JP4143695B2 - カレンダーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数枚のカレンダー紙葉をそれらの上部で綴じ合わせた壁掛け用のカレンダーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の壁掛け用のカレンダーとして、複数枚のカレンダー紙葉の上端縁を二つ折りされた厚紙で挟み込み、その厚紙の下端辺近傍で前記カレンダー紙葉と厚紙とを糸で綴じ合わせてなるタイプのものが知られている(例えば、特開平9−58151号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で述べた糸綴じタイプのカレンダーは、構成部材に金属等を用いておらず、紙と糸のみで構成されているため、カレンダーの廃棄に当たっては、そのまま捨ててもよく、また手などで簡単に破って捨てることもできることから、ごみ公害の回避に大いに資するという利点はあるものの、綴じた糸の末端処理を行っていないため、糸がほつれてきて見栄えが悪くなり、最悪の場合にはカレンダー紙葉がバラバラになるという問題があった。
【0004】
また、上記のカレンダーのように紙葉束の上端縁を挟み込む厚紙を使わない場合、紙葉束のみを縫って上からクロス巻きを行うことで、ほつれ防止するものが通常であるが、このタイプのカレンダーは、縫い工程の後、クロス巻きをする必要があり、工程が増えることや、クロスが余計に必要でコスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、クロス巻きを行うことなく糸のほつれを防止でき、見栄えのよい、また生産性の良いカレンダーを製造する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明では製造するカレンダーの形態として、カレンダー紙葉束を糸で綴じ合わせる糸綴じ部を、単糸環縫いで形成すると共に少なくとも縫い始めの2針目と最終目に2回針を通して糸を絡ませ、結び目を形成したものを採用する。このように単糸環縫いを採用したことにより、生産性を上げることができると共に単に同じ目に2回針を通すことで結び目を作ることができ、少なくとも縫い始めの2針目と最終目に2回針を通して結び目を作ることで糸綴じ部の両端の糸のほつれを防止して、常に見栄えを良くすることができる。
【0007】
ここで、前記糸綴じ部を、カレンダーの表面側からミシンの針を通した単糸環縫いで形成し、且つ縫い始めの糸の末端をカレンダーの表面近傍で切断し、縫い終わりの糸の末端をカレンダーの裏面側に引き抜いておく構成とすると、カレンダーの表面には縫い目に沿って1本の糸が存在するのみとなるので、一層見栄えが良い。
【0008】
本発明のカレンダーの製造方法は、
上下動する針と、
縫製されるべきワークの下方で回転し、前記針と協働して縫い目を形成するルーパと、
前記針の近傍の所定位置に配置され、往復動して前記針とワークの間に延びている糸を引き込み可能なクランプ爪と、該クランプ爪が引き込んだ糸を該クランプ爪と協働して固定保持する固定爪と、前記クランプ爪が糸を引き込んでクランプした時、その糸をワーク側で切断するカッタを備えた糸固定装置と、
ワークの縫い終わった部分が走行する位置で且つワーク表面近傍の所定位置に配置され、ワークが送られてきた時に前記糸固定装置とワークとの間につながっている糸を切断する固定メスと、
前記固定メス近傍に配置され、前記固定メスで切断され、前記糸固定装置に保持された糸の一端側を吸引する糸屑吸引ホースを備えた単糸環縫い用ミシンを用い、
複数枚のカレンダー紙葉からなる紙葉束を綴じ合わせるべき状態にセットしてなるワークを、カレンダーの表側が針側となるように且つ上端縁に沿って糸で綴じ合わせることができるように前記単糸環縫い用のミシンに通し、縫い始めの糸を前記糸固定装置で保持した状態で単糸環縫いを開始し、少なくとも2針目に2回針を通して糸を絡ませて結び目を作り、その後、単糸環縫いを行い、少なくとも最終目に再び2回針を通して糸を絡ませ且つ糸に張力を与えて強く締め付けた結び目を作り、
単糸環縫い中、前記ワークの進行にともなって前記糸固定装置とワークとの間につながっている糸が前記固定メスを通過する際に該固定メスでその糸を切断し、糸固定装置側の切断された糸を前記糸屑吸引ホースで吸引することを特徴とする。そして、この方法により、複数枚のカレンダー紙葉を、その上端縁に沿って糸で綴じ合わせ、その糸綴じ部の両端に強く締め付けた結び目を作ることができ、上記した形態のカレンダーを製造できる。また、ワーク表面側にある縫い始めの糸は固定メスでワーク表面近傍で切り離し、糸屑吸引ホースで吸引できるので、カレンダーの縫い始めの領域に糸端が長く延び出した状態で残ることがなく、カレンダーの外観を損ねないようにすることができる。更に、カレンダーの表側がミシンの針側となるようにワークを通して単糸環縫いを行っているので、縫い上がったカレンダーの表面には縫い目に沿って1本の糸が存在するのみとなり、きわめて見栄えのよいカレンダーを製造できる。
【0009】
ここで、縫い終わりに前記ワークと針との間に延びている糸を、前記糸固定装置で保持すると共にワーク側の糸を切断し、ワーク裏面側の糸を前記ルーパに引っかけた状態でワークを送ることで末端の糸をワークの裏面側に引き抜き、その後余分な糸を切断除去する構成とすると、ワーク移動時にルーパに掛けられていた糸がワークを通って引き抜かれることとなり、その際の摩擦抵抗によって糸に大きい張力を与え、結び目を強く締め付けることができる。また、末端の糸はワークの裏面側に引き抜かれているので、カレンダーの表面には縫い終わりの糸端が残っておらず、この点からもきわめて見栄えのよいカレンダーを製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しなから本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は本発明で製造するカレンダーの1形態を示すものであり、図1(a)はカレンダーの正面図、図1(b)はカレンダーの側面図、図1(c)は糸綴じ部の縫い始め〔図1(a)のc部〕における縫い目の構造を示す概略斜視図、図1(d)は糸綴じ部の縫い終わり〔図1(a)のd部〕における縫い目の構造を示す概略斜視図である。カレンダー1は、丁合した所定枚数のカレンダー紙葉2からなる紙葉束3の上端を、二つ折りされた厚紙4で挟み込み、紙葉束3の上端縁に沿って厚紙4と共に糸5で綴じ合わせて構成されている。以下、糸5で綴じ合わせた部分を糸綴じ部6という。図示の例では、各カレンダー紙葉2には、カレンダー紙葉2を横断する切り取り用のミシン目8が設けられている。一方、厚紙4は、板紙、十分強度のある用紙や和紙、複数枚の紙を積層(貼り合わせ)して強度を持たせた厚紙等の中から選んだ素材からなるものであり、紙葉束3の幅と同じ長さになっている。また、二つ折りした厚紙4の上辺寄りの中央位置には吊り下げ用の丸孔9が形成されている。なお、厚紙4には画鋲が刺さるので、丸孔9は必須のものではない。また、厚紙4自体も本発明に必須のものではなく、カレンダー紙葉2が必要な強度を備えている場合などには、厚紙4に代えて薄い紙を用いるとか、最外面に配置したカレンダー紙葉2を長くしその上端を折って他のカレンダー紙葉の上端を覆う構成とするとか、紙葉束の上端を覆う紙を全く使用しない等の変更を行ってもよい。
【0013】
紙葉束3及び厚紙4を綴じ合わせている糸綴じ部6は、紙葉束3及び厚紙4の幅の両端の小領域を除いたほぼ全域に幅方向に直線状に形成されている。ここで両端に糸綴じ部6の無い部分を設けたのは、ミシンで縫う際の最初に針を通す位置及び最後に針を通す位置が、カレンダー1の端縁に引っ掛かってトラブルを起こすことがないように、カレンダー1の端縁から離したためであり、両端の糸綴じ部のない領域の長さはそれぞれ、3mm程度以上あればよい。一方、糸綴じ部の無い領域が長くなると、その部分でカレンダー紙葉3がばらけるので、この点からは短い方が良く、通常20mm程度以下とすることが好ましい。なお、図面に示す実施形態では、カレンダー1のほぼ全幅に渡る1本の糸綴じ部6を設けているが、この代わりに、短い糸綴じ部を複数個、間隔をあけて1列に配置するとか、糸綴じ部を複数列に配置する等の変更を加えてもよい。
【0014】
糸綴じ部6は、図1(c)、(d)に示すように、1本の糸5で縫い合わせた単糸環縫いで形成されている。この単糸環縫いを行う際、カレンダー1の表面側からミシンの針を通しており、従って、カレンダーの表面側には、各縫い目の間に1本の糸5aが通っており、裏面側にループ5bが形成されている。更に、縫い始めの領域では2針目Aに2回針を通すことで糸を絡ませて結び目11を形成し、縫い終わりの領域では最終目Bに2回針を通すことで糸を絡ませて結び目12を形成している。また、縫い始めにあった余分な糸はカレンダーの表面近傍で切断して除去しており、このため、糸の端部5cはカレンダーの表面側にわずかに覗いているが、カレンダーの表面を見た時に気づくことがほとんどなく、従って見栄えを悪くすることがない。一方、縫い終わりの糸5dは、カレンダーの裏面側に引き抜かれ且つ適当な長さに切断されており、カレンダーの表面側からは見えない。かくして、図1に示すカレンダー1は、糸綴じ部6の両端にそれぞれ結び目11、12を形成したことで糸のほつれが生じることがなく、見栄えが悪くなるとか、カレンダー紙葉2がばらけると言ったことがない。更に、カレンダー1の表面側は、単に一本の糸5aが直線状に並んだ状態に見えるのみで、極めて見栄えがよい。なお、糸綴じ部6に使用する糸5の色は任意に選定可能であり、例えば、厚紙4に印刷している色と同系統の色として目立たなくしてもよいし、逆に、金色、赤色等の目立つ色としてデザインの一部として使用し、デザイン上の効果を発揮させてもよい。
【0015】
次に、糸綴じ部6の形成に単糸環縫いを用いたことによる利点を更に説明する。布の縫い方としては、上記した単糸環縫いの他に、代表的なものとして、図2(a)に示す、上糸15と下糸16を用いた二重環縫い、図2(b)に示す、上糸17と下糸18を用いた本縫いが知られており、いずれもカレンダーの綴じ合わせに利用することが考えられる。しかしながら、二重環縫いでは、縫い始め及び縫い終わりのほつれ防止処理ができないため、本発明のカレンダーに採用はできない。一方、本縫いでは、縫い始め及び縫い終わりの両方とも3針返し縫いを行うことでほつれ防止処理は可能である。しかしながら、3針返し縫いを行った部分では、糸が二重になったり、縫い目が複数出来たりするため外観が悪くなる。しかも、返し縫いのため、ワーク(紙葉束3の上端縁に厚紙4を取り付けたもの)を逆方向に搬送する必要があり、著しく生産性を悪くする。しかも、下糸はボビンに巻いてミシンベット部に供給する必要があるため、15m〜40m毎に1回ボビンの交換が必要となり、この点からも生産性が低い。更に、本縫いを行うミシンではミシンベッド部の機構が、ボビンを組み込んだ回転釜で下糸を供給しながら、上糸をすくい取るため複雑となっており、このミシンでワークを縫い合わせるためにワークの搬送系を組み込む場合に、その組み込みが困難となり、また搬送系自体も返し縫いのための逆進の機構が必要で複雑となる。これに対し、本発明では単糸環縫いを採用したことにより、縫い始めは2針目で2回針を通すことで、また、縫い終わりは最終目に2回針を通すことで結び目を作ってほぐれ止めを図ることができ、本縫いに比べて生産性が良い。しかも、単糸環縫いでは1本の糸を供給するのみでよく、その糸は数千m巻いた糸を繰り出してミシン外部から供給できるため、交換の頻度はきわめて少なく、この点からも本縫いに比べて生産性が良い。更に、ミシンベッド部の機構は、ルーパが上から来た糸を引っかけるために定位置で回転しているだけなので、シンプルであり、ワークの搬送系を容易に組み込むことができ、且つ搬送系自体も逆進の必要がないのでシンプルである。
【0016】
次に、紙葉束3の上端縁に沿って厚紙4をセットしてなるワークを単糸環縫いにより綴じ合わせ、上記構成のカレンダー1を製造する方法を説明する。この単糸環縫いには、図3に示すように、針21、ルーパ22等を備えた通常の単糸環縫い用ミシンに、糸固定装置24、固定メス25、糸屑吸引ホース26、自動糸切り装置27、ワーク搬送装置等を備えたものを用いる。ここで、糸固定装置24は、糸5を固定保持するためのクランプ爪24a及び固定爪24bと、そのクランプ爪24aを往復動させる駆動装置24cと、クランプ爪24aが糸5を引き込んでクランプした時〔図6(f)参照〕、その糸5をワーク側で切断するカッタ24dを備えたものである。固定メス25は、ワーク30の縫いおわった部分が走行する位置で且つワーク表面近傍の定位置に配置されており、ワーク30が送られてきた時に糸固定装置24とワーク30との間につながっている糸がその固定メス25に自動的に引っ掛かって切断されるように設けられている。糸屑吸引ホース26は、固定メス25で切り離した糸を吸引しうる位置に配置されている。自動糸切り装置27は、ワーク30の下面側に延びている余分な糸を吸引し且つ適当な長さ位置で切断するものであり、後述するようにワークの縫い終わり位置に結び目を作る位置よりも下流に配置されている。ワーク搬送装置は、図1に示す紙葉束3の上端を厚紙4で挟み付けた構成のワーク30を、針21の上下動に連動させて縫い目の1ピッチ分ずつ間欠的に搬送するものであるが、後述するように、少なくとも縫い始めの2針目及び最終目では同じ位置に2回針を通すことができるよう、ワーク30の搬送を行わないように制御される構成となっている。
【0017】
カレンダーを製造するための単糸環縫い動作を説明する前に、針21とルーパ22による通常の単糸環縫いの動作を図4により説明する。図4(a)に示すように、ワーク30の下面に形成されているループ5bに通された糸5eがルーパ22にループ状に掛けられている状態で且つワーク30が停止している状態で、針21が下降してワーク30を突き刺す。次いで、図4(b)に示すように、針21が最下点よりわずかに上がったところで針21に保持されていた糸5fがゆるみ、ループ状になった時、その糸5fを回転中のルーパ22の先端22aが引っかけ、その糸5fをルーパ22で広げられている糸5eの中に通してゆく。そして図4(c)に示すように、針21がワーク30の上方に抜け、ワーク30が送られる。ルーパ22は回転を続け、糸5fを引き込みながら先に掛けていた糸5eを外してゆく。針21は上昇を続け、天秤(図示せず)が針21に通している糸5を引き上げてゆく。そして図4(d)において、ルーパ22は回転を続け、糸5fを中心部まで引込み、先に外した糸5eを天秤が締めてゆき、ワークの送りが終了した時点でその糸5eが十分に締められ、図4(a)に示すループ5bとなる。以下同様の動作を繰り返すことで単糸環縫いが行われる。
【0018】
次に、この単糸環縫いを利用したカレンダーの製造方法を説明する。図5(a)に示すように、針21に通した糸5の先端を糸固定装置24で保持した状態で、ワーク30(図1に示す紙葉束3の上端を厚紙4で挟み付け、綴じ合わせるべき状態にセットしたもの)が搬送されてきて所定位置で停止する。次に、図5(b)に示すように針21が下降してワーク30を突き刺し(1針目)、ルーパ22が糸5を引っかけた後、元の位置に上昇し、図5(c)に示すように、ワーク30が縫い目の1ピッチ分だけ移動する。この時の糸5の状態が図7(a)に示す状態であり、ルーパ22によりループ5eが形成されている。次いで、図5(d)に示すように、針21が下降してワーク30を突き刺し(2針目)、図7(b)に示すように糸5fを先に形成していたループ5e内に通し、それをルーパ22が引っかけた後、針21は元の位置に上昇する。これにより、図5(e)及び図7(c)に示すように、先に形成したループ5e内に、ルーパ22に掛けられた第二のループ5fが形成される。また、針21に通している糸5を天秤(図示せず)が引き上げてゆくことで、先に形成したループ5eが締められる。
【0019】
次に、図5(f)に示すように、ワーク30を移動させないで、針21が再びワーク30の同じ位置(2針目)を突き刺し、図7(d)に示すように、糸5gを先に形成したループ5f内に通し、それをルーパ22が引っかけた後、元の位置に上昇する。これにより、図5(g)、図7(e)に示すように、先にルーパ22に引っかけられていたループ5fがルーパ22から外れて、ルーパ22に引っかけられた新たなループ5gを取り囲むように絡みつく。その後、ワーク30が縫い目の1ピッチ分だけ移動し、この間に、針21に通している糸5を天秤(図示せず)が引き上げてゆくことで、ループ5fが締め付けられ、結び目11が形成される〔図7(f)参照〕。これらの動作の間、糸5の先端は糸固定装置24で固定されているため、糸5の張力がゆるむことはなく、ほつれないように強く締め付けた結び目11が形成される。
【0020】
その後は通常の単糸環縫いが行われる。そして、ワーク30が移動して図5(h)に示すように、糸固定装置24とワーク30との間に延びている糸5が固定メス25を通過する際に、糸5が固定メス25に自動的に引っ掛かり切断される。ここで、固定メス25をワーク30の表面近傍に位置させておくことにより、余分な糸をワーク30の表面近傍で切り離すことができ、図7(g)に示すようにワーク30を縫っている糸の先端5cをワーク30の表面側に位置する糸5aとほぼ同じ位置として、カレンダーの外観を損ねないようにすることができる。一方、切り離された側の糸5iは糸屑吸引ホース26に吸引される〔図6(a)参照〕。
【0021】
次に、ワーク30の単糸環縫いを継続してゆき、図6(b)に示す縫い終わりに達すると、図6(c)に示すように針21が下降してワーク30を突き刺し(最終目)、ルーパ22に引っかけていたループ5j内に針21を通し、その針21に通している糸5kをルーパ22が引っかけ、新たなループ5kを形成する〔図8(a)、(b)、(c)参照〕。次いで、図6(d)に示すように、針11が上方に戻った後、ワーク30を移動させないで針21が下降し、再度同じ位置(最終目)でワーク30を刺し通し、針21を先に形成したループ5k内に通し〔図8(c)、(d)参照〕、針21に通している糸5mをルーパ22が引っかけ、新たなループを形成する。その後、図6(e)に示すように、針21が上方に戻り、ルーパ22が先に形成していたループ5kを外し、新たなループ5mの周囲に絡ませる〔図8(e)参照〕。
【0022】
その後、図6(e)に示す様に、針21が上死点にきたところで、針21とルーパ22が停止し、ループ5mをルーパ22に掛けた状態で、ワーク30が送られる。この動作と並行して糸固定装置24のクランプ爪24aが前進し、先に掴んでいた糸5iを外し、次いで図6(f)に示すように、ワーク30と針21との間に延びている糸5を引っかけて後退し、その糸5を固定爪24bとで保持すると共にワーク30側の糸5nをカッタ24dにて切断する。その後もワーク30が移動を続け、図6(g)に示すように切り離された糸5nはルーパ22に引っ掛けられているのでワーク30の下側に抜ける。また、下側のループ5m〔図8(e)参照〕がルーパ22に引っかけられた状態であるので、ワークの移動によってループ5mはルーパ22やワークを通っている糸の摩擦抵抗によって引っ張られることとなり、ループ5kが強く締め付けられ、ほつれないように強く締め付けた結び目12が形成される。
【0023】
その後、図6(h)に示すように、ワーク30の移動によって下側に引き抜かれた余分な糸5nが自動糸切り装置27の位置に達すると、自動糸切り装置27がその糸を吸引しながら適当な長さに切断し、適当な長さの末端の糸5dとする〔図8(f)参照〕。以上によってワーク30の縫い合わせが終了し、図1に示す形態のカレンダー1が形成される。
【0024】
なお、以上に説明した実施形態では、最終目を縫い終わった後、糸5を糸固定装置24で掴み且つ切断した状態で、ワーク30を送り、ルーパ22等に対する糸の摩擦抵抗を利用してループ5mに張力を加え、結び目12を締め付ける構成としているが、この代わりに、糸5を切断する前にワーク30を搬送し、結び目12を十分締め付けた後、糸5を切断して下側に引き抜くようにしてもよく、またその際、ワーク30を搬送する際に、針21に通している糸5を適当な手段で固定することで糸の張力を高め、結び目の締め付けを確実とする等の変更を加えてもよい。なお、この場合にはワーク30の送り速度を通常の単糸環縫いの場合と同じとしてもよい。また、上記実施形態では、縫い始めの2針目と最終目に2回針を通して結び目を形成してほつれ止めを図っているが、必要に応じ2針目と最終目の間の適当な位置で2回針を通し、結び目を形成する等の変更を加えてもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明のカレンダーの製造方法は、複数枚のカレンダー紙葉からなる紙葉束を綴じ合わせるべき状態にセットしてなるワークを、カレンダーの表側が針側となるように且つ上端縁に沿って糸で綴じ合わせることができるように単糸環縫い用のミシンに通し、縫い始めの糸を糸固定装置で保持した状態で単糸環縫いを開始し、少なくとも2針目に2回針を通して糸を絡ませて結び目を作り、その後、単糸環縫いを行い、少なくとも最終目に再び2回針を通して糸を絡ませ且つ糸に張力を与えて強く締め付けた結び目を作り、単糸環縫い中、前記ワークの進行にともなって前記糸固定装置とワークとの間につながっている糸が前記固定メスを通過する際に該固定メスでその糸を切断し、糸固定装置側の切断された糸は前記糸屑吸引ホースで吸引させる構成としたものであるので、複数枚のカレンダー紙葉を糸で綴じ合わせ、その糸綴じ部を単糸環縫いで形成すると共に、少なくとも縫い始めの2針目と最終目に2回針を通して結び目を作った形態のカレンダーを生産性よく製造でき、製造されたカレンダーは、糸がほつれて見栄えを悪くするとか、カレンダー紙葉がばらばらになるということがなく、長期間の使用に耐えることができるという効果を有している。
【0026】
また、前記糸綴じ部を、カレンダーの表面側からミシンの針を通した単糸環縫いで形成し、且つ縫い始めの糸の末端はカレンダーの表面近傍で切断しているので、カレンダーの表面には縫い目に沿って1本の糸が存在するのみとなり、きわめて見栄えが良いという効果得られる。また、糸綴じ部に使用する糸をデザインの一部として使用することで、一層見栄えを良くすることもできる。
【0028】
ここで、縫い終わりにワークと針との間に延びている糸を、糸固定装置で保持すると共にワーク側の糸を切断し、ワーク裏面側の糸をルーパに引っかけた状態でワークを送ることで末端の糸をワークの裏面側に引き抜き、その後余分な糸を切断除去する構成とすると、切断されワークを引き抜かれる糸の摩擦抵抗によって糸に大きい張力を与え、結び目を強く締め付けることができ、簡単な操作で強く締め付けた結び目を形成でき、一層ほつれにくい糸綴じ部を備えたカレンダーを製造でき、また、末端の糸はワークの裏面側に引き抜かれているので、カレンダーの表面には縫い終わりの糸端が残っておらず、この点からもきわめて見栄えのよいカレンダーを製造できると言った効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で製造するカレンダーの1形態を示すもので、(a)は概略平面図、(b)は概略側面図、(c)は図1(a)のc部における縫い目の構造を示す概略斜視図、(d)は図1(a)のd部における縫い目の構造を示す概略斜視図
【図2】(a)、(b)は縫い目の構造を示す概略斜視図
【図3】本発明方法の1実施形態に用いるミシンの主要部を示す概略側面図
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)は単糸環縫い動作を説明する概略側面図
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)は本発明方法の1実施形態の動作を説明する概略側面図
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)は本発明方法の1実施形態の動作を説明する概略側面図
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)は本発明方法の1実施形態において縫い始めにおける縫い目の形成過程を説明する概略斜視図
【図8】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は本発明方法の1実施形態において縫い終わりにおける縫い目の形成過程を説明する概略斜視図
【符号の説明】
1 カレンダー
2 カレンダー紙葉
3 紙葉束
4 厚紙
5 糸
5a 糸
5b ループ
5c 縫い始めの糸の端部
5d 縫い終わりの糸
6 糸綴じ部
8 ミシン目
11、12 結び目
21 針
22 ルーパ
24 糸固定装置
25 固定メス
26 糸屑吸引ホース
27 自動糸切り装置

Claims (2)

  1. 上下動する針(21)と
    縫製されるべきワークの下方で回転し、前記針と協働して縫い目を形成するルーパ(22)と
    前記針の近傍の所定位置に配置され、往復動して前記針とワークの間に延びている糸を引き込み可能なクランプ爪(24a)と、前記クランプ爪が引き込んだ糸を前記クランプ爪と協働して固定保持する固定爪(24b)と、前記クランプ爪が糸を引き込んでクランプした時、その糸をワーク側で切断するカッタ(24d)を備えた糸固定装置(24)と、
    ワークの縫い終わった部分が走行する位置で且つワーク表面近傍の所定位置に配置され、ワークが送られてきた時に前記糸固定装置とワークとの間につながっている糸を切断する固定メス(25)と、
    前記固定メス近傍に配置され、前記固定メスで切断され、前記糸固定装置に保持された糸の一端側を吸引する糸屑吸引ホース(26)を備えた単糸環縫い用ミシンを用い、
    複数枚のカレンダー紙葉からなる紙葉束を綴じ合わせるべき状態にセットしてなるワークを、カレンダーの表側が針側となるように且つ上端縁に沿って糸で綴じ合わせることができるように前記単糸環縫い用のミシンに通し、糸の先端を前記糸固定装置で保持した状態で単糸環縫いを開始し、少なくとも2針目に2回針を通して糸を絡ませて結び目を作り、その後、単糸環縫いを行い、少なくとも最終目に再び2回針を通して糸を絡ませ且つ糸に張力を与えて強く締め付けた結び目を作り、
    単糸環縫い中、前記ワークの進行にともなって前記糸固定装置とワークとの間につながっている糸が前記固定メスを通過する際に該固定メスでその糸を切断し、糸固定装置側の切断された糸を前記糸屑吸引ホースで吸引することを特徴とするカレンダーの製造方法
  2. 請求項1に記載のカレンダーの製造方法において
    縫い終わりに前記ワークと針との間に延びている糸を、前記糸固定装置で保持すると共にワーク側の糸を切断し、ワーク裏面側の糸を前記ルーパに引っかけた状態でワークを送ることで末端の糸をワークの裏面側に引き抜き、その後余分な糸を切断除去することを特徴とするカレンダーの製造方法。
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