JP4147973B2 - レンズシートの成形加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リアプロジェクションテレビ等に用いられている透過型スクリーンの一部を構成するレンズシートに反りを付与するためのレンズシートの成形加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リアプロジェクションテレビに用いられる透過型スクリーンにおいては、従来より、広い視野角や高いコントラストを有し、ギラツキが少なく、さらにはモワレ、迷光、ボケ、歪み等が発生しないこと等が要求されている。
【0003】
透過型スクリーンは、その視野角が広いと観察者にとって映像可視領域が広くなり、コントラストが高いと映像の視認性が高くなり、ギラツキが少ないと観察者の眼の疲労が少なくなり、さらにはモワレ、迷光、ボケ、歪みがないと映像品位が向上することになり、リアプロジェクションテレビにおいて快適に映像が観察できるようになる。
【0004】
透過型スクリーンの視野角を拡げる手段のひとつとして、その一部を構成するレンズシートとして、シリンドリカルレンズ群がその表面に並列に配置されてなるレンチキュラーレンズシートを用い、映像光を水平方向、または垂直方向に拡げる方法がある。
【0005】
また、光拡散材や拡散剤等をレンズシート基板やレンズ部材等の透過型スクリーンを構成する部材の一部に配置することにより、映像光を等方的に拡げる方法が採られることもある。
【0006】
一方、コントラストの向上には、透過型スクリーンとしての光透過率の低減をできるだけ抑えつつ、たとえば、透過型スクリーンを構成するレンチキュラーレンズシートに遮光層を設けることにより映像光の選択性を上げたり、可視光を吸収する層や部位を設けることにより外光反射を抑制する方法等が一般的には用いられている。
【0007】
一方、ギラツキは、透過型スクリーンの一部に設けてある光拡散層内の光拡散剤により濃度勾配を持たせたり、複数の光拡散層間に濃度差を持たせること等により低減されることは公知である。
【0008】
また、モワレは、透過型スクリーンの投射画素ピッチ、フレネルレンズピッチ、レンチキュラーレンズピッチ等のそれぞれの組み合わせから生じる干渉縞である。そのため、それぞれの最適なピッチの組合せを設定することでモアレを解消、あるいは低減することが可能である。
【0009】
さらにまた、映像のボケや歪みは、主にレンズシート自体の形状歪みや、レンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシート等を透過型スクリーンの筐体に装着する際等に生ずる、各レンズシート間の隙間に起因するものである。
【0010】
前記レンズシートの形状歪みは、一般的にそれを成形する際に発生する温度ムラや応力ムラに起因するものと考えられ、特殊な成形方法を用いたり、成形後に熱処理(アニーリング)することにより解消、あるいは低減することができる。
【0011】
また、前記レンズシート間の隙間を低減する方法としては、たとえば、透過型スクリーンのレンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートのうちのどちらか一方、または両方に反りを予め付与しておく方法が公知となっている。
【0012】
この反りを予め付与する方法としては、レンズシートまたはレンズシート基材の成形時に、表裏に温度差を生じせしめる方法、一定の曲率を有するラインに一定温度で通過させる方法、または多数枚重ねたレンズシートを一定の曲率を有する一対の凹凸型を用いて一定温度雰囲気下でプレスする方法等が種々提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0013】
しかし、レンズシートの構成材料としては、アクリル系等の樹脂を使うことが多いため、反り付け後に反り戻りが生じてしまい、所定の曲率の反りを安定的に維持し続けることが難しかった。
【0014】
【特許文献1】
特開2002―79397号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであり、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシート、フレネルレンズシート等のレンズシートに反りを付与する方法、特に、反りを付与した後の反り戻りが抑制されるように、または反りを付与した後の反りが一定値で安定的に維持できるように反りを付与できるようにした、レンズシートの成形加工方法を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成すべくなされ、請求項1に係る発明は、熱可塑性樹脂を主体としてなるレンズシートに反りを付与するための成形加工方法であって、赤外線により塑性変形温度以上に加熱したレンズシートを凹状反り型と凸状反り型の組合せになる一対の反り型の間に載置し、プレスしながら冷却することにより反りを付与することを特徴とするレンズシートの成形加工方法である。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のレンズシートの成形加工方法において、赤外線が遠赤外線であることを特徴とする。
【0018】
さらにまた、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のレンズシートの成形加工方法において、加熱したレンズシートをそのレンズ面が凹状反り型の凹部プレス面と接するように載置してプレスすることを特徴とする。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズシートの成形加工方法において、一対の反り型で反りを付与したレンズシートを凹状反り型の凹部と同形状の凹部を有する保持型上に静置し、冷却して反り形状を定着化することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照にして詳細に説明する。図1はレンズシートの成形加工方法の概略を示す説明図である。
【0021】
レンズシートへの反りの付与に当たり、まず、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズ等のレンズが一表面に形成されているレンズシート10を赤外線加熱手段11の加熱領域内に搬送手段16により搬送する。
【0022】
加熱しようとするレンズシート10は、水平方向に並列させたシリンドリカルレンズ群からなるシリンドリカルレンズを表面に設けてなるシリンドリカルレンズシートやレンチキュラーレンズシート、さらには単位凸レンズを2次元的に略マトリックス状に配置してなるマイクロレンズを設けてなるマイクロレンズシート等であって、熱可塑性樹脂を主体としてなるシート状レンズ構造物である。
【0023】
そして、レンズシートを構成するベース樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の、光透過性が高く、耐衝撃性を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0024】
また、これらのベース樹脂中には、視野角を拡げるため、あるいはギラツキ低減等のために光拡散剤を分散させておいても良い。このような光分散剤としては、無機系のものではアルミナ、シリカ等が、有機系のものではアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等が好適に用いられる。これらの光拡散剤は、レンズシートとした時の透過率、拡散透過率、ベース樹脂との屈折率差等の光学的性質や表面の光沢、光拡散板として成形する際の分散性や、成形されたときの脆性等を考慮に入れてその種類や含有割合等を適宜選定して分散させておけば良い。
レンズシートは、このような組成の樹脂を主体としてなる樹脂シートの表面にレンチキュラーレンズやフレネルレンズ等のレンズを賦型して得られるものである。
【0025】
因みに、このような樹脂シートの表面にサーキュラーフレネルレンズを賦型する方法としては、プレス法やキャスティング法がある。また、成形型の凹凸形成面に紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を塗布または注入し、その上に基体となる熱可塑性樹脂を主体としてなる樹脂シートをのせ、電離放射線を照射して硬化処理した後、成形型から離型することによりレンズシートを得る方法もある。この時に使用する電離放射線硬化型樹脂としては、硬化時に成形型との離型性がよく、また、レンズシートとした時に耐光性が優れ、レンズ硬さが硬くなるものを選択する。
【0026】
また、シリンドリカルレンズシートは、樹脂シートを押し出し成形する際にレンズ部を成形するための成形型を用いることで一体的に成形することができる。この場合には、樹脂シートとして、たとえば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂が適用できる。これらの熱可塑性樹脂には必要に応じて前述したような光分散剤をあらかじめ練り混んでおくことも可能である。
【0027】
さらに、シリンドリカルレンズシートは、プレス法、キャスティング法、または成形型の凹凸形成面に紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)や電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を塗布または注入し、その上に基体となる樹脂シートをのせ、電離放射線を照射して硬化処理した後、成型型から離型するという方法等で得ることもできる。上記電離放射線樹脂としては、前述同様、光硬化時に成形型との離型性がよく、また、レンズシートとした時に耐光性が優れ、レンズ硬さが硬くなるものを選ぶ。
【0028】
上述したような構成の、熱可塑性樹脂を主体としてなるレンズシート10は、図1に示すように、加熱領域内で赤外線照射手段11からの照射を受け、塑性変形温度以上に加熱される。
【0029】
この時に使用される赤外線加熱手段11としては遠赤外線を主体として放射するものを使用することが最も好まし。遠赤外線により若しくは遠赤外線を主体とする赤外線でレンズシートを加熱すると、その表面だけでなく内部での吸収による発熱もあるため、加熱時の内外温度差が比較的少なくなると共に、短時間で塑性変形温度までに到達させることができるため、より均一な反りをより速やかにレンズシートに付与することができるようになる。
因みに、レンズシートの加熱を赤外線、特に遠赤外線を主体とする赤外線を使用しないで熱風で行った場合には、表面での熱交換による加熱となるため、レンズシートにおける内外温度差が比較的大きくなり易く、その温度差を縮めるのに時間がかかり、さらには内部まで加熱しようとするとレンズシートの表面の熱変形を招いてしまうことがある。また、内外温度差がでやすいが故に反り戻りも発生し易くなる。
【0030】
内部温度差を生じないように加熱領域で加熱されたレンズシートは搬送手段16により凹状反り型13と凸状反り型12の組合せになる一対の反り型17まで搬送され、凹状反り型13と凸状反り型12の間に載置される。そして、加熱されたレンズシートが凹状反り型と凸状反り型間の所定位置にセットされたら、反り型によりプレスをしながら冷却が施され、所定形状の反りが付与される。
【0031】
本発明においては以上のような工程を経てレンズシートに反りが付与されるわけであるが、反り付与後の反り戻りがより抑制されるように、あるいは反り付与後の反りが一定値でより安定的に維持できるように、図面にも示すように、反りを付与したレンズシート18を反り型17の凹状反り型13の凹部と同形状の凹部を有する保持型15上に静置し、冷却して反り形状のさらなる定着化を図ることがより好ましい。因みに、図中の14で示してある部分はこの形状定着工程がなされる恒温室である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例をその概略の加工工程を示す説明図を参照にして説明する。
【0033】
まず、縦横が650mm×1150mm、厚さが1mmで、その一表面にレンチキュラーレンズを賦型したレンチキュラーレンズシートを、上部に遠赤外線を主として照射する赤外線加熱手段が配された炉内の加熱領域に搬送手段で搬送し、そこで遠赤外線を主体とする赤外線を60秒間照射し、レンチキュラーレンズシートが塑性変形温度以上になるように、かつレンズシートに内外温度差が生じないように加熱した。加熱時間は60秒間で、レンズシート表面温度は90℃であった。
【0034】
続いて、内外温度差が生じないように加熱されたレンズシートは、中央部近傍部分に深さ200mmの非球面形状の凹部を有する凹状反り型とこれと対をなす凸状反り型の組合せになる反り型のところまで搬送手段により搬送し、凹状反り型と凸状反り型との間に、そのレンズ面が凹状反り型の凹部プレス面と接するように見当を合わせて載置した。そして、反り型によりレンズシートをプレスしながら60秒間冷却した。この反り型はアルミニウム製で、内部に冷却機能を有したものであり、20℃の水が内部を循環させているものであった。
【0035】
反りを付与したレンズシートは、その後凹状反り型の凹部と同一同形状の凹部を有する保持型上に静置し、60℃に設定してある恒温室内で冷却し(24時間)、反りの定着化を図った。
【0036】
このようにして反りの付与されたレンチキュラーレンズシートと、加熱の工程を熱風により行った以外は実施例と同様な条件で作製した、比較例に係るレンチキュラーレンズシートとの反り量の経時変化の比較を行った。
なお、熱風による加熱時間は100秒間で、かつ表面温度が90±2℃となるような条件とした。また、ここでいう反り量とは、反りの付与されたレンズシートの一対の辺の両端部を結んだ直線から当該辺に対して距離が最大になるところを測定することにより求められるものである。もちろん、当該距離が最大となるところは当該辺の中点である。
【0037】
それぞれの、反り量の経時変化の様子を図2に示す。加熱を熱風により行ったレンズシート(比較品)に比べ、遠赤外線を主体とする赤外線により加熱を行ったレンズシート(本発明品)の方が初期の反り量が大きく、その後の安定性も高いことがわかる。
【0038】
反り量を測定した後、それぞれのレンチキュラーレンズシートを、それぞれ別途に用意した縦横が650mm×1150mmで、厚さが3mmのサーキュラーフレネルレンズシートと互いのレンズ面を対向配置させて組合せて筐体にセットし、二種類の透過型スクリーンを完成させた。次に、これらの透過型スクリーンにたいし、40℃の環境中で密着性の評価を行った。ここでいう密着性とは、レンチキュラーレンズシートとサーキュラーフレネルレンズシートとの密着程度のことである。
【0039】
168時間が経過した時の密着性を評価した結果、比較例に係るレンチキュラーレンズシートを用いた透過型スクリーンにおいては中心部に密着不良が生じた。一方、実施例に係るレンチキュラーレンズシート用いた透過型スクリーンは密着性が保たれていた。このことは、図2において比較品の反り量の経時変化が安定化していないことを示していることからも理解できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明のレンズシートの成形加工方法によれば、反りを付与した後の反り戻りが抑制されるように、若しくは反りを付与した後の反りが一定値で安定的に維持できるように反りを付与することが可能となり、延いては透過型スクリーンのレンズシート間の密着性を向上することができ、映像のボケ、歪み等を抑制することが可能となり、より品位の高い映像が観察できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるレンズシートの成形加工方法の概略を示す説明図である。
【図2】本発明により反りを付与したレンズシートと、他の方法により反りを付与したレンズシートの反り量の経時変化を示した説明図である。
【符号の説明】
10:レンズシート
11:赤外線照射手段
12:凸状反り型
13:凹状反り型
14:恒温室
15:保持型
16:搬送手段
17:反り型
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂を主体としてなるレンズシートに反りを付与するための成形加工方法であって、遠赤外線により塑性変形温度以上に加熱したレンズシートを凹状反り型と凸状反り型の組合せになる一対の反り型の間に載置し、プレスしながら冷却することによりレンズシートに反りを付与することを特徴とするレンズシートの成形加工方法。
- 加熱したレンズシートをそのレンズ面が凹状反り型の凹部プレス面と接するように載置してプレスすることを特徴とする請求項1記載のレンズシートの成形加工方法。
- 一対の反り型でのプレスにより反りを付与したレンズシートを凹状反り型の凹部と同形状の凹部を有する保持型上に静置し、冷却して反り形状を定着化させることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のレンズシートの成形加工方法。
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