガス吸収
反応が悪くなり、内圧上昇や電解液の分解などが起こ
り、充分な長期サイクル特性が得られないなどの問題点
があった。
【0008】この発明は、このような従来技術に存在す
る問題に着目してなされたものである。その目的とする
ところは、セパレータの正極側または正極に無機物を存
在させることにより、正極側でのセパレータの耐酸化性
が向上し、セパレータの親水基の正極側における劣化を
防止、さらに負極側での酸素ガス吸収反応よくすること
でサイクル寿命特性のよいアルカリ二次電池を提供する
ことにある。
【0009】加えてセパレータ表面にスルホン基または
カルボキシル基が存在すると、サイクル寿命特性が良く
なると共に自己放電特性を向上させたアルカリ二次電池
を提供することができる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明のアルカリ二次電池は、セ
パレータの正極側または正極に無機物が存在するもので
ある。
【0011】請求項2に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項1に記載の発明において、セパレータに存在
する無機物の範囲が負極から10μm以上正極側である
ものである。
【0012】請求項3に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項1または2に記載の発明において、無機物が
酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸ス
トロンチウム、酸化ニオブ、ニオブ酸カリウム、チタン
酸カリウム、酸化錫、酸化イットリウム、酸化イッテル
ビウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化
銀、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化セリウ
ム、水酸化セリウム、酸化鉄、水酸化鉄、酸化インジウ
ム、酸化イリジウム、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、
酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ホルミウ
ム、水酸化マグネシウム、酸化マンガン、水酸化マンガ
ン、酸化ネオジウム、水酸化イットリウムおよび酸化ジ
ルコニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種類で
あるものである。
【0013】請求項4に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明におい
て、セパレータの正極側または正極に存在する無機物が
多孔質層を形成したものである。
【0014】請求項5に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項4に記載の発明において、多孔質層の厚さが
10nm〜100μmであるものである。
【0015】請求項6に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項4または5に記載の発明において、多孔質を
形成する無機粒子の粒径が1nm〜100μmであるもの
である。
【0016】請求項7に記載の発明のアルカリ二次電池
は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明におい
て、セパレータの表面に存在する親水基がスルホン基ま
たはカルボキシル基を含むものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につ
いて、詳細に説明する。このアルカリ二次電池は、無機
物がセパレータの正極側または正極に存在することでセ
パレータの保液性を向上し、負極側では無機物がないこ
とで酸素ガス吸収反応をよくしてサイクル寿命特性をよ
くしたものである。セパレータの正極側または正極に無
機物が存在すると正極側でのセパレータの耐酸化性が向
上し、セパレータの親水基の正極側における劣化を防止
することができる。この無機物がさらに多孔質層を形成
すると、充放電による正極膨張に伴う電解液の吸収が抑
制され、セパレータの保液性が高くなる。その結果内部
抵抗が低くなり、サイクル寿命特性をよくするためによ
り効果的となる。また無機物であることから、その耐熱
性、耐酸化性によって高温でのサイクル寿命などが一層
良くなることが考えられる。さらにセパレータ表面にス
ルホン基またはカルボキシル基を付与することで、同時
に自己放電特性を向上させることができる。
【0018】上記無機物は、酸化チタン、酸化タングス
テン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオ
ブ、ニオブ酸カリウム、チタン酸カリウム、酸化錫、酸
化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化アルミニウ
ム、酸化マグネシウム、酸化銀、酸化カルシウム、水酸
化カルシウム、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化
鉄、水酸化鉄、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化
ビスマス、水酸化ビスマス、酸化ジスプロシウム、酸化
エルビウム、酸化ホルミウム、水酸化マグネシウム、酸
化マンガン、水酸化マンガン、酸化ネオジウム、水酸化
イットリウムおよび酸化ジルコニウム等よりなる群から
選ばれた少なくとも1種類で、これらの無機物は、親水
性や耐酸化性が比較的高いため、この発明の無機物とし
て好適である。これらの無機物は、1種のみで使用され
ても十分にその効果を発揮うるものであるが、2種類以
上を併用されてもよい。
【0019】無機物をセパレータの正極側または正極に
存在させる方法はどのような方法でもよいが、セパレー
タ側に存在させる方法、正極側に存在させる方法、セパ
レータと正極の間に独立して存在させる方法が考えられ
る。
【0020】セパレータ側に存在させる場合は、少なく
とも正極と接する部分に存在し、負極側に接する部分を
除く部分に存在していればよい。具体的には無機物は少
なくとも正極側に接しており、負極側に接するセパレー
タ表面から厚さ方向に10μm以内に存在しなければよ
い。負極表面から10μm以内に存在するとガス吸収反
応が阻害されて、特性が劣化する可能性があるからであ
る。
【0021】セパレータの表面に付与する場合は、ゾル
ゲル法もしくは析出法などの湿式法、CVD法、スパッ
タ法または蒸着法によって無機物をセパレータ表面にコ
ーティングしてもよいし、粒子を分散させた溶液やスラ
リーを用いてコーティングしてもよい。また、無機物の
表面を持つ繊維をセパレータ表面に混合して付与した
り、無機物の表面を持つ繊維で不織布などを形成してセ
パレータ表面に積層する方法で付与されてもよい。ま
た、不織布やセパレータの空隙に上述のように負極から
10μmの範囲を除いて無機粒子を充填してもよい。
【0022】無機物の表面を持つ繊維は無機繊維でもよ
いし、ゾルゲル法もしくは析出法などの湿式法、CVD
法、スパッタ法または蒸着法によって無機物を有機繊維
表面にコーティングしたものでもよく、粒子を分散させ
た溶液やスラリーを用いてコーティングしたものでもよ
い。
【0023】粒子を分散させた溶液やスラリーを塗布す
る場合、粒子のみを塗布してもよく、塗布する溶液また
はスラリーの中に無機酸化物粒子と基材との付着力を高
めるために、ポリビニルアルコールやカルボキシメチル
セルロースなどの接着剤やポリエチレン、ポリプロピレ
ンのエマルジョン等を添加してもよい。また、無機粒子
を塗布後にこれらの接着剤を薄く被覆してもよい。
【0024】付与される無機物は多孔質層を形成する
と、充放電による正極膨張に伴う電解液の吸収が抑制さ
れ、セパレータの電解液保持性が高くなり、サイクル寿
命特性をよくするためにより効果的となる。
【0025】多孔質層を形成する方法はどのような方法
でもよいが、前記方法の内、粒子を分散させた溶液やス
ラリーを用いてコーティングする方法、または無機粒子
を分散させた溶液やスラリーを用いて有機繊維の表面を
コーティングした不織布などを形成してセパレータ表面
に積層する方法が簡便で好ましい。
【0026】形成される多孔質層の厚さは10nm〜10
0μmが好ましい。多孔質層の厚さが10nm以下である
と電解液のセパレータから正極への吸収を抑制すること
が難しく、多孔質層の効果が得られない。100μm以
上であると多孔質層が厚いためにイオン伝導性が悪くな
ると共にガス透過性が悪くなり、電池特性を劣化させる
ことになる。
【0027】多孔質層を無機粒子を用いて形成する場合
の粒子径は、1nm〜100μmであることが好ましく、
5nm〜10μmであることがさらに好ましい。1nm以下
であると形成される細孔が小さくなることで電解液を含
浸し難くなり、また含浸できた場合には電解液の移動が
難しくなり、内部抵抗上昇の原因となる。100μmよ
り大きいと充分なキャピラリー効果が得られず、また均
一な多孔質層の形成も困難になるためである。
【0028】使用される有機繊維または有機繊維で構成
される不織布やセパレータは通常セパレータに使用され
ているようなものでよく、ポリアミド繊維の不織布を用
いたもの、ポリオレフィン系繊維の不織布を用いたもの
などが挙げられる。ポリオレフィン系繊維の不織布を用
いる場合は乾式で成型されものでも、湿式抄紙されたも
のでもよく、分割繊維などを用いてもよい。さらにこれ
らにコロナ放電もしくはプラズマ放電処理の表面を施さ
れたものでもよい。自己放電などの特性を考慮した場
合、セパレータはアクリル酸をグラフト重合したものま
たはスルホン化処理したものを使用することが好まし
い。
【0029】スルホン化処理の方法は従来から用いられ
ているどのような処理方法を用いてもよい。例えば、亜
硫酸ガス(SO2)などのガスを用いてスルホン化処理を行
ってもよいし、発煙硫酸や濃硫酸を用いる方法でもよ
い。
【0030】なかでも発煙硫酸または濃硫酸中に浸漬し
て、基材にスルホン基(-SO3H)を導入する処理方法が好
ましい。これらの方法によれば、不純物イオンの溶出が
少なく、コロナ放電などに比べ電池の自己放電の増大を
著しく抑制できる電池セパレータが得られる。基材を発
煙硫酸に浸漬する場合、室温で発煙硫酸の濃度が20重
量%のときは20〜120分、5重量%のときは60〜3
00分間暴露することが好ましい。また、100〜12
0℃の濃硫酸に15分〜90分間基材を浸漬してもよ
い。
【0031】親水基の量に限定はなく、自己放電特性が
充分に改善される量であればよい。例えばスルホン化処
理において付与するイオウの量は、繊維表面積1m2当た
り1.0×10-5〜1.0×10-2molであることが好
ましく、さらには繊維表面積1m2当たり3.0×10-4
〜2.0×10-3molであることが好ましい。イオウの
量が1.0×10-5mol/m2未満では自己放電特性が改善
されず、1.0×10 -2mol/m2を越えると基材である不
織布の強度が弱くなり、セパレータとして使用できなく
なる。
【0032】グラフト重合処理を用いる場合、カルボキ
シル基を有するビニルモノマーとしては例えばアクリル
酸、メタクリル酸、前記アクリル酸やメタクリル酸のエ
ステル類を挙げることができる。前記ビニルモノマーの
中でもアクリル酸が好適である。
【0033】処理の方法は、まずポリオレフィン系繊維
の不織布をカルボキシル基を有するビニルモノマーを含
む溶液に浸漬して引き上げる。続いて前記不織布にエネ
ルギービームを照射して前記溶液の付着面において前記
ビニルモノマーをグラフト共重合させる。引き続き前記
不織布を洗浄して未反応のビニルモノマーを除去した
後、乾燥する。続いて不織布基材に電子線を照射し、カ
ルボキシル基を有するビニルモノマーを含む溶液に浸漬
して引き上げる。その後未反応アクリル酸を除去するた
めに熱水で洗浄し、乾燥させる方法がある。
【0034】また、ポリオレフィン系繊維の不織布に紫
外線照射をした後、アクリル酸水溶液に浸漬し、アクリ
ル酸モノマーをグラフト共重合させて親水性を付与する
などの方法も例示できる。
【0035】親水基の量に限定はなく、自己放電特性が
充分に改善される量であればよい。例えば前記不織布の
ビニルモノマーのグラフト共重合割合は、カリウムイオ
ン交換量で0.1〜2.0meq/gであることが好まし
い。前記イオン交換量を0.1meq/g未満にすると前記
セパレータの親水性が低下して高温保管時の容量維持率
が低下する恐れがある。一方前記イオン交換量が2.0
meq/gを越えると、このセパレータを備えたニッケル水
素二次電池を大電流放電した際、作動電圧が低下する恐
れがある。より好ましいグラフト共重合割合は、0.3
〜1.2meq/gである。
【0036】積層の方法に限定はないが、サーマルボン
ド(登録商標)のような熱加工、エンボス加工などが例
示できる。
【0037】正極側に存在させる場合は少なくともセパ
レータに接する部分に無機物が付与されていればよく、
内部に存在していても構わない。
【0038】正極側に無機物を付与する方法としては、
セパレータに付与する場合と同様にゾルゲル法もしくは
析出法などの湿式法、CVD法、スパッタ法または蒸着
法によって無機物をセパレータ表面にコーティングして
もよいし、粒子を分散させた溶液やスラリーを用いてコ
ーティングしてもよい。粒子を分散させた溶液を用いて
コーティングする場合、その溶液を塗布する方法や正極
をその溶液にディッピングする方法が考えられるが、溶
媒は電解液や純水のように電極反応に悪影響を及ぼさな
いものであればよく、無機粒子塗布後乾燥や洗浄で除去
できるようなアルコールなどでもよい。また、塗布後の
付着強度を高めるために、カルボキシメチルセルロース
などの接着剤を用いてもよい。また、正極活物質を金属
多孔体の中に充填する際に表面に活物質と同様に無機粒
子を充填してもよい。この際、正極内部に無機粒子が存
在していても構わない。
【0039】単独で多孔質層を形成する場合は、不織布
を心材としてそれにゾルゲル法もしくは析出法などの湿
式法、CVD法、スパッタ法または蒸着法によって無機
物をコーティングしたものを使用してもよいし、粒子を
分散させた溶液やスラリーを用いてコーティングしたも
のを使用してもよい。また、心材とする不織布に無機粒
子を充填してもよい。また、ポリエチレン、ポリプロピ
レン等のエマルジョンを用いてフィルム状の多孔質層を
形成してもよい。フィルムを形成する場合は、同時に低
分子量のポリビニルアルコールやカルボキシメチルセル
ロースを混合して用い、フィルム形成後にこれらを除去
して多孔質フィルムを作製することもできる。
【0040】これら単独でシートを作製した場合は、正
極側に付着して巻回してもよいし、セパレータ側に付着
して巻回してもよく、正極、多孔質層シート、セパレー
タをそれぞれ単独で巻回してもよい。さらにこのシート
をセパレータと積層して新たに無機物層を備えたセパレ
ータとしてもよい。
【0041】以上のように、無機物がセパレータの正極
側または正極に存在することで正極側でのセパレータの
耐酸化性が向上し、セパレータの親水基の正極側におけ
る劣化を防止することができる。さらに負極側では前記
無機物がないため、酸素ガス吸収反応が良くなり、サイ
クル寿命特性が向上する。この無機物がさらに多孔質層
を形成すると、充放電による正極膨張に伴う電解液の吸
収が抑制され、セパレータの保液性が高くなる。その結
果内部抵抗が低くなり、サイクル寿命の長いアルカリ二
次電池を作製することができる。さらに多孔質層が無機
物であることから、その耐熱性や耐酸化性によって高温
でのサイクル寿命などが一層良くなることが考えられ、
加えてセパレータ表面にスルホン基またはカルボキシル
基が存在することで自己放電特性も同時に向上すること
ができる。これらの特性により、このアルカリ二次電池
は、高温環境下で大電流を必要とする用途、例えば電動
工具や電気自動車などに適していると考えられる。
【0042】
【実施例】以下、実施例および比較例により、この発明
をさらに具体的に説明する。
【0043】[実施例1] (正極側に二酸化チタン(TiO2)多孔質層形成)正極を以
下の方法で作製した。導電材としてオキシ水酸化コバル
トをコーティングした水酸化ニッケル粉末に増粘剤を少
量添加してペースト状とした。また、無機微粒子として
粒径約1μmの酸化チタンを用い、増粘剤を少量添加し
たものを多孔質層形成のペーストとして準備した。ま
ず、活物質のペーストを発泡ニッケルに充填し、その後
多孔質層として酸化チタン粒子からなるペーストを表面
に充填した。これを乾燥した後、5,000kg/cm2でプ
レス成形し、正極とした。正極表面に形成された多孔質
層の厚さは、その断面を電子顕微鏡で観察したところ約
5μmであった。
【0044】つぎに負極を以下の方法で作製した。導電
補助剤としてニッケル(Ni)粉末を加えたミッシュメタル
合金に、増粘剤を少量添加してペースト状にし、その後
は正極の場合と同様にして負極を製造した。さらに、正
極は幅30mm、長さ175mmに、負極は幅30mm、長さ
225mmのサイズにカットし、これを試験用電極とし
た。
【0045】セパレータとしては、ポリプロピレンが芯
部ポリマーでポリエチレンが鞘部ポリマーである12μ
m径の芯鞘複合繊維を用いて、抄紙法により目付50g/m
2の不織布を形成し、表面温度120℃のカレンダーロ
ールに通して厚さ140μmに成形した。この不織布に
スルホン基を導入することにより、その表面を親水化処
理した。具体的には、以下の通りである。まず、不織布
に界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを
0.7重量%付着させ、これを濃度15mol%の発煙硫酸
を40℃に保った槽の中に10分間浸漬した。つぎに、
濃度が徐々に低くなるよう調整した低濃度の希硫酸の槽
に、この不織布を順次浸漬し最後に水洗して、40℃で
乾燥させ電池セパレータとした。
【0046】スルホン化処理を施された不織布につい
て、付与されたイオウの量を以下の方法で測定した。ま
ず、試料としてセパレータを0.5g取り、それを合剤
(酸化マグネシウム:炭酸ナトリウム=2:1)で充分
に覆い、800℃まで徐熱することで、試料に存在する
イオウを合剤と反応させた。反応によって生成された硫
酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムを濾液として採取
し、塩酸酸性にした後塩化バリウムを添加、硫酸バリウ
ムを沈殿させた。沈殿した硫酸バリウムから含有される
イオウの量を求めた。
【0047】測定の結果、不織布に付与されたイオウの
量は繊維表面積1m2当たり7.0×10-4molであっ
た。
【0048】作製された正負両電極および電池セパレー
タを、正負極間にセパレータがくるように同心円状に巻
き取り、サブCサイズの電池缶に投入した。その後、電
解液として30重量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液6g
を、電極の詰まった電池缶内に添加した。負極は電池缶
内側底面と、正極はNi端子を正極と電池蓋の間にスポッ
ト溶接することで導電を取り、正極−電池缶底部あるい
は負極−電池蓋部が電気的に接触するのを避けるために
テフロン(登録商標)シートで絶縁した。これに電池蓋
および蓋と缶側面のショートを避けるためのプラスチッ
クガスケットを被せてかしめることにより、円筒型電池
とした。この電池は、実際のアルカリ二次電池と同じ構
造をしており、電極とセパレータとの接触具合など、正
負極およびセパレータを同心円状に巻き取った円筒型電
池にしか現れない特性を敏感に反映することが可能であ
る。なお、負極容量は正極容量に対して約1.5倍とし
た。
【0049】[実施例2] (セパレータ側に多孔質層形成)正極については以下の
方法で作製した。導電材としてオキシ水酸化コバルトを
コーティングした水酸化ニッケル粉末に増粘剤を少量添
加してペースト状とした。このペーストを発泡ニッケル
に充填し乾燥させた後、5,000kg/cm2でプレス成形
し、正極とした。
【0050】また、負極については実施例1と同様に、
導電補助剤としてニッケル(Ni)粉末を加えたミッシュメ
タル合金に増粘剤を少量添加してペースト状にし、その
後は正極の場合と同様にして負極を製造した。さらに、
正極は幅30mm、長さ175mmに、負極は幅30mm、長
さ225mmのサイズにカットし、これを試験用電極とし
た。
【0051】セパレータとしては実施例1に使用した目
付約50g/m2、厚さ140μmで表面がスルホン化処理
されたものを準備した。無機微粒子として粒径約20nm
の酸化チタンを用い、接着剤としてチタンテトラプロポ
キシドを少量添加したものをペースト状にして準備され
たセパレータ表面に塗布した。セパレータ表面にに形成
された多孔質層の厚さは、その断面を電子顕微鏡で観察
したところ0.5μmであった。
【0052】つぎに、この正負両電極および電池セパレ
ータを、正極側に無機粒子で形成された多孔質層が配置
されるようにして同心円状に巻き取り、サブCサイズの
電池缶に投入した。その後実施例1と同様、負極容量が
正極容量に対して約1.5倍となるよう円筒型電池を作
製した。
【0053】[実施例3] (スルホン化セパレータ+二酸化チタン(TiO2)担持セパ
レータの積層)ポリプロピレンが芯部ポリマーでポリエ
チレンが鞘部ポリマーである12μm径の芯鞘複合繊維
を用いて、抄紙法により目付25g/m2の不織布を2枚成
形した。この不織布を表面温度120℃のカレンダーロ
ールに通し、それぞれ80μmの厚さに接着成形し、不
織布を得た。
【0054】つぎに、1枚の不織布に無機物粒子の多孔
質層を形成した。無機物粒子としては、粒径約20nmの
酸化チタンを用いた。この無機物粒子を2−プロパノー
ル中に混入、攪拌して、分散液を作製した。この分散液
に前記不織布をディッピングし、無機酸化物粒子を繊維
の表面に付着させた。そして、常温エアーを吹き付けて
繊維の表面に定着させ、多孔質層を得た。不織布の断面
を電子顕微鏡で観察したところ、繊維1本毎に表面を多
孔質層が覆っており、その厚さは約0.2μmであっ
た。
【0055】また、他の1枚の不織布は実施例1と同様
にスルホン基を導入することにより、その表面を親水化
処理した。スルホン化処理を施された不織布について、
付与されたイオウの量を実施例1と同様の方法で測定し
たところ、繊維表面積1m2当たり7.0×10-4molで
あった。
【0056】得られた2枚の不織布を表面温度120℃
のカレンダーロールに通し、140μmの厚さに接着成
形し、セパレータを得た。
【0057】つぎに、実施例2と同様にして正極および
負極を作製した。この正負両電極および電池セパレータ
を、正極側に無機粒子の多孔質層が形成された不織布が
配置されるようにして同心円状に巻き取り、サブCサイ
ズの電池缶に投入した。その後実施例1と同様、負極容
量が正極容量に対して約1.5倍となるよう円筒型電池
を作製した。
【0058】[比較例1] (無機酸化物粒子のみ)実施例1と同様にして目付50
g/m2、140μmの厚さの不織布を得た。つぎに、実施
例3と同様に粒径約20nmの酸化チタンを用いてディッ
ピング液を作製し、前記不織布をディッピングして、無
機物粒子を繊維の表面に付着させた。そして、常温エア
ーを吹き付けて繊維の表面に定着させ、電池セパレータ
を得た。不織布表面に形成された多孔質層の厚さは、そ
の断面を電子顕微鏡で観察したところ、実施例2と同様
0.2μmであり、細孔径はおおよそ5nmであった。
【0059】その後、実施例2と同様にして円筒型電池
を作製した。実施例3または実施例4と異なり、負極側
にも無機物の多孔質層が接している構成となっている。
【0060】[比較例2] (スルホン化のみ)実施例1で用いた表面がスルホン化
処理された電池セパレータを用いて、実施例2と同様に
して円筒型電池を作製した。すなわち正極、負極、セパ
レータのどの部分にも無機物の多孔質層が存在しない構
成となっている。
【0061】(電池の評価)実施例1〜4または比較例
1〜2で作製された電池について、定電流充放電装置を
用いて充放電テストを行った。充電については、充電率
0.25C(4時間で電池容量を満たすような電流値)
で電池容量の120%まで充電した。放電については、
放電率を1.0C(1時間で容量を放出するような電流
値)で放電した。また放電容量は、電池電圧1.0Vで
放電終了とした時の値を基準とした。ここで、充電率も
しくは放電率とは、電池の容量を完全充電もしくは完全
放電するのに必要な時間(h)の逆数であり、単位をCで表
す。例えば、2時間で電池の持つすべての容量を放電す
る場合は、0.5Cである。
【0062】まず最初に、製造した円筒型電池につい
て、充電率・放電率共に0.25Cの条件における充放
電を10サイクル行った。その結果、正極の利用率は、
ほぼ100%であり、評価可能な電池であることを確認
した。
【0063】これらの電池を用いて自己放電の特性試験
を行った。自己放電の特性試験は0.25Cで10サイ
クル充放電を行った後、0.25Cで電池容量の120%
まで充電し、その後45℃の恒温槽で1週間放置した。
その後0.25Cで1.0Vになるまで放電を行い、さら
に0.25Cでの充放電を5サイクル繰り返し、放置後
の回復を放電容量で確認した。
【0064】放置後の回復率は初期10サイクルの平均
放電容量と比較してほぼ100%であり、自己放電特性
を評価可能な電池であることを確認した。
【0065】また、自己放電特性試験後の容量維持率を
以下の式を用いて算出した。 容量維持率(%)=放置後の残存容量/((初期10サイク
ルの平均容量+放置後5サイクルの平均容量)/2)
【0066】さらに放電率を1.0Cに変更して、充放
電を継続し、500サイクルまでテストを行った。
【0067】なお、正極の利用率は以下のように算出さ
れる。電池の設計容量e1は、電池内に存在する正極活
物質の重量により決まる。電池の充放電試験を行うこと
によって測定された放電時の容量e2を設計容量e1で
割った値の百分率が正極の利用率である。すなわち、正
極利用率=(e2/e1)×100である。この値が高
いほど、より高性能な電池であることを示している。
【0068】自己放電における容量維持率および500
サイクル後における正極の利用率を下記「表1」に示
す。
【0069】
【表1】 ============================= 実施例 自己放電 500サイクル後の (比較例) 容量維持率(%) 正極利用率(%) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実施例1 82 84 実施例2 80 83 実施例3 80 85 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 比較例1 64 78 比較例2 80 55 =============================
【0070】実施例1は比較例2と同じセパレータを使
用した電池で、正極表面に酸化チタンによる無機多孔質
層が形成されているものである。この結果から正極側に
無機多孔質層が存在することで、充放電による正極膨張
に伴う電解液の吸収が抑制され、サイクル寿命を延びた
ことがわかる。
【0071】実施例2は比較例2と同じ電極および同じ
処理を施したセパレータを使用しているが、そのセパレ
ータ表面に酸化チタンによる無機多孔質層が形成されて
いるものである。この結果から実施例1と同様正極近傍
に無機多孔質層が存在することで、充放電による正極膨
張に伴う電解液の吸収が抑制され、サイクル寿命が延び
たことがわかる。
【0072】実施例3は、比較例1と同様に繊維表面に
無機多孔質層を形成したセパレータであるが、無機多孔
質層を正極側にのみ配置し、負極側は無機多孔質層のな
い構成となっている。一般に負極側では正極で発生した
酸素ガスの吸収が行われ、気相−液相−固相の3相界面
を形成することで酸素ガス吸収反応を促進するとされて
いる。無機多孔質層が負極側にも存在する比較例1では
セパレータ全体のガス透過性が悪く、負極側で気相−液
相−固相の3相界面が形成され難いため、ガス吸収性が
悪く内圧上昇や電解液の分解などが起こり、特性が低下
したものと考えられる。実施例3では、正極側に酸化チ
タンによる無機多孔質層が形成され、充放電による正極
膨張に伴う電解液の吸収が抑制されるとともに、負極側
では負極側で気相−液相−固相の3相界面が形成され、
内圧上昇や電解液の分解がなくサイクル寿命が延びたこ
とがわかる。
【0073】また、実施例1〜3はスルホン化処理が行
われているため、比較例1よりもよい自己放電特性が得
られている。
【0074】
【発明の効果】請求項1に記載の発明のアルカリ二次電
池によれば、セパレータの正極側または正極に無機物が
存在するために、セパレータの保液性が向上し、サイク
ル寿命特性がよいアルカリ二次電池を提供することがで
きる。
【0075】請求項2に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項1の発明の効果に加えて、セパレータ
に存在する無機物の範囲が負極から10μm以上正極側
であるため、酸素ガス吸収反応が良くなり、サイクル寿
命特性を向上することができる。
【0076】請求項3に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項1または2の発明の効果に加えて、多
孔質を形成する無機物が好適であるため、親水性、耐酸
化性およびサイクル寿命特性を向上させることができ
る。
【0077】請求項4に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて、無機物
が多孔質層を形成したものであるため、充放電による正
極膨張に伴う電解液の吸収が抑制され、セパレータの保
液性が高くなり、サイクル寿命特性を向上することがで
きる。
【0078】請求項5に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項4の発明の効果に加えて、形成される
多孔質層の厚さが10nm〜100μmであるため、多孔
質の効果が最適となり、セパレータの保液性が高く、サ
イクル寿命特性を向上することができる。
【0079】請求項6に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項4または5の発明の効果に加えて、多
孔質を形成する無機粒子の粒径が1nm〜100μmであ
るため、充分なキャピラリー性が得られると共に多孔質
層を均一に形成でき、容易にサイクル寿命特性を向上す
ることができる。
【0080】請求項7に記載の発明のアルカリ二次電池
によれば、請求項1〜6の発明の効果に加えて、セパレ
ータの表面に存在する親水基が少なくともスルホン基ま
たはカルボキシル基を含むため、同時に自己放電特性を
向上させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥井 良幸 大阪府大阪市中央区道修町3丁目5番11号 日本板硝子株式会社内 Fターム(参考) 5H021 AA06 CC04 EE22 EE34 HH03 5H028 AA05 EE05 EE10 FF04 HH05 5H050 AA07 BA11 CA03 CB17 DA02 DA09 EA12 FA13 FA17 FA18 HA04 HA05

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セパレータの正極側または正極に無機物
    が存在することを特徴とするアルカリ二次電池。
  2. 【請求項2】 セパレータに存在する無機物の範囲が負
    極から10μm以上正極側であることを特徴とする請求
    項1に記載のアルカリ二次電池。
  3. 【請求項3】 上記無機物が酸化チタン、酸化タングス
    テン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオ
    ブ、ニオブ酸カリウム、チタン酸カリウム、酸化錫、酸
    化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化アルミニウ
    ム、酸化マグネシウム、酸化銀、酸化カルシウム、水酸
    化カルシウム、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化
    鉄、水酸化鉄、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化
    ビスマス、水酸化ビスマス、酸化ジスプロシウム、酸化
    エルビウム、酸化ホルミウム、水酸化マグネシウム、酸
    化マンガン、水酸化マンガン、酸化ネオジウム、水酸化
    イットリウムおよび酸化ジルコニウムよりなる群から選
    ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする請求項
    1または2に記載のアルカリ二次電池。
  4. 【請求項4】 セパレータの正極側または正極に存在す
    る無機物が多孔質層を形成したことを特徴とする請求項
    1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ二次電池。
  5. 【請求項5】 多孔質層の厚さが10nm〜100μmで
    あることを特徴とする請求項4に記載のアルカリ二次電
    池。
  6. 【請求項6】 多孔質を形成する無機粒子の粒径が1nm
    〜100μmであることを特徴とする請求項4または5
    に記載のアルカリ二次電池。
  7. 【請求項7】 セパレータの表面に存在する親水基がス
    ルホン基またはカルボキシル基を含むことを特徴とする
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルカリ二次電
    池。
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