たとえば回路基板を備える電子機器を製造しようとする場合、工場内の実装ラインにおいて、回路基板への電子部品の実装を自動で行なうための一連の工程が実施される。そのため、実装ラインには、通常、回路基板を1個ずつ供給する基板供給部と、回路基板にクリーム半田を印刷するクリーム半田印刷部と、クリーム半田印刷状態を検査するクリーム半田検査部と、電子部品を回路基板に接着するための接着剤を塗布する接着剤塗布部と、電子部品を回路基板に高速でマウントする部品マウント部と、マウント後の回路基板上の電子部品の欠品や位置ずれ等を検査するマウント部品検査部と、クリーム半田を溶融し半田付けを行なうリフロー半田付け部と、半田付けの状態や電子部品の実装状態等を外観により検査する外観検査部と、電子部品の実装を終えた回路基板を収納する基板収納部とが、この順序で配置されている。そして、回路基板が1個ずつ上述の実装ラインへと送られることによって、所望の電子機器が1個ずつ製造される。
実装ラインにおける上述の部品マウント部には、図10に概略的に図示するような構成を有する部品マウント機51が備えられている。
図10を参照して、部品マウント機51は、前述したように、クリーム半田印刷および接着剤塗布を終えた回路基板52を、矢印53で示すように、1個ずつ、部品マウント位置54へと送り込む機構を備えている。部品マウント機51は、また、電子部品を受け入れかつ供給するための複数個の部品供給部55a〜55e,…を備えている。
電子機器の製造のために用いられる複数個の電子部品は、その種類毎に分けられた状態で、部品供給部55a〜55e,…の各々によって取り扱われる。ここで、電子部品の種類とは、電子部品の機能、寸法または特性等のいずれかの観点から分類したものである。なお、図10において、個々の電子部品については図示されないが、部品供給部55a〜55e,…の各々には、電子部品の種類を区別するため、A〜E,…の記号が記入されている。
上述の部品供給部55a〜55e,…の各々によって取り扱われる電子部品A〜E,…のうちの所望のものが、図示しない吸着ノズル等によって保持された状態で、矢印56で示すように、部品マウント位置54まで搬送され、ここで、回路基板52の所望の位置にマウントされる。
以上説明した工程は、セットメーカー側で実施されるものであり、部品供給部55a〜55e,…の各々によって取り扱われる電子部品A〜E,…は、部品メーカーから供給される。したがって、部品メーカーでは、セットメーカーへの出荷および運送のため、電子部品に対して、適当な包装を施すことが行なわれる。
上述した電子部品の包装形態としては、種々のものがある(たとえば、特許文献1および2参照)。典型的には、複数個の電子部品をテープに保持した状態とするテーピング方式、複数個の電子部品を整列させてマガジンに詰めるマガジン方式、複数個の電子部品をバルク状態(ばらの状態)で剛体からなるケースに詰めるバルクケース方式、あるいは、複数個の電子部品をバルク状態で袋詰めする袋詰め方式などがある。これらの包装形態は、それぞれ、長所および短所を有している。したがって、いずれの包装形態を採用するかについては、これら長所および短所を考慮した上で決定される。
たとえば、電子部品の小型化が極端に進んだ場合、テーピング方式やマガジン方式では電子部品を取り扱うこと自身が困難となる。さらに、テーピング方式やマガジン方式の場合には、包装材の節減に限界があり、また、塵埃や紙屑等が生じることを避けられない。これらのことから、複数個の電子部品をバルク状態で取り扱うバルクケース方式または袋詰め方式が近年注目されている。
複数個の電子部品をバルク状態で取り扱うようにした包装形態のうち、袋詰め方式は、簡易かつ安価であるという利点を有している。他方、バルクケース方式は、現在では、公規格化されており、どの部品メーカーにとっても共通して採用可能な包装形態である。前述した部品マウント機51に備える部品供給部55a〜55e,…への電子部品A〜E,…の供給の利便性を考慮したときには、バルクケース方式がより優れている。
しかしながら、バルクケース方式には、次のような問題がある。
バルクケースは容積が決まっているため、その内部に収納される電子部品の数量が標準収納数量よりも少ない場合、移送時等にもたらされる振動によって、バルクケース内の電子部品同士が激しく擦れ合い、その結果、電子部品の端子電極が酸化したり、灰色や黒色に汚れたり、半田付け性が悪くなったりすることがある。
また、収納数量が少ない場合、バルクケース自体のコストは一定であるため、結果的に、電子部品のコストが高くなる。
また、バルクケースは、電子部品の取り出し口に関連してシャッター構造が採用されているが、そのため、内部の電子部品を気密性高く保管することができない。その結果、バルクケース内に水分や埃などが侵入し、これらの影響によって、上述した場合と同様、電子部品の端子電極の品質が劣化したり、電子部品の特性が劣化したりすることがある。
また、バルクケースはリユース・リサイクルが容易ではあるが、リユース体制の確立が特に発展途上国において困難であり、また、リユースのための輸送コスト等が高くつくという問題もある。
他方、袋詰め方式にあっては、以上のようなバルクケース方式が遭遇する問題を解決できる点で注目される。
特開昭63−272686号公報
特開平2−258581号公報
袋詰め方式による包装形態は、バルクケース方式による包装形態では得られない利点を有しているものの、その構造があまりにも単純であるため、構造に点についての改善の余地はほとんどないと認識されている。しかしながら、特に電子部品の需要者すなわちセットメーカー側の立場で考えたとき、袋詰め方式による包装形態には、次のような問題があり、これを改善することが望まれる。なお、以下の問題は、袋詰め方式に限らず、バルクケース方式においても遭遇し得るものである。
たとえば、図10に示すような回路基板52を備える電子機器を製造しようとする場合、実装ラインにおいて、回路基板52は、たとえば数百個程度を1単位のロットとして準備されかつ管理される。ここで、部品マウント機51において取り扱われる電子部品は、多種多様であり、製造しようとする電子機器の1ロット毎に使用される種類および数の電子部品が準備されかつ管理されなければならない。
たとえば、積層セラミックコンデンサを例にすると、
(1)平面寸法:1.0mm×0.5mm;容量:10000pF;温度特性:F、
(2)平面寸法:1.0mm×0.5mm;容量:100pF;温度特性:CH、
(3)平面寸法:1.0mm×0.5mm;容量:1000pF;温度特性:B、
(4)平面寸法:1.0mm×0.5mm;容量:100000pF;温度特性:B、
(5)平面寸法:1.0mm×0.5mm;容量:10000pF;温度特性:B、
というように、その寸法、容量値、温度特性などのいずれかの点について異なる、様々な種類のコンデンサが、各々所定数ずつ準備されかつ管理されなければならない。
したがって、セットメーカーにおいて、電子機器を製造するためのマウント工程を進めるにあたっては、マウント工程で用いられる種類および数の電子部品を、図10に示した部品マウント機51に備える部品供給部55a〜55e,…にそれぞれ供給することが行なわれる。
上述のような部品マウント機51への電子部品の供給は袋単位で行なわれる。すなわち、電子部品を部品マウント機51へ供給する場合には、1個の袋内に収納されている複数個の電子部品のすべてを部品供給部55a〜55e,…の各々へ投入するようにされる。他方、袋詰め方式による包装形態においては、たとえば、電子部品Aでは10000個、電子部品Bでは1000個というように、電子部品の種類に応じて、1個の袋内に収納される数量が決められている。
このような状況の下、部品マウント機51に供給された複数種類の電子部品の各々の数は、実際に必要とする数より多くなる傾向がある。そのため、たとえば、電子部品Aをほぼ使い尽くしたとしても、電子部品Bが部品マウント機51に多数残ってしまうことがある。
前述した積層セラミックコンデンサを例として、より具体的に説明すると、当初、各々5000個のコンデンサ(1)〜(5)が部品マウント機51に備える部品供給部55a〜55eに投入されていると仮定し、かつ、1個の電子機器を製造するため、1個の回路基板52を必要とし、1個の回路基板52には、3個のコンデンサ(1)、1個のコンデンサ(2)、2個のコンデンサ(3)、5個のコンデンサ(4)、および4個のコンデンサ(5)が用いられると仮定する。また、1ロット分が450個の回路基板52に対応すると仮定する。
上述の場合において、1ロット分、すなわち450個の電子機器を製造するためには、1350個のコンデンサ(1)、450個のコンデンサ(2)、900個のコンデンサ(3)、2250個のコンデンサ(4)、および1800個のコンデンサ(5)が消費される。
したがって、たとえば2ロット分の回路基板52が生産された後では、2300個のコンデンサ(1)、4100個のコンデンサ(2)、3200個のコンデンサ(3)、500個のコンデンサ(4)、および1400個のコンデンサ(5)が部品供給部55a〜55eに残されている。
このように、コンデンサの消費数が種類毎に異なるので、ある種類のコンデンサについては、さらなるロットの生産が可能な程度の残量があるにも関わらず、他の種類のコンデンサについては、単に1ロットでさえ生産できない数しか残っていない状況になることがある。
また、部品マウント機51の高速化により、比較的短時間で電子部品を消費してしまう傾向があり、そのため、作業者は、部品マウント機51に備える部品供給部55a〜55e,…を常に監視し、空になった部品供給部には、所定の電子部品を補充したり、あるいは、空になった部品供給部を、所定の電子部品が充填された新たな部品供給部と交換したりする必要がある。このような電子部品の補充または部品供給部の交換時には、実装ラインをある時間停止させなければならず、部品実装の作業効率が低下する原因となり、また、部品補給の自動化および無人化を困難なものとしている。
また、異なる種類の電子部品A〜E,…が収容された部品供給部55a〜55e,…の各々では、随時すなわち互いに異なる時点で、電子部品が消費され尽くすので、部品マウント機51が高速化されるほど、上述したように、部品供給部55a〜55e,…のいずれかが空になることによる実装ラインの停止をより頻繁に行なわなければならなくなる。
さらに、予定数のロットを生産し終わった後に、残った電子部品の在庫管理が必要となり、その後の生産で使用するための個数管理が必要となるが、このような管理は煩雑であり、そのためのコストは、決して無視できる程度のものではない。そのため、この管理コストを削減するため、残った電子部品は、ロットの切り替え時に、在庫として管理することを行なわず、廃棄することさえ行なわれているのが現状である。
以上のようなセットメーカー側での電子部品の使用状況を考慮したとき、まず、比較的煩雑な在庫管理が解消されることが望まれる。また、電子部品の無駄を無くすための改善も望まれる。なお、これらのことは、特に中小規模のセットメーカーにおいて強く望まれている。さらに、部品実装の作業効率が低下する原因となる、電子部品の補充または部品供給部の交換の頻度を低減し得ることも望まれる。
そこで、この発明の目的は、上述のような要望を満たし得る、電子部品の出荷方法を提供しようとすることである。
この発明に係る電子部品の出荷方法は、以下に説明するような電子部品の包装形態と密接に関連している。この包装形態は、基本的には、袋詰め方式によるものであり、次のような構成を備えることを特徴としている。
すなわち、この包装形態は、可撓性を有するフィルムからなる複数個の袋が集合化された形態を有する包装体と、各袋内に収納された複数個の電子部品とを備えている。
そして、特定の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために用いられる複数種類の電子部品が、種類毎に分けられて各袋内に収納された状態で1個の包装体によって保持されていて、かつ、1個の包装体に保持されている電子部品の各種類毎の数は、所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数と等しくされていることを特徴としている。
なお、上記のように、「1個の包装体に保持されている電子部品の各種類毎の数」に等しいとされる「所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数」は、「所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために必要な電子部品の各種類毎の数」とは必ずしも一致しないことに注目すべきである。
すなわち、「所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数」は、「所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために必要な電子部品の各種類毎の数」より多くなる場合があることを想定している。
より具体的には、上述の包装形態をもって提供される電子部品は、セットメーカーにおいて、すべて無駄なく用いられるとは限らない。たとえば、半田付け不良や実装不良などによって、特定の種類の特定数の電子部品が無駄に消費されてしまうことがある。そのため、これら不良の発生状況に応じて、消費される電子部品の数が変動する。したがって、このような変動を考慮した上で余裕のある数とされたのが、「準備されるべき電子部品の数」ということになり、この数にはある程度の幅がある。
前述の包装体は、複数個の袋が一方向に連なって連結されているテープ状をなしていることが好ましい。この好ましい実施態様において、包装体には、互いに隣り合う袋間において分断を容易にするためのミシン目が形成されていることが好ましい。
また、上記好ましい実施態様において、各袋の容量は、互いに等しくされても、互いに異ならされてもよい。なお、袋は可撓性を有するフィルムからなるものであるので、実際には、袋の形態によって容積が異なってくる。したがって、ここでいう袋の容量とは、袋が最大限与え得る容量であると理解すればよい。
各袋の容量が互いに等しい場合、典型的には、所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数と等しい数の電子部品が、種類毎に分けられて、各袋内に収納される。したがって、各袋に収納される電子部品の数量によって収納空間を満たす度合いが異なってくる。ここで、電子部品の数量とは、電子部品の数だけでなく、電子部品の嵩という意味も含んでいる。
なお、各袋の容量が互いに等しくされながら、1個の包装体によって保持されるべき電子部品の各種類についての数量に応じて、各電子部品の収納に用いられる袋の数が異ならされてもよい。
他方、各袋に収納される電子部品の数量に応じて、各袋の容量が異ならされてもよい。この場合、各袋の幅方向寸法をテープ状の長手方向に測定した寸法とし、各袋の高さ方向寸法をテープ状の長手方向に直交する方向に測定した寸法としたとき、各袋の高さ方向寸法が互いに等しく、各袋の幅方向寸法が、当該袋に収納される電子部品の数量に応じて異ならされることが好ましい。
また、この包装形態において、包装体は、連結されずに互いに独立した複数個の袋およびこれら複数個の袋を集合化して収納する荷造り用容器を備えていてもよい。
各袋が形成する収納空間は、当該収納空間内の電子部品の取り出す方向に向かって先細状となるようにされていることが好ましい。
以上のような関連技術の下、この発明は、特定の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために、部品マウント機の部品供給部に投入して用いられる複数種類かつ複数個の電子部品を、部品メーカーから、上記マウント工程を進めるセットメーカーへと出荷するための電子部品の出荷方法に向けられる。
この発明に係る電子部品の出荷方法は、部品メーカーがセットメーカーでの上記特定の電子機器についての生産計画情報を入手するステップと、部品メーカーにおいて、この生産計画情報に基づいて、所定期間の間にマウント工程で使用される予定となっている電子部品の種類および数量を決定するステップと、決定された電子部品の種類および数量に基づき、電子部品を少なくとも種類毎に分けてばらの状態で収納されるようにパッケージ化した1個の包装体を作製するステップと、この包装体を部品メーカーからセットメーカーへと出荷するステップとを備えることを特徴としている。
この発明に係る電子部品の出荷方法において、前述した電子部品の包装形態が有利に適用される。そのため、この出荷方法において作製される包装体は、可撓性を有するフィルムからなる複数個の袋が集合化された形態を有していて、電子部品は、種類毎に分けられて各袋内に収納されていることが好ましい。この場合、包装体は、前述したように、複数個の袋が一方向に連なって連結されているテープ状をなしていても、互いに独立した複数個の袋およびこれら複数個の袋を集合化して収納する荷造り用容器を備えていてもよい。
この発明に関連する前述の包装形態によれば、複数個の袋が連結された形態を有する包装体を備え、特定の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために用いられる複数種類の電子部品が、種類毎に分けられて各袋内に収納された状態で1個の包装体によって保持されるとともに、1個の包装体に保持されている電子部品の各種類毎の数は、所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数と等しくされているので、各袋内に電子部品を収納した状態にある1個の包装体さえ用意すれば、所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めることができる。したがって、煩雑な在庫管理が不要になるとともに、すべての種類の電子部品について、使用されずに部品マウント機に残されてしまう電子部品を無くすか、その数を少なくすることができる。
また、この包装形態は、基本的に、袋詰め方式のものであるので、前述したようなバルクケース方式において遭遇した問題を回避することができる。すなわち、振動によって、電子部品同士が激しく擦れ合うことがなく、電子部品の端子電極の品質が劣化することを防止できる。また、電子部品を、たとえば合成樹脂フィルムのようなフィルムからなる袋によって密封することができるので、外部からの影響を受けにくくすることができる。また、袋は、バルクケースに比べて、極めて安価であるので、電子部品の包装形態を得るためのコストを格段に低くすることができる。また、バルクケースに比べて嵩張りが小さいため、輸送コストを低減することができる。また、バルクケースに比べて、リサイクル・リユースのためのコストを低減することができる。また、この包装形態は、電子部品の寸法にとらわれず、種々の寸法の電子部品に対応することができる。
この包装形態において、包装体がテープ状をなしていると、これをリールに巻いたり、つづら折りにしたりすることができ、包装体および電子部品をコンパクトな状態で取り扱うことができる。
包装体にミシン目が形成されていると、互いに隣り合う袋間において容易に分断することができるようになり、このように分断することにより、部品マウント機に各種類の電子部品を供給するための作業を、従来の袋詰め方式の場合と同様に進めることができる。
各袋の容量が互いに等しくされ、1個の包装体によって保持されるべき電子部品の各種類についての数量に応じて、各電子部品の収納に用いられる袋の数が異ならされていると、収納すべき電子部品の数量が変更された場合であっても、共通の包装体を用いることができるので、包装体を製造するためのコストの低減を図ることができる。
他方、各袋の容量が、当該袋に収納される電子部品の数量に応じて異ならされ、この場合において、各袋の高さ方向寸法が互いに等しく、各袋の幅方向寸法が、当該袋に収納される電子部品の数量に応じて異ならされると、テープ状の包装体の幅方向寸法を一様にすることができる。そのため、包装体をリールに巻いたり、つづら折りにしたり、あるいはこれらから包装体を引き出したりするなどの取り扱いがより容易になる。
また、各袋が形成する収納空間が、当該収納空間内の電子部品の取り出し方向に向かって先細状となるようにされていると、多数の電子部品を、こぼすことなく、袋から部品マウント機の部品供給部に備える、たとえばホッパ等へ迅速に投入することができる。
以上のような包装形態を適用して実施される、この発明に係る電子部品の出荷方法によれば、セットメーカーに対して、部品メーカー側から、所定期間に使用される予定の複数種類かつ複数個の電子部品を、少なくとも種類毎に分けてばらの状態で収納されるようにパッケージ化した状態で、キット販売のような単位あたりの出荷形態として出荷されるので、セットメーカー側では、これら電子部品を部品マウント機の各部品供給部に投入するだけで、所定期間の生産が可能となる。したがって、煩雑な在庫管理が不要になる。また、すべての種類の電子部品について、使用されずに部品マウント機に残されてしまう電子部品を無くすか、その数を少なくすることができる。
図1は、この発明の第1の実施形態を説明するためのもので、この発明に係る電子部品の出荷方法を実施する際に適用される電子部品の包装形態を示す正面図である。
図1に示した包装形態は、合成樹脂フィルムのような可撓性を有するフィルムからなる複数個の袋1〜5,…が一方向に連なって連結(集合化)された形態を有するテープ状の包装体6と、袋1〜5,…の各々内に収納された複数個の電子部品とを備えている。なお、図1において、個々の電子部品については図示されないが、集合状態にある複数個の電子部品の上面の位置を示すための破線が図示され、また、電子部品の種類を区別するためにA〜E,…の記号が付されている。
これら電子部品A〜E,…は、特定の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために用いられるものである。複数種類の電子部品A〜Eは、たとえば、それぞれ、前述した積層セラミックコンデンサ(1)〜(5)であり、その寸法、容量値、温度特性などのいずれかの点が異なっている。これら複数種類の電子部品A〜E,…は、上述のように、種類毎に分けられて袋1〜5,…の各々内に収納された状態で1個の包装体6によって保持(集合化)されている。
また、1個の包装体6に保持されている電子部品A〜E,…の各種類毎の数は、ある日の生産計画に基づいて所定ロット数の電子機器を製造するためのマウント工程を進めるために準備されるべき電子部品の各種類毎の数と等しくされている。
前述した積層セラミックコンデンサについてのより具体的な例に従って説明すると、1個の電子機器を製造するため、1個の回路基板を必要とし、1個の回路基板には、3個のコンデンサ(1)、1個のコンデンサ(2)、2個のコンデンサ(3)、5個のコンデンサ(4)、および4個のコンデンサ(5)が用いられ、かつ、1ロット分が450個の回路基板に対応する場合、1ロット分、すなわち450個の電子機器を製造するために、1350個のコンデンサ(1)、450個のコンデンサ(2)、900個のコンデンサ(3)、2250個のコンデンサ(4)、および1800個のコンデンサ(5)が用いられる。
このような場合、図1に示す電子部品A、B、C、DおよびEが、それぞれ、コンデンサ(1)、(2)、(3)、(4)および(5)に相当しているとすれば、たとえば、袋1には、1350個のコンデンサ(1)が収納され、袋2には、450個のコンデンサ(2)が収納され、袋3には、900個のコンデンサ(3)が収納され、袋4には、2250個のコンデンサ(4)が収納され、袋5には、1800個のコンデンサ(5)が収納される。
したがって、袋1〜5,…の各々に電子部品A〜E,…が収納された状態にある1個の包装体6を用意し、そして、袋1〜5,…の各々に収納されている電子部品A〜E,…を、それぞれ、図10に示した部品マウント機51における部品供給部55a〜55e,…に投入すれば、所定ロット数の電子部品を製造するためのマウント工程を進めることができる。上述したより具体的な例では、1個の包装体6によって保持されているコンデンサ(1)〜(5)を用いると、1ロット分、すなわち450個の電子機器を製造するためのマウント工程を進めることができる。
なお、袋1〜5,…の各々に収納される電子部品A〜E,…の各々の数は、必要に応じて変更することができる。たとえば、マウント工程を進め得るロット数をより多くするため、前述したより具体的な例における数の整数倍に変更することができる。また、マウント工程において生じ得る半田付け不良や実装不良などによって、特定の種類の特定数の電子部品が無駄に消費されてしまうことがあり得ることを考慮して、電子部品A〜E,…の各々について、たとえば数個ないし数十個、余分に収納するようにしてもよい。
図2には、図1に示した包装体6の一部、たとえば袋1およびこれに隣り合う袋2の一部が拡大されて示されている。
袋1〜5,…を構成するフィルムは、たとえばポリアミド層およびポリエチレン層を含む2層以上のラミネート構造を有する合成樹脂から構成され、図2においてシール部分7を示すように、熱シールされることによって、袋1〜5,…の各々の形状が与えられる。なお、熱シールに代えて、たとえば接着剤を用いて、シール部分7が形成されてもよい。また、袋1〜5,…を構成するフィルムは、合成樹脂フィルムのほか、紙、合成紙等から構成されてもよい。
また、包装体6には、袋1〜5,…の互いに隣り合うものの間において容易に分断できるようにするため、ミシン目8が形成されている。セットメーカー側において、部品マウント機へ所定の電子部品を供給する場合には、袋1〜5,…がミシン目8に沿って互いに分断され、そして、袋1〜5,…の各々の周縁部の所定の部分、たとえば図1における下の辺の部分に開口が形成され、中の電子部品が取り出される。
袋1〜5,…の各々の表面には、内部の電子部品A〜E,…の各々に関する情報を表示しておくことが好ましい。たとえば、図2において袋1について図示されるように、ラベル9が貼付され、ラベル9には、電子部品の名称、品番、数量、使用日等が表示される。なお、ラベル9の貼付に代えて、たとえばインクジェット印刷などによる印字可能な領域を、袋1〜5,…の各々の表面に直接設けるようにしてもよい。
なお、上述したラベル9等による電子部品に関する情報の表示は、特に説明しないが、後述する第2以降の実施形態においても採用されることができる。
また、袋1〜5,…を構成するフィルムは、中の電子部品を確認できる透明性を有していることが好ましく、また、中の電子部品が静電気によって付着しない程度の表面抵抗値あるいは帯電性能を与えるように、静電防止処理が施されることが好ましい。
また、袋1〜5,…の各々の寸法は、収納されるべき電子部品の最大収納数量に合わせて決定されるが、たとえば、平面状態において、数〜数100cm2 程度の面積を有するようにされる。また、袋1〜5,…を構成するフィルムは、30〜300μm程度の厚みのものが用いられ、最大収納数量の電子部品を収納した状態で、1mの高さから床面に落として、破れたり、中の電子部品がこぼれ出したりしないようにされることが好ましい。また、袋1〜5,…を構成するフィルムは、たとえば、−30℃〜80℃の温度範囲での耐寒・耐熱性を有していることが好ましい。
袋1〜5,…の各々の容量が互いに等しいにも関わらず、袋1〜5,…の各々内に収納される電子部品A〜E,…の各々の数量が異なるため、たとえば、袋2内の電子部品Bのように、袋の容量に比べて、収納される電子部品の数量が少ない場合、外部から加えられる振動等によって、袋内の電子部品同士が激しく擦れ合うことがある。この問題を解決するためには、袋内の空気を抜き、真空パック状態にしたり、袋内にスポンジのような弾性体を挿入したりすればよい。
図1に示すように、包装体6は一様な幅方向寸法を有しているので、これをリールに巻いたり、つづら折りにしたりすることが容易である。したがって、部品メーカーからセットメーカーへの輸送時や、倉庫内での保管時には、このようにリールに巻いたりつづら折りにしたりして、コンパクトな状態としておくことができる。
以上説明した第1の実施形態では、一連のフィルムから包装体6を形成し、この包装体6の長手方向に分布する各部分をもって、袋1〜5,…を形成したが、袋1〜5,…の各々を独立した状態で製造し、これらを、たとえば樹脂ホックやリングまたはバンドによる結束によって、互いに連結(集合化)した状態としてもよい。
また、第1の実施形態では、袋1〜5,…の各々の周縁部にシール部分7を形成することによって、中の収納空間を閉じるようにしたが、たとえば、粘着テープによる折り返し止めや、ゴムバンド止めや、樹脂製ステープル止めなどが採用されてもよい。
図3ないし図5には、それぞれ、この発明の第2ないし第4の実施形態を説明するためのものである。図3ないし図5は、図1に対応する図である。図3ないし図5において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。したがって、第2ないし第4の実施形態に関して、特に説明しない事項については、第1の実施形態の場合と同様であると理解すればよい。
図3を参照して、第2の実施形態では、袋1〜5,…の各々の容量が、そこに収納される電子部品A〜E,…の数量に応じて異ならされていることを特徴としている。特に、この実施形態では、袋1〜5,…の各々の寸法に関して、次のような特徴を有している。
すなわち、袋1〜5,…の各々の幅方向寸法をテープ状の包装体6の長手方向に測定した寸法とし、袋1〜5,…の各々の高さ方向寸法をテープ状の包装体6の長手方向寸法に直交する方向に測定した寸法としたとき、袋1〜5,…の各々の幅方向寸法が互いに等しくされ、袋1〜5,…の各々の高さ方向寸法が、そこに収納されている電子部品A〜E,…の数量に応じて異ならされている。
図4を参照して、第3の実施形態では、第2の実施形態と同様、袋1〜5,…の各々の容量が、収納される電子部品A〜E,…の数量に応じて異ならされるが、特に第3の実施形態では、袋1〜5,…の各々の高さ方向寸法が互いに等しくされながら、袋1〜5,…の各々の幅方向寸法が、収納される電子部品A〜E,…の数量に応じて異ならされる。
上述の第3の実施形態によれば、テープ状の包装体6の幅方向寸法を一様にすることができるので、第1の実施形態の場合と同様、リールに巻いたり、つづら折りにしたりすることが容易である。
図5を参照して、第4の実施形態では、袋11〜25,…の各々の容量は互いに等しくされる。この点で、第1の実施形態の場合と同様である。第4の実施形態では、1個の包装体6によって保持されるべき電子部品の各種類についての数量に応じて、各電子部品の収納に用いられる袋の数が異ならされていることを特徴としている。
より具体的には、袋11〜25,…の各々の容量が450個の電子部品の収納能力を有しているとき、電子部品Aが1350個収納されるべきであるとすると、3個の袋11〜13を用いて、電子部品Aが収納される。同様に、電子部品Bが450個収納されるべきであるとすると、1個の袋14を用いて、電子部品Bが収納される。電子部品Cが900個収納されるべきであるとすると、2個の袋15および16を用いて、電子部品Cが収納される。電子部品Dが2250個収納されるべきであるとすると、5個の袋17〜21を用いて、電子部品Dが収納される。電子部品Eが1800個収納されるべきであるとすると、4個の袋22〜25を用いて、電子部品Eが収納される。
このように、第4の実施形態によれば、袋11〜25,…の各々の寸法を等しくすることができるので、収納されるべき電子部品の数量が変更されても、袋11〜25の各々の寸法を変更する必要がない。したがって、複数の袋11〜25,…の形成を能率的に行なうことができる。また、第4の実施形態によっても、包装体6の幅方向寸法を一様なものとすることができる。
図6は、この発明の第5の実施形態を説明するためのもので、電子部品の包装形態を示す図である。
前述した第1ないし第4の実施形態では、包装体6は、複数個の袋1〜5,…または11〜25,…が連結された形態を有していたが、この第5の実施形態では、包装体26は、互いに独立した複数個の袋27〜29,…を備えるとともに、これら複数個の袋27〜29,…を集合化して収納する荷造り用容器30を備えている。
袋27〜29,…の各々の表面には、図6には図示しないが、たとえば図2に示すようなラベル9が貼付されることによって、収納される電子部品A〜C,…の各々に関する情報が表示されることが好ましい。また、図6に示すように、荷造り用容器30の表面には、その中に収納される袋27〜29,…内の電子部品A〜C,…の名称や、生産のために使用する日付などが表示されることが好ましい。
なお、荷造り用容器30としては、図6では、たとえば段ボール箱のような箱から構成されたものを図示したが、箱以外の、たとえば袋によって荷造り用容器が構成されてもよい。
図7ないし図9は、それぞれ、この発明の第6ないし第8の実施形態を説明するためのものである。これらの図面には、袋の平面状態での形状、特に袋が形成する収納空間の平面状態での形状が示されている。
図7、図8および図9にそれぞれ示した袋31、32および33は、ともに、その下辺に電子部品の取り出しのための開口34を有している。そして、袋31〜33のいずれについても、矢印35で示す電子部品の取り出す方向に向かって先細状となるような形状が収納空間に与えられている。
より詳細には、図7に示した第6の実施形態では、袋31が形成する収納空間の一方側に勾配36が形成されることによって、先細状の形状が与えられる。図8に示した第7の実施形態では、袋32が形成する収納空間の両側に勾配37および38すなわちテーパが形成されることによって、先細状の形状が与えられる。図9に示した第8の実施形態では、袋33が形成する収納空間の下半部の幅方向寸法がまず狭くされ、この下半部において勾配39が形成されることによって、先細状の形状が与えられる。
このように、収納空間に先細状の形状を与えることによって、電子部品を取り出そうとするとき、図10に示した部品供給部55a〜55e,…の各々に備える、たとえばホッパへとこぼれることなく迅速に多数の電子部品を投入することができる。また、電子部品を袋31〜33内に詰める場合には、先細状となった部分以外の辺に開口を設けておけばよいので、袋31〜33内への電子部品の装填に支障を来すこともない。
なお、図7ないし図9に示した袋31〜33の形状は、袋31〜33が形成する収納空間の形状であると理解すればよい。したがって、袋31〜33の外形状は、このような収納空間の輪郭に沿う形状であっても、あるいは、長方形のような単なる矩形であってもよい。