JP4144260B2 - 切削性向上化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に建築物の内装、建具、家具等等の表面装飾等に用いられる化粧板を製造するための非塩化ビニル系の化粧シート、及びその化粧シートを化粧板用基材に積層した非塩化ビニル系の化粧板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば建築内装用の扉、クローゼット、キッチン扉、内壁材、家電用表装材などに用いられてきた化粧板の表面に使用されている化粧シートは、印刷適性が良い、可塑剤添加により硬軟の度合いの調節が可能で用途に合わせた固さを選択できる、エンボス加工性が良い、ラミネート時の層間の接着強度が強い、切削性が良く、化粧シートを利用した化粧板にルーター加工等の切削加工を施した場合にもバリ・ヒゲ・膜浮き等が目立たない、等々の利点があるポリ塩化ビニルシートに木目柄や抽象柄等を印刷したポリ塩化ビニル系の化粧シートが一般的に広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、上述のポリ塩化ビニル系の化粧シートは、燃焼した場合に有害なガスが発生する恐れがあり、廃棄物の燃焼処理時の人的影響や、環境保全への危惧から、ポリ塩化ビニル系の化粧シートに代わる、燃焼した場合にも有毒なガスが発生しない材料を用いた化粧シートの開発が、ユーザーから強く求められている。
【0004】
そこで近年では、ポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、アクリル系など非塩化ビニル系の樹脂や紙などを、単層シートか又は複数のシートの積層によって成る非塩化ビニル系の化粧シートが、ポリ塩化ビニル系の化粧シートの代替として使用されるようになってきている。
【0005】
しかしながら、ポリオレフィン等の非塩化ビニル系の化粧シートを用いて化粧板用基材に積層して化粧板にした場合の化粧板の切削性は、化粧シートを構成する樹脂が本来持つところの機械物性が、ポリ塩化ビニル系樹脂とは異なっているために、非塩化ビニル系化粧シートにおいては、ポリ塩化ビニル系化粧シートと比べて遜色ない切削性を実現することが、これまでは困難であった。
ここでいう化粧板の切削性とは、木質等の有機系の化粧板用基材や無機系の化粧板用基材の表面に化粧シートを積層した化粧板に対して、その化粧シート積層面側からルーター等で切削加工を行った場合の切削面及びその周辺部の切削状態の良否を表すもので、バリ・ヒゲ・膜浮き、等々が無いものを切削性が良いとしている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、係る従来技術の欠点に鑑みてなされたもので、非塩化ビニル系の化粧シート及び該化粧シートを用いて製造された化粧板において、非塩化ビニル系の化粧シートを、木質等の有機系の基材や無機系の基材の表面に積層した化粧板を、化粧シート積層面側からルーター加工等の切削加工を行った場合に、良好な切削性が得られるようにすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明において前記課題を達成するために、まず請求項1に係る発明は、ポリプロピレンを主体とした樹脂100重量部に対して石油樹脂成分10重量部を添加した樹脂よりなる厚さ80μmの基材シート上に、少なくともインキ層、厚み70μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シートよりなる透明非塩化ビニル系樹脂層、厚み6μmのウレタン系の表面保護層が積層され装飾処理が施された複層構成である化粧シートにおいて、引張速度が50mm/minの引張試験により得られる横軸Xに歪みx、縦軸Yに応力f(x)を取ったグラフで表される前記化粧シートに関する応力−歪み曲線において、その降伏点aと降伏点以降に応力が低下から増大に転ずる点cとの間の中間点bの曲線の応力−歪み曲線の勾配r=df(xb )/dxが、−9.0×107N/m2 であり、かつ、前記引張試験により得られる応力−歪み曲線の原点Oから降伏点aまでの区間の曲線と、降伏点aから横軸Xに下した垂線と、横軸Xとで囲まれる図形の面積s(s=∫0 Xa[f(x)]dx)が、2.0×104N・m/m2 であることを特徴とする切削性向上化粧シートである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る切削性向上化粧シートが、化粧板用の基材に積層されてなることを特徴とする化粧板である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の切削性向上化粧シートを、その発明の実施の形態に沿って以下に詳細に説明すれば、図1は引張試験を行った時の一般的な応力−歪み(ひずみ)曲線を示す曲線グラフである。
【0012】
引張試験とは、試験片に決められた速度を定常的に与えて、その試験片に掛かる応力と、その試験片の歪み(ひずみ)を測定する試験方法である。応力−歪み曲線とは、前記引張試験を行ったときに、縦軸に試験片にかかる応力を取り、横軸には引っ張りにより試験片に生じる歪みを取った際に得られる曲線である。
【0013】
応力は、試験片にかかる荷重を、その試験片の引っ張り前の断面積で割った値によって規定される。また歪みは、通常は測定片の引張測定中の長さと引っ張り前の初期長さとの比で求められるが、物性を比較する上では、単に引張測定前のシート長さと、引張測定中のシート長さとの差(引張速度と測定経過時間との積に等しい)を歪みの代用特性としても差し支えないので、今回は便宜上、これを横軸の値とする。
【0014】
また、応力−歪み曲線の形状は、通常引張速度に依存するので、引張試験を行う際は、引張速度を統一する必要がある。本発明においては、全ての引張試験の引張速度を50mm/minで行ったが、物性の比較を目的とするのであれば、引張速度は必ずしもこの値に限るものではなく、おおよそ200mm/min以下の範囲であればよい。一般的な応力−歪み曲線の形を図1に示す。
【0015】
本発明の化粧シートにおいては、ポリ塩化ビニル系の化粧シートを用いた化粧板と同等レベルの切削性を実現するために、図1に示す一般的な応力−歪み曲線に関して、まず降伏点aと、その降伏点a以降に応力が低下から増大に転ずる点cとの間の曲線上の中間点bにおける応力−歪み曲線の接線の勾配r(r=df(xb)/dx)が、−3.5×107 N/m2 以下の範囲にある必要があることを発見した。
【0016】
また、同じく応力−歪み曲線に関して、弾性域から降伏点aまでの間の面積sを、2.0×104N・m/m2以下の範囲に抑えることが必要であることを発見した。
【0017】
ここで弾性域とは、図1において直線dにて示される、引張荷重試験初期の測定値に基づいて得られる応力−歪み曲線が線形状態にある領域のことである。
【0018】
ここで、引張荷重試験により得られる横軸Xに歪み量x(xa 、xb 、xc 、・・・・・)、及び縦軸Yに応力f(x)(f(xa)、f(xb)、f(xc)、・・・・・)を取ったグラフで表した応力−歪み曲線において、原点Oから降伏点aまでの曲線区間と、降伏点aから横軸Xに下した垂線と、横軸Xとで囲まれる図形の面積s(s=∫0 xa[f(x)]dx)は、縦軸Yが単位断面積あたりに掛かる力f(x)、横軸Xが化粧シートが受ける変位量xであるから、単位断面積あたりの切削時のエネルギーと考えることも可能である。
【0019】
こうして面積sを単位断面積あたりの切削時のエネルギーと考えた場合、切削性が良い化粧シートとは、例えば、その化粧シートを化粧板用基材面に貼り合わせて積層して得られる化粧板を、その化粧シートの積層面側から切削した際に、単位断面積当たりの切削時のエネルギーが小さいシート、言い換えれば、切削時にかかる負荷が小さいシートということになる。
【0020】
続いて、図2を参照しながら、本発明の切削性向上化粧シートについて、その構成の形態を説明する。図2は、本発明で規定された化粧シートの様態の中で、もっとも単純な単層構造の化粧シートを示す断面図である。
【0021】
図2に示す例では、化粧シートは、ポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、アクリル系等の樹脂からなる基材シート1の表面に、装飾のための木目柄や抽象柄等のインキ層2が積層されているものである。
【0022】
この図2に示す例では、インキ層2は基材シート1の表面にあるが、基材シート層1の透明性が高い場合には、主にインキ層2の柄が磨耗や紫外線等により劣化するのを防ぐために、インキ層2を基材シート1の裏面に配しても良い。またこの場合には、基材シート1には、木材等の質感・意匠感を出すために、エンボス加工などにより、凹凸の付いた模様が施されていても良い。
【0023】
また公知のワイピング法によって凹凸の凹部(導管部)に着色部(図示せず)が形成されていても良い。ワイピング法とは、凹凸部全面に着色インキを塗工して、その後に、凸部に付着している着色インキを掻き取り、凹部のみに着色インキを残留させる方法で、ドクターブレード法、ロールコート法などがあるが、どの方法を用いても良い。
【0024】
また、前述したような、透明な基材シート1の裏面にインキ層2があるような構成の場合には、当該基材シート1による化粧シートを、木質等の有機系の基材や無機系の化粧板用基材に貼り合せた時、その化粧板用基材の色調(色味)がインキを通して透けて見えるのを防ぐため、前記基材シート1の裏面に設けたインキ層2面にベタの隠蔽層の印刷を行うのが一般的である。
【0025】
本発明の切削性向上化粧シートに前記基材シート1として使用される単層の基材シートを作製する方法としては、Tダイ押出し法やカレンダー法などがあるが、その方法については特に規定されるものではなく用途に応じて使い分けをすればよい。また使用するシートは、延伸・未延伸シートのいずれでも良い。また本発明の切削性向上化粧シートに使用するインキ層2は、木目柄、抽象柄、石目柄、布目柄、文字、記号、ベタ等々の模様を有し、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、等の公知の印刷技法を用いて形成されるもので、どの方式を使用するかは、特に規定されるものではないが、通常の化粧シートの印刷においては、グラビア印刷を用いることが多い。またインキの種類は、溶剤系と水系の2種類に大別されるが、所望とする発色が得られ、かつ基材シート1、あるいは木質等の有機系基材や無機系の化粧板用基材との密着性が充分であれば、どちらを選んでも差し支えない。
【0026】
図3は、本発明で規定された切削性向上化粧シートの様態の中で、様々な用途に一般的に広く用いられている複層シート構造の切削性向上化粧シートを示す断面図である。
【0027】
図3に示す例では、基材シート1上にインキ層2が積層されているところまでは、単層構造の切削性向上化粧シートと同じ構造であるが、複層の場合は基材シート1に紙を用いても良い。また複層構造の切削性向上化粧シートの場合には、主にインキ層2の模様柄が、磨耗や紫外線等により退色したり劣化したりするのを防ぐために、インキ層2の表面に透明非塩化ビニル系樹脂層3が積層されており、さらにその上には透明な表面保護層4が積層されている。透明非塩化ビニル系樹脂層3と透明な表面保護層4には、木材等の質感を出すために、エンボス加工などにより凹凸模様4aなど凹凸加工が施されていても良い。
【0028】
本発明で使用される上記透明非塩化ビニル系樹脂層3は、ポリ塩化ビニル系シートと同等以上の物性を有していれば、特に規定されるものではないが、コスト面や、その他を考慮した場合、ポリプロピレンを主体とした樹脂であることが望ましい。
【0029】
この層の厚みとしては、通常30〜200mm程度にすることが多いが、その範囲内に限定される必要は必ずしもない。透明非塩化ビニル系樹脂層3には、エンボス加工等によって作製した装飾のための凹凸があってもよい。また前記した公知のワイピング法によって、凹凸の凹部(導管部)に着色部が形成されていても良い。
【0030】
また切削性向上化粧シート自体に、耐熱性、硬度、耐衝撃性、低温加工性等の機能が要求される場合には、透明非塩化ビニル系樹脂層3のベースとなるポリプロピレンもホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等を任意に選定したものであって構わない。また通常は、これら透明非塩化ビニル系樹脂層3には、得られた製品の熱酸化を防止するための酸化防止剤や、得られた製品の紫外線による劣化を防ぐための紫外線吸収剤及び光安定剤等々の添加剤が適宜添加される。これらの添加剤の種類及び量に関しては、特に規定されるものではなく、一般に使用されているものの組み合わせで充分である。
【0031】
前記の様に、複層タイプのシートを作製する方法としては、Tダイ押出しラミネーション法(共押出しラミネーションを含む)、ドライラミネーション等、従来から公知の様々な方法があり、用途に応じて、いずれの方法を用いても差し支えない。
【0032】
Tダイ押出しラミネーションによるシート作製とは、押出し機から、スクリューを使って熱融解した樹脂をフィードし、Tダイを通して基材となるシート上に樹脂を積層していく方法である。特に、基材シート1上に2層以上を積層する場合には、2種類以上の熱融解された樹脂が別々の押出し機から同時にフィードされ、Tダイの中または外でこれらの樹脂を積層することにより、複層のシートが層間に接着剤を使用することなく作製できる。この製法においては、層間の密着強度を得るために、必要に応じて、アンカーコート層を用いる、接着性樹脂層を用いる、あるいはコロナ処理、オゾン処理等の酸化処理を行う等々の処理を行なう。
【0033】
ドライラミネーションとは、積層する片方のシートに、水性または有機溶剤で溶解させた接着剤を公知のコーティング技法を用いて均一に塗布し、乾燥オーブン中で溶剤分を蒸発・乾燥させた後、乾燥粘着状態になったところで、他方のシートを貼り合わせ、40〜100℃に加熱した金属ロールとゴムロールとで圧着ラミネートする方法である。ドライラミネーションに使用する接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系、エマルジョン系、ウレタン系等があるが、本発明の切削性向上化粧シートにおいては、ウレタン系の接着剤が適している。
【0034】
本発明で使用される表面保護層4は、化粧シート及び化粧シートを用いて作製される化粧板の耐候性、耐汚染性、耐傷性の向上、及び化粧シートに所定の艶を持たせるために用いられている。また、前記のワイピング等の技法により、導管部に着色が施されている場合には、この着色インキ保護の役割も果たす。この層の成分及び厚みに関しても、耐候性、耐汚染性、艶、及び透明非塩化ビニル系樹脂層との密着等が充分にあれば、特に規定されるものではない。
【0035】
本発明の切削性向上化粧シートにおいては、木質等の有機系基材や無機系の化粧板用基材との密着強度を向上させるために、必要に応じて、基材シート1の裏面にプライマー層を設けても良い。このプライマー層に関しても、化粧板用基材との充分な密着強度が得られており、かつ積層時の基材シート1と木質等の有機系基材や無機系の化粧板用基材との間でのシート1の浮き等が発生しなければ、特に規定されるものではないがポリウレタン系のものを使用するのが望ましい。
【0036】
これまで列記した各層に関しては、層間の密着強度を向上させるために、必要に応じてコロナ処理、オゾン処理等の酸化処理が施してあっても差し支えない。
【0037】
これまでに列記した構成の切削性向上化粧シートで、前記した勾配rが、−3.5×107N/m2以下であり、かつ面積sが、2.0×104N・m/m2以下にある化粧シートであれば、この化粧シートの切削性は良いと言えるが、単層または複層のうちの1つ以上の層に、たとえばポリオレフィン系の樹脂が使用されている場合などでは、この数値を超えることがあり得る。その場合の対策としては、ポリオレフィン系の樹脂100重量部に対して、脂肪族系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の石油樹脂の成分か、またはアルコン等を1〜50重量部添加すればよい。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の切削性向上化粧シートの具体的実施例及び比較例について更に説明する。
【0039】
<参考例1>
ポリプロピレンを主体とした樹脂100重量部に対して、石油樹脂成分10重量部をマスターバッチ方式によって添加し、Tダイ押出し法によって厚み70μmの単層シート(図2の単層シート1参照)を作製した。このシートにおいて、前記引張荷重試験を50mm/minの引張速度で行い、得られた応力−歪み曲線の形状から、同じく前記の勾配rと面積sを求めた。さらに、このシートの表面にグラビア印刷法により木質柄模様のインキ層2を施して、図2に示すような石油樹脂成分添加のPP系単層化粧シートによる本発明の切削性向上化粧シートを得た。
得られた切削性向上化粧シートの裏面にコロナ処理及びプライマー層の積層を行った後、化粧板用基材としての木質系の基材上に、この化粧シートを、その裏面側を貼り合わせ積層して化粧板を作成した。そして、この化粧板に対して、その化粧シートの積層面側からルーター切削加工を行ない、その切削性の確認を行った。
【0040】
<実施例1>
上記参考例1と同様のポリプロピレンを主体とした樹脂100重量部に対して石油樹脂成分10重量部をマスターバッチ方式によって添加した樹脂(基材シート1用樹脂)を、ポリエチレン系の接着性樹脂と共に、共押出しラミネーション法を用いて、グラビア印刷法により木質柄模様のインキ層2を施した厚み約70μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シート(透明非塩化ビニル系樹脂層3)上に80μmの厚みで積層し、図3に示したような基材シート1と接着性樹脂とインキ層2と透明非塩化ビニル系樹脂層3からなる複層シートを得た。
前記インキ層2と前記接着性樹脂による接着性樹脂層との間には、2液のウレタン系アンカーコート樹脂を塗布し、さらに、アンカーコート層と接着性樹脂層との間にオゾン処理を施すことにより、層間の密着強度を高めた。また、得られた上記積層シートの最表層部(透明非塩化ビニル系樹脂層3)面に、厚み約6μmのウレタン系の表面保護層4を積層して、図3に示すような石油樹脂成分添加の複層化粧シートによる本発明の切削性向上化粧シートを得た。
この化粧シートにおいて、単層の時と同じく50mm/minの引張速度で引張荷重試験を行い、応力−歪み曲線の形状から勾配rと面積dを求めた。さらに得られた化粧シート裏面の基材シート1にコロナ処理及びプライマー層の積層を行った後、化粧板用基材としてのMDF基材上に、この化粧シートの基材シート1側を貼り合わせて化粧板を作成した。そして、この化粧板に対して、その化粧シートの積層面側からルーター切削加工を行ない、その切削性の確認を行った。
【0041】
<比較例1>
それぞれ厚み70μmのポリ塩化ビニルの単層化粧シートと、ポリエチレンを主体とした石油樹脂成分未添加のPE系単層化粧シートと、ポリプロピレンを主体とした石油樹脂成分未添加のPP系単層化粧シートを、それぞれ用意して、同じく前記の引張荷重試験で得られる応力−歪み曲線から、それぞれ単層化粧シートの勾配rと面積dを求めた。さらに、これらの単層化粧シートの裏面に、コロナ処理及びプライマー層の積層を行った後、化粧板用基材としての木質系の基材上に、それぞれシートを貼り合わせて、比較例としての化粧板を作成した。そして、この化粧板に対して、その化粧シートの積層面側からルーター切削加工を行ない、その切削性の確認を行った。
【0042】
<比較例2>
比較例2の(1)として総厚150μmポリ塩化ビニルの基材シートを用いた複層化粧シートと、(2)として共押出しラミネーション法を用いて積層された表層から順に厚み約70μmのポリプロピレン系樹脂層と厚み約10μmのポリエチレン系接着性樹脂層とアンカーコート層とインキ層と基材シートとして石油樹脂未添加の厚み約70μmのポリエチレンテレフタレート樹脂層とからなる石油樹脂未添加のPP/PET系複層化粧シートと、(3)として同じく共押出しラミネーション法を用いて積層された表層から順に厚み約70μmのポリプロピレン系の層と厚み約10μmのポリエチレン系の接着性樹脂層とアンカーコート層とインキ層と基材シートとして石油樹脂未添加の厚み約70μmのポリプロピレン層とからなる石油樹脂未添加のPP/PP系複層化粧シートと、(4)として同じく共押出しラミネーション法を用いて積層された表層から順に厚み約70μmのポリプロピレン系の層と厚み約10μmのポリエチレン系の接着性樹脂層とアンカーコート層とインキ層と基材シートとして石油樹脂未添加の厚み約70μmのポリエチレン層とからなる石油樹脂未添加のPP/PE系複層化粧シートをそれぞれ用意し、これらの複層化粧シート最表層部に、厚み6μmの表面保護層を積層した。
これらの複層化粧シートにおいて、50mm/minの引張速度で引張荷重試験を行い、応力−歪み曲線の形状から勾配rと面積dを求めた。さらに、それら複層化粧シート裏面にコロナ処理及びプライマー層の積層を行った後、化粧板用基材としてのMDF基材上に、これら化粧シートの基材シート側を貼り合わせて化粧板を作成した。そして、この化粧板に対して、その化粧シートの積層面側からルーター切削加工を行ない、その切削性の確認を行った。
【0043】
【表1】
【0044】
表1は、参考例1、比較例1で得られた化粧板について、その勾配r、面積d及び切削性に関する評価結果を一覧表にしたものである。
【0045】
表1を見てわかる通り、勾配rが−3.5×107N/m2以下であり、また面積dが、2.0×104N・m/m2以下の範囲にある、比較例1の(1)ポリ塩化ビニルの単層化粧シート、及び参考例1の石油樹脂成分添加のPP系単層化粧シートの切削性は良好であり、逆に勾配rと面積dが上記範囲を満たしていない比較例1の(2)石油樹脂成分未添加のPE系単層化粧シート、(3)石油樹脂成分未添加のPP系単層化粧シートの切削性は悪い。
【0046】
また表1を見てわかる通り、勾配rが−3.5×107N/m2以下であり、また面積dが、2.0×104N・m/m2以下の範囲にある、比較例2の(1)ポリ塩化ビニル複層化粧シート、及び実施例1の石油樹脂添加のポリプロピレン系樹脂とポリエチレンテレフタレート系樹脂のPP/PET複層化粧シートの切削性は良好であり、逆に勾配rと面積dが上記範囲を満たしていない比較例2の(2)〜(4)の石油樹脂未添加の化粧シートの切削性は悪い結果となった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の切削性向上化粧シートは、非塩化ビニル系の化粧シートであり、化粧板用基材に貼り合わせて化粧板とした場合に、従来のポリオレフィン系化粧シート等を貼り合わせた非塩化ビニル系の化粧板と比べて、バリやヒゲ、膜浮き等の少ない、切削性の優れた化粧板として製造できる効果がある。
【0048】
更に、本発明の切削性向上化粧シートは、塩化ビニル系の化粧シート及び化粧板と同様の良好な切削性が得られ、切削部の処理に費やす手間や時間を省けるため、コスト削減効果が得られ、また従来のポリ塩化ビニル系の化粧シート及び化粧板と比較して、燃焼した場合の有害ガスの発生する恐れが無く、また廃棄物の燃焼処理時の人的悪影響が無く、環境保全に良好な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】応力−歪み曲線の代表的な形状と本発明で規定する面積sを定義する説明図。
【図2】本発明の切削性向上化粧シートにおける単層化粧シートの代表的な構成を示す側断面図。
【図3】本発明の切削性向上化粧シートにおける複層化粧シートの代表的な構成を示す側断面図。
【符号の説明】
1…基材シート 2…インキ層 3…透明非塩化ビニル系樹脂層
4…表面保護層 x…歪み量 f(x)…応力
a…降伏点(xa ,f(xa ))
b…降伏点aと降伏点以降に応力が低下から増大に転ずる点cとの間の中間点
c…降伏点a以降に応力が低下から増大に転ずる点
d…弾性域の応力−歪み曲線の勾配
e…中間点bの接線
s…応力−歪み曲線における原点Oから歪み量xa までの図形面積
r…接線eのy/x勾配値
xa …降伏点aの歪み量
xb …中間点bの歪み量
xc …降伏点a以降に応力が低下から増大に転ずる点cの歪み量
Claims (2)
- ポリプロピレンを主体とした樹脂100重量部に対して石油樹脂成分10重量部を添加した樹脂よりなる厚さ80μmの基材シート上に、少なくともインキ層、厚み70μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シートよりなる透明非塩化ビニル系樹脂層、厚み6μmのウレタン系の表面保護層が積層され装飾処理が施された複層構成である化粧シートにおいて、引張速度が50mm/minの引張試験により得られる横軸Xに歪みx、縦軸Yに応力f(x)を取ったグラフで表される前記化粧シートに関する応力−歪み曲線において、その降伏点aと降伏点以降に応力が低下から増大に転ずる点cとの間の中間点bの曲線の応力−歪み曲線の勾配r=df(xb )/dxが、−9.0×107N/m2 であり、かつ、前記引張試験により得られる応力−歪み曲線の原点Oから降伏点aまでの区間の曲線と、降伏点aから横軸Xに下した垂線と、横軸Xとで囲まれる図形の面積s(s=∫0 Xa[f(x)]dx)が、2.0×104N・m/m2 であることを特徴とする切削性向上化粧シート。
- 前記請求項1に記載の切削性向上化粧シートが、化粧板用の基材に積層されてなることを特徴とする化粧板。
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