JP4136973B2 - 遊動環形メカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、火力発電所の缶水循環ポンプ等の軸封手段として高圧条件下で好適に使用されるメカニカルシールであって、回転軸に設けられた回転環とシールケースに軸線方向移動可能に且つ回転環方向に附勢された状態で設けられた静止環との間に、遊動環を静止環に対する相対回転が阻止された状態で挟圧保持させてなる遊動環形メカニカルシールに関するものである。
従来の遊動環形メカニカルシールとしては、図3及び図4に示す如く、回転軸に固定された回転環6とシールケーシングに軸線方向移動可能に保持され且つスプリングにより回転環方向に押圧附勢された静止環4との間に、両端側部分がほぼ対称形状をなす遊動環8を挟圧保持させて、回転環6と遊動環8との接触面であるシール面6a,83aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域である被密封流体領域Aとその内周側領域である非密封流体領域(大気領域)Bとを遮蔽シールするように構成されたもの(以下「従来シール」という)が周知である(例えば、特許文献1参照)。なお、静止環4と遊動環8とは相対回転不能に連結されていて、両環4,8の接触面である押圧面4a,82aは相対回転しない。
ところで、遊動環8を介在させることなく回転環と静止環とを直接に接触させて、回転環と静止環との相対回転摺接作用により被密封流体をシールさせるように構成された一般的なメカニカルシールにあっては、これを高圧条件下で使用した場合、回転環と静止環との接触面たるシール面の平行性が損なわれ、良好なシール機能を発揮できない。すなわち、静止環は回転環に追従できるようにシールケーシングに軸線方向移動可能に保持されたものであるから、シールケースで保持されている静止環の基端側部分では被密封流体領域の流体圧力による影響を殆ど受けないが、回転環に追従するためフリーな状態にある静止環の先端側部分つまりシール面側部分ではその影響(圧力歪)が大きい。したがって、静止環における軸線方向の圧力歪分布が不均一となり、つまり圧力歪が静止環における基端側部分と先端側部分とで大きく異なり、静止環が軸線に対して大きく歪むことになる。その結果、静止環のシール面が傾いて、回転環のシール面との平行性が著しく損なわれることになる。
これに対して、従来シールにおいては、回転環6との相対回転摺接作用によりシール機能を発揮するための遊動環8が、回転環6と静止環4との間に挟圧保持されたものであり且つ両端側部分がほぼ対称形状をなすものであるから、被密封流体領域Aの流体圧力(以下、単に「流体圧力」という)による影響を軸線方向においてバランスよく受けることなる。すなわち、遊動環8に生じる圧力歪は両端側部分でほぼ同一となり、軸線に対して大きく歪むことがない。したがって、高圧条件下においても、遊動環8のシール面83aが回転環6のシール面6aに対して傾くようなことがなく、シール面6a,83aの平行性が確保され、良好なシール機能を発揮することができる。
特開昭50−149860号公報(第4図)
しかし、従来シールによれば、これを流体圧力が極めて高く且つ大きな圧力変動が生じる回転機器(例えば、火力発電所の缶水循環ポンプ)の軸封手段として使用する場合には、つまり静止環と回転環とによる遊動環8の挟圧力が極めて高くなる高圧条件下で使用する場合には、以下に述べる如く、シール面6a,83aの平行性が損なわれて、シール面6a,83a間からの異常漏れや異常摩耗を生じ、良好なシール機能を発揮し得ない。
すなわち、遊動環8は、流体圧力の上昇に伴って径方向に収縮変形し、その収縮変形(弾性変形)は流体圧力の降下に伴って解消,回復されることになるが、遊動環8と回転環6等との材質や保持構造等の相違(例えば、遊動環8は、一般に回転環6等に比して変形し易いカーボン等の軟質材で構成されており、また流体圧力による径方向変形を、回転軸に嵌合保持された回転環6等と異なって、阻止,抑制するような保持手段を有しないから、遊動環8の収縮変形は回転環6や静止環4に比して著しく大きくなる。
また、遊動環8の押圧面82a及びシール面83aには、図3(A)に示す如く、軸線方向の接面荷重W,W及び径方向の摩擦力F,Fが作用することになる。ここに、押圧面82aに作用する接面荷重(以下「第一接面荷重」という)Wは、静止環4を回転環方向に押圧するスプリングの附勢力(バネ力)と静止環4の背面に作用する流体圧力(背圧)とによるものであり、シール面83aに作用する接面荷重(以下「第二接面荷重」という)Wは、第一接面荷重Wによる回転環6への押圧反力とシール面6a,83a間に形成される流体膜によるシール面間開放力(シール面6a,83a間を押し拡げようとする流体膜圧)とによるもの(バランス比及び臨界バランスを考慮する)である。したがって、両接面荷重W,Wは、図5(A)に示す如く、ほぼ流体圧力に比例して増減し且つW>Wの関係にある。なお、遊動環8の両端面に作用する流体圧力は、遊動環8の両端側部分がほぼ対称形状をなすことから、方向逆向きにして大きさがほぼ同一であり、互いに相殺されることになる。また、押圧面82aに作用する摩擦力(以下「第一摩擦力」という)F及びシール面83aに作用する摩擦力(以下「第二摩擦力」という)Fは、流体圧力の変動に伴う遊動環8の径方向変形によって静止環4及び回転環6との接触部分に生じる滑りを阻止すべく作用する摩擦抵抗力であり、押圧面4a,82a間及びシール面6a,83a間の最大静止摩擦力の値を上限値として、接面荷重W,Wと同様に、ほぼ流体圧力に比例して増減する。したがって、遊動環8の回転環6及び静止環4に対する静止摩擦係数をμとすると、押圧面4a,82a間の最大静止摩擦力(以下「第一最大静止摩擦力」という)はμ・Wで与えられ、シール面6a,83a間の最大静止摩擦力(以下「第二最大静止摩擦力」という)はμ・Wで与えられることになる。
而して、回転機器の運転状況の変化や運転開始等により流体圧力が上昇する昇圧状況下においては、図3(A)に示す如く、遊動環8の押圧面82a及びシール面83aに接面荷重W,Wと外径方向の摩擦力F,Fとが作用することになり、これらの接面荷重W,W及び摩擦力F,Fは流体圧力の上昇に伴って増大していく。そして、各摩擦力F,Fが各々最大静止摩擦力μ・W,μ・Wに達すると、遊動環8と静止環4又は回転環6との間で径方向の滑りが生じることになる。
しかし、上記した如くW>Wであって、μ・W>μ・Wであることから、流体圧力の上昇過程において、まず、第二摩擦力Fが第二最大静止摩擦力μ・Wに達して、シール面6a,83a間で滑りが生じることになる。一方、第一摩擦力FはF<μ・Wの範囲にあり、押圧面4a,82a間では滑りを生じない。したがって、図3(B)に示す如く、遊動環8のシール面83aが回転環6のシール面6aに対して内径方向に滑って、シール面6a,83aが内径側(大気領域B側)に開くような状態(以下「外径当たり状態」という)に遊動環8が傾くことなる。
そして、この状態から更に昇圧されていくと、第一摩擦力Fが第一最大静止摩擦力μ・Wに達して、押圧面4a,82a間において滑りを生じることになる。その結果、図3(C)に示す如く、遊動環8の傾きが解消されて、シール面6a,83aが平行状態(以下「全面当たり状態」という)に復帰することになる。
ところで、第二摩擦力Fは、第二最大静止摩擦力μ・Wに達すると、シール面6a,83a間で滑りが生じることにより、一時的にF≒0となるまで低下することになる。そして、爾後、第二摩擦力Fは、流体圧力の上昇に伴ってF≒0から増大していき、再び第二最大静止摩擦力μ・Wに達して滑りを生じて、F≒0まで減少する。すなわち、第二摩擦力Fは、図5(B)に実線で示す如く、流体圧力の上昇に伴いF≒0とF=μ・Wとの間を鋸刃状にスティックスリップしながら増加することになる。また、第一摩擦力Fも、同様に、第一最大静止摩擦力μ・Wに達すると、押圧面4a,82a間で滑りが生じることにより、第一摩擦力Fは一時的にF≒0となるまで低下することになる。そして、爾後、第一摩擦力Fは、流体圧力の上昇に伴ってF≒0から増大していき、再び第一最大静止摩擦力μ・Wに達して滑りを生じて、F≒0まで減少する。すなわち、第一摩擦力Fは、図5(A)に実線で示す如く、第二摩擦力Fと同様に、流体圧力の上昇に伴いF≒0とF=μ・Wとの間を鋸刃状にスティックスリップしながら増加することになる。ここに、スティックスリップのサイクル(ピッチ)は、第二摩擦力Fについては小さく、第一摩擦力Fについては大きい。
したがって、流体圧力が所定の最高圧に達するまでの昇圧過程において、シール面6a,83a間での滑りと押圧面4a,82a間での滑りとが、交互に繰り返されることになり、シール面6a,83aの相対運動状態が、流体圧力如何で、外径当たり状態(例えば図3(B)に示す状態)となったり、全面当たり状態(例えば図3(C)に示す状態)となったり、安定しないことになる。
さらに、このようにシール面6a,83aの相対運動状態が安定しない点は、運転状況の変化や運転停止等により流体圧力が最高圧から下降していく降圧状況下においても、同様である。
すなわち、流体圧力が最高圧力から下降していくと、昇圧時に生じた遊動環8の径方向における収縮変形(弾性変形)が流体圧力の減少と共に除々に回復していき、遊動環8が径方向に拡大変形していくことになる。したがって、降圧に伴い摩擦力F,Fも次第に小さくなっていき、やがて逆向きに作用するようになる。つまり、昇圧時における摩擦力F,Fの作用方向(外径方向)を正とすると、遊動環8の押圧面82a及びシール面83aには負の摩擦力−F,−F(以下、負の第一摩擦力「−F」を「第一摩擦力f」といい、負の第二摩擦力「−F」を「第二摩擦力f」という)が作用することになり、爾後は、図4(D)に示す如く、摩擦力f,fが流体圧力の減少に伴って−μ・W≦f<0,−μ・W≦f<0の範囲で増大(負方向に増大)していく。
さらに、この状態から流体圧力が降圧していくと、まず第二摩擦力fが第二最大静止摩擦力−μWに達して、図4(E)に示す如く、遊動環8のシール面83aが回転環6のシール面6aに対して外径方向に滑って、シール面6a,83aが外径側(被密封流体領域A側)に開くような状態(以下「内径当たり状態」という)となる。
そして、降圧が更に進行すると、第一摩擦力fが第一最大静止摩擦力−μ・Wに達して、押圧面4a,82a間で滑りが生じ、図4(F)に示す如く、遊動環8の傾きがほぼ解消されて、シール面6a,83aがほぼ平行の全面当たり状態に復帰することになる。
ところで、降圧時においても、摩擦力f,fは、最大静止摩擦力−μ・W,−μ・Wに達すると、押圧面4a,82a間又はシール面6a,83a間で滑りが生じることにより、一時的にf≒0,f≒0となるまで低下し、爾後、流体圧力の下降に伴って増大していき、再び最大静止摩擦力−μ・W,−μ・Wに達することになり、かかる摩擦力増減が繰り返される。すなわち、摩擦力f,fは、図5(A)(B)に鎖線で示す如く、流体圧力の上昇に伴いf≒0,f≒0とf≒−μ・W,f=−μ・Wとの間を鋸刃状にスティックスリップしながら増加することになる。スティックスリップのサイクル(ピッチ)も、昇圧時におけると同様に、第二摩擦力fについては小さく、第一摩擦力fについては大きい。
したがって、流体圧力が所定の最低圧に達するまでの降圧過程においても、シール面6a,83a間での滑りと押圧面4a,82a間での滑りとが、交互に繰り返されることになり、シール面6a,83aの相対運動状態が、流体圧力如何で、内径当たり状態(例えば図4(E)に示す状態)となったり、全面当たり状態(例えば図4(F)に示す状態)となったり、安定しないことになる。
このように、従来シールでは、押圧面4a,82a間の第一最大静止摩擦力とシール面6a,83a間の第二最大静止摩擦力とが大きく異なるために、圧力変動により遊動環8と回転環6及び静止環4との接触抵抗バランスが崩れて、昇圧状況及び降圧状況に応じて遊動環8の傾き動作とその是正動作とが繰り返されることになり、その結果、シール面6a,83aの平行性を担保することができず、遊動環シール面83aの回転環シール面6aへの接触形態が変動するのである。そして、かかる接触形態の変動により、シール面(特に、回転環シール面6aに比して軟質の遊動環シール面83a)の異常摩耗が生じるのである。また、シール面が異常摩耗すると、シール面6a,83aが適正に接触し得なくなり、シール面6a,83a間からの異常漏れが生じることになる。さらに、シール面が異常摩耗しない段階においても、シール面6a,83aが大気領域B側に開く外径当たり状態の場合はともかく、シール面6a,83aが被密封流体領域A側に開く内径当たり状態となると、シール面6a,83a間から大量漏れが生じることになる。すなわち、このような内径当たり状態では、いわゆるテーパフェース形の非接触シールにおけると同様に、シール面6a,83aが非接触となり、遊動環シール面83aの回転環シール面6aに対するテーパ量の3乗に比例した大量の漏れが生じることになる。
しかも、従来シールでは、流体圧力が極めて高い場合、流体圧力によって回転環6も変形することになり、これによってもシール面6a,83aの平行性が損なわれることなり、上記した如く圧力変動による遊動環8と静止環4及び回転環6との接触抵抗バランスが崩れることによってシール面6a,83aの平行性が損なわれることと相俟って、良好なシール機能を到底期待することができない。
本発明は、このような問題を解決して、流体圧力が極めて高く且つ大きく変動する条件下においても、回転環と遊動環との接触面であるシール面の平行性を適正に確保しておくことができ、シール面の異常摩耗や異常漏れを生じさせることなく、良好なシール機能を発揮させることができる遊動環形メカニカルシールを提供するものである。
本発明は、回転軸に設けられた回転環とシールケースに軸線方向移動可能に且つ回転環方向に附勢された状態で設けられた静止環との間に、遊動環を静止環に対する相対回転が阻止された状態で挟圧保持させてなる遊動環形メカニカルシールにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、回転環を、第一Oリングを介して当該Oリングの弾性変形範囲において軸線方向に変位可能な状態で且つ第二Oリングを介して当該Oリングの弾性範囲において径方向に変位可能な状態で回転軸に保持しておくこと、第一Oリングを、回転環に作用する軸線方向の押圧力を吸収緩和するクッション材として機能するものであって回転環の径方向変位に対してはこれを妨げないように回転環との間で滑りを生じる低摩擦性弾性材(回転環に対して摩擦係数の低い弾性材)で構成されたものとしておくこと、及び第二Oリングを、回転環の径方向変位に拘わらずこれと回転軸との間をシールする二次シールとして機能するものとしておくこと、を提案するものである。
かかる遊動環形メカニカルシールにあって、前記滑りを生じる第一Oリングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成しておくことが好ましい。
また、遊動環と静止環との接触面の少なくとも一方に、PTFE等による低摩擦性材膜を被覆形成しておくことが好ましく、低摩擦性材膜の表面粗さは、ラッピング等により、十点平均高さ(Rz)2μm以下(一般には0.5〜2μmであり、1μm程度が最適である)となるようにしておくことが好ましい。Rz>2μmでは、膜の材質等に拘らず、遊動環と静止環との間での円滑な滑りを期待できない。また、低摩擦性材膜(ポリテトラフルオロエチレン膜等)の膜厚は10〜20μmであることが好ましい。膜厚が20μmを超えると、相手環との接触面硬度が低下するため、相手環が低摩擦性材膜に食い込んで、遊動環との滑りが円滑に行なわれないし、逆に、膜厚が10μm未満であると、相手環との接触摩耗により低摩擦性材膜が部分的に摩滅したり剥離したりする虞れがある。
また、本発明の遊動環形メカニカルシールは、回転機器への組込及び取り外し作業を容易ならしめるように、シールケース及びこれに取り付けられる部材群からなる静止側密封要素と回転軸に挿通固定されるスリーブ及びこれに取り付けられる部材群からなる回転側密封要素とを、静止環と回転環との間に遊動環を挟圧保持させた状態で、着脱自在なセットプレートにより一体連結しうるように構成したカートリッジ形のメカニカルールとしておくことが好ましい。
本発明の遊動環形メカニカルシールによれば、シールすべき流体の圧力が極めて高く且つそれが大きく変動するような過酷な圧力条件下においても、流体圧力によって回転環と遊動環との接触面であるシール面の平行性が損なわれるようなことがなく、シール面の異常摩耗や異常漏れを効果的に防止して、良好なシール機能を発揮させることができる。したがって、本発明の遊動環形メカニカルシールは、火力発電所の缶水循環ポンプ等の軸封手段として好適に使用できるものであり、その実用的価値極めて大なるものである。
図1及び図2は本発明に係る遊動環形メカニカルシールの一例を示したもので、図1は当該メカニカルシールを回転機器に組み込んだ状態を示す縦断側面図であり、図2はその要部の拡大図である。
すなわち、図1に示された本発明に係る遊動環形メカニカルシールは、シールすべき流体の圧力が極めて高く且つ運転状況により大きな圧力変動を生じる回転機器(例えば、火力発電所の缶水循環ポンプ)の軸封手段として使用されるもので、当該回転機器の軸封部ケーシング(例えば、上記缶水循環ポンプのポンプケーシング)1に取り付けられたシールケース3と、軸封部ケーシング1外にこれを貫通して突出する回転軸(例えば、上記缶水循環ポンプのインペラ軸)2に嵌挿固定されたスリーブ5と、静止環4に対向して回転軸2に設けられた回転環6と、シールケース3と静止環4との間に介装されたスプリング7と、両環4,6間に挟圧保持された遊動環8と、シールケース3とスリーブ5とを連結するセットプレート9とを具備して、回転環6と遊動環8との相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域である被密封流体領域(当該回転機器の機内領域に連通する領域)Aと非密封流体領域(当該回転機器の機外領域である大気領域)Bとを遮蔽シールするように構成されたカートリッジ形のものである。なお、以下の説明において前後とは、図1及び図2における左右を意味するものとする。また、軸線とは回転軸2の軸線をいうものとする。
シールケース3は、図1に示す如く、軸封部ケーシング1から後方に突出する回転軸部分2aを同心状に囲繞した状態で、軸封部ケーシング1の後端部に取り付けられた円筒体形状をなすものであり、軸封部ケーシング1に当接,係合する円筒状の本体部31と、その後端内周部に一体形成された円環状の壁部32と、壁部32の前面部に取り付けられたスプリングリテーナ33とからなる。スプリングリテーナ33は、壁部32に取り付けられた円環状のスプリング保持部33aとその内周側端部から前方に突出する円筒状の静止環保持部33bとからなる。なお、シールケース3には、クエンチング液(水)34の給排路35,36及びドレン37が形成されている。
静止環4は、図1に示す如く、シールケース3にOリング10及びドライブピン11を介して軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持されている。すなわち、静止環4は、その基端部分(後端部分)をスプリングリテーナ33の静止環保持部33bにOリング10を介して嵌合させることにより、シールケース3に、これとの間をOリング10によりシール(二次シール)された状態で、軸線方向移動可能に保持されている。また、静止環4は、その基端部に軸線と平行する複数のドライブピン(一のみ図示)11を突設すると共に各ピン11をスプリングリテーナ33のスプリング保持部33aに形成した係合凹部12に係合させることによって、所定範囲での軸線方向移動が許容された状態でシールケース3に対する相対回転が阻止されている。なお、静止環4は、後述する低摩擦性材膜41との接着性等を考慮して、硬質の金属材(例えば、ステンレス鋼)で構成されている。
スリーブ5は、図1に示す如く、前記回転軸部分2aに挿通される円筒状の本体部51と、本体部51の先端部(前端部)に形成された円環状の第一保持部52と、第一保持部52の外周部から後方へと突出する円筒状の第二保持部53とからなり、本体部51の基端部分(後端部分)を除いてシールケース3内に位置させた状態で、回転軸2に嵌挿固定されている。すなわち、シールケース3から後方に突出する本体部51の基端部分に、回転軸2に挿通させたストッパーリング13を適当数の第一セットスクユリュー14により嵌合固着すると共に、ストッパーリング13を適当数の第二セットスクユリュー15により回転軸2に固定することによって、スリーブ5は回転軸2に着脱可能に固定されている。なお、第一保持部52の内周部には適当数のOリング溝が形成されていて、このOリング溝に係合保持させたOリング16により、回転軸2とスリーブ5との間がシール(二次シール)されている。なお、スリーブ5の先端部(前端部)には、シールケース3との間でラビリンスシールを構成するためのラビリンスシール環54が取り付けられている。
回転環6は、図1に示す如く、複数のOリング17,18を介して、これらOリング17,18の弾性変形範囲において軸線方向及び径方向(軸線方向に直交する方向)に変位可能(ないし変形可能)な状態で回転軸2に保持されている。すなわち、回転環6は、図1及び図2に示す如く、スリーブ5における本体部51と第二保持部53との対向周面間に形成される環状空間に、第一保持部52との間に介在させた第一Oリング17の弾性変形範囲で軸線方向の変位を許容された状態で且つ第二保持部53との間に介在させた第二Oリング18の弾性変形範囲で径方向の変位を許容された状態で、嵌合保持されている。なお、回転環6の内周面とこれに対向する本体部51の外周面との間には、図2に示す如く、回転環6の径方向変位,変形を許容しうるに充分な環状隙間55が形成されている。
すなわち、第一Oリング17は、図2に示す如く、第一保持部52の後端面に形成したOリング溝に係合保持されていて、回転環6の背面(前端面)を当該第一保持部52の後端面との間に若干の間隙を有した状態で受け止めている。第一Oリング17は、回転環6に作用する軸線方向の押圧力を吸収緩和するクッション材として機能するものであり、回転環6の径方向変位に対してはこれを妨げないように滑りを生じるものである。したがって、第一Oリング17は、回転環6の軸線方向変位に対してクッション機能を発揮しうるに充分な弾性力を有する弾性材であって、回転環6に対する摩擦係数が低く回転環6の径方向変位に対して容易に滑りを生じうる低摩擦性材で構成しておくことが必要であり、この例ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されている。また、第二Oリング18は、図2に示す如く、回転環6の径方向変位を許容すべく弾性変形しうる状態で、回転環6と第二保持部53との対向周面間に挟圧保持されており、回転環6の径方向変位に拘らず、スリーブ5(第二保持部53)と回転環6との間をシールする二次シールとして機能する。第二Oリング18は二次シールとして機能しうるに十分な弾性材で構成しておけばよく、この例では、二次シールとして機能する他のOリング10,16,25も含めて、フッ素ゴム(FKM)で構成してある。なお、回転環6はセラミックス等の硬質材で構成されているが、この例では、回転環6を炭化珪素で構成し、その外周部に金属材製(チタン等)の補強リング19を嵌合固着してある。補強リング19は、回転環6の外周部であって第二Oリング18が接触する基端部分(前端部分)を除く部分に焼嵌め等により嵌合固着されており、この補強リング19に形成した係合孔20に第二保持部53に螺着させたドライブピン21を係合させることによって、回転環6の回転軸2つまりスリーブ5に対する相対回転を阻止している。係合孔20は、ドライブピン21が軸線方向及び径方向に余裕をもって係合しうる大きさのものとされていて、両者20,21の係合作用によっては、第一及び第二Oリング17,18の弾性変形による回転環6の径方向及び軸線方向への変位が妨げられないように工夫されている。
スプリング7は、図1に示す如く、スプリングリテーナ33のスプリング保持部33aに周方向に等間隔を隔てて形成した適当数の係合凹部22に保持されており、静止環4の背面(後端面)を回転環方向(前方)に押圧附勢するものである。
遊動環8は、図1及び図2に示す如く、円環状の本体部81とその内周側の前後端部に一体形成されたほぼ同一の円環状をなす押圧部82及びシール部83とからなるもので、押圧部82の端面である押圧面82aが静止環4の先端面(前端面)である押圧面4aに接触すると共にシール部83の端面であるシール面83aが回転環6の先端面(後端面)であるシール面6aに接触する状態(図2参照)で、スプリング7による附勢力(及び後述する背圧)によって、静止環4と回転環6と間に挟圧保持されている。遊動環8は、静止環4の前端部に周方向に等間隔を隔てて突設した適当数のドライブピン23を本体部81に形成した係合孔24に係合させることにより、静止環4に、軸線方向及び径方向に所定範囲での相対変位が許容された状態で、相対回転不能に保持されている。静止環4と遊動環8の本体部81との軸線方向における対向端面間には、両環4,8間をシール(二次シール)するOリング25が挟圧状に介在されている。遊動環8の本体部81には、周方向に等間隔を隔てて軸線方向に貫通する適当数の連通孔26が形成されている。なお、遊動環8は回転環6の構成材より軟質の材料で構成されており、この例ではカーボンで構成されている。
而して、静止環4と遊動環8との接触面である押圧面4a,82aの少なくとも一方には低摩擦性材膜41が被覆形成されている。この例では、図2に示す如く、静止環4における遊動環8との接触部分にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる低摩擦性材膜(ポリテトラフルオロエチレン膜)41を形成して、この膜41の表面を押圧面4aとなしている。押圧面4aを構成する低摩擦性材膜41は、静止環4に被覆形成した上で、その表面粗さが十点平均高さ(Rz)2μm以下となるように表面処理される。低摩擦性材膜41の表面粗さつまり押圧面4aの表面粗さをRz2μm以下としておくことによって、押圧面4a,82a間における静止摩擦係数μ´を、シール面6a,83a間における静止摩擦係数μに対する比率μ´/μが前述した接面荷重の逆比W/Wと同等ないしは近似するように、可及的に小さくすることができる。Rz>2μmでは、押圧面4a,82a間での円滑な滑りを期待できず、静止摩擦係数μ´を上記した条件を満足する程度にまで小さくすることができない。ところで、低摩擦性材膜41の表面処理は一般にラッピングにより行なわれ、通常、Rz=0.5〜2μmの表面粗さとされる。この例では、低摩擦性材膜41の表面粗さをラッピングによりRz=1μmとしてある。また、低摩擦性材膜41の膜厚は10〜20μmに設定される。静止環4はポリテトラフルオロエチレン膜41との接着性を確保するためにステンレス鋼等の金属材で構成されているが、膜厚が10μm未満では金属母材(静止環4)からの剥離等を生じる虞れがあり、膜厚が20μmを超えると、膜硬度が低く遊動環8の接触部分が膜41に食い込む虞れがあるからである。膜厚が20μm以下(10μm以上)であると、金属母材の硬度が膜硬度として反映することになり、膜自体の硬度不足が補われる。なお、低摩擦性材膜41は、少なくとも、被密封流体領域Aの圧力変動により遊動環押圧面82aが径方向に相対変位する静止環押圧面4a上の環状領域を含むような範囲で形成しておくことが必要であるが、この例では、図2に示す如く、Oリング25が接触する静止環押圧面4a上の領域をも含む広範囲に亘って低摩擦性材膜41を形成してある。
セットプレート9は、図1に示す如く、一端部をスリーブ5の本体部51に形成した凹部27に係合させた状態で、他端部をシールケース3の壁部32にボルト28により取り付けることにより、シールケース3とスリーブ5とを軸線方向相対移動不能に且つ相対回転不能に連結するものであり、シールケース3及びこれに取り付けられる部材群(静止環4及びスプリング7等)からなる静止側密封要素と回転軸2に挿通固定されるスリーブ5及びこれに取り付けられる部材群(回転環6等)からなる回転側密封要素とを、静止環4と回転環6との間に遊動環8を挟圧保持させた状態で、一体連結するものである。セットプレート9により連結された状態におけるシールケース3とスリーブ5との軸線方向の位置関係は、つまり遊動環8を挟圧した状態における静止環4と回転環6との軸線方向の位置関係は、当該遊動環形メカニカルシールの運転状態におけると同一となるように設定される。したがって、セットプレート9により、遊動環8を含む両密封要素を当該遊動環形メカニカルシールの使用状態と同一形態に組み立てることができる。なお、セットプレート9は、当該遊動環形メカニカルシールを軸封部ケーシング1及び回転軸2に組み込んだ後において、取り外しておくものであり、その数は適宜に設定される。
ところで、遊動環形メカニカルシールの軸封部ケーシング1及び回転軸2への取り付けは、通常、遊動環8を含む静止側密封要素及び回転側密封要素を構成する多数の構成部材を個別に一定の手順で組み込むことによって行われる。そして、これら構成部材相互の位置関係は、当該メカニカルシールの機能を決定する重要な要素であり、各構成部材の組み込みは、かかる位置関係が適正となるように行う必要がある。したがって、これらの多くの構成部材を適正な位置関係を維持した状態で回転機器に組み込む作業は極めて困難であり、組み込み不良により所定のシール機能が発揮されない場合も稀ではない。同様に、回転機器からの取り外し,再組み込みを必要とするメンテナンス作業も面倒且つ困難である。
しかし、上記した如きカートリッジ形の遊動環形メカニカルシールとしておくと、セットプレート9により当該メカニカルシールの使用形態と同一形態に組み立てた状態で回転機器に対する取り付け及び取り外しを行なうことができるから、未熟練者でも、回転機器への組み込み作業を適正且つ容易に行なうことができ、メンテンナンス作業も容易に行なうことができる。かかる点は、一般的なメカニカルシールの構成に更に遊動環8を付加した複雑な構成をなす遊動環形メカニカルシールにおいて、実用上、極めて大きなメリットとなる。
以上のように構成された遊動環形メカニカルシールでは、回転環6が第一及び第二Oリング17,18を介して軸線方向及び径方向への変位を許容された状態で回転軸2(スリーブ5)に保持されているから、流体圧力(被密封流体領域Aの流体圧力)が極めて高く且つ大きな圧力変動を生じる場合にも、回転環6と遊動環8との接触面であるシール面6a,83aの平行性を確保して、良好なシール機能を発揮することができる。
すなわち、流体圧力が極めて高い場合、回転環6は流体圧力によって径方向及び/又は軸線方向に変形(歪)を生じて、シール面6aが不適正な形態となる虞れがあるが、かかる変形は第一Oリング17及び/又は第二Oリング18の弾性によって吸収されることになり、回転環6のシール面6aの変形により遊動環8のシール面83aとの平行性が損なわれるようなことがない。ところで、回転環6に作用する大きな軸線方向力(回転環6に直接に作用する流体圧力並びに静止環4の背圧及びスプリング圧による)によって、回転環6と第一Oリング17との接触圧が高く両者6,17間の摩擦力が大きくなるため、第二Oリング18による回転環6の径方向変形の吸収緩和作用が円滑に行なわれず、シール面6a,83aの平行性が損なわれる虞れがあるが、このような虞れは、第一Oリング17を低摩擦性材(この例では、PTFE)で構成しておくことによって全く生じない。すなわち、第一Oリング17がPTFEの如き低摩擦性材で構成されているため、回転環6は、これに径方向力が作用した場合、第一Oリング17との間で滑りを生じて容易に径方向へと変位,変形し、その変位,変形は第二Oリング18の弾性変形によって吸収緩和されることになる。したがって、回転環6にこれを変形させるような軸線方向力及び/又は径方向力が作用したときにも、シール面6a,83aの平行性が損なわれることがない。
さらに、回転環6が、従来シールのように回転軸2に固定されておらず、第一Oリング17の弾性変形範囲で軸線方向変位が許容される状態で回転軸2に保持されていることから、流体圧力が極めて高く静止環4に作用する背圧が高い場合にも、冒頭で述べた接面荷重W,Wが、第一Oリング17の弾性変形によって吸収される分、小さくなり、従来シールのように回転環6が回転軸2固定されている場合に比して大幅に減少することになる。その結果、押圧面4a,82a間及びシール面6a,83a間の最大静止摩擦力が小さくなって、流体圧力が高く且つ大きく変動する条件下においても、冒頭で述べた如く遊動環8が傾いてシール面6a,83aが外径当たり状態(例えば図3(B)に示す状態)や内径当たり状態(例えば図4(E)に示す状態)になったりすることがなく、シール面6a,83aの平行性が維持されて良好なシール機能が発揮されることになる。
すなわち、遊動環8と静止環4及び回転環6との接触部分における最大静止摩擦力は接面荷重W,Wと静止摩擦係数との積で与えられるから、接面荷重W,Wが小さい場合には、静止環4の押圧面4aを上記した低摩擦性材膜41で構成しておくことにより押圧面4a,82間の静摩擦係数(μ´)がシール面6a,83a間の静摩擦係数(μ)より小さくなることとも相俟って、押圧面4a,82a間の第一最大静止摩擦力μ´・Wとシール面6a,83a間の第二最大静止摩擦力μ・Wとが、その間に大きな差を生じず、同等ないし近似することになる。したがって、被密封流体領域Aが昇圧状況下にある場合においては、流体圧力の上昇により、遊動環シール面83aに作用する第二摩擦力Fが第二最大静止摩擦力μ・Wに達して、シール面6a,83a間に滑りを生じたときには、これと同時に或いは僅かな時間差をもって、遊動環押圧面82aに作用する第一摩擦力Fも第一最大静止摩擦力μ´・Wに達して、押圧面4a,82a間に滑りが生じることになる。その結果、遊動環8が全く傾かないか、傾いたとしても直ちに復元されることになり、シール面6a,83aが図3(B)に示す如き内径当たり状態とならない。すなわち、遊動環1と静止環4及び回転環6との相対位置が、例えば図3(A)に示す全面当たり状態から同図(C)に示す全面当たり状態へと変化するにすぎず、シール面6a,83aの平行性が維持されることになる。また、被密封流体領域Aが降圧状況下にある場合においても、同様に、流体圧力の下降により、遊動環シール面83aに作用する第二摩擦力fが第二最大静止摩擦力−μ・Wに達して、シール面6a,83a間に滑りを生じたときには、これと同時に或いは僅かな時間差をもって、遊動環押圧面82aに作用する第一摩擦力fも第一最大静止摩擦力−μ´・Wに達して、押圧面4a,82a間に滑りが生じることになる。したがって、上記した昇圧状況下におけると同様に、遊動環8が全く傾かないか、傾いたとしても直ちに復元されることになり、シール面6a,83aが図4(E)に示す如き外径当たり状態とならず、シール面6a,83aの平行性が維持されることになる。すなわち、遊動環1と静止環4及び回転1との相対位置が、例えば図4(D)に示す全面当たり状態から同図(F)に示す全面当たり状態へと変位するにすぎない。換言すれば、圧力変動によって生じる第一摩擦力F,fについてのスティックスリップサイクル(ピッチ)と第二摩擦力F,fについてのスティックスリップサイクル(ピッチ)とが同等ないし近似することによって、遊動環8と静止環4及び回転環6との接触抵抗バランスが保持されることになり、これによってシール面6a,83aの平行性が圧力変動に拘わらず維持されて、シール面の異常摩耗や異常漏れが防止されるのである。したがって、上記した如く回転環6を第一Oリング17を介して軸線方向に弾性変位可能な状態に保持した遊動環形メカニカルシールによれば、流体圧力が極めて高く且つ圧力変動が大きい条件下においても、良好なシール機能が発揮されることになる。
さらに、静止環4の押圧面4aを低摩擦性材膜41で構成すると共に、その表面をRz≦2μmとなるようにラッピングしているから、押圧面4a,82a間における静止摩擦係数μ´を、シール面6a,83a間における静止摩擦係数μに対する比率μ´/μが接面荷重の逆比W/Wと同等ないしは近似するように、可及的に小さくすることができる。その結果、上記した遊動環8と静止環4及び回転環6との接触抵抗バランス保持によるシール面6a,83aの平行性維持が更に効果的に行なわれて、シール面6a,83aの異常摩耗や異常漏れをより確実に防止することができる。
また、回転環6が取り付けられる回転軸2又はスリーブ5の加工精度や組立精度が低いことや回転機器側からの熱によりスリーブ5が変形すること等により、回転環姿勢が不適正となって、シール面6a,83aの平行性が損なわれることがある。しかし、回転環6を上記した如くOリング17,18で軸線方向及び径方向に変位可能に保持させておくと、回転環6の姿勢が遊動環8による押圧力によって是正されることなり、上記した精度不良等によってシール面6a,83aの平行性が損なわれるようなことがない。
なお、本発明の構成は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に変更,改良することができる。例えば、回転環6を保持するOリング17,18の数及び配置も、当該メカニカルシールの構成及びシール条件に応じて適宜に変更することができる。また、回転環6との間で滑りを生じるOリング(第一Oリング17)又は低摩擦性材膜41の構成材も、PTFEに限定されず、各環4,6,8の構成材との関係を考慮して、適宜に選定することができる。例えば、低摩擦性材膜41の構成材として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用することができる。
本考案に係る遊動環形メカニカルシールの一例を示した縦断側面図である。 図1の要部を拡大して示す詳細図である。 昇圧時における遊動環と回転環及び静止環との相対変位を示す説明図である。 降圧時における遊動環と回転環及び静止環との相対変位を示す説明図である。 遊動環の回転環及び静止環との接触面に作用する接面荷重及び摩擦力と流体圧力との関係を示すグラフである。
符号の説明
1…軸封部ケーシング、2…回転軸、3…シールケース、4…静止環、4a,82a…押圧面(静止環と遊動環との接触面)、5…スリーブ、6…回転環、6a,83a…シール面(回転環と遊動環との接触面)、7…スプリング、8…遊動環、9…セットプレート、10…Oリング、17…第一Oリング(回転環の径方向変位に対して滑りを生じるOリング)、18…第二Oリング(二次シールとして機能するOリング)、41…低摩擦性材膜、A…被密封流体領域、B…非密封流体領域(大気領域)。

Claims (7)

  1. 回転軸(2)に設けられた回転環(6)とシールケース(3)に軸線方向移動可能に且つ回転環方向に附勢された状態で設けられた静止環(4)との間に、遊動環(8)を静止環(4)に対する相対回転が阻止された状態で挟圧保持させてなる遊動環形メカニカルシールにおいて、
    回転環(6)が、第一Oリング(17)を介して当該Oリング(17)の弾性変形範囲において軸線方向に変位可能な状態で且つ第二Oリング(18)を介して当該Oリング(18)の弾性範囲において径方向に変位可能な状態で回転軸(2)に保持されており、
    第一Oリング(17)は、回転環(6)に作用する軸線方向の押圧力を吸収緩和するクッション材として機能するものであって回転環(6)の径方向変位に対してはこれを妨げないように回転環(6)との間で滑りを生じる低摩擦性弾性材で構成されたものであり、
    第二Oリング(18)は、回転環(6)の径方向変位に拘わらずこれと回転軸(2)との間をシールする二次シールとして機能するものであることを特徴とする遊動環形メカニカルシール。
  2. 前記滑りを生じる第一Oリング(17)がポリテトラフルオロエチレン製のものであることを特徴とする、請求項1に記載する遊動環形メカニカルシール。
  3. 遊動環(8)と静止環(4)との接触面(4a,82a)の少なくとも一方に低摩擦性材膜(41)が被覆形成されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する遊動環形メカニカルシール。
  4. 低摩擦性材膜(41)がポリテトラフルオロエチレン膜であることを特徴とする、請求項3に記載する遊動環形メカニカルシール。
  5. 低摩擦性材膜(41)の表面粗さが十点平均高さ2μm以下であることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載する遊動環形メカニカルシール。
  6. 低摩擦性材膜(41)の膜厚が10〜20μmであることを特徴とする、請求項3、請求項4又は請求項5に記載する遊動環形メカニカルシール。
  7. シールケース(3)及びこれに取り付けられる部材群からなる静止側密封要素と回転軸(2)に挿通固定されるスリーブ(5)及びこれに取り付けられる部材群からなる回転側密封要素とを、静止環(4)と回転環(6)との間に遊動環(8)を挟圧保持させた状態で、着脱自在なセットプレート(9)により一体連結しうるように構成したカートリッジ形のメカニカルールであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載する遊動環形メカニカルシール。
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