JP4139951B2 - 電力変換装置および電力変換方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータの可変速駆動や系統連系を行うインバータ等の電力変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流電動機であるモータを可変速駆動したりするために電力変換装置が用いられている。この電力変換装置の一般的な構成を図3に示す。
【0003】
この電力変換装置は、図3に示されるように、入力3相交流電源を整流して直流電圧に変換するためのコンバータ部10と、コンバータ部10により変換された直流電圧を平滑するための平滑コンデンサC1と、コンバータ部10により生成された直流電圧をPWM制御してモータ30に出力するインバータ部20とから構成されている。
【0004】
コンバータ部10は、6個の整流素子D1〜D6により構成される3相整流回路と、この整流素子D1〜D6と並列に接続された回生用スイッチ素子SW1〜SW6と、このスイッチ素子SW1〜SW6の逆電圧防止用整流素子D7〜D12とから構成されている。整流素子D1〜D6は、3相交流電源の各相電圧と正電圧母線および負電圧母線との間にそれぞれ設けられている。そして、コンバータ部10の出力である正電圧母線及び負電圧母線間には平滑用コンデンサC1が接続され、両直流電圧母線はインバータ部20に入力され、インバータ部20の出力にはモータ30が接続されている。
【0005】
また、コンバータ部10には、スイッチ素子SW1〜SW6のオン/オフを制御するためのスイッチ素子駆動信号が入力されている。
【0006】
図3には示されていないが、コンバータ部10に入力されるスイッチ素子駆動信号を生成するための回路およびインバータ部20内のスイッチ素子のオン/オフを制御するための信号を生成するための回路からなる制御部により、コンバータ部10、インバータ部20の動作は制御されている。
【0007】
このような電力変換装置では、モータ30の力行運転時には、入力3相交流電源は整流素子D1〜D6により整流されることにより直流電圧に変換され、平滑用コンデンサC1により平滑されて正電圧母線、負電圧母線を介してインバータ部20に供給される。インバータ部20では、この直流電圧をPWM制御してモータ30に出力する。
【0008】
モータ30の回生運転時には、モータ30において発生した回生電力はインバータ部20で直流電圧に変換されてコンバータ部10に印加される。そして、コンバータ部10の回生用スイッチ素子SW1〜SW6により交流電圧に変換され交流電源に帰還されるようになっている。
【0009】
ここで回生用スイッチ素子SW1〜SW6および整流素子D1〜D12には最大許容電流が存在し、この最大許容電流を越える電流が流れると素子が破壊されてしまう。そのため、このような電力変換装置では、過電流保護を設け素子の破壊が発生しないような構成とする必要がある。
【0010】
図3に示したような電力変換装置では、コンバータ部10の電流は、回生時は回生用スイッチ素子SW1〜SW6を流れ、力行時はスイッチ素子と並列に接続された整流素子D1〜D12を流れる。そのため、回生用スイッチ素子SW1〜SW6と整流素子D1〜D12の最大許容電流が異なる場合、力行時と回生時における素子が破壊に至る電流のレベルが異なることになる。
【0011】
一般的に整流素子D1〜D12の最大許容電流よりも回生用スイッチ素子SW1〜SW13の最大許容電流のほうが低いため、従来の電力変換装置では、低い方のレベル、つまり回生用スイッチ素子SW1〜SW6の通電能力を超えないようなレベルで過電流保護を行っていた。そのため、整流素子D1〜D12にしか電流が流れない力行時においても回生用スイッチ素子SW1〜SW6の通電能力に合わせた過電流保護を行うことになるため、整流素子D1〜D12にはまだまだ余裕がある場合でも電力変換装置の運転を停止することになり、素子の有効利用が図られていなかった。
【0012】
このような問題を解決するため、特公平6−81416号公報(特開平1−34132号公報)には、電流検出器によって検出されたコンバータ部10の入力電流が、コンバータ部10の回生用スイッチ素子SW1〜SW6の通電能力を超えた場合、回生用スイッチ素子SW1〜SW6へのベース電流を遮断し、整流素子D1〜の通電能力を超えた場合、モータ30を非常停止するようにした交流電動機駆動装置が開示されている。
【0013】
しかし、このような従来の電力変換装置では、モータ30が回生運転を行っているのか力行運転を行っているのかを判断していないため、コンバータ部10の入力電流がコンバータ部10の回生用スイッチ素子SW1〜SW6の通電能力を超えた場合、回生運転の最中であっても回生用スイッチ素子SW1〜SW6へのベース電流を遮断してしまうことになる。本来コンバータ部10が電源回生状態であるにもかかわらず、回生用スイッチ素子SW1〜SW6へのベース電流を遮断してしまうということは異常事態であるため、異常検出信号等により上位側装置へ異常の発生を知らせる必要がある。しかし、この従来の電力変換装置では、入力電流が一定値異常である場合には一律に回生用スイッチ素子SW1〜SW6へのベース電流を遮断するだけで異常状態であることを認識することができないため、異常の発生を上位装置等に通知することはできない。
【0014】
また、過電流状態が解消されればまた通常運転を再開して運転を継続してしまうため、異常状態が解消されないまま、このような状態を繰り返すこととなり、回生用スイッチ素子SW1〜SW6を破壊してしまうことになり確実な保護を行うことはできない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の電力変換装置では、入力電流が回生用スイッチ素子の通電能力を超えると一律に回生用スイッチ素子のベース電流を遮断してしまうため、異常状態を確実に検出することができず回生用スイッチの確実な保護を行うことができないという問題点があった。
【0016】
本発明の目的は、コンバータ部の整流素子の通電能力と回生用スイッチ素子の通電能力とに差がある場合、力行時と回生時にそれぞれ異なった過電流レベルを設けることにより回生用スイッチ素子と整流素子の有効利用を図るとともに、回生用スイッチ素子と整流素子の確実な保護動作を行うことができる電力変換装置および方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の電力変換装置は、6個の整流素子が3相交流電源の各相電圧と正電圧母線および負電圧母線との間にそれぞれ設けられた3相整流回路と、前記6つの整流素子にそれぞれ並列に接続された6個のスイッチ素子とを有するコンバータ部を備えたる電力変換装置であって、前記3相交流電源の各相の電流値を検出する電流検出器と、前記電流検出器により検出された電流値から入力相電流を検出する入力相電流検出部と、正電圧母線と負電圧母線間の電圧である母線電圧の増減を検出する母線電圧検出部と、前記母線電圧検出部からの母線電圧の増減結果に基づいて回生状態であるか力行状態であるかの判別を行なう運転状態判別部と、を備えた電力変換装置において、
前記入力相電流と予め設定された前記スイッチ素子の最大許容電流を超えない電流レベルとを比較し、前記入力相電流が前記電流レベルを超えた場合、前記スイッチ素子の駆動を一定期間だけ強制停止させる過電流保護制御部を備え、
前記運転状態判別部が、前記スイッチ素子の強制停止中、運転状態を判別し、
前記過電流保護制御部が、前記運転状態判別部における運転状態の判別がカ行状態の場合、前記スイッチ素子の強制停止を解除して通常運転に復帰させ、
一方、前記運転状態判別部における運転状態の判別が回生状態の場合、前記コンバータ部の運転を非常停止させると共に、異常の発生を示す異常検出信号を出力することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、整流素子の停止期間中の母線電圧の増減により回生状態か力行状態の判定を行っているため、力行時と回生時にそれぞれ異なった過電流レベルを設けることにより、スイッチ素子と整流素子の有効利用を図ることができコスト削減も図ることができる。また、現在の運転状態が回生状態であるのか力行状態であるのかを判別してから保護動作を行うことにより、異常状態であることを検出して保護動作を行うようにしているため、整流素子および回生用スイッチ素子の確実な保護を行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態の電力変換装置の構成を示すブロック図である。図1において、図3中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0021】
本実施形態の電力変換装置は、図1に示すように、主回路部と、この主回路部の制御を行う制御部とから構成されている。
【0022】
主回路部は、コンバータ部10、インバータ部20と、平滑用コンデンサC1とから構成され、モータ30の動作の制御を行っている。
【0023】
また、制御部は、回生指令生成部40と、スイッチ素子駆動信号生成部50と、入力相電流検出部60と、母線電圧検出部70と、過電流保護制御部80と、運転状態判別部90と、電流検出器CT1〜CT3とから構成されていて、コンバータ部10の制御を行っている。尚、通常はインバータ部20を制御するための回路構成も制御部内に設けられるが、本発明とは直接関係ないため以下の説明では省略する。
【0024】
回生指令生成部40は、回生指令を生成して出力している。スイッチ素子駆動信号生成部50は、回生指令生成部40により生成された回生指令を受け、コンバータ部10の回生用スイッチ素子SW1〜SW6を駆動するためのスイッチ素子駆動信号を生成して出力している。
【0025】
入力相電流検出部60は、電流検出器CT1〜CT3により検出された電流値から入力相電流を検出している。母線電圧検出部70は、正電圧母線と負電圧母線間の電圧である母線電圧の増減を検出している。
【0026】
過電流保護制御部80は、入力相電流検出部60により検出された入力相電流が過電流レベルに達した場合、一定期間だけ回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を強制的に停止させ、その停止期間中の運転状態判別部90からの判別結果に基づいて、コンバータ部10の運転を非常停止させるか、スイッチ素子SW1〜SW6の強制停止を解除して通常運転に復帰させるかの判定を行っている。ここで過電流レベルは、コンバータ部10の回生用スイッチ素子SW1〜SW6の最大許容電流を超えない電流レベルが設定される。
【0027】
運転状態判別部90は、過電流保護制御部80が過電流状態を検出してスイッチ素子駆動信号生成部50に対して回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を停止させる指示を行った場合、その停止期間中の母線電圧検出部70からの母線電圧の増減結果に基づいて、モータ30が回生状態であるか力行状態であるかの判別を行っている。
【0028】
回生運転中は、インバータ部20から電力が供給されてくるため、回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を停止すると母線電圧は上昇する。また、力行運転中は回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を停止しても母線電圧には影響がない。本実施形態の電力変換装置では、この特性を利用して入力相電流検出部60が入力相電流が過電流レベルに達したことを検出した場合、回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を一定期間停止して、その期間内における母線電圧の増減により回生運転/力行運転の判定を行い、回生運転中の場合のみ過電流保護を有効にするようにしたものである。
【0029】
次に、本実施形態の電力変換装置の動作について図2のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0030】
先ず、電流検出器CT1〜CT3及び入力相電流検出部60により、コンバータ部10の入力相電流が検出される(ステップ101)。そして、この入力相電流と予めスイッチ素子SW1〜SW6の通電能力に合わせて設定された過電流レベルとの比較が行われる(ステップ102)。
【0031】
ステップ102において入力相電流が過電流レベル以上となると、任意の期間スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を強制的に停止させる(ステップ103)。そして、スイッチ素子SW1〜SW6が強制的に停止されている間の母線電圧の増減が、母線電圧検出部70により検出される(ステップ104)。
【0032】
そして、運転状態判別部90は、母線電圧検出部70により母線電圧が増加していることが検出された場合、モータ30は回生運転中であると判定し、母線電圧が減少していることが検出された場合、モータ30は力行運転中であると判定する(ステップ105)。
【0033】
過電流保護制御部80は、ステップ105において運転状態判別部90により回生運転中であると判定された場合、コンバータ部10の運転を非常停止させ(ステップ106)、力行運転中であると判定された場合、スイッチ素子SW1〜SW6の強制停止を解除して通常運転に復帰させる(ステップ107)。
【0034】
力行運転中であれば、回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を停止してもコンバータ部10の運転には全く支障は無い。本実施形態の電力変換装置によれば、回生運転中であっても、過電流保護制御部80が過電流を検出した場合、回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を停止させるので、力行/回生の判定を行う一定期間に電流が流れることはなく、過電流レベルを超える電流が回生用スイッチ素子SW1〜SW6に流れることを防ぐことができる。
【0035】
尚、力行運転中の過電流については、入力電流は整流素子D1〜D12を流れるため、回生用スイッチ素子SW1〜SW6の駆動を制御しても過電流を抑制することはできない。そのため、インバータ部20において別途過電流保護機能を設けることとする。
【0036】
本実施形態の電力変換装置によれば、上記のような構成とすることにより、力行運転中と回生運転中において、過電流保護のレベルを別個に設けることが可能となる。そのため、各素子の有効利用を図ることができリーズナブルなシステム設計が可能となり、コスト削減を図ることができる。
【0037】
さらに本実施形態の電力変換装置によれば、過電流保護制御部80は現在の運転状態が回生状態であるのか力行状態であるのかを判別してから保護動作を行っているため、図1には示されていない異常検出信号等を用いることにより上位装置等に異常の発生を通知することも可能である。そして、この通知を受けた上位装置側において適切な保護動作を行うことにより、回生用スイッチ素子SW1〜SW6と整流素子D1〜D12の確実な保護動作を行うことが可能となる。
【0038】
尚、図3に示したコンバータ部10には、整流素子D1〜D6と、逆電圧防止用整流素子D7〜D12とが回路上同じ場所に設けられているが、回路的には同じ動作を行うものであり、入力3相交流電源を直流電圧に変換するための整流素子はいずれか一方あればよい。ただし、実使用上は、逆電圧防止用整流素子D7〜D12と整流素子D1〜D6はそれぞれ特性が異なるダイオードが使用される。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、下記のような効果を得ることができる。
(1)整流素子の停止期間中の母線電圧の増減により回生状態か力行状態の判定を行っているため、力行運転中と回生運転中の過電流保護のレベルをそれぞれ別個に設定することができ、スイッチ素子および整流素子の各素子の有効利用を図ることができる。
(2)現在の運転状態が回生状態であるのか力行状態であるのかを判別してから保護動作を行っているため、スイッチ素子および整流素子の確実な保護動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の電力変換装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 コンバータ部
20 インバータ部
30 モータ
40 回生指令生成部
50 スイッチ素子駆動信号生成部
60 入力相電流検出部
70 母線電圧検出部
80 過電流保護制御部
90 運転状態判別部
C1 平滑用コンデンサ
D1〜D6 整流素子
D7〜D12 逆電圧防止用整流素子
CT1〜CT3 電流検出器
SW1〜SW6 回生用スイッチ素子
Claims (1)
- 6個の整流素子が3相交流電源の各相電圧と正電圧母線および負電圧母線との間にそれぞれ設けられた3相整流回路と、前記6つの整流素子にそれぞれ並列に接続された6個のスイッチ素子とを有するコンバータ部を備えたる電力変換装置であって、前記3相交流電源の各相の電流値を検出する電流検出器と、前記電流検出器により検出された電流値から入力相電流を検出する入力相電流検出部と、正電圧母線と負電圧母線間の電圧である母線電圧の増減を検出する母線電圧検出部と、前記母線電圧検出部からの母線電圧の増減結果に基づいて回生状態であるか力行状態であるかの判別を行なう運転状態判別部と、を備えた電力変換装置において、
前記入力相電流と予め設定された前記スイッチ素子の最大許容電流を超えない電流レベルとを比較し、前記入力相電流が前記電流レベルを超えた場合、前記スイッチ素子の駆動を一定期間だけ強制停止させる過電流保護制御部を備え、
前記運転状態判別部が、前記スイッチ素子の強制停止中、運転状態を判別し、
前記過電流保護制御部が、前記運転状態判別部における運転状態の判別がカ行状態の場合、前記スイッチ素子の強制停止を解除して通常運転に復帰させ、
一方、前記運転状態判別部における運転状態の判別が回生状態の場合、前記コンバータ部の運転を非常停止させると共に、異常の発生を示す異常検出信号を出力することを特徴とする電力変換装置。
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