JP4150909B2 - 発光ダイオード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光出力が大きく、動作電圧が低く、しかも過電圧に強い発光ダイオードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
AlGaInP系の発光ダイオード(LED)は各種表示用光源として広く用いられている。特に屋外ディスプレイや交通信号用光源は高出力で信頼性が高く、しかも安価であることが求められている。
【0003】
高出力を得るための施策としては、例えば活性層の上部に位置する活性層(発光層)の発光に対しほぼ透明な層(いわゆる電流拡散層)の厚膜化が行われており、その材料としては例えば特開平3−171679号(特許文献1)に開示されているAlGaAsや、米国特許US5008718号(特許文献2)に開示されているGaP等が広く用いられている。
【0004】
高出力を得るための他の施策としては、例えば特開平3−283674号(特許文献3)に開示されているように、抵抗率の小さい第2のクラッド層を挿入して電流の拡散を促すことにより高出力化する方法がある。
【0005】
高出力を得るための他の施策としては、例えば特開平4−87379号(特許文献4)に開示されているように、基板側にキャリア濃度の低い層を挿入することにより電流の拡散を促すことにより高出力化する方法がある。
【0006】
高出力を得るための他の施策としては、例えば特開平4−229665号(特許文献5)に開示されているように、電流阻止層を具備させ電流の集中を高めることにより高出力化する方法がある。
【0007】
高出力を得るための他の施策としては、例えば特開平7−202264号(特許文献6)に開示されているように、低ポテンシャル、且つ高伝導性の層を挿入することによって電流拡散を増強し、高出力化する方法がある。
【0008】
また、特開平9−260724号(特許文献7)には、AlGaInP層とGaP層の間にAlInAs、GaAs又はAlGaInPから成る中間層を介在させ、エネルギーバンドプロファイルを滑らかにして動作電圧の上昇を抑えるという方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平3−171679号
【0010】
【特許文献2】
米国特許US5008718号
【0011】
【特許文献3】
特開平3−283674号
【0012】
【特許文献4】
特開平4−87379号
【0013】
【特許文献5】
特開平4−229665号
【0014】
【特許文献6】
特開平7−202264号
【0015】
【特許文献7】
特開平9−260724号
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献1〜6の方法では、高出力化という観点からは所望の効果が得られるものの、素子に過大な電圧を加えると、ダイオードの特性上、電圧に対し指数関数的に電流が増加するため、破壊し易いという問題がある。例えば発光波長650nmの発光ダイオード素子の活性層のバンドギャップは約1.9eVであるため、素子に加える電圧が約1.9Vを超えると、素子を流れる電流は指数関数的に増加し、遂には素子が破壊されるに至る。素子の放熱設計にもよるが、順方向電圧がおよそ3Vを超えると多くの素子が破壊されてしまう。
【0017】
信頼性の観点からは電流拡散層に酸化しやすいAlを含まないGaPの方が有利であるが、GaPとAlGaInPのヘテロ界面にはエネルギーバンドプロファイルにノッチが生じ、動作電圧が高くなってしまうという問題がある。このため例えば特許文献7に開示されているように、AlGaInP層とGaP層の間に中間層を介在させ、エネルギーバンドプロファイルを滑らかにして動作電圧の上昇を抑えるという方法がある。これにより動作電圧を低減することができたが、できる限り下げることが好ましい。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、このような従来の欠点を除去し、発光出力が大きく、動作電圧が低く、しかも過電圧に強い発光ダイオードを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0022】
請求項1の発明に係る発光ダイオードは、第1導電型の半導体基板上に、少なくともInGaAlP系材料からなる活性層と、この活性層上に形成された、該活性層よりもバンドギャップが大きいInGaAlPからなる第2導電型のクラッド層と、その上に形成されたGaPからなる第2導電型の電流拡散層とを有する発光ダイオードにおいて、上記第2導電型の電流拡散層がキャリア濃度の異なる第1のGaP層と第2のGaP層から成り、そのうちの第2導電型のクラッド層に接している側の第1のGaP層のキャリア濃度が3×1018cm−3以上であり、その上の第2のGaP層が、キャリア濃度が1×1017cm−3以下である低キャリア濃度のGaP層と、キャリア濃度が1×1018cm−3以上の高キャリア濃度のGaP層を含む三層以上の多層構造として形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発光ダイオードにおいて、上記第1導電型の半導体基板がn型の導電性を有するGaAs基板またはGe基板から成ることを特徴とする。
【0025】
請求項3の発明に係る発光ダイオードは、n型のGaAs基板またはGe基板から成る半導体基板上に、少なくともInGaAlP系材料からなるn型の下部クラッド層と、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さいInGaAlP系材料からなる活性層と、該活性層よりバンドギャップエネルギーが大きいInGaAlPからなるp型の上部クラッド層と、p型のクラッド層上に形成された、p型のクラッド層よりも厚いp型のGaP層を有する発光ダイオードにおいて、上記p型のGaP層がキャリア濃度の異なる複数層から成っており、そのうちのp型の上部クラッド層に接している側のGaP層がキャリア濃度が3×1018cm−3以上の第1のGaP層として形成され、この第1のGaP層上に、キャリア濃度が1×1017cm−3以下である低キャリア濃度のGaP層と、キャリア濃度が1×1018cm−3以上の高キャリア濃度のGaP層とを含む三層以上の多層構造からなる第2のGaP層が形成されていることを特徴とする。
【0026】
上記請求項1〜2に記載の発明は、シングルヘテロ構造の形態のみ成らず、活性層を両側から挟み込む第1導電型の下部クラッド層及び第2導電型の上部クラッド層とを含む積層構造(ダブルへテロ構造)の形態を含むことを前提としている。これに対し、請求項3に記載の発明は、ダブルへテロ構造の形態を特定したものである。
【0027】
<作用>
LEDで発光輝度を高くするためには、電流分散を良くする必要がある。電流分散をよくするためには、電気の流れを起こすための駆動力である電界による流れと濃度拡散による流れを有効に活用する必要がある。電界の効果を用いて電気を流そうとすると、どうしても電圧を高くする必要があり、駆動電圧が高くなる。
【0028】
本発明のように高キャリア濃度層の間に低キャリア濃度層を挟み込むと、低キャリア濃度層がポテンシャル障壁になり、流れ込んできたキャリアがその障壁で止められ電流が横に広がっていく。このポテンシャルを高くすれば電流は十分拡散するが、それではポテンシャルを越えるだけの電圧が必要となり、駆動電圧が高くなってしまう。そこでこのポテンシャルは低くして、それを何層にもする事により、駆動電圧を低く押さえた状態で電流分散を起こす事ができる。
【0029】
このようにして作製した障壁に電圧を印加して電流電圧特性を測定すると、この障壁は直列抵抗成分として働く。このため例えば3乃至5V程度の電圧を加えても急激に電流値が増えることが無い。上記施策を講じたGaP層により、出力が大きく、動作電圧が低く、しかも過電圧に強いLEDを得ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明は上記した従来の欠点を解消するために成されたものであり、発光出力が大きく、動作電圧が低く、しかも過電圧に強い発光ダイオードを得ることを目的としている。本発明の代表的な形態では、第一の導電型をn型とし、n型の導電性を有するGaAs基板またはGe基板から成る半導体基板と、この半導体基板上に形成された、InGaAlP系材料からなる活性層と、この活性層上に形成された、該活性層よりもバンドギャップが大きいAlGaInPからなるp型導電型クラッド層と、p型導電型クラッド層上に形成された、p型導電型クラッド層よりも厚いp型導電型のGaP層を有する発光ダイオードにおいて、p型導電型のGaP層をキャリア濃度の異なる複数層から構成し、p型導電型クラッド層に接しているGaP層のキャリア濃度を3×1018cm-3以上の第1のGaP層とし、第1のGaP層上に、キャリア濃度が1×1017cm-3以下であるGaP層とキャリア濃度が1×1018cm-3以上のGaP層の多層構造からなる第2のGaP層を具備させる構成とし、これにより、目的とする発光ダイオードを達成する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る発光ダイオードの構成を示したものである。この発光ダイオードは、n型の導電性を有するGaAs基板またはGe基板から成る半導体基板101と、この半導体基板上にn型のAlGaAsバッファ層102を介して形成された積層構造であって、InGaAlP系材料からなるn型の下部クラッド層103と、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さいInGaAlP系材料からなる活性層(発光層)104と、この活性層上に形成された、該活性層よりもバンドギャップが大きいAlGaInPからなるp型の上部クラッド層105と、このp型の上部クラッド層105上に形成された、当該p型の上部クラッド層105よりも厚いp型のGaP層からなる電流拡散層を有する。そして、発光ダイオードにおいて、上記p型のGaP電流拡散層は、キャリア濃度の異なる複数層、ここでは第1のGaP層106と第2のGaP層107から構成されている。この実施形態の場合、p型の上部クラッド層105に接している側の第1のGaP層106は、そのキャリア濃度が3×1018cm-3以上のGaP層からなる。また、この第1のGaP層上に形成されている第2のGaP層107は、キャリア濃度が1×1017cm-3以下である低キャリア濃度のGaP層107aと、キャリア濃度が1×1018cm-3以上の高キャリア濃度のGaP層107bを含む多層構造(ここでは2層構造)からなる。
【0032】
本発明の効果を確認するため、上記構成のLEDについて、p型の上部クラッド層105に接している第1のGaP層106のキャリア濃度を変化させて、20mA通電時のLEDの順方向電圧を調べたところ、図2に示すように、順方向電圧はキャリア濃度の上昇に伴い単調に減少し、キャリア濃度が3×1018cm-3を超えると順方向電圧がほぼ一定となった。これよりp型の上部クラッド層105に接している第1のGaP層106のキャリア濃度は、3×1018cm-3以上であれば、低い順方向電圧とするに十分な効果が得られることが分かった。なお、図の横軸の単位は、例えば1E+18で1×1018cm-3を表す。
【0033】
また、第2のGaP層107のうち、低キャリア濃度のGaP層107aのキャリア濃度を1×1018cm-3から1×1017cm-3まで下げていった構造のものを試作し、電流電圧特性を調べた。図3に、低キャリア濃度のGaP層107aのキャリア濃度を1×1018cm-3、5×1017cm-3、1×1017cm-3と変えたときの電流電圧特性を示す。電流電圧特性を調べた結果、図3に示す如く、低キャリア濃度部のキャリア濃度の減少にしたがって高電圧印加時の素子破壊電圧が高くなっていくことが分かった。これより、第2のGaP層107のうち、低キャリア濃度のGaP層107aのキャリア濃度は、1×1017cm-3以下とすることが好ましいことが分かった。
【0034】
[実施例]
MOVPE法によりGe基板上に、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5活性層を有し、GaPウインドウ層(電流拡散層)を有するLEDを作製した。
【0035】
半導体基板101としてはn型Ge単結晶基板を使用し、Ga、Al、In原料としてはトリエチルガリウム又はトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムを使用した。P原料としてはフォスフィン(PH3)を使用した。As原料としてはアルシン(AsH3)を使用した。活性層の組成は発光波長に応じて適当な組成にしても良く、量子井戸構造としてもよい。
【0036】
まず、成長炉内に半導体基板(Ge基板)101を配置し、基板温度700℃においてn型の導電性を有し、厚さ0.5μmのAlGaAsバッファ層102を形成した。このときのGa及びAs原料としてはトリエチルガリウム及びアルシンを用いた。基板の面方位は(100)基板を使用したが、面方位は特に限定されるものではない。次に基板温度は700℃のままで、n型の導電性を有し厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P下部クラッド層103、アンドープで厚さ0.5μmの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P活性層104、p型の導電性を有し、厚さ1.0μmの(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P上部クラッド層105を順次形成した。
【0037】
次に基板温度を600〜650℃に設定し厚さ0.5μmの第1のGaP層106を形成した。第1のGaP層106にはCをドーピングし、キャリア濃度を3×1018〜3×1019cm-3とした。
【0038】
次に基板温度を700℃として、キャリア濃度が1×1017cm-3以下で厚さが0.5μmのGaP層107aを、次いで基板温度を600〜650℃に設定して、キャリア濃度が1×1018cm-3以上で厚さが10μmのGaP層107bを形成し、これらを第2のGaP層107とした。第2のGaP層107は、キャリア濃度が1×1017cm-3以下の層と、キャリア濃度が1×1018cm-3以上の層の3層以上の多層構造としても良い。
【0039】
このようにして得られたLEDエピタキシャルウェハからLEDチップを作製した。チップの大きさは300μm角で、エピタキシャルウェハの基板101側にあたるチップ下面全体にAu−Ge−Ni合金からなる下部電極108を、第2のGaP層107側にはAu−Be−Ni合金からなる直径150μmの円形の上部電極109を形成した。
【0040】
このLEDチップをステム上に組み、I−L(電流−発光出力)特性、I−V(電流−電圧)特性を調べた。比較参考のため従来構造の試作LEDと比較した。すなわちGaP層以外の構造はすべて同じとし、GaP層部の全厚さは同じであるが、低キャリア濃度層(実施例において第2のGaP層107の構成層のうちキャリア濃度が1×1017cm-3以下のGaP層107a)が無い構造のLEDを作製し、本実施例と比較した。この結果、図4に示すようにI−L特性はほぼ同じであった。
【0041】
また信頼性につき阻止破壊電圧を調べたところ、図5のI−V特性図に示すように、高電圧印加時の素子破壊電圧を従来例の3Vから5V以上に上昇することができた。
【0042】
上記実施例では、半導体基板101としてGe基板を用いたがGaAs基板を用いた場合でも、本発明の効果を得ることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1導電型の半導体基板上に、少なくともInGaAlP系材料からなる活性層と、この活性層上に形成された、該活性層よりもバンドギャップが大きいInGaAlPからなる第2導電型のクラッド層と、その上に形成されたGaPからなる第2導電型の電流拡散層とを有する発光ダイオードにおいて、上記第2導電型の電流拡散層を、キャリア濃度が1×1017cm-3以下である低キャリア濃度のGaP層をそれより高キャリア濃度のGaP層の間に挟み込んだ構造としているので、発光出力が大きく、動作電圧が低く、しかも過電圧に強い発光ダイオードの提供、特に、順方向電圧がほぼ3Vを超えても素子が破壊されないような過電圧に強い発光ダイオードを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光ダイオードの構成を示す図である。
【図2】p型クラッド層に接している部分のGaP層のキャリア濃度と、20mA通電時のLEDの動作電圧の関係を示す図である。
【図3】第2のGaP層のうち、低キャリア濃度部のキャリア濃度の異なる3つのLEDの電流電圧特性を示す図である。
【図4】本発明の発光ダイオードの電流−発光出力特性を従来例と比較して示す図である。
【図5】本発明の発光ダイオードの電流−電圧特性を従来例と比較して示す図である。
【符号の説明】
101 半導体基板
102 バッファ層
103 下部クラッド層
104 活性層(発光層)
105 上部クラッド層
106 第1のGaP層
107 第2のGaP層
107a 低キャリア濃度のGaP層
107b 高キャリア濃度のGaP層
108 下部電極
109 上部電極
Claims (3)
- 第1導電型の半導体基板上に、少なくともInGaAlP系材料からなる活性層と、この活性層上に形成された、該活性層よりもバンドギャップが大きいInGaAlPからなる第2導電型のクラッド層と、その上に形成されたGaPからなる第2導電型の電流拡散層とを有する発光ダイオードにおいて、
上記第2導電型の電流拡散層がキャリア濃度の異なる第1のGaP層と第2のGaP層から成り、
そのうちの第2導電型のクラッド層に接している側の第1のGaP層のキャリア濃度が3×1018cm−3以上であり、
その上の第2のGaP層が、キャリア濃度が1×1017cm−3以下である低キャリア濃度のGaP層と、キャリア濃度が1×1018cm−3以上の高キャリア濃度のGaP層を含む三層以上の多層構造として形成されていることを特徴とする発光ダイオード。 - 請求項1記載の発光ダイオードにおいて、
上記第1導電型の半導体基板がn型の導電性を有するGaAs基板またはGe基板から成ることを特徴とする発光ダイオード。 - n型のGaAs基板またはGe基板から成る半導体基板上に、少なくともInGaAlP系材料からなるn型の下部クラッド層と、該クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さいInGaAlP系材料からなる活性層と、該活性層よりバンドギャップエネルギーが大きいInGaAlPからなるp型の上部クラッド層と、p型のクラッド層上に形成された、p型のクラッド層よりも厚いp型のGaP層を有する発光ダイオードにおいて、
上記p型のGaP層がキャリア濃度の異なる複数層から成っており、
そのうちのp型の上部クラッド層に接している側のGaP層がキャリア濃度が3×1018cm−3以上の第1のGaP層として形成され、
この第1のGaP層上に、キャリア濃度が1×1017cm−3以下である低キャリア濃度のGaP層と、キャリア濃度が1×1018cm−3以上の高キャリア濃度のGaP層とを含む三層以上の多層構造からなる第2のGaP層が形成されていることを特徴とする発光ダイオード。
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