JP4145156B2 - ガラス製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重金属イオンや有機物、あるいは有機官能基を有する物質などの吸着機能、保水機能を備えたゼオライト化ガラスに関し、詳しくは、主として廃ガラスから表面に吸着能を有する発泡性のガラスの製造技術に関するものであり、海中に浮遊沈降させて、重金属分やCOD分の除去を行う、あるいは屋上緑化用の軽量埋設物としてその表面に肥料分を吸着保持させるための比重を制御し、保水性を保持しつつしかも表面に吸着能を有するガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来瓶ガラスや蛍光管ガラスはガラス自体の組成が一定しないこと、又蛍光管のように、洗浄が困難な場合が多々あり、そのまま板ガラス、瓶ガラス、あるいは蛍光管用として再生することが困難であった。特に、瓶ガラスについては着色のために各種の金属を添加しており、成分の制御が困難な為に、多くの部分は埋設処理を行っているのが現状である。また一部は回収されているが、これらは粉砕し、発泡剤などと混合し焼成して多孔性ガラスにし、建築素材として、また解放孔の多いガラスについてはその保水性を利用して、屋上あるいは屋根緑化用の軽量屋根材として、あるいは保水材として使われていた。
【0003】
更に、一部については、より高温で溶解しノズルから噴出させることによっていわゆるグラスウール等の保温などに使う繊維状のガラスを作ることが行われるようになっている。しかしながらこのような形で使われるのはごく一部であること、また処理作業に費用がかかる割には製品付加価値が低いので実際への応用が進まず、埋設に回される率が多いのが現状である。
【0004】
一方、表面吸着性の点からは、原料がガラスではなく、同様な成分である、シリカ・アルミナを主成分とする石炭灰から焼成条件を制御してゼオライトを作ることが行われており、この場合、粒状体を作ることが行われている。
【0005】
そのほか、廃ガラスを利用して形成されたガラス組成物であって、吸着性、イオン交換性などを有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。このガラス組成物は、溶融した廃ガラスを1300℃〜1380℃程度の高温に保持してゼオライトを添加し、前記温度に3時間〜6時間保持した後、さらに、用途に応じて、6時間〜12時間程度かけて徐冷することによって形成される。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−293566号公報(第3−5頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、廃ガラスについては、ガラスそのものが天然素材を使っており、もしガラスに重金属が含まれていても極めて安定であり、通常の状態では地中埋設しても重金属汚染の問題の起こることは極めてまれであることから地中埋設でも他のケースに比較しては問題は極めて少ないといえる。しかし、ガラス製造にかかる大きなエネルギーを、使用済みとはいえそのまま埋設することは地球温暖化が叫ばれている現在においては環境上問題であると考えねばならない。また、埋設にかかる場所が極めて限られる現在、その有効活用が最も望まれる所である。
【0008】
一方、現在、所定の工程で処理され発泡ガラスあるいは多孔質ガラスとして再活用されているガラスについては、たとえば屋上/屋根緑化用として今後の発展が大いに期待される。しかしながら、現状では、その多孔性を利用した保水性並びに軽量と言うメリットがあるだけであり、その割には処理費用から来る高価な価格ととの見合い上、廃ガラス処理の工業化として経済的に魅力のある物では無いという問題点があった。
【0009】
また、ガラス回収ではないが、同様な回収で行われる石炭灰からのゼオライト生成については、原料石炭灰に重金属類を多く含むために、その使用範囲が限定されており、廃ガラスを原料とする無害な発泡ガラスのように屋上緑化用や、畑に保水材として撒くということは困難であるという問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に記載されているガラス組成物を形成する場合、廃ガラスを1300℃〜1380℃程度で加熱溶融する必要があるため、高温用の加熱設備が必要であり、多大な加熱エネルギーを必要とする。また、溶融した廃ガラスを高温に保持する時間が3時間〜6時間は程度必要であり、その後、6時間〜12時間程度かけて徐冷する必要があるため、前記ガラス組成物の完成までには長大な時間が必要である。
【0011】
本発明は前述した様々な問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、従来の多孔質ガラス製造工程と、ほぼ同じ設備、手間を活用して容易に製造することができ、多孔質ガラスとして、より機能の高い、すなわち、緑化用に使用される場合には肥料分の保持機能を有し、また、重金属含有部分の埋設にかかる場合に重金属の吸着機能を有するような機能性を付加した高機能のガラスを得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラス製造法は、粉末乃至粒状のソーダガラスにソーダ分とアルミニウム分を含む粉末を混合し、600℃から1000℃に加熱することにより該ソーダガラス表面の少なくとも一部にアルミノシリケート系ゼオライトを形成することを特徴とする。このような構成とすることにより、ガラスに含まれるシリカ分にアルミナを付加し、結晶性の化合物を低温度で作ることができるように、ソーダ分で融点を制御してアルミノシリケート型のゼオライトをガラス表面の少なくとも一部に形成し、それによって製品ガラスに吸着能を与えることが可能となった。
【0013】
また、粉末ガラスが廃ガラスの粉末であり、ソーダガラスを主とする該粉末ガラスに発泡剤とソーダ分並びにアルミニウム分を含む粉末を加えて600℃から1000℃に加熱することにより、表面にゼオライトを有した多孔質のガラスを製造することを特徴とする。ガラス製造法として、上記物質に更に発泡剤を加えることにより、多孔質ガラスとして見かけ比重を小さく、また制御できるようにすると共に、大表面積化してより吸着能を向上させることも合わせて可能とした。
【0014】
以下、詳細に説明する。重金属イオンや有機物、あるいは有機官能基を有する物質を吸着する吸着剤としてゼオライトが広く使われている。ゼオライトは基本的にはアルミノシリケートの三次元構造を有するものであり、構造上から発生する一定の大きさを有する孔構造を有すること、その孔に上記重金属や有機官能基が吸着されることによって吸着機能を有すること、また、条件によってはこれらを脱着できることが知られており、無機の三次元構造体であるので、化学的に安定であることも知られている。このものは特定の化学組成を有するのではなく、比較的広い範囲に渡る化学組成を取ることができることでも良く知られている。
【0015】
本発明者は通常のガラス、つまりソーダガラスはシリカ(酸化珪素)を主とし、そこにソーダ(ナトリウム)が酸化物の形で入り、シリカの三次元網目構造を部分的に破壊することによって、軟化温度が低い使いやすいガラスを形成していること、これにアルミナを融体で反応させると比較的容易にアルミナとの化合物を作ること、また、アルミナが入ることによって、ガラス状態を保持しにくくなり、結晶としてソーダガラス表面に析出することを見出して本発明に至ったものである。
【0016】
すなわち、ソーダ粉末ガラスに粒径10μmから100μmのアルミニウム分としてのγ-アルミナや水酸化アルミニウム並びにわずかなソーダ分を加えて、軟化温度以上まで加熱することによって、ガラス自身は本質的な状態である自由に動き回れる液体となる。このとき、アルカリによってガラス表面がわずかに溶解し、融体ガラス表面にアルミナ分がつくことによって反応を起こし、ある程度ソーダを巻き込んで反応することによって、シリカ−アルミナの化学結合が形成され、ゼオライト結晶として析出する。
【0017】
ゼオライトは、通常その構造中に水(H2O)が含まれることが知られているが、この水分は水酸化アルミニウムの水酸基の残留、あるいはアルミナ、アルカリ原料中に含まれる、あるいは空気中の水分の吸着により供給されると考えられる。なお,生成するゼオライトの結晶構造は成分によって変化することは当然である。
【0018】
本発明は均質なゼオライトを作ることを目的とするものではないので、このように反応する温度以上でガラスが融体か、あるいは融体に近くなる条件であれば特にとらわれない。通常は500℃から1000℃、特に好ましくは600℃から800℃において1分から100分程度反応させる。反応時間を1分以下とすると温度条件によるがシリカ−アルミナの反応が十分に起こらずゼオライトを目的どおり生成しないことがあること、また、100分より長いとガラスとソーダ、アルミナが均一となってしまい、組成的にゼオライト化しない、あるいはガラス中に取り込まれてしまうおそれがあるので上記反応時間が望ましい。
【0019】
また、この場合、構造的に安定化するためであると推測されるが、組成によって異なるものの、シリマナイトあるいはムライト結晶として、析出しやすくなり、目的のゼオライトあるいはその前駆体に成りにくくなる。なおアルミニウムの添加量は特には指定されず、ガラスの粒径にもよるがガラス中のシリカ(シリコン)分に対して、0.1%から10%程度が適当であり、10%を越えると反応しにくくなる。
【0020】
アルミニウムの原材料としては、酸化アルミニウム(アルミナ)を使用するのが適当であり、α−アルミナが代表的であるが、これは極めて安定であるので、できれば活性のある、あるいは反応しやすい、γ−アルミナやベーマイトなどが良い。また、ソーダを伴わせる趣旨から、アルミン酸ソーダなどのようにアルミニウムとソーダが一つの化合物となっているものを使っても良いことはもちろんである。
【0021】
一方、従来と同様これに発泡成分を加えることができる。つまり加熱分解によって気体が発生する物質を加えることによって発泡ガラスとすることができる。この方法としては、予めここに示すようにゼオライトをガラス上に形成しておいてからそれに発泡剤を加えて加熱発泡処理する事ができるが、より実用的な方法として、一度の加熱で同時にゼオライト化と発泡化を行うことも可能である。
【0022】
つまり、発泡剤として炭酸ソーダを使い、それにアルミニウム成分として上記γ−アルミナや水酸化アルミニウムを加えて昇温速度10℃/分から100℃/分程度で加熱し、特に600℃以上での温度領域では50℃/分から100℃/分程度の急速加熱を行うことによって発泡ガスをガラス中に取り込んで発泡ガラスを形成する。またこれによって、生成したゼオライト中の水分の脱出を防ぐことができ、より安定したゼオライトとすることが可能となる。
【0023】
ここでは、ガラス中に気泡を巻き込ます必要上、ガラス分全体が溶解すること、また、ガスが抜け出てしまわないことが必要であるので、ガラスの粒径は10μmから100μm程度にする必要がある。さらに、これらを使っても通常の発泡ガラスの製造より加熱時間がわずかではあるが長くなることを考慮して昇温パターンを決めることが必要である。
【0024】
このように、原料ガラスの組成及び粒度によって加熱温度は異なるが、ほぼ800℃から950℃まで加熱した後、空気中に取り出して放冷するか、あるいは600℃から500℃まで急冷した後、20℃/分程度の速度で450℃程度まで徐冷し、しかる後に室温まで冷却する。これによって、表面が二重にゼオライト化した発泡ガラスを製造することができる。
【0025】
なお、発泡材としては、上記したような炭酸ソーダの他に炭化珪素(SiC)や炭酸カルシウム、あるいはカオリン、蝋石(パイロフィライト)等の水酸基を含むアルミノシリケートなどを使うこともできる。ただし、この場合は炭酸ガスあるいは水蒸気がガスとなって出てくるが、その温度などの条件はそれぞれによって異なるのでそれらを予め確認してから実施することが必要である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
廃蛍光管の洗浄粉砕物の表面を加工して表面をゼオライト化した。すなわち、平均粒径1mm程度に粉砕されたガラスに平均粒径40μmのγ−アルミナを濃度10重量%の苛性ソーダ水に展開し、更にそれにガラス粉砕物を加えて混合した。混合割合は、重量比でガラス:γ−アルミナ:苛性ソーダ=100:2:2とし、この混合物を風乾した。これによってガラス表面にアルミナ粒子並びに苛性ソーダが付着したものができた。
【0028】
このものを平板上に広げ、加温時、ほぼ均一に温度が上昇するようにして温度が650℃の炉に入れた。炉中で15分保持した後このものを水中に落として、急冷した。これによってガラス粒子の一部が付着したガラスの粉末を得ることができた。このガラスの表面を観察したところ、部分的に白色に変化していることが認められた。また、これをX線回折法で調べたところ、ガラス状態の他に、わずかに結晶相の存在が認められた。この結晶相はγ−アルミナに相当せず、あらたな結晶相が現れたことがわかった。
【0029】
そこで、このガラスについて鉛イオンを1000ppm程度含むpH=3の硝酸水溶液に浸漬した後、水洗いして乾燥した後に蛍光X線分析法でガラス表面の残留金属を分析したところ、鉛の存在が確認され、本処理によって鉛がガラス表面に吸着したものと考えられた。なお、結晶状態からは確認できなかったが、表面にシリカ−アルミナからなるゼオライトが生成し、そこに鉛が吸着したものと考えられる。
【0030】
(実施例2)
瓶ガラスの粉砕物について発泡化させると共に部分的にゼオライト化させた。平均粒径40μmの廃瓶ガラスの粉砕物と、アルミン酸ナトリウム粉末並びに発泡剤としてのSiC粉末との混合物に水分を添加して混合しやすくし、ボールミルによって十分に混合した。ボールミルはアルミナ内張であり、ボールとしてはガラスブロックを使用した。なお、これらの混合割合はガラス:アルミン酸ナトリウム:SiC=100:2:2とした。ここで、ガラスとアルミン酸ナトリウムの量比はガラス中のシリコン分とアルミン酸ナトリウムのアルミ分の重量比である。
【0031】
このようにして形成されたものを板の上に厚さ20mmとなるように広げ、電気焼成炉に入れて加熱速度50℃/分で加熱した。温度が900℃に達したところで加熱を止め、焼成炉のふたを開け、風を送って550℃まで2分間かけて温度を下げ、500℃の温度で5分間保持した後、焼成炉から取り出して冷却した。これによって、見かけ比重0.8の多孔質ガラスが得られた。なお、前述した加熱工程、冷却工程におけるヒートカーブは図1に示す通りである。
【0032】
このガラスをカラムとして、赤インクで着色した水を流したところ、無色の水が得られ、吸着効果のある発泡ガラスができていることがわかった。なお、X線回折法で結晶状態を見たところ、わずかに結晶であることを示す回折線が認められ、不明確な点があるものの、斜方晶系に属するナトロナイト(代表組成Na2[Al2Si3O10]2H2O)に相当することがわかった。すなわち、ナトロナイトまたはそれに近いゼオライトがガラス表面に生成していることがわかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明により、比較的簡単な操作でガラス表面にゼオライト型の吸着能を有するアルミノシリケート化合物を形成できると共に、必要に応じては、発泡ガラスを製造するのとほぼ同じプロセスで同時に、部分的なゼオライト化と発泡ガラス化する事ができた。しかもこれらは廃ガラスを原料としてできるので、環境問題にかかるガラスのリサイクル化を達成すると同時に、高機能性を与えることが可能となった。更にゼオライト生成法として行われる石炭灰からの製造に対し、本発明においては元々原料が飲料用廃ガラスびんを主とする廃ガラスであり、重金属類を含まないことから、本発明による生成物は畑など食料に関連するところを始めとして殆ど制限無く広く使用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例2の場合の焼成炉におけるヒートカーブの一例であり、縦軸に時間(分)、横軸に温度(℃)を示す。
Claims (7)
- 粉末乃至粒状のソーダガラスにソーダ分とアルミニウム分とを含む粉末を混合し、600℃から1000℃に加熱することにより該ソーダガラス表面の少なくとも一部にアルミノシリケート系ゼオライトを形成することを特徴とするガラス製造法。
- 前記ソーダ分が苛性アルカリであり、前記アルミニウム分がγ−アルミナである請求項1記載のガラス製造法。
- 前記アルミニウム分が、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくとも一方である請求項1記載のガラス製造法。
- ソーダガラスを主とする粉末ガラスに発泡剤とソーダ分並びにアルミニウム分を含む粉末を加えて600℃から1000℃に加熱することにより、表面の少なくとも一部にゼオライトを有する多孔質ガラスを製造することを特徴とするガラス製造法。
- 前記粉末ガラスの平均粒径が10μmから100μmである請求項4記載のガラス製造法。
- 前記発泡剤が炭化珪素を含むものである請求項4記載のガラス製造法。
- 前記発泡剤が炭酸ソーダを含むものであって、独立したソーダ分を添加しない請求項4記載のガラス製造法。
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