JP4145376B2 - 電線・ケーブル被覆用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電線・ケーブル被覆用樹脂材料に関する。さらに詳しくは、実質的にハロゲン成分を含まず、燃焼させても有毒なハロゲンガスを発生させず、さらには高難燃性な電線・ケーブル被覆用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電線・ケーブル被覆用樹脂材料は、従来より、架橋ポリエチレン、EPゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、クロロプレンゴム等が使用されており、これらの被覆材料の選択に当たっては、電気火災事故の低減化をはかるため、絶縁被覆材料の難燃化の規制が行なわれており、UL,CSA,DIN,JIS等の世界各国の主要規格に規定されている。
【0003】
近年は、これらの難燃規制による高難燃性のほかに、低有害ガス化、特にハロゲン成分を含む電線・ケーブル被覆材料を燃やした時に発生するダイオキシン等の有害物質を無くする要求が高まってきており、このため低ハロゲン化、ノンハロゲン化の絶縁被覆材の開発が行なわれている。
かかる目的で、素材として使われているポリ塩化ビニルを非ハロゲン系の樹脂にしたり、非ハロゲン系の難燃剤にする試みは数多く成されている。例えば、特開昭58−49738号公報、特開昭58−98347号公報、特開昭58−109576号公報、特開昭58−145751号公報、特開昭59−105040号公報、特開昭63−172753号公報には、ポリオレフィンとビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水素添加物からなる電線被覆材料が提案されており、さらに、特開昭63−172759号公報、特開平2−53845号公報、特開平2−53846号公報にはポリオレフィンとビニル芳香族化合物−ブロック共重合体の水素添加物の官能基化合物で変性したポリマーおよび水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤からなる電線被覆材料が提案されている。また、特開昭60−84341号公報、特開昭60−270657号公報、特公表昭60−501215号公報、特開昭62−25149号公報、特開昭62−48757号公報、特開昭62−48758号公報、特開昭62−199637号公報、特開平3−7755号公報には、ポリフェニレンエーテル、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水素添加物、鉱物油、ポリオレフィンおよび難燃剤として芳香族リン酸エステルまたは水酸化マグネシウム等の水和金属酸化物からなる電線被覆材料が提案されている。
【0004】
このような従来技術の電線被覆材料は、確かにポリ塩化ビニルにとって替わることにより、低ハロゲン化、非ハロゲン化となり近年望まれている低有害ガス化の要求に合致したものとなり、今後期待される電線被覆材料の一つである。
しかしながら、上記した従来技術の電線被覆材料は、低ハロゲン化されているものの未だハロゲン成分を含んでいたり、非ハロゲン化を目指すため無機充填材に該当する無機系の難燃剤を多量に含むため被覆材料の物性の低下や材料自体の比重の増加など好ましくない欠点を露呈しているのが現状である。
【0005】
また、ポリフェニレンエーテルが有する難燃性を利用した、ポリフェニレンエーテルを含む先行技術による電線被覆材料は、実質的に非ハロゲン化となっているものの難燃レベルが不十分であったり、耐油性に劣る欠点を有しているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した先行技術では達成できなかった非ハロゲン化電線・ケーブル被覆材料の耐油性を改良し、難燃性に優れた電線・ケーブル用途に使用できる電線・ケーブル被覆用樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような現状に鑑み、ポリフェニレンエーテル、ポリオレフィンからなる電線被覆材料の難燃性に関して鋭意検討を重ねた結果、特定のリン化合物と特定構造の1,3,5−トリアジン誘導体を含む樹脂組成物がポリフェニレンエーテル系樹脂と相俟って難燃性に優れた電線・ケーブル被覆用樹脂組成物をもたらすことを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂 5〜95重量%
(b)ポリオレフィン系樹脂 95〜5重量%
上記(a)、(b)成分の合計100重量部に対して、
(d)有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム4〜40重量部、
(e)下記の一般式(I)で表される化学構造を有する1,3,5−トリアジン誘導体2〜20重量部を含むことを特徴とする電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、であり、
【0009】
【化3】
【0010】
(式中、Xはモルホリノ基またはピペリジノ基であり、Yはピペラジンから誘導される2価の基であり、nは1以上の数である。)、
さらには、
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂 5〜95重量%
(b)ポリオレフィン系樹脂 95〜5重量%
上記(a)、(b)成分の合計100重量部に対して、
(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜100重量部、
(d)有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム4〜40重量部、
(e)下記の一般式(I)で表される化学構造を有する1,3,5−トリアジン誘導体2〜20重量部を含むことを特徴とする電線・ケーブル被覆用樹脂組成物、である。
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、Xはモルホリノ基またはピペリジノ基であり、Yはピペラジンから誘導される2価の基であり、nは1以上の数である。)
本発明で(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単にPPEと略記)は、本発明の樹脂組成物に耐熱性および難燃性を付与するうえで必須な成分であり、該PPEは、結合単位:
【0013】
【化5】
【0014】
(ここで、R1,R2,R3,およびR4はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)からなり、還元粘度(0.5g/dl,クロロホルム溶液,30℃測定)が、0.15〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜1.0の範囲にあるホモ重合体および/または共重合体である。
【0015】
このPPEの具体的な例としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0016】
かかるPPEの製造方法は、公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書に記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号明細書、同第3257357号明細書および同第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報および特開昭50−51197号公報および同63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できる。
【0017】
また、本発明で用いるPPEは、上記したPPEのほかに、該PPEとスチレン系モノマーおよび/もしくはα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体(エステル化合物も含む)とをラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態、スラリー状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該スチレン系モノマーおよび/もしくはα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01〜10重量%グラフトまたは付加)PPEであってもよく、さらに上記したPPEと該変性PPEの任意の割合の混合物であってもかまわない。
【0018】
また、本発明で用いるPPEは上記したPPEのほかに、これらPPE100重量部に対してポリスチレン(アタクチック、シンジオタクチックのいずれでも良い)またはハイインパクトポリスチレンを400重量部を超えない範囲で加えたものも好適に用いることができる。
つぎに、本発明の(b)成分として供するポリオレフィン系樹脂は、通常、押出成形、射出成形などの成形材料として用いられるのポリオレフィンであり、例えば、高密度ポリエチレン、超高分子量高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、密度0.90未満の超低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、超高分子量アイソタクチックポリプロピレンや、エチレン、プロピレン、他のα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体の中から選ばれる2種以上の化合物の共重合体、例えばエチレン/ブテン−1共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、プロピレン/エチレン(ランダム、ブロック)共重合体、プロピレン/1−ヘキセン共重合体、プロピレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブテン−1等を挙げることができ、これらは1種のみならず2種以上を併用することができる。これらのポリオレフィンのうち、ポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。
【0019】
また、本発明で用いる(b)成分は、上記したポリオレフィン系樹脂のほかに、該ポリオレフィン系樹脂を、脂肪族性不飽和基を有しさらにカルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、イミド基、グリシジル基、オキサゾリン基、メルカプト基およびシリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を同時に有する官能性化合物をラジカル発生剤の存在下、非存在下で溶融状態、溶液状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる変性(該官能性化合物が0.01〜10重量%グラフトまたは付加)ポリオレフィンであってもよく、さらに上記した未変性のポリオレフィン系樹脂と該変性ポリオレフィンの任意の割合の混合物であってもかまわない。
【0020】
かかる官能性化合物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、ハイミック酸等の不飽和ジカルボン酸や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸、リノール酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、無水ハイミック酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸の酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸の酸無水物や、アリルアルコール、3−ブテン−2−オール、プロパギルアルコール等の不飽和アルコール化合物や、p−ビニルフェノール、2−プロペニルフェノール等のアルケニルフェノールや、p−アミノスチレン、アリルアミン、N−ビニルアニリン等の不飽和アミン化合物や、マレイミド等のα,β−不飽和ジカルボン酸のイミドまたはα,β−不飽和モノカルボン酸のイミドや、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジル等の不飽和グリシジル化合物や、イソプロペニルオキサゾリン等の不飽和オキサゾリン化合物や、p−tert−ブチルメルカプトメチルスチレン等の不飽和メルカプト化合物や、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン等の不飽和オルガノシラン化合物等が挙げられ、これらは単独で使用することもできるが、スチレン等のビニル芳香族化合物と併用してもかまわない。
【0021】
また、この変性ポリオレフィンを製造する際に供するラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられ、これらの中から好適に1種以上を選ぶことができる。
【0022】
つぎに、本発明で(c)成分として用いる水添ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、全ビニル結合量が10〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であり、例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するブロック共重合体のブロックBに基づく脂肪族系二重結合を水素添加反応して得られる水添ブロック共重合体であることが好ましい。
【0023】
かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は、少なくとも50%を超えることが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは耐熱安定性の観点より85%以上である。そしてこの水素添加率は通常、水添反応の前後のヨウ素価滴定、赤外分光光度計やNMR等で知ることができる。
この(c)成分の水添ブロック共重合体は、その水素添加する前のブロック共重合体が有する結合したビニル芳香族化合物の量は10〜90重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%である。またブロック構造に言及すると、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロックまたは、ビニル芳香族化合物を50重量%を超えることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックの構造を有しており、そしてさらに、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロックまたは、共役ジエン化合物を50重量%を超えることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックの構造を有するものである。
【0024】
そして、こらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化合物またはビニル芳香族化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組み合わせでなっていてもよく、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体および該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0025】
このブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレンなどの中から1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの中から1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0026】
そして、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックは、そのブロックにおける共役ジエン化合物の結合形態は、全ビニル結合量(1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量)が10〜90%であることが好ましく、上記した(b)成分がポリエチレン系樹脂(重合成分としてエチレンを50%以上含むエチレン系共重合体)の場合、全ビニル結合量は10〜50%であることが好ましく、また上記した(b)成分がポリプロピレン系樹脂(重合成分としてプロピレンを50%以上含むプロピレン系共重合体)の場合、全ビニル結合量は45〜85%であるであることが好ましい。
【0027】
かかる(b)成分のポリオレフィン系樹脂によって適宜、水添ブロック共重合体の該共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの全ビニル結合量を選択する必要がある。かかる選択を誤ると得られる樹脂組成物に分散するポリフェニレンエーテル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂の分散性が悪化し好ましくない。
また、上記の構造を有するブロック共重合体の数平均分子量は10,000〜1,000,000であるであることが好ましく、さらに好ましくは30,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜300,000であり、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比)は10以下であるであるであることが好ましい。さらに、このブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0028】
本発明で用いる(c)成分の水添ブロック共重合体は、上記した構造を有するものであれば、1種のみならず2種以上を併用することができる。
これらの上記した(c)成分の水添ブロック共重合体は、上記した構造を有するものであればどのような製造方法で得られるものであってもかまわない。公知の製造方法の例としては、例えば、特開昭47−11486号公報、特開昭49−66743号公報、特開昭50−75651号公報、特開昭54−126255号公報、特開昭56−10542号公報、特開昭56−62847号公報、特開昭56−100840号公報、特開平2−300218号公報、英国特許第1130770号明細書および米国特許第3281383号明細書および同第3639517号明細書に記載された方法や英国特許第1020720号明細書および米国特許第3333024号明細書および同第4501857号明細書等に記載された方法が挙げられる。
【0029】
また、本発明で用いる(c)成分の水添ブロック共重合体は、上記した水添ブロック共重合体のほかに、該水添ブロック共重合体とα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体とをラジカル発生剤の存在下または非存在下で、溶融状態、溶液状態またはスラリー状態で80〜350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が0.01〜10重量%がグラフトまたは付加した)水添ブロック共重合体であってもよく、さらに上記した水添ブロック共重合体と該変性水添ブロック共重合体の任意の割合の混合物であってもかまわない。
【0030】
つぎに本発明で(d)成分として用いる有機リン酸エステル化合物は、例えば、下記一般式
【0031】
【化6】
【0032】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アリール基またはアルキル置換アリール基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xはアリーレン基を表す。nは0〜5の整数である。(異なるn値を有する縮合物の組成物では、nはそれらの平均値を表す)〕で示されるリン酸エステルおよびまたはその縮合物である。n=0はリン酸エステル単量体を示す。代表的なリン酸エステル単量体としては、例えばトリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等を挙げることができる。縮合物としては、通常nは1〜5の値を取り得るが、好ましくは平均値で1〜3である。また、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも一つがアリール基であることが好ましく、特に好ましくはR1、R2、R3及びR4のすべてがアリール基である。好ましいアリール基としてはフェニル、キシレニル、クレジルまたはこれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。また、好ましいXのアリーレン基としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビフェノールまたはこれらのハロゲン化誘導体からそれぞれ2個の水酸基が脱離した残基を挙げることができる。代表的な縮合型のリン酸エステル化合物としては、レゾルシノール・ビスフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリクレジルホスフェート化合物などが挙げられる。
【0033】
そしてさらに本発明で(d)成分として用いるポリ燐酸アンモニウムは、例えば、下記一般式(II):
(NH4)n+2PnO3n+1 ・・・・・(II)
(式中nは2を超える正数である)で表されるものである。
このポリ燐酸アンモニウムは一般に市販されており、具体的には、商標「スミセーフ−P」(住友化学(株)製)、商標「エクソリット−422」(ヘキスト社製)、商標「エクソリット−700」(ヘキスト社製)、商標「フォスチェックP/40」(モンサント社製)等を挙げることができる。
【0034】
また、さらに、このポリ燐酸アンモニウムの粒子表面にメラミンを付加及び/または付着させたメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムも耐水性に優れるため中でも好適に用いることができる。そしてメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムの原料として、特開平4−300204号公報に記載されたII型ポリ燐酸アンモニウム微粒子も用いることができる。II型ポリ燐酸アンモニウム粉末は例えば次の方法で得ることができる。すなわち、等モルのリン酸ジアンモニウムと五酸化リンとを温度290〜300℃で加熱攪拌し、次いで尿素が0.5倍モルとなる量の尿素水溶液(濃度77重量%)を噴霧しながら添加し、引き続きアンモニア雰囲気下で数時間、温度250〜270℃で焼成してII型ポリ燐酸アンモニウム粉末を得ることができる。
【0035】
本発明で用いる好適なメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムは、このようなポリ燐酸アンモニウムを用い、下記方法によって製造可能である。
すなわち、第一段階として予備加熱されたニーダー等の加熱混練装置内に、上記した粉末状ポリ燐酸アンモニウムを投入し、該ポリ燐酸アンモニウム粉末が溶融せずにしかも該ポリ燐酸アンモニウム中のアンモニアが容易に脱離を起こす温度即ち300℃以下、好ましくは200〜280℃において0.5〜5時間加熱する。この加熱処理によって、本来ポリ燐酸アンモニウム中に化学量論量で存在しているアンモニアの一部(化学量論量のアンモニアに対して5〜10重量%)が脱離する。このようにして得たポリ燐酸アンモニウム(以下、「アンモニア不足ポリ燐酸アンモニウム」と略記する)の表面は、アンモニアの脱離によって、ヒドロキシル基(オキシ基)が形成されて酸性を示すようになる。このアンモニア不足ポリ燐酸アンモニウムは、具体的には、1重量%懸濁水溶液のpHが4〜6を示す程度にアンモニア不足状態となっていることが望ましい。
【0036】
なお、アンモニア不足ポリ燐酸アンモニウムは、当然ながらポリ燐酸アンモニウムの公知の製造工程においてアンモニアの結合量を化学量論量以下に調整することによっても製造できる。
次いで第二段階として、例えばアンモニア脱離を行った同一の装置で、アンモニア不足ポリ燐酸アンモニウム粉末を、その融点未満、かつ、メラミンが昇華し得る温度、具体的には250〜300℃の温度でメラミンを添加して、アンモニア不足ポリ燐酸アンモニウム粒子表面に該メラミンを付加および/または付着させる。この反応で使用するメラミンはメラミンモノマーとして市販されているものを使用することができる。ここで、「付加」とは、添加されたメラミンがポリ燐酸アンモニウムに由来する酸性のヒドロキシ基(オキシ基)とイオン的に結合した状態を意味する。従って、「付加」したメラミンは加熱されても安定であって再度離脱することはない。また、「付着」とは、添加されたメラミンがポリ燐酸アンモニウム粒子の表面に吸着された状態を意味し、加熱の継続によってポリ燐酸アンモニウム粒子の表面に吸着しているメラミンが昇華と吸着を繰り返して最終的には酸性ヒドロキシ基とイオン的に結合する。この際にメラミンは、ポリ燐酸アンモニウムに対して0.5〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の量で添加されることが望ましい。添加されたメラミンは全量ポリ燐酸アンモニウム粒子表面に付加および/または付着し、その結果メラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムが得られる。
【0037】
このようにして得られたメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムを、本発明の樹脂組成物に配合した場合、高温または炎との接触などによる熱分解に際しても、非引火性ガス(水、二酸化炭素、窒素など)と炭素質残渣のみを生じ、腐食性ガス、ハロゲン系ガスや有毒性ガスの発生を殆ど伴わない利点を有する。
上記したように、本発明で用いる(d)成分は2種類のものを挙げることができ、これらは1種単独で使用できるほかに、さらに2種を併用することができる。
2種を併用する場合の量比関係は、得られる樹脂組成物の機械的特性、難燃性を考慮し、任意の比率で選ぶことができる。
【0038】
つぎに、本発明で(e)成分として用いる1,3,5−トリアジン誘導体とは、非ハロゲン系難燃剤であって、1位、3位および5位の位置で窒素原子を含む六員環複素化合物の誘導体である。このような1,3,5−トリアジン誘導体成分は、下記の一般式(I):
【0039】
【化7】
【0040】
(式中、Xはモルホリノ基またはピペリジノ基、Yはピペラジンから誘導される2価の基、nは1以上、好ましくは2〜50であって通常は約11である)で表される。このような1,3,5−トリアジン誘導体成分の好適具体例としては、置換基Xがモルホリノ基である2−ピペラジニレン−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジンのオリゴマーまたはポリマー、および置換基Xがピペリジノ基である2−ピペラジニレン−4−ピペリジノ−1,3,5−トリアジンのオリゴマーまたはポリマー等を挙げることができる。
具体的に、2−ピペラジニレン−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジンのポリマーは、以下の方法で製造することができる。
すなわち、等モルの2,6−ジハロ−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジン(例として、2,6−ジクロロ−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジンや 2,6−ジブロモ−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジン)とピペラジンとを、有機塩基(例えば、トリエチルアミンまたはトリブチルアミン等)または無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウム等)の共存下、例えばキシレン等の不活性溶媒中で、好ましくはこの種の不活性溶媒の沸点以下の温度に加熱して反応させる。反応終了後に、反応混合物を濾過して固形物を分離し、分離された固形物を沸騰水で洗浄し、この際、反応で生成する副製物の塩を該沸騰水に溶解させて除去した後に、残存する固形物を乾燥する。ここで得られるポリ(2−ピペラジニレン−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジン)の性状は以下の通りである。
・溶解性:水および有機溶剤に不溶。
・融点:なし(分解温度310℃付近)。
・嵩密度:0.3g/cc
・構造式:下記の一般式(III)に示す。
【0041】
【化8】
【0042】
(式中、nは11である)
このようにして得られた1,3,5−トリアジン誘導体成分を、本発明の樹脂組成物に配合した場合、高温または炎との接触などによる熱分解に際しても、非引火性ガス(水、二酸化炭素、窒素など)と炭素質残渣のみを生じ、腐食性ガス、ハロゲン系ガスや有毒性ガスの発生を殆ど伴わない利点を有する。
また、1,3,5−トリアジン誘導体は、上記した有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウムのリン化合物とポリフェニレンエーテル系樹脂との相乗効果によって、本発明の樹脂組成物に優れた難燃性を付与する。
【0043】
本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、上記した(a)、(b)、(d)および(e)成分が基本成分として構成され、かかる成分の割合は、(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂が5〜95重量%、(b)成分のポリオレフィン系樹脂が95〜5重量%であり、(d)成分の有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウムが(a)成分と(b)成分との合計量100重量部に対して4〜40重量部であり、(e)成分の1,3,5−トリアジン誘導体が(a)成分+(b)成分の合計量100重量部に対して2〜20重量部である。
【0044】
なお、ここで(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂と(b)成分のポリオレフィン系樹脂を好適に混合するには何らかの混和剤が存在するのが好ましく、この混和剤としては先記した変性ポリフェニレンエーテルと変性ポリオレフィンとの反応によって得られるグラフトポリマーを利用したり、またポリオレフィン−ポリスチレンのグラフトもしくはブロック共重合体も利用できる。
【0045】
この混和剤として容易に入手し利用できるものとして(c)成分の水添ブロック共重合体が挙げられる。この(c)成分の水添ブロック共重合体の配合量は、(a)成分+(b)成分の合計量100重量部に対して1〜100重量部である。
本発明の一つは、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の配合量が5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%である。かかる配合量が95重量%を超える場合、得られる樹脂組成物の耐熱性は極度に優れるものの、成形加工性、耐溶剤性が劣り好ましくない。また、5重量%未満では成形加工性、耐溶剤性に優れるものの、耐熱性が劣り耐熱材料として利用できないほかに、さらに、本発明の成分(d)および(e)成分との難燃相乗効果が得られず好ましくない。
【0046】
本発明において、(b)ポリオレフィン系樹脂の配合量が95〜5重量%であり、好ましくは80〜20重量%である。かかる配合量が5重量%未満では、得られる樹脂組成物の耐熱性は優れるものの、成形加工性、耐溶剤性が劣り好ましくない。また、95重量%を超える場合は成形加工性、耐溶剤性は良好なものの、耐熱性が劣り耐熱性材料として利用できない。
【0047】
本発明のもう一つは、(c)水添ブロック共重合体の配合量は、上記(a)、(b)成分の合計100重量部に対して、1〜100重量部である。かかる配合量が1重量部未満では本発明の樹脂組成物の混和剤としての効果(ポリプロピレン系樹脂中にポリフェニレンエーテル系樹脂を微細に乳化分散させる効果、ポリフェニレンエーテル系樹脂中にポリオレフィン系樹脂を微細に乳化分散させる効果)が見られず好ましくない。また、かかる配合量が100重量部を超える場合は、(a)、(b)成分が示す作用効果の耐熱性、耐溶剤性の低下が顕著であり好ましくない。
【0048】
また、本発明において(d)、(e)成分の配合量は、上記した各々の範囲で用い、これらの下限値に満たない場合は難燃性改良効果が見られず好ましくなく、またこれらの上限値を超える場合は難燃性に優れるものの、機械的物性が顕著に悪化し好ましくない。
本発明では、上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、耐摩耗性改良のためのシリコーン化合物(オリゴマー、ポリマーも含む)、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど)、難燃効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、無機または有機の充填材や強化材(ガラス繊維、カーボン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ウィスカー、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0049】
本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、上記した各成分を用いて、▲1▼(a)〜(e)成分を一括して溶融混練する方法。▲2▼(a)成分と(c)成分の溶融混練状態下に(b)成分、(d)成分および(e)成分を追加添加し溶融混練する方法。▲3▼(a)成分を溶融混練した状態下に、(b)成分、(c)成分、(d)成分および(e)成分を追加添加し溶融混練する方法や▲4▼(a)成分と(b)成分の一部を溶融混練した状態下に、(b)成分の残部と(c)成分、(d)成分および(e)成分を追加添加し溶融混練する方法など種々の方法で製造することができる。これらの方法として例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常200〜350℃の中から好適な樹脂組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
【0050】
このようにして得られる本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、公知の電線押出被覆装置を用いて、例えば、光ファイバーの被覆材、低電圧タイプの電線・ケーブル、計装ケーブル、電子ワイヤー、自動車用ワイヤーハーネス、および原子力発電所用ケーブルなどの制御ケーブルなどにも適している。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって、さらに詳細に説明する。各成分は次のものを用いた。(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂
(a):2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.34のポリフェニレンエーテル
(b)成分のポリオレフィン系樹脂
(b1):ホモ−ポリプロピレン(M1600:日本ポリオレフィン(株)製)
(b2):低密度ポリエチレン(M1804:旭化成工業(株)製)
(c)成分の水添ブロック共重合体
(c1):ポリスチレン−水素添加されたポリイソプレン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量86,000、分子量分布1.05、水素添加前のポリイソプレンの全ビニル結合量(1,2−ビニル結合および3,4−ビニル結合の合計量)が55%、水素添加率が84.8%水添ブロック共重合体を合成した。
【0052】
(c2):ポリスチレン−水素添加されたポリ(イソプレン/ブタジエン=67wt(重量)%/33wt%のランダム共重合体)−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量82,000、分子量分布1.04、水素添加前のポリブタジエンとポリイソプレンのランダム共重合体の全ビニル結合量(1,2−ビニル結合および3,4−ビニル結合の合計量)が50%、水素添加率が84.3%の水添ブロック共重合体を合成した。
【0053】
(c3):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量48%、数平均分子量91,000、分子量分布1.06、水素添加前のポリブタジエンの全ビニル結合量(1,2−ビニル結合)が76%、水素添加率が99.6%の水添ブロック共重合体を合成した。
(c4):ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造を有し、結合スチレン量35%、数平均分子量133,000、分子量分布1.09、水素添加前のポリブタジエンの全ビニル結合量(1,2−ビニル結合)が38%、水素添加率が99.8%の水添ブロック共重合体を合成した。
(d)成分の有機リン酸エステル化合物
(d1):トリフェニルフォスフェート(TPP:大八化学工業(株)製)
(d2):芳香族縮合リン酸エステル(CR−741:大八化学工業(株)製)
(d3):メラミン被覆ポリ燐酸アンモニウム(TERRAJU−C60:チッソ(株)製)
(e)成分の1,3,5−トリアジン誘導体
シアヌル酸クロライド、モルホリンおよびピペラジンを用いて、2−ピペラジニレン−4−モルホリノ−1,3,5−トリアジンのポリマー(n=11、分子量約2770)を合成した。
(f)他の環状含窒素化合物
本発明で用いる(e)成分と異なる構造で、イソシアヌル酸の誘導体であるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(融点134℃:四国化成工業(株)製)を用いた。
【0054】
【実施例1〜7および比較例1〜4】
(a)成分のポリフェニレンエーテル、(b)成分のポリオレフィン系樹脂、(c)成分として混和剤である水添ブロック共重合体、(d)成分として有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム、(e)成分として1,3,5−トリアジン誘導体を表1に示した組成で配合し、樹脂流れ方向に対し上流に第1供給口及び下流に第2供給口を有し、第2供給口の上流及び第2供給口とダイとの間に真空ベント口を設けた二軸押出機ZSK−40(WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて前段バレル設定温度290〜310℃、後段バレル設定温度250〜290℃、スクリュー回転数295rpm、吐出量60kg/時間の条件にて溶融混練しペレットとして得た。なお、ここで、(a)成分のポリフェニレンエーテルおよび(d)成分の有機リン酸エステル化合物は、押出機の第1供給口より供給し、(b)成分、(d)成分のメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムおよび(e)成分は押出機の第2供給口より供給した。また、(c)成分の水添ブロック共重合体のうちイソプレン系水添ブロック共重合体は押出機の第2供給口より供給し、ブタジエン系水添ブロック共重合体は押出機の第1供給口より供給した。
【0055】
上記の製造条件で得たペレットを用いて240〜280℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で曲げ弾性率測定試験用テストピースを射出成形した。このテストピースを用いて曲げ弾性率(ASTM D−790:23℃)を測定した。また燃焼試験としてUL94規格に準拠して、試験片厚さ1/16インチのサンプルを上記成形機にて成形し、得たサンプル用いて燃焼試験を実施した。
【0056】
そしてさらに、上記の押出機で得たペレット樹脂を電線被覆押出機(40mm短軸押出機:設定温度250℃〜280℃)を用いて、110℃〜150℃に加熱したダイスに直径1.0mm銅線を通し、樹脂を0.5mmの厚さで被覆した。ここで得た被覆した電線を60度に傾斜する治具に固定し、着火させ、着火〜消火までの時間を測定する被覆電線燃焼試験を実施した。
これらの結果を併せて表1に載せた。
【0057】
これらの結果より、ポリフェニレンエーテル系樹脂/ポリオレフィン系樹脂/水添ブロック共重合体から構成される樹脂組成物の難燃化において、下記のことが明確になった。
▲1▼本系樹脂組成物の難燃剤として有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム/環状含窒素化合物の併用系の中でも、環状含窒素化合物として1,3,5−トリアジン誘導体化合物が顕著に難燃性効果がある。
【0058】
▲2▼本系樹脂組成物において、有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム、さらに1,3,5−トリアジン誘導体化合物の難燃剤の他に必須成分としてポリフェニレンエーテル系樹脂を含むことによりさらに難燃効果が発揮される。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物は、成分として含まれるポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃剤のリン系化合物と1,3,5−トリアジン誘導体化合物とが複合併用されていることにより、難燃性が著しく改良された樹脂組成物である。
Claims (3)
- 電線・ケーブル被覆用樹脂組成物が、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂 5〜95重量%(b)ポリオレフィン系樹脂95〜5重量%上記(a)、(b)成分の合計100重量部に対して、(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜100重量部、(d)有機リン酸エステル化合物およびまたはポリ燐酸アンモニウム4〜40重量部、(e)下記の一般式(I)で表される化学構造を有する1,3,5−トリアジン誘導体2〜20重量部を含むことを特徴とする電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
- 成分(d)がメラミン被覆ポリ燐酸アンモニウムである請求項1または2に記載の電線・ケーブル被覆用樹脂組成物。
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