JP4149668B2 - β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸並びにフェニルシステイン誘導体及びその中間体の製造方法 - Google Patents

β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸並びにフェニルシステイン誘導体及びその中間体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4149668B2
JP4149668B2 JP2000526471A JP2000526471A JP4149668B2 JP 4149668 B2 JP4149668 B2 JP 4149668B2 JP 2000526471 A JP2000526471 A JP 2000526471A JP 2000526471 A JP2000526471 A JP 2000526471A JP 4149668 B2 JP4149668 B2 JP 4149668B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
optically active
salt
aminocarboxylic acid
acid
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000526471A
Other languages
English (en)
Inventor
幸喜 山下
健二 井上
浩一 木下
恭義 上田
博 村尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp filed Critical Kaneka Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP4149668B2 publication Critical patent/JP4149668B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C227/00Preparation of compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton
    • C07C227/14Preparation of compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton from compounds containing already amino and carboxyl groups or derivatives thereof
    • C07C227/16Preparation of compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton from compounds containing already amino and carboxyl groups or derivatives thereof by reactions not involving the amino or carboxyl groups
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C229/00Compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton
    • C07C229/02Compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton having amino and carboxyl groups bound to acyclic carbon atoms of the same carbon skeleton
    • C07C229/04Compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton having amino and carboxyl groups bound to acyclic carbon atoms of the same carbon skeleton the carbon skeleton being acyclic and saturated
    • C07C229/20Compounds containing amino and carboxyl groups bound to the same carbon skeleton having amino and carboxyl groups bound to acyclic carbon atoms of the same carbon skeleton the carbon skeleton being acyclic and saturated the carbon skeleton being further substituted by halogen atoms or by nitro or nitroso groups
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C319/00Preparation of thiols, sulfides, hydropolysulfides or polysulfides
    • C07C319/14Preparation of thiols, sulfides, hydropolysulfides or polysulfides of sulfides
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/55Design of synthesis routes, e.g. reducing the use of auxiliary or protecting groups

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【0001】
技術分野
本発明は、医薬品原料等として有用なβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩の製造方法に関する。本発明はまた、医薬品、特に抗エイズ薬の中間体として有用な光学活性N−保護−S−フェニル−L−システイン又はその塩及びその中間体の製造方法にも関する。
【0002】
背景技術
従来、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を製造する方法としては、例えば、以下に示すような方法が知られている。
(1) β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸をβ−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸エステルに導いた後、ハロゲン化リンで処理することにより水酸基をハロゲン化してβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸エステルとし、次いで、ハロゲン化水素酸を用いてエステル基を加水分解して、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸に変換する。具体的には、セリンをセリンメチルエステル塩酸塩に導いた後、五塩化リンで処理してα−アミノ−β−クロロプロピオン酸メチルエステル塩酸塩とし、ついで、塩酸を用いて加水分解してα−アミノ−β−クロロプロピオン酸塩酸塩に変換する。得られたα−アミノ−β−クロロプロピオン酸塩酸塩は、反応混合物を濃縮乾固した後、濃縮残査を1−プロパノールと塩酸の混合液から結晶化して単離する〔例えば、CHIRALITY 8:197〜200(1996)〕。
(2) β−フェニルセリン一水和物を塩化チオニルで処理した後、濃塩酸で処理することにより、β−クロロ−β−フェニルアラニンを得る〔Gazzetta Chimica Italiana 119(1989)215頁〕。
しかしながら、上記(1)の方法では、β位の水酸基をハロゲン化する場合、カルボキシル基を保護した後に、β位の水酸基をハロゲン化し、次いで、カルボキシル基を脱保護するという3段階の反応を行うことが常法となっており、この場合、工程が多段階にわたり、操作が煩雑であり、更に、低収率である等、多くの難点があった。
また、上記(2)の方法では、大量の塩化チオニルを溶媒を兼ねて使用すること、そのため、操作が煩雑であること等の難点があった。また、本発明者らの検討により、セリンやスレオニン等の塩素化には適用し難しいことも判った。
このように、従来、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の効率的な工業的製造方法は確立された状態にはなかった。
【0003】
一方、光学活性S−フェニルシステイン誘導体の製法としては、従来、以下に示すような方法が知られている。
<セリンから誘導する方法>
1) セリンにトリプトファンシンターゼの作用でチオフェノールを反応させる方法(EP754759)
2) アゾジカルボン酸エステルによるセリン誘導体のラクトン化を経由する方法〔ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1985年、107巻、7105頁;シンセティック・コミュニケーション(Synth.Commun.)、1995年、25(16)巻、2475頁〕
3) N−保護セリンエステル誘導体の水酸基をスルホニルオキシ基に変換後、チオフェニル基に置換する方法〔テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)、1987年、28巻、6069頁;同上、1993年、34巻、6607頁;EP604185A1〕
<セリン以外から誘導する方法>
4) 銅塩存在下、システインとフェニルジアゾニウム塩を反応させる方法〔ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、1958年、23巻、1251頁〕
5) 三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体存在下、アジリジンカルボン酸誘導体から導く方法〔ブルテン・オブ・ケミカル・ソサイエティー・オブ・ジャパン(Bull.Chem.Soc.Jpn)、1983年、56巻、520頁〕
6) 銅塩存在下、システインとヨードベンゼンを反応させる方法〔オーストラリアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Aust.J.Chem)、1985年、38巻、899頁〕
7) デヒドロアラニンとキラルなニッケル錯体を反応させる方法〔テトラヘドロン(Tetrahedron)、1988年、44巻、5507頁〕
【0004】
光学活性セリン、特にL−セリンは入手容易な化合物であるため、出発原料としてL−セリンを使用して効率的に光学活性S−フェニルシステイン誘導体へ変換できれば、実用的な製法になりうる。しかしながら、1)の酵素を利用した方法や、2)のラクトン誘導体を経由する方法は、操作性、生産性、用いる試薬の取り扱い上の安全性及び経済性等に課題を有している。また、3)の方法は、N−保護セリンエステル誘導体の水酸基をスルホニルオキシ基に変換後、N,N−ジメチルホルムアミド中でチオールのナトリウム塩により置換反応させるものであるが、塩基として水素化ナトリウム、水素化カリウム等の比較的取り扱いが難しい試薬を用いており、また、本発明者らの検討の結果、目的とするN−保護−S−フェニルシステインエステルの収率は必ずしも高くなく、特に光学純度が低下するといった問題点もあることが判った。
一方、セリン以外から誘導する4)〜7)の方法はいずれも、廃棄物処理が大変であったり、取り扱いに注意を要する原料や高価な原料を使用していたり、あるいは、収率や生産性が低い等、工業的に有利な方法とは言いがたいものである。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を工業的に有利な方法で製造する方法を提供すること、及び、工業的に入手容易な光学活性なセリンから光学活性なS−フェニルシステイン誘導体を工業的に有利な方法で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
発明の要約
本発明者らは、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を工業的に有利に製造する方法について鋭意検討した結果、驚くべきことに、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸又はその酸との塩をハロゲン化剤で処理することにより、効率的にβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸が合成できる、工業的に有利な製造方法を見出した。
【0007】
一方、光学活性セリン、即ちL−又はD−セリンから光学活性S−フェニルシステイン誘導体を効率的に製造するには、光学活性セリンの水酸基を脱離基として活性化した化合物をチオフェニル化する際に、如何に光学純度の低下を防ぐかがポイントとなる。本発明者らは、光学活性セリンの水酸基が脱離基として適切に活性化されたカルボン酸誘導体の合成、及び、そのチオフェニル化を効率的に実施できれば、工業的に有利でありながらもラセミ化を抑制して上記の目的を達成できる可能性が有ると考え、鋭意検討した。その結果、上述のβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の製法を利用することにより、効率的に光学活性β−クロロアラニンが合成できることを見出した。光学活性セリン又はその塩を直接塩素化することにより光学活性β−クロロアラニンを得ることに関する先行知見はなく、該製造方法は新規なものである。
【0008】
これとともに、上で得られた光学活性β−クロロアラニンをアミノ基保護剤で処理することにより光学活性N−保護−β−クロロアラニンに変換できること、及び、該化合物を塩基性条件下でチオフェノールと反応させることにより光学活性N−保護−S−フェニルシステインに変換できることを見出し、本発明を完成した。特に以上の3工程を用いると、出発物質である光学活性L−又はD−セリンの光学純度の低下を実質的に伴わずに、光学活性N−保護−S−フェニルシステイン誘導体を工業的に有利な方法で製造することができる。
【0009】
即ち、本発明は、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸(但し、α位のアミノ基の塩基性はアミノ基の置換基の存在により遮蔽されていない)又はその酸との塩をハロゲン化剤で処理することにより、水酸基をハロゲン化する、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩の製造方法に関する。
【0010】
本発明は、また、上記の製造方法に従って、光学活性セリン又はこれと酸との塩から下記式(1);
【0011】
【化4】
Figure 0004149668
【0012】
で表される光学活性β−クロロアラニン又はその塩を製造し、次いでアミノ基保護剤で処理する、下記一般式(2);
【0013】
【化5】
Figure 0004149668
【0014】
(式中、Rは、アミノ基保護基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、Rと一緒になってアミノ基保護基を表す。)で表される光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩の製造方法でもある。
【0015】
本発明は、更に、上記製造方法に従って光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩を製造し、次いで、塩基性条件下でチオフェノールを反応させる、下記一般式(3);
【0016】
【化6】
Figure 0004149668
【0017】
(式中、Rは、アミノ基保護基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、Rと一緒になってアミノ基保護基を表す。)で表される光学活性N−保護−S−フェニルシステイン又はその塩の製造方法でもある。
以下、本発明を詳述する。
【0018】
発明の詳細な開示
本発明で用いられるβ−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸としては特に限定されないが、基本的に、アミノ基の塩基性が、例えば、アシル型のアミノ基保護基等の置換基の存在により、遮蔽されていないものが用いられる。上記β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は、α−アミノ−β−ヒドロキシプロピオン酸(セリンともいう)を基本骨格として、ハロゲン化反応に悪影響の無い限り、基本骨格におけるアミノ基、水酸基、カルボキシル基以外の炭素鎖上の3つの水素原子の1つ、2つ、又は、3つが他の基に置換されていてもよい。また、上述したように、上記アミノ基はハロゲン化反応に悪影響がなく、その塩基性を損なわない限り、水素原子の1つ又は2つが置換基(例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基等)により置換されていてもよい。
【0019】
β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸の代表的な例としては、例えば、セリン、スレオニン、アロスレオニン、β−フェニルセリン等を挙げることができる。β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸と酸との塩としては特に限定されず、例えば、セリン塩酸塩、スレオニン塩酸塩、アロスレオニン塩酸塩、β−フェニルセリン塩酸塩等の塩を挙げることができる。上記塩は、予め調製して単離したものを用いてもよいし、反応容器中で調製したものや反応中に生じた塩を用いてもよい。これらのβ−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸を用いた場合、生成物は、β−ハロゲノ−α−アミノプロピオン酸(即ち、β−ハロゲノアラニン)、β−ハロゲノ−α−アミノ酪酸、β−ハロゲノ−β−フェニル−α−アミノプロピオン酸(即ち、β−ハロゲノフェニルアラニン)等となる。言うまでもなく、上記β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は光学活性のものを使用できる。
【0020】
本発明で用いられるハロゲン化剤としては、例えば、ハロゲン化チオニルやハロゲン化リン類、具体的には、塩化チオニル、臭化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、オキシ塩化リン、三臭化リン等を挙げることができるが、反応収率や取り扱い易さの観点から、ハロゲン化チオニルが好ましく、なかでも塩化チオニルが特に好ましい。上記ハロゲン化剤の使用量は、基質であるβ−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸又はその酸との塩に対して、例えば、1〜10倍モルであり、好ましくは1〜4倍モルであり、より好ましくは1〜2倍モルである。上記使用量は、基本的に、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸の基本骨格単位あたりのモル数であり、例えば、分子内に、上記基本骨格単位を複数個有する場合、或いは、他の置換基がハロゲン化剤を消費する基である場合や消費する基を含んでいる場合は、相当する当量分の増量が必要と考えられる。
【0021】
本発明の製造方法におけるハロゲン化剤を用いる処理は、溶媒中で行うのが好ましい。この場合の溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、塩化メチレン、酢酸エチル等の他の非プロトン性溶媒が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、エーテル系溶媒が好ましく、とりわけ、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等の、水と相溶性のあるエーテル系溶媒がより好ましい。なお、言うまでもなく、他の溶媒を悪影響のない範囲で併用することができる。
【0022】
上記ハロゲン化剤を用いる処理は、アミン又はその塩の添加条件下で行うことができる。アミン又はその塩としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、トリエチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩、ジイソプロピルエチルアミン塩酸塩等を挙げることができるが、なかでも、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン又はその塩が好ましく、より好ましくはトリエチルアミン又はその塩酸塩である。
上記アミン又はその塩の添加量は、基質であるβ−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸又はその塩に対して、0.1〜30モル%であるのが好ましく、より好ましくは1〜10モル%である。
【0023】
本発明において、反応の高収率化を図るためのより好ましい方法は、ハロゲン化水素、好ましくは塩化水素(ガス)の存在下で、上記ハロゲン化剤、好ましくは塩化チオニルによる処理を行う方法である。ハロゲン化水素の使用量は、例えば、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸に対して約1モル当量以上であるが、好ましくは2.0モル当量を超える量であり、より好ましくは約3モル当量以上である。一般に、約3〜10モル当量以上のハロゲン化水素を用いると、極めて好適に上記処理を行うことができる。上記使用量も、前述と同様に、基本的に、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸の基本骨格単位あたりのモル当量数と解される(尚、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸のハロゲン化水素酸塩は、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸に対して1.0モル当量のハロゲン化水素が存在することに相当する。)。反応液中のハロゲン化水素濃度は、例えば、溶媒1L中に約1モル以上であり、好ましくは約2モル以上であり、より好ましくは約3モル以上である。また、反応系中におけるハロゲン化水素の飽和濃度以下の濃度で、上記処理を好適に行うことができる。上記処理は、アミン又はその塩の添加条件下で行なうことができる。
【0024】
簡便な反応操作例を具体的に説明すると、例えば、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸(例えば、L−セリン)及び1,4−ジオキサンからなる懸濁液に、塩化水素ガスをほぼ飽和させるか又は完全に飽和させて、塩化チオニルを添加し、添加終了後、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは40〜80℃で、好ましくは0.5〜30時間、より好ましくは1〜20時間、中〜強撹拌することによりβ−クロロ−α−アミノカルボン酸[例えば、L−α−アミノ−β−クロロプロピオン酸(β−クロロ−L−アラニンともいう)]を生成させることができる。
【0025】
上記ハロゲン化により得られたβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は、次工程での使用に際して単離してもよいし、単離せずにそのまま用いてもよい。
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は、例えば、アミノ酸を単離する際に通常利用されるカラムクロマトグラフィー等の方法で単離することができるが、好ましくは、以下の方法により簡便且つ効率的に単離することができる。
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸をその塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩として単離する場合は、上記ハロゲン化剤による処理の進行と共に目的物の析出が進行する(即ち、反応晶析が進行する)ので、反応後、そのまま又は反応液を濃縮して、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離することにより、極めて簡便且つ高収率で目的物を採取することができる。言うまでもなく、単離に際しては、必要に応じて、ハロゲン化反応後の反応液に残存する二酸化硫黄、過剰の塩化水素等のハロゲン化水素、未反応のハロゲン化チオニル等のハロゲン化剤等の比較的沸点の低い成分を予め低減又は除去することができるし、反応液を濃縮することにより反応溶媒を回収することもできる。
【0026】
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態で単離する場合は、ハロゲン化反応後、反応液に共存する酸を、塩基、好ましくは、水酸化リチウム、炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物等を用いて、塩、好ましくは、有機溶媒及び水に可溶性の塩(塩化リチウム等のハロゲン化リチウム等)に変換し、有機溶媒、水、又は、有機溶媒と水とからなる媒体から、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を析出させると共に、生じた上記の塩を当該媒体中に溶解させ、しかる後に、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離することにより、簡便に目的物を採取することができる。酸の塩への変換は、一般に、水存在下に実施するのが好適であるので、上記有機溶媒として水と相溶性のある有機溶媒を使用することにより、水溶性化合物であるβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の溶解量の低下、即ち、析出量の増大を図るのが好ましい。
【0027】
上述の水と相溶性のある有機溶媒としては、具体的には、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、アセトン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでは、特にアセトンが、水溶性化合物であるβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の析出量の増大や性状の良好な結晶の取得、取り扱い易さ、安価であること等の観点から好ましい。
【0028】
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は水に対する溶解度が高いので、析出量を増大するためには、共存する水量を少なくする、上記の水と相溶性のある有機溶媒と水との容量比を1以上にする、最終冷却温度を低温、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下に保つのが好ましい。塩化リチウム等の共存により上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の溶解度が高まる傾向があり、析出量を最大化するためには、アセトンを併用するのが効果的である。
【0029】
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を析出させる場合、共存する酸を塩に変換するため塩基性のリチウム化合物を加えるが、これに伴い反応液は弱酸性〜中性の範囲、具体的には、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の等電点前後に調整するのが好ましい。β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸が、α−アミノ−β−ハロゲノプロピオン酸やα−アミノ−β−ハロゲノ酪酸等の場合においては、pH4〜7付近に調整するのが好ましい。
【0030】
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態で単離する簡便な操作例を具体的に示すと、ハロゲン化反応後、好ましくは、反応液中に残存する二酸化硫黄、過剰の塩化水素等のハロゲン化水素、未反応の塩化チオニル等のハロゲン化剤等の比較的沸点の低い成分を予め低減又は除去した後、低温下、水酸化リチウムや炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物、好ましくは、水酸化リチウムと少量(好ましくは最少量)の水を用いてpHを調節し、ハロゲン化反応の溶媒である水と相溶性のある有機溶媒、好ましくは、水と相溶性のあるエーテル類を主溶媒とする媒体を用いて、析出してくる上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を採取するか、又は、ハロゲン化反応後、反応液中に残存する二酸化硫黄、過剰の塩化水素等のハロゲン化水素、未反応の塩化チオニル等のハロゲン化剤等の比較的沸点の低い成分を予め低減又は除去するとともに、低温下、反応溶媒を少量(好ましくは最少量)の水に置換していき、必要に応じて、不純物除去や脱色を目的として活性炭等の吸着剤処理や不溶物濾過等を行った後、低温下、水酸化リチウムや炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物、好ましくは、水酸化リチウムと少量(好ましくは最少量)の水を用いてpHを調節し、上記の水と相溶性のある有機溶媒、好ましくは、アセトンを併用して、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を充分に析出させて、これを採取することができる。
【0031】
また、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を単離せずに次工程に供する場合は、好ましくは、ハロゲン化反応後の反応液に残存する二酸化硫黄、過剰の塩化水素等のハロゲン化水素、未反応の塩化チオニル等のハロゲン化剤等の比較的沸点の低い成分を予め低減又は除去するとともに、反応溶媒を低温下、水に置換するなどして、また、必要に応じて、水酸化ナトリウムや水酸化リチウム等の塩基でpHを調節して、更に、必要に応じて、不純物除去や脱色を目的として活性炭等の吸着剤処理や不溶物濾過等を行って、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を含有する水性液として使用することができる。
【0032】
次に、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の好ましい精製単離方法について説明する。この方法は、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態で精製単離する方法である。下記(1)の方法には、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を用いることができ、下記(2)の方法には、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩を用いることができ、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の塩としては、好ましくは、塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩である。言うまでもなく、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は光学活性のものを使用できる。
【0033】
(1)水を富溶媒、水と相溶性のある有機溶媒を貧溶媒として用いて、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を晶析する。好ましくは、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の水溶液から、水と相溶性のある有機溶媒の共存下、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を晶析する。必要に応じて、不純物の除去や脱色を目的として活性炭等の吸着剤処理や不溶物濾過等を組み合わせることができる。
(2)β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸とハロゲン化水素を含有する水性液を、水酸化リチウムや炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物を用いて(ハロゲン化水素)酸を塩に変換すること、及び、水を富溶媒、水と相溶性のある有機溶媒を貧溶媒として用いてβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態で析出させることを組み合わせて行う。基本的に、先述の、ハロゲン化反応液からβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態として単離する技術を利用することができる。好ましくは、まず、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩(好ましくは、塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩)を、塩酸等のハロゲン化水素酸水溶液又は水と共存させ、好ましくは溶解させる。そのpHは、普通、3以下、好ましくは2以下として、流動化、好ましくは溶解に必要な水量を最少化させるのが好ましい。次いで、必要に応じて、不純物の除去や脱色を目的として活性炭等の吸着剤処理や不溶物濾過等を行う。水酸化リチウムや炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物を用いてpHを調節しつつ、ハロゲン化水素酸を有機溶媒及び水に可溶性の塩(塩化リチウム等のハロゲン化リチウム)に変換し、水と相溶性のある有機溶媒を貧溶媒として用いて、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を析出させると共に、上記の塩を析出させずに残存せしめ、しかる後に、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離する。また、別法として、まず、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩(好ましくは、その塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩)を、水又は塩酸等のハロゲン化水素酸水溶液及び水と相溶性のある有機溶媒からなる媒体に溶解させる。溶解後のpHは、普通、3以下、好ましくは2以下とする。次いで、必要に応じて、不純物の除去や脱色を目的として活性炭等の吸着剤処理や不溶物濾過等を行う。水酸化リチウムや炭酸リチウム等の塩基性のリチウム化合物を用いてpHを調節する(ハロゲン化水素酸の存在する場合はこれを塩に変換する)ことにより、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を析出させると共に、生じた上記の塩(塩化リチウム等のハロゲン化リチウム)を析出させずに残存せしめ、しかる後に、濾過、遠心分離等の一般的な固液分離操作を用いて分離する。
【0034】
上記(1)及び(2)において使用する、水と相溶性のある有機溶媒としては、具体的には、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、アセトン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでは、特にアセトンが、水溶性化合物であるβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の析出量の増大や性状の良好な結晶の取得、取り扱い易さ、安価であること等の観点から好ましい。
【0035】
β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は水に対する溶解度が高いので、析出量を増大するためには、共存する水量を少なくする、上記の水と相溶性のある有機溶媒/水との容量比を1以上にする、最終冷却温度を低温、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下に保つのが好ましい。塩化リチウム等の共存によりβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の溶解度が高まる傾向があり、アセトンの使用はβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の析出量を最大化するために効果的である。
【0036】
前述のβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の晶析又は析出時のpHの調節は、弱酸性〜中性の範囲、具体的には、上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸の等電点前後に調整するのが好ましい。β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸が、α−アミノ−β−ハロゲノプロピオン酸やα−アミノ−β−ハロゲノ酪酸等の場合においては、pH4〜7付近に調整するのが好ましい。
【0037】
上記ハロゲン化水素酸としては塩化水素(塩酸)が最も好ましく、上記塩基性のリチウム化合物としては、水酸化リチウムや炭酸リチウム、特に水酸化リチウムが好ましい。
上記β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸は必ずしも安定ではないので、水又は水性媒体との接触は酸性〜中性付近で行う等、塩基との接触に留意するのが好ましい。一般に、酸性〜中性条件、例えば、pH7以下で、低温下に扱うのが好ましい。
本発明の方法によれば、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸から1段階の反応で効率よくβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を合成することができ、高品質のβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩を高収率で単離することができる。また、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸として光学活性体を用いて本反応を行なった場合、実質的にラセミ化を伴わずその光学純度をほぼ維持したまま、立体配置が基質と同一の光学活性なβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を得ることができる。
【0038】
上述の製造方法に従って光学活性セリン又はその塩から得られた光学活性β−クロロアラニンを光学活性N−保護−S−フェニルシステインに変換するには、アミノ基保護剤で処理した後にチオフェニル化する方法と、チオフェニル化した後にアミノ基保護剤で処理する方法とが考えられる。しかしながら、本発明者らの検討により、収率、操作性の観点から、アミノ基保護剤で処理した後にチオフェニル化する方法が好ましいことが判った。チオフェニル化した後にアミノ基保護剤で処理する方法では、特に、チオフェニル化条件下、光学活性β−クロロアラニンが不安定である為、満足すべき収率は得られない。
【0039】
本発明における上記一般式(2)の光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩の製造方法は、光学活性セリン又は光学活性セリンと酸との塩を塩素化剤で処理することにより光学活性β−クロロアラニン又はその塩を製造し、次いで、アミノ基保護剤で処理することからなる。この製造方法において光学活性β−クロロアラニン又はその塩を得るまでの反応は、上記と同様にして行うことができる。
【0040】
上記一般式(2)において、Rは、アミノ基保護基を表す。上記アミノ基保護基は、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第2版(Protective Groups In Organic Synthesis,2nd Ed.)、テオドラ・ダブリュ.グリーン(Theodora W.Green)著、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)出版(1990年)に記載されているようなベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アセチル基、トシル基、ベンゾイル基、フタロイル基等を挙げることができ、(3S)−テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、ヒドロキシ基が保護されていてもよい3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイル基等も保護基の選択の範囲であるが、なかでも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
上記一般式(2)におけるRは、通常は水素原子を表すが、上記Rと一緒になってフタロイル基等のアミノ基保護基を表してもよい。
【0041】
上記アミノ基保護剤は、上記アミノ基保護基に対応するものであって通常のアミノ基保護剤であれば特に限定されず、例えば、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸メチル、ジtert−ブチルジカーボネート、塩化ベンゾイル、塩化アセチル、p−トルエンスルホニルクロリド、無水フタル酸、N−カルボエトキシフタルイミド等が挙げられる。また、クロロギ酸(3S)−テトラヒドロフラニル、ヒドロキシル基が保護されていてもよい3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイルクロリド等も選択の範囲である。なかでも、クロロギ酸ベンジルが好ましい。
【0042】
上記アミノ基保護剤による処理は、単離した光学活性β−クロロアラニンを用いても良いが、上述の様に、光学活性β−クロロアラニンを含有する水性媒体を得、この水性媒体を用いて上記アミノ基保護剤で処理してアミノ基保護を行うことが好ましい。いずれの場合も塩基を使用するが、使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。上記アミノ基保護剤による処理は、水及び/又は有機溶媒いずれの媒体でも行うことができる。
この場合の溶媒は特に限定されず、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトン、トルエン等の他の非プロトン性溶媒等を用いることができる。
【0043】
上記アミノ基保護の方法としてカルボベンジロキシ化を例に挙げて具体的に述べると、例えば、光学活性β−クロロアラニンを含有する水性媒体に、好ましくは溶媒が氷結しない温度〜30℃、より好ましくは5℃以下で水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基を加えて、pHを8〜13、好ましくは9〜12、より好ましくは9〜10に維持しつつ、好ましくは溶媒が氷結しない温度〜30℃、より好ましくは5℃以下で、基質に対して1〜2モル当量、好ましくは1.0モル当量付近のクロロギ酸ベンジルを添加し、好ましくは溶媒が氷結しない温度〜30℃、より好ましくは5℃以下で、好ましくは1〜30時間攪拌することにより行われる。必要に応じて、未反応のクロロギ酸ベンジルや副生したベンジルアルコール等を除去する目的で、水又は水性媒体と混和しない有機溶媒、例えばトルエン等で反応液を洗浄することができる。
上記のようにして得られた光学活性N−保護−β−クロロアラニンは、例えば、通常の抽出操作の後、カラムクロマトグラフィー等により単離できる。
【0044】
本発明における上記一般式(3)の光学活性N−保護−S−フェニルシステイン又はその塩の製造方法は、光学活性セリン又は光学活性セリンと酸との塩を塩素化剤で処理することにより光学活性β−クロロアラニンを得、次いでアミノ基保護剤で処理することにより光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩を製造し、更に、塩基性条件下でチオフェノールを反応させることからなる。上記一般式(3)において、R及びRは、上述したR及びRの例示と同様のものである。この製造方法において光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩を得るまでの反応は、上記と同様にして行うことができる。
上記光学活性N−保護−β−クロロアラニンのチオフェニル化は、上記の様にして単離した光学活性N−保護−β−クロロアラニンを用いて行うことができるが、アミノ基保護剤による処理後の反応液をpH調整した後、これにそのままチオフェノールを添加し、反応液中で反応させることによっても行うことができる。
【0045】
上記光学活性N−保護−β−クロロアラニンをチオフェノールと反応させる工程は、塩基性条件下、水及び/又は有機溶媒中で行うことができる。上記有機溶媒としては特に限定されず、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトン、トルエン等の他の非プロトン性溶媒等を挙げることができる。
【0046】
上記チオフェノールの使用量は、光学活性N−保護−β−クロロアラニン1モルに対して、通常、1〜5モル当量であり、好ましくは1〜3モル当量であり、より好ましくは1.5モル当量前後である。
上記チオフェニル化を塩基性条件下で行うために、塩基として、無機塩基等を添加することが好ましい。上記無機塩基としては特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。また、アルカリ性のpH緩衝剤等も使用することができる。
【0047】
上記塩基の使用量は用いる塩基によっても異なるが、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムの場合、光学活性N−保護−β−クロロアラニン1モルに対して、1〜5モル当量であり、好ましくは1〜3モル当量である。反応液のpHは、約9〜11であることが好ましく、強アルカリ性条件下では副反応のために収率が低下する傾向がある。反応終了後、生成物を単離するには、例えば、塩酸、硫酸等で反応液を酸性にし、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー等により行うことができる。
【0048】
上記チオフェニル化は、例えば、光学活性N−保護−β−クロロアラニンと、好ましくはこれの濃度が5〜30w/v%となる量の水からなる溶液に、好ましくは0〜30℃で水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基を添加することによりpHを好ましくは9〜11とし、更に、光学活性N−保護−β−クロロアラニンに対して1〜5モル当量、好ましくは1〜3モル当量のチオフェノールを加え、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜70℃で攪拌することにより行うことができる。また、試剤の添加順は必ずしも上記に限らず、例えば、チオフェノールと光学活性N−保護−β−クロロアラニンからなる水溶液に塩基を添加したり、また、光学活性N−保護−β−クロロアラニンの水溶液にチオフェノールと塩基を同時に添加することによっても上記チオフェニル化を行うことができる。
【0049】
本発明の製造方法においては、光学活性セリン又は光学活性セリンと酸との塩を塩素化剤により処理する工程、得られた光学活性β−クロロアラニンをアミノ基保護剤により処理する工程、及び、得られた光学活性N−保護−β−クロロアラニンを塩基性条件下でチオフェノールと反応させる工程からなる3つの工程を、中間生成物を単離することなく行うことにより、光学活性N−保護−S−フェニルシステイン誘導体を簡便にかつ効率よく得ることができる。また、光学活性β−クロロアラニンをアミノ基保護剤により処理する工程、及び、得られた光学活性N−保護−β−クロロアラニンを塩基性条件下でチオフェノールと反応させる工程からなる2つの工程を、中間生成物を単離することなく行うこともできる。
【0050】
本発明の製造方法により光学活性セリン又はその塩から得られた光学活性N−保護−S−フェニルシステインは、晶析等の精製を行わない段階で、98%e.e.以上の高い光学純度を有している。すなわち、本発明の方法によれば、光学活性セリン又はその塩から、実質的にラセミ化を伴わずその光学純度をほぼ維持したまま、立体配置が基質と同一の光学活性N−保護−S−フェニルシステインを得ることができる。
本発明により得られる光学活性N−保護−S−フェニルシステイン、特にN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインは、例えば、HIVプロテアーゼ阻害剤の中間体として非常に有用な化合物である(WO9532185号公報)。
【0051】
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
実施例1 β−クロロ−L−アラニン塩酸塩の製造
L−セリン5.0g(0.0476mol)を1,4−ジオキサン50ml中に加えた液に、室温下で、攪拌しながら塩化水素ガスを導入した。この時、液中の塩化水素量は14.5g(0.3977mol)であった。この液に、塩化チオニル12.5g(0.1051mol)をゆっくりと添加した後、内温を50℃に調整した。約6時間攪拌したあと、この液を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液を0〜10℃に冷却し、この温度を維持するように水50mlをゆっくりと添加した。この溶液をHPLCで分析したところ、β−クロロ−L−アラニン塩酸塩として、6.9g(0.0431mol)が生成していることが認められた(生成率91mol%)。
【0053】
実施例2 β−クロロ−L−アラニン塩酸塩の製造
L−セリン5.0g(0.0476mol)を1,4−ジオキサン50ml中に加えた液に、室温下で、攪拌しながら塩化水素ガスを導入した。この時、液中の塩化水素量は11.2g(0.3072mol)であった。この溶液に、塩化チオニル6.2g(0.0521mol)をゆっくりと添加した後、内温を45℃に調整した。約20時間攪拌したあと、この溶液を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液(スラリー)を濾過し、1,4−ジオキサン10mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)して乾燥結晶を得た。得られた結晶をHPLCで分析したところ、β−クロロ−L−アラニン塩酸塩の純分としての収量は、7.2g(0.0450mol)であった。
得られたβ−クロロ−L−アラニン塩酸塩のIR、H−NMR、13C−NMRは、Aldrich社製β−クロロ−L−アラニン塩酸塩のものと完全に一致した。
【0054】
実施例3 β−クロロ−L−アラニンの製造
実施例2と同様の方法で得られた乳白色結晶(純度95.2重量%、β−クロロ−L−アラニン塩酸塩として3.6g、0.0225mol含有)を水14ml中に加え、スラリー化した。このスラリーに濃塩酸約2gをゆっくりと添加して完全に溶解させた。この溶液に50%活性炭0.1gを添加し、室温下、約10分間攪拌した。活性炭を減圧濾過し、それを水1mlで洗浄して濾液を得た。この濾液を0〜10℃に冷却した後、この温度を維持しながらゆっくりと飽和水酸化リチウム水溶液を添加してpH5.5に調整し、スラリ−化させた。このスラリーにアセトン42mlをゆっくりと添加し、充分に結晶を析出させた後、−10〜0℃に冷却し、約1時間保持した。析出した結晶を濾過し、アセトン14mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を得た。この湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)して、β−クロロ−L−アラニンの白色結晶2.65gを得た。この結晶をHPLC分析したところ、純度99.9重量%、β−クロロ−L−アラニンの純分量は2.65g(0.0214mol)であった。
なお、得られたβ−クロロ−L−アラニンの光学純度は、以下に述べるHPLC分析法によって測定した結果、99.9%ee以上であった。
【0055】
<分析条件>
カラム:東ソー TSK−Gel Enantio L1(4.6mm×250mm)
移動相:0.5M CuSO水溶液/アセトニトリル=80/20
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
流速:1.0ml/min
保持時間 β−クロロ−L−アラニン 9.3min
β−クロロ−D−アラニン 7.8min
【0056】
実施例4 β−クロロ−L−アラニンの製造
L−セリン30.0g(0.2855mol)を1,4−ジオキサン600ml中に加えた液に、室温下で、攪拌しながら塩化水素ガスを導入した。この時、液中の塩化水素量は、133.1g(3.6508mol)であった。この液に、塩化チオニル40.8g(0.3426mol)をゆっくり添加した後、内温を40℃に調整した。約20時間攪拌した後、この液(スラリー)を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液(スラリー)を0〜10℃に冷却し、この温度を維持するように水200mlをゆっくりと添加し、析出物を溶解させた。この液が約200gとなるまで更に濃縮し、次いで50%含水活性炭3.0gを添加し、室温下、約10分間攪拌した。活性炭を減圧濾過し、それを水10mlにて洗浄後、得られた濾液を約120gとなるまで更に濃縮した。この濃縮液を0〜10℃に冷却した後、この温度を維持しながらゆっくりと飽和水酸化リチウム水溶液を添加して、pH5.5に調整し、スラリー化させた。このスラリーにアセトン600mlをゆっくりと添加し、充分に結晶を析出させた後、−10〜0℃に冷却し、約1時間保持した。析出した結晶を減圧濾過し、アセトン100mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を得た。この湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)してβ−クロロ−L−アラニンの結晶32.6gを得た。この結晶をHPLC分析したところ、純度99.8重量%、β−クロロ−L−アラニン純分量は32.5g(0.2625mol)であった。
【0057】
実施例5 β−クロロ−D−アラニン塩酸塩の製造
D−セリン5.0g(0.0476mol)を1,4−ジオキサン50ml中に加えた液に、室温下で、攪拌しながら塩化水素ガスを導入した。この時、液中の塩化水素量は11.5g(0.3154mol)であった。この溶液に、塩化チオニル6.2g(0.0521mol)をゆっくりと添加した後、内温を45℃に調整した。約20時間攪拌したあと、この溶液を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液(スラリー)を濾過し、1,4−ジオキサン10mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)して乾燥結晶を得た。得られた結晶をHPLCで分析したところ、β−クロロ−D−アラニン塩酸塩の純分としての収量は、7.0g(0.0438mol)であった。なお、このようにして得られたβ−クロロ−D−アラニン塩酸塩の光学純度は、実施例3と同様の測定を行った結果、99.9%ee以上であった。
【0058】
実施例6 β−クロロ−L−アラニン塩酸塩の製造
L−セリン5.0g(0.0476mol)を表1に示した反応溶剤50ml中に加えた液に、室温下で、撹拌しながら塩化水素ガスを導入し、塩化水素を飽和させた。この液に、塩化チオニル12.5g(0.1051mol)をゆっくりと添加した後、表1に示した条件で反応させた後、反応液(スラリー)を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液を0〜10℃に冷却し、この温度を維持するように水50mlをゆっくり添加した。この溶液をHPLCで分析し、β−クロロ−L−アラニン塩酸塩としての生成率を求めた。その結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
Figure 0004149668
【0060】
実施例7 (αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸塩酸塩の製造
L−スレオニン10.14g(0.0851mol)を1,4−ジオキサン100ml中に加えた液に、室温下で、撹拌しながら塩化水素ガスを導入した。この時、液中の塩化水素量は15.5g(0.4251mol)であった。この液に、塩化チオニル12.2g(0.1022mol)をゆっくりと添加した後、内温を50℃に調整した。約10時間撹拌した後、この溶液を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液(スラリー)を濾過し、1,4−ジオキサン20mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)して乾燥結晶を得た。得られた結晶をHPLCで分析したところ、(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸塩酸塩の純分としての収量は、12.2g(0.0701mol)であった。[α] 20+16.1゜(c=1.0,水)(lit.[α] 20+17.8゜(c=1.0,水)〔CHIRALITY 9,656〜660,(1997)〕。
【0061】
実施例8 (αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸の製造
実施例7と同様の方法で得られた乳白色結晶[純度94.9重量%、(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸塩酸塩として5.0g、0.0287mol含有]を水19ml中に加え、スラリー化した。このスラリーに濃塩酸約2.8gをゆっくり添加して完全に溶解させた。この溶液に50%含水活性炭0.1gを添加し、室温下、約10分間撹拌した。活性炭を減圧濾過し、それを水1mlで洗浄して濾液を得た。この濾液を0〜10℃に冷却した後、この温度を維持しながらゆっくりと飽和水酸化リチウム水溶液を添加してpH5.5に調整し、スラリー化させた。このスラリーにアセトン58mlをゆっくりと添加し、充分に結晶を析出させた後、−10〜0℃に冷却し、約1時間保持した。析出した結晶を濾過し、アセトン19mlにてケーキ洗浄し、湿結晶を得た。この湿結晶を減圧乾燥(40℃、10mmHg以下)して、(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸の白色結晶3.75gを得た。この結晶をHPLC分析したところ、純度99.8重量%、(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸の純分量は3.74g(0.02272mol)であった。 mp 176℃(decomp)(lit, mp 176℃(decomp)[「薬学研究」、33,428〜437,(1961)]。
得られた(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸結晶のIR、H−NMR、13C−NMRは、以下に述べる手法で別途合成した(αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸結晶のそれと完全に一致した。
【0062】
参考例1 (αS,βR)−α−アミノ−β−クロロ酪酸の別途合成法
スレオニンを塩化チオニルとメタノールを用いてスレオニンメチルエステル塩酸塩に導いた後、塩化チオニルで処理してα−アミノ−β−クロロ酪酸メチルエステル塩酸塩とし、ついで、塩酸を用いて加水分解してα−アミノ−β−クロロプロピオン酸塩酸塩に変換する。得られたα−アミノ−β−クロロプロピオン酸塩酸塩を、実施例8と同様の手法で結晶化して単離した。
【0063】
実施例9 β−クロロ−L−アラニン塩酸塩の製造
L−セリン塩酸塩6.7g(0.0473mol)を1,4−ジオキサン50ml中に加えた液に、室温下で、塩化チオニル6.8g(0.0572mol)をゆっくりと添加した後、内温を60℃に調整した。約3時間撹拌した後、この液を約半量になるまで濃縮した。この濃縮液を0〜10℃に冷却し、この温度を維持するように水50mlをゆっくりと添加した。この溶液をHPLCで分析したところ、β−クロロ−L−アラニン塩酸塩として、4.6g(0.0287mol)が生成していることが認められた(生成率61mol%)。
【0064】
比較例1
L−セリン20.0g(0.1903mol)を塩化チオニル49.8g(0.4187mol)中に加え、60℃に加温して、6時間撹拌した。この液を加水分解した後、HPLC分析したところ、β−クロロ−L−アラニンのピークは認められず、未反応のL−セリンと種々の不純物ピークが認められた。
【0065】
比較例2
L−セリン15.0g(0.1427mol)をトルエン150mlに加え、室温下、塩化水素ガスを吹き込み、飽和させた。この液に、塩化チオニル37.4g(0.3140mol)を添加した後、80℃に加温し、20時間撹拌した。この液を加水分解後、HPLC分析したところ、種々の不純物ピークが認められ、β−クロロ−L−アラニンのピークは痕跡量であった。(尚、上記反応液はタール状物を含み、真っ黒に着色していた。)
【0066】
比較例3
L−セリン15.0g(0.1427mol)を塩化メチレン150mlに加え、室温下、塩化水素ガスを吹き込み、飽和させた。この液に、塩化チオニル37.4g(0.3140mol)を添加した後、40℃に加温し、16時間撹拌した。この液を加水分解後、HPLC分析したところ、種々の不純物ピークが認められ、β−クロロ−L−アラニンのピークは痕跡量であった。(尚、上記反応液はタール状物を含み、真っ黒に着色していた。)
【0067】
実施例10 N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンの製造
L−セリン塩酸塩0.4g(2.84mmol)とトリエチルアミン0.029g(0.28mmol)をジエチレングリコールジメチルエーテル4mlに懸濁させ、窒素ガス雰囲気下、室温にて塩化チオニル0.67g(5.68mmol)を滴下した。60℃で2時間攪拌した後、反応液内が15℃以下になるようにしながら水を8ml加え室温で30分攪拌した。更に、炭酸カリウムを1.6g加えpHを10付近にした後に、クロロギ酸ベンジル0.956g(5.68mmol)を滴下した。室温にて一夜放置した後に酢酸エチルで洗浄し、得られた水層を氷冷し、50%硫酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去し、残査をカラムクロマトグラフィーで精製することによりN−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン0.3g(1.16mmol,41%)が得られた。
得られたN−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンH NMR及びIRの結果は以下のとおりであった。
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm);3.85−4.06(m,2H),4.80−4.82(m,1H),5.14(s,2H),5.70(d,J=7.8Hz,1H),7.36(s,5H)
IR(neat)3034,1720,1516,1456,1203,1066,855,754,698(cm−1
【0068】
実施例11 N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンの製造
L−セリン塩酸塩0.4g(2.84mmol)とトリエチルアミン0.029g(0.28mmol)を1,2−ジメトキシエタン4mlに懸濁させ、窒素ガス雰囲気下、室温にて塩化チオニル0.67g(5.68mmol)を滴下した。60℃で2時間攪拌した後、反応液内が15℃以下になるようにしながら水を8ml加え室温で30分攪拌させた。更に、炭酸カリウムを1.6g加えpH=10付近にした後に、クロロギ酸ベンジル0.956g(5.68mmol)を滴下した。室温にて一夜放置した後に氷冷し50%硫酸で酸性にした。得られた溶液のHPLC分析の結果、収率42%(1.18mmol)でN−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンが得られた。以下に分析条件を記す。
分析条件(N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン/N−カルボベンジロキシ−L−セリン)
カラム:YMC−Pack ODS−A A−303 (250mm×4.6mm)
移動相:リン酸緩衝液(pH=3.0):アセトニトリル=60:40
流速:1.0ml/min
サンプル注入量:20μl
サンプル溶媒:アセトニトリル
保持時間:
6.2min(N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン)
3.9min(N−カルボベンジロキシ−L−セリン)
【0069】
実施例12 N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンの製造
L−セリン塩酸塩0.1g(0.71mmol)とトリエチルアミン7.2mg(0.07mmol)をアセトニトリル1ml/ジエチレングリコールジメチルエーテル0.1mlのよりなる溶媒に懸濁させ、窒素ガス雰囲気下、室温にて塩化チオニル0.167g(1.42mmol)を滴下した。60℃で2時間攪拌した後、反応液内が15℃以下になるようにしながら水を2ml加え室温で30分攪拌させた。更に、炭酸カリウムを0.4g加えpH=10付近にした後に、クロロギ酸ベンジル0.239g(1.52mmol)を滴下した。室温にて一夜放置した後に氷冷し50%硫酸で酸性にした。得られた溶液に関して実施例11と同様の手法によりHPLC分析を行った結果、収率34%(0.24mmol)でN−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンが得られた。
【0070】
実施例13 N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの製造
N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン0.108g(0.42mmol)を水0.5mlに溶解させたのちに、炭酸ナトリウム0.097g(0.92mmol)を加えた。その後、窒素ガス雰囲気下、室温にてチオフェノール0.054g(0.50mmol)を滴下した。60℃で2時間撹拌した後に氷冷し1N塩酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出後、溶媒を留去しカラムクロマトグラフィーで精製することによりN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン0.112g(0.34mmol,81%)が得られた。得られた化合物の光学純度は98%e.e.以上であった。光学純度はHPLCを用いて決定した。以下に分析条件を記す。
光学純度分析条件 (N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン/N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−D−システイン)
カラム:DAICEL CHIRALPAK AS (250mm×4.6mm)
移動相:(ヘキサン/t−ブチルメチルエーテル/トリフルオロ酢酸=800/200/2):エタノール=85:15
流速:1.2ml/min
サンプル注入量:10μl
温度:35℃
サンプル溶媒:(ヘキサン/t−ブチルメチルエーテル/トリフルオロ酢酸=800/200/2):エタノール=80:20
保持時間:
4.5min(N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン)
5.6min(N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−D−システイン)
得られたN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインのH NMR及びIRの結果は以下のとおりであった。
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm);3.41(dd,J=5.1,14.2Hz,2H),4.61−4.63(m,1H),5.07(s,2H),5.56(d,J=7.3Hz,1H),7.17−7.55(m,10H)
IR(neat)3036,1686,1532,1281,1059,737(cm−1
【0071】
実施例14 N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの製造
N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン0.091g(0.35mmol)を水0.45mlに溶解させたのちに、炭酸水素ナトリウム0.065g(0.77mmol)を加えた。その後、窒素ガス雰囲気下、室温にてチオフェノール0.046g(0.42mmol)を滴下した。60℃で2時間撹拌した後に氷冷し1N塩酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出後、溶媒を留去しカラムクロマトグラフィーで精製することによりN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン0.097g(0.29mmol,84%)が得られた。実施例13と同様の手法によるHPLC分析の結果、得られた生成物の光学純度は98%e.e.以上であった。
【0072】
実施例15 N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの製造
N−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニン0.137g(0.53mmol)を水0.68mlに溶解させたのちに、2N水酸化ナトリウム水溶液0.58mlを加えた。その後、窒素ガス雰囲気下、室温にてチオフェノール0.069g(0.63mmol)を滴下した。60℃で2時間撹拌した後に氷冷し1N塩酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出し溶媒を留去した後に、カラムクロマトグラフィーで精製することによりN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン0.107g(0.32mmol,61%)が得られた。実施例13と同様の手法によるHPLC分析の結果、得られた生成物の光学純度は98%e.e.以上であった。
【0073】
実施例16 N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの製造
L−セリン塩酸塩10.0g(70.6mmol)とトリエチルアミン0.073g(7.1mmol)をジエチレングリコールジメチルエーテル100mlに溶解し、窒素ガス雰囲気下、室温にて塩化チオニル16.8g(141.2mmol)を滴下した。60℃で2時間攪拌した後、反応系中が15℃以下になるようにしながら水を200ml加え室温で30分攪拌させた。更に、炭酸カリウムを50g加えpHを10付近にした後に、クロロギ酸ベンジル17.9g(141.2mmol)を滴下した。室温にて一夜放置した後に再び炭酸カリウムを10g加えpHを10付近にした後、窒素ガス雰囲気下、室温にてチオフェノールを10.7g(97.1mmol)滴下した。60℃で2時間撹拌した後に氷冷し50%硫酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出し溶媒を留去した後に、カラムクロマトグラフィーで精製することによりN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システイン8.7g(26.2mmol,37%)が得られた。実施例13と同様の手法によるHPLC分析の結果、得られた生成物の光学純度は98%e.e.以上であった。
【0074】
実施例17 N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの製造
β−クロロ−L−アラニン塩酸塩15.7g(98.1mmol)を水160mlに加えて溶解させた。内温を0〜5℃に冷却し、強攪拌下、30wt%水酸化ナトリウム水溶液約36gを滴下してpHを10に調整した。内温を0〜5℃に維持しながら、強攪拌下、クロロギ酸ベンジル20.5g(120.0mmol)を1時間かけて滴下した後、引き続き4時間攪拌を続けた。この間、30wt%水酸化ナトリウム水溶液約16gを滴下して、反応液のpHを9.5〜10.5に維持した。得られた反応液中のN−カルボベンジロキシ−β−クロロ−L−アラニンの量をHPLCで定量した結果、25.1g(97.5mmol)であった。
得られた反応液に窒素雰囲気下、強攪拌下にチオフェノール22.0g(200.0mmol)を滴下した。この間、30wt%水酸化ナトリウム水溶液約26gを滴下して、反応液のpHを9.7〜10.3に維持した。窒素雰囲気下、内温を50℃に昇温し、3.5時間反応させた。この間、30wt%水酸化ナトリウム水溶液約1gを滴下して、反応液のpHを9.7〜10.3に維持した。得られた反応液に窒素雰囲気下、強攪拌下に濃塩酸約20gを3時間かけてゆっくり滴下し、スラリーのpHを3に調整した。析出したN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの結晶を減圧濾過し、水100mlで2回洗浄して充分に脱液し、N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの湿結晶[N−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの純分量29.8g(89.9mmol)]を得た。得られたN−カルボベンジロキシ−S−フェニル−L−システインの光学純度は、99.9%e.e.であった。
【0075】
比較例4 S−フェニル−L−システインの製造
チオフェノール0.97g(0.0088mol)に、20wt%炭酸ナトリウム水溶液2.23g(0.0042mol)を加え、室温下で、0.5時間攪拌した。この液に、β−クロロ−L−アラニン1.08g(0.0088mol)と水とからなる溶液を添加し、5時間反応させた。この間、20wt%炭酸ナトリウム水溶液5.14g(0.0097mol)を添加しながら、反応液のpHを8〜10に維持した。得られた反応液に、窒素雰囲気下、トルエン30ml、水20ml、濃塩酸約3gを添加し、pH0.5に調整した。有機層を分液後の水層を、トルエン30mlで2回洗浄して、残存するチオフェノールを除去し、S−フェニル−L−システインの水溶液34.3gを得た。
得られた水溶液をHPLCで分析したところ、S−フェニル−L−システインの純分としての収量は0.45g(0.0023mol、収率26.0%)であり、β−クロロ−L−アラニンの顕著な分解が認められた。
【0076】
産業上の利用可能性
本発明は上述の構成よりなるので、医薬品原料等として有用なβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸、並びに、医薬品中間体として有用な光学活性N−保護−S−フェニルシステイン及びその中間体を、簡便かつ効率的に商業的規模で、工業的に有利な方法によって製造することが可能となる。

Claims (31)

  1. β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸(但し、α位のアミノ基の塩基性はアミノ基の置換基の存在により遮蔽されていない)又はその酸との塩を、エーテル系溶媒を含有する溶媒を用いて、ハロゲン化剤で処理することにより、水酸基をハロゲン化することを特徴とする、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸又はその塩の製造方法。
  2. ハロゲン化剤は、ハロゲン化チオニルである請求の範囲第1項記載の製造方法。
  3. ハロゲン化チオニルは、塩化チオニルである請求の範囲第2項記載の製造方法。
  4. ハロゲン化剤の使用量は、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸に対して1〜10倍モルである請求の範囲第1、2又は3項記載の製造方法
  5. エーテル系溶媒は、水と相溶性のあるエーテル系溶媒である請求の範囲第1〜4項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 水と相溶性のあるエーテル系溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である請求の範囲第項記載の製造方法。
  7. ハロゲン化水素の共存下に、ハロゲン化剤による処理を行う請求の範囲第1〜項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  8. ハロゲン化水素の使用量は、β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸に対して2.0モル当量を超える量である請求の範囲第項記載の製造方法。
  9. ハロゲン化水素ガスを完全に飽和させるか又はほぼ飽和させて、ハロゲン化剤による処理を行う請求の範囲第又は項記載の製造方法。
  10. ハロゲン化水素は、塩化水素である請求の範囲第7、8又は項記載の製造方法。
  11. アミン又はその塩の存在下で、塩素化剤による処理を行う請求の範囲第1〜10項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  12. アミンは、3級アミンである請求の範囲第11項記載の製造方法。
  13. ハロゲン化剤による処理の後、共存する酸を、塩基性のリチウム化合物で塩に変換して、水と相溶性のある有機溶媒と水とからなる媒体に溶解し、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を遊離の状態で析出せしめる請求の範囲第1〜12項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 水と相溶性のある有機溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である請求の範囲第13項記載の製造方法。
  15. 水と相溶性のある有機溶媒は、アセトンである請求の範囲第14項記載の製造方法。
  16. 水と相溶性のある有機溶媒と水との容量比は、1以上である請求の範囲第13、14又は15項記載の製造方法。
  17. 析出時の最終冷却温度を10℃以下にする請求の範囲第1316項のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. ハロゲン化剤による処理の後、目的物を析出せしめる前に、予め、反応液に存在する低沸成分を低減又は除去する請求の範囲第1317項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  19. ハロゲン化剤による処理の後、反応液から、そのまま又は濃縮して、析出したβ−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸のハロゲン化水素塩を採取する請求の範囲第1〜12項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  20. ハロゲン化剤による処理の後、反応溶媒を水と置換することにより、β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸を含有する水性液を得る請求の範囲第1〜12項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  21. β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は、セリン、スレオニン、アロスレオニン又はβ−フェニルセリンである請求の範囲第1〜20項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  22. β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は、セリンである請求の範囲第21項記載の製造方法。
  23. β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は、光学活性体である請求の範囲第1〜22項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  24. β−ヒドロキシ−α−アミノカルボン酸は、L−セリンである請求の範囲第22又は23項記載の製造方法。
  25. 請求の範囲第1項記載の製造方法に従って、光学活性セリン又はこれと酸との塩から下記式(1):
    Figure 0004149668
    で表される光学活性β−クロロアラニン又はその塩を製造し、次いでアミノ基保護剤で処理することを特徴とする、下記一般式(2);
    Figure 0004149668
    (式中、Rは、アミノ基保護基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、Rと一緒になってアミノ基保護基を表す。)
    で表される光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩の製造方法。
  26. 光学活性β−クロロアラニンは、請求の範囲第2〜24項のうちいずれか1項に記載の方法に従って製造される請求の範囲第25項記載の製造方法。
  27. アミノ基保護剤は、クロロギ酸ベンジルであって、光学活性N−保護−β−クロロアラニンは、一般式(2)において、Rが水素原子であり、Rがカルボベンジロキシ基である化合物である請求の範囲第25又は26項記載の製造方法。
  28. 請求の範囲第25項記載の製造方法に従って光学活性N−保護−β−クロロアラニン又はその塩を製造し、次いで、塩基性条件下でチオフェノールを反応させることを特徴とする、下記一般式(3);
    Figure 0004149668
    (式中、Rは、アミノ基保護基を表す。Rは、水素原子を表すか、又は、Rと一緒になってアミノ基保護基を表す。)
    で表される光学活性N−保護−S−フェニルシステイン又はその塩の製造方法。
  29. 光学活性N−保護−B−クロロアラニンは、請求の範囲第26項記載の製造方法に従って製造される請求の範囲第28項記載の製造方法。
  30. アミノ基保護剤は、クロロギ酸ベンジルであって、光学活性N−保護−S−フェニルシステインは、一般式(3)において、Rが水素原子であり、Rがカルボベンジロキシ基である化合物である請求の範囲第28又は29項記載の製造方法。
  31. 光学活性セリン又は光学活性セリンと酸との塩の塩素化剤による処理、アミノ基保護剤による処理及びチオフェニル化を、中間生成物を単離することなく行う請求の範囲第2830項のうちいずれか1項に記載の製造方法。
JP2000526471A 1997-12-27 1998-12-28 β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸並びにフェニルシステイン誘導体及びその中間体の製造方法 Expired - Fee Related JP4149668B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP36781497 1997-12-27
JP18631498 1998-07-01
JP26439798 1998-09-18
PCT/JP1998/005983 WO1999033785A1 (en) 1997-12-27 1998-12-28 PROCESSES FOR PRODUCING β-HALOGENO-α-AMINO-CARBOXYLIC ACIDS AND PHENYLCYSTEINE DERIVATIVES AND INTERMEDIATES THEREOF

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP4149668B2 true JP4149668B2 (ja) 2008-09-10

Family

ID=27325723

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000526471A Expired - Fee Related JP4149668B2 (ja) 1997-12-27 1998-12-28 β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸並びにフェニルシステイン誘導体及びその中間体の製造方法

Country Status (8)

Country Link
US (3) US6372941B1 (ja)
EP (1) EP1046634B1 (ja)
JP (1) JP4149668B2 (ja)
KR (1) KR20010033648A (ja)
CN (1) CN1283178A (ja)
DE (1) DE69818105T2 (ja)
ES (1) ES2207019T3 (ja)
WO (1) WO1999033785A1 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1054000A4 (en) * 1998-01-13 2003-07-23 Kaneka Corp METHOD FOR PRODUCING OPTICALLY ACTIVE CYSTINE DERIVATIVES
CN1091439C (zh) * 2000-08-02 2002-09-25 南通市丰田助剂厂 N-苄氧羰基s-苯基l-半胱氨酸的生产方法
GB0215375D0 (en) * 2002-07-03 2002-08-14 Univ Cambridge Tech Organic-inorganic hybrid transistors
JP2007246481A (ja) * 2006-03-17 2007-09-27 Japan Science & Technology Agency 位置・立体選択的安定同位体標識セリン、シスチン並びにアラニンの合成方法
ATE523511T1 (de) * 2007-05-25 2011-09-15 Elan Pharm Inc Pyrazolopyrrolidine als inhibitoren von gamma- sekretase
EP3950673A1 (en) 2014-04-30 2022-02-09 Inspirna, Inc. Inhibitors of creatine transport and uses thereof
CN106146327B (zh) * 2015-04-03 2019-03-19 浙江海正药业股份有限公司 一种d-环丝氨酸中间体的合成方法
CN105294528A (zh) * 2015-11-26 2016-02-03 成都百事兴科技实业有限公司 L-硒代半胱氨酸的制备方法
RU2633542C2 (ru) * 2015-12-11 2017-10-13 Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего образования "Пензенский государственный университет архитектуры и строительства" СПОСОБ ПОЛУЧЕНИЯ БИОЛОГИЧЕСКИ АКТИВНОГО ВЕЩЕСТВА β-ХЛОР-L-АЛАНИНА
CN109603472B (zh) * 2018-11-29 2021-03-23 河北彩客化学股份有限公司 一种处理含二氧化硫废气的吸附剂及方法
CN112557574B (zh) * 2020-12-31 2023-05-09 成都普康生物科技有限公司 一种测定cbz-aeea含量的方法
CN113603623A (zh) * 2021-08-13 2021-11-05 暨南大学 一种硒代蛋氨酸的合成方法及装置
CN115872882B (zh) * 2021-09-27 2024-05-10 中国科学院大连化学物理研究所 一种3-氯-丙氨酸的合成方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FI761457A (ja) * 1975-06-12 1976-12-13 Merck & Co Inc
IT1175926B (it) * 1984-01-13 1987-08-12 Debi Derivati Biologici Procedimento per la preparazione dell'estere metilico di alfa-l-aspartil-l-fenilalanina
JPS60258158A (ja) 1984-06-05 1985-12-20 Showa Denko Kk システイン誘導体の製造方法
JPS60258161A (ja) * 1984-06-05 1985-12-20 Showa Denko Kk システイン誘導体を製造する方法
US4985522A (en) * 1987-06-30 1991-01-15 The University Of Southern Mississippi Polymers containing pendant urea groups
US5756319A (en) 1995-07-18 1998-05-26 Mitsui Toatsu Chemicals, Inc. Production process of S-phenyl-L-cysteine

Also Published As

Publication number Publication date
EP1046634A4 (en) 2001-10-17
ES2207019T3 (es) 2004-05-16
US20020082450A1 (en) 2002-06-27
US20020103399A1 (en) 2002-08-01
CN1283178A (zh) 2001-02-07
DE69818105T2 (de) 2004-06-17
US6372941B1 (en) 2002-04-16
EP1046634A1 (en) 2000-10-25
EP1046634B1 (en) 2003-09-10
KR20010033648A (ko) 2001-04-25
WO1999033785A1 (en) 1999-07-08
DE69818105D1 (de) 2003-10-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4149668B2 (ja) β−ハロゲノ−α−アミノカルボン酸並びにフェニルシステイン誘導体及びその中間体の製造方法
CA2919317A1 (en) Synthesis of biphenylalaninol via novel intermediates
US8163937B2 (en) Process for preparing (1R,2S,5S)-N-[(1S)-3-amino-1-(cyclobutylmethyl)-2,3-dioxopropyl]-3-[(2S)-2-[[[(1,1-dimethylethyl)amino]-carbonyl]amino]-3,3-dimethyl-1-oxobutyl]-6,6-dimethyl-3-azabicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxamide
EP0930292B1 (en) Process for preparing beta-amino-alpha-hydroxy acid derivatives
US20060135784A1 (en) Process for producing 3-amino-2-hydroxypropionic acid derivatives
WO2010122682A1 (ja) N-アルコキシカルボニル-tert-ロイシンの製造法
JP4482783B2 (ja) α−アミノケトン類の製造方法
US20060247458A1 (en) Process for the production of optically active compounds having substituents at the 2-position
JP4319292B2 (ja) tert−ブトキシカルボニルクロリドの製造方法
JPH09143101A (ja) 光学活性カルボン酸の製造法
JP4721339B2 (ja) N−アルコキシカルボニルアミノ酸の製造方法
EP1466896A1 (en) Process for producing crystal of benzenesulfonamide derivative, and novel crystal of intermediate therefor and process for producing the same
WO1999036399A1 (fr) Procede de production de derives de cisteine optiquement actifs
JP3888402B2 (ja) 光学活性N−カルボベンゾキシ−tert−ロイシンの製造法
JP4035856B2 (ja) 高光学純度光学活性アミノ酸エステルの製造法
EP1078919B1 (en) Synthesis of alpha-amino-alpha',alpha'-dihaloketones and process for the preparation of beta)-amino acid derivatives by the use of the same
JP3285440B2 (ja) N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法
EP1069109B1 (en) Process for production of optically active N-protected-N-methyl-phenylalanine derivative
JP2953553B2 (ja) N−アルコキシカルボニルアミノ酸エステルの製造方法
JP2698372B2 (ja) N−保護アスパラギン酸無水物の製造方法
JP2022072636A (ja) アミド化合物の製造方法
JP3829266B2 (ja) 光学活性アミノ酸エステル、その製造方法および光学活性2−メトキシシクロヘキサノールの製造方法
JPH10101629A (ja) 光学活性酪酸誘導体の製造方法
JPH11100364A (ja) 高純度n−保護基−s−フェニルシステインの製造方法
WO2007099894A1 (ja) 硫黄酸化物を用いる汎用的な脱保護法

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20040318

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050311

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080311

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080509

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080603

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080626

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110704

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees