JP4139700B2 - 磁気ヘッドスライダ及び磁気ディスク装置 - Google Patents

磁気ヘッドスライダ及び磁気ディスク装置 Download PDF

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    • G11B5/60Fluid-dynamic spacing of heads from record-carriers
    • G11B5/6005Specially adapted for spacing from a rotating disc using a fluid cushion

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  • Adjustment Of The Magnetic Head Position Track Following On Tapes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気ヘッドスライダ及び磁気ディスク装置に係わり、特に高記録密度化、高信頼性化に優れた磁気ヘッドスライダ及び磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ヘッドを搭載し、空気軸受によって磁気ディスク上に浮上して、磁気ディスクの記録媒体に情報を記録又は再生するスライダとして、流入端側ステップ面(leading step surface)と、流出端側ステップ面(trailing step surface)と、流入端側で流入端側ステップ面に接続され、流出端側に延設された2つのサイドレールと、流入端側ステップ面及び流出端側ステップ面のそれぞれに形成したパッドとを有し、2つのサイドレールの間に負圧ポケットを形成するスライダが知られている。このスライダは、浮上量の高度依存性を低減することを目的の一つとして発明されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
尚、スライダの浮上量として、接触開始浮上量htoという用語が用いられる。磁気ディスク媒体面には微小うねりや面粗さがあり、磁気ディスク上に浮上しているスライダは浮上量を小さくしてゆくと、これらの微小突起先端と接触を開始する。このため、理想平面上からの微小突起先端の最大高さを接触開始浮上量htoとして、面粗さのない理想平面上からの浮上量と区別する場合がある。
【特許文献1】
米国特許第5,777,825号明細書(第2コラム)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記スライダは負圧ポケットに負圧力を発生させることにより、スライダ周辺の気圧変化に対する浮上量変動を小さくできる。しかし、負圧力を利用しないスライダに対して、流入端側の浮上量と流出端側の浮上量の差を小さくして、すなわちピッチ角度を小さくして浮上するため、接触開始浮上量すなわち微小突起先端の最大高さhtoを低くした平滑媒体面と接触した時は接触面積が大きくなり、接触振動が大きくなるという課題を有している。また媒体表面にランアウトのような長波長のうねりがある場合、スライダの浮上面と媒体表面のうねりとの間に圧力変動が発生し、浮上量が変動する。負圧力を利用するスライダでは、負圧力を利用しないスライダに対して、ピッチ角度を大きくできないために、圧力変動が発生する浮上面面積が大きくなり、ランアウトに対する浮上量変動が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、htoを下げた平滑媒体面とのスライダ接触振動低減化とランアウトのようなスライダ長に比べて十分大きい波長の媒体面うねりに対する浮上量変動の低減化とスライダ周辺の気圧変化に対する浮上量変動の低減化を同時に満足することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、磁気ヘッドスライダに、空気流の流入側に形成され、空気軸受面となる流入側パッドと、空気流の流出側に形成され、空気軸受面となる流出側パッドと、両側に沿って形成された一対のサイドレールと、流入側パッドと流出側パッドとの間にリセス面とを備え、前記流入側パッドの前記リセス面からの高さを前記流出側パッドの前記リセス面からの高さよりも高くした。
【0007】
このとき、流入側パッドに、リセス面から突出した第一の面と、第一の面の流入側に第一の面よりも低く形成した第二の面とを備え、流出側パッドに、リセス面から突出した第三の面と、第三の面の流入側に第三の面よりも低く形成した第四の面とを備え、流入側パッドの第二の面を流出側パッドの第三の面よりも高くするとよい。第二の面はサイドレールのレール面よりも高くするとよい。また第三の面はサイドレールのレール面よりも高くするとよい。また第二の面はサイドレールのレール面よりも高く形成し、第二の面をサイドレールのレール面よりも高く形成し、第四の面とサイドレールのレール面とを同じ高さにするとよい。またリセス面から流出側パッドの第三の面までの高さを4μm以内にするとよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例1を説明する。
【0009】
図1に磁気ヘッドスライダ及びその支持体の立体斜視図を示す。図2(a)(b)にそれぞれ、磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。スライダ1は、流入側に形成された2つ(一対)の空気軸受面になりうるパッド11(以後、流入パッドと記す)、流出側に形成された1つの空気軸受面になりうるパッド12(以後、流出パッドと記す)、両側に沿って形成された一対のサイドレール13、から構成する。さらに、流入パッド11を流出パッド12に比べて、スライダ厚さ方向に突出させている。この突出量をδとする。流出パッド12の流出端に再生用MRヘッドのMR素子の露出部と記録用電磁誘導型磁気ヘッドのギャップ部から構成する記録再生素子1bを、またスライダ1の側面に磁気ヘッド1c及び接続端子1dを設けている。
【0010】
さらに詳細には、スライダ1は流入パッド11と流出パッド12との間にリセス面116とを備えており(図3参照)、流入パッド11はリセス面116から突出した第一の面112と第一の面112の流入側に第一の面112よりも低く形成した第二の面114とを備えており(図3参照)、流出パッド12は、リセス面116から突出した第三の面112と、第三の面112の流入側に第三の面112よりも低く形成した第四の面114とを備えている(図4参照)。尚、流入パッド11はスライダ1の幅方向に2つ設けられている。またサイドレール13は、流入パッド11に対して流出端側に、スライダ1の幅方向の両端部に、スライダ1の長さ方向に沿うように、それぞれ1本ずつ設けられている。
【0011】
尚、スライダ1について、その長さ方向を流入端から流出端にあるいは流出端から流入端に至る方向として、幅方向を前述の長さ方向を横切る(直交する)方向として、厚さ方向又は高さ方向を前述の長さ方向及び幅方向を横切る(直交する)方向として説明する。
【0012】
スライダ1は、空気力学的に正圧力Q1が発生する2つの流入パッド11と一対のサイドレール13とによって囲まれた凹部(リセス面116が形成された部分)14に負圧力Q2が発生する負圧力利用型スライダである。負圧力Q2が発生するメカニズムは、ディスクが回転し、空気がスライダ/ディスク間に流れ込むと、凹部14で急激に体積が増えるためである。正圧力Q1は浮上量を増加させる方向に作用し、負圧力Q2は浮上量を低下させる方向に作用する。
【0013】
流入パッド11をスライダ1の厚さ方向に突出させる構造は、従来のリソグラフィ技術を適用して、図2(b)の斜線部に示すように、流入パッドに薄膜1e、例えばカーボンを成膜することによって製造できる。
【0014】
図3、図4に磁気ヘッドスライダの流入パッド11、サイドレール13及び流出パッド12を示す。これらは、ディスク停止時に媒体面と接触するパッド面112(以後、コンタクト面と記す)と空気流入方向に段差部113を介して設けた1段目の段差面114(ステップ面)、段差部115を介して設けた2段目の段差面116(リセス面)の2段ステップ面から構成する。δs1、δs3はそれぞれ、流入パッド11のパッド面112に対する段差面114、サイドレール13の深さ(ステップ深さ)を示す。δr1は流入パッド11のパッド面112に対するパッド面112に対する段差面116の深さ(リセス深さ)を示す。δs2は流出パッド12のパッド面112に対する段差面114の深さ(ステップ深さ)を示す。δr2は流出パッド11のパッド面112に対するパッド面112に対する段差面116の深さ(リセス深さ)を示す。
【0015】
流入パッド11の段差面(第二の面)114は流出パッド12のパッド面(第三の面)112よりも高い。流入パッド11の段差面(第二の面)114はサイドレール13のレール面よりも高い。流出パッド12のパッド面(第三の面)112はサイドレール13のレール面よりも高い。流出パッド12の段差面(第四の面)114とサイドレール13のレール面とは同じ高さである。すなわち、流入パッド11のパッド面(第一の面)112が一番高い。尚、高さはリセス面116を基準にして、各面のリセス面116からの突出高さで比較している。
【0016】
図5に実施例1の磁気ヘッドスライダの支持体の平面図を示す。支持体2は、荷重用ビ−ム部21、ジンバル部22、荷重用突起部(以後、ディンプルと記する)23から構成する。
【0017】
図6(a)(b)に実施例1の磁気ヘッドスライダの浮上走行時の側面図を示す。ディンプル23は、荷重用ビ−ム部21から押し付けられた荷重Fをスライダに作用させる荷重作用点として設けている。またそこを支点として、スライダを並進(上下)、ピッチ(前後)、ロ−ル(シ−ク)方向の3自由度の運動に対して復元力が作用するように設ける。荷重作用点であるディンプル23の位置(Xp,Yp)は、ピッチ方向に対してはXp=xp/L、ロ−ル方向に対してはYp=yp/wの無次元化した値として表わす。ただし、xpはスライダの流入端との距離、ypはスライダ側面の端との距離、Lはスライダの長手方向の長さ、wはスライダの短手方向の長さである。
【0018】
スライダ1は、ディンプル23の位置で押付荷重Fと空気力学的に発生する正圧力Q1と負圧力Q2(>0)とが、Q1=F+Q2の関係式で釣り合い、ピッチ方向、ロ−ル方向の浮上姿勢を表わすピッチ姿勢角度θp、ロ−ル姿勢角度θr、流出端浮上量h2、流入端浮上量h1、再生用MRヘッドのMR素子の露出部と記録用電磁誘導型磁気ヘッドのギャップ部から構成する記録再生素子1bにおけるギャップ浮上量hgap、ピッチ角度AG(=h2−h1)を一定に保ちながら動的に安定浮上している。
【0019】
図7に本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの浮上面形状(ABS1)を示す。大きさは、スライダ長Lが1.25mmのピコサイズである。押付荷重Fは、29.4mN、ディンプル位置xp/L、yp/Lは共に0.5である。
【0020】
図8(a)に、浮上面形状ABS1を用いて、突出量δが0nmの従来スライダ、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1、高度0m、3000mの場合について、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周、中周、外周条件におけるピッチ角度AGを計算した結果を示す。図より、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1のピッチ角度AGは、従来スライダの突出量δが0nmに比べて、約30nm大きくなっていることが分かった。さらに、実施例1のスライダ1の高度0mから高度3000mと変化したピッチ角度AGの変化量は、従来スライダのそれとほとんど同じであり、スライダ周辺の気圧低下によるピッチ角度AGの変化させることなく、ピッチ角度AGを大きくできることが分かった。
【0021】
図8(b)に、浮上面形状ABS1を用いて、突出量δが0nmの従来スライダ、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1、高度0m、3000mの場合について、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周、中周、外周条件におけるギャップ浮上量hgapを計算した結果を示す。図より、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1の浮上プロファイルのギャップ浮上量hgap差は1nm以内となっており、従来スライダの突出量δが0nmの場合と浮上プロファイルのギャップ浮上量hgap差とほとんど同じになっている。また、実施例1のスライダ1の高度0mから高度3000mと変化したギャップ浮上量hgapの変化量は、従来スライダのそれと同じ3nm以下となり、実施例1のスライダ1のスライダ周辺の気圧低下によるギャップ浮上量hgapの変化は従来スライダと同じであることが分かった。
【0022】
図9(a)に、浮上面形状ABS1を用いて、突出量δが0nmの従来スライダ、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1、高度0m、3000mの場合について、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周、中周、外周条件における負圧力Q2を計算した結果を示す。図より、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1の負圧力Q2は、従来スライダの突出量δが0nmの場合と同じ負圧力になっており、かつ実施例1のスライダ1の高度0mから高度3000mと変化した負圧力Q2の変化量は、従来スライダのそれと同じであった。押付荷重が同じ条件の場合、負圧力Q2が大きいスライダの方が負圧力Q2が小さいスライダに比べて、気圧低下による浮上量変化を抑えることができることが分かっているため、実施例1のスライダ1のスライダ周辺の気圧低下によるギャップ浮上量hgapの変化が従来スライダと同じである理由は、実施例1のスライダ1の負圧力Q2は、従来スライダのそれと同じになっているためであることが分かった。以下に、スライダ周辺の気圧低下による浮上量変化と負圧力との関係を説明する。
【0023】
浮上量を増加させる方向に作用する正圧力Q1は、ΔQ1だけ減少し、Q1p(=Q1-ΔQ1)となり、浮上量は低下する。浮上量を低下させる方向に作用する負圧力Q2の絶対値は、ΔQ2(>0)だけ減少し、Q2p(= Q2+ΔQ2)となり、浮上量は増加する。気圧が低下しても押付荷重Fは変化しないため、Q1-ΔQ1=F+Q2+ΔQ2、ΔQ1=ΔQ2(=ΔQ)となり、気圧低下による正圧力Q1の低下量ΔQ1と負圧力の絶対値の減少量ΔQ2は同じΔQになる。
【0024】
負圧力と正圧力との比をとると、Q2p/Q1p=Q2p/(F+Q2p)=1/((F/Q2p)+1)、Q2/Q1=1/((F/Q2)+1)、F→0の場合、Q2p/Q1p→1、Q2/Q1→1となる。つまり、押付荷重Fがほぼゼロのスライダの場合、気圧が低下すると、正圧力Q1の減少による浮上量低下と。負圧力Q2の絶対値の減少による浮上量の増加がほぼ一致し、気圧低下による浮上量変化を抑えることができる。あるいは、押付荷重が同じ条件の場合、負圧力Q2が大きいスライダの方が負圧力Q2が小さいスライダに比べて、気圧低下による浮上量変化を抑えることができる。
【0025】
図9(b)に、浮上面形状ABS1を用いて、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1、高度0mの場合について、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周条件における浮上量、浮上姿勢を固定した条件で、図2に示したリセス深さδr2に対する負圧力と正圧力との比Q2/Q1の絶対値を計算した結果を示す。図より、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1のQ2/Q1の絶対値はリセス深さδr2が4μmになると急激に大きくなり、δr2=1.2μmで最大となり、δr2<1.2μmで急激に減少する。実施例1のスライダ1の効果である気圧低下による浮上量変化を抑えるためには、Q2/Q1の絶対値を大きくする必要があるため、実施例1のスライダ1のリセス深さδr2は4μm以下に設定する。
【0026】
図10(a)(b)にそれぞれ、本発明の実施例2の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。スライダ1は、流入側に形成された2つの流入パッド11、流出側に形成された流出パッド12、両側に沿って形成された一対のサイドレール13、から構成する。さらに、流入パッド11の流入端から距離Lまでの領域を、流出パッド12に比べて、スライダ厚さ方向に突出量δだけ突出させている。δs4はそれぞれ、流入パッド11のパッド面112に対する段差面1141の深さ(ステップ深さ)を示す。流出パッド13の流出端に再生用MRヘッドのMR素子の露出部と記録用電磁誘導型磁気ヘッドのギャップ部から構成する記録再生素子1bが、スライダ1の側面に磁気ヘッド1c及び接続端子1dが設けている。
【0027】
流入パッドをスライダ厚さ方向に突出させる構造は、従来のリソグラフィ技術を適用して、図10(b)の斜線部に示すように、流入パッドに薄膜1e、例えばカーボンを成膜することによって製造できる。
【0028】
図11(a)に本発明の実施例2の磁気ヘッドスライダの浮上面形状(ABS2)を示す。大きさは、スライダ長Lが1.25mmのピコサイズである。押付荷重Fは、29.4mN、ディンプル位置xp/L、yp/Lは共に0.5である
図11(b)(c)に、浮上面形状ABS2を用いて、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周条件、突出の長さLが0.2mmを一定とした条件で、突出量δに対するギャップ浮上量hgap、ピッチ角度AG、負圧力Q2を計算した結果を示す。図より、突出量δが大きくなると、負圧力Q2の絶対値が大きくなるために、ギャップ浮上量hgapは小さくなり、ピッチ角度AGは大きくなる。したがって、ギャップ浮上量hgapを小さくして、ピッチ角度AGを大きくしたい場合は、突出量δを大きくすることが有効である。
【0029】
図12(a)(b)(c)に、浮上面形状ABS2を用いて、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周条件、突出量δが10nm、20nmを一定とした条件で、突出の長さLに対するギャップ浮上量hgap、ピッチ角度AG、負圧力Q2を計算した結果を示す。図より、突出の長さLが大きくなっても、負圧力Q2の絶対値の変化が小さいために、ギャップ浮上量hgapの変化も小さくなるが、ピッチ角度AGは大きくなる。したがって、ギャップ浮上量hgapを変化させずに、ピッチ角度AGを大きくしたい場合は、突出の長さLを大きくすることが有効である。
【0030】
図13に、浮上面形状ABS2を用いて、突出の長さLが0.2mm、突出量δが20nmを一定とし、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周条件における浮上量、浮上姿勢を固定とした条件で、図10に示したリセス深さδr2に対する負圧力と正圧力との比Q2/Q1の絶対値を計算した結果を示す。比較のために、図9(b)に示した、突出量δが20nmの実施例1のスライダ1のリセス深さδr2に対するQ2/Q1の絶対値を計算した結果も図示した。図より、突出の長さLが0.2mm、突出量δが20nmの実施例2のスライダ1のQ2/Q1の絶対値も実施例1のスライダ1のQ2/Q1の絶対値と同様に、リセス深さδr2が4μmになると急激に大きくなり、δr2=1.2μmで最大となり、δr2<1.2μmで急激に減少する。実施例2のスライダ1の効果である気圧低下による浮上量変化を抑えるためには、Q2/Q1の絶対値を大きくする必要があるため、実施例2のスライダ1のリセス深さδr2は4μm以下に設定する。
【0031】
図14に、浮上面形状ABS1を用いて、回転数、半径位置が2.5型装置の最内周条件、流出端浮上量h2が10.0nmを一定とした条件で、媒体面うねり上をスライダが走行した時のピッチ角度AGに対する流出端浮上量h2の変動量Δh2を計算した結果を示す。図より、全てのうねり周波数に対して、ピッチ角度AGが大きくなると流出端浮上量変動量Δh2が小さくなり、本発明のピッチ角度AGが大きいスライダは媒体面うねりに対する追従性が良好であることが分かった。
【0032】
図15(a)に本発明の実施例2の磁気ヘッドスライダの浮上面形状(ABS2)を用いて、回転数、半径位置が2.5型装置の中周条件での半径位置、ヨー角ゼロ度、突出の長さLが0.2mmを一定とした条件で、突出量δが20nm、40nmにおける実施例2のスライダ1の接触開始浮上量htoを実測した結果を示す。浮上量測定装置はケーエルエー・テンコール社製DFHT3を使用した。サスペンション固定治具に接触検知用のアコスティックエミッション(AE)センサを取り付け、回転数を下げてAE出力が出るまでスライダ流出端近傍の浮上量を測定し、この時の浮上量を接触開始浮上量htoとした。ガラスディスクは面粗さの違う3種類のDISK8、DISK6、DISK3を使用した。面粗さRaはそれぞれ、0.8nm、0.6nm、0.3nmである。図より、突出量δが20nm、40nmにおける実施例2のスライダ1の接触開始浮上量htoは、ガラスディスクの面粗さが平滑化になると小さくなることが分かった。この理由は、実施例2のスライダ1のピッチ角度AGが大きいために、スライダ長程度の波長の媒体面うねりに対して追従し易くなり、浮上量変動が小さくなったためである。
【0033】
図15(b)に本発明の実施例2の磁気ヘッドスライダの浮上面形状(ABS2)を用いて、回転数、半径位置が2.5型装置の中周条件での半径位置、ヨー角ゼロ度、突出の長さLが0.2mmを一定とした条件で、突出量δが20nm、40nmにおける実施例2のスライダ1のガラスディスクと接触した直後の流出端近傍の浮上量変動を実測した結果を示す。ガラスディスクはDISK8、DISK6を使用した。図より、実施例2のスライダ1がガラスディスクと接触した時の浮上量変動がほとんどないことが分かる。特に現行スライダが接触した場合、浮上量変動が大きくなるDISK6に対しても、実施例2のスライダ1の接触時の浮上量変動がほとんどないことが分かる。この理由は、実施例2のスライダ1のピッチ角度AGが大きいために、接触した時に接触面積が小さくなり、接触力が接触力が低減できたためである。
【0034】
図16(a)(b)を用いて、これまで示した本発明の実施例1、2の磁気ヘッドスライダの効果のメカニズムを説明する。流入パッドを流出パッドに比べて、スライダ厚さ方向に突出させる構成(a)により、負圧ポケットが大きくなり、図11、図12の計算結果から、負圧力は低下させずにピッチ角度AGを大きくできる。負圧力が同じであれば、気圧低下による浮上量変化は大きくならない。また、本発明のスライダ(a)のピッチ角度AGが従来のスライダ(b)に比べて大きいため、流出パッド流出端がディスクと接触した場合、本発明のスライダ(a)の方が接触面積が小さくなり、接触力が低減でき、接触によるスライダ振動を抑えることができる。
【0035】
図16(c)(d)を用いて、本発明の実施例1、2の磁気ヘッドスライダの別な効果のメカニズムを説明する。本発明のスライダ(a)は、流入パッドが突出した構造のため、流入パッドの流出端がディスクと接触した場合、空気流が浮上面に流入し、浮上力が確保されるために、正常な浮上量に回復し、瞬時に安定浮上する。従来のスライダ(b)は、流入パッドの流入端が接触するため、空気流が浮上面に流入しないため、浮上力が確保されず、前のめりなったまま流入端が媒体面と連続接触してしまう。
【0036】
図17(a)(b)にそれぞれ、本発明の実施例3の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。スライダ1は、本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの流入パッドのコンタクト面112に空気軸受面になりにくい微小な突起を設けている。この高さをδtとする。
【0037】
流入パッドをスライダ厚さ方向に突出させる構造は、従来のリソグラフィ技術を適用して、図17(b)の斜線部に示すように、流入パッドに薄膜1e、例えばカーボンを成膜することによって製造できる。
【0038】
図18を用いて、本発明の実施例3の磁気ヘッドスライダの効果のメカニズムを説明する。本発明のスライダ1の流入パッドの流入端がディスクと接触した場合、微小突起と接触するため、接触面積が小さくなり接触によるスライダ振動を抑えることができる。
【0039】
図19(a)(b)にそれぞれ、本発明の実施例4の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。スライダ1は、本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの一対の連結部である流入パッド11の1段目の段差面114とサイドレール13の面を2段目の段差面116と同じ面にする。この構成により、負圧ポケットがなくなり、負圧力が小さくなる。負圧力が小さくなると、接触時の接触力は小さくなり、接触によるスライダ振動を抑えることができる。
【0040】
流入パッドをスライダ厚さ方向に突出させる構造は、従来のリソグラフィ技術を適用して、図19(b)の斜線部に示すように、流入パッドに薄膜1e、例えばカーボンを成膜することによって製造できる。
【0041】
図20に本発明より成る磁気ディスク装置の実施例を示す。前記磁気ディスク装置は、磁気記録媒体3とこれを回転させる駆動部21、本発明の実施例の磁気ヘッドスライダ1及びその支持体2、位置決めする支持ア−ム22とこれの駆動部23、スライダ1に搭載された磁気ヘッドの記録再生信号を処理する回路24から構成されている。図に、記録媒体である磁気ディスク面3に浮上した状態でスライダ1が走行及びシ−クしている状態の平面図(a)及び側面図(b)を示す。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、流入側パッドのリセス面からの高さを流出側パッドのリセス面からの高さよりも高くしたことにより、空気流の流入側に形成され、空気軸受面となる流入側パッドと、空気流の流出側に形成され、空気軸受面となる流出側パッドと、両側に沿って形成された一対のサイドレールと、流入側パッドと流出側パッドとの間にリセス面とを備えた磁気ヘッドスライダにおいて、htoを下げた平滑媒体面とのスライダ接触振動低減化とランアウトのようなスライダ長に比べて十分大きい波長の媒体面うねりに対する浮上量変動の低減化とスライダ周辺の気圧変化に対する浮上量変動の低減化を同時に満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダ及びその支持体の立体斜視図である。
【図2】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの立体斜視図である。
【図3】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの流入パッド及びサイドレールの立体斜視図である。
【図4】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの流出パッドの立体斜視図である。
【図5】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの支持体の平面図である。
【図6】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの浮上走行時の側面図である。
【図7】 本発明の実施例1の磁気ヘッドスライダの浮上面形状ABS1を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態1の磁気ヘッドスライダの気圧依存性、最内周、中周、外周条件におけるピッチ角度、ギャップ浮上量を計算した結果を示すグラフである。
【図9】 本発明の実施の形態1の磁気ヘッドスライダの気圧依存性、最内周、中周、外周条件における負圧力を計算した結果とリセス深さに対する負圧力と正圧力との比の絶対値を計算した結果を示すグラフである。
【図10】 本発明の実施例2の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。
【図11】 本発明の実施の形態2の磁気ヘッドスライダの浮上面形状ABS2を示し、かつ突出量に対するギャップ浮上量、ピッチ角度、負圧力を計算した結果を示すグラフである。
【図12】 本発明の実施の形態2の磁気ヘッドスライダの突出の長さに対するギャップ浮上量、ピッチ角度、負圧力を計算した結果を示すグラフである。
【図13】 本発明の実施の形態1、2の磁気ヘッドスライダのリセス深さに対する負圧力と正圧力との比の絶対値を計算した結果を示すグラフである。
【図14】 本発明の実施の形態1の磁気ヘッドスライダの媒体面うねり上をスライダが走行した時のピッチ角度AGに対する流出端浮上量の変動量を計算した結果を示すグラフである。
【図15】 本発明の実施の形態2の磁気ヘッドスライダの接触開始浮上量、接触直後の流出端近傍の浮上量変動を実測した結果を示すグラフ、表である。
【図16】 本発明の実施の形態1、2の磁気ヘッドスライダの効果を説明する図である。
【図17】 本発明の実施の形態3の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。
【図18】 本発明の実施の形態3の磁気ヘッドスライダの効果を説明する図である。
【図19】 本発明の実施の形態4の磁気ヘッドスライダの立体斜視図、側面図を示す。
【図20】 本発明より成る磁気ディスク装置の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1…磁気ヘッドスライダ、11…流入パッド、12…流出パッド、13…サイドレール、14…負圧ポケット、112、121、122…ディスク停止時に媒体面と接触するパッド面、113、115…段差部、114、1141…段差部113を介しての段差面、116…段差部115を介しての段差面、S…流出パッド12のコンタクト面112の面積、1b…磁気ヘッドのギャップ部とMR素子の露出部、1c…磁気ヘッド、1d…接続端子、1e…薄膜、δs1…流入パッドステップ深さ、δs2…流出パッドステップ深さ、δs3…サイドレールステップ深さ、δs4…段差部1141のステップ深さ、δr1…流入パッドのパッド面112に対する段差面115の深さ、δr2…流出パッドのパッド面112に対する段差面115の深さ、L…突出の長さ、δ…突出量、1121…微小突起面、δt…微小突起高さ、2…支持体、21…荷重用ビ−ム部、22…ジンバル部、23…ディンプル、荷重用突起部、(xp,yp)…ディンプル位置、荷重用突起部の位置、L…スライダ1の長手方向長さ、 w…スライダ1の短手方向長さ、F…押付荷重、Q…浮上力、Q2…負圧力、θp…ピッチ角度、θr…ロール角度、h1…流入端浮上量、h2…流出端浮上量、hgap…ギャップ浮上量、3…磁気記録媒体、21…磁気記録媒体3を回転させる駆動部、22…支持ア−ム、23…支持ア−ムの駆動部、24…記録再生信号処理回路。

Claims (8)

  1. 空気流の流入側に形成され、空気軸受面となる流入側パッドと、空気流の流出側に形成され、空気軸受面となる流出側パッドと、両側に沿って形成された一対のサイドレールと、前記流入側パッドと前記流出側パッドとの間にリセス面とを備えた磁気ヘッドスライダにおいて、
    前記流入側パッドは、前記リセス面から突出した第一の面と、この第一の面の流入側に形成されたこの第一の面よりも前記リセス面からの高さが低い第二の面とを備え、前記第一の面の前記リセス面からの高さを前記流出側パッドの前記リセスからの高さよりも高く、前記第二の面の前記リセス面からの高さを前記サイドレールのレール面の前記リセス面からの高さよりも高くした磁気ヘッドスライダ。
  2. 前記流出側パッドの前記リセス面からの高さを前記サイドレールのレール面の前記リセス面からの高さよりも高くした請求項1に記載の磁気ヘッドスライダ。
  3. 前記流出側パッドは、前記リセス面から突出した第三の面と、この第三の面よりも流入側に形成されたこの第三の面よりも前記リセス面からの高さが低い第四の面とを備え、この第四の面の前記リセス面からの高さと前記サイドレールのレール面の前記リセス面からの高さとを同じにした請求項2記載の磁気ヘッドスライダ。
  4. 前記リセス面から前記流出側パッドの前記第三の面までの高さを4μm以内にした請求項3に記載の磁気ヘッドスライダ。
  5. 空気流の流入側に形成され、空気軸受面となる流入側パッドと、空気流の流出側に形成され、空気軸受面となる流出側パッドと、両側に沿って形成された一対のサイドレールと、前記流入側パッドと前記流出側パッドとの間にリセス面とを備えた磁気ヘッドスライダにおいて、
    前記流入側パッドは、前記リセス面から突出した第一の面と、この第一の面の流入側に形成されたこの第一の面よりも前記リセス面からの高さが低い第二の面とを備え、前記流出側パッドは、前記リセス面から突出した第三の面と、この第三の面の流入側に形成されたこの第三の面よりも前記リセス面からの高さが低い第四の面とを備え、前記流入側パッドの前記第二の面の前記リセス面からの高さを、前記流出側パッドの前記第三の面の前記リセス面からの高さよりも高くした磁気ヘッドスライダ。
  6. 前記第二の面の前記リセス面からの高さを前記サイドレールのレール面の前記リセス面からの高さよりも高くした請求項5に記載の磁気ヘッドスライダ。
  7. 回転駆動される磁気ディスクと、前記磁気ディスクに情報を記録し、または前記磁気ディスクから情報を再生する磁気ヘッドを搭載した磁気ヘッドスライダとを備えた磁気ディスク装置において、
    前記磁気ヘッドスライダは、空気流の流入側に形成され、空気軸受面となる流入側パッドと、空気流の流出側に形成され、空気軸受面となる流出側パッドと、両側に沿って形成された一対のサイドレールと前記流入側パッドと前記流出側パッドとの間にリセス面とを備え、
    前記流入側パッドは、前記リセス面から突出した第一の面と、この第一の面の流入側にこの第一の面よりも前記リセス面からの高さが低く形成した第二の面とを備え、前記第一の面の前記リセス面からの高さを前記流出側パッドの前記リセスからの高さよりも高く、前記第二の面の前記リセス面からの高さを前記サイドレールのレール面の前記リセス面からの高さよりも高く形成した磁気ディスク装置。
  8. 前記磁気ディスクとして、中心線平均面粗さRaが1nm以下、中心線最大高さRpが5nm以下の磁気ディスクを使用した請求項7に記載の磁気ディスク装置。
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