JP4136405B2 - 真空排気システムおよびその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空排気システムおよびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空排気システムとして、チャンバの内部に連通するように排気路が設けら、この排気路に、上流側から順に、メインバルブ、油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプが設けられた構成を有するものがある。
【0003】
通常、上記の構成を有する真空排気システムにおいて、チャンバ内のワークの交換、メンテナンスおよび内部の清掃を行う際には、メインバルブを閉じた状態において別途設けたリークバルブを開いてチャンバ内に大気を導入するのであるが、その場合、油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプを起動させたままの状態でチャンバの扉を開け、内部を開放して作業を行う。これは、油拡散ポンプを一旦停止すると、再起動するのに長時間を要するため、通常は一旦起動させると停止させないのが作業効率上望ましく、また、油拡散ポンプの運転中は、その構造上、背圧をロータリポンプ等で所定範囲まで下げておかなければ油が上流側に逆流するという不具合を防止するためになされる措置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプを起動させたままでチャンバ内を開放すると、これらのポンプは起動したまま待機することになるため、この間の機器稼働分のエネルギー(例えば電力)が浪費されることとなる。
【0005】
チャンバ内を開放している時間が短い場合には、浪費されるエネルギーが少ないのでシステムの運転コストに与える影響は小さいが、10分以上開放する場合には、浪費されるエネルギーの量が多くなるため、システムの運転コストの上昇につながる。特に、光通信における光合波器や光分波器に使用する光学膜フィルタ製造用の光学成膜装置に使用される真空排気システムでは、ワーク交換、メンテナンスおよび内部の清掃に時間がかかる(約1時間〜3時間程度)ため、エネルギーの浪費が大きい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、エネルギーの浪費を抑えることにより運転コストの低減化を図ることが可能な真空排気システムおよびその運転方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る真空排気システムおよびその運転方法は、扉を有するチャンバの内部に連通するように排気路が配設され、前記排気路に上流側から順に油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプが配設されるとともに、少なくとも前記メカニカルブースタポンプを制御する制御装置が配設された真空排気システムであって、前記油拡散ポンプおよび前記ロータリポンプの起動中に、前記制御装置は、前記チャンバの扉が開いた状態で前記メカニカルブースタポンプを停止させるものである(請求項1,4)。
【0008】
かかる構成によれば、チャンバの扉が開いた状態においてはメカニカルブースタポンプを停止する。通常、メカニカルブースタポンプは、停止中でも気流通路が存在するため、油拡散ポンプ下流側に必要な背圧はロータリポンプが運転し続けることによって保つことができる。したがって、メカニカルブースタポンプが停止する分、ワークの加工処理以外の操作時におけるエネルギーの浪費を抑制することが可能となる。それにより、真空排気システムの運転コストの低減化を図ることが可能となる。
【0009】
前記油拡散ポンプの背圧を検知する真空計が前記排気路に配設され、前記制御装置は、前記真空計で検知された前記油拡散ポンプの背圧が所定範囲からはずれた場合に前記メカニカルブースタポンプを再起動させるとともに、前記背圧が所定範囲内となった場合に前記メカニカルブースタポンプを停止させることが好ましい(請求項2,5)。
【0010】
かかる構成によれば、油拡散ポンプの背圧を所定の適正範囲内に保つことが可能となる。ところで、油拡散ポンプは、前述の通り、運転時における適正背圧の範囲が決まっており、この範囲内で使用する必要がある。このため、上記のように油拡散ポンプの背圧を所定の適正範囲内に保つことが可能であれば、支障を生じることなく油拡散ポンプを運転させることができる。
【0011】
また、この場合には、油拡散ポンプの背圧が所定範囲から外れた際にのみメカニカルブースタポンプを起動させるため、油拡散ポンプの背圧が所定範囲の際も含めてメカニカルブースタポンプを起動させる場合に比べて、エネルギーの浪費を抑えることが可能となる。
【0012】
前記メカニカルブースタポンプをバイパスして前記油拡散ポンプと前記ロータリポンプとを連結するバイパス経路が前記排気路に接続されてもよい(請求項3,6)。
【0013】
かかる構成によれば、バイパス経路を通して油拡散ポンプからロータリポンプに排気を行うことが可能となるため、停止したメカニカルブースタポンプが排気の妨げとなるのを防止することが可能となる。このため、油拡散ポンプの背圧の上昇を抑制することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る真空排気システムの構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【0015】
図1に示すように、真空排気システムは、チャンバ1と、チャンバ内真空計(PIC)2と、油拡散ポンプ(DP)6と、排気管内真空計(PIR)10と、メカニカルブースタポンプ(MBP)8と、ロータリポンプ(RP)9と、制御装置20とを主な構成要素として含んでいる。
【0016】
チャンバ1には、リークバルブ(LVC)3が設けられた吸気用配管31が接続されるとともに、排気用配管32が接続されている。この排気用配管32は、配管33と配管34とに分岐している。配管33にはラフバルブ(RV)4が設けられている。配管34には、上流側から順にメインバルブ(MV)5、油拡散ポンプ(DP)6およびフォアラインバルブ(FV)7が設けられている。配管33と配管34とは合流点35において合流し、さらに配管36に接続されている。そして、配管36はメカニカルブースタポンプ(MBP)8に接続されており、さらにメカニカルブースタポンプ(MBP)8にロータリポンプ(RP)9が配管37により接続されている。
【0017】
リークバルブ(LVC)3、ラフバルブ(RV)4、メインバルブ(MV)5およびフォアラインバルブ(FV)7の開閉動作、ならびに油拡散ポンプ(DP)6、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9の起動および停止動作は、制御装置20により制御される。
【0018】
メカニカルブースタポンプ(MBP)8は、ロータリポンプ(RP)9の排気時間を短縮するための加速用に用いるポンプである。ロータリポンプ(RP)9とメカニカルブースタポンプ(MBP)8とを起動してチャンバ1内の大気を吸引することにより、チャンバ1内がある程度の真空状態となる。このように、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9は、チャンバ1内の粗排気に利用される低真空ポンプである。
【0019】
一方、油拡散ポンプ(DP)6は、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9によりある程度真空状態となったチャンバ1内からさらに大気を吸引し、チャンバ1内をより真空度の高い状態とするものである。このように、油拡散ポンプ(DP)6は、チャンバ1内の本排気に利用される高真空ポンプである。
【0020】
チャンバ1は、その内部においてワークを加工するためのものであり、ワークを出し入れするための扉(図示せず)を有している。チャンバ1内のワークは、1回の加工工程(これを1バッチと呼ぶ)終了毎に交換する。また、1バッチ終了後あるいは数バッチ繰り返した後に、チャンバ1の内部の清掃やメンテナンスを行う。
【0021】
チャンバ内真空計(PIC)2は、チャンバ1内の圧力を検知するものである。これにより検知されたチャンバ1内の圧力情報は、制御装置20に伝達される。
【0022】
排気管内真空計(PIR)10は、油拡散ポンプ(DP)6の背圧、ここでは配管34中の圧力を検知するものである。これにより検知された油拡散ポンプ(DP)6の背圧情報は、制御装置20に伝達される。
【0023】
以上のような構成を有する真空排気システムにおいては、排気用配管32、配管33,36,37、ラフバルブ(RV)4、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9によりチャンバ1内の粗排気を行うための排気路、すなわち低真空排気路が形成される。また、排気用配管32、配管34,36,37、メインバルブ(MV)5、油拡散ポンプ(DP)6、フォアラインバルブ(FV)7、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9によりチャンバ1内の本排気を行うための排気路、すなわち高真空排気路が形成される。
【0024】
次に、以上のように構成された真空排気システムの運転方法を図2を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、図1の真空排気システムの制御装置20に格納された制御プログラムの内容を示すフローチャートである。
【0026】
真空排気システムの運転時には、まず、チャンバ1の扉を開いてチャンバ1内に加工対象たるワークを配置する。そして、図2に示すように、運転が停止した状態、すなわち全てのポンプが停止するとともに全てのバルブが閉じられた状態の真空排気システムの始動スイッチ(図示せず)をオン操作すると、制御装置20に運転開始指令が入力され、真空排気システムの運転がスタートして以下の動作が行われる。
【0027】
制御装置20は、真空排気システムが始動すると、まず、ロータリポンプ(RP)9を起動し(ステップS1)、次いでメカニカルブースタポンプ(MBP)8を起動する(ステップS2)。次にフォアラインバルブ(FV)7を開き(ステップS3)、次いで油拡散ポンプ(DP)6を起動する(ステップS4)。油拡散ポンプ(DP)6は起動してから実際に作動するまでに時間がかかるため、このような早い段階で起動しておく必要がある。
【0028】
このようにして起動させたロータリポンプ(RP)9、メカニカルブースタポンプ(MBP)8および油拡散ポンプ(DP)6は、後述するように、基本的には真空排気システムの運転停止指令が入力されるまで起動し続ける。
【0029】
次に、フォアラインバルブ(FV)7を閉じ(ステップS5)、次いで、ラフバルブ(RV)4を開き(ステップS6)、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9を用いて低真空排気路を介してチャンバ1内の粗排気を行う。この時、チャンバ1内の圧力はチャンバ内真空計(PIC)2で検知され、チャンバ1内の圧力情報が制御装置20に伝達される。制御装置20では、この情報をもとにチャンバ1内の圧力が第1のセットポイントよりも小さいか否かを判定する(ステップS7)。第1のセットポイントの値は任意であり、チャンバ1内の容積等によっても変わってくるが、例えば油拡散ポンプ(DP)6の性能に合わせて設定される。
【0030】
チャンバ1内の圧力が第1のセットポイントよりも大きい場合には、チャンバ1内の粗排気が引き続き行われるとともに、ステップS7に戻って再度判定が行われる。一方、チャンバ1内の圧力が第1のセットポイントよりも小さいあるいは前粗排気によって小さくなった場合には、ラフバルブ(RV)4を閉じる(ステップS8)。
【0031】
続いて、フォアラインバルブ(FV)7を開き(ステップS9)、次いでメインバルブ(MV)5を開く(ステップS10)。それにより、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9を用いてチャンバ1内の粗排気を行う低真空排気路から、油拡散ポンプ(DP)6を用いてチャンバ1内の本排気を行う高真空排気路に切り替えが行われ、その結果、チャンバ1内の真空度がさらに高められる。
【0032】
次に、高真空状態となったチャンバ1内においてワークの加工を行い(ステップS11)、次いで、ワークの加工が終了したか否かを判定する(ステップS12)。加工が終了していない場合には、ステップS11に戻って引き続きワークの加工を行う。一方、加工が終了した場合には、メインバルブ(MV)5を閉じ(ステップS13)、次いでリークバルブ(LVC)3を開いてチャンバ1内に大気を導入する(ステップS14)。
【0033】
次に、真空排気システムの運転停止指令が入力されたか否かを制御装置20が判定する(ステップS15)。運転停止指令が入力された場合には、メインバルブ(MV)5を閉じて油拡散ポンプ(DP)6を停止し、その後、フォアラインバルブ(FV)7を閉めるとともに、メカニカルブースタポンプ(MBP)8およびロータリポンプ(RP)9をこの順で停止してシステムの運転停止操作を行い(ステップS16A)、運転を停止する。例えば、週末などにおいては、このようにして運転を停止する。
【0034】
ところで、真空排気システムにおいては、1バッチ終了後にチャンバ1内のワークを交換し、その後、引き続きシステムを運転して繰り返しワークの加工を行うのが通常である。このように引き続きシステムを運転する場合には、運転停止指令は入力されない。この場合、リークバルブ(LVC)3を開くことにより開くことが可能となったチャンバ1の扉を作業員が開いてワークの交換を行うとともに必要に応じてメンテナンスや清掃を行う。そして、再び扉を閉じた後、作業員が加工開始操作を行う。以下に、ワークの交換時における流れについて説明する。
【0035】
チャンバ1の扉の開閉動作は制御装置20により検知されており、チャンバ1の扉が開いたか否かを制御装置20が判定する(ステップS16)。チャンバ1の扉が開くと、油拡散ポンプ(DP)6およびロータリポンプ(RP)9は起動したままで待機状態となるが、メカニカルブースタポンプ(MBP)8は停止する(ステップS17)。この状態で、ワークの交換、メンテナンス、清掃が行われる。なお、メカニカルブースタポンプ(MBP)8は、ロータリポンプ(RP)9の加速用のポンプであるため、停止させても支障は生じない。また、チャンバ1の扉が開いていない場合には、ステップS15に戻って、再度、運転停止指令が入力されたか否かの判定が行われる。このように、本実施の形態においては、チャンバ1の扉を開けた状態において、従来は起動させていたメカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させるため、エネルギーの浪費を抑制することが可能となる。
【0036】
上記のようにメカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止してチャンバ1の扉を開いている間、油拡散ポンプ(DP)6およびロータリポンプ(RP)9は起動したままの状態である。ところで、油拡散ポンプ(DP)6は、起動時における背圧の適正範囲が決まっており、背圧をこの範囲内に保って使用する必要がある。一般に、油拡散ポンプ(DP)6の適正背圧は、0.1〜70Paの範囲である。メカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させても、ロータリポンプ(RP)9が起動していれば、通常、メカニカルブースタポンプ(MBP)8には停止中でも気流通路が存在するため、油拡散ポンプ(DP)6の背圧を適正範囲内に保つことが可能である。しかしながら、ロータリポンプ(RP)9が起動していても、油拡散ポンプ(DP)6の背圧が適正範囲よりも上昇する場合がある。この場合、背圧が上記適正範囲内となるように、以下の方法により背圧を制御する。
【0037】
ここでは、排気管内真空計(PIR)10により、油拡散ポンプ(DP)6の背圧を検知し、油拡散ポンプ(DP)6の背圧情報が制御装置20に伝達される。制御装置20では、この情報をもとに、油拡散ポンプ(DP)6の背圧が適正範囲内であるか否かを判定する(ステップS18)。背圧が適正範囲内である場合には、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させたままとする。一方、背圧が適正範囲を外れる場合、例えば適正範囲よりも高くなった場合には、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を起動させ、それにより、油拡散ポンプ(DP)6の背圧を下げる(ステップS18A)。メカニカルブースタポンプ(MBP)8の起動により油拡散ポンプ(DP)6の背圧が下がったら(フローチャートでは省略)、再びステップS17に戻って、再度、メカニカルブースタポンプ(MBP)8が停止する。
【0038】
ワークの交換、メンテナンス、清掃が終了した後、作業員がチャンバ1の扉を閉じるとともに、加工開始指令を入力する。すると、チャンバ1の扉が閉じたか否かを制御装置20が判定し(ステップS19)、さらに、加工開始指令が入力されたか否かを制御装置20が判定する(ステップS20)。なお、チャンバ1の扉が閉じられていない場合および加工開始指令が入力されていない場合においては、ステップ15に戻って、再度、運転停止指令が入力されたか否かの判定が行われる。
【0039】
上記のようにしてチャンバ1の扉が閉じたことが確認されて加工開始操作がなされた後、リークバルブ(LVC)3を閉じるとともに(ステップS21)、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を起動させる(ステップS22)。そして、再びステップS5に戻り、ステップS5〜ステップS22の動作が繰り返し行われる。
【0040】
以上のような真空排気システムの運転方法によれば、チャンバ1の扉を開けてワーク交換、メンテナンス、清掃を行う際に、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させるため、ワークの加工処理以外における機器稼働分のエネルギーの浪費、具体的には電力の浪費を抑制することが可能となる。この場合、油拡散ポンプ(DP)6の背圧を適正範囲に保つことが可能であるため、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させることによりシステムに支障が生じることはない。したがって、この運転方法によれば、システムの運転コストの上昇を抑制することが可能となる。このような省エネルギー効果は、ワーク交換、メンテナンス、清掃にかかる時間が長いほど効果が大きく、例えば、10分以上時間がかかる場合には効果が得られる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る真空排気システムの構成を模式的に示す機能ブロック図であり、図4は、図3の真空排気システムの制御装置20に格納された制御プログラムの内容を示すフローチャートである。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態の真空排気システムは、メカニカルブースタポンプ(MBP)8をバイパスするように、フォアラインバルブ(FV)7下流の配管36とロータリポンプ(RP)9上流の配管37とにバイパス配管38が接続されるとともに、このバイパス配管38にバイパスバルブ(BV)11が設けられた点を除いて、実施の形態1と同様の構成を有する。
【0042】
図4に示すように、この真空排気システムは、実施の形態1において前述した運転方法と同様の方法により運転される。それにより、実施の形態1において前述した効果と同様の効果が得られる。
【0043】
ところで、メカニカルブースタポンプ(MBP)8が通気性の悪い構造を有する場合、停止したメカニカルブースタポンプ(MBP)8は、ロータリポンプ(RP)9の排気にとって負荷となり、排気機能の妨げとなる。ロータリポンプ(RP)9の排気機能が低下すると、油拡散ポンプ(DP)6の背圧が上昇するので好ましくない。このような場合には、チャンバ1の扉を開くとともにメカニカルブースタポンプ(MBP)8を停止させた後、バイパスバルブ(BV)11を開く(ステップS17A)。すると、バイパス配管38を通じて、メカニカルブースタポンプ(MBP)8をバイパスしてロータリポンプ(RP)9へ排気することが可能となるため、ロータリポンプ(RP)9の排気機能の低下を防止することができ、油拡散ポンプ(DP)6の背圧の上昇を抑制することが可能となる。チャンバ1の扉を閉じて加工を開始する際には、メカニカルブースタポンプ(MBP)8を起動させた後、バイパスバルブ(BV)11を閉じる(ステップS23)。
【0044】
次に、本発明に係る真空排気システムを用いた実施例について説明する。
(実施例)
実施例においては、図1に示す構成を有する真空排気システムを備えた光通信用光学膜フィルタ(NBPF)製造装置(新明和工業株式会社製)を用いた。この装置の真空排気システムは、以下のポンプを構成要素として有する。
【0045】
・ロータリポンプ(RP):アルバック製 VS1501 (1台)
・メカニカルブースタポンプ(MBP):アルバック製 PRC-012A (1台)
・油拡散ポンプ(DP):芝浦エレテック製 ESV-22S(L) (2台)
なお、2台の油拡散ポンプ(DP)は、並列に配置されている。
【0046】
上記の光学膜フィルタ製造装置において、チャンバの扉を開けた状態で、1時間、実施の形態1のようにロータリポンプ(RP)および油拡散ポンプ(DP)のみを起動させメカニカルブースタポンプ(MBP)を停止させた場合の消費電力と、従来のように上記3つのポンプを起動させた場合の消費電力とを比較した。ここでは、油拡散ポンプ(DP)の背圧を30Pa以下に保持した。
【0047】
ロータリポンプ(RP)の消費電力は5.5kWであり、油拡散ポンプ(DP)の消費電力は15.0kWであり、メカニカルブースタポンプ(MBP)の消費電力は3.7kWであることから、実施の形態1のようにメカニカルブースタポンプ(MBP)を停止させた場合には、3つのポンプを起動させる従来の場合に比べて、消費電力が3.7/(5.5+15.0+3.7)×100=15.3(%)減少した。このように、実施の形態1の方法によれば、省エネルギー化が図られることが分かった。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したような形態で実施され、以下のような効果を奏する。
(1)ワークの加工処理以外の操作時におけるエネルギーの浪費を抑制することが可能となるため、真空排気システムの運転コストの低減化を図ることが可能となる。
(2)油拡散ポンプの背圧を検知する真空計が前記排気路に配設され、制御装置は、真空計で検知された油拡散ポンプの背圧が所定範囲からはずれた場合にメカニカルブースタポンプを再起動させるとともに、背圧が所定範囲内となった場合にメカニカルブースタポンプを停止させるとすると、油拡散ポンプの背圧を所定の適正範囲内に保つことが可能となり、よって、支障を生じることなく油拡散ポンプを起動させることができる。また、油拡散ポンプの背圧が所定範囲から外れた際にのみメカニカルブースタポンプを起動させるため、油拡散ポンプの背圧が所定範囲の際も含めてメカニカルブースタポンプを起動させる場合に比べて、エネルギーの浪費を抑えることが可能となる。
(3)メカニカルブースタポンプをバイパスして油拡散ポンプとロータリポンプとを連結するバイパス経路が排気路に接続されるとすると、バイパス経路を通して油拡散ポンプからロータリポンプに排気を行うことが可能となるため、停止したメカニカルブースタポンプが排気の妨げとなるのを防止することが可能となり、それゆえ、油拡散ポンプの背圧の上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる真空排気システムの構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【図2】図1の真空排気システムの制御装置に格納された制御プログラムの内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係る真空排気システムの構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【図4】図3の真空排気システムの制御装置に格納された制御プログラムの内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 真空チャンバ
2 チャンバ内真空計
3 リークバルブ
4 ラフバルブ
5 メインバルブ
6 油拡散ポンプ
7 フォアラインバルブ
8 メカニカルブースタポンプ
9 ロータリポンプ
10排気管内真空計
11バイパスバルブ
20制御装置

Claims (6)

  1. 扉を有するチャンバの内部に連通するように排気路が配設され、前記排気路に上流側から順に油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプが配設されるとともに、少なくとも前記メカニカルブースタポンプを制御する制御装置が配設された真空排気システムであって、
    前記制御装置は、前記油拡散ポンプおよび前記ロータリポンプの起動中に、前記チャンバの扉が開いた状態で前記メカニカルブースタポンプを停止させることを特徴とする真空排気システム。
  2. 前記油拡散ポンプの背圧を検知する真空計が前記排気路に配設され、前記制御装置は、前記真空計で検知された前記油拡散ポンプの背圧が所定範囲からはずれた場合に前記メカニカルブースタポンプを再起動させるとともに、前記背圧が所定範囲内となった場合に前記メカニカルブースタポンプを停止させる請求項1記載の真空排気システム。
  3. 前記メカニカルブースタポンプをバイパスして前記油拡散ポンプと前記ロータリポンプとを連結するバイパス経路が前記排気路に接続された請求項1記載の真空排気システム。
  4. 扉を有するチャンバの内部に連通するように排気路が配設され、前記排気路に上流側から順に油拡散ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリポンプが配設されるとともに、少なくとも前記メカニカルブースタポンプを制御する制御装置が配設された真空排気システムの運転方法であって、
    前記制御装置は、前記油拡散ポンプおよび前記ロータリポンプの起動中に、前記チャンバの扉が開いた状態で前記メカニカルブースタポンプを停止させることを特徴とする真空排気システムの運転方法。
  5. 前記油拡散ポンプの背圧を検知する真空計が前記排気路に配設され、前記制御装置は、前記真空計で検知された前記油拡散ポンプの背圧が所定範囲からはずれた場合に前記メカニカルブースタポンプを再起動させるとともに、前記背圧が所定範囲内となった場合に前記メカニカルブースタポンプを停止させる請求項4記載の真空排気システムの運転方法。
  6. 前記メカニカルブースタポンプをバイパスして前記油拡散ポンプと前記ロータリポンプとを連結するバイパス経路が前記排気路に接続され、前記メカニカルブースタポンプを停止した際に、前記バイパス経路を通じて前記油拡散ポンプから前記ロータリポンプへ排気を行う請求項4記載の真空排気システムの運転方法。
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