JP4136258B2 - 凹形状の総型工具の形状修正方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ加工機に用いられる凹形状の総型工具の形状修正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、凸レンズの加工を、レンズ球面に合致した凹形状部を持つ総型工具を使用して行う際、高品質なレンズの加工を行うために、特開平9−239651号公報記載のような方法により凹形状の総型工具の形状を整えることが技術が知られている。この技術に用いられる装置について図10及び図11を参照して説明する。
【0003】
図10は、凹形状の総型工具端面部を加工修正する装置(以下、「工具径修正装置」と称する)125を示す側面断面図である。図11は、工具径修正装置125が後退し、その後、修正した工具102をワーク103の加工条件である所定の傾斜角にして、ワーク103を加工している状態の正面図である。
【0004】
図11において、前記工具径修正装置は、図示省略した駆動源と連結した回転自在な回転軸101の先端に、ワーク(レンズ)103を加工する工具102を一体に設けている。工具102の上面には、凹形状の球面に形成された加工面102bと平面形状の端面102cが形成され、工具102の中心部にはクーラントを供給する為の孔102aが設けられている。また、回転軸101は工具軸Dを中心として回転可能であり、かつ、加工面102bの曲率中心Oを中心に球心揺動運動を行うことが可能である。
【0005】
工具102には加工面102bに対応したワーク103が当接されている。このワーク103は、下端面を同径形状に形成された貼付け皿104に保持されている。この貼付け皿104の上面中心は凹形状の球体となっており、加工面102bの曲率中心Oを通るワーク軸Cを中心軸とする棒状のカンザシ先端部の球形部130と係合されている。
【0006】
また、図示省略したクーラント供給装置と連結したノズル106が配置され、前記工具102とワーク103にクーラントが供給可能となっている。前記ワーク103は、貼付け皿104を介してカンザシ105により押圧されるとともに工具102を回転及び球心揺動運動させることにより、加工が行われる。
【0007】
前記工具径修正装置125は、ダミーワーク108と、修正工具110と、摺動部113と、ハウジング114と、テーブル118と、リニアガイド119と、モータ122とを有している。
【0008】
前記ダミーワーク108は、工具102をワーク軸Cに対して傾斜角β=45度まで傾けたときにダミーワーク108と工具102が対向するように配設されている。
【0009】
カップ状の修正工具110の先端には、砥粒層が形成されており、工具102の端面を除去加工できる機能を有している。
【0010】
上記構成による工具形状修正装置125で工具形状を修正する場合について以下に説明する。
【0011】
まず、図11に示すように、工具102によるワーク103の加工中においては、摺動部材113、修正工具110、ダミーワーク108を工具102の斜め上方に後退させ、工具形状修正装置125の各部材が工具径修正装置125の各部材と干渉しないようにする。
【0012】
ワーク103を数多く加工し、工具102が磨耗して工具径φDTが大きくなった際、ワーク103を加工していないときに、工具102をダミーワーク108及び修正工具110と対向する位置まで傾け、続いて工具径修正装置125側も工具102の方向へ修正工具110及びダミーワーク108を送る(図10)。
【0013】
これにより、修正工具110の先端と工具102の端面が接触し、修正工具110側を回転させることにより、修正工具102の端面102cが加工される。ダミーワーク108が工具102の加工面に接触するまで加工は進行し、所望の工具形状になった後、修正加工が終了する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の加工方法の場合、特開平9−239651号公報に記載されているように、端面が形成されている凹形状の工具102を用いて倣い加工を行う際、工具の磨耗により工具径φDTが後々に大きくなり、それに伴い加工条件を工具磨耗の度合いに応じて変更していかねばならない。
【0015】
そこで、加工条件の変更を最小限に抑えるために、磨耗した工具を初期の設定に正確かつ容易に修正可能とする方法、及びその装置が望まれていた。
【0016】
しかしながら、特開平9−239651号公報に記載されているような前記工具修正方法および工具径修正装置にてレンズ加工および修正加工を行う際、ワークを保持し、加工する軸(ワーク軸)と、修正加工を行う為の軸(修正軸)と、工具側の軸との合計3軸構成となり、それぞれの軸を互いに干渉しないように制御する必要がある。この結果、装置の制御、管理、保全という面からも多大の手間がかかる上、装置自体が複雑で高価なものになってしまう。
【0017】
加えて、修正工具側の構成も複雑になっている為、修正工具の交換等の作業が煩わしく、作業者の負担を増加させることにもなる。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レンズを高精度に球面加工する際使用する総型工具の形状を修正する工具形状修正作業において、容易に所望の工具形状を得ることができるとともに、能率良く工具形状の修正作業を行うことができる凹型状の総型工具の形状修正方法を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、凸形状を有するレンズの加工形状に合致した凹形状の加工面を持つ総型工具を使用して、レンズ保持部にレンズを回転自在に保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具、若しくはレンズを揺動させてレンズ加工を行うレンズ加工装置における凹形状の総型工具の形状修正方法であって、前記レンズ保持部に、平面を有する形状修正用の修正工具を脱着可能に取り付け、前記レンズ保持部の軸心と前記総型工具の軸心を同軸上に位置させる工程と、前記総型工具の端面に前記修正工具の平面を押圧しながら、前記修正工具を回転させずに前記総型工具を回転させることにより、前記総型工具の端面を加工する工程と、前記総型工具の端面が所望の位置まで加工された後、前記修正工具を取り外す工程と、を有することを特徴とするものである。
【0020】
この発明においては、前記レンズ保持具に脱着可能な平面を有する形状修正用の修正工具を取り付け、前記レンズ保持具の軸心と前記総型工具の軸心を同軸上に位置させることにより、修正工具の平面部と、総型工具の端面部が対向する位置になる。
【0021】
その状態でワーク軸を下降させることで、修正工具の平面部と総型工具の端面部が対向した状態で接触する。そのまま、前記総型工具の端面にレンズ保持部ごと押圧し、それと同時に前記総型工具を回転させることにより、総型工具の端面部が修正工具により加工されることになる。この後、前記修正工具を取り外す。
【0022】
請求項2記載の発明は、凸形状を有するレンズの加工形状に合致した凹形状の加工面を持つ総型工具を使用して、上下動可能なワーク軸に支持されたレンズ保持部にレンズを保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具、若しくはレンズを揺動させてレンズ加工を行うレンズ加工装置における凹形状の総型工具の形状修正方法であって、前記ワーク軸に測定器を配設し、レンズ保持部からの高さが既知のマスターレンズを前記レンズ保持部に取り付け、前記総型工具と前記マスターレンズが当接するまでワーク軸を降下させ、前記測定器によりワーク軸の位置を読み取った後ワーク軸を上昇させ、平面を有する形状修正用の修正工具を前記マスターレンズの代わりに前記レンズ保持部に取り付け、修正工具の平面が前記総型工具に当接するまでワーク軸を降下させ、測定器によりこのときのワーク軸の位置を読み取り、前記マスターレンズ、修正工具の取り付け時の前記各ワーク軸の位置の差分から前記総型工具の球欠深さを算出し、総型工具形状の修正を行うことを特徴とするものである。
【0023】
この発明においては、前記ワーク軸の固定部分に測定器を配設し、レンズ保持部からの高さが既知のマスターレンズを前記レンズ保持部に取り付け、前記総型工具と前記マスターレンズが当接するまでワーク軸を降下させる。
【0024】
その後、前記測定器によりワーク軸の位置を読み取った後ワーク軸を上昇させ、修正工具をマスターレンズの代わりに前記レンズ保持部に取り付け、同様にして前記修正工具が前記総型工具に当接するまでワーク軸を降下させ、このときのワーク軸の位置を読み取り、その位置の差分から前記総型工具の球欠深さを算出し、工具形状の修正作業を行う。これにより、それぞれ測定器により測定した値から前記総型工具の球欠深さを算出でき、所望の形状に前記総型工具を修正できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
(構成)
図1は、本発明の実施の形態1の総型工具(以下、「砥石」と称する)を使用し、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、砥石が円弧を描きつつ往復揺動するようにしたレンズ加工装置、凹型形状修正装置として機能するレンズ径修正装置の斜視図である。また、図2はレンズ加工時におけるホルダ部分の断面詳細図、図3は砥石端面の修正加工時におけるホルダ部分の断面詳細図である。
【0029】
図1において、レンズ球面に合致した凹球面を有する砥石3が砥石軸4に接続されている。砥石3は研磨材を樹脂にて固定化した研磨用砥石を使用する。砥石軸4は、スピンドル5と一体となっており、さらにスピンドル5は支持体49により支持された砥石回転モータ7に連結されている。
【0030】
舟型形状の揺動部材9は、固定配置の揺動部材受け部10により揺動可能に支持されており、揺動部材受け部10は前記舟型形状に見合った凹曲面形状となっている。
【0031】
更に支持体49により支持された揺動モータ6にはギア15が取り付けられており、ギア15は円弧状のガイド8に設けられた歯と噛み合った状態となっている。前記ガイド8は、図示省略した加工機本体に固定されている。
【0032】
前記砥石3の上方には、接着剤等により貼付け皿12に貼り付けられたレンズ1が、貼付け皿12ごとホルダ2に保持されている。
【0033】
さらに、このホルダ2は、回転可能なワーク軸11に連結されており、ワーク軸11は、エアシリンダ16に連結され、加工時にはエアシリンダ16のロッド16aの伸縮動作により、適宜レンズ1の加工面を砥石3に加圧接触するようになっている。
【0034】
前記ワーク軸11は、砥石3の球面における曲率中心を通る軸線上に位置している。また、測定器であるリニアスケール17がワーク軸11に取り付けられ、リニアスケール17によりワーク軸11の移動量を検出し、移動量を示す数値を表示するようになっている。
【0035】
また、図示省略した加工液14を貯水するためのタンクから、図示省略したポンプ等の給水手段により加工液14が供給され、給水口13より前記砥石3の表面に注水されるようになっている。
【0036】
尚、前記砥石3における球面及びレンズ1の加工球面の曲率中心は、往復揺動中心と一致した位置に設定される。
【0037】
前記貼付け皿12は、磁性材料から形成されており、図2に示すように、ホルダ2の内部に固定されているベアリング19を介して回動自在に保持されるとともに、マグネット39の吸引力により落下しないようなっている。
【0038】
一方、工具形状修正作業時に使用する修正工具20は、図3に示すように、砥石3の端面3bとの当接面が平面になっている。また、ホルダ2にて受けられ側の面は、前記貼付け皿12と同形状の貼付け治具21に接着剤等により接着されている。
【0039】
これにより、修正工具20もホルダ2により前記レンズ1と同様に保持される。更に修正工具20が砥石3の回転につられて回転しない様に、ホルダ2にはストッパ19aが取り付けられており、そのストッパ19aはホルダ2に設けた溝18に嵌め込まれるようになっている。
【0040】
前記修正工具20の材質としては、グリーンカーボン砥石、ホワイトアランダム砥石等、工具形状を修正するのに用いられる砥石が好ましいが、上記以外のメタルボンド砥石、レジンボンド砥石、ビトリフアイド砥石によっても代用可能である。
【0041】
(作用)
上述した構成のレンズ径修正装置によれば、図1において、通常のレンズ加工時には、ホルダ2を介してワーク軸11に保持されているレンズ1が砥石3に接触するまで下降し、その後、エアシリンダ16により加工面に上方から圧力が加えられる。
【0042】
同時に揺動モータ6を駆動することにより、前記ギア15が回転し、ギア15と噛みあっているガイド8に案内されて揺動部材9により支持されている揺動部材9、砥石3が図1に示す矢印方向に揺動する。揺動モータ6は制御装置52により制御されるモータ制御装置50によって、回転速度及び回転方向が任意に変更可能である。
【0043】
また、上述した揺動動作と同時に、制御装置52により制御されるインバータ51により砥石回転モータ7を駆動することにより、砥石軸4が回転し、砥石軸4に連結された砥石3も回転する。また、砥石軸4はワーク軸11に対して任意の傾斜角をもって揺動する。
【0044】
以上説明したように、砥石3がレンズ1の加工球面に沿って回転及び往復揺動することにより、レンズ1の加工を実行する。即ち、ワーク軸11からの加圧、砥石3の回転及び揺動の要素が加わり、レンズ1の倣い加工が行われる。
【0045】
レンズ1の加工終了時には、砥石3の回転及び砥石3の下部全体の構成要素の揺動は停止し、ワーク軸11が上昇する。
【0046】
一方、工具形状作業を行う際には、予めベアリング19との当接面からの高さt1を測定してあるレンズ1(マスターレンズ)をホルダ2に嵌め込み、ワーク軸11を下降させる。
【0047】
この時、砥石軸4はワーク軸11に対して同軸上に位置するように、傾き(傾斜角)を有しないように角度修正をしておく。ワーク軸11を下降させた際、リニアスケール17の値(Z軸方向の基準線からの寸法:Z1)を読み取っておく。その後、ワーク軸11を上昇させ、レンズ1を着脱する。尚、基準線の下方をプラス、上方をマイナスとして以下の説明を行う。また、リニアスケール17は基準線の位置に固定配置される目盛付きの基準部材17aと、この基準部材17aに沿ってかつ、ワーク軸11の移動と連動してZ軸方向にスライドするスライド部材17bとを具備している。スライド部材17bの移動量により高さt1、t2の値を読み取るようになっている。
【0048】
次に、レンズ1の代わりに、砥石3の端面3bが当接する平面を持つ修正工具20をホルダ2に嵌め込む。この修正工具20は、砥石端面を加工するのに十分な硬さを有しており、また、予めベアリング19との当接面からの高さt2を測定しておく。
【0049】
その後、レンズ1の高さを測定したのと同様にホルダ2を介してワーク軸11に保持されている修正工具20が砥石3に接するまで下降させる。更に、この時もリニアスケール17の値(Z軸方向の基準線からの寸法:Z2)を読み取っておく。
【0050】
寸法Z1、Z2及び高さt1、t2から、所望の球欠深さα1に対して、現在の球欠深さα1がわかる。例えば、t1=t2とすると、球欠深さα1=|Z1−Z2|となる。
【0051】
具体例を示すと、高さt1=10mmで、寸法Z1=5mmであり、高さt2=10mmで、寸法Z2=2.5mmであったとする。このとき、Z1−Z2=2.5mmとなり、球欠深さα1は2.5mmということになる。
【0052】
仮に、高さt1の値を変化させた場合に寸法Z1がどのように変化するかを考察すると、レンズ1の場合における前記高さt1が10mmであり、このときの寸法Z1=5mmであったとする。次に、別のレンズ(図示せず)の場合における前記高さt1が8mmであれば、このときワーク軸11を下降した場合の寸法Z1は7mmとなる。即ち、高さt1の値が変わると、その変化量分だけ寸法Z1も変化する。
【0053】
次に、図3に示す場合について考察すると、この場合には、図2に示す場合と異なり、砥石3の端面3bに修正工具20が接触しており、砥石3の凹部の最下点から球欠深さ分だけ上方に位置している。
【0054】
従って、t1=t2=10mmのレンズ1及び修正工具20を使用してそれぞれ砥石3に接触するようにワーク軸11を下降させた場合に、球欠深さ分だけ寸法Z1、Z2の値に差が生じることになる。
【0055】
上述した構成のレンズ径修正装置において、ワーク軸11におけるエアシリンダ16の加圧を調整しながら砥石回転モータ7を駆動し、砥石3の端面3bの加工を行うが、砥石回転モータ7の回転数はインバータ51等の制御手段により砥石3及び修正工具20から異音が出ない程度に落とすことが好ましい。更に、前記ワーク軸11に対する加圧についても同様に調整することが好ましい。
【0056】
また、加工液14は、図示省略した貯水タンクから、これも図示省略したポンプ等の給水手段等により供給され、前記給水口13より砥石3の端面に供給される。
【0057】
砥石3の加工時間は、砥石3の状況や修正工具20の状況、及びリニアスケール17の値によって判断する。ある程度加工を行ったら、リニアスケール17の値(Z2)を確認し、その後、再度レンズ1をホルダ2に嵌め込み、ワーク軸11を下降させ、リニアスケール17の値を読み、砥石3の球欠深さが所望の値になっていることを確認したら、修正加工を終了する。
【0058】
工具形状修正作業が終了後、修正工具20の代わりに未加工のレンズ1をホルダ2に嵌め込み、前述の加工手順に従い再度加工を行う。ここで、工具形状の修正が終了した際のレンズ1の面精度を確認する。
【0059】
(効果)
本実施の形態1によれば、砥石3の形状が変化した場合に、この砥石3をスピンドル5から取り外すことなく容易にその形状を修正することができ、砥石3を一旦外して、形状修正を行った後、再度砥石3を取り付け、加工を行うといった手間を省くことができる。
【0060】
また、リニアスケール17により修正工具20の位置を確認しながら作業を行うことができるので、修正作業→測定・判断→修正作業・・というルーチン作業が続くことはなく、短時間で所望の砥石形状を得ることができる。また、修正工具の材質としてGC砥石やWA砥石を用いることで、コスト的にも安価に抑えられるといった効果がある。
【0061】
(実施の形態2)
(構成)
本発明の実施の形態2を図4乃至図8を参照して説明する。尚、実施の形態1と同一の部分は同一の符号を付して、その詳細説明は省略する。
【0062】
図4、図5は、、実施の形態1と同様、凸レンズを加工する際、よく使用される保持具(以後、「リンク」と称する)40を用いて加工及び工具の修正作業を行う場合の状態を正面側及び裏面側から示した斜視図である。
【0063】
また、図6は、レンズ1の取り付け時のX軸方向から見た場合の第2揺動部材23の断面拡大図であり、図7は、修正工具20の取り付け時のX軸方向から見た場合の第2揺動部材23の断面詳細図であり、図8は、支柱61と第1揺動部材22との連結部を拡大した斜視図である。
【0064】
本実施の形態2において、既述した実施の形態1と異なる点は、図4、図5に示すよう多関節部をもつリンク40を用いて、レンズ1を保持し、かつ、修正工具20を保持し、総型工具である砥石3の形状修正を行うことである。
【0065】
まず、リンク40の構成として、支柱61にコの字型をした第1揺動部材22がX軸に対して回動自在に取り付けられている。さらに、前記第1揺動部材22にコの字型をした第2揺動部材23がY軸に対して回動自在に取り付けられている。
【0066】
また、レンズ1を接着剤等で貼り付けた貼付け皿12は、第2揺動部材23に嵌め込まれるようになっており、その位置はZ軸上にレンズ中心がくるように配置されている。第2揺動部材23の貼付け皿12を挿入する部分は、図6に断面拡大図として表している。このリンク40は、ワーク軸係合部24を介してワ一ク軸11に取り付けられるようになっいる。
【0067】
前記第2揺動部材23と第1揺動部材22は、ピン25及びベアリング19を介して連結されており、これにより第2揺動部材23はY軸に対して回動が自在となっている。
【0068】
第2揺動部材23の上部には、カバー体26Aが配置されており、その内部にはマグネット39が接着剤等により接着されている。貼付け皿12は実施の形態1の場合と同様、磁性材料にて作成されているので、ベアリング19により軸支されるとともに、マグネット39の吸引力により落下することなく、回動自在に保持されている。
【0069】
図7に示す修正工具20には、実施の形態1の場合と同様、貼付け治具21が接着剤等で接着されており、レンズ1が貼り付けられた貼付け皿12と同様に、ベアリング19に嵌め込み可能となっている。
【0070】
また、貼付け治具21の材質は、貼付け皿12と同様、磁性材料からできており、これにより、修正工具20もレンズ1と同様に、第2揺動部材23の下部に落下することなく保持される。
【0071】
また、修正工具20の上面にはストッパ26が係合されており、更に他端は第2揺動部材23に設けられた溝23aに嵌め込まれるようになっている。
【0072】
また、第2揺動部材23と第1揺動部材22の連結部の下部にも溝23bがあり、その溝23bは第2揺動部材23を貫通し第1揺動部材22内にまで達するように形成されている。そして溝23bにストッパ27を挿入することにより、Y軸に対して回動自在であった第2揺動部材23の動きを止めることができる。
【0073】
さらに、第1揺動部材22の前記支柱61側にも溝22aが形成されており、その溝22aにストッパ28を挿入することにより、第1揺動部材22がX軸の回りに回動することを抑制する。この他の構成は実施の形態1の場合と同様である。
【0074】
(作用)
上述した構成によるレンズ径修正装置を用いて実施の形態1の場合と同様に、レンズ加工及び砥石3の修正作業を行う。このときの加工条件についても実施の形態1と同様で、砥石3をある傾斜角を持たせた状態で、回転、揺動させながらレンズ1を砥石3の加工面に押し付け、加工液14を供給しながら行う。このとき、レンズ1を加工する時の加工支点は、見かけ上X軸、Y軸、Z軸の交点になる。これにより、凸面のレンズ1を加工するにもかかわらず、加工支点を加工面より下方に持ってくることができ、安定した加工品質を得ることが可能となる。
【0075】
一方、砥石3の形状を修正する工程においては、リンク40自体が可動部を持っているため容易に形状修正を行うことができない。なぜなら、修正工具20の平面部と砥石3の端面3bが常に対向した状態(平行状態)でなければ、端面3b部がZ軸に対して斜めになってしまったり、偏摩耗する可能性があるからである。このため、リンク40の可動部の動きを抑制するようなストッパ27、ストッパ28を取り付けた後、修正工具20を用いて修正作業を行う。
【0076】
(効果)
本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、砥石形状が変化した際、容易に砥石3の形状を修正することができ、かつ、修正工具20の位置を確認しながら作業を行うことができる。よって、修正作業→測定・判断→修正作業・・というルーチン作業が続くことはなく、短時間で所望の砥石形状を得ることができる。加えて、可動部をもつ保持具であるリンク40を用いる場合でも、修正工具20の平面部と砥石3の端面3bとを常に対向させることができるため、砥石3の端面3bをZ軸に対して水平方向に加工することができ、更なる形状精度の向上を図ることができる。
【0077】
(実施の形態3)
(構成)
実施の形態3を図9を参照して説明する。図9は、実施の形態2と同様にレンズ形状に見合った総型工具を用いて研磨加工を行う際、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心として、下軸全体が円弧を描くように往復揺動を行いつつ加工を行うレンズ径修正装置のリンク45の拡大斜視図である。尚、図9において、実施の形態1及び実施の形態2と同一の部分には同一の符号を付して、その詳細説明は省略する。
【0078】
本実施の形態3のレンズ径修正装置において、実施の形態1及び実施の形態2と異なる点は、リンク45の可動部分の動きを抑制するストッパ29の形状である。図9に示すように、ストッパ29を上方から見た場合、このストッパ29は第1揺動部材22、第2揺動部材23、及び支柱61の凹凸に対応した凹凸形状をしており、第2揺動部材23側の第1凹部30は、第2揺動部材23の側面に当接するようになっており、また、支柱61側に形成した第2凹部31は支柱61の側面に当接するように形成されている。この他の構成は実施の形態1及び実施の形態2の場合と同様である。
【0079】
(作用)
上記構成によるレンズ径修正装置を用いて実施の形態2の場合と同様に、砥石形状の修正作業を行う際、前記ストッパ29を、第1揺動部材22、第2揺動部材23、及び支柱61で画される凹凸形状に合わせ、これらの間に嵌め込む。これにより、ストッパ29の第1凹部30及び第2凹部31が、それぞれ第2揺動部材23の側面及び支柱61の側面に当接する。
【0080】
これにより、例えば第1揺動部材22がX軸に対して回動しようとしても、ストッパ29の第2凹部31によって動きが抑制される。
【0081】
また、第2揺動部材23がY軸に対して回動しようとしても、第1凹部30によって動きが抑制される。従って、リンク45の可動部分がストッパ29により全て抑制されることとなる。この他の作用は、実施の形態1、実施の形態2の場合と同様である。
【0082】
(効果)
本実施の形態3によれば、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、砥石形状が変化した際、容易に砥石3の形状を修正することができ、かつ、修正工具20の位置を確認しながら作業を行うことができる。よって、修正作業→測定・判断→修正作業・・というルーチン作業が続くことはなく、短時間で所望の砥石形状を得られ、結果的に加工レンズの品質を安定させることができる。
【0083】
加えて、可動部をもつ保持具であるリンク45を用いた場合でも、一枚構成のストッパ29の嵌め込みという簡略操作で実施の形態2の場合よりも更に容易に可動部分の動きを抑制することができ、砥石3の端面3bをZ軸に対して水平方向に高精度に加工することが可能となる。
【0084】
上述した実施の形態1乃至3を通して、レンズ1若しくは修正工具20を保持する軸側を上軸として加工及びツルーイングを行うように記載したが、その逆にレンズ1もしくは修正工具20側を下軸とし、砥石3側を上軸とした構成で加工を行う構成を用いても、その効果に何ら差が生じることはない。
【0085】
さらに、本発明のレンズ径修正装置において、下軸側の揺動が円弧を描く往復揺動として加工及びツルーイングを行うように記載したが、下軸側の揺動が円を描く回転揺動(遊星揺動)をする加工装置を用いた場合でも、その効果において何ら差が生じるものではない。
【0086】
以上説明した本発明によれば、以下の構成を付記することができる。
【0087】
(付記1)凸形状を有するレンズの加工形状に合致した凹形状の加工面を持ち、揺動及び回転駆動されるつ総型工具を使用して、ワーク軸により移動可能に支持されたレンズ保持具にレンズを保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具、若しくはレンズが揺動しレンズ加工を行う総型工具の形状修正装置において、前記レンズ保持具に脱着可能で、前記凹形状総型工具の端面と当接する面に平面を有する形状修正用の修正工具と、ワーク軸の可動部分の位置を読み取る測定器とを備えたことを特徴とする凹形状総型工具の形状修正装置。
【0088】
(付記2)前記修正工具が前記レンズ保持具に装着された際、回転防止のストッパーを有していることを特徴とする付記1記載の凹形状総型工具の形状修正装置。
【0089】
上記付記1、2に記載の凹形状総型工具の形状修正装置によれは、総型工具の球欠深さを算出し、工具形状の修正作業を行うことができ、また、レンズ保持部と総型工具との連れ回りを防止し、加工修正能率を向上できる。
【0090】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、レンズ加工装置上で総型工具の形状を修正することができるため、総型工具の取り付け、取り外しなどの手間を省くことができるとともに、安定かつ高精度のレンズ加工が可能となり、作業者の負担軽減及び生産能率の向上に寄与する凹形状総型工具の形状修正方法を提供できる。
【0091】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、総型工具の球欠深さを算出し、工具形状の修正作業を行うことができる凹形状総型工具の形状修正方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の砥石を使用し、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、砥石が円弧を描きつつ往復揺動するようにしたレンズ径修正装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1のレンズ加工時におけるホルダ部分の断面詳細図である。
【図3】本発明の実施の形態1の砥石端面の修正加工時におけるホルダ部分の断面詳細図である。
【図4】本発明の実施の形態2のリンクを用いて加工修正作業を行う場合の状態を正面側から示した斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2のリンクを用いて加工修正作業を行う場合の状態を裏面側から示した斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2のレンズの取り付け時のX軸方向から見た場合の第2揺動部材の断面拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態2の修正工具取り付け時のX軸方向から見た場合の第2揺動部材の断面詳細図である。
【図8】本発明の実施の形態2の支柱と第1揺動部材との連結部を拡大した斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3のレンズ加工面の曲率中心を揺動中心として、下軸全体が円弧を描くように往復揺動を行いつつ加工を行う加工装置のリンクの拡大斜視図である。
【図10】従来例における凹形状の総型工具端面部を加工修正する工具径修正装置を示す概略側面断面図である。
【図11】従来例における工具径修正装置が後退し、修正した工具をワークの加工条件である所定の傾斜角にして加工している状態の概略正面図である。
【符号の説明】
1 レンズ
2 ホルダ
3 砥石
3b 端面
4 砥石軸
5 スピンドル
6 揺動モータ
7 砥石回転モータ
8 ガイド
9 揺動部材
10 揺動部材受け部
11 ワーク軸
12 貼付け皿
13 給水口
14 加工液
15 ギア
16 エアシリンダ
16a ロッド
17 リニアスケール
17a 基準部材
17b スライド部材
18 溝
20 修正工具
21 貼付け治具
22 第1揺動部材
23 第2揺動部材
24 ワーク軸係合部
50 モータ制御装置
51 インバータ
52 制御装置
Claims (2)
- 凸形状を有するレンズの加工形状に合致した凹形状の加工面を持つ総型工具を使用して、レンズ保持部にレンズを回転自在に保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具、若しくはレンズを揺動させてレンズ加工を行うレンズ加工装置における凹形状の総型工具の形状修正方法であって、
前記レンズ保持部に、平面を有する形状修正用の修正工具を脱着可能に取り付け、前記レンズ保持部の軸心と前記総型工具の軸心を同軸上に位置させる工程と、
前記総型工具の端面に前記修正工具の平面を押圧しながら、前記修正工具を回転させずに前記総型工具を回転させることにより、前記総型工具の端面を加工する工程と、
前記総型工具の端面が所望の位置まで加工された後、前記修正工具を取り外す工程と、
を有することを特徴とする凹形状の総型工具の形状修正方法。 - 凸形状を有するレンズの加工形状に合致した凹形状の加工面を持つ総型工具を使用して、上下動可能なワーク軸に支持されたレンズ保持部にレンズを保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具、若しくはレンズを揺動させてレンズ加工を行うレンズ加工装置における凹形状の総型工具の形状修正方法であって、
前記ワーク軸に測定器を配設し、レンズ保持部からの高さが既知のマスタレンズを前記レンズ保持部に取り付け、前記総型工具と前記マスタレンズが当接するまでワーク軸を降下させ、前記測定器によりワーク軸の位置を読み取った後ワーク軸を上昇させ、平面を有する形状修正用の修正工具を前記マスターレンズの代わりに前記レンズ保持部に取り付け、修正工具の平面が前記総型工具に当接するまでワーク軸を降下させ、測定器によりこのときのワーク軸の位置を読み取り、前記マスターレンズ、修正工具の取り付け時の前記各ワーク軸の位置の差分から前記総型工具の球欠深さを算出し、総型工具形状の修正を行うこと、
を特徴とする凹形状の総型工具の形状修正方法。
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