JP4050835B2 - レンズ加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズを高精度に球面加工するレンズ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レンズ加工をレンズ球面に合致した総型工具を使用して行う際、高能率でかつ高品質な加工を行うために、特開平7―205008号公報に記載の方法および装置などがある。この技術に用いられる装置を図6を用いて説明する。
【0003】
図6において、レンズ31のレンズ加工面31aを加工する球面33aを有する砥石33は、揺動体37に回転自在に取り付けられ、回転モーター35により回転可能となっている。
【0004】
揺動体37は、その下面に砥石33の球面33aの球心Oを中心とした球面部37aが形成されており、球面部37aを介して支承部材38に支承されている。
【0005】
支承部材38には揺動体37の球面部37aと同一の曲率半径の球面に形成された揺動体支承面38aが形成されている。この揺動体支承面38aには空気孔39が設けられ、図示省略した圧縮空気発生装置と接続されており、この空気孔39より圧縮空気を噴出することにより、揺動体37を揺動体支承面38aより浮上させ、非接触の状態で支承することを可能にしている。
【0006】
揺動体37の下部は、揺動モーター36により回転される揺動アーム40に係合され、揺動モーター36が駆動される際に、揺動体37が支承部材38に支承されるとともに球面部37aが揺動体支承面38aに案内されて揺動することを可能にしている。
【0007】
砥石33の上方にはレンズ31をホルダー32を介して加圧する加圧軸41が設けられている。加圧軸41は、その軸心が砥石33の球面33aの球心Oを通る軸線上に位置するように、かつ図示省略された移動手段により上下に移動可能に設けられている。
【0008】
前記の構成からなる加工装置を用いての研削・研磨方法は、まず、砥石33の球面33aにレンズ31のレンズ加工面31aをホルダー32を介して加圧軸41により球心軸線上より加圧し、砥石33を回転モーター35により回転させるとともに、揺動モーター36により揺動アーム40を介して揺動体37の下側全体すなわち下軸を揺動させる。
【0009】
揺動体37は、砥石33の球面33aの球心Oを球心とした球面部37aが案内面となって図示省略した空気圧縮装置からの圧縮空気を介在させて支承部材38の揺動体支承面38aに沿って揺動するので、揺動体37に支承されている砥石33は球心Oを揺動中心(支点)として円を描くように球心揺動する(この時の揺動を、以後、遊星揺動と呼ぶこととする)。この遊星揺動の状態を加工機上方から見た場合、図7(a)のようになり、加工機側面から見た場合、図7(b)のようになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記加工装置にてレンズ31の加工を行う際、工具である砥石33の球面33a側の偏摩耗は抑えられ、加圧も均等にかかり、比較的安定した加工が行うことができる。しかし、遊星揺動することにより、前後左右に下軸が移動することになる。すなわち、加工装置の必要とする移動範囲が広くなり、加工機自体が必要以上に大きくなる。
【0011】
また、前記加工装置では、揺動部分である揺動体37とそれを支承する部分である支承部材38との間に圧縮空気を介在させており、しかも、開放された空間に圧縮空気を供給しているので、常にその圧縮空気を供給し続けなければならない。これは、加工機自体の維持・管理の観点から見ると、不経済である。
【0012】
さらに、加工中においてレンズ加工面31aの曲率が所望曲率と差がある場合には、曲率の修正作業を行うことがある。具体的には、揺動中心角(上軸41に対して砥石軸が揺動する際の、上軸41の中心軸線と砥石軸の中心軸線とで形成される揺動の最大角と揺動の最小角とのなす角度、すなわち中心角)を大きくしたり、小さくしたりして通常行う。しかしながら、遊星揺動は揺動の角度が決まっていて加工が安定しているが故に、このレンズ加工面31aの曲率を修正する作業を行おうとしても、なかなかレンズ31の曲率が変化しないことから、所望曲率と差があるレンズ31をさらに高精度に加工しにくいといった問題点もある。
【0013】
一方、加工機下軸が一平面上で一定ストロークで円弧を描くように往復揺動する下軸揺動式の加工装置では、レンズ51に対して、揺動する下軸側の砥石53の揺動状態は、図8(a)のようになっており(揺動角度θは、砥石53の最下位置から最上位置まで変化する。各位置における砥石軸の中心軸線どうしがなす角度が揺動中心角θ0 となる)、また揺動角速度ωの変化は図8(b)のようになる。具体的には砥石53の揺動方向が逆転する際、すなわち、揺動角θが最大となるときと最小となるとき揺動角速度ωが急激に変化するため、レンズ51に加わる加工抵抗も急激に変化し、結果的には加工形状精度の劣化が起きるという問題が生じていた。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、レンズを研削・研磨加工するにあたって、装置自体を必要以上に複雑にすることなく、維持・管理が容易で、高能率でかつ高精度なレンズ加工を可能とするレンズ加工方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のレンズ加工方法は、レンズ形状に合致した球面を持つ総型工具を使用して、レンズをホルダーに保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具が円弧を描きつつ往復揺動し加工するレンズ加工方法において、前記総型工具の揺動角が最大になるときと最小になるときの揺動角速度を0として、揺動角速度の変化がサインカーブになるように揺動角速度を変化させて加工することを特徴とする。
【0020】
前記請求項1のレンズ加工方法にあっては、総型工具の揺動角速度を加工中に加減速して、急激な加工抵抗の変動を抑える。従来技術における遊星揺動を上方および側面から観察すると、総型工具である砥石33の動きは、図7(a)および(b)のようになり、揺動角速度においては、図7(c)および(d)のようになる。これは、図7(a)のように上方から砥石33の動きを見た場合、遊星揺動により円を描く砥石33の揺動角速度ωは一定なので、側面から見た場合はそのコサイン成分しか見かけの角速度になっておらず、図7(c)のように側面方向から観察した場合は揺動角速度ω’になる。これを時間経過に沿ってグラフ化すると、図7(d)のようになる。これにより、見かけの角速度は、揺動角θが最大または最小の時と中間の時でω’変化していることが判る。すなわち、請求項1および請求項4の円弧を描く往復揺動にこの見かけの角速度ω’を適用することで、急激な加工抵抗の変動を抑えることが可能である。また、下軸の揺動角速度を加工中に一定速に制御して、レンズ加工面の曲率を変化しやすい状態にする。
【0021】
また、前記加工機下軸の揺動角速度ω’が図7(d)のようにサインカーブを描くように変化しているため、その揺動角速度ω’の変化を円弧を描く往復揺動において再現することで、急激な加工抵抗の変化を最小に抑えることが可能である。
【0024】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1を図1から図3に示す。図1は往復揺動を行うレンズ加工装置を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)の側面からの部分断面図である。図2は揺動に対する角速度成分と時間の関係を模式的に表したものである。図3は図1(a)におけるA―A’部分の断面拡大図である。
【0025】
図1において、レンズ形状に合致した球面3aを有する総型砥石としての砥石3が砥石軸4に接続されている。総型砥石としての砥石3は粗研削用、精研削用、研磨用のいずれかの砥石を使用してもよい。この砥石軸4はスピンドル5と一体となっており、さらにスピンドル5は砥石回転モーター7に接続されている。砥石回転モーター7はスピンドル5を回転可能に支承する下軸台座19に固定されており、砥石軸4の軸心回りに砥石3を回転させる。下軸台座19はその外周面に揺動部材9を貫通するように取り付けてあり、この下軸台座19上には揺動部材9を揺動させるための揺動モーター6が、砥石回転モーター7の回転軸線と直交する方向に回転軸線を有するように固定されている。この揺動モーター6は、加工中に揺動角速度の加減速の制御可能な駆動源を構成している。
【0026】
前記揺動部材9は舟型形状に形成され、その下面が揺動部材受け部10により支持されており、揺動部材受け部10は前記舟型形状に見合った凹曲面形状をしている。前記揺動部材9と揺動部材受け部(以下、揺動受け部という)10の間には微小の隙間20が設けられている。図1(a)におけるA―A’部分の断面拡大図である図3は、前記微小の隙間20を有する揺動部材9と揺動受け部10の摺動面部分を示しており、揺動受け部10の摺動面部分は断面で見ると三角状になっており、流体13を供給する流路21が設けられている。この流路21は図示省略した流体供給装置と接続されている。
【0027】
揺動部材9の摺動面部分は上記揺動受け部10に見合った形状になっており、前記流体供給装置から流路21を通じて供給された流体13は前記の微小な隙間20に供給される。この微小な隙間20の外周にはシール12が施されており、流体13が微小な隙間20から外部に漏れることがないように構成され、揺動受け部10に揺動部材9が流体13を介して支承されるようになっている。
【0028】
前記揺動モーター6にはギア15が取り付けられており、ギア15は円弧状のガイド8とかみ合った状態となっている。ガイド8は図示省略した加工機本体に固定されており、揺動モーター6によりギア15がガイド8に沿って回動して前記下軸台座19が揺動し、揺動部材9および砥石3等が円弧を描きつつ往復揺動するようになっている。なお、揺動受け部10には、下軸台座19の揺動を阻害しないように図示省略した開口部分が設けられている。
【0029】
砥石3の上方にはホルダー2に保持されたレンズ1が配置され、レンズ1は凹球面状のレンズ加工面(レンズ球面)1aを砥石3に向けてホルダー2に対し回転自在に支持されている。さらに、そのホルダー2は上軸11に接続されており、加工時には適宜レンズ加工面1aを砥石3に加圧する機構を備えている。この上軸11は砥石3の球面3aにおける曲率中心を通る軸線上に位置しており、かつ図示省略された移動手段により上下に移動可能に設けられている。なお、砥石3における球面3aおよびレンズ1のレンズ加工面1aの曲率中心は往復揺動する円弧の曲率中心と一致した位置にある。
【0030】
上記の構成によれば、図1(a)および図1(b)において、加工開始時にはホルダー2を介して上軸11に保持されているレンズ1が砥石3に接するまで下降し、その後、図示省略した加圧機構によりレンズ加工面1aに上方から圧力が加わる。同時に揺動モーター6を駆動することによりギア15が回転し、ガイド8に沿って下軸全体(砥石3、砥石軸4、揺動モーター6、砥石回転モーター7、揺動部材、ギア15および下軸台座19)14がレンズ加工面1aの曲率中心を揺動中心として揺動する。この揺動の状態図を図2(a)に示している。揺動モーター6は図示省略された制御手段によって、回転速度および回転方向が任意に変えることが可能である。揺動部材9の下面は流体13を介して揺動受け部10にて支承されているので、振動等がなく、安定した状態で下軸全体14が揺動をする。また揺動を行うのと同時に、砥石回転モーター7を駆動することにより、砥石軸4が回転し、砥石軸4に接続された砥石3が回転する。
【0031】
以上のように砥石3の球面3aがレンズ1のレンズ加工面1aに沿って回転および往復揺動することにより加工を行う。すなわち、上軸11からの加圧、砥石3の回転および揺動の要素が加わることにより、レンズ加工面1aの加工が進行する。
【0032】
上記の揺動については図2(b)のように揺動角速度の成分ω’を横軸に、時間Tを縦軸に採った場合、その軌跡がサインカーブを描くように、揺動角速度調整を行う。揺動角速度調整は揺動モーター6を図示省略した数値制御装置等により行う。加工終了時には砥石3の回転および下軸全体14の揺動は停止し、上軸11が上昇する。
【0033】
本実施の形態によれば、レンズ1を研削・研磨加工する際、安定的に揺動運動が行えるとともに、往復揺動する際、揺動の方向が切り替わる位置付近での揺動角速度ω’が徐々に小さくなるため、レンズ1に加わる加工抵抗が急激に変化することはなく、加工形状精度が向上する。また、一平面上で円弧を描きつつ往復揺動するレンズ加工装置を用いるため、装置の必要とするスペースも小さくなり、加工機自体もコンパクトにすることができる。
【0034】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2を図4に示す。図4は実施の形態1と同様に円弧を描く往復揺動により研削・研磨加工を行うレンズ加工装置の一部を示す断面拡大図で、図1におけるA―A’部分を表している。なお、実施の形態1と同一の部分は同一の番号を付して、その説明は省略する。
【0035】
図4は、実施の形態1と同様、レンズ加工形状に見合った総型工具を用いて研削・研磨加工を行う際、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心として、下軸全体が円弧を描くように往復揺動を行いつつ加工を行うレンズ加工装置の揺動部材9と揺動受け部10の摺動面部分を示している。
【0036】
本実施の形態のレンズ加工装置において実施の形態1と異なる点は、まず、揺動部材9および揺動受け部10の形状が断面で見た場合、その摺動面部分が四角状になっている点である。次いで、揺動受け部10より流体13を供給する際、実施の形態1においては微小径の流路21を設けてあり、流路21から揺動部材9と揺動受け部10の微小な隙間20に流体13を供給していたが、本実施の形態においては流体13を供給する流路21を有する揺動受け部10の面に、揺動部材9の四角状凹部より小さい有気孔部材16を配し、揺動部材9と有気孔部材16の間に微小な隙間20を形成してある。この有気孔部材16は内部に流体13を通過する微小の穴が無数にある部材で、材質は特殊金属、特殊樹脂等がある。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0037】
上記構成によるレンズ加工装置を用いて実施の形態1と同様に、砥石3がレンズ1のレンズ加工面1aに沿って回転および往復揺動することにより加工を行う。このとき揺動については図2(b)のように揺動角速度の成分ω’を横軸に、時間Tを縦軸に採った場合、その軌跡がサインカーブを描くように、揺動角速度調整を行うのも実施の形態1と同じである。そして、揺動に際し、揺動部材9および揺動受け部10における摺動面部分の形状が断面で見ると四角状になっていることにより、垂直方向・水平方向の力をそれぞれ分散して受けることができる。
【0038】
次いで、揺動受け部10の流路21より流体13を供給する際、流体13を供給する面に有気孔部材16を配してあることにより、微小な隙間20には、ある特定の流路から流体13が供給されるのではなく、有気孔部材16の内部に無数にある微細孔から流体13が供給されるため、実施の形態1より均一に面圧がかかり、より安定した状態で揺動部材9を支承することができる。さらに実施の形態1においては揺動部材9と揺動受け部10の形状精度・面粗さなどにおいて良好な面が必要とされるが、有気孔部材16を使用する場合は形状精度・面粗さなどに対する影響が少なく、均一な面圧が得られる。その他の作用は実施の形態1と同様である。
【0039】
本実施の形態によれば実施の形態1と同様に、レンズ1を研削・研磨加工する際、揺動の方向が切り替わる位置付近での揺動速度が小さくなるため、レンズ1に加わる加工抵抗が急激に変化することはなく、加工形状精度が向上する。また、一平面上で円弧を描きつつ往復揺動するレンズ加工装置を用いるため、装置の必要とするスペースも小さくなり、加工機自体もコンパクトにできる。さらに、揺動部材9と揺動受け部10間に有気孔部材16を通して流体13を介在させることにより、流体13の面圧が安定し、スムーズな揺動角速度変化および揺動運動が行われる。さらに揺動部材9および揺動受け部10の形状精度、面粗さを重要視しなくとも良いので、上記部品の製作においても簡易化できる。
【0040】
[実施の形態3]
本実施の形態を図2(a)(b)および図5(a)(b)を用いて説明する。なお、実施の形態1および実施の形態2と同一の部分は同一の番号を付して、その説明は省略する。
【0041】
図2(a)(b)および図5(a)(b)において、実施の形態1と同様、レンズ形状に見合った総型工具を用いて研削・研磨加工を行う際、レンズ加工面1aの曲率中心を揺動中心として、下軸全体が円弧を描くように往復揺動を行いつつ加工を行うレンズ加工装置における側面図および揺動角速度の変化を表したものである。
【0042】
本実施の形態のレンズ加工装置および加工方法において、実施の形態1および実施の形態2と異なる点は、図2(a)(b)に基づく加工を行った際に、レンズ1の曲率が所望曲率と差が生じた場合、図5(a)(b)の状態に切り替えて、揺動中心角θ0 +Δθおよび揺動角速度ω”と変化を与えることにある。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0043】
上記構成によるレンズ加工装置を用いて実施の形態1と同様に、図2(a)のように砥石3の球面3aがレンズ1のレンズ加工面1aに沿って回転および往復揺動(この時の揺動中心角をθ0 とする)することにより加工を行う。このとき揺動については図2(b)のように揺動角速度の成分ω’を横軸に、時間Tを縦軸に採った場合、その軌跡がサインカーブを描くように、数値制御装置の指令により揺動モーター6を介して揺動角速度調整を行う。
【0044】
レンズ1の加工後に加工した球面の曲率半径Rを測定した結果、曲率半径Rが所望の曲率半径と差がある場合、この曲率半径を修正する際は、レンズ1の曲率半径Rを微小の値だけ大きく、もしくは小さくするために揺動中心角θ0 を変化させる。しかし、揺動中心角θ0 のみを変化させただけでは、加工状態が安定しているため、曲率半径Rは変化しにくい。そこで、図5(a)(b)のように、揺動中心角θ0 +Δθ(だだしΔθはプラスの値またはマイナスの値をとりうる)とし、また揺動角速度を一時的に従来の直進揺動と同じように揺動角速度ω”を一定に保つような揺動角速度調整を行う。これにより、揺動中心角θ0 +Δθおよび揺動角速度ω”に変化してレンズ1の曲率半径Rの変化のレスポンスが良くなり、曲率半径Rが容易に変化する。レンズ1の曲率半径Rが所望の値に近づいてきたら、再度、図2(a)(b)のように揺動角速度調整を行う。これにより、レンズ1の曲率半径Rを所望の曲率半径にしやすくなり、安定した状態になり、さらに加工形状精度が維持される。
【0045】
本実施の形態によれば実施の形態1と同様に、レンズ1を研削・研磨加工する際、揺動の方向が切り替わる位置付近での揺動角速度ω’が小さくなるため、レンズ1に加わる加工抵抗が急激に変化することはないので、加工形状精度が向上する。
【0046】
さらに、レンズ1の曲率半径Rを積極的に変化させる際、すなわち曲率半径Rが所望のものと差があってその修正を行う際、一時的に揺動角速度ω”を一定にすることにより容易に所望の曲率半径にまで変化させることができ、その後、揺動角速度ω’にして再度加工形状精度の高い安定した加工を行うことができる。
【0047】
なお、実施の形態1〜3中においては、凹球面のレンズ1についてのみ説明したが、凸形状のレンズについても全く同様の構成にて加工を行うことができ、その効果においても何ら差が生じることはない。
【0048】
さらに、説明においてレンズ1を保持する軸を上軸11として加工を行うように記載したが、その逆にレンズ1を下軸とし砥石3を上軸11として加工を行う方式を用いても、その効果に何ら差が生じることはない。
【0049】
【発明の効果】
本発明の請求項1のレンズ加工方法によれば、総型工具の揺動角速度を加工中に加減速することにより、揺動角速度の急激な変化に起因する加工形状精度の劣化を抑えることができる。
【0050】
また、揺動角速度の変化がサインカーブを描くように制御することにより、遊星揺動と同じような加工形状精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のレンズ加工装置を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)の側面からの部分断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1〜3のレンズ加工方法を示し、図2(a)はレンズ加工装置の揺動状態を示す側面図、図2(b)は揺動角速度の変化を示す図である。
【図3】図1(a)のA―A’部分の断面拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態2のレンズ加工装置の一部を示す断面拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態3のレンズ加工方法を示し、図5(a)はレンズ加工装置の揺動状態を示す側面図、図5(b)は揺動角速度の変化を示す図である。
【図6】従来技術のレンズ加工装置を示す断面図である。
【図7】従来技術の遊星揺動を説明するための図である。
【図8】従来の技術のレンズ加工方法を示し、図8(a)はレンズ加工装置の揺動状態を示す側面図、図8(b)は揺動角速度の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 レンズ
1a レンズ加工面
2 ホルダー
3 砥石
3a 球面
4 砥石軸
5 スピンドル
6 揺動モーター
7 砥石回転モーター
8 ガイド
9 揺動部材
10 揺動部材受け部
11 上軸
12 シール
13 流体
14 下軸
15 ギア
16 有気孔部材
19 下軸台座
20 隙間
21 流路
Claims (1)
- レンズ形状に合致した球面を持つ総型工具を使用して、レンズをホルダーに保持した状態で前記総型工具に押圧し、前記総型工具を回転させつつ、レンズ加工面の曲率中心を揺動中心とし、前記総型工具が円弧を描きつつ往復揺動し加工するレンズ加工方法において、前記総型工具の揺動角が最大になるときと最小になるときの揺動角速度を0として、揺動角速度の変化がサインカーブになるように揺動角速度を変化させて加工することを特徴とするレンズ加工方法。
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