JP4137596B2 - フィルム積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性ポリオレフィン樹脂、水性ポリウレタン樹脂、およびメラミン系架橋剤からなる層を二軸延伸フィルムの少なくとも片面に形成したフィルム積層体に関するものであり、特にポリオレフィン系樹脂に対して接着性に優れ、押出ラミネート法により、接着剤を用いることなくフィルムの片面あるいは両面にポリオレフィン系樹脂等からなるヒートシール層を形成することのできる、特に包装用フィルムとして好適に使用されるフィルム積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカプロンアミド(ナイロン6、N6)フィルムに代表されるポリアミド二軸延伸フィルム、またはポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル二軸延伸フィルムは、その優れた力学特性、耐熱性、耐ピンホール性、耐薬品性のために、広範な用途に使用されている。これらのフィルムを包装材料として使用する場合には、多くの場合ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのヒートシール性を有する樹脂を二軸延伸フィルムの片面あるいは両面に積層し、ヒートシールを施すことによって種々の包装形態としている。
【0003】
このようなヒートシール性樹脂を二軸延伸フィルムに積層する場合、(1)二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂フィルムとを接着剤を用いて二軸延伸フィルムにラミネートする方法(ドライラミネート法)、(2)ヒートシール性樹脂を溶融させて二軸延伸フィルム上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネート法)が一般的に用いられる。後者の場合、さらに二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂フィルムの中間に同種あるいは別種のヒートシール性樹脂を押出して貼り合せつつ積層する方法や、二軸延伸系フィルムに2段階でヒートシール性樹脂を押出し積層する方法などがある。
(2)の押出ラミネート法は、ヒートシール性樹脂のフィルムを使用せず、原料樹脂を直接二軸延伸フィルムに押出すことによって二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂のフィルム状積層体を形成できるため、(1)のドライラミネート法に較べて低コストであり、採用されるケースが増えている。
【0004】
しかしながら、この押出ラミネート法においては、ポリアミドやポリエステルからなる二軸延伸フィルムとヒートシール性樹脂が本質的に接着性に乏しいため、両層の中間に接着剤層を設けるのが一般的である。このとき、接着剤としては、有機チタネート系、有機イソシアネート系、ポリエチレンイミン系などの接着性化合物を一般には有機溶剤に溶かして使用されるが、有機溶剤の使用は作業環境の悪化や火災の危険の問題があり、また、近年の環境問題への関心の高まりから、できるだけ使用を避ける方法が望まれている。
【0005】
有機溶剤を使用しない接着剤(ノンソルベント接着剤)が使用される場合もあるが、溶剤型に較べて接着力が一般に劣っており、またフィルムに塗工する場合の濡れ性にも問題があり、限定された用途にのみ使用されている。
【0006】
このような観点から、二軸延伸フィルムに対して接着剤を使用せずに押出ラミネーションを行なう技術が望まれている。
【0007】
特許文献1および特許文献2には、押出ラミネートを行うと同時に、ヒートシール性樹脂の表面をオゾンによって改質して、熱可塑性樹脂フィルムへの密着性を発現させる方法が提案されているが、実施のためには特別な装置を導入しなければならない。
【0008】
また、特許文献3には特殊な組成のポリオレフィン系樹脂を使用することで、アンカーコート処理を施すことなくポリエステルフィルムに直接押出ラミネートすることができる樹脂が提案されているが、この樹脂は一般のヒートシール樹脂に比較して高価であり、経済的に不利なものであった。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−193018号公報
【特許文献2】
特開平7−314629号公報
【特許文献3】
特開2001−54938号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題に対して、押出ラミネート法において接着剤を使用せずにヒートシール層を形成したときにも、良好な密着力を得ることのでき、さらに環境適合性においても優れた積層体を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水性ポリオレフィン樹脂、水性ポリウレタン樹脂、およびメラミン系架橋剤の混合物層を二軸延伸フィルムに積層することで、優れた衛生性、耐水性、耐溶剤性、被膜の接着性、ヒートシール層との密着性が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 二軸延伸フィルムの少なくとも片側に、水性ポリオレフィン樹脂(A)20〜80質量%、水性ポリウレタン樹脂(B)10〜80質量%、およびメラミン系架橋剤(C)1〜15質量%の混合物からなる層が形成されていることを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体であって、水性ポリオレフィン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(A3)とから構成され、(A1)がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、(A2)と(A3)の質量比が(A2)/(A3)=55/45〜99/1の関係を満たす樹脂であるフィルム積層体。
(2)二軸延伸フィルムが二軸延伸ポリアミドフィルムである(1)に記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
(3)二軸延伸フィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムである(1)に記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のフィルム積層体は、二軸延伸フィルムの少なくとも片側に、水性ポリオレフィン樹脂(A)、水性ポリウレタン樹脂(B)、およびメラミン系架橋剤(C)の混合物からなる層が形成されているフィルム積層体である。
以下、二軸延伸フィルムを「基材フィルム」と呼び、該二軸延伸フィルム上に形成した水性ポリオレフィン樹脂(A)と水性ポリウレタン樹脂(B)、メラミン系架橋剤(C)との混合物からなる層を、単に「樹脂層」と呼ぶ。
【0014】
(二軸延伸フィルム)
本発明において、二軸延伸フィルムを構成する樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂が使用できるが、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、およびこれらの混合物などのポリエステル系樹脂、あるいはポリカプロンアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、およびこれらの混合物などのポリアミド系樹脂が挙げられる。
これらのポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムは優れた成形性、加工性、力学特性、ガスバリア性など包装材料として優れた性能を有している。また、基材フィルムとしては上記のポリエステルやポリアミドを含む積層体、あるいは他の熱可塑性樹脂からなるフィルムの積層体を用いてもよい。フィルムの厚みは特に限定されないが、5〜500μmの範囲が好ましい。
【0015】
二軸延伸フィルムは、熱可塑性樹脂を原料として通常公知の方法で製造することができる。例えば上述のポリアミド樹脂やポリエステル樹脂を押出機で加熱、溶融してTダイより押出し、冷却ロールなどにより冷却固化させて未延伸フィルムを得るか、もしくは円形ダイより押出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る。延伸フィルムを製造するには、未延伸フィルムを一旦巻き取った後、または連続して同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法により延伸する方法が好ましい。フィルムの機械的特性や厚み均一性などの性能面からはTダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0016】
(水性ポリオレフィン樹脂)
本発明で用いられる水性ポリオレフィン樹脂(A)とは、水分散体を形成することが可能なオレフィン系樹脂を指す。組成は特に限定はされないが、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸またはメタクリル酸(A3)の3成分からなる樹脂が最も好ましい。
【0017】
(A1)成分としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸は、塩、酸無水物、ハーフエステル、ハーフアミドなどの誘導体になっていてもよい。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
なお、本発明で用いる無水マレイン酸単位を含有するポリオレフィン樹脂中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造を取りやすく、一方、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部、または全部が開環してマレイン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
【0018】
(A2)成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のオレフィンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0019】
(A3)成分の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0020】
上記のような(A1)〜(A3)の成分を有する水性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、その様な場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
【0021】
(A1)〜(A3)から構成されるポリオレフィン樹脂を用いる場合には、(A1)成分をこの樹脂全体の0.01質量%以上、5質量%未満、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満含有していることが好ましく、1〜4質量%が最も好ましい。(A1)成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、前述のように樹脂を水性化することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しく、耐アルカリ性やポリエステル系フィルムとの接着性の点から(A1)成分の含有量を5質量%未満とすることが好ましい。
【0022】
また、ポリオレフィン樹脂の水性化が容易で、また耐水性等の性能が向上するという点から、(A2)と(A3)の質量比率(A2)/(A3)は55/45〜99/1とすることが好ましく、さらに、良好な接着性を持たせるために60/40〜98/2であることが好ましく、75/25〜95/5であることが特に好ましい。
【0023】
本発明に用いられる水性ポリオレフィン樹脂(A)には、その他のモノマーが、この樹脂全体の20質量%以下で共重合されていてもよい。例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30のアルキルビニルエーテル類、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる水性ポリオレフィン樹脂(A)は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜500g/10分が好ましい。さらに好ましくは1〜300g/10分、より好ましくは2〜250g/10分、最も好ましくは2〜200g/10分のものを用いることができる。メルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化が困難となり、一方、500g/10分を超えると、樹脂層が、硬くてもろくなり、機械的物性や加工性が低下する傾向にある。
【0025】
水性ポリオレフィン樹脂(A)の合成法は特に限定されないが、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていてもよい。
【0026】
(水性ポリウレタン樹脂)
本発明で用いるポリウレタン樹脂とは、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。本発明においては、ポリウレタン樹脂の構造は特に限定されないが、耐ボイル性の点から、ガラス転移温度が0℃以上である必要があり、さらに耐ブロッキング性の点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が特に好ましい。
【0027】
ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類などの高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
【0028】
また、ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族および脂環族の公知ジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。また、ジイソシアネート類にはトリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
【0029】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、水性媒体への分散性の点から陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などである。この中でもカルボキシル基を有していることが好ましい。
【0030】
ポリウレタン樹脂に陰イオン性基を導入するには、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基などを有するポリオール成分を用いればよく、カルボキシル基を有するポリオール化合物としては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシル−プロピオンアミド等が挙げられる。
【0031】
また、鎖長延長剤を用いて適宜ポリウレタン樹脂の分子量を調整することもできる。こうした化合物としては、イソシアネート基と反応することができるアミノ基や水酸基などの活性水素を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、ジアミン化合物、ジヒドラジド化合物、グリコール類を用いることができる。
ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミンなどが挙げられる。その他、N−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−3−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等も挙げられる。更に、グルタミン酸、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類も挙げられる。
ジヒドラジド化合物としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシンジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどの不飽和ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボジヒドラジドなどが挙げられる。
グリコール類としては、前述のポリオール類から適宜選択して用いることができる。
【0032】
本発明で用いられる水性ポリウレタン樹脂(B)としてはアイオノマー型自己乳化型ポリウレタン樹脂、アイオノマー型自己乳化型ポリウレタン−ポリ尿素樹脂などが挙げられる。耐溶剤性を高めるためには、少なくとも両成分のどちらか一方に芳香族系の成分を用いることが好ましい。また、接着性を高めるためには、ポリマー主鎖あるいは末端に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基を導入したものを用いることが好ましい。
【0033】
(メラミン系架橋剤)
メラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子のいくつかがアルキル化もしくはメチロール化されたものが広く使用される。一般にアルキル化されたものよりもメチロール化もしくは置換されていない水素原子の方が反応性が高く、用途に応じて適正な種類のメラミン化合物を選定することができる。この中で好ましいのは、トリアジン環の縮合数が平均3以下で、少なくとも1つ以上のアミノ基がメチロール置換されたものであり、これらは水性媒体への分散性と樹脂との反応性の点で優れている。
【0034】
メラミン系架橋剤(B)としてはメラミンをメチロール化したものが用いられ、反応性の制御、貯蔵安定性を付与するために、メチロール基をアルコキシル化したものを用いるのが一般的である。なお、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などがあげられる。また、必要に応じて、架橋触媒を添加してもよい。架橋触媒としては、たとえばパラトルエンスルホン酸が挙げられる。
【0035】
(樹脂層)
二軸延伸フィルムに積層される樹脂層の組成は、水性ポリオレフィン樹脂(A)20〜80質量%、水性ポリウレタン樹脂(B)10〜80質量%、およびメラミン系架橋剤(C)1〜15質量%を満足することが必要である。水性ポリオレフィン樹脂(A)の量が20質量%よりも少ない場合は、目的とするポリオレフィン系のヒートシール性樹脂に対する接着性が十分得られず、また、80質量%より多い場合は層の強度が不足し、望ましいラミネート強力が得られない。水性ポリウレタン樹脂(B)の量が10質量%より少ない場合は二軸延伸フィルムに対する接着性が十分ではなく、逆に80%を超える場合は、前述のオレフィン樹脂の量が少なくなりすぎるため、ポリオレフィン系のヒートシール性樹脂に対する接着性が十分に得られない。メラミン系架橋剤(C)の量は本来、オレフィン系樹脂(A)および水性ポリウレタン樹脂(B)の反応性基の量、および塗布した後の乾燥・熱処理の条件に応じて適宜選定されるべきものであるが、メラミン系架橋剤(C)の量が1質量%に満たない場合は塗膜の架橋が十分でないために、膜の強度が低下し十分なラミネート強度が得られない。また、15質量%より多い場合は架橋が過度に進行するため塗膜が脆くなり同じく十分なラミネート強力が得られない。
またこの樹脂層には、必要に応じて接着性や膜の性能に影響を与えない範囲で、帯電防止剤やスリップ剤など公知の各種添加剤を加えることができる。また塗工性を向上させるため消泡剤、界面活性剤を加えることができる。
【0036】
二軸延伸フィルム上に形成される樹脂層の厚みは0.03〜10μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2μmである。皮膜の厚みが0.03μmより薄い場合には十分な接着性が得られず、10μmより厚くしても性能が飽和するため、それ以上の厚みを形成することは経済的ではない。
【0037】
(水性分散体)
本発明では、二軸延伸フィルム上に樹脂層を形成するにあたり、水性オレフィン系樹脂(A)、水性ポリウレタン樹脂(B)、メラミン系架橋剤(C)の水分散体混合物をフィルムに塗布後乾燥する方法を用いることができる。
本発明で用いる水性オレフィン系樹脂(A)、水性ポリウレタン樹脂(B)、メラミン系架橋剤(C)の混合物は塗布液の形態で混合されたとき、実用上十分な安定性を有していることが好ましい。実用上十分な安定性とは、混合液を室温または所定の温度で貯蔵したとき6時間以上、好ましくは24時間以上、より好ましくは数日以上にわたって、均一性や、粘度、性能などが変化しないことを言う。
なお、本発明でいう水性分散体は、樹脂が水性媒体に分散もしくは溶解されているものであり、水性媒体とは、水を主成分とし、必要により後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有する液体を指す。
【0038】
本発明において、水性ポリオレフィン樹脂(A)の分散体を得るためには、たとえば、水性ポリオレフィン樹脂(A)を、水および、必要に応じて塩基性化合物や有機溶剤と共に、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を用いることができる。
【0039】
この際に、塩基性化合物を添加することにより、水性ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基を中和すると、生成したアニオン間の静電気的反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与されるため好ましい。塩基性化合物の添加量は水性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.0〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると樹脂層形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0040】
塩基性化合物の具体例としては、LiOH、KOH、NaOH等の金属水酸化物やアンモニア又は有機アミン化合物が挙げられる。中でも、樹脂層形成時に揮発する化合物を用いることがフィルム積層体の製造工程上好ましく、アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物が好ましい。このような有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0041】
水性分散体の製造において、樹脂の分子量がある程度大きい場合には、有機溶剤を添加することが好ましい。このとき用いる有機溶剤の添加量は水性分散体100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、2〜30質量部がより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。有機溶剤の添加量が20質量部を超える場合には、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱することにより(ストリッピング)、有機溶剤の含有量を低減させ、0.01質量%程度にすることができる。
【0042】
有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは10g/L以上である。具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられ、中でも、樹脂の水性化がし易く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。
【0043】
なお、既述のような製造方法によれば、一般に水性分散体の製造において用いられる乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物を添加しなくても水性分散体を得ることができるが、樹脂の水系媒体への分散をさらに容易にするために、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物を反応系内に加えることもできる。しかしながら、こうした化合物は一般的に不揮発性であるので、フィルム積層体の樹脂層中にも残存し、これを可塑化する作用を有するため、耐水性や耐薬品性を悪化させる。耐水性が悪化した場合、フィルム積層体を用いて水分を含む内容物を包装したときなどに、袋の破裂の原因となる恐れがある。また、耐薬品性が悪化した場合は、フィルムの表面に印刷を施す場合にインキの溶剤に表面が侵され、性能低下や印刷品位の悪化が生じやすい。そのため、乳化剤あるいは保護コロイド作用を有する化合物の使用はできるだけ少量にとどめるほうがよい。
【0044】
本発明で言う乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常は5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
【0046】
水性分散体を製造するための容器としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。なお、水性化速度を速めるという点から、原料樹脂の粒子径は1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。
【0047】
この装置の槽内に既述の各原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を50〜200℃、好ましくは60〜200℃に保ちつつ、好ましくは5〜120分間攪拌を続けることにより樹脂を十分に水性化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。槽内の温度が50℃未満の場合は、樹脂の水性化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える場合は、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下する恐れがある。
【0048】
槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いて槽を加熱する、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
【0049】
なお、この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、水性分散体を高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としては、A.P.V.A.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。
【0050】
(混合方法)
本発明では、水性オレフィン系樹脂(A)、水性ポリウレタン樹脂(B)、メラミン系架橋剤(C)の水分散体混合物をフィルムに塗布する。水性分散体混合物を得るには、各水性分散体を適当な容器に入れて攪拌しながら、所定量混合して調整することができる。容器に仕込む順番はいずれが先でもよくまた同時に仕込んでもよい。
【0051】
(樹脂層形成法)
基材フィルムに水分散体混合物を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布後乾燥、熱処理してもよく、また、配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに該水分散体混合物を塗布し、乾燥後あるいは乾燥と同時に延伸し配向を完了させてもよい。
【0052】
水分散体の塗布方法は特に限定するものではなく通常公知の方法から選定される。例えばグラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、又はこれらの組み合わせによる各種コーティング方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。また、コーターの前にコロナ処理装置などを設置し、基材フィルムの濡れ張力を調整することができる。
【0053】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。本発明における評価方法は次の通りである。
【0054】
(1)ラビングテスト(耐水性、耐溶剤性評価)
フィルム積層体の樹脂層が形成されている面について、樹脂層表面を水およびイソプロパノールで濡らした布で数回擦り、その表面状態を目視により、次の基準で判定した。
○:変化なし、△:樹脂層表面がくもる、×:樹脂層が完全に溶解
【0055】
(2)ブロッキングテスト
100mmx100mmに切り出したフィルム積層体2枚を、コート面と非コート面が接触するように重ね、80mmx80mmのステンレス平板(重さ100g)に挟んで平らな面に置き、1kgのおもりをのせて20℃,65%RHの雰囲気下で24時間静置した後、おもりとステンレス平板を取り除き、フィルム面の密着状態を調べることでブロッキング性の評価とした。フィルム間に全く密着が見られないものを○、わずかでも密着が見られるものを×とした。
【0056】
(3)押出ラミネートおよび接着強力
押出機を備えたラミネート装置を用いて、フィルム積層体の樹脂層表面にLDPE(住友化学社製L211)を溶融押出して、30μmのLDPE層からなるヒートシール層が形成されたラミネートフィルムを得た。
このラミネートフィルムから幅15mmの試験片を採取し、島津製作所社製引張試験機AGS−100B型を用い、Tピール法により試験片の端部からヒートシール層とフィルム積層体層の界面を剥離して強力を測定した。測定は20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度300mm/分で行った。
【0057】
参考例1
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(住友化学工業社製ボンダインHX−8210)、60.0gのイソプロパノール、4.5g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.8倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および175.5gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
水性分散体の各種特性を表1に示した。ポリオレフィン樹脂は水性媒体中に良好な状態で分散しており、数平均粒子径は0.072μmで、その分布は1山であった。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチルの残存率は100%であり、エステルは加水分解されていなかった。
【0058】
参考例2
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインHX−8290(住友化学工業社製)を用い、水性分散体E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。水性分散体の各種特性を表1に示した。なお、水性化後の樹脂組成を分析したところ、アクリル酸エチル単位の1%が加水分解されてアクリル酸に変化していた。すなわちエステル基残存率は99%であった。
【0059】
参考例3
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂(ダウケミカル社製プリマコール5980I)、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100〜105℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−3を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
【0060】
水性分散体E−1〜E−3の製造に使用した各ポリオレフィン樹脂の組成を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1
水性ポリオレフィンエマルジョン(E−1)、水性ポリウレタン系エマルジョン(大日本インキ化学工業社製ハイドラン)、メラミン系架橋剤(三井サイテック社製サイメル327)をそれぞれの固形分質量比が70/25/5になるように混合し、純水で調整して濃度20%の水性コーティング剤を得た。このコーティング剤を二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm)のコロナ処理面にメイヤーバーを用いてコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、ナイロンフィルム上に厚さ1μmの樹脂層を形成し、フィルム積層体を得た。ラビングテストの結果、樹脂層に若干の曇りが見られた。このフィルム積層体に押出ラミネーションを施し、積層体層と押出樹脂層間の剥離強力を測定したところ3.7N/cmであり、包装用フィルムとして用いるのに十分な強度であった。
【0063】
実施例2〜5、比較例5
実施例1と同様の操作を、水性ポリオレフィン樹脂(A)としてE−2あるいはE−3を用い、また、(A)、(B)、(C)の配合比を変えて実験を行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。得られたフィルム積層体の性能を表2に示した。
【0064】
実施例6
ナイロン6(融点:220℃、Tg:45℃)を温度260℃で、幅600mmのTダイよりシート状に溶融押出した後、エアーナイフキャスト法により温度25℃の回転ドラムに密着させて急冷し、厚さ155μmの実質的に無定形で配向していない未延伸ポリアミドフィルムを得た。この未延伸フィルムに実施例3で用いたものと同じコーティング剤を乾燥後の樹脂層厚みが2.0μmになるようにコートし、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時二軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、95℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。尚、横方向弛緩率は5%とした。ナイロンフィルム厚さ15μm、樹脂層厚さ0.21μmのフィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の性能を表2に示した。
【0065】
比較例1
二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm)を使用し、樹脂層を形成せずに押出ラミネーションを施した。得られたフィルムの性能を表2に示した。
【0066】
比較例2〜4
実施例1と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂(A)にE−2を用い、また、(A)、(B)、(C)の配合比を変えて実験を行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。得られたフィルム積層体の性能を表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例7
水性ポリオレフィンエマルジョン(E−1)、水性ポリウレタン系エマルジョン(大日本インキ化学工業社製ハイドラン)、メラミン系架橋剤(三井サイテック社製サイメル327)をそれぞれの固形分質量比が70/25/5になるように混合し、純水で調整して濃度20%の水性コーティング剤を得た。このコーティング剤を二軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社製エンブレット、厚み12μm)のコロナ処理面にメイヤーバーを用いてコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、PETフィルム上に厚さ1μmの樹脂層を形成し、フィルム積層体を得た。このフィルム積層体に押出ラミネーションを施し、積層体層と押出樹脂層間の剥離強力を測定したところ1.7N/cmであった。
【0069】
実施例8〜11、比較例10
実施例7と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂(A)にE−2あるいはE−3を用い、また、(A)、(B)、(C)の配合比を変えて実験を行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。得られたフィルム積層体の性能を表3に示した。
【0070】
実施例12
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み120μmの未延伸フィルムとした。続いて、未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き、実施例9で用いたものと同じ水性分散体混合物を、乾燥後の樹脂層厚みが1.0μmになるようにコートし、80℃の熱風ドライヤー中で45秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時二軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、95℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。尚、横方向弛緩率は5%であった。得られたフィルム積層体のPET層厚みは12μm、樹脂層厚みは約0.1μmであった。このフィルムのブロッキングテスト、ラビングテスト、押出ラミネートフィルムの剥離強力の評価結果を表3に示した。
【0071】
比較例6
二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレット、厚み12μm)を使用し、樹脂層を形成せずに押出ラミネーションを施した。得られたフィルムの性能を表3に示した。
【0072】
比較例7〜9
実施例7と同様の操作を、ポリオレフィン樹脂(A)にE−2を用い、また、(A)、(B)、(C)の配合比を変えて実験を行い、フィルム積層体、ラミネートフィルムを得て、各種評価に供した。得られたフィルムの性能を表3に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
【発明の効果】
本発明のフィルム積層体は、ポリエチレン等のヒートシール性樹脂に対する接着性に優れ、接着剤を用いることなく押出ラミネーションを行なうことで、実用上十分なラミネート強力を得ることが出来る。
Claims (3)
- 二軸延伸フィルムの少なくとも片側に、水性ポリオレフィン樹脂(A)20〜80質量%、水性ポリウレタン樹脂(B)10〜80質量%、およびメラミン系架橋剤(C)1〜15質量%の混合物からなる層が形成されていることを特徴とする押出ラミネーション用フィルム積層体であって、
水性ポリオレフィン樹脂(A)が、不飽和カルボン酸またはその無水物(A1)、オレフィン化合物(A2)、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(A3)とから構成され、(A1)がこの樹脂中に0.01質量%以上、5質量%未満含有され、かつ、(A2)と(A3)の質量比が(A2)/(A3)=55/45〜99/1の関係を満たす樹脂であるフィルム積層体。 - 二軸延伸フィルムが二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項1に記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
- 二軸延伸フィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムである請求項1に記載の押出ラミネーション用フィルム積層体。
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