JP4142429B2 - 電流検出回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は過電流保護回路に関し、特に負荷を直接駆動するトランジスタの電流状態を検出する回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタの出力を直接モータ等の負荷を駆動するために利用することが行われている。ここで、負荷が故障して大電流が流れたりすると、これと直列に接続している出力トランジスタにも大電流が流れ、これが破壊される場合がある。そのため、出力トランジスタに一定以上の電流が流れた場合に出力を遮断するための過電流保護回路が必要となる。
【0003】
ここで、従来の過電流保護回路が特開平2000−299631号公報に開示されている。簡単のためこの回路を簡略化したものについて説明する。図3のように、電源VBBの電流により負荷RLを駆動するために電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン部と負荷RLが電源VBBに対して直列に接続される。
【0004】
なお、負荷RLを通常のオン、オフ制御もさせるため、制御回路4の制御信号が、論理回路2、駆動部3を通して電界効果トランジスタ1のゲートに接続される。たとえば、制御回路4がハイレベルの信号を出したときは、この信号を駆動部3が受け、電界効果トランジスタ1を駆動するために必要なゲート電圧を発生させる。このゲート電圧が電界効果トランジスタ1に加わると電界効果トランジスタ1が導通状態となり、負荷RLに電流が流れ、オンになる。また、制御回路4がローレベルの出力を出したときは、ゲート電圧がゼロとなり、電界効果トランジスタ1が非導通状態となり、負荷RLに流れる電流が遮断され、オフになる。
【0005】
ここで、負荷RLに流れる電流を検出するために、電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン間の電圧Vdsを常時測定する。RLに流れる電流をILと置くと、Vds=IL×Ron(Ronとは、電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン間に電流が流れているときの、ソース−ドレイン間の抵抗である)となる。
【0006】
ここで、電源電圧VBBのダイオードDと抵抗Rrとの分圧を反転増幅器7に通した基準電圧Vrと増幅器5を通った増幅電圧Vdsを比較器6で比較する。増幅電圧Vdsの方が基準電圧Vrよりも低い場合は、比較器6の出力がローレベルとなり、それ以上の場合はハイレベルとなる。これにより、出力トランジスタに一定以上の電流ILが流れた場合にこれを検出する電流検出回路が実現される。
【0007】
比較器6の出力は論理回路2に送られる。論理回路2内では制御回路4からの制御信号にかかわらず、比較器6からの信号がハイレベルの場合は、論理回路の出力がローレベルになるような演算が行われる。これにより、出力トランジスタに一定以上の電流ILが流れた場合にこの出力を遮断する電流保護回路が実現される。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−299631号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3のような電流検出回路は、以下のような問題があった。
図3のような電流検出回路に用いられる電界効果トランジスタ1のオン抵抗Ronは、温度上昇に伴い、増加する特性をもっている。そのため、同一のILにかかわらずVdsは動作環境温度の上昇と共に増加する。そのため、設定されたILの値を過電流状態とするためには、ダイオードDの温度特性により、Vdsの増加にあわせてVrも増加させ温度補償をしなければならない。さらに、VdsとVrの動作環境温度依存性を一致させるために、ダイオードDを何段か直列に接続させなければならない。
【0010】
したがって、従来の電流検出回路では、正確な所定のIL値でもって負荷RLを流れる電流を過電流であると判定するために、複数のダイオードD、そしてこれに直列接続する抵抗Rr、及び比較器6といった部品を用いて温度補償回路を設けなければならないため、回路構成が複雑になるという問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は請求項1に記載のように、電界効果トランジスタのソースとドレイン間のオン抵抗による電圧降下の測定値より、前記電界効果トランジスタの電流状態を検出する電流検出回路であって、前記電流検出回路において電流状態を検出する手段は前記ソースと前記ドレイン間のオン抵抗による電圧降下の測定値をそのまま利用しており、かつ、前記電界効果トランジスタを構成する半導体材料はGaN系半導体からなることを特徴とする。
【0012】
ここで、電圧降下の測定値をそのまま利用するとは、測定した電界効果トランジスタのソース−ドレイン間の電圧の値を温度補償することなく、その電圧の高低のみにより、トランジスタに流れる電流が過電流状態か否かを判断するという意味である。
また、電界効果トランジスタのオン抵抗の値の変動は±10%以内であれば、その値がほぼ一定であるとみなしている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係る電流検出回路の実施形態の図である。
電源VBBの電流により負荷RLを駆動するために電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン部と負荷RLが電源VBBに対して直列に接続される。そして、負荷RLに流れる電流ILを検出するために、電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン間の電圧Vdsを取り出し、増幅器5に接続する。増幅器5の出力電圧をVbとし、これが、所定の値以下であればローレベル出力とし、所定の値以上であればハイレベル出力とする。これにより、ハイレベル出力の状態を過電流状態と判定することができる。なお、増幅器5の増幅率を変化させることで、任意のILの値を過電流状態であると判定させることができる。
【0017】
ここで、本発明の実施の形態で用いられる電界効果トランジスタ1のオン抵抗は動作環境温度によらずほぼ一定のものを用いる。そのため、測定するVdsの値を温度補償することなく、その高低のみにより過電流状態であるか否かの判定ができる。なお、オン抵抗の変動は±10%以内程度であれば「ほぼ一定」の要件を満たすので本発明の実施ができる。また、電界効果トランジスタ1は、ゲートに加わる電圧がゼロのときにオフになるノーマリオフ型のものだけでなく、ゲートに電圧を加えないとオフにならないノーマリーオン型のものでもよい。ノーマリーオフ型の電界効果トランジスタを用いる場合は以下に説明する論理回路2の出力の論理を逆にすればよい。
【0018】
ここで、増幅器5の出力と制御回路4からの負荷RLを駆動させるための信号を共に論理回路2に入力することで、制御回路4からの制御信号にかかわらず、増幅器5からの信号がハイレベルの場合は、論理回路の出力がローレベルになるような演算が行われるようにする。そのため、駆動中に過電流状態が発生した場合は、電界効果トランジスタ1のゲートにオフの信号を送ることもでき、負荷をRL駆動中に電界効果トランジスタ1を流れる電流を遮断することが可能となる。
【0019】
ここで、電界効果トランジスタ1は、SiやGaAsといったバンドギャップエネルギーの大きさが1.0〜1.5eV程度のナローバンドギャップの半導体からなる電界効果トランジスタではなく、ワイドバンドギャップの半導体からなる電界効果トランジスタを使用する。一般に動作中の電界効果トランジスタは、ゲート下のチャネル層に存在するキャリアがドリフトすることによりソース−ドレイン間の電流が流れる。ナローバンドギャップの半導体からなる電界効果トランジスタでは、動作時に温度が上昇してフェルミレベルがわずかに変化しただけでチャネル層中のキャリアの数が変動してしまう。そのため、温度上昇とともにソース−ドレイン間の電流が流れにくくなり、オン抵抗が上昇する。
【0020】
一方、ワイドギャップの半導体からなる電界効果トランジスタでは、バンドギャップエネルギーの大きさが、温度変化に伴うフェルミレベルの変化の割合と比較して小さいので、チャネル層中のキャリアの数は温度にほとんど依存しない。そのため、温度が変化してもソース−ドレイン間を流れる電流がほとんど変化しないため、オン抵抗の値はほぼ一定である。
【0021】
温度によらずオン抵抗がほぼ一定になるような電界効果トランジスタを作製するために必要な半導体バンドギャップエネルギーの大きさは、3.0eV以上のワイドギャップ半導体である。これらの元素を含む結晶は一般に格子定数が小さく、バンドギャップエネルギーが大きくなる。ワイドギャップ半導体として例えば、GaN系半導体、AlN半導体、SiC半導体、ダイヤモンド半導体などが現在のところ挙げられる。
【0022】
本発明に係る電流検出回路では、これに用いる電界効果トランジスタ1としてオン抵抗が動作環境温度によらずほぼ一定の値を示すものを用いている。そのため、所定のIL値を過電流状態としたときのVdsの値は動作環境温度によらずほぼ一定である。そのため、ILの値を測定する際にはVdsの値を温度補償する必要が無く、この値が高い状態を単純に過電流状態と判定させることが可能である。
【0023】
以上のように、本発明に係る電流検出回路では、従来の電流検出回路では動作環境温度により変化するオン抵抗の値を較正するために必要であった、ダイオードD、そしてこれに直列接続する抵抗Rr、及び比較器6といった部品からなる温度補償回路が不要となる。そのため、回路構成が簡略化されコストを下げることが可能である。
【0024】
(実施例)
本実施例の電流検出回路では、図1のような回路構成をなしている。
電源VBBの電流により負荷RLを駆動するために電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン部と負荷RLが電源VBBに対して直列に接続される。そして、負荷RLに流れる電流ILを検出するために、電界効果トランジスタ1のソース−ドレイン間の電圧Vdsを取り出し、増幅器5に接続する。
【0025】
ここで、負荷RLとして、拘束電流30Aの直流モータを用いた。また、VBBの電圧は12Vである。なお、負荷RLについては、40A以上の電流ILが流れたときを過電流状態と設定した。
【0026】
使用した電界効果トランジスタ1は、図2に示したようなGaN系半導体からなる電界効果トランジスタである。この電界効果トランジスタ1は特開2002−184972に動作原理が開示されているように、ゲート電極に電圧が加わっていない状態ではソース−ドレイン間に電流が流れない、いわゆるノーマリーオフの電界効果トランジスタである。この電界効果トランジスタ1の動作時のオン抵抗Ronの値は動作環境温度−40℃〜600℃の範囲において1mΩとほぼ一定の値を示した。
【0027】
制御回路4からのオン・オフ信号により負荷RLの動作を制御するため、制御回路4の信号がハイレベルのときに電界効果トランジスタ1がオンになり、ローレベルのときにオフになるように、信号の電圧を変換する必要がある。そのため、制御回路4の出力と、電界効果トランジスタ1のゲートの間に駆動部3を設け、信号電圧を電界効果トランジスタ1が駆動しうる電圧に昇圧している。
【0028】
ここで、ILの値が40Aのときが過電流状態であるため、過電流状態であると判断されるVdsの値はVds=IL×Ron=40mVである。また、増幅器5の出力を論理回路2に入力するためのデジタル信号を発生させるため、増幅器5の増幅率は20倍とした。増幅器5と制御回路4の出力は共に論理回路2に接続した。論理回路2はノット回路とアンド回路を組み合わせている。これにより、負荷RLを駆動している状態、すなわち制御回路4からの信号がハイレベルである状態で、過電流状態が発生する(増幅器5からの信号がハイレベルになる)と論理回路2の出力がローレベルとなり、電界効果トランジスタ1のゲートに加わる電圧が下がり、ILが遮断される。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、温度補償回路が不用であるため、負荷を直接駆動する出力トランジスタ1の過電流状態を検出する電流検出回路の素子の数を減らすことができ、回路を非常に簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る電流検出回路の回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電流検出回路に用いられる電界効果トランジスタ1の断面構造である。
【図3】従来技術に係る電流検出回路の回路図である。
【符号の説明】
1 電界効果トランジスタ
2 論理回路
3 駆動部
4 制御回路
5 増幅器
6 比較機
7 反転増幅器
8 半絶縁性基板
9 バッファ層
10 i型GaN層
11 n型GaN層
12 アンダーカット部
13 i型AlGaN層
Claims (1)
- 電界効果トランジスタのソースとドレイン間のオン抵抗による電圧降下の測定値より、前記電界効果トランジスタの電流状態を検出する電流検出回路であって、前記電流検出回路において電流状態を検出する手段は前記ソースと前記ドレイン間のオン抵抗による電圧降下の測定値をそのまま利用しており、かつ、前記電界効果トランジスタを構成する半導体材料はGaN系半導体からなることを特徴とする電流検出回路。
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