JP4147926B2 - 自動車の自動走行装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、自動車の自動走行装置に関し、詳細には、定速走行装置(オートスピードコントロール装置:ASCD)において、運転者が車速設定スイッチを瞬間的に操作するTAP操作時におけるエンジンの回転変動を防止するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の自動走行装置として、次のようなものが知られている。すなわち、運転者によりASCDの電源が投入されたASCD作動時において、設定車速に応じた定速走行時駆動力を変換した仮想アクセル開度が、変速制御用アクセル開度としてそのまま無変速機に送信されるように構成したものである。変速機として有段変速機を備える自動車では、各変速段の間にアクセル開度に対する不感領域が存在するので、若干の駆動力の変化では変速比が変化することはないが、無変速機を備えるものでは、僅かな駆動力の変化でも変速制御用アクセル開度及び変速比が変化し、エンジンに回転変動が生じてしまう。このような問題の対策として、無変速機の変速応答性に、車速に応じた一次遅れを持たせることが知られている(下記特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−213599号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術は、無変速機の変速応答性を車速に応じて変更するものであり、運転者が車速の細かな変更を要求する車速設定スイッチのTAP操作時を対象としたものではない。TAP操作時は、運転者がエンジンの回転変動を特に抑えたいと考える場合であるので、その対策が重要である。
【0005】
そこで、本発明は、運転者が車速設定スイッチのTAP操作等により設定車速を細かく変化させようとする場合におけるエンジンの回転変動を防止することのできる自動車の自動走行装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明に係る自動車の自動走行装置では、運転者により設定された要求車速に応じた自動走行時駆動力を設定し、これに基づいてエンジンのスロットル制御指令値及び無変速機の変速制御指令値を設定する。そして、変速制御指令値に、自動走行時駆動力の変化に対する所定の一次遅れ特性を持たせる一方、そのために複数のフィルタゲインを設定し、これらが切り換えられる構成とする。フィルタゲインは、運転者が要求車速を細かく変化させるときと、それ以外のときとで切り換えられるようにするとよい。
【0007】
このようにすれば、運転者が特にエンジンの回転変動を抑えたいと考える要求車速の微細変化時における無変速機の変速応答性を調節することができるので、自動走行時における走行性を向上させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車の自動走行装置としての定速走行装置(オートスピードコントロール装置:以下「ASCD」という。)の構成図である。
【0009】
この自動車は、駆動源として内燃機関(以下「エンジン」という。)と、変速機として無断変速機(以下「CVT」という。)備えている。エンジンが発生した動力は、このCVTを介して車軸に伝達され、駆動輪を回転させる。
【0010】
エンジンコントロールユニット1には、車速HRVSPを検出するためのセンサ21、及びアクセル開度APOSTを検出するためのセンサ22から検出信号が入力される。エンジンコントロールユニット1は、要求駆動力算出部101において、これらの検出信号に基づいて運転者が要求する駆動力である運転者要求駆動力TFDPTDを算出する。
【0011】
また、エンジンコントロールユニット1には、ASCDコントロールユニット2から、設定車速tVSPに応じたASCD駆動力指令値TFDCOMが入力される。tVSPは、運転者がASCDの車速設定スイッチであるセット・コーストスイッチ23、リジューム・アクセラレートスイッチ24を操作することにより増減され、定速走行時における目標車速とされる。
【0012】
エンジンコントロールユニット1は、駆動力選択部102において、運転者要求駆動力TFDPTD及びASCD駆動力指令値TFDCOMから一方を選択する。そして、スロットル開度算出部103において、選択された駆動力に基づいて目標スロットル開度(「スロットル制御指令値」に相当する。)tTVOを算出し、変速制御用アクセル開度算出部104において、変速制御用アクセル開度(「変速制御指令値」に相当する。)PTDAPOを算出する。
【0013】
CVTコントロールユニット3は、エンジンコントロールユニット1から変速制御用アクセル開度PTDAPOを受信するとともに、これに基づいて変速比を制御する。
【0014】
車速設定スイッチのうちセット・コーストスイッチ23は、図示しないASCDメインスイッチが入っているときに押されることで、走行モードを定速走行モードに移行させ、これが押されたときの車速を初期要求車速として設定する。リジューム・アクセラレートスイッチ24は、定速走行モードで設定車速を上げるために使用されるものであり、これが押し続けられることにより設定車速が連続的に上昇し、離された時点のものに設定車速が更新される。リジューム・アクセラレートスイッチ24が瞬間的に押されると、その度に設定車速が単位車速(例えば、1km/h)ずつ上昇する。このようなリジューム及びアクセラレートスイッチ24の瞬間的な操作をTAPアップ操作という。セット・コーストスイッチ24は、定速走行モードへの切換時以外にも、定速走行モードで設定車速を下げるために使用される。これが押し続けられることにより設定車速が連続的に下降し、離された時点のものに設定車速が更新される。セット・コーストスイッチ24が瞬間的に押されると、その度に設定車速が単位車速(例えば、1km/h)ずつ下降する。このようなセット・コーストスイッチ24の瞬間的な操作をTAPダウン操作という。
【0015】
図2は、エンジンコントロールユニット1の機能ブロック図である。
まず、通常走行時において、エンジンコントロールユニット1は、アクセル開度APOST及び車速HRVSPにより駆動力マップを検索し、運転者要求駆動力TFDPTDを読み出す。読み出されたTFDPTDは、比較部から最終駆動力として出力される。エンジンコントロールユニット1は、最終駆動力に基づいてエンジントルクTTEPTDを算出し、これを目標スロットル開度tTVOに用いる。
【0016】
また、通常走行時では、車速HRVSP及び変速制御用最終駆動力(ここでは、運転者要求駆動力TFDPTDとなる。)TFDCANにより駆動力の逆変換マップを検索し、変速制御用アクセル開度PTDAPOを読み出す。読み出されたPTDAPOは、CVTコントロールユニット3に出力され、CVTによる変速制御に用いられる。
【0017】
セット・コーストスイッチ24が押され、定速走行モードに移行すると、ASCDコントロールユニット2により算出されたASCD駆動力指令値TFDCOMが入力される。エンジンコントロールユニット1は、これにフィルタリングを施し、TFDCOMの変化に対して所定の一次遅れ特性を持たせた駆動力TFDCOMFLを出力する。このTFDCOMFL及び運転者要求駆動力TFDPTDが比較部に入力され、大きい方の値が変速制御用最終駆動力TFDCANとして選択される。TFDCANは、車速HRVSPとともに、変速制御用アクセル開度PTDAPOへの逆変換に用いられる。
【0018】
なお、定速走行モードでは、運転者要求駆動力TFDPTD及びASCD駆動力指令値TFDCOMが比較部に入力され、これらのうち大きい方の値が最終駆動力として出力され、エンジントルクTTEPTDへの変換に用いられる。
【0019】
図3は、エンジンコントロールユニット1のフィルタリング部の構成ブロック図である。
図中中央に示すスイッチ部では、一次遅れフィルタリングのためのゲイン(「フィルタゲイン」に相当する。)を、車速設定スイッチ23,24のTAPアップ又はTAPダウン操作時であるか否かの判定結果に応じて、通常時のための第1のゲインGnと、TAP操作時のための第2のゲインGtとで切り換える。Gtは、Gnよりも小さな値(例えば、3%)として予め設定される。設定されたゲインは、乗算部に入力される。この乗算部には、ゲインのほかASCD駆動力指令値TFDCOMが入力され、演算結果が加算部に入力される。一方、ゲインは、減算部に入力される。この減算部には、ゲインのほか所定の比率(例えば、100%)が入力される。そして、この比率とゲインとの差(100−Gn又は100−Gt)は、乗算部に入力され、ASCD駆動力指令値の前回値TFDCOMn−1との積が前記加算部に入力される。加算部からは、この積と上流の乗算部における演算結果との和が、フィルタリング後の駆動力TFDCOMFLとして出力される。なお、TFDCOMFLの演算式は、次式(1)のようになる。
【0020】
TFDCOMFL=ゲイン×TFDCOM+(100−ゲイン)×TFDCOMn−1 ・・・(1)
図4は、本実施形態に係る自動走行装置による変速制御用アクセル開度PTDAPOの設定に関するフローチャートである。
【0021】
S1では、ASCD駆動力指令値TFDCOMを算出する。S2では、運転者による車速設定スイッチ23,24の操作に対応してTAP操作中であるか否かを判定する。TAP操作中であると判定したときは、S3へ進み、TAP操作中でないと判定したときは、S4へ進む。S3では、フィルタゲインとして第2のゲインGtを選択し、GtによりTFDCOMに一次遅れフィルタリングを施す。S4では、フィルタゲインとして第1のゲインGn(>Gt)を選択し、GnによりTFDCOMに一次遅れフィルタリングを施す。S5では、フィルタリング後の駆動力TFDCOMFLと運転者要求駆動力TFDPTDとのうち大きい方の値を変速制御用最終駆動力として選択し、これに基づいて変速制御用アクセル開度PTDAPOを設定する。
【0022】
本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
エンジンコントロールユニット1において、ASCD駆動力指令値TFDCOMの一次遅れフィルタリングを施すために設定されるゲインを、車速設定スイッチ23,24のTAP操作時と、それ以外のときとで切り換え、特にTAP操作時におけるゲインGtを小さな値のものとし、フィルタリングによるなまし度合いが大きくなるようにした。このため、TAP操作時では、それ以外の定速走行時と比較して、CVTの変速応答性が緩やかとなる。TAP操作時は、アクセル操作やブレーキ操作による場合とは異なり、運転者は積極的に加減速を要求しているのではなく、緩やかな車速変更を要求しているときなので、TAP操作時における変速応答性を特に緩やかに調節することができることは、エンジンの回転変動を抑えたいという運転者の意思に沿うものであり、自動走行時における走行性を向上させることになる。
【0023】
図5は、このことをタイムチャートにより説明したものである。定速走行中に車速設定スイッチ23,24がTAP操作されたときは、変速制御用最終駆動力TFDCANの変化に大きななましがかけられることで、変速応答性が緩やかとなり、吹き上がり等のエンジンの回転変動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車の自動走行装置の構成図
【図2】同上自動走行装置の機能ブロック図
【図3】フィルタリング部の機能ブロック図
【図4】変速制御用アクセル開度設定ルーチンのフローチャート
【図5】TAP操作時における変速応答性を示すタイムチャート
【符号の説明】
1…エンジンコントロールユニット、2…ASCDコントロールユニット、3…CVTコントロールユニット、21…車速センサ、22…アクセル開度センサ、23…セット・コーストスイッチ、24…リジューム・アクセラレートスイッチ。

Claims (1)

  1. エンジンと、
    運転者によるアクセル操作から独立して駆動可能に設けられた、エンジンのスロットル弁と、
    エンジンと駆動輪との間に介装された無段変速機と、
    運転者が要求車速を設定するための要求車速設定手段であって、設定された要求車速を運転者による瞬間的な操作により所定の単位車速ずつ変化させることが可能なTAP入力手段を備えてなる要求車速設定手段と、
    前記スロットル弁及び無段変速機を制御する制御手段と、を含んで構成され、
    前記制御手段は、
    設定された要求車速に応じた自動走行時駆動力を設定する自動走行時駆動力設定手段と、
    自動走行時駆動力に基づいて、前記スロットル弁を制御するためのスロットル制御指令値を設定するスロットル制御指令値設定手段と、
    自動走行時駆動力に基づいて、前記無段変速機を制御するための変速制御指令値を、自動走行時駆動力の変化に対して所定の一次遅れ特性を持たせて設定する変速制御指令値設定手段と、
    変速制御指令値に前記一次遅れ特性を持たせるための複数のフィルタゲインを有し、これらを選択的に設定するゲイン切換手段と、
    を含んで構成され、前記ゲイン切換手段は、前記TAP入力手段による入力の有無に応じてフィルタゲインを切り換え、該TAP入力手段による要求車速変化時に、通常時よりも小さなフィルタゲインとすることを特徴とする自動車の自動走行装置。
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