JP4151508B2 - 光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路 - Google Patents
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このうち、石英系光導波路は、伝送損失が低いという利点を有する反面、製造工程における加工温度が高いこと、および、大面積のものを作製しがたいこと等のプロセス上の問題があった。
また、ポリマー系光導波路は、加工のし易さや材料設計の幅広さ等の利点を有することから、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等のポリマー材料を用いたものが検討されてきた。しかし、一般に、ポリマー系光導波路は、耐熱性が劣るという問題がある。そのため、最近では、耐熱性および伝送損失に優れるフッ素化ポリイミドの検討が盛んに行なわれている。
このような状況下において、近年、フォトリソグラフィー性を付与したエポキシ系紫外線硬化樹脂等の光硬化性材料および該材料を用いた光導波路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この問題を解決するために、ポリマーのフッ素化や重水素化置換等の化学的処理が検討されているが、このような化学的処理を行なった場合にも、種々の問題、すなわち、基板との接着性が低下し剥離を生じること、長期信頼性に問題が生じること、あるいはコア材として用いる場合に、屈折率を所定の程度にまで高めることができないこと等の問題があった。
そこで、本発明は、導波路損失が少なく、長期信頼性に優れ、しかも目的とする導波路の形状を精度良く作製することのできる光導波路用感光性樹脂組成物、および該組成物の硬化体からなる光導波路を提供することを目的とする。
本発明の樹脂組成物は、以下に説明する成分(A)〜(C)を構成成分として含むものである。
本発明の樹脂組成物を構成する成分(A)は、ラジカル重合性官能基を有するポリマーであって、数平均分子量をラジカル重合性官能基のモル数で除した値が3,000以上であるポリマーである。
成分(A)中のラジカル重合性官能基としては、付加重合、環化重合、異性化重合、開環重合、重付加、縮合できる官能基のいずれであってもよい。好ましくは、付加重合または開環重合できる官能基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテルなどの不飽和二重結合を有するものや、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、シクロヘキセンオキシド等の環状反応性基を有するもの等が挙げられる。
成分(A)のポリマー構造としては、特に限定されないが、成分(A)のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であることが、導波路の耐熱性向上の点で好ましい。Tgが50℃以上であるポリマーの中でも、下記式(3)、(4)に示すようなポリスチレンやポリメチルメタクリレートを主構造とするポリマーが、耐熱性及び透明性(低損失)の向上の観点から特に好ましい。
成分(A)のポリマーの数平均分子量の上限値は、特に限定されないが、好ましくは、50,000以下である。数平均分子量が50,000を超えると、樹脂組成物への溶解性が低下し、均一な樹脂組成物を得ることが困難になる等の欠点がある。
成分(A)のポリマー中のラジカル重合性官能基の含有量は、当該ポリマーの数平均分子量を当該ラジカル重合性官能基のモル数で除した値として、3,000以上、好ましくは5,000以上である。該値が3,000未満であると、光硬化した硬化物の硬化収縮が大きくなり、光導波路の形状の精度が低下することがある。
ラジカル重合性官能基は、(A)成分のポリマーの化学構造中の末端にあることが好ましい。好ましいラジカル重合性官能基の例としては、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。成分(A)のポリマーの市販品としては、AA−6、AS−6(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
なお、成分(A)のポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
式(1)で表される構造を有するジ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
成分(B)の重量割合の上限値は、特に限定されないが、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。該重量割合が80重量%を超えると、導波路の形状が悪化したり、長期信頼性に問題が生じることがある等の欠点がある。
成分(C)の具体例としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
なお、成分(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
で表される単官能モノマー等が挙げられる。
これらの不飽和モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
光増感剤の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。
光増感剤の市販品の具体例としては、例えば、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、Tinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Seesorb102、103、110、501、202、712、704(以上、シプロ化成(株)製)等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。市販品としては、SH6062、6030(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン(株)製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
離型剤の市販品としては、プライサーフA208F(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
本樹脂組成物の硬化物の硬化収縮率は、8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。該硬化収縮率が8%よりも大きいと、信頼性試験後に基板からの剥離等が生じることがある。また、本樹脂組成物をコア層に用いた場合、設計どおりの形状を得られないことがある。
本発明の樹脂組成物の硬化物は、光導波路のコア層として使用された場合、25℃および波長824nmでの屈折率が、1.53以上であることが好ましく、1.54以上であることがより好ましい。該屈折率が1.53未満であると、本発明の樹脂組成物をコア層に用いて導波路を形成した場合、良好な伝送損失が得られないことがある。
[実施例1〜4、比較例1〜3]
表1に記載の各成分を仕込み、液温を50〜60℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性組成物を得た。なお、表1中、各成分の添加量の単位は、重量部である。
<成分>
表1中の成分は、次のとおりである。
「AS−6」:マクロマーAS−6(東亞合成(株)製);式(3)で表されるポリマー(数平均分子量6,000、ガラス転移温度100℃)
「AA−6」:マクロマーAA−6(東亞合成(株)製);式(4)で表されるポリマー(数平均分子量6,000、ガラス転移温度105℃)
「V779」:ネオポールV779(日本ユピカ(株)製)
(化合物名:テトラブロモビスフェノールAエポキシアクリレート)
「Vis#700」:ビスコート700(大阪有機工業(株)製)
(化合物名:ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート)
「BR−31」:ニューフロンティアBR31(第一工業製薬(株)製)
(化合物名:トリブロモフェノキシエチルアクリレート)
「IRG184」:Irgacure184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
(化合物名:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)
「TMPTA」:ビスコート295(大阪有機化学(株)製)
(化合物名:トリメチロールプロパントリアクリレート)
「IBXMA」:(大阪有機化学(株)製)
(化合物名:イソボルニルメタアクリレート)
「SA1002」:(三菱化学(株)製)
(化合物名:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)
「VP」:VP(BASF製)
(化合物名:N−ビニルピロリドン)
1.屈折率の評価
824nmでの屈折率を以下の手法により測定した。まず、スピンコーターを用いて、回転数および時間を調整しながら、4インチのシリコンウエファ基板上に液状硬化性組成物を7μm厚になるように塗布して樹脂組成物層を形成させた後、窒素雰囲気下、1.0J/cm2の紫外線をマスクアライナーから樹脂組成物層に照射し、硬化膜を得た。次いで、日本メトリコン製プリズムカップラーを用いて、この硬化膜の屈折率(824nm、25℃)を測定した。
アプリケーターを用いて、ガラス基板上に樹脂組成物を60μm厚になるように塗布して樹脂組成物層を形成させた後、窒素雰囲気下、コンベア式UV照射装置を用いて、1.0J/cm2の紫外線を樹脂組成物層に照射し、硬化膜を得た。次いで、共振型動的粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzの振動を与えながら、この硬化膜の損失正接の温度依存性を測定した。得られた損失正接の最大値を示す温度をガラス転移温度とした。
比重瓶を用いて23℃での樹脂組成物の液密度(D1)を測定した。続いて、上記作製条件にて厚さ120μmの硬化膜を作製し、23℃、50%の恒温恒湿器中で24時間放置した。その後、20mm角の大きさに切り、試験片の重量(W1)、及び25℃での蒸留水中での重量(W2)を測定し、下式:
フィルム密度=[W1/(W1−W2)]×0.9971
からフィルム密度(D2)を算出した。D1、D2を用いて、下式:
硬化収縮率=[1−(D1/D2)]×100
から硬化収縮率を算出した。
スピンコーターを用いて、回転数および時間を調整しながら、4インチのシリコンウエファ基板上に樹脂組成物を50μm厚になるように塗布して樹脂組成物層を形成させた後、空気雰囲気下、1.0J/cm2の紫外線を、50μm幅の分岐のない直線形状を有するフォトマスクを介して、マスクアライナーから樹脂組成物層に照射した。次いで、アセトンを用いて、樹脂組成物層を3分間現像処理した後、70℃に設定したオーブン中で基板を10分間加温した。
得られたパターンを光学顕微鏡にて観察し、目的のコア形状(50μm±1μm)が得られた場合を「◎」、50μm±2μmの範囲内の形状が得られた場合を「○」、形状が変形していたり、50±2μmの範囲を外れる形状が得られた場合を「×」とした。
スピンコーターを用いて、回転数および時間を調整しながら、4インチのシリコンウエファ基板上にElectro−Lite社製ELC2500clear(液屈折率nD 25=1.52)を50μm厚になるように塗布した後、当該塗布層に、空気雰囲気下、1.0J/cm2の紫外線をマスクアライナーから照射した。次いで、スピンコーターを用いて、基板上に樹脂組成物を50μm厚になるように塗布した後、空気雰囲気下、1.0J/cm2の紫外線を、50μm幅の分岐のない直線形状を有するフォトマスクを介して当該塗布層に照射した。アセトンを用いて、照射後の塗布層を3分間現像処理した後、70℃に設定したオーブン中で基板を10分間加温した。さらに、この基板上にElectro−Lite社製ELC2500clearを50μm厚になるように再び塗布した後、紫外線を基板に照射して、直線状のコアラインを有するチャネル導波路を得た。
本導波路の端面をへき開にてカットした後、マルチモードファイバ(50μm径)を介して850nmの光を挿入し、カットバック法により導波路損失を測定した。カットバックは、導波路長5cmから1cm刻みに4点測定して行なった。得られた光強度を導波路長に関してプロットし、その傾きから損失値を算出した。得られた損失値が0.5dB/cm以下であるときを「○」、それよりも高いときを「×」として評価した。
作製した導波路(導波路長10mm)に対し、冷熱衝撃試験を実施した。具体的には、導波路の保存温度を−40℃と85℃で交互に繰り返し、500サイクル終了後の損失を測定した。測定後の損失が、1.0dB以内であったものを「○」、それ以上に増加したものを「×」とした。
得られた結果を表1に示す。
一方、比較例1では、成分(A)を含まないため、長期信頼性試験でガラス基板からの剥離が生じ、伝送損失が大きくなった。比較例2、3では、成分(B)を含まないため、クラッド層と十分な屈折率差が確保できず初期の伝送損失が大きくなった。また、比較例3では、硬化収縮率が大きく、導波路の形状の精度が劣るとともに、長期信頼性試験でガラス基板からの剥離が生じ、伝送損失が大きくなった。
Claims (3)
- (A)ラジカル重合性官能基を有するポリマーであって、数平均分子量を上記ラジカル重合性官能基のモル数で除した値が3,000以上であるポリマー、
(B)下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリレート、及び
(C)ラジカル性光重合開始剤
を含有し、かつ、上記成分(A)が、下記式(3)及び/又は下記式(4)で表される構造を有するポリマーを含むことを特徴とする光導波路用感光性樹脂組成物。
- 上記成分(A)のポリマーのガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
- コア層と、該コア層に積層して形成されるクラッド層とを有する光導波路であって、該コア層および該クラッド層のいずれか又は両方が、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路。
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