JP4146684B2 - 接着性樹脂組成物及びそれからなるフィルム状接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体分野で有用な特定構造のポリイミド系接着剤樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた、半導体素子を支持体に接着するのに好適なフィルム状接着剤、並びに該接着剤を用いた半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年半導体素子を支持体に接着するのにダイアタッチフィルムと呼ばれるフィルム状接着剤が使われている。従来のペースト接着剤に比べ、厚みやはみ出しの制御に優れているため、チップサイズパッケージ、スタックパッケージ、システムインパッケージなどの実装面積が小さい半導体パッケージにおいて多く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの高密度実装においてはチップの薄型化が進んでおり、100μm以下の厚みのウエハにダイアタッチフィルムを貼り付ける工程は、ウエハ破損を防ぐため薄削り時の表面保護テープをつけた状態で実施される。しかし、ウエハの表面保護層(ポリイミドなどのバッファーコート膜等)や薄削り時の表面保護テープは、この貼り付け工程における加熱により変質し、ウエハに反りを生じ、ウエハのカートリッジへの収納、搬送などに不具合を生じている。従って、より低温で接着できるダイアタッチテープが求められている。また、耐熱性及び吸湿後耐熱性を維持し、かつより低温接着性が改善された接着剤が求められている。
本発明は、これらの課題を解決できる接着剤樹脂組成物、及びそれからなるフィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の▲1▼〜▲7▼の態様を包含する。
▲1▼(A)下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミンと、
【化4】
【0005】
下記式(2)で表される酸無水物
【化5】
(上式中、R1、R6は3価の脂肪族基または芳香族基で、酸無水物骨格は5員環ないし6員環、R2〜R5は一価の脂肪族基または芳香族基を、nは0〜20の整数を表わす。)
を含有するテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる熱可塑性ポリイミド系樹脂と、
(B)熱硬化性樹脂とを含有してなる接着剤樹脂組成物。
【0006】
▲2▼前記式(1)で表されるジアミンが、下記式(3)のジアミンである上記▲1▼に記載の接着剤樹脂組成物。
【化6】
【0007】
▲3▼前記熱可塑性ポリイミド(A)100重量部に対し、熱硬化性樹脂(B)を5〜200重量部含む上記▲1▼または▲2▼に記載の接着剤樹脂組成物。
【0008】
▲4▼前記熱硬化性樹脂(B)がエポキシ樹脂である上記▲1▼〜▲3▼のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物。
【0009】
▲5▼さらにエポキシ樹脂硬化剤(C)を含む上記▲4▼に記載の接着剤樹脂組成物。
【0010】
▲6▼上記▲1▼〜▲5▼のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物からなるフィルム状接着剤。
【0011】
▲7▼耐熱性フィルムまたは金属箔の片面あるいは両面に、上記▲1▼〜▲5▼のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物を積層させてなるフィルム状接着剤。
【0012】
▲8▼上記▲1▼〜▲7▼のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物またはフィルム状接着剤で半導体素子を支持部材に接着させてなる半導体装置。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の接着剤樹脂組成物に用いるポリイミド系樹脂は、下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミンと、
【化7】
【0014】
下記式(2)で表される酸無水物
【化8】
(上式中、R1、R6は3価の脂肪族基または芳香族基で、酸無水物骨格は5員環ないし6員環、R2〜R5は一価の脂肪族基または芳香族基を、nは0〜20の整数を表わす。)
を含有するテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる特定構造の熱可塑性ポリイミド系樹脂である。
【0015】
接着剤樹脂組成物の接着温度は、そののガラス転移温度(Tg)と大きな相関があり、より低温で接着できるように樹脂を改質することが必要なときは、多くの場合、Tgを下げることが行われる。
【0016】
従来ポリイミドの低Tg化をはかる時、脂肪族やシリコーン骨格を含むモノマーを適量添加することが行われてきた。本発明では前記式(1)、より好ましくは前記式(3)の構造のジアミンを低Tg化に寄与する構造として取り入れたことに特徴がある。また、従来のシリコーンジアミンを用いる発明と同様に、前記式(2)の構造のシリコーン繰り返し単位や酸無水物のmol%を調整することでポリイミドのTgをコントロールすることができる。
【0017】
また、シリコーン構造をジアミンでなく、式(2)のように酸無水物側に取り入れることで、式(1)ないし式(3)の構造のジアミンをジアミン成分としてより多く取り入れることができる。
【0018】
本発明のポリイミドは、一般にポリイミドの悪い特性として知られる高い吸湿率や加水分解性という面でも、分子鎖が長いモノマー構造であり、イミド基密度の低下により改善されている。
【0019】
シリコーン構造を導入したポリイミドは、ポリイミドの溶剤溶解性が良くなる、吸湿性が低くなる、ガラス、シリコンなどへの接着強度が強くなる、Tgが低くなる、溶剤乾燥性がよくなるなどのよい点が認められ、本発明でもこれらの利点が享受できる。
【0020】
一方、シリコーン構造を導入することで、ガラス、シリコンなど以外への接着強度が低下する、エポキシ樹脂など熱硬化性樹脂との相溶性が悪くなるなどの悪い面もあり、接着剤樹脂組成物としては芳香族アミンも配合した方が好ましい。その面で、式(1)または(3)で表される芳香族アミンを配合したポリイミドは、芳香族イミドの特性を強く出すことができ、バランス良く、多種の被着体への接着強度を発現することができる。好ましくは、ジアミン中に10〜100mol%、式(1)ないし(3)の構造のジアミンを配合すると、本発明の効果が顕著に認められる。
【0021】
酸無水物末端シリコーンの配合量は、ガラス、シリコンなどの被着体への接着強度向上のみが目的の場合は、数mol%で十分である。より低い温度での接着性を改善したい場合は、接着温度に応じ数10mol%の単位で配合してもよい。シリコーンの鎖長は、接着強度を考慮すると式(2)におけるnが0〜20、より好ましくは0〜10程度が好ましい。好ましくは酸無水物中の5〜100mol%配合すると、本発明の効果が顕著に認められる。
【0022】
ここで、ポリイミド系樹脂という表現は、100%イミド化したポリイミド系樹脂以外に、その前駆体であるポリアミド酸が一部残っている樹脂も含むことを意味する。
【0023】
本発明で用いる熱硬化性樹脂(B)は、ポリイミド系樹脂(A)とある程度相溶するものであれば特に限定されるものではない。エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂など公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0024】
代表的熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂では、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものであれば特に限定されない。例えばフェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールFもしくはハロゲン化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変成フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
熱硬化性樹脂の好適な量は、ポリイミド系樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは5〜100重量部の範囲で用いられ、これより少ないと耐熱性が悪くなる傾向が認められることがあり、これより多いと接着時の流動性が大きくなる傾向が認められることがあり、その場合にはフィルム形成性も悪くなる。
【0026】
本発明でポリイミド系樹脂に加えるエポキシ樹脂には、ポリイミド末端にある酸やアミンや、完全にイミド化していないアミド酸などの官能基との反応性をもつこと、ポリイミド系樹脂のみでは困難な耐湿熱性のある架橋構造を付与すること、低分子として樹脂に可塑性を付与し、低温接着性に寄与することなどの機能がある。
【0027】
本発明でエポキシ樹脂にさらに加えて用いられるエポキシ樹脂硬化剤(C)は、エポキシ樹脂と反応性を有し、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。代表的例として、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール類などが挙げられる。
【0028】
本発明で用いる樹脂組成物には、無機物質フィラーを配合してもよい。フィラーは、接着剤に低熱膨張性、低吸湿性、高弾性、高熱伝導性などを付与する。フィルム状接着剤のフィルム強度向上、アンチブロッキング性付与にも寄与する。フィラーとしては例えば、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機絶縁体を単独又は2種以上混合して用いことができる。無機物質フィラーの配合量は、樹脂に対し1〜70体積%、より好ましくは1〜30体積%の範囲である。これよりも多いと接着性が低下することがあり、フィルム状のものではもろくなる。
【0029】
また、電気伝導性を付与するために、金属など導電性粒子や、異方導電粒子を添加しても良い。
さらに、本発明の樹脂組成物に、必要に応じてシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、等を適宜加えてもよい。カップリング剤は被着体やフィラーとの接着界面の接着強度向上に寄与する。
【0030】
本発明のポリイミド系樹脂の合成に用いられる式(2)以外のテトラカルボン酸無水物は、好ましくは酸無水物中の0〜95mol%の範囲で配合できる。そして構造は特に限定されるものではないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホン、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフイド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物等があり、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明で使用される式(1)または(3)以外のジアミンも、好ましくはジアミン中の0〜90mol%の範囲で配合でき、構造は特に限定されるものではないが、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフイド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフイド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフエノキシ)フエニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフイド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフイド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、o−トリジンスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,1−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)シクロヘキサン、等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0032】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの縮合反応は公知の方法で、有機溶媒中で行うことができる。この場合、テトラカルボン酸二無水物とジアミンは等モル又はほぼ等モルで用いるのが好ましく、各成分の添加順序は任意である。用いる有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール、テトラヒドラフラン等がある。
【0033】
ポリイミドの前駆体のポリアミド酸合成反応温度は80℃以下、好ましくは0〜50℃である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇する。
【0034】
ポリイミド系樹脂は、前記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は120℃〜250℃で熱処理する方法や化学的方法を用いて行うことができる。120℃〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去するとよい。
【0035】
ポリイミド系樹脂が溶剤可溶性を有する場合、ポリアミド酸を経由せずに、モノマーを溶剤中で溶解、加熱し、重合及び脱水閉環させることもできる。加熱温度は上記の120℃〜250℃が好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去するとよい。
【0036】
化学的方法で脱水閉環させる場合は、閉環剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いる。このとき必要に応じてピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の閉環触媒を用いてもよい。閉環剤又は閉環触媒は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で使用するのが好ましい。反応温度は熱イミド化に比べ低温で実施できる。ポリイミド合成後、貧溶媒に投入しポリイミドを析出させることで、触媒などとポリイミドを分離することができる。
【0037】
本発明樹脂組成物は、上記ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤などの熱硬化性樹脂を溶剤に溶解撹拌し、ワニス状にして用いることができる。ここで用いられる有機溶媒は、上記材料を均一に溶解又は混練できるものであれば特に制限はなく、そのようなものとしては例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン等が挙げられる。
【0038】
次いで、必要に応じ無機物質フィラー及び添加剤を加え混合する。この場合、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサーなどの分散機を適宜組み合せて、混練を行ってもよい。
【0039】
フィルム状接着剤の製造法としては、上記のワニスもしくはペースト状混合物を、例えばシリコーン系樹脂で表面処理し、剥離特性のよいPETシート等のベースフィルム上に均一に塗布し、使用した溶媒が充分に揮散する条件、すなわち、おおむね60〜200℃の温度で、1〜30分間加熱し、単層フィルム状接着剤を得る。
【0040】
また、耐熱性のコアフィルムや金属箔などの支持フィルムの片面もしくは両面に、上記のワニスもしくはペースト状混合物をコートし、加熱乾燥し溶剤を蒸発させ、フィルム状接着剤を作ってもよい。フィルム状接着剤の製法は上記手法に限定されるものではない。
【0041】
本発明で得られたフィルム状接着剤は、半導体素子をパッケージの支持部材に接着するのに用いることができる。
【0042】
本発明のフィルム状接着剤は、例えば、半導体素子とフレキシブル基板とを接着する場合、次の様な方法で接着することができる。
フィルム状接着剤を、加熱した半導体ウエハ裏面にロール貼り付けし、ウエハ外周でフィルムを切断しフィルム状接着剤付きウエハを得る。これをフィルム状接着剤ごとダイシングし、フィルム状接着剤付き素子を得る。これを支持体(リードフレーム、リジッド基板、フレキシブル基板、チップを積層する場合は、チップ、スペーサなど)に加熱圧着する方法がある。
本発明の接着フィルムの接着方法は、上に例示した方法に限定されるものではない。
【0043】
本接着剤組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着させてなる半導体装置としては、各種半導体パッケージや、基板(リジッド、フレキシブル含む)に直接素子を接着してなる半導体装置などが挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
温度計、攪拌機、キシレンを満たしたディーンスターク管、窒素吹き込み管を備えた300mlの五つ口フラスコに、APB5(式(3)構造のジアミン)、酸無水物末端シリコーン(下記式(4)の構造のもの)
【化9】
を酸/アミンモル比が1.005になるように、また固形分が30%、溶剤のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、m−キシレン比が7対3になるように全体で200gをとり、窒素フロー下で系を油浴で170〜180℃に加熱し、水を共沸除去しながら10時間保持した。
【0046】
得られたポリイミド系樹脂ワニスの固形分を測定し、ポリイミド系樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂(HP7200H:大日本インキ化学製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280))20重量部、硬化剤(2PHZ−PW:四国化成製、イミダゾール硬化剤)1重量部を加え、接着剤樹脂組成物ワニスを得た。
同ワニスを表面処理PETフィルム(帝人デュポン、A31、50μm厚)上に、接着剤厚みが25μmになるようにコートし、90℃20分間乾燥して、フィルム状接着剤を得た。
【0047】
(比較例1)
温度計、攪拌機、キシレンを満たしたディーンスターク管、窒素吹き込み管を備えた300mlの五つ口フラスコに、APB5(式(3)構造のジアミン)9.375g、シリコーンジアミン(α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS)、平均分子量906)33.102g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)98g、m−キシレン42gをとり、窒素フロー下で50℃に加熱し攪拌した。ジアミンの溶解後、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)17.523gを少量ずつ添加した。窒素ガスを吹き込みながら系を油浴で170〜180℃に加熱し、水を共沸除去しながら10時間保持した。
【0048】
得られたポリイミド系樹脂ワニスの固形分を測定し、ポリイミド系樹脂100重量部に対し、エポキシ樹脂(HP7200H:大日本インキ化学製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280))20重量部、硬化剤(2PHZ−PW:四国化成製、イミダゾール硬化剤)1重量部を加え、接着剤樹脂組成物ワニスを得た。
同ワニスを表面処理PETフィルム(帝人デュポン、A31、50μm厚)上に、接着剤厚みが25μmになるようにコートし、90℃20分間乾燥して、フィルム状接着剤を得た。
【0049】
低温接着性を調べるため、単層フィルムを50μm厚のポリイミドフィルムに110℃で加熱しながらはりつけ、これを5mm幅に切り接着試験片を作った。この試験片の5mm×20mm領域の接着面を25mm×30mmのシリコンチップに110℃、2.5kgf加重、2sで接着し、無加重で150℃1分間加熱した。この試験片を引っ張り試験機にセットし、90度ピール強度を測定した。その結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
次に、得られた接着フィルムの耐熱性を調べるため、熱時せん断接着力を試験した。接着フィルムを5mm×5mmの大きさに切断し、これを5mm×5mmのシリコンチップと20mm×20mmのシリコンチップの間に挟み、1000gの荷重をかけて、200℃、1秒間圧着させたのち、180℃、3h無加重で加熱硬化した。この試験片の剪断接着力をせん断強度測定装置を用いて、260℃加熱30秒後の熱時に測定した。結果を表2に示す。
【0052】
また、85℃、60RH%条件で1週間吸湿させた、同じ作り方で作った試験片を、吸湿槽より取り出してから30分以内に同じせん断強度試験条件で測定した。結果を表2に示す。
さらに、フィルムを重ねてプレスし、50mm×50mm×1mmの試験片を作成し、85℃、85RH%で1週間吸湿させ、吸湿率を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
以上の実施例1と比較例1を対比すると、実施例1が比較例1に比べ低吸湿性、吸湿後熱時せん断強度で優れていた。これらの結果は、半導体パッケージにおける吸湿後のリフロー工程での半導体パッケージ破損に相関し、本発明の樹脂組成物を用いたフィルム状接着剤がパッケージの耐リフロー信頼性に優れることを示している。
【0055】
【発明の効果】
本発明の接着剤組成物およびフィルム状接着剤は、低温接着性に優れており、吸湿率も低く、耐熱性も優れている。本発明の接着剤組成物および接着フィルムを用いれば、半導体素子をパッケージに低温で接着でき、なおかつ高い耐吸湿リフロー信頼性を得られる。
Claims (7)
- 前記熱可塑性ポリイミド(A)100重量部に対し、熱硬化性樹脂(B)を5〜200重量部含む請求項1に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記熱硬化性樹脂(B)がエポキシ樹脂である請求項1または2に記載の接着剤樹脂組成物。
- さらにエポキシ樹脂硬化剤(C)を含む請求項3に記載の接着剤樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物からなるフィルム状接着剤。
- 耐熱性樹脂フィルムまたは金属箔の片面あるいは両面に、請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物を積層させてなるフィルム状接着剤。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤樹脂組成物またはフィルム状接着剤で半導体素子を支持部材に接着させてなる半導体装置。
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