JP4152217B2 - トリガ発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に装備されたエアバッグを含む衝撃緩和装置の廃棄処理に利用する。本発明は、自動車の室内に設けられ、火薬を利用して作動する衝撃緩和装置の展開用トリガ電流を発生する電気装置、および廃車の処理方法に関する。エアバッグ以外の衝撃緩和装置としては、シートベルトのプリテンショナその他がある。
【0002】
【従来の技術】
自動車の室内にエアバッグを装備し、車両が他の物体に衝突するなど、車体に大きい瞬時加速度が加わったときに、このエアバッグを自動的に展開して、運転者および同乗者など室内の人体を保護する技術が広く普及した。またエアバッグの展開作動時に、シートベルトをその時点の位置で瞬時に固定するように設けられたプリテンショナが併せて利用されている。このようなエアバッグを含む衝撃緩和装置は、衝撃が検出されてからきわめて短い時間に展開作動させるため、その内部に爆薬が装備された構造になっている。そして加速度センサの出力にしたがって電気トリガを発生し、起爆装置を起動させ、爆薬の爆発力によりエアバッグが展開され、あるいはプリテンショナが作動するように構成されている。
【0003】
このように車両に装備された衝撃緩和装置は、その大多数が車両寿命を終えるまで作動あるいは爆発展開されることはない。車両寿命を経過しその車両が廃車処理されるときに、エアバッグその他未使用の衝撃緩和装置が廃棄処理されることになる。この廃棄処理は、リサイクル法令の規定にしたがって安全に実行する手順などが定められている。現状では多くが廃車処理の初期段階で、作業者がいったん安全な場所に退避し、電気信号によりこれらの火薬のすべてを点火起動させ、以降不用意な衝撃などより作動展開することがないように扱われている。
【0004】
このために従来から、廃車処理に利用するための電気的なトリガ装置が知られている。これは、廃車処理を行う車体の衝撃緩和装置に延びるトリガ信号線の配線を外して、これを廃車作業場のトリガ装置に接続し、このトリガ装置に所定の操作を行うと、作業者が退避するために要する数十秒の時間をおいてから、自動的にエアバッグその他装置が爆発展開するようになっている。このための従来装置として、特許文献1(出願人、ケーヒン)に開示された技術がある。これはエアバッグの廃棄処理に際して、トリガ信号発生装置の制御プログラムをあらかじめ読出して、退避時間の設定があることを確認してから爆発処理を実行するように構成したものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−301389号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来装置を利用しても、エアバッグの廃棄処理にはかなり大きい爆発音が発生する。その一つの原因は、近年生産された車両にはエアバッグが複数個装備されていて、トリガ装置の信号にしたがってこの複数個のエアバッグが同時に展開するからである。すなわち近年の車両にはその居室内に、運転者席および助手席にエアバッグが設けられるほか、シートベルトを瞬時に固定するためにも火薬が利用されたプリテンショナが利用されている。廃車処理に際し、これらの使用されなかった火薬が同時に点火爆発すると、大きい爆発音を発生することになる。また複数のエアバッグが同時に展開すると、発生する爆風も大きいから作業者の退避距離を大きくとることが必要であり、事故が発生する可能性も高くなる。大きい爆発音が発生する作業場では、その遮蔽防音のための設備構造などに費用がかかることになる。
【0007】
本発明はこれを改良するもので、自動車の廃車処理に際して発生するエアバッグの展開騒音を小さくすることを目的とする。本発明は、廃車処理作業の安全性を向上することを目的とする。本発明は、廃車処理のための遮蔽防音装置を簡単化することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一つの車両に装備されたエアバッグその他衝撃緩和装置を廃棄処理する際に、複数のエアバッグなどの衝撃緩和装置を一つのトリガ信号により同時に爆発展開させるのではなく、所定の時間差を設けて順次点火爆発させることを最大の特徴とする。すなわちエアバッグなどにより衝撃緩和を適正に行うには、衝突などにより大きい加速度が検出されたときには、きわめて短い時間内に複数の装置が一斉に展開作動することが必要である。しかし廃車処理では複数の衝撃緩和装置が一斉に展開作動する必要はなく、複数の衝撃緩和装置を順次作動展開させることができる。これにより発生する爆発音は分散して発生し、いちどに大きい爆発音が発生することがなくなる。また危険度も小さくなる。
【0009】
すなわち本発明の第一は、トリガ発生装置であり、起動から退避に要する時間(t1 )の経過後に出力信号を発生する第一の遅延回路と、この第一の遅延回路の出力信号により起動されエアバッグを含む複数の衝撃緩和装置についてその展開用トリガ信号を時間差(t2 )を設けて順次発生させる第二の遅延回路とを備えたことを特徴とする。この装置は、(i)作業用の独立の装置として設けてもよいし、(ii)車載のトリガ信号発生装置を廃車処理のときに利用することをあらかじめ配慮して、このように設計構成することにしてもよい。この構成によりエアバッグを含む複数の衝撃緩和装置について、同時に爆発音が発生することはなく、騒音の持続時間は長くなるが騒音の最大値は小さくなる。最大値が小さくなるから、騒音により迷惑の及ぶ範囲は小さくなり、騒音を防護するための設備は簡略化できる。さらに作業者に対する危険度も小さくなる。
【0010】
試験の結果から前記時間差(t2 )は0.01ないし0.5秒程度に設定することが適当である。これは処理する対象の衝撃防止装置の火薬の性質などにもよるが、一般に爆発音の持続時間はきわめて短いから、0.1秒前後の短い時間に設定し、繰り返し爆発音が継続する時間を短くすることがよい。
【0011】
前記第一および第二の遅延回路が車両の出荷時から装備され、前記第一の遅延回路を起動するための信号入力端子が加速度センサの出力を供給するための端子とは別に設けられた構造とすることができる。これは上で説明したように車両の新車出荷時から廃車処理の場合を配慮して、トリガ発生装置の中にはじめからこの遅延回路を設けておくものである。このような車載の装置は、車両を走行させ利用している状態では、加速度センサが感応すると複数の火薬が一斉に点火爆発するように設定されているが、廃車処理をするときには、トリガ入力端子を別に設けて、ここにトリガ入力を与えることにより、上記第一の遅延回路および第二の遅延回路が順次作動するように構成しておく。
【0012】
第一の遅延回路に係る第一の時間(t1 )をきわめて短く設定し、あるいは実質的にこの第一の時間を零とし(t1 =0)、もしくはこの第一の遅延回路に代えて、前記第二の遅延回路を遠隔起動する手段を備えた構成とすることができる。遠隔起動する手段は、その一例は長い電気コードを含み、他の一例は電波などを利用する無線起動装置である。このような構成とすることにより、作業者は十分に安全な遠隔位置から起動操作を行うことができる。この場合には第一の時間(t1 )はきわめて短くてよいし、実質的にt1 =0とすることができる。この場合にも本発明の装置は、複数の衝撃緩和装置が一斉に爆発展開するのではなく、各衝撃緩和装置が時間t2 ずつずれて爆発展開する。
【0013】
本発明の第二は、上記のような装置を利用した廃車の処理方法である。すなわちその車両に設けられたエアバッグを含む複数の衝撃緩和装置に対してトリガ信号を供給する配線を車載の装置から取り外し、この配線を上記トリガ信号発生装置の出力端子に付け替える操作を含むことを特徴とする。この場合には、トリガ信号発生装置は、廃車処理を行う工場に装備しておき、そのつど車両の配線に接続するようにして利用する。このように処理を行うことにより、あらかじめ廃車処理が配慮されていない車両についても本発明を実施することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第一実施例)
図1は本発明実施例装置の電気回路を説明するブロック構成図である。トリガ発生装置1は、車両に取付けられ、内蔵するGセンサ11の出力は電子回路により構成された判定回路12に与えられ、判定回路12の判定出力は駆動回路13に与えられる。判定回路12および駆動回路13は複数の半導体スイッチ回路の組み合わせにより構成される。駆動回路13には4対のトリガ信号出力端子が設けられ、それぞれ運転席に設けられたエアバッグ2、助手席に設けられたエアバッグ3、および左右のシートベルト・プリテンショナ4、5の火薬点火端に配線により接続される。端子+Bには車両電源の直流正極が、端子Eには車両電源の直流負極がそれぞれ接続される。端子Mは車両各部の動作状態を監視するモニタ回路(図外)に接続される。端子Sは本発明の装置独特の廃車処理時にのみ使用する入力端子である。これはあとから詳しく説明する。
【0015】
電源回路14は車両電源を受け、このトリガ発生装置1の各部で必要な電源電流を供給する。駆動回路13に供給する電源回路には安全センサ15が介挿され、車両が所定の走行状態にあるとき以外は駆動回路13への電源供給を遮断して、駆動回路13が不用意に動作することを防止するように構成されている。この構成はよく知られているので詳しい説明は省略する。
【0016】
すなわちこのトリガ発生装置1は、車両走行中にGセンサ11に所定値を越える異常な衝撃が検出されると、判定回路12は駆動回路13にパルス信号を送出し、駆動回路13はこれに即応して端子A,B,C, Dに一斉に点火トリガ電流を供給する。これによりエアバッグ2および3ならびにプリテンショナ4の火薬は一斉に点火され、シートベルトをロックするとともに、エアバッグが一斉に展開される。
【0017】
ここで本発明の特徴とするところは、端子Sと時差回路21を設けたところにある。この端子Sには車両の出庫時にはなにも接続されていない。この端子Sはこの車両が使用寿命を経過して廃車処理されるときにはじめて利用される。
【0018】
図2はこの時差回路21の動作タイムチャートである。すなわち、なにも接続されていない端子Sに手操作により短い時間だけ所定電圧を供給すると、その供給が停止されたときから時差回路21が起動し、所定時間t1 (例、30秒)後に短いパルスA,B,C,Dを時間間隔t2 で連続して発生する。この短いパルスA,B,C,Dは駆動回路13に供給され、エアバッグ2、同3、およびプリテンショナ4に時間間隔t2 (例、0.1 秒) で順次点火トリガ電流を供給する。これによりエアバッグ2、同3、およびプリテンショナ4は、順次爆発展開する。このとき端子A,B,C,Dには一斉に点火電流が供給されるのではなく、時間間隔t2 の間隔で順次点火電流が供給されるところに本発明の最大の特徴がある。
【0019】
すなわち、廃車処理を行う作業者は、電源端子を適宜の電線を利用して端子Sに接続して起動信号Sを供給する。そして、直ちにその車両から離れ安全な場所に退避する。そして時間t1 の経過後に、エアバッグ2および3が、さらにプリテンショナ4が順次時間間隔t2 で爆発展開される。作業者はこの爆発展開を音響により確認してから車両の位置に戻る。これにより、作業者の安全が確保されるとともに、爆発展開に伴う音響は、複数のエアバッグなどが一時に爆発展開するのではなく、時間間隔t2 で順次爆発展開するから音響の最大値は小さくなる。
【0020】
さらに上記のように複数の端子に順次点火電流を供給する動作は、連続して繰り返し複数回実行されるように構成するこができる。これは予期しない何らかの原因により、点火電流が送られても爆発展開が実行されない場合があることを配慮したものであり、この構成により作業の安全性を高くすることができる。
【0021】
(第二実施例)
図3は本発明第二実施例装置のブロック構成図である。この例では本発明実施例のトリガ発生装置1′は携帯型の装置である。このトリガ発生装置1′には上記第一実施例装置で説明した駆動回路13と同等の回路が内蔵され、その駆動回路13は内蔵の電池Bで作動するようになっている。そして外箱に設けられた押しボタンSを操作することにより、出力端子A,B,C,Dに順次トリガ信号が送出されるように構成されている。
【0022】
この装置を利用するには、廃車処理により解体しようとする車両のエアバッグ2、3およびプリテンショナ4について、その配線を車両に設けられたトリガ発生装置から取り外し、これをこの携帯型のトリガ発生装置1′に付け替える。そして、押しボタンSを操作して作業者は安全な場所に退避する。すると時間t1 (例、30秒)経過後に、順次時間間隔t2 (例、0.1秒) でトリガ電流が供給され、その廃車処理中の車両のエアバッグおよびプリテンショナが順次爆発展開される。
【0023】
このように、対象となる処理車両のトリガ発生装置が本発明の形態に設計されていなくとも、この第二実施例の装置を利用することにより、同様にエアバッグその他衝撃防止装置を時系列的に爆発展開させることができる。この装置においても、上記第一実施例装置と同様に、点火電流を複数回繰り返して送るように構成することができる。
【0024】
(第三実施例)
つぎに駆動回路13にプログラム制御回路を設ける場合の実施例を説明する。これは、上記第一実施例装置のように新車の出荷時から装備する場合、および上記第二実施例装置のように廃車処理作業場に設ける場合のいずれにも実施することができる。すなわち上記説明では、駆動回路13は複数のスイッチ回路の組み合わせにより構成するように説明したが、これはソフトウエアをインストールしたプログラム制御回路で制御するように構成することができる。
【0025】
図4は駆動回路13に設けたプログラム制御回路の制御フローチャートである。すなわち駆動回路13に第一の遅延回路を起動するためのトリガSが入力すると、第一の遅延時間(t1 、例30秒)を経時する。これが経過すると端子Aにトリガが送出される。つづいて第二の遅延時間(t2 、例 0.1秒) が経過すると、端子Bにトリガが送出される。さらに端子C、D、・・・・にはそれぞれ第二の遅延時間t2 ずつ時間差を設けて順次トリガが送出される。この第三実施例においても、点火電流を複数回繰り返して送るように構成することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明により、自動車の廃車処理に際して発生するエアバッグの展開騒音を小さくすることができる。この構成の装置を採用することにより、廃車処理作業の安全性を向上することができるとともに、廃車処理のための遮蔽防音装置を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例装置のブロック構成図。
【図2】本発明第一実施例装置の動作を説明するタイムチャート。
【図3】本発明第二実施例装置のブロック構成図。
【図4】本発明第三実施例装置(プログラム制御回路を利用する実施例)の制御フローチャート。
【符号の説明】
1 トリガ発生装置
2 エアバッグ(運転席用)
3 エアバッグ(助手席用)
4 プリテンショナ(運転席用)
5 プリテンショナ(助手席用)
11 加速度センサ
12 判定回路
13 駆動回路
14 電源回路
15 安全センサ
21 時差回路
Claims (4)
- 起動から退避に要する時間(t1 )の経過後に出力信号を発生する第一の遅延回路と、この第一の遅延回路の出力信号により起動されエアバッグを含む複数の衝撃緩和装置についてその展開用トリガ電流を時間差(t2)を設けて順次発生させる第二の遅延回路とを備え、
前記第二の遅延回路で時間差を設けて展開用トリガ電流を順次発生させる処理は、複数回繰り返して実行される
ことを特徴とするトリガ発生装置。 - 前記時間差(t2 )は0.01ないし0.5秒である請求項1記載のトリガ発生装置。
- 前記第一および第二の遅延回路が車両の出荷時から装備され、前記第一の遅延回路を起動するための信号入力端子が加速度センサの出力を供給するための端子とは別に設けられた請求項1記載のトリガ発生装置。
- その車両に設けられたエアバッグを含む複数の衝撃緩和装置に対してトリガ信号を供給する配線を車載の装置から取り外し、この配線を請求項1記載のトリガ信号発生装置の出力端子に付け替える操作を含む廃車の処理方法。
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