JP4136874B2 - ポリケトン多孔体 - Google Patents

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Description

本発明は、多数の微細な孔を有するポリケトン成形体に関する。さらに詳しくは、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンにより構成され、平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有することを特徴とするポリケトン多孔体に関する。
一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物が実質完全に交互共重合したポリケトンは熱特性、力学特性に優れ、繊維やフィルム、樹脂等への展開が検討されている。この中で、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されている如く、ポリケトンの高力学特性、高融点、高耐薬品性等の特性を活かして分離膜や透過膜等の用途を目指した多孔体への展開も検討されている。
これまでのポリケトンにおける多孔体の検討は、エチレンと一酸化炭素が交互共重合したポリケトン(下記の繰り返し単位を有するポリ(1−オキソトリメチレン)、以下ECOと略する)やエチレンとプロピレン、一酸化炭素が交互に共重合したポリケトン(以下EPCOと略する)、ECOの一部がカルボン酸基やスルホン酸基等に置換されたポリケトン(以下アニオン基含有ポリケトンと略する)、エチレンと一酸化炭素がランダムに共重合したポリケトン(以下ランダム共重合ポリケトンと略する)等のポリケトンを用いて行われてきた。
Figure 0004136874
ECOから製造される多孔体は、高結晶性で高力学物性、高融点、耐薬品性に優れる等の特性を有しているが、ECOは一旦溶融すると熱架橋反応が起こるため、工業的に多孔体を製造するには溶融成形ができず、湿式成形法しか適用出来なかった。
また、EPCOは、融点を220〜230℃まで下げて溶融成形が出来るポリマーであるが、それでも長時間の加熱によりECO同様に熱架橋反応が起こるため、工業的な多孔体の製造に溶融成形法を適用することは出来なかった。
また、アニオン基含有ポリケトンにおいても、同様に熱架橋反応によって溶融成形法の適用が困難であった。
一方、ランダム共重合ポリケトンは、200℃未満の低い融点を有し、溶融成形法は適用可能であるものの、ランダム共重合であるために結晶性が極めて低く、ECOと比較すると耐熱性や耐薬品性が十分とはいえなかった。
特開平02−004431号公報 特開2000−198866号公報 特開2002−348401号公報
本発明が解決しようとする課題は、溶融時の熱架橋反応が起こりにくく、溶融成形が可能で熱変性の少ないポリケトン多孔体を提供することである。更には、内部に微細な孔を多数有しかつ力学特性、耐熱性、耐薬品性に優れ、フィルムまたは中空糸として水性液体や有機液体、血液、気体等の分離膜として効果的なポリケトン多孔体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行い、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素に珪素化合物を共重合させたポリケトンは、耐熱性が大幅に向上し、上記課題を解決できる可能性があることを見出し、更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
すなわち本発明は、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンにより構成され、平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有することを特徴とするポリケトン多孔体である。
本発明によれば、力学特性、熱安定性、とりわけ長期耐熱特性に優れるポリケトン多孔体を提供することが出来る。更には、溶融成形が可能となり工業的に容易にポリケトン多孔体を製造することが出来る。
本発明のポリケトン多孔体の具体的な用途としては、汚水処理、含油廃水処理、工業用純水の製造、果汁の処理等の水溶液濾過膜として、また、有機液体中の不純物除去、有機液体の回収等の有機溶液濾過膜として、またイオン性液体の透過膜として、さらには血液や体液の透析膜として非常に有用である。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明においてポリケトン多孔体とは、ポリケトンより構成され、内部及び/又は表面に微細な空隙が多数存在する繊維、フィルム、棒、ブロック、球、筒、鍋状物、布、織編物、シート、多層積層物等の加工物を意味する。
本発明のポリケトン多孔体に用いるポリケトンは、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られる共重合体である。エチレン性不飽和化合物とは、二重結合を有する化合物であり、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物由来の繰り返し単位は、単独又は複数種の混合物であってもよい。これらの中で得られるポリケトンの力学物性、耐熱性が優れる点でエチレンが好ましい。
珪素化合物としては、例えば、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、トリエトキシビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルペンタメチルジリロキサン、ビニルフェニルメチルシラン、トリメチルシロキシビニルジメチルカルビノール、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシラン、アリルジメチルシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエチルシラノール、t−ブチルジメチルシラノール、トリフェニルシラノール、トリス(トリメチルシロキシ)シラノール、ポリシロキサン等々、ビニル基や水酸基、カルボキシル基、メタクリロキシ基、アリール基等の構造を含む種種の珪素化合物を使用することができる。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリマーは、上記で説明したエチレン性不飽和化合物、一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンであるが、ここで反応するとは、各モノマー同士が共有結合で結びつくことを意味し、具体的には共重合、高分子反応等で反応したポリマーである。
本発明のポリケトン多孔体を構成するポリケトンにおいて、珪素化合物の含有量は特に制限は無いが、珪素化合物/エチレン性不飽和化合物のモル比が、0.00001〜10であることが好ましい。本発明の効果は、極少量の珪素化合物が共重合することで効果が現れるが、0.00001未満では、充分な効果が得られない。また、珪素化合物があまり多く共重合すると、ポリケトンが本来有する機械的、熱的特性を発揮できないため、10以下であることが好ましい。更に好ましいのは、0.0001〜5であり、最も好ましいのは0.0005〜2である。
珪素元素の含量としては、特に制限はないが、〔珪素元素重量/ポリケトン重量〕×100の重量%が、0.001〜50重量%であることが好ましく、より好ましいのは0.001〜20重量%、更に好ましいのは0.001〜5重量%、最も好ましいのは、0.001〜1重量%である。
最も好ましい上記ポリケトンの構造としては、繰り返し単位として1−オキソトリメチレンを主たる構造とし、残りの繰り返し単位が一酸化炭素と珪素化合物とが反応した繰り返し単位からなるポリケトンである。一酸化炭素と珪素化合物とが反応した繰り返し単位としては、以下の化学式2で示される構造が本発明の目的を達成する上で好ましい。
Figure 0004136874
(ここで、R1、R2は、水素原子または炭素数1〜30の有機基を示し、同じであっても異なっていてもよい。A、Bは、いずれか一方もしくは両方が、以下の化学式3で示される珪素元素含有基である。AとBは同じであっても異なってもよい。
−SiR3 mnp 化学式3
但し式中、R3は水素原子または炭素数1〜30の有機基、Xは反応性基を有する炭素数1〜30の有機基、Yは以下の化学式4で示される珪素元素含有基を示す。また、R3、X、Yはそれぞれが複数個存在する時、同一構造でも異なってもかまわない。m、n、pは0〜3でかつm+n+p=3である。
Figure 0004136874
但し式中、D1、D2、D3、D4、D5は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜30の有機基、あるいは−(Si−O)q −結合を有する有機基である。また、qは0以上の整数である。)
1、R2、R3は、水素原子または炭素数1〜30の有機基であり、具体的には、水素原子、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、ブチル、シクロヘキシル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、等の炭化水素基およびアルキルアルコキシ等のアルコキシ炭化水素基、を表す。これらの構造は、分岐していても直鎖状であっても良い。得られるポリケトンポリマーの熱安定性の観点からは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ構造が好ましい。
X基としては、例えば、メチルアクリレート基、アクリレート基、エポキシ基(グリシジル基)、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、ビニル基、アセチレン基、カルボニル基、ジカルボニル基、酸無水物基、アルデヒド基、イソシアネート基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヨード基、ホルムアミド基、アセトアミド基、シアノ基、アミド基、イミド基、水酸基、オキサゾリン基、等の反応性基およびこれらの基が炭化水素基に置換した置換アルキル、置換アルケニル基等の反応性基およびこれらの基が炭化水素基に置換した置換アルキル、置換アルケニル基等が挙げられる。
1、D2、D3、D4、D5としては、水素原子または炭素数1〜30の有機基、あるいは−Si−O−結合を有する有機基、R1、R2、R3で説明した元素、基の他に、−Si−O−結合を有する有機基であってもよく、−Si−O−結合が連続的に結合していてもよく、珪素原子の残りの2つの結合は、水素原子や上記の炭素数1〜30の有機基が結合することが好ましい。また、末端の酸素原子にも水素原子や上記の炭素数1〜30の有機基が結合していることが好ましい。 具体的な化学式3で示される珪素元素含有基としては、例えば、トリメチルシラン基、トリメトキシシラン基、トリエチルシラン基、トリフルオロメチルジメチルシラン基、トリエトキシシラン基、メトキシジメチルシラン基、テトラメチルジシロキサン基、ペンタメチルジリロキサン基、フェニルメチルシラン基、トリメチルシロキシジメチルカルビノール基、メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン基、ビニルテトラメチルジシロキサン基、ビニルテトラメチルジシラン基、アリルジメチルシラン基、アリルジメトキシシラン基、アリルトリメチルシラン基、アリルトリメトキシシラン基、トリエチルシラノール基、t−ブチルジメチルシラノール基、トリフェニルシラノール基、トリス(トリメチルシロキシ)シラノール基、ポリシロキサン等々、ビニル基や水酸基、カルボキシル基、メタクリロキシ基、アリール基等の構造を含む珪素元素含有基である。
1−オキソトリメチレン単位と化学式2の繰り返し単位はどのように結合していてもよい。ランダム共重合、ブロック共重合、枝分かれ共重合であってもよい。
1−オキソトリメチレン単位は、力学特性、耐熱性、耐薬品性の観点から全繰り返し単位の20〜99.9モル%、より好ましくは50〜99.5モル%、更に好ましくは90〜99モル%である。
本発明のポリケトン多孔体を構成するポリケトンの極限粘度は、特に制限はないが、力学特性、成形性の観点から、0.1〜20dl/gであることが好ましい。溶融成形性に用いる場合には、0.4〜2.5dl/gであることが特に好ましく、乾式、湿式成形に用いる場合には、2.5〜10dl/gが特に好ましい。
本発明のポリケトン多孔体は平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有するものである。なお、本発明において微多孔の体積割合とは、ポリケトン多孔体の全体積に占める微多孔部の体積の割合である。ただし、多孔体が繊維であって、内部に繊維軸方向に貫通した空隙を有する中空糸の場合には、中空部を除いた体積に占める微多孔部の体積の割合を微多孔の体積割合とする。多孔体の孔の平均孔径および孔の体積分率は本発明の実施例記載の方法により測定される。
平均孔径が0.001μm未満の場合、透過性能が著しく低下し分離膜としての機能が不十分となる。また、平均孔径が10μmを超える場合、支持体であるポリケトンの力学物性が低下し脆弱な材料となってしまう。平均孔径は用途により要求される大きさが異なるため、一概に規定することは出来ないが、水や有機溶液、血液等の分離膜用途では0.001〜10μm、好ましくは0.005〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmであることが望ましい。
ポリケトン多孔体中の微細孔の体積割合は多ければ多いほど分離膜としては時間あたりの分離速度が速くなり好ましいが、微多孔の占める体積が90%を超えるとポリケトン多孔体の力学物性が不十分となる。また、体積割合が少なすぎると、分離膜としての液の透過性が不十分となる。このため、微多孔の体積割合は、5〜90vol%であることが必要であり、好ましくは10〜70vol%、より好ましくは15〜60vol%、さらに好ましくは20〜50vol%であることが望ましい。
また、多孔体の孔はそれぞれ独立した孔であっても、隣接する孔同士が連結したものであってもよい。強度の観点からは独立孔であることが望ましいが、分離膜として用いる場合には分離効率の観点から隣接する孔同士が連結したものが望ましい。
本発明のポリケトン多孔体はどのような形態であってもよいが、一般的には中空糸状あるいはフィルム状として用いられる。
中空糸膜として用いる場合、内部に長手方向に貫通した空隙(中空部)の割合は特に制限はないが、少なすぎると膜の分離効率が低下し、また多すぎると中空糸の力学特性が低下するため、好ましくは10〜70vol%、より好ましくは20〜60vol%であることが望ましい。さらに、力学特性、膜の分離性能の観点から、繊維の全体積に対する微多孔部の体積と中空部の体積の和が、好ましくは15〜80vol%、より好ましくは30〜75vol%であることが望ましい。本発明において中空部の割合は、繊維の全断面積に対する中空部の面積の100分率で表され、電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡により得られる中空糸の断面写真から、本発明実施例記載の方法で求めることが出来る。繊維内部にある中空部の数は特に制限はなく1本であってもまた複数本であってもよい。
ポリケトン多孔体繊維の外径は特に制限はないが、1〜10000μmの範囲が一般的であり、中空糸膜として用いる場合は100〜5000μmの範囲が好適に用いられる。繊維は1本で用いてもまたマルチフィラメントとして用いてもよく、長繊維あるいは短繊維として用いてもよい。繊維の断面は円、楕円、三角、星形、アルファベット型等の従来公知の形状を適用することが出来る。
また、内部に中空部を有さない微多孔繊維として用いてもよく、例えば、微多孔の平均孔径を0.1μm以上とすると可視光遮蔽繊維として、また、微多孔内に例えば芳香剤、抗菌剤、難燃剤、脱臭剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、紫外線反射剤、酸化防止剤、艶消し剤、蓄熱剤、顔料、高分子化合物等の各種化合物を保持せしめて機能性繊維材料としてもよい。
ポリケトン多孔体をフィルムとして用いる場合、フィルムの厚みは特に制限はなく用途に応じて任意の厚みと出来るが、通常0.1〜1000μmである。分離膜として用いる場合、膜の厚みの均一性は非常に重要であり、任意の箇所100点で計測した厚みの、最小値/最大値が0.8以上であることが望ましい。
ポリケトン多孔体に望まれる特性としては、引っ張り強度、伸度、融点が挙げられる。引っ張り強度は高ければ高いほど支持体であるポリケトンの量を減らせて微多孔や中空部の割合を増やすことが可能となり、より効率的な分離が出来るようになる。このため、引っ張り強度としては好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上、特に好ましくは2MPa以上であることが望ましい。
また、伸度が高ければ高いほど加工時や製品とした際の靱性が高くなり、加工性や製品の取り扱い性が良くなる。このため、伸度としては、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上である。
また、融点は高いほど高温環境での使用が可能となり、かつポリケトン多孔体の耐熱性も向上することから、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上である。
さらに、耐熱性、耐薬品性等の観点から、ポリケトン多孔体中に含まれる亜鉛やカルシウム、パラジウム等の金属量は少ないことが望ましく、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下であることが望ましい。
次に、本発明のポリケトン多孔体の製造方法について説明する。
ポリケトンの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、オートクレーブ等の反応容器の中で、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素、珪素化合物を反応させる方法が好ましい。
反応させるに際しては溶剤を用いてもよい。プロトン性の溶剤としては、水、炭素数1〜10のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、m−クレゾール等のフェノール類を挙げることができる。非プロトン性溶剤としては、炭素数3〜20の炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル等のエステル類、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。反応活性の点では、プロトン性の溶剤が好ましく、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。得られるポリケトンの分子量が高くできると言う点からは、非プロトン性の溶剤が好ましく、ヘキサン、アセトンが上げられる。珪素化合物を効率的に反応する点からは、トルエン、ヘキサン、オクタンなどが好ましい。これらの量に制限はないが、珪素化合物と均一に混ざり合う量が好ましい。また、気相反応のように溶剤を用いなくてもよい。プロトン性及び非プロトン性の溶剤は単独で用いてもよいが、これらの化合物の中から選ばれた2種以上の溶剤を同時に用いてもよい。
本発明に使用するポリケトンを製造するための原料としては、一酸化炭素と種々のエチレン性不飽和化合物を使用可能である。例えば、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の反応容器内での割合は、(一酸化炭素/エチレン性不飽和化合物)のモル比が10/1〜1/10であることが好ましい。更に好ましいのは5/1〜1/5である。一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の添加方法には制限はなく、予め、両者を混合してから添加してもよく、それぞれ別の供給ラインから添加してもよい。また、原料として用いる珪素化合物も反応過程の任意の段階で仕込むことができる。
ポリケトンは上記のような条件において、触媒の存在下で反応させてもかまわない。ここで触媒とは、有機金属錯体触媒もしくはラジカル開始剤である。
なお、有機金属錯体触媒とは、周期律表の(a)第9族、第10族または第11族遷移金属化合物、(b)第15族の原子を有する配位子からなるものである。更に、かかる(a)第9族、第10族または第11族遷移金属化合物、(b)第15族の原子を有する配位子に、第3成分として(c)酸の陰イオンを加えてもよい。
(a)成分中の第9族遷移金属化合物の例としては、コバルトまたはルテニウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては酢酸コバルト、コバルトアセチルアセテート、酢酸ルテニウム、トリフルオロ酢酸ルテニウム、ルテニウムアセチルアセテート、トリフルオロメタンスルホン酸ルテニウム等を挙げることができる。また、第10族遷移金属化合物の例としては、ニッケルまたはパラジウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、塩化パラジウム、ビス(N,N−ジエチルカーバメート)ビス(ジエチルアミノ)パラジウム、硫酸パラジウム等を挙げることができる。
また、第11族遷移金属化合物の例としては、銅または銀の錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、銀アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。これらの中で安価で経済的に好ましい遷移金属化合物(a)はニッケルおよび銅化合物であり、ポリケトンの収量および分子量の面から好ましい遷移金属化合物(a)はパラジウム化合物である。これらは単独又は数種類を混合して用いることもできる。
また、配位子とは、錯体中で中心原子に直接結合している原子を含む原子団のことである。本発明においては、周期律表第15族の原子を有する配位子を用いることが必要である。その例として、ピリジン等の窒素の一座配位子;トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン等のリン一座配位子;トリフェニルアルシン等の砒素一座配位子;トリフェニルアンチモニイ等のアンチモン一座配位子;2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ピコリン、2,2’−ビキノリン等の窒素ニ座配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス{ジ(2−メチル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−イソプロピル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス{(ジフェニルホスフィノ)メチル}ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、2,2−ジメチル−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン等のリン二座配位子等を挙げることができる。これらは単独で用いても、複数種を同時に混合して用いても構わない。
これらの中で好ましい配位子は、リン二座配位子である。特に珪素化合物との反応性及びポリケトンの収量の面から好ましいリンニ座配位子は1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、及び1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンであり、ポリケトンの分子量という面からは、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、及び2,2−ジメチル−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパンである。有機溶剤を必要とせず安全であるという面からは水溶性の1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、及び1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンが好ましい。合成が容易で大量に入手が可能であり、経済面において好ましいものは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン及び1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンである。
触媒として上記(a)(b)に加えて(c)酸の陰イオンを加えてもよい。その例としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のpKaが4以下の有機酸の陰イオン;過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸、テトロフルオロ硼酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロ硅酸等のpKaが4以下の無機酸の陰イオン;トリスペンタフルオロフェニルボラン、トリスフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の硼素化合物の陰イオンを挙げることができる。これらは単独又は複数種を混合しても使用できる。これらの中で好ましい酸の陰イオンは、ポリマーの収量と分子量の両方の観点から、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。
触媒として用いる遷移金属化合物(a)の使用量は、選ばれるエチレン性不飽和化合物や珪素化合物の種類や他の重合条件によってその好適な値が異なるため、一概にその範囲を定めることはできないが、好ましくは、反応帯域の容量1リットル当り0.01〜10000マイクロモル、より好ましくは0.1〜1000マイクロモルである。反応帯域の容量とは、反応器の液相の容量をいう。
配位子(b)の使用量も制限されるものではないが、遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは1〜5モルである。
酸の陰イオン(c)の使用量は、パラジウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1000モル、より好ましくは1〜100モル、最も好ましくは3〜10である。
触媒は、遷移金属化合物、周期律表第15族元素の原子を有する配位子及び、好ましくは酸の陰イオンを混合することによって生成する。触媒組成物の使用法についての制限はないが、予め、各成分の混合物からなる触媒組成物を調製してから反応容器内に添加することが好ましい。触媒組成物を調製する場合には、先ず遷移金属化合物及び配位子を混合し、次いで酸を混合することが好ましい。触媒組成物の調製に用いる溶媒は、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の非プロトン性有機溶媒であってもよい。また、上記(a)、(b)、(c)3成分からなる触媒に、ベンゾキノン、ナフトキノン等の酸化剤を添加してもよい。これらキノン類の添加量は、遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは1〜1000モル、より好ましくは10〜200モルである。キノン類の添加は、触媒組成物に添加してから反応容器に添加する方法、重合溶剤に添加する方法のいずれであってもよく、必要に応じて、反応中に反応容器内に連続的に添加してもよい。
一方、ラジカル開始剤を触媒とする場合、ペルオキシジカーボネート系、ペルオキシエステル系、ジアシルペルオキシド系または、アゾ系開始剤を用いることができる。ここで、それぞれの系には、一分子中に−O−O−結合あるいは、−N=N−結合を一個含むモノラジカル型開始剤、一分子中に−O−O−結合あるいは、−N=N−結合を二個含むバイラジカル型開始剤、一分子中に−O−O−結合あるいは、−N=N−結合を三個以上含むポリマー型開始剤が含まれる。また、モノラジカル型開始剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカ−ボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシネオヘキサネート、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アオゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4’−ジメチルバレロニトリル)が、バイラジカル型開始剤としては、例えば、(α,α’−ビス−ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチルー2,5−ビス(2−エチルヘキシルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ヘキサンを用いることができる。ポリマー型開始剤としては、例えば、ポリペルオキシジカーボネート等を用いることができる。
ラジカル開始剤を触媒として用いるとき、希釈剤として、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ベンゼン等の炭化水素、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル等の炭酸エステル類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、1、3−ジオキソラン等の環状エーテル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類の1種以上を使用することができる。これらの中で好ましい重合希釈剤は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、1,4−ジオキサンである。
また、本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンにおいて、珪素元素の含量を増やすことが可能である。一般に知られるシリコーンの製法と同様に、既に合成されたポリケトンと、オルガノハロゲンシラン、または、オルガノアルコキシシランの加水分解反応により、オルガノポリシロキサン構造をポリケトンに導入することで、珪素元素の含量を増やすことが出来る。
加水分解反応に用いるオルガノハロゲンシランとしては、例えば、トリメチルモノクロルシラン、トリメチルモノブロモシラン、トリエチルモノクロルシラン、トリプロピルモノクロルシラン等のトリアルキルモノハロゲンシラン化合物や、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロモシラン、ジエチルジクロルシラン等のジアルキルジハロゲンシラン化合物や、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロルシラン等のアルキルトリハロゲンシラン化合物が挙げられる。
オルガノアルコキシシランとしては、例えば、トリメチルモノヒドロキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリプロピルモノメトキシシラン等のトリアルキルモノアルコキシシラン化合物や、ジメチルジヒドロキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン化合物や、メトルトリヒドロキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
この反応は、常温で空気中の水分で進行するが、少量の水や酸やアルカリを加えてもかまわない。また、加熱してもよく、ジ−n−ラウリルジブチルスズ等のスズ触媒を用いてもよい。
反応温度は50〜300℃であることが望ましい。重合温度が50℃未満では、珪素化合物との反応が難しくなり、また、反応温度が300℃を超えると、反応活性が高く、生産性は高くなるが、得られるポリケトンの分子量が極端に低くなる等、機械的・熱的特性を発揮することができない。更に好ましくは70〜200℃である。
反応圧力は1〜300MPaであることが好ましい。反応圧力が1MPa未満では、珪素化合物との反応が難しくなり、また、反応圧力が300MPaを超えると反応活性は高くなるが、設備が重大となり生産性が低下する。更に好ましい範囲は、3〜50MPa、特に好ましくは5〜20MPaである。
反応時間は1〜24時間が好ましく、より好ましくは1.5〜10時間、最も好ましくは2〜6時間である。反応時間が1時間未満では、残触媒量が多くなり、特別な触媒除去工程が必要となる。一方、反応時間が24時間を越えると、得られるポリケトンの分子量分散度が広がり、優れた機械的・熱的特性を発揮できなくなる場合がある。
このようにして得られたポリケトンを成形して多孔体を製造する。多孔体への成形法は、好ましくは溶融成形であるが、もちろん溶融成形以外の方法(例えば、湿式成形法、乾式成形法)で製造してもよい。以下、溶融成形法、湿式成形法の順に、本発明のポリケトン多孔体の製造法を説明する。
(1) 溶融成形法
(A)微粒子抽出法
ポリケトンに、平均粒径が0.001〜10μmの微粒子を5〜70vol%の割合となるように添加する。微粒子は固体であっても、液体(エマルジョン)であってもよい。微粒子としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、硫酸バリウム、酸化亜鉛等の無機微粒子、スチレン系ラテックス、アクリル系ラテックス等の有機微粒子が挙げられる。ポリケトンと微粒子の混合は、溶融前あるいは溶融時のどの段階で混合してもよい。また、予めポリケトンと微粒子を混練したマスターバッチとポリケトンとを混合してもよい。
微粒子を含有したポリケトンを、ポリケトンの融点+10℃〜融点+50℃で溶融し、紡糸口金またはフィルムダイから吐出し、空気中あるいは液体中で冷却した後に、繊維状またはフィルム状にして曳きとる。紡糸口金およびダイの形状は特に限定されず、従来公知のものがそのまま適用出来る。また、中空糸の紡口についても、二重管オリフィスやC型オリフィスなど従来公知のものがそのまま適用出来る。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンを、また、内側の円状オリフィスからは、気体を吐出することが好ましい。また、中空部の形状維持の点からは内側に流す気体には0.01MPa以上の圧力をかけて吐出することが好ましい。
また、これらの中空糸、フィルムは、必要に応じて熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は定長処理の場合は、100〜融点−10℃が好ましい。また、力学特性の観点からは1.2〜10倍の熱延伸を行うことが好ましく、その場合熱延伸温度はポリケトンの融点−50℃〜ポリケトンの融点−10℃が好ましい。
曳きとられた中空糸、フィルムは、巻き取らずにそのまま、あるいは任意の形態に加工した後に、微粒子の溶剤である液体で処理することで、内部の微粒子を抽出除去する。例えば、シリカ微粒子を添加した場合には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性の液で処理する。また、抽出処理後は、必要に応じて中和処理や水洗処理を行って、多孔体内部に残存する抽出液を洗浄除去することが好ましい。
このようにして得られた多孔体は、そのまま、あるいは一旦乾燥を行う等の処理を行い、成形体の材料として用いることが出来る。
(B)延伸開孔法
ポリケトンを融点+10℃〜融点+50℃で溶融し、紡糸口金またはフィルムダイから吐出し、空気中あるいは液体中で冷却した後に、繊維状またはフィルム状にして曳きとる。ポリケトンには必要に応じて、界面剥離剤として、ポリスチレンやポリプロピレン、酸化チタン等の微粒子を0.01〜10wt%含有せしめていてもよい。紡糸口金およびダイの形状は特に限定されず、従来公知のものがそのまま適用出来る。また、中空糸の紡口についても、二重管オリフィスやC型オリフィスなど従来公知のものがそのまま適用出来る。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンを、また、内側の円状オリフィスからは、気体を吐出することが好ましい。また、中空部の形状維持の点からは内側に流す気体には0.01MPa以上の圧力をかけて吐出することが好ましい。また、曳きとり速度/吐出速度の比で表されるドラフトは低いほど高倍率の延伸が可能となるため、好ましくは1〜100倍であり、5〜50倍がより望ましい。
曳きとったフィルムあるいは糸を、そのまま、あるいは一旦巻き取った後に少なくとも3倍の高倍率延伸を行うことで、フィルムあるいは糸の内部に微細な孔を発生させる。熱延伸は、少なくとも1段で3倍以上の延伸を行うことが必要であり、好ましくは5倍以上、さらには6倍以上が望ましい。熱延伸の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは80〜180℃である。
このようにして得られた多孔体は、そのまま成形体の材料として用いることが出来る。
(2)濃厚金属塩溶液を溶媒とする湿式成形法
ポリケトンを少なくともハロゲン化亜鉛を含有する溶液に溶解してドープとする。溶剤はハロゲン化亜鉛(例:塩化亜鉛)単独あるいはハロゲン化亜鉛とその他の塩との複合塩の溶液が用いられる。その他の塩としては、ハロゲン化アルカリ金属塩(例:塩化ナトリウム)、ハロゲン化アルカリ土類金属塩(例:塩化カルシウム)等が挙げられる。ポリケトンをこれら溶剤に溶解し、ポリケトンドープが得られる。ドープ中のポリマー濃度を高くすると多孔体の支持体であるポリケトンが密で孔は微細となり孔の体積割合を小さくすることが出来る。一方、ドープ中のポリマー濃度が低いと支持体であるポリケトンは疎で孔の体積割合を大きくすることが出来る。ポリマー濃度が高すぎると溶剤への均一な溶解が困難となり、ポリマー濃度が低すぎるとポリケトン支持体が不連続となり成形体の強度が著しく低くなるため、ドープ中のポリマー濃度としては1〜75重量%が好ましく、より好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%とすることが望ましい。
このドープを紡糸口金もしくはフィルムダイから吐出し、凝固浴中にてドープを繊維状もしくはフィルム状に凝固させる。吐出時のドープ温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃、最も好ましくは70〜100℃とすることが望ましい。
紡糸口金およびダイの形状は特に限定されず、従来公知のものがそのまま適用出来る。また、中空糸の紡口についても、二重管オリフィスやC型オリフィスなど従来公知のものがそのまま適用出来る。二重管オリフィスを用いる場合、外側の輪状オリフィスからはポリケトンドープを、また、内側の円状オリフィスからは、気体またはポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)を吐出することが好ましく、非溶剤としては、特に凝固速度の速い水を主成分とする液体が好ましい。また、中空部の形状維持の点からは内側に流す気体および液体には0.01MPa以上の圧力をかけて吐出することが好ましい。
なお、本発明においてポリケトンに対して非溶解性の液体(非溶剤)とは、該液体に対して極限粘度6.0のポリケトンを5重量%添加して、80℃、1時間加熱攪拌した後のポリケトンの質量減少率が2%未満である液体を意味する。
一方、凝固浴の温度は、得られるポリケトン多孔体中の孔の大きさ、形状を決定する上で重要な要因であり、目的・用途に応じて温度を選定することが必要である。凝固温度が高いほど平均孔径の大きい多孔体が得られるが、高すぎるとポリケトン支持体の強度が弱くなる。凝固浴温度が低いほど、平均孔径が小さく強固な構造のポリケトン支持体を有する多孔体が得られるが、凝固速度が遅くなり設備が長大になり製造速度が遅くなる。このため、凝固浴温度としては、−50℃〜100℃、好ましくは−30〜80℃、より好ましくは−10〜60℃の範囲内から目的に応じて選定することが望ましい。
凝固浴はドープで用いた溶剤に対比して溶解性の劣る溶液が用いられる。通常、水やメタノール等のポリケトンの非溶剤や、少量のハロゲン化亜鉛を含有する水溶液または有機溶液が用いられる。凝固速度を速くし生産性よく凝固を行う場合には、水を10重量%以上含有する溶液が好ましいが、必要に応じてメタノールやアセトン、エチレングリコール等の有機溶剤を主成分とし、水を10重量%未満で、あるいは水を全く含有しない溶液を用いてもよい。
また、凝固浴中及び/又は凝固浴を出た直後に1.2〜5倍の凝固延伸を行うと、力学物性に優れるポリケトン多孔体が得られる。
凝固浴を出た内部に微多孔を有するポリケトン凝固体は、水や硫酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶液により凝固体中に残存する金属塩を洗浄除去する。洗浄に酸性溶液を用いた場合、引き続き成形体中に残存する酸を洗浄する。洗浄には水を主成分とする溶液を用いることが効率的である。必要に応じてはアルカリ性の溶液で中和洗浄をしてもよい。
洗浄後のポリケトン成形体は孔中が洗浄液で充たされたものであるが、微多孔の平均孔径および体積割合を制御する目的で孔中の洗浄液を、水や有機溶剤、孔径保持剤を含有する溶液に置換してもよい。有機溶剤としては、メタノール、アセトン、ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、孔径保持剤を含有する溶液としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等を含有する水溶液等が挙げられる。
得られた多孔体は、そのまま、あるいは乾燥後、さらには乾燥後孔径保持剤を抽出除去した後に等任意の段階で後加工に供することが出来る。
乾燥を行う場合には、多孔体内部に保持された液体の沸点以下の温度で、また孔径保持剤を含有する場合には、孔径保持剤の沸点以下の温度で乾燥する。
また、力学強度を高くする目的で、あるいは、孔径に異方性をもたせる目的で、乾燥時に張力を印可して1.2〜3倍の延伸を行ってもよい。
孔径保持剤を含有する場合には、必要に応じて、乾燥後引き続き、水洗や有機溶剤線上を行って孔径保持剤を抽出除去する。
このようにして得られたポリケトン多孔体を力学強度および耐熱性、寸法安定性を高くする目的で定長熱処理あるいは熱延伸を行ってもよい。定長熱処理および熱延伸は、1段もしくは2段以上の多段で行っても良いが、孔を閉塞しないようにポリケトン多孔体の融点−20℃以下の温度で処理することが好ましい。
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
[η]=lim(T−t)/(t・C) [dl/g]
C→0
式中のtおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)中空糸の径の測定
任意の5本の中空糸について、横断面を光学顕微鏡にて写真撮影し、繊維の外径及び中空部外径を測定し、その平均値を繊維の外径DF(μm)、中空部の外径DT(μm)とした。
(3)中空率
上記(2)で求めた繊維外径、中空部外径から、下記式により中空部の体積割合(中空率)VTを求めた。
T = DT 2/DF 2 × 100 (%)
(4)フィルムの厚み
フィルムを幅5mm、長さ100mmの短冊状に切り、任意の10片の短冊について光学顕微鏡写真を撮影し、それぞれの厚みを計測して、その平均値をフィルムの厚みDM(μm)とした。
(5)微多孔の平均孔径
孔径保持剤を使用した場合は、ポリケトン繊維およびフィルムの内部にある孔径保持剤を水で抽出除去後、孔径保持剤を使用していない場合はそのまま、液体窒素に浸漬した。液体窒素に浸漬冷却した状態で切断し、中空糸の横断面切片(図1中の3)およびフィルムの横断面切片(図2中の6)を調製した。電子顕微鏡を用いて、得られた切片の倍率500〜50000倍の写真(画像)を撮影した。撮影したネガ画像を画像解析装置(IP1000−PC:旭化成社製)を用いて、以下の方法で計測する。スキャナー(JX−330)を使用して、ネガ画像を白黒256階調(ガンマ補正値は2.2)で取り込んだ。取り込み領域は撮影倍率によって選択すした。取り込んだ256階調の画像に対し、2値化処理を行った。この際に設定したパラメーターは、(1)しきい値(=自動)、(2)シェーディング補正処理(=有り)、(3)穴埋め処理(=有り)、(4)ガンマ補正処理(=補正値γ=2.2)とした。得られた2値化画像より、計測エリアラインに接触して、一部が計測範囲から外れた孔および中空糸の中空部分を除去した後に、「粒子解析」コマンドを選択し、対象孔の円相当径を求めた。
5つの視野について同様に円相当径を求め、得られた5つの円相当径の算術平均値を平均孔径DP(μm)とした。
(6)空隙率
(6−1)試料がフィルムの場合
5mm×20mmに試料を切り取り、重量Mf(g)を計量した。さらに、(4)の方法でフィルムの厚みDf(mm)を計測した。下記式により、試料の空隙率Vnを計算した。5点のサンプルについて計算を行い、その算術平均を空隙率VP(%)とした。
n=(0.13×Df−Mf)/(0.13×Df)×100 (%)
(6−2)試料が中空糸の場合
試料を長さ10mmに切り取り、重量MF(g)を計量した。さらに、(2)の方法で中空糸の繊維径D(mm)を計測した。(3)の方法で中空率VTを求め、下記式により、試料の空隙率Vnを計算した。5点のサンプルについて計算し、その算術平均を空隙率VP(%)とした。
n=1−MF/(1.3×D2/400×(1−Vt))×100 (%)
(7)ポリケトン中の元素量
Si、Zn等の各元素について、高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて測定した。
(8)融点と結晶化度
試料5mgを窒素雰囲気下でアルミニウムパンに封入し、パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1(商品名)を用いて、200ミリリットル/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で測定を行った。観察された吸発熱曲線において、200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ点を融点とした。
また、結晶化度は、吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出した。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
(9)引っ張り強度、破断点伸度
JIS−L−1013に基づいて測定した。
繊維は、試料長200mm、フィルムは、幅5.0mm長さ100mmの短冊状で測定する。フィルムに関しては、直交する二方向について測定を行いその平均値を用いた。試料の断面積は以下の式より求められる値を用いた。
繊維の断面積 = 3.14×(DF/2)2 (μm2
フィルムの断面積 = 5.0×DM×103 (μm2
[実施例1]
酢酸パラジウム2.5ミリモル、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン3.0ミリモル、硫酸12.5ミリモル、1,4−ベンゾキノン25ミリモル及びイソプロパノール225リットルと、トリメトキシビニルシラン25リットルを、窒素置換した撹拌機付ステンレス製のオートクレーブに投入した。オートクレーブを密閉後、25℃、2.0MPaで3回窒素置換を行った。
内容物を撹拌しながら加温し、内温が100℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体を8.0MPaになるまで加えた。その後、エチレンと一酸化炭素の等モル混合気体を連続的に供給して内圧と内温を保ちながら、2時間撹拌を続けた。冷却後、オートクレーブ内気体をパージし、内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、水で3回、イソプロパノールで3回洗浄後、減圧乾燥し、重合体3.8kgを得た。
得られたポリケトンの極限粘度は1.2dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量0.05重量%、結晶化度は42%、融点は246℃であった。得られたポリケトンは、1−オキソトリメチレン単位と以下の化学式5で示す珪素原子を有する繰り返し単位がランダムに共重合したポリマーであった。
Figure 0004136874
得られたポリケトンを平均粒径0.3μmのシリカ微粒子(スノーテックスMP−3040(商品名:日産化学社製))と重量比5/1で混合し乾燥させた後に、IRGANOX(登録商標;チバスペシャリティケミカルス社)1098を0.1重量%、IRGANOX(登録商標;チバスペシャリティケミカルス社)1076を0.1重量%添加して265℃にて溶融混練した。溶融後引き続き、図3に示す紡出面9を有する円筒二重管からなるオリフィスを用い、二重管の外側の輪状オリフィス7よりドープを、二重管内側の円形オリフィス8からは窒素ガスを吐出した。図中、外外径=1.0mm、外内径=0.6mm、内外径=0.5mmである。吐出した糸は30mmのエアギャップを経た後に50℃の水浴にて冷却固化し、引き続き30m/分の速度で巻き取った。製糸状況は良好で5時間の製糸で吐出圧の上昇や吐出不良等の問題はなかった。
この糸を長さ30cmにカットして100本を束ねて、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を入れたオートクレーブ中に浸漬し、80℃、2時間の処理を行った。更に、30℃の純水で30分の水洗処理を行った後に、60℃で30分乾燥し中空糸を得た。
得られた中空糸は、外径0.83mm、平均孔径0.3μm、空隙率15vol%、中空率が32%の微多孔中空糸であり、融点は246℃、結晶化度は45%、強度は28MPa、伸度は18%であった。
[実施例2]
実施例1における、イソプロパノール225リットル、トリメトキシビニルシラン25リットルを、トリメトキシビニルシランのみ250リットルとした以外は、実施例1と同様な操作をおこなったところ、2.7kgの重合体を得た。
得られたポリケトンの極限粘度[η]は2.7dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量0.5重量%、結晶化度は35%、融点は230℃であった。また、化学構造は実施例1のポリマーと同様であった。
このポリケトンを平均粒径0.1μmのシリカ微粒子(スノーテックスMP−1040(商品名:日産化学社製))と重量比3/1で混合する以外は、実施例1と同様にして中空糸を得た。
得られた中空糸は、外径0.78mm、平均孔径0.1μm、空隙率22vol%、中空率が27%の微多孔中空糸であり、融点は233℃、結晶化度は38%、強度は19MPa、伸度は16%であった。
[実施例3]
実施例1における、トリメトキシビニルシラン25リットルを、トリメチルビニルシラン25リットルと、イソプロパノール225リットルをn−ヘキサン225リットルとした以外は、実施例1と同様な操作をおこなったところ、1.9kgの重合体を得た。
得られたポリケトンの極限粘度は1.3dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量0.08重量%、結晶化度は40%、融点は240℃であった。得られたポリケトンは、1−オキソトリメチレン単位と以下の化学式6に示す珪素原子を有する繰り返し単位がランダムに共重合したポリマーであった。
Figure 0004136874
このポリケトンを用いて実施例1と同様にして中空糸を作製した。得られた中空糸は、外径0.83mm、平均孔径0.3μm、空隙率15vol%、中空率が33%の微多孔中空糸であり、融点は243℃、結晶化度は41%、強度は30MPa、伸度は22%であった。
[実施例4]
実施例1において、アルカリ処理を行う前に中空糸を200℃で3倍の熱延伸を行う以外は同様にして中空糸を得た。得られた中空糸は、外径0.53mm、平均孔径0.23μm、空隙率13vol%、中空率が29%の微多孔中空糸であり、融点は249℃、結晶化度は48%、強度は83MPa、伸度は15%であった。
[実施例5]
実施例1で得られたポリケトンを平均粒径0.45μmのシリカ微粒子(スノーテックスMP−4540(商品名:日産化学社製))と重量比2/1で混合し、溶融吐出の口金の形状を、長さ100mm、幅0.5mmの矩形口金とする以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。このフィルムを、実施例1と同様にしてアルカリ処理、洗浄処理を行い微多孔膜とした。
得られた膜は、厚み0.45mm、平均孔径0.45μm、空隙率28vol%の微多孔膜であり、融点は245℃、結晶化度は44%、強度は13MPa、伸度は12%であった。
[実施例6]
実施例2で作製したポリケトンを、塩化亜鉛が30wt%、塩化カルシウムを35wt%含有する水溶液に、ポリマー濃度が18wt%となるように混合し、80℃、2時間溶解してドープとした。得られたドープを外外径=0.6mm、外内径=0.4mm、内外径=0.3mmの二重管オリフィスの外側の輪状オリフィスから、また内側の円形オリフィスからは水を吐出した。オリフィスより吐出されたドープは10mmのエアギャップを経て−2℃の水浴に吐出線速度10.4m/分で押し出して凝固糸条とし、引き続き1wt%の塩酸水溶液で洗浄し、40℃の温水で仕上げ洗浄を行った後に、速度2.5m/分で曳きとった。
得られた中空糸は、外径1.02mm、平均孔径0.18μm、空隙率40.2vol%、中空率が38%の微多孔中空糸であり、融点は241℃、結晶化度は45%、強度は0.7MPa、伸度は13%、亜鉛量は32ppmであった。
[実施例7]
実施例1で作製したポリケトンをポリマー濃度が23wt%として混合する以外は実施例6と同様にして紡糸を行い凝固糸を曳きとった。得られたポリケトン中空糸を、90℃の温水で1時間熱水処理を行った。さらに、40wt%のグリセリンを含有する水溶液が、温度60℃、1l/分の速度で流れる管の中にポリケトン中空糸を配置し、1時間の環流処理を行った。環流処理したポリケトン中空糸を65℃で12時間の加熱処理を行い、中空糸内部にある水を蒸発除去した。
得られた中空糸は、外径1.05mm、平均孔径0.07μm、空隙率30.2vol%、中空率が35%の微多孔中空糸であり、融点は245℃、結晶化度は48%、強度は1.5MPa、伸度は33%であった。
[実施例8]
実施例5で作製したポリケトンドープを安田精機(株)社製、製膜機(AUTOMATIC FILM APPLICATOR No.542−AB)を用いて、80℃に加温されたガラス板上に厚み0.5mmでキャストした。ドープをキャストしたガラス板を2℃の水に浸漬し、引き続き20℃の1%塩酸水溶液にて洗浄した。さらに、水洗を行い、ポリケトン多孔膜を得た。この膜は、平均孔径0.23μmの孔を38.2vol%含有する微多孔膜であり、融点は240℃、結晶化度は44%、強度は0.9MPa、伸度は15%であった。
[比較例1]
ポリケトンに融点255℃、極限粘度1.9dl/gのECOを用い、温度275℃にて実施例1と同様の方法でシリカ微粒子と溶融混合したところ、熱架橋が起こり吐出することが出来なかった。
[比較例2]
ポリケトンにプロピレンを7モル%共重合した極限粘度1.8dl/g、融点226℃のEPCOを用い、温度245℃にて実施例1と同様の方法で中空糸を作製した。得られた中空糸は、外径0.85mm、平均孔径0.3μm、空隙率14vol%、中空率が30%、融点は228℃、結晶化度は42%であり、強度は17MPa、伸度は13%と実施例1の中空糸よりも劣るものであった。
また、製糸状況は不調で、溶融開始直後から押出圧力の上昇が起こり、3時間 後からは安定して吐出が出来なくなった。
本発明のポリケトン多孔体は、強度、耐熱性、耐薬品性を兼ね備えた多孔体であり、分離膜用途、具体的には、汚水処理、含油廃水処理、工業用純水の製造、果汁の処理等の水溶液濾過膜、有機液体中の不純物除去、有機液体の回収等の有機溶液濾過膜、またイオン性液体の透過膜、さらには血液や体液の透析膜等の用途に非常に有用である。
本発明の中空糸の斜視図である。 本発明のフィルムの斜視図である。 中空糸製造に用いる二重管オリフィスの紡出面を表す図である。
符号の説明
1:中空部
2:中空糸内壁部
3:中空糸多孔体部分断面
4:中空糸外壁
5:フィルム表面
6:フィルム多孔体部分断面
7:ポリケトンドープが流れる孔
8:ポリケトンの非溶剤である内液が流れる孔

Claims (6)

  1. エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンにより構成され、平均孔径が0.001〜10μmである孔を5〜90vol%含有することを特徴とするポリケトン多孔体。
  2. 繰り返し単位の90モル%以上が1−オキソトリメチレン単位であり、繰り返し単位の10モル%未満が珪素原子を有する繰り返し単位であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン多孔体。
  3. ポリケトン多孔体が繊維であり、繊維の内部に少なくとも一つの長手方向に貫通した空隙を有する中空糸であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリケトン多孔体。
  4. 繊維の内部にあり長手方向に貫通する空隙の割合が10〜60vol%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン多孔体。
  5. エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを平均粒径が0.001〜10μmの微粒子と溶融混合後吐出し、得られた成形体を微粒子を溶解可能な液体で処理する工程を含むことを特徴とするポリケトン多孔体の製造方法。
  6. 二重管オリフィスを用いて中空糸を製造する湿式紡糸法において、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶解したドープを外側の輪状オリフィスから吐出するとともに、内側の円状オリフィスからはポリケトンの非溶剤である液体または気体を吐出した後に、ポリケトンドープを凝固浴中にて中空状に凝固する工程を含むことを特徴とするポリケトン中空糸の製造方法。
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