JP4144342B2 - 感光性樹脂組成物、感光性エレメント及び積層基材 - Google Patents

感光性樹脂組成物、感光性エレメント及び積層基材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント及び積層基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)のカラーフィルタには、その平坦性の確保や保護を目的として、カラーフィルタ保護膜を形成させるのが通常であり、保護膜形成用材料としては、従来より熱硬化型材料が用いられている。
【0003】
しかし、近年では、LCDが用いられる製品(パーソナルコンピュータや携帯電話等)の小型化が進行し、小型化に伴って基板表面にチップを形成させる構造が採用されているため、従来の熱硬化型材料ではチップの密着性が弱くなる問題が生じている。このため、熱硬化性材料の代えて、チップを形成する箇所を取り除くことが可能な光硬化型材料が用いられ始めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、カラーフィルタやカラーフィルタ保護膜はi線(波長:365nm)を使用して製造することが主流であるため、それらに用いられる材料は、i線に感度が高くなるよう設計されている。例えば、保護膜形成用の光硬化型材料には、i線(波長:365nm)付近の光の照射により光ラジカル反応が生じ硬化が進行するように、光開始剤が配合されている。
【0005】
したがって、かかる光硬化型材料と従来用いられてきた熱硬化型材料とを比較すると、可視光付近(380〜400nm)の透過率は、光硬化型材料の方が低くなってしまうことが多く、LCD等の用途には特性が不充分であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、i線(波長:365nm)で光ラジカル反応を生じ得る光開始剤を含有させた場合であっても、硬化後の380〜400nmの光の透過率を高くすることができ、硬化後の硬度を向上させることも可能な感光性樹脂組成物を提供することにある。本発明の目的は、また、上記組成物を用いた感光性エレメント及び上記組成物の硬化物を備える積層基材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む(メタ)アクリル共重合体と、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、光開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(メタ)アクリル共重合体は、(a1)トリシクロ環と(メタ)アクリロイル基を有する環式モノマー、(a2)カルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するカルボキシルモノマー、(a3−2)水酸基とエチレン性不飽和基とを有するヒドロキシモノマー及び(a3−3)N−シクロアルキルマレイミド、を単量体単位として含む共重合体に、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナートを反応させて得られるエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体であり、上記エチレン性不飽和結合を有するモノマーとして、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるイソシアヌレートモノマーを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【化3】
Figure 0004144342
【化4】
Figure 0004144342
[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。但し、複数存在するR1及びR2のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。]
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物は、(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有するモノマー及び光開始剤を組み合わせたこと、そして、エチレン性不飽和結合を有するモノマーに上記一般式(1)及び/又は(2)で表されるイソシアヌレートモノマーを必須成分として含有させたことにより、光開始剤としてi線で光ラジカル反応を生じ得る化合物を用いた場合であっても、硬化後の380〜400nmの光の透過率を高くすることができ、硬化後の硬度も向上する。
【0009】
上記(メタ)アクリル共重合体は、(1)ベンゼン環、シクロ環、ビシクロ環及びトリシクロ環からなる群より選ばれる少なくとも1つの環とエチレン性不飽和結合とを有する環式モノマーと、(2)カルボキシル基とエチレン性不飽和結合を有するカルボキシルモノマーと、を重合してなるものであり、上記環式モノマー及びカルボキシルモノマーにおけるエチレン性不飽和結合の少なくとも一部は、(メタ)アクリロイル基に基づくエチレン性不飽和結合であることが好ましい。
【0010】
上記環式モノマーを(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーとして用いることにより、硬化後の感光性樹脂組成物の透明性を向上させることが可能となり、上記カルボキシルモノマーを(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーとして用いることにより、アルカリ現像性(塩基性溶液に対する可溶性)を向上させることができる。
【0011】
上記(メタ)アクリル共重合体は、(1)ベンゼン環、シクロ環、ビシクロ環及びトリシクロ環からなる群より選ばれる少なくとも1つの環とエチレン性不飽和結合とを有する環式モノマーと、(2)カルボキシル基とエチレン性不飽和結合を有するカルボキシルモノマーと、(3)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシモノマー、水酸基とエチレン性不飽和結合とを有するヒドロキシモノマー及びN−置換マレイミドからなる群より選ばれる少なくとも1つの共重合モノマーと、を重合してなるものであり、上記環式モノマー、カルボキシルモノマー、エポキシモノマー及びヒドロキシモノマーにおけるエチレン性不飽和結合の少なくとも一部は、(メタ)アクリロイル基に基づくエチレン性不飽和結合であることが、特に好ましい。
【0012】
上記環式モノマー及びカルボキシルモノマーに加えて、上記エポキシモノマーや、上記ヒドロキシモノマーを用いることにより、感光性樹脂組成物を光照射によりパターニングするときのパターン形成時間を短縮することができる。また、エポキシ基や水酸基は、(メタ)アクリル共重合体の側鎖や末端に官能基(例えば、エチレン性不飽和結合)を導入するための官能基として用いることもできる。そして、N−置換マレイミドを(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーとして用いることにより、感光性樹脂組成物の硬化物の、被着体に対する密着性を向上させることができる。
【0013】
上記(メタ)アクリル共重合体は、側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する共重合体であることが好適である。(メタ)アクリル共重合体がエチレン性不飽和結合を有する場合は、感光性樹脂組成物の硬化時にエチレン性不飽和結合を有するモノマーと反応が生じ架橋構造が形成されるために、硬化物の硬度を向上させることが可能になる。
【0014】
上記(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量(以下「Mw」と略す。)が3,000〜200,000の(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物は有機溶剤及び/又は界面活性剤を更に含むことが好ましい。(メタ)アクリル共重合体のMwを上記範囲内にすることにより、また、有機溶剤及び/又は界面活性剤を更に含有させることにより、感光性樹脂組成物をスピンコート塗布に適した粘度にすることが容易になる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化後の波長400nmの光の透過率が90%以上であることが好ましく、硬化後のビッカース硬さが47以上であることが好ましい。透過度及びビッカース硬さが上記値である場合は、感光性樹脂組成物を電子部品の透明保護膜(LCD用カラーフィルタ保護膜等)に適用した場合に優れた特性が得られるようになる。
【0016】
本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えることを特徴とする感光性エレメントを提供する。かかる感光性エレメントは、所定の厚さの感光性樹脂組成物を基材に積層する場合に好適に用いることができる。
【0017】
本発明は、また、基材と、該基材上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物の硬化物からなる透明絶縁層と、を備えることを特徴とする積層基材を提供する。積層基材としては、例えば、LCD用カラーフィルタが挙げられ、当該フィルタにおいては、表面に色材層を備えるガラス基板の色材層上に、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物からなる透明絶縁層を設ける。透明絶縁層を設けることにより、LCD用カラーフィルタの平坦性の確保が可能になるとともに、表面保護が図られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性樹脂組成物は、以下の(a)〜(c)を必須成分として含有する感光性樹脂組成物であり、当該組成物は、更に以下の(d)及び(e)を含んでいてもよい。
(a):(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む(メタ)アクリル共重合体(以下、「a成分」という。)。
(b):上記一般式(1)及び/又は上記一般式(2)で表されるイソシアヌレートモノマーを必須成分として含むエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下、「b成分」という。)。
(c):光開始剤(以下、「c成分」という。)。
(d):有機溶剤(以下、「d成分」という。)。
(e):界面活性剤(以下、「e成分」という。)。
【0019】
a成分はバインダーポリマーとして機能し、感光性樹脂組成物の粘度を好適に保つ働きを有するとともに、感光性エレメントにおいてフィルム形状を維持するための基材としても機能する。また、a成分は、感光性樹脂組成物をアルカリ現像可能にするとともに(カルボキシル基を有している場合に顕著となる。)、感光性樹脂組成物硬化物の透明性を担保する働きも有する(ベンゼン環、シクロ環、ビシクロ環及びトリシクロ環を有している場合に顕著となる。)。
【0020】
b成分は、光の照射により活性種(ラジカル等)を生じたc成分により重合して、硬化物を与える働きを有しており、a成分が、b成分と反応可能な官能基(エチレン性不飽和結合等)を有している場合は、a成分とともに架橋構造を形成する。d成分及びe成分は、感光性樹脂組成物にとって必須成分ではないものの、添加により感光性樹脂組成物の塗布を容易にすることができる。
【0021】
(a成分)
a成分は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む(メタ)アクリル共重合体である。ここで、(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味し、(メタ)アクリル等の同様の基又は化合物においても同義である。そして、「(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む」とは、繰り返し単位に、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー由来の構造を有していることを意味し、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外のモノマーを単量体単位として含むことを妨げるものではない。
【0022】
(メタ)アクリル共重合体の原料のモノマーは、重合反応により(メタ)アクリル共重合体を形成可能なモノマーであればよく、例えば、以下の(a1)〜(a3)が挙げられる。但し、(a1)〜(a3)におけるエチレン性不飽和結合のうち少なくとも一部は(メタ)アクリロイル基に基づくものでなければならない。
(a1):ベンゼン環、シクロ環、ビシクロ環及びトリシクロ環からなる群(好ましくは、ベンゼン環、ビシクロ環及びトリシクロ環からなる群、より好ましくは、ビシクロ環及びトリシクロ環からなる群)より選ばれる少なくとも1つの環とエチレン性不飽和結合とを有する環式モノマー(以下、「a1成分」という。)。
(a2):カルボキシル基とエチレン性不飽和結合を有するカルボキシルモノマー(以下、「a2成分」という。)。
(a3):a1成分及び/又はa2成分と共重合可能な共重合モノマー(以下、「a3成分」という。)。
【0023】
(メタ)アクリル共重合体は、a1成分及びa2成分を重合してなる共重合体であることが好ましく、a1、a2及びa3成分を重合してなる共重合体であることが好ましい。そしてa3成分としては、以下の(a3−1)〜(a3−3)の少なくとも一つを用いることが好ましい。
(a3−1):エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシモノマー(以下、「a3−1成分」という。)。
(a3−2):水酸基とエチレン性不飽和結合とを有するヒドロキシモノマー(以下、「a3−2成分」という。)。
(a3−3):N−置換マレイミド(以下、「a3−3成分」という。)。
【0024】
a1成分のうち、ベンゼン環とエチレン性不飽和結合を有する環式モノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
シクロ環とエチレン性不飽和結合を有する環式モノマーとしては、シクロペンテニル(メタ)アクリレート等の、シクロ環がシクロアルカン環である環式モノマーや、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の、シクロ環がシクロアルケン環である環式モノマーが挙げられる。ビシクロ環とエチレン性不飽和結合を有する環式モノマーとしては、ボルニル基(endo−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル基、化学式(3)で表される基)と(メタ)アクリロイル基とを有する環式モノマー(ボルニル(メタ)アクリレート等)、イソボルニル基(exo−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル基、化学式(3)で表される基)と(メタ)アクリロイル基とを有する環式モノマー(イソボルニル(メタ)アクリレート等)が挙げられる。
【化5】
Figure 0004144342
【化6】
Figure 0004144342
【0026】
トリシクロ環とエチレン性不飽和結合とを有する環式モノマーとしては、トリシクロ基として、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンから水素原子1つが除かれてなるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基(化学式(5)で表される基)、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン(トリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−3−エン)から水素原子1つが除かれてなるトリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセニル基(化学式(6)で表される基であり、ジシクロペンテニル基とも称される。)を有し、エチレン性不飽和結合として(メタ)アクリロイル基を有する、環式モノマーが挙げられる。ここで、上記例示したトリシクロ基と(メタ)アクリロイル基とは、−O−又は−O−R−O−(Rはアルキレン基)を介して結合していることが好ましい。
【化7】
Figure 0004144342
【化8】
Figure 0004144342
【0027】
トリシクロ環とエチレン性不飽和結合とを有する環式モノマーの具体例としては、アクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(日立化成工業社製、FANCRYL FA-513A)やメタクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(日立化成工業社製、FANCRYL FA-513M)等の(メタ)アクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、アクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−3−エン(日立化成工業社製、FANCRYL FA-511A)等の(メタ)アクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−3−エン、アクリロイルオキシエチルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン(日立化成工業社製、FANCRYL FA-512A)等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−3−エンが挙げられる。
【0028】
a1成分の含有量は(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの全重量を基準として、3〜70重量%が好ましい。含有量が3重量%未満の場合は、(メタ)アクリル共重合体及び感光性樹脂組成物の透明性が低下する傾向があり、70重量%を越える場合は、(メタ)アクリル共重合体及び感光性樹脂組成物の粘度が高くなるために、ハンドリング性が悪くなる傾向がある。
【0029】
a2成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、α−クロロアクリル酸等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いても2種類以上併用して使用してもよい。a2成分の含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの全重量を基準として、5〜50重量%であることが好ましい。含有量が5重量%未満であると、アルカリ現像不良を生じ、精細な画素パターンが得られない傾向がある。また、50重量%を超える場合、(メタ)アクリル共重合体及び感光性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、ハンドリングに不適切であるのみならず、硬化物の耐湿性が低下し、また硬化物の耐現像液性が低下する場合がある。
【0030】
a3−1成分としては、一個のエポキシ基を有するものとして、グリシジル(メタ)アクリレート及びメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、a3−2成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、パラヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0031】
a3−1成分及びa3−2成分の合計の含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの全重量を基準として、5〜50重量%が好ましい。含有量が5重量%未満の場合は、パターン形成時間が遅くなる傾向にある。一方、含有量が50重量%を越える場合は、(メタ)アクリル共重合体及び感光性樹脂組成物の粘度が高くなり、また、極性の低い溶剤に対して白濁する傾向がある。
【0032】
a3−3成分としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−2−メチルヘキシルマレイミド、N−2−エチルシクロヘキシルマレイミド、N−2−クロロシクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミドや、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2−エチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミドが挙げられる。これらの中では、透明性及び溶解性の観点から、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−2−メチルシクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。なお、N−置換マレイミドは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0033】
N−置換マレイミドの含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの全重量を基準として、5〜50重量%が好ましい。含有量が5重量%未満の場合は、硬化物(塗膜)のアルカリ現像時の密着性及び熱履歴による密着性が不充分になる傾向がある。また、含有量が50重量%を越える場合、透明性が低下する傾向にあり、硬化物(塗膜)が脆くなる場合がある。
【0034】
a成分は、側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する共重合体であることが好ましい。そして、当該エチレン性不飽和結合は(メタ)アクリロイル基に基づくエチレン性不飽和結合であることが好ましい。
【0035】
側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体は、例えば、a2成分(カルボキシル基を有する)やa3−2成分(水酸基を有する)を含むモノマーを重合してなる(メタ)アクリル共重合体に、カルボキシル基及び/又は水酸基と反応し得る官能基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物(以下「付加モノマー」という。)を反応させることに得ることができる。
【0036】
付加モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジルモノマーや、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナート(2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナート等)等のイソシアネートモノマーが挙げられる。付加モノマーの付加量は、(メタ)アクリル共重合体の重量(g)を基準として、0.1〜5mmol/gが好ましく、より好ましくは0.2〜4mmol/gである。付加量が0.1mmol/g未満である場合は、光硬化部位の耐アルカリ性の向上が少なくなる傾向にあり、5mmol/gを超す場合は、光に対して感度が高くなりすぎて解像度の低下が生じる場合がある。
【0037】
a成分のMwは3,000〜200,000が好ましく、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が更に好ましい。Mwが、3,000未満では、耐アルカリ性が低下する傾向があり、200,000を超す場合は粘度が高くなり、スピンコート等で塗布する際の塗布性が低下する傾向がある。なお、本発明において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0038】
a成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量を基準として、5〜90重量%が好ましく、7〜85重量%がより好ましく、10〜80重量%が特に好ましい。含有量が5重量%未満である場合は、フィルム形成性が低下し脆くなる傾向があり、90重量%を超えると、現像時間の超過や現像性の低下等の不具合が発生する虞がある。
【0039】
(b成分)
b成分は、光照射により生じたc成分の活性種により重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマーであり、上記一般式(1)で表されるイソシアヌレートモノマー(以下「化合物1」という。)及び/又は上記一般式(2)で表されるイソシアヌレートモノマー(以下「化合物2」という。)を必須成分として含む。本発明の感光性樹脂組成物は、化合物1及び/又は化合物2を含むものであるために、硬化後の380〜400nmの光の透過率が充分に高くなる。また、一般式に示されるように、化合物1及び化合物2は多官能であるため、硬化により架橋物が形成させることができ、硬化後の感光性樹脂組成物の硬度及び耐熱性を向上させることができる。硬化物の架橋度を向上させる観点からは、イソシアヌレートモノマーとしては、化合物1及び化合物2を用いることが好ましく、化合物1のみを用いることがより好ましい。
【0040】
化合物1及び化合物2において、複数存在するR1及びR2のそれぞれは同一種であることが好ましい。R1としては水素原子が好ましく、R2としては炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。化合物1として特に好ましいものは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のトリス(2−アクリロイルオキシアルキレン)イソシアヌレートである。
【0041】
b成分として、化合物1と共に当該化合物以外のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを併用することができる。かかるエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性ブチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、EO(エチレンオキシド)変性アクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカ−3−エン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチルジエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、EO変性リン酸アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ECH変性ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性リン酸ジアクリレート、ECH変性フタル酸ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール400ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(POはプロピレンオキシドを意味する。以下同様)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のアクリレート、これらに対応するメタクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
b成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量を基準として、0.5〜70重量%が好ましく、1〜68重量%がより好ましく、2〜65重量%が特に好ましい。含有量が、0.5重量%未満である場合は、光感度が低くなる傾向があり、70重量%を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0043】
また、b成分中の化合物1の含有量は、b成分の全重量を基準として50重量%以上であることが好ましい。含有量が50%未満である場合は、硬化後の380〜400nmの光の透過率及び硬度が充分に向上しない傾向にある。
【0044】
(c成分)
c成分は光開始剤であり、光照射によりラジカル等の活性種を発生してb成分の重合を生じせしめる化合物である。c成分はi線(波長:365nm)で光ラジカル反応を生じ得る光開始剤であることが好ましい。
【0045】
c成分としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等を挙げることができる。これらの光開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0046】
c成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量を基準として、0.01〜10重量%が好ましく、0.02〜8重量%がより好ましく、0.05〜7重量%が特に好ましい。含有量が、0.01重量%未満の場合は、光感度が低くなる傾向があり、10重量%を超えると、透明性及び得られるパターンの切れが低下する他、未露光部の現像残渣が発生する場合がある。
【0047】
(d成分)
d成分は有機溶剤であり、感光性樹脂組成物の粘度を塗布に適した値(3〜150mPa・sが好ましい。)に保つために任意に添加される成分である。
【0048】
d成分としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのモノ又はジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルのアセチル化物、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールのモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルのアセチル化物、β−ラクトン、γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0049】
d成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量を基準として、1〜80重量%が好ましく、5〜75重量%がより好ましく、6〜74重量%が更に好ましい。含有量が1重量%未満の場合は、感光性樹脂組成物の粘度が高く、ハンドリング性が劣る傾向にあり、80重量%を超す場合は、硬化物(塗膜)の乾燥性が低下し、スピンコートで塗布を行う際、風きり跡等の塗布ムラを発生する可能性がある。
【0050】
(e成分)
e成分は界面活性剤であり、感光性樹脂組成物に含まれる成分の分散性を改良して、感光性樹脂組成物の粘度を塗布に適した値(上記値が好ましい。)に保つために任意に添加される成分である。
【0051】
e成分としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を使用することができ、必要に応じて数種類を併用することができる。シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。
【0052】
(その他添加成分)
本発明の感光性樹脂組成物においては、上記a〜e成分の他に、暗反応を抑制するためのハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等の熱重合禁止剤;被着体(基材)との密着性を向上させるためのシランカップリング剤(ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の官能基と、アルコキシシリル基を有した化合物)やチタネート系カップリング剤(イソプロピルトリメタクリロイルチタネート、ジイソプロピルイソステアロイル−4−アミノベンゾイルチタネート等);膜の平滑性を向上させるための界面活性剤(フッ素系、シリコーン系、炭化水素系等);紫外線吸収剤;酸化防止剤等を必要に応じて適宜添加することができる。
【0053】
また、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等のa成分以外の樹脂を、a成分100重量部に対して、50重量部以下となるように添加することができる。この添加量が50重量部を超えると、現像時間が長くなる原因となり解像性の低下原因ともなり得る。
【0054】
(感光性樹脂組成物の適用)
本発明の感光性樹脂組成物を硬化することにより、高い透明性及び硬度を備えた硬化物を得ることができる。硬化物は、基材上にパターン化された薄膜(硬化物層)として形成させることが好ましい。パターン化された硬化物層は、基材上に感光性樹脂組成物に由来する層を形成させる積層工程と、前記層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成せしめる露光工程と、該露光部以外の部分を除去する現像工程と、を備える方法により形成可能である。
【0055】
積層工程において使用される基材としては、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板;ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなるシート、フィルム又は基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;セラミック基板;光電変換素子を有する半導体基板;表面に色材層を備えるガラス基板(LCD用カラーフィルタ)等が挙げられる。
【0056】
上記基材に感光性樹脂組成物に由来する層を形成させる方法としては、感光性樹脂組成物からなる感光液を基材に直接塗布する方法や、感光性エレメントを用いる方法が挙げられる。
【0057】
a〜c成分のみからなる感光性樹脂組成物が流動性を有する場合は、感光性樹脂組成物をそのまま感光液として使用できる。しかし、感光性樹脂組成物にd成分を添加して低粘度化させて感光液として用いることが好ましい。なお、感光性樹脂組成物がd成分を含有する場合であっても、d成分として上記に例示した有機溶剤以外の有機溶剤(以下「後添加による有機溶剤」という。)を更に添加して、所定の粘度の感光液とすることも可能である。この場合において、感光性樹脂組成物に含まれる有機溶剤の全重量のうち、後添加による有機溶剤の含有量は、90重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この使用量が90重量%を超えると、感光液の安定性が低下する傾向がある。
【0058】
後添加による有機溶剤としては、例えば、ケトン系、セロソルブ系、アルコール系、芳香族系の有機溶剤が挙げられる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶剤が例示可能である。
【0059】
感光液を基材に直接塗布する塗布方法としては、ロールコーター塗布、スピンコーター塗布、スプレー塗布、ホエラー塗布、ディップコーター塗布、カーテンフローコーター塗布、ワイヤーバーコーター塗布、グラビアコーター塗布、エアナイフコーター塗布等が挙げられる。
【0060】
感光性樹脂組成物が有機溶剤等の揮発成分を含まない場合は、塗布した感光液がそのまま「感光性樹脂組成物に由来する層」となる。感光性樹脂組成物が有機溶剤等の揮発成分を含む場合は、上記塗布後に50〜130℃の温度で1〜30分乾燥させることにより、感光性樹脂組成物の不揮発成分の薄膜を形成させ、「感光性樹脂組成物に由来する層」を得る(乾燥工程)。
【0061】
一方、感光性エレメントを用いて、基材に感光性樹脂組成物からなる層を形成させる方法は以下のとおりである。
【0062】
感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層(当該層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましく、0.2〜10μmが更に好ましい。)と、を備えているが、かかる感光性エレメントは、支持体(ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のフィルム)に感光性樹脂組成物(又は感光液)を、ナイフコーター塗布、グラビアコーター塗布、ロールコーター塗布、スプレーコーター塗布等により塗布して、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して作製することができる。
【0063】
なお、感光性樹脂組成物層の表面に塵等が付着するのを防ぐ目的で、感光性樹脂組成物層の表面に剥離可能なカバーフィルム(ポリエチレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等)を積層することが好ましく、カバーフィルムは、感光性樹脂組成物層と支持体との接着力よりも、感光性樹脂組成物層とカバーフィルムとの接着力の方がより小さくなる素材からなることが好ましい。
【0064】
このような感光性エレメントを用いて、基材上に「感光性樹脂組成物に由来する層」を形成させる方法としては、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を基材に圧着してラミネートする方法が挙げられる。なお、感光性エレメントがカバーフィルムを有するときはそれを剥がしながらラミネートを行い、ラミネートにあたっては、加熱圧着することが好ましく、雰囲気は常圧でも減圧下でもよい。これにより、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層が「感光性樹脂組成物に由来する層」となる。
【0065】
上述のようにして感光液又は感光性エレメントを使用して積層工程を実施した後、露光工程において、基材上の「感光性樹脂組成物に由来する層」の所定部分に活性光線を照射し、当該層を硬化させて露光部を形成せしめる。所定部分に活性光線を照射する方法としては、フォトマスクを介したパターン露光や走査による直接描写等が挙げられる。
【0066】
活性光線の照射は、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、可視光レーザー等を光源として行うことができ、積層工程で感光性エレメントを用いたときは、支持体上から露光してもよく、支持体を剥離した後に露光してもよい。一方、積層工程で感光液を用いた場合においては、層表面を直接露光してもよく、層表面にポリビニルアルコール等の酸素遮断膜を0.5〜30μmの厚みで形成した後、その上から露光してもよい。
【0067】
現像工程においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム等の無機アルカリ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルアミン、n−ブチルアミン等の有機塩基又はその塩を含む水溶液を、露光工程で得られた感光性樹脂組成物に由来する層を備えた基材に吹き付けるか、当該基材を水溶液に浸漬するなどして未露光部を除去し、パターン化された硬化物層を得ることができる。この場合において、感光性エレメントの支持体を通して露光した場合には、支持体を剥離した後に現像を行う。
【0068】
現像工程終了後においては、高圧水銀灯などを用いて0.5〜5J/cm2の光量で後露光するか、60〜260℃の温度で1〜120分間、後加熱することが好ましい(後硬化工程)。これにより、パターン化された硬化物層をより強固にすることができる。
【0069】
このようにして得られた硬化物層は、波長400nmの光の透過率が90%以上(更には92%以上)であることが好ましい。ここで、波長400nmの光の透過率は、以下の方法により測定されるものをいう。
【0070】
すなわち、感光液をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、90℃で5分間乾燥を行って、膜厚約3.0μmの膜を形成する。そして、得られた膜に、ネガマスクを通して超高圧水銀灯により200mJ/cm2の露光を行い、パターンを形成する。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(0.5重量%)と水酸化カリウム(0.3重量%)とを含む水溶液からなる現像液を用いて、液温30±1℃にて60秒間現像を行い、240℃で30分乾燥して硬化物層を備えたガラス基板を得る。そしてかかる基板を用いて透過率測定機(例えば、島津社製UV−2400PC)により400nmの透過率の測定を行う。
【0071】
上記硬化物層は、また、ビッカース硬さが47以上(更には50以上)であることが好ましい。なお、ビッカース硬さは、スピンコート法により形成させる膜厚が約5.0μmである他は、上記透過率の測定方法におけるのと同様にして硬化物層を備えたガラス基板を得、このガラス基板を用いて微小硬度測定計(ジャパンハイテック株式会社製、MHT−4)により求める。なお、この場合において、負荷荷重を20gf、保持時間を5秒、測定環境を常温(24℃)として測定を行う。
【0072】
(積層基材)
本発明は、基材と、該基材上に形成された上記発明の感光性樹脂組成物の硬化物からなる透明絶縁層と、を備えることを特徴とする積層基材を提供する。ここで、「感光性樹脂組成物の硬化物からなる透明絶縁層」とは、感光性樹脂組成物が揮発成分を含まない場合は、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層をいい、揮発成分を含む場合は、当該揮発成分を除去したものの硬化物からなる層をいう。
【0073】
基材としては、上述したものと同様の基材、すなわち、透明ガラス基板、合成樹脂からなるシート、フィルム又は基板、金属基板、セラミック基板、半導体基板、表面に色材層を備えるガラス基板(LCD用カラーフィルタ)等が挙げられる。
【0074】
図1は、基材として表面に色材層を備えるガラス基板を用いた場合の積層基材(LCD用カラーフィルタ)を模式的に示す断面図である。図1に示すLCD用カラーフィルタ10は、ガラス基板12と、ガラス基板12上に二次元状に配列するように形成された、赤色材層R、緑色材層G及び青色材層Bと、ガラス基板12上であってこれらの色材層間に少なくとも形成された遮光層14と、赤色材層R、緑色材層G、青色材層B及び遮光層14を覆うようにガラス基板12上に形成された透明絶縁層16と、透明絶縁層16上に形成された透明電極層18と、を備えている。
【0075】
図1に示すLCD用カラーフィルタは、透明絶縁層16が本発明の感光性樹脂組成物の硬化物であるが、赤色材層R、緑色材層G及び青色材層Bを、それぞれ、赤色材、緑色材及び青色材を含有する本発明の感光性樹脂組成物の硬化物とすることも可能である。
【0076】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[(メタ)アクリル共重合体の製造例]
((メタ)アクリル共重合体1)
(A)1Lスケールの四つ口フラスコに264gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと乳酸メチル66gを秤取り、窒素でバブリングしながら、液温を90℃に保った。
【0078】
(B)1Lビーカー内で240gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル60g、メタクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(日立化成工業社製、FANCRYL FA-513M)86.4g、N−シクロヘキシルマレイミド36.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート106.7g、メタクリル酸40.5gを混合し、窒素バブリングしながら溶解させた。N−シクロヘキシルマレイミドの溶解を確認した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3gを溶解させた。
【0079】
(B)を(A)に3時間かけて連続的に滴下し、その後3時間90℃に保持した。3時間90℃に保持している間、数回に分けて、40gのジエチレングリコールジメチルエーテルの中にあらかじめ溶解させておいた2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gを残存モノマー低減のため添加した。合計6時間、90℃で反応を行った後、120℃まで液温を上昇させ、その後1時間120℃に保ち自然冷却して、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む重合体(以下「重合体1」という。)の溶液を得た。
【0080】
エチレン性不飽和結合(メタクリロイル基)を導入するために、得られた溶液に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと錫系の触媒とを添加し80℃で2〜3時間保持し、自然冷却して(メタ)アクリル共重合体(側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する)の溶液を得た。なお、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートは重合体1に対し、1.5mmol/gとなるようにした。
【0081】
((メタ)アクリル共重合体2)
(A)1Lスケールの四つ口フラスコに285gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを秤取り、窒素バブリングしながら、液温を90℃に保った。
【0082】
(B)1Lビーカー内で300gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルメタクリレート141.8g、N−シクロヘキシルマレイミド63.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート63.0g、メタクリル酸47.3gを混合し、窒素バブリングしながら溶解させた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3gを溶解させた。
【0083】
(B)を(A)に3時間かけて連続的に滴下し、その後3時間90℃に保持した。3時間90℃に保持している間、数回に分けて、40gのジエチレングリコールジメチルエーテルの中にあらかじめ溶解させておいた2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gを残存モノマー低減のため添加した。合計6時間、90℃で反応を行った後、120℃まで液温を上昇させ、その後1時間120℃に保ち自然冷却して、(メタ)アクリル共重合体の溶液を得た。
【0084】
重合体1、(メタ)アクリル共重合体1及び(メタ)アクリル共重合体2の組成及び特性(粘度及び分子量)について以下の表1及び表2にまとめて示す。
【0085】
【表1】
Figure 0004144342
【0086】
【表2】
Figure 0004144342
【0087】
次いで、(メタ)アクリル共重合体1及び(メタ)アクリル共重合体2を用いて、感光性樹脂組成物を作製した。
【0088】
(実施例1)
感光性樹脂組成物のa成分として(メタ)アクリル共重合体1を35g、化合物1(b成分)としてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを9g、c成分としてベンゾフェノン(1g)及びN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(1g)、d成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを54g、e成分としてSH29PA(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)を0.1g秤取り、撹拌子とスターラーを用いて、c成分が完全に溶解するまで撹拌し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0089】
(比較例1)
a成分として(メタ)アクリル共重合体1に代えて(メタ)アクリル共重合体2を35g用い、b成分としてトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートに代えてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを9g用いた他は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0090】
実施例1及び比較例1で得られた感光性樹脂組成物の溶液を用いて透過率及び硬度を以下のようにして評価した。
すなわち、実施例1又は比較例1で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、ガラス基板(コーニング社製、商品名7059)上にスピンコート法により塗布し、更に90℃で5分間乾燥を行い、透過率測定には膜厚約3.0μm、硬度測定には約5.0μmの膜を形成した。得られた膜に、ネガマスクを通して超高圧水銀灯により画像状に200mJ/cm2の露光を行い、次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(東邦化学株式社製、商品名ノナール912A)を0.5重量%及び水酸化カリウムを0.3重量%含む水溶液により、現像液30±1℃の液温で60秒間現像を行った。その後240℃の乾燥機内で30分乾燥し得られた基板を使用して、(1)400nmの光の透過率、(2)熱処理(240℃、60分焼成)後の400nmの光の透過率及び(3)硬化膜の硬度(ビッカース硬さ)の評価を行った。なお、透過率の測定には、UV−2400PC(島津社製)を使用し、硬度(ビッカース硬さ)の測定は、ジャパンハイテック社製Maicroharadness Tester MHT−4により、負荷荷重20kgf、負荷速度20kgf/秒、保持時間5秒の条件で行った。上記評価の結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
Figure 0004144342
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、i線(波長:365nm)で光ラジカル反応を生じ得る光開始剤を含有させた場合であっても、硬化後の380〜400nmの光の透過率を高くすることができ、硬化後の硬度を向上させることも可能な感光性樹脂組成物を提供することが可能になる。また、上記組成物を用いた感光性エレメント及び上記組成物の硬化物を備える積層基材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材として表面に色材層を備えるガラス基板を用いた場合の積層基材(LCD用カラーフィルタ)を模式的に示す断面図である
【符号の説明】
10…LCD用カラーフィルタ、12…ガラス基板、R…赤色材層、G…緑色材層、B…青色材層、14…遮光層、16…透明絶縁層、18…透明電極層。

Claims (6)

  1. (メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む(メタ)アクリル共重合体と、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、光開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、
    前記(メタ)アクリル共重合体は、(a1)トリシクロ環と(メタ)アクリロイル基を有する環式モノマー、(a2)カルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するカルボキシルモノマー、(a3−2)水酸基とエチレン性不飽和基とを有するヒドロキシモノマー及び(a3−3)N−シクロアルキルマレイミド、を単量体単位として含む共重合体に、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアナートを反応させて得られるエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体であり、
    前記エチレン性不飽和結合を有するモノマーとして、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるイソシアヌレートモノマーを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
    Figure 0004144342
    Figure 0004144342
    [式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。但し、複数存在するR1及びR2のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。]
  2. 前記(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量が3,000〜200,000の(メタ)アクリル共重合体であることを特徴とする請求項に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 有機溶剤及び/又は界面活性剤を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
  4. 塩基性溶液に可溶性を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  5. 支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えることを特徴とする感光性エレメント。
  6. 基材と、該基材上に形成された請求項1〜のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる透明絶縁層と、を備えることを特徴とする積層基材。
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