JP4144716B2 - 作業船の吊荷揺れ抑制装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は海(水)上でクレーン作業を行うために用いる作業船の吊荷揺れ抑制装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海(水)上でクレーン作業を行うための作業船の一つとしてクレーン船があり、該クレーン船は、図4(イ)にその一例の概略を示す如く、浮体構造物としての台船1上に、起伏自在なジブ3を備えたジブクレーン2を、旋回台4を介して旋回自在に搭載し、ウインチ6より繰り出したワイヤロープ7を上記ジブ3の先端に設けたガイドローラ5を介して垂下させ、該ワイヤロープ7の下端に取り付けてあるフック8に吊荷9を吊ることにより、クレーン作業を行うようにしてある。10は台船1上に設けられた居住区画である。
【0003】
ところで、上記クレーン船では、クレーン作業時に、波等の影響により台船1に揺れ(たとえば、ローリング)が発生すると、該台船1の揺れに伴ってジブクレーン2も一体となって揺れることから、吊荷9にも船幅方向の揺れが発生することとなるが、吊荷9の揺れが大きくなると、クレーン作業に支障を来す虞が生じるようになるため、吊荷9の揺れを抑制することが必要となる。
【0004】
かかる観点から、これまでは、ジブ3の先端から4本のワイヤロープ7を垂下させるようにしてあるジブクレーン2が搭載してある場合には、該各ワイヤロープ7の先端部となる下端部に四角形状の吊枠11を水平に支持させるようにし、更に、該吊枠11上に、たとえば、図4(ロ)にその一例の概略を示す如く、曲率中心が上方に位置するよう底面を円弧状に湾曲形成した錘り13を、支持ローラ14を介して単弦振動できるようにしてなるパッシブ型の減揺装置12を設けた構成として、台船1のローリングの際に、吊枠11に作用する揺れエネルギーをパッシブ型の減揺装置12により減衰させて、該吊枠11の揺動を抑制することにより、吊枠11の下側に吊られる吊荷9の揺れを抑制するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記ワイヤロープ7の先端部で吊枠11上に減揺装置12を設ける形式の場合、吊枠11を水平に支持するためには少なくとも3〜4本のワイヤロープ7が必要であり、1本のワイヤロープ7により吊荷9を吊ってクレーン作業を行う形式のものでは、吊枠11を設けることができず、減揺装置12を設置することができないことから、吊荷9に発生する揺れを抑制することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、1本のワイヤロープにより吊荷を吊ってクレーン作業を行う形式の場合にも該吊荷に生じる揺れを抑制することができるようにしようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、台船上に搭載してあるジブクレーンのジブ先端部に、吊荷を上方から撮影するための撮像装置を、常に重力方向に向くように取り付け、且つ上記台船上に、アクチュエータにて錘りを単弦振動できるように揺動させることにより台船の揺れを抑制させるようにする減揺装置を搭載し、更に、上記撮像装置により撮影された吊荷の画像を基に吊荷画像の重心位置を求めるための画像演算器と、該画像演算器で求めた初期状態の吊荷画像を中心として吊荷画像の重心位置の揺動による中心からのずれを演算して吊荷の揺れを検出すると共に該検出された吊荷の揺れに対応して上記減揺装置の錘りの単弦振動を制御して台船の揺れを抑制させるよう減揺装置のアクチュエータに制御指令を送るようにした重心偏差演算器とを備えてなる制御装置を設けた構成とする。
【0008】
台船の揺れに伴い吊荷が揺れると、吊荷を上方から撮影するための撮像装置により撮影された吊荷の画像を基に吊荷画像の重心位置が画像演算器により求められ、求められた初期状態の吊荷画像を中心として吊荷画像の重心位置の変化から重心偏差演算器により吊荷の揺れが検出されると共に、該重心偏差演算器により、検出された吊荷の揺れに対応して減揺装置のアクチュエータに制御指令が送られて、該アクチュエータにより上記減揺装置の錘りが揺動させられて台船の揺れが抑制される結果、間接的に吊荷の揺れが抑制される。
【0009】
又、台船上に、アクチュエータにより錘りを船幅方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置と、アクチュエータにより錘りを船長方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置の2台を設置し、吊荷の揺れによる吊荷画像の重心位置のずれを船幅方向及び船長方向についてそれぞれ求めると共に、該各方向の吊荷の揺れに対応して2台の減揺装置をそれぞれ制御させるようにした構成とすることにより、台船の前後、左右方向の揺れを抑制することができ、したがって、吊荷に生じる水平面内のあらゆる方向の揺れが間接的に抑制される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1(イ)(ロ)(ハ)及び図2(イ)(ロ)は本発明の作業船の吊荷揺れ抑制装置の実施の一形態を示すもので、図4(イ)に示したと同様な構成としてある作業船としてのクレーン船において、ジブクレーン2のジブ3の先端部に、吊荷9を上方から撮影するための撮像装置としてのCCDカメラ15を、常に重力方向に向くように継手16を介して取り付け、又、居住区画10の屋根上に、錘りをアクチュエータにより任意の振動数で船幅方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置17を設置する。
【0012】
減揺装置17は、図1(ロ)に示す如く、居住区画10の屋根上に据え付けたベース18上に、曲率中心が上方に位置するよう上下面を円弧状に湾曲形成した錘り19を、上記ベース18上に設けた支持ローラ20を介して船幅方向へ単弦振動できるように揺動自在に配置すると共に、上記錘り19の振動方向に沿う両端部側面にそれぞれ突起21を設け、一方、上記錘り19を前後で挟む位置に架台22を設置して、その前後面に左右のバッファ23を取り付け、上記突起21がバッファ23に当接する範囲内で上記錘り19の振動領域が規制されるようにし、又、上記錘り19の上面にラック24を振動方向に沿って設けると共に、該ラック24の上方部にラック24と直交するよう配した軸25を、減速機26を介してアクチュエータとしてのサーボモータ27に連結し、該軸25の中間部に、上記ラック24と噛合するようにピニオン28を取り付け、サーボモータ27の駆動により、軸25を介してピニオン28を回転させることによりラック24と一体に錘り19を所要の周期で揺動させられるようにしてある。29は上記軸25を支持する軸受である。
【0013】
更に、図1(ハ)に減揺装置17の制御ブロック図を示す如く、CCDカメラ15から入力された吊荷9の画像を基に、吊荷画像の重心位置を算出するための画像演算器31を備え、且つ、該画像演算器31で求めた初期状態(揺れの発生していない状態)における吊荷画像の重心位置と揺動時の吊荷画像の重心位置との差、すなわち、初期状態の吊荷画像の重心位置(イニシャル画像重心)を中心として、吊荷画像の重心位置の揺動による中心からのずれ(リアルタイム画像演算重心)を演算して、揺れの発生を検出すると共に、算出されたずれに対応して上記減揺装置17の錘り19の単弦振動を制御し、吊荷9の揺れを発生させる原因となる台船1のローリングのエネルギーを減衰させるようにするための制御指令をサーボアンプ33を介してサーボモータ27に送る重心偏差演算器32とを備えてなる制御装置30を設ける。34はサーボモータ27に組み付けてあるパルスジェネレータを示す。なお、CCDカメラ15と吊荷9との相対位置は、ジブ3の先端より垂下するワイヤロープ7の長さで変化するので、該CCDカメラ15により撮影される吊荷9の画像の大きさは変化することとなるが、上記重心偏差演算器32に対して、垂下するワイヤロープ7の長さの値を入力して補正することにより、イニシャル画像重心からの偏差演算結果は、垂下するワイヤロープの長さに拘らず等価になるようにしてある。その他、図4に示したと同一のものには同一符号が付してある。
【0014】
上記構成において、たとえば、図2(イ)(ロ)に示す如く、ジブクレーン2のジブ3を船長方向や船幅方向に向けてクレーン作業を行う際、波等の影響によりクレーン船の台船1がローリングさせられると、ジブクレーン2により吊られた吊荷9に船幅方向Xの揺れが発生する。この際、吊荷9はCCDカメラ15により撮影され、制御装置30の画像演算器31により吊荷画像の重心位置が求められ、揺れの生じていない状態における吊荷画像の重心位置を中心とするずれが重心偏差演算器32により求められて、更に、該重心偏差演算器32により、求められたずれに対応することができるように制御指令が減揺装置17のサーボモータ27へサーボアンプ33を介して送られることにより、サーボモータ27が正逆に駆動され、軸25、ピニオン28、ラック24を介して錘り19が船幅方向Xへ動かされて、台船1自体のローリングのエネルギーが消費され、吊荷9に船幅方向Xの揺れを生じさせることとなる台船1のローリングが抑制されることにより、吊荷9の揺れが間接的に抑制されるようになる。
【0015】
上記の場合、吊荷画像の画像処理により吊荷9の揺れをリアルタイムで直接検出すると共に、その画像処理出力で台船1の居住区画10上に設置した減揺装置17を制御するようにしていることから、1本のワイヤロープ7に吊られた吊荷9の揺れを抑制することができると共に、構成を簡単なものとすることができ、又、CCDカメラ15は継手16により常に重力方向に向くよう支承されていることから、ジブクレーン2のジブ3の起伏に拘らず吊荷9の揺れを抑制することができ、更に、吊荷9の揺れを直接検出しているので、吊荷9の揺れを抑えるように減揺装置17の錘り19の駆動を最適に制御することができる。
【0016】
次に、図3(イ)(ロ)は本発明の他の実施の形態を示すもので、図1(イ)に示したと同様な構成としてあるクレーン船において、台船1上に、図1(ロ)に示したと同様な構成としてある減揺装置17′を、錘り19の振動方向が船長方向Yとなるよう設置し、制御装置30の重心偏差演算器32において、初期状態の吊荷画像の重心位置を中心とした場合の、吊荷9の揺れによる吊荷画像の重心位置のずれを、船幅方向X及び船長方向Yについてそれぞれ求めると共に、該各方向の成分にそれぞれ対応するように、減揺装置17,17′をそれぞれ制御するようにしたものである。
【0017】
本実施の形態によれば、ローリング及びピッチングあるいはその双方が組み合わさった台船1の揺れを抑制することにより、船幅方向X及び船長方向Yに加えて吊荷9に生じる水平面内のあらゆる方向の揺れを間接的に抑制することができる。
【0018】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、減揺装置17や17′としては、単弦振動できるように設けた錘り19を、アクチュエータとしてのサーボモータ27により任意の振動数で揺動させる形式のものを示したが、錘りをアクチュエータにより任意の振動数で揺動させることができる減揺装置であれば、所謂、アクティブ型、ハイブリッド型、セミアクティブ型等、任意の形式のものを使用してよいこと、又、その設置場所も台船1上の任意の場所としてよいこと、更に、減揺装置の錘りの振動方向も、台船の揺動方向に応じた任意の方向としてよいこと、更に、継手16としては、所謂自在継手、球面軸受、ボール軸受等を採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0019】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の作業船の吊荷揺れ抑制装置によれば、次の如き優れた効果を発揮する。
(1) 台船上に搭載してあるジブクレーンのジブ先端部に、吊荷を上方から撮影するための撮像装置を、常に重力方向に向くように取り付け、且つ上記台船上に、アクチュエータにて錘りを単弦振動できるように揺動させることにより台船の揺れを抑制させるようにする減揺装置を搭載し、更に、上記撮像装置により撮影された吊荷の画像を基に吊荷画像の重心位置を求めるための画像演算器と、該画像演算器で求めた初期状態の吊荷画像を中心として吊荷画像の重心位置の揺動による中心からのずれを演算して吊荷の揺れを検出すると共に該検出された吊荷の揺れに対応して上記減揺装置の錘りの単弦振動を制御して台船の揺れを抑制させるよう減揺装置のアクチュエータに制御指令を送るようにした重心偏差演算器とを備えてなる制御装置を設けた構成としてあるので、吊荷画像の画像処理により吊荷の揺れを直接検出することができると共に、その画像処理出力で台船上に設置した減揺装置を制御させるようにすることによって、1本のワイヤロープに吊られた吊荷の揺れであっても抑制することができ、又、撮像装置は継手により常に重力方向に向くよう支承されていることから、ジブクレーンのジブの起伏に拘らず吊荷の揺れを抑制することができ、更に、吊荷の揺れを直接検出していることから、吊荷の揺れを抑えるよう減揺装置を最適に制御することができる。
(2) 台船上に、アクチュエータにより錘りを船幅方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置と、アクチュエータにより錘りを船長方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置の2台を設置し、吊荷の揺れによる吊荷画像の重心位置のずれを船幅方向及び船長方向についてそれぞれ求めると共に、該各方向の吊荷の揺れに対応して2台の減揺装置をそれぞれ制御させるようにした構成としてあるので、吊荷に生じる水平面内のあらゆる方向の揺れを間接的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作業船の吊荷揺れ抑制装置の実施の一形態を示すもので、(イ)はクレーン船の概略側面図、(ロ)は減揺装置の拡大斜視図、(ハ)は制御装置を示すブロック図である。
【図2】図1のクレーン船でのクレーン作業時に台船に揺動が生じた場合を示すもので、(イ)はジブクレーンのジブを船長方向に向けた状態を、(ロ)はジブクレーンのジブを船幅方向に向けた状態をそれぞれ示す模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は概略平面図である。
【図4】従来のクレーン船の一例を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は減揺装置の拡大正面図である。
【符号の説明】
1 台船
2 ジブクレーン
3 ジブ
7 ワイヤロープ
9 吊荷
15 CCDカメラ(撮像装置)
16 継手
17,17′ 減揺装置
19 錘り
27 サーボモータ(アクチュエータ)
30 制御装置
31 画像演算器
32 重心偏差演算器
Claims (2)
- 台船上に搭載してあるジブクレーンのジブ先端部に、吊荷を上方から撮影するための撮像装置を、常に重力方向に向くように取り付け、且つ上記台船上に、アクチュエータにて錘りを単弦振動できるように揺動させることにより台船の揺れを抑制させるようにする減揺装置を搭載し、更に、上記撮像装置により撮影された吊荷の画像を基に吊荷画像の重心位置を求めるための画像演算器と、該画像演算器で求めた初期状態の吊荷画像を中心として吊荷画像の重心位置の揺動による中心からのずれを演算して吊荷の揺れを検出すると共に該検出された吊荷の揺れに対応して上記減揺装置の錘りの単弦振動を制御して台船の揺れを抑制させるよう減揺装置のアクチュエータに制御指令を送るようにした重心偏差演算器とを備えてなる制御装置を設けた構成を有することを特徴とする作業船の吊荷揺れ抑制装置。
- 台船上に、アクチュエータにより錘りを船幅方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置と、アクチュエータにより錘りを船長方向に単弦振動させるようにしてなる減揺装置の2台を設置し、吊荷の揺れによる吊荷画像の重心位置のずれを船幅方向及び船長方向についてそれぞれ求めると共に、該各方向の吊荷の揺れに対応して2台の減揺装置をそれぞれ制御させるようにした請求項1記載の作業船の吊荷揺れ抑制装置。
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