JP4134674B2 - 防水シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水シートに関し、詳しくは成形性、耐熱劣化性、柔軟性及び熱融着性に優れた防水シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、蓄熱槽、プ−ル、防火水槽、貯水槽のシ−ト工法における防水をはじめとし、人工の池や産業廃棄物処理場の土木用防水材として各種エラストマ−を主体とした防水シ−トが用いられている。従来、これらの防水シ−トとしては、オレフィン系エラストマ−シート、軟質塩化ビニルシート、ポリエチレンシ−ト等が用いられている。しかし、オレフィン系エラストマ−シートは、柔軟性に劣り、またその温度依存性が大きく作業性に問題があった。また、耐熱性に劣るだけでなく、シ−ト同士の熱融着可能な温度幅が比較的小さく、融着継目部での漏水が多いことが指摘されている。軟質塩化ビニル製防水シ−トは、柔軟性の温度依存性が非常に大きく、特に冬季における作業はシ−トが非常に硬くなり作業が極めて困難になるという欠点があった。又、耐熱性に劣り、熱水等に晒される環境ではDOP等の可塑剤がブリ−ドしてしまい、シ−トが固く脆くなってしまう欠点も指摘されている。ポリエチレンシ−トは、シ−トの柔軟性が低いため、その用途が細かい施工が比較的少ない分野に限定されている。近年、上記の欠点を改良した飽和型スチレン系熱可塑性エラストマーにオレフィン系樹脂、場合によって炭酸カルシウム等の充填剤や鉱物油系軟化剤からなる組成物を熱成形加工してなる防水シートが開発された(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの検討にも拘わらず、本発明者等の検討によると、強度の改良が不充分であり、またシート同士の熱融着強度の改良が不充分とのいう問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特許第3181080号公報 (第2頁左欄第24行〜右欄第17行)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、成形性、耐熱劣化性、柔軟性及び熱融着性に優れ、施工性の優れた防水シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のスチレン系熱可塑性エラストマーと炭化水素系ゴム用軟化剤と複数種のオレフィン系樹脂の混合物を含む組成物からなる防水シートが前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、下記の成分(a)〜(d)を含有し、成分(a)と成分(b)の配合比(重量)が(a)/(b)=20/80〜80/20の範囲であって、且つ成分(a)及び(b)の合計100重量部あたり成分(c)を1〜300重量部、成分(d)を20〜1000重量部含有してなり、成分(a)〜(c)の混合物を架橋剤の存在下に溶融混練する動的熱処理を施した後、成分(d)を混合してなる熱可塑性エラストマー組成物よりなる防水シートに存する。
(a)重量平均分子量が15万〜100万であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体及び/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体
【0007】
A(B−A)nおよび/または(A−B)n (I)
(ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(以下「Aブロック」と略記する)、Bはエラストマー性重合体ブロック(以下「Bブロック」と略記する)であり、nは1〜5の整数である)
(b)炭化水素系ゴム用軟化剤
(c)プロピレン系樹脂
(d)エチレン系樹脂
【0010】
【発明の実施の形態】
[1]配合成分及び配合割合
1)成分(a)
本発明で使用する成分(a)は、重量平均分子量が8.0万〜100万であるブロック共重合体であって、前記の一般式(I)で表されるブロック共重合体および/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体である。
【0011】
上記ブロック共重合体において、ビニル芳香族炭化水素の重合体であるAブロックはハードセグメント、エラストマー性重合体であるBブロックはソフトセグメントを構成する。ブロック共重合体の代表例は、A−B又はA−B−Aで表される共重合体構造を有し、Bブロックの二重結合が部分的に或いは完全に水素添加されていてもよいブロック共重合体であって、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとして知られている。
【0012】
上記のAブロックにおけるビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
上記のBブロックを構成する原料モノマーとしては、エラストマー性が発現される限り、その種類は特に制限されないが、共役ジエンからなるものが好ましい。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、特に、ブタジエン、イソプレン、又は、ブタジエン/イソプレンの2/8〜6/4重量割合の混合物が好ましい。
【0013】
ブロック共重合体中、Aブロックの含有量は、10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。Aブロックの含有量が前記範囲未満では、得られる積層体の機械的強度や耐熱性が劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、得られる積層体の柔軟性、ゴム弾性が劣ると共に、後述する成分(b)の炭化水素系ゴム用軟化剤のブリードが生じ易い傾向となる。
【0014】
共役ジエンとしてブタジエンのみが用いられている場合、熱可塑性エラストマーとしてのゴム弾性を保持する面から、Bブロックにおける共役ジエンの1,2−結合の割合は、通常20〜50%、好ましくは25〜45%である。
また、成分(a)は水素添加して得られる水添ブロック共重合体であることが好ましい。この時のBブロックの二重結合の水素添加率は、30%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは90%以上である。水素添加率が前記範囲未満では、積層体とした場合の耐候性、耐熱性が劣る傾向となる。
【0015】
本発明におけるブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量として、8.0万〜100万であるが、好ましくは、10万〜50万、更に好ましくは、15万〜40万である。重量平均分子量が8.0万未満の場合は、得られる積層体のゴム弾性、機械的強度が劣り、成形加工性も劣る傾向となる。一方、重量平均分子量が100万超過の場合は、得られる積層体の成形加工性が劣ることとなる。
【0016】
上記ブロック共重合体の製造方法は、上記の構造・物性が得られる限り、如何なる方法であってもよい。例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法、即ち、リチウム触媒の存在下に不活性溶媒中でブロック重合を行う方法を採用することができる。また、これらのブロック共重合体の水素添加処理は、例えば特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下で行うことができる。
【0017】
また、上記のようなブロック共重合体は、スチレン又はその誘導体とエラストマー性ブロックを重合し、これをカップリング剤によりカップリングして得ることも出来る。また、ジリチウム化合物を開始剤としてエラストマー性ブロックを重合し、次いで、スチレン又はその誘導体を逐次重合して得ることも出来る。
上記の様なブロック共重合体の市販品としては、「KRATON−G」(クレイトンポリマー株式会社)、「セプトン」(株式会社クラレ)、「タフテック」(旭化成株式会社)等の商品が例示できる。
2)成分(b)
本発明で使用する成分(b)は炭化水素系ゴム用軟化剤である。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油系炭化水素、及び、ポリブテン系、ポリブタジエン系等の低分子量物等の合成樹脂系炭化水素等が挙げられるが、中で、鉱物油系炭化水素が好ましく、又、重量平均分子量で300〜2,000、特には500〜1,500の分子量を有するものが好適である。
【0018】
一般に、鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素、及びパラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族炭化水素の炭素の割合が35重量%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45重量%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50重量%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。本発明においては、パラフィン系オイルが好適に使用される。
【0019】
パラフィン系オイルの40℃での動粘度は通常20〜800cSt(センチストークス)、好ましくは50〜600cSt、流動点は通常−40〜0℃、好ましくは−30〜0℃、引火点(COC)は通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃である。炭化水素系ゴム用軟化剤(b)は、得られる組成物の流動性を向上して成形加工性に寄与すると共に得られるシートの柔軟性向上にも寄与する。
【0020】
3)成分(c)(オレフィン系樹脂1)
本発明で使用する成分(c)は、オレフィン系樹脂である。オレフィン系樹脂としては、成分(d)のオレフィン系樹脂2で使用されるものとは異なるオレフィン系樹脂である。具体的には、プロピレン系樹脂、結晶性ポリブテン−1樹脂等を挙げることができる。これらのオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が好適に用いられ、その具体例としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン−エチレンランダム共重合体樹脂、プロピレン・エチレンブロック共重合体樹脂等が例示できる。重合様式は、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差し支えない。
【0021】
これらのプロピレン系樹脂1のメルトフローレート(JIS−K7210、230℃、21.2N荷重)は通常0.05〜200g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲未満のものを用いた場合は、シートの成形性が悪化して外観に不良が生じやすく、上記範囲を超えるものを用いた場合は、得られる防水シートの機械的特性、特に引張破壊強度が低下する傾向となる。
【0022】
(4)成分(d)
本発明で使用する成分(d)は成分(c)で使用されるものとは異なるオレフィン系樹脂である。成分(d)のオレフィン系樹脂2としては、エチレン系樹脂が好ましく用いられる。エチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(低圧法ポリエチレン)、低密度ポリエチレン(高圧法ポリエチレン)、線状低密度ポリエチレン(エチレンと少量の好ましくは1〜10モル%のブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィンとのコポリマー)などのポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エステルコポリマーなどの中から選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。中で特に好ましいのは低密度ポリエチレン若しくは直鎖状低密度ポリエチレンである。エチレン系重合体の密度は0.91〜0.94のものが好ましく、更に好ましくは、0.912〜0.938のものである。密度が0.94を越えているものを用いた場合には、シートの熱融着性が劣る傾向となり、逆に0.91に満たないものを用いた場合は高温での引張強さの低下など物性の低下が著しい傾向になる。
【0023】
(5)配合割合
本発明において、上記各成分の組成割合は次の通りである。すなわち、成分(a)と成分(b)の配合比(重量)が(a)/(b)=20/80〜80/20の範囲であって、好ましくは(a)/(b)=25/75〜70/30である。(a)/(b)の比率で成分(a)が20/80より少ない場合は、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性が劣り、積層体として触感が劣ると共に軟化剤の耐ブリード性が低下し、成分(a)が80/20超過の場合は、得られる組成物の柔軟性および成形加工性が劣る。一方成分(c)の割合は、成分(a)及び(b)の合計100重量部あたり、1〜300重量部、好ましくは5〜200重量部であり、特に好ましくは10〜100重量部である。成分(c)の量が1重量部未満の場合は得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性が劣り、300重量部超過の場合は得られる組成物の柔軟性およびゴム弾性が劣る。また、成分(d)の割合は、成分(a)及び(b)の合計100重量部あたり、20〜1000重量部、好ましくは40〜800重量部であり、特に好ましくは60〜600重量部である。成分(d)の量が20重量部未満の場合は得られる組成物の熱融着強度が劣り、1000重量部超過の場合は得られる組成物の柔軟性およびゴム弾性が劣る。
【0024】
(2)架橋構造の形成
1)架橋の形成方法
本発明の組成物は前記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有し、成分(a)のBブロックが、少なくとも部分的に架橋されていることが好ましい。架橋構造として、成分(a)のAブロックにより形成される擬似的な架橋点があるが、架橋点の数には限界があるため、Bブロックが架橋構造を有することにより、積層体の耐熱性、耐油性を向上させることが可能となる。このような架橋構造を形成するためには、動的な熱処理を行うことが好ましい。
【0025】
ここに、動的熱処理とは溶融状態又は半溶融状態で混練することを指す。通常、動的熱処理は、前記成分(a)、(b)、及び(c)を均一に混合した後、必要に応じて架橋剤、架橋助剤の存在下に溶融混練することによって行なうのが好ましく、成分(d)は動的熱処理後に加えるのが好ましい。そして、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸押出機等が使用される。混練温度は通常、100〜300℃、好ましくは110〜280℃であり、混練時間は、10秒〜30分、好ましくは20秒〜20分間である。また、動的熱処理時の材料の状態は使用する材料の種類や動的熱処理温度によって異なり、通常は半溶融状態または溶融状態となるが、特に制限されない。混練に際しては、各成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いても良い。
2)架橋剤、及び架橋助剤
架橋剤としては有機過酸化物、硫黄、フェノール系架橋剤、マレイミド系架橋剤、オキシム類、ポリアミン等が用いられるが有機過酸化物、フェノール系架橋剤、マレイミド系架橋剤が好ましく、特に有機過酸化物が好ましい。
【0026】
有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が挙げられる。これらの中では、1分間の半減期温度が140℃以上の有機過酸化物が好ましく、例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、又は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0027】
前記の架橋助剤としては、例えば、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン、m−フェニレンビスマレイミド等の過酸化物架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0028】
動的熱処理に用いる有機過酸化物の使用割合としては、通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜1重量部であり、架橋助剤の使用割合は0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。
3)ゲル分率
前述の、「部分的に架橋された」とは、下記の方法で測定したゲル分率(シクロヘキサン不溶解分)が10%以上98%未満である場合をいう。ゲル分率が98%以上である場合は、完全に架橋された、という。本発明における組成物のゲル分率は、30%以上であることが好ましい。
【0029】
組成物のゲル分率(シクロヘキサン不溶解分)は、以下の方法により求めることが出来る。組成物を約100mg秤量し、50mlのシクロヘキサンに23℃で48時間含浸後、濾過し、濾過残分を室温にて72時間乾燥させる。これらの手順に従い、以下に説明する記号と式でゲル分率を求める。
Wini:初めに秤量した熱可塑性エラストマー量(mg)
Wcini:Winiからシクロヘキサン可溶成分(軟化剤等)の重量、及びポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶成分(フィラー、充填剤等)の重量を減じた重量(mg)
Wcxs:シクロヘキサン溶解、濾過、乾燥後の重量(mg)
Wccxs:Wcxsから、ポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶成分(フィラー、充填剤等)の重量を減じた重量(mg)
Frf:熱可塑性エラストマーに含有されるポリマー成分以外のシクロヘキサン 不溶成分(フィラー、充填剤等)の分率。灰分測定によって求めることが 出来る。
Frs:熱可塑性エラストマーに含有されるポリマー成分以外のシクロヘキサン可溶成分(軟化剤等)の分率。GPC測定によって求められる。
G%:ゲル分率
【0030】
【数1】
Wcini=Wini*(1―Frf―Frs)
Wccxs=Wcxs―Wini*Frf
G%=Wccxs/Wcini*100
4)成分(d)の配合
前述の成分(d)は、成分(a)〜(c)を動的に熱処理したあとに、押出機の上流側のホッパーと別個の、より下流側に位置する注入口からシリンダー内に供給して更に熱処理し混合したり、或いは後述するシートの成形時にブレンドし混合することが好ましい。
【0031】
このように、成分(a)〜(c)及びラジカル発生剤を含む混合物を動的に熱処理して部分架橋させる際に、成分(d)を除いておくことにより、架橋時の樹脂成分の量が減少するため、発生したラジカルが効果的に成分(a)に作用して架橋度が高くなり、耐油性やゴム弾性が良好になる。また、後で加えられる成分(d)がラジカル発生剤により架橋反応を起こさないためブツの発生が抑制され、シート外観の良好な成形品を得ることが出来る。
5)その他
本発明における熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的、効果を損わない範囲内において、必要に応じて、各種樹脂やゴム、及び、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、マイカ、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の充填剤、並びに、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、導電性付与剤、着色剤等を含有していてもよく、これらは、前記成分(a)〜(d)のいずれかに予め含有させておくか、又は、各成分を均一に混合時、溶融混練時或いは動的熱処理時に配合される。
【0032】
特に、防水シ−トを製造する場合はブロッキング防止剤を加えておくことが好ましい。このようなブロッキング防止剤としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の無機質粉体が好適に用いられる。配合量は、樹脂組成物100重量部に対し、通常1〜60重量部、好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは15〜20重量部である。又、同じくブロッキング防止剤として、パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸低級アルコ−ルエステル、脂肪酸ポリグリコ−ルエステル等のエステル系滑剤、脂肪アルコ−ル、多価アルコ−ル、ポリグリコ−ル、ポリグリセロ−ル等のアルコ−ル系滑剤等の各種滑剤も用いることが出来、その配合量は熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して通常0.01〜0.5重量部、好ましくは0.1〜0.2重量部である。
【0033】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。酸化防止剤として、例えば、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール等のビスフェノール系、1,1,3−トリス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のトリ以上のポリフェノール系、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のチオビスフェノール系、アルドール−α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系、p−イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系のもの等が挙げられる。これらの中では、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系の酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の使用割合は、成分(a)〜(c)の合計量に対し、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。この添加量が0.01重量%未満では、酸化防止剤の効果が得られにくく、また5重量%を越すと添加量の増大に見合う効果の向上が得られず経済的に不利になるか、着色などの影響が出る場合がある。
【0034】
[3]熱可塑性エラストマー組成物、防水シートの製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造に用いられる装置としては、特に限定されるものではなく、開放型のミキシングロール、非開放型バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ニーダー、単軸或いは二軸押出機等公知のものを使用することができる。また、上記熱可塑性エラストマーは、一般的にはカレンダーロール、Tダイ若しくは環状ダイを装着した押出機、プレス成形機を用いて常法により防水シート成形材料として用いられる。シート成形は、通常のシート成形法がそのまま採用され例えば170〜250℃の温度で、Tダイから溶融樹脂混練物を押し出すことにより、厚さが約0.1mm〜3mm程度のシートを容易に成形することが出来る。また、この時にエンボスロールを用いて、表面にエンボス(シボ)模様を付けることも可能である。またバンバリーミキサー、ロール等で軟化点以上に加熱した組成物を、カレンダーロールでシート状に成形する方法を採用することもでき、この場合には得られるシートの厚さが薄いので数枚程度のシートをエンボスロール等で溶着して用いられることが多い。
【0035】
[4]用途
本発明の防水シートは、接着性に優れており、更に加工性、施工性、耐熱性等の各種物性にも優れており、例えば次のようにして使用される。約20m×1m×1.5mmのシートを施工現場で熱風機等を用いて互いに端部を融着させ、一体化したり、或いは場合により工場内で予め幅2〜20m程度になるように、熱風機、ヒートシーラーなどでシートを熱融着しておいて、それらをビル等の建築物の屋上防水、ゴルフ場の池、産業廃棄物処理場、調整池、灌漑水路、鰻や金魚等の養殖池、ダム、トンネル等の各種土木防水など、従来の各種防水シートの用途対象物全てに有効に適用される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した材料および評価方法は以下に示す通りである。
<原材料>
成分(a1):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量33重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量245,000)。
成分(a2):スチレンブロック−ブタジエン/イソプレンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエン/イソプレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量30重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量243,000)。
成分(a3):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の部分水素添加物(スチレン含有量31重量%、水素添加率56%、重量平均分子量100,000)。
成分(a4)(比較例用):スチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロックの共重合構造からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量29重量%、水素添加率98%以上、重量平均分子量75,000)。
成分(b):パラフィン系オイル(重量平均分子量746、40℃の動粘度382cSt、流動点−15℃、引火点300℃、出光興産社製「PW380」)。
成分(c):プロピレン系樹脂(日本ポリケム社製、メルトフローレート0.9g/10分(230℃、21.2N)。
成分(d):エチレン系樹脂(日本ポリケム社製、直鎖状低密度ポリエチレン、メルトフローレート2.1g/10分(230℃、21.2N)、密度0.920g/cm3)。
架橋剤(POX):1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製「パーカドックス14」)
架橋助剤(DVB):ジビニルベンゼン(三成化成社製、55%品)
【0037】
<評価方法>
以下の(1)〜(5)の測定には、渡辺加工機製の45mmφ押出機(シングルフライトタイプスクリュウ)のTダイから、シリンダー温度190℃、ダイス温度210℃、スクリュウ回転数70rpmの条件下、幅250mm、厚さ0.35mmに押出成形したシートを使用した。
(1)押出成形加工性:上記の成形条件で押出成形時に問題が無く、さらに得られたシートに著しい外観不良が無い場合、成形加工性を「良好」とした。
(2)引張破壊強さ:JIS K6251準拠(引張速度500mm/min,JIS3号ダンベル使用)。
(3)引張破壊伸び:JIS K6251準拠(引張速度500mm/min,JIS3号ダンベル使用)。
(4)柔軟性:防水シートの表面を手で触れたり折り曲げたりして、その感触を以下に示す5段階で評価した。
【0038】
5…非常に柔軟である
4…柔軟である
3…普通
2…硬い
1…非常に硬い
【0039】
(5)耐熱性:上記で得られた押出シートを120℃で720時間ギヤオーブン中に静置した後、(2)と同様に引張破壊強さ(JIS K6251準拠、引張速度500mm/min)を測定した。
(6)熱融着強度:上記で得られた押出シートを長さ90mm、幅10mmに打ち抜き、カッターナイフを用いて中心を切断し、切断面を温度250℃の鉄板に5秒間接触させ、直ちに端面同士を圧着して熱融着させた。この試料を23℃で48時間保持後、チャック間隔400mm、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、熱融着強度を測定した。
【0040】
<実施例1〜2およひ比較例1〜6>
成分(a)、(b)、(c)、POX、及びDVBを表1に示す配合量にて配合し、更に成分(a)〜(c)の合計量100重量部に対して、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(商品名「イルガノックス1010」チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量部を添加し、圧縮比L/Dが41、シリンダー径44mmの二軸押出機を用いてシリンダーの各部分を110〜200℃の温度に設定して溶融混練した。これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。続いて、得られたペレットと表1に示す成分(d)のペレットを攪拌混合したものを用いて、前述の方法にてシートを製造し、各種の評価を実施した。評価結果を表1に示す。なお、表中の空欄は添加量が「0」であることを示す。
【0041】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明の防水シ−ト用組成物は成形性、熱融着性、耐熱性にすぐれ、更には、柔軟性、機械的強度にもすぐれており、防水シ−トとしての施工性の向上は著しく本発明の工業的価値は顕著である。
Claims (4)
- 下記の成分(a)〜(d)を含有し、成分(a)と成分(b)の配合比(重量)が(a)/(b)=20/80〜80/20の範囲であって、且つ成分(a)及び(b)の合計100重量部あたり成分(c)を1〜300重量部、成分(d)を20〜1000重量部含有してなり、成分(a)〜(c)の混合物を架橋剤の存在下に溶融混練する動的熱処理を施した後、成分(d)を混合してなる熱可塑性エラストマー組成物よりなる防水シート。
(a)重量平均分子量が15万〜100万であるブロック共重合体であって、一般式(I)で表されるブロック共重合体及び/またはこれを水素添加して得られる水添ブロック共重合体
A(B−A)nおよび/または(A−B)n (I)
(ただし、式中のAはビニル芳香族炭化水素の重合体ブロック(以下「Aブロック」と略記する)、Bはエラストマー性重合体ブロック(以下「Bブロック」と略記する)であり、nは1〜5の整数である)
(b)炭化水素系ゴム用軟化剤
(c)プロピレン系樹脂
(d)エチレン系樹脂 - 一般式(I)に記載のBブロックが共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックであり、その有する二重結合の水素添加率が90%以上である請求項1に記載の防水シート。
- 一般式(I)に記載のAブロックがスチレン重合体ブロックで、Bブロックがブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック又はブタジエン・イソプレン重合体ブロックであり、かつ成分(a)中のAブロックの割合が10〜50重量%である請求項1または2に記載の防水シート。
- 成分(d)のエチレン系樹脂が、密度0.91g/cm3 〜0.94g/cm3 のものである請求項1乃至3の何れか1項に記載の防水シート。
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