JP4134577B2 - ディップ成形用ラテックス、ディップ成形用組成物およびディップ成形物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディップ成形用組成物およびディップ成形物に関し、さらに詳しくは、風合いに優れ、かつ十分な引張強度を有するディップ成形物、および該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム手袋などのディップ成形物の原料として天然ゴムラテックスが使用されている。しかし、最近では、天然ゴムラテックスに含まれている天然の蛋白質が、人体の皮膚と接する事によりアレルギー反応を引き起こし、発疹、かゆみ等を引き起こす事が問題となっている。
これに対して、合成ゴムラテックスであるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを使用して得られるゴム手袋は、上記のような問題はないものの、ゴム手袋としての柔軟性(風合い)と引張強度とのバランスに劣る。
【0003】
例えば、WO97/48765には、カルボキシ変性したアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを含み、酸化亜鉛を配合しないディップ成形用組成物から成形された手袋が開示されているが、この手袋は引張強度に優れるものの、300%伸張時の応力が比較的高く、風合いに劣る。
【0004】
また、米国特許5,910,533号公報には、共役ジエン単量体80〜99重量%、不飽和酸単量体0〜10重量%およびアクリロニトリル、メタクリル酸メチルなどのその他の不飽和単量体0〜20重量%を共重合して得られた共重合体ラテックスを用いたディップ成形物が開示され、具体的に、ブタジエン87重量部、アクリルニトリル10重量部およびメタクリル酸3重量部を共重合して得られた共重合体ラテックスが記載されている。このような共重合体ラテックスを使用して得られた手袋は、風合いに優れるものの、引張強度が不十分であり、手袋を装着して作業をした際に破れる懸念がある。
【0005】
さらに、国際公開WO00/21451号公報には、特定量のカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを使用し、それぞれ特定量の硫黄、加硫促進剤および酸化亜鉛を配合したディップ成形用組成物から成形された手袋が開示されている。しかしながら、このような手袋は風合いと引張強度のバランスに劣る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、風合いに優れ、かつ十分な引張強度を有するディップ成形物、および該ディップ成形物を与えるディップ成形用組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、メタアクリル酸を共重合するに際し、重合を開始した後にその一部を重合反応系に添加して共重合して得られるカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを用いることにより、風合いに優れ、かつ十分な引張強度を有するディップ成形物が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、共役ジエン単量体50〜89.5重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体0.5〜10重量部および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるディップ成形用ラテックス、該ディップ成形用ラテックスの固形分100重量部に対して1〜10重量部の硫黄、および、該ディップ成形用ラテックスの固形分100重量部に対して0.1〜10重量部の加硫促進剤を含有してなるディップ成形用ラテックス組成物であって、
該ディップ成形用ラテックスは、重合に供するエチレン性不飽和酸単量体の全量の67〜75重量%、並びに、重合に供する共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体のそれぞれ全量を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後に、重合反応系内の重合転化率が40〜60重量%の範囲にあるときに残余のエチレン性不飽和酸単量体を一度に重合反応系に添加して二段階で共重合して得られたものであることを特徴とするディップ成形用ラテックス組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記ディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形物が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明で用いるディップ成形用ラテックスは、共役ジエン単量体50〜89.5重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体0.5〜10重量部および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるディップ成形用ラテックスであって、重合に供するエチレン性不飽和酸単量体の全量の67〜75重量%、並びに、重合に供する共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体のそれぞれ全量を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後に、重合反応系内の重合転化率が40〜60重量%の範囲にあるときに残余のエチレン性不飽和酸単量体を一度に重合反応系に添加して二段階で共重合することによって得られる。
【0010】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
共役ジエン単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、50〜89.5重量部、好ましくは56〜84重量部、より好ましくは67〜78重量部である。この量が少なすぎると風合いに劣り、逆に多すぎると引張強度に劣る。
【0011】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、10〜40重量部、好ましくは15〜36重量部、より好ましくは20〜27重量部である。この量が少なすぎると引張強度に劣り、逆に多すぎると風合いに劣る。
【0012】
エチレン性不飽和酸単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。これらのエチレン性不飽和酸単量体は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
エチレン性不飽和酸単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部、好ましくは1〜8重量部、より好ましくは2〜6重量部である。この量が少なくすぎると引張強度に劣り、逆に多すぎると風合いに劣る。
【0013】
共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
その他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、全単量体100重量部に対して、20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量以下である。この量が多すぎると、風合いと引張強度のバランスに劣る。
【0015】
本発明のディップ成形用ラテックスは、上記の単量体混合物100重量部を共重合、好ましくは乳化共重合、して得られる。
【0016】
単量体混合物を共重合するに際し、重合に供するエチレン性不飽和酸単量体の全量の67〜75重量%、並びに、重合に供する共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体のそれぞれ全量を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後に、重合反応系内の重合転化率が40〜60重量%の範囲にあるときに残余のエチレン性不飽和酸単量体を一度に重合反応系に添加して二段階で共重合する。
【0017】
重合反応器に仕込むエチレン性不飽和酸単量体の割合が少ないと引張強度に劣り、逆に多いと風合いおよび引張強度に劣る。
【0018】
残余のエチレン性不飽和酸単量体を重合反応系に添加する時期は、重合反応系内の重合転化率が、40〜60重量%の範囲内にある時である。この範囲で添加することにより、引張強度と風合いのバランスがさらに向上する。
【0019】
残余のエチレン性不飽和酸単量体は、一括で添加する。
【0020】
共役ジエン単量体は、重合に使用するその全量を重合反応器に仕込み、重合を開始する。
【0021】
エチレン性不飽和ニトリル単量体は、重合に使用するその全量を重合反応器に仕込み、重合を開始する。
【0022】
その他のエチレン性不飽和単量体は、重合に使用するその全量を重合反応器に仕込み、重合を開始する。
【0023】
共重合は、単量体の添加方法を除き、通常の方法を用いればよい。例えば、乳化共重合の場合、水と乳化剤の存在下に、重合開始剤により、単量体混合物を重合し、所定の重合転化率で重合停止剤を添加して重合反応を停止する。
【0024】
乳化剤は、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸の如き脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部である。
【0025】
水の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、80〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。
【0026】
重合開始剤は、特に限定されないが、具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。過酸化物開始剤は、ラテックスを安定して製造することができ、しかも、機械的強度が高く、風合いが柔らかなディップ成形物が得られるので好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
【0027】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
【0028】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩;などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
【0029】
乳化共重合に際して、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0030】
重合温度は、特に限定されないが、通常、5〜95℃、好ましくは30〜70℃である。
重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
【0031】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整してラテックスを得る。
【0032】
ラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加できる。
【0033】
ラテックスの数平均粒子径は、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。なお、この粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整できる。
【0034】
本発明のディップ成形用組成物は、上記のディップ成形用ラテックス、硫黄および加硫促進剤を含有してなる。
【0035】
本発明のディップ成形用組成物には、さらに所望により、酸化亜鉛を配合してもよい。
加硫剤として用いられる硫黄としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、例えば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などが挙げられる。硫黄の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、1〜10重量部、好ましく2〜5重量部である。
【0036】
加硫促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。なかでも、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。これらの加硫促進剤は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
加硫促進剤の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0037】
酸化亜鉛の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、5重量部以下、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。
【0038】
本発明のディップ成形用組成物には、さらに所望により、通常配合される、pH調整剤、増粘剤、老化防止剤、分散剤、顔料、充填剤、軟化剤などを配合してもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス等のその他のラテックスを併用することもできる。
【0039】
本発明のディップ成形用組成物の固形分濃度は、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
本発明のディップ成形用組成物のpHは、8.5〜12、好ましくは9〜11の範囲にあることが好ましい。
【0040】
本発明のディップ成形物は、上記ディップ成形用組成物をディップ成形してなる。
ディップ成形法は、通常の方法を採用すればよい。ディップ成形法としては、例えば、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着浸漬法などが挙げられる。なかでも、均一な厚みを有するディップ成形物が得られやすい点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0041】
アノード凝着浸漬法の場合、例えば、ディップ成形用型を凝固剤溶液に浸漬して、該型表面に凝固剤を付着させた後、それをディップ成形用組成物に浸漬して、該型表面にディップ成形層を形成する。
【0042】
凝固剤としては、例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩などが挙げられる。なかでも、塩化カルシウム、硝酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、5〜70重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0043】
得られたディップ成形層は、通常、加熱処理を施し加硫する。
加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水、に1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(例えば、余剰の乳化剤や凝固剤など)を除去してもよい。この操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行ってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、熱処理前に行うのが好ましい。
【0044】
このようにして得られたディップ成形層は、100〜150℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行い、加硫する。加熱の方法としては、赤外線や熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、熱空気による加熱が好ましい。
【0045】
加硫したディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形物が得られる。脱着方法は、手で成形用型から剥がしたり、水圧や圧縮空気の圧力により剥がしたりする方法が採用できる。
【0046】
脱着後、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行ってもよい。
【0047】
ディップ成形物は、さらに、その内側および/または外側の表面に、表面処理層を形成してあってもよい。
【0048】
本発明のディップ成形物は、厚みが約0.1〜約3ミリのものが製造でき、特に厚みが0.1〜0.3ミリの薄手のものに好適に使用できる。具体的には、哺乳瓶用乳首、スポイト、導管、水枕などの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具や運動具;加圧成形用バッグ、ガス貯蔵用バッグなどの工業用品;手術用、家庭用、農業用、漁業用および工業用の手袋;指サックなどが挙げられる。特に、薄手の手術用手袋に好適である。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0050】
[評価方法]
(ディップ成形品の物性評価用試験片の作製)
ASTM D412に準じて、ゴム手袋状のディップ成形品をダンベル(Die−C)で打ち抜いて、試験片とした。
(300%伸張時の応力)
試験片を、テンシロン万能試験機(RTC−1225A:株式会社オリエンテック製)で、引張速度500mm/分で引っ張り、伸び率が300%の時の引張応力を測定した。この値が小さいほど、風合いに優れる。
(引張強度)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の引張強度を測定した。
(破断時伸び)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の伸びを測定した。
【0051】
(実施例1)
耐圧重合反応器に、アクリロニトリル23部、メタクリル酸3部、1,3−ブタジエン73部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部、脱イオン水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、過硫酸カリウム0.2部およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部を仕込んだ後、系内温度を37℃にして重合反応を開始した。
重合反応系内の重合転化率が60%になった時点で、t−ドデシルメルカプタン0.1部を添加すると共に、メタクリル酸1部を重合反応系に添加した。さらに、重合温度を40℃にし、その温度を維持したまま、重合転化率が97%になるまで重合反応を継続し、その後、ジエチルヒドロキシルアミン0.1部を添加して重合反応を停止した。
得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を留去した後、固形分濃度とpHを調整し、固形分濃度40%、pH8.5の共重合体ラテックスAを得た。硫黄3部、酸化亜鉛0.3部、ジブチルカルバミン酸亜鉛1.5部、ジエチルカルバミン酸亜鉛1.5部、水酸化カリウム0.03部および水6.33部を混合して調製した加硫剤分散液12.66部を、前記の共重合体ラテックス250部(固形分100部)に混合した後、脱イオン水を加えて、固形分濃度を30%に調整してディップ成形用組成物を得た。
【0052】
一方、硝酸カルシウム20部、非イオン性乳化剤のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.05部及び水80部を混合して調製した凝固剤水溶液に手袋型を1分間浸漬し、引き上げた後、3分間50℃で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。
次に、凝固剤の付着した手袋型を上記のディップ成形用組成物に6分間浸漬し、引き上げた後、そのディップ成形層が形成された手袋型を25℃で3分間乾燥し、次いで40℃の温水に3分間浸漬して、水溶性不純物を溶出させた。次いで、その手袋型を80℃で20分間乾燥し、引続き、120℃で25分間熱処理してディップ成形層を加硫させた。最後に加硫したディップ成形層を手袋型から剥し手袋形状のディップ成形物を得た。このディップ成形物の評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
(実施例2)
初期の単量体混合物の仕込み組成、重合反応開始後に添加する後添加メタクリル酸の量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様に行ない、共重合体ラテックスBを得た。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスBを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
初期の単量体混合物の仕込み組成を表1に示すように変更し、重合開始後にメタクリル酸の添加を行なわない以外は、実施例1と同様に行ない、共重合体ラテックスCを得た。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスCを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
初期の単量体混合物の仕込み組成、重合反応開始後に添加する後添加メタクリル酸の量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様に行ない、共重合体ラテックスDを得た。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスDを用いた以外は、実施例1と同様にディップ成形物を得た。ディップ成形物の評価結果を表1に示す。
【0057】
表1から次のようなことがわかる。
重合開始後のメタクリル酸の添加を行なわないで製造した比較例1の共重合体ラテックスCを使用すると、風合いに比較的優れるものの、引張強度が不十分である。
初期に仕込むメタクリル酸の割合が、本発明で規定する範囲より少ない比較例2の共重合体ラテックスDを使用すると、風合いおよび引張強度が不十分である。
【0058】
これらの比較例に比べ、本発明で規定する範囲の条件で製造した実施例1および2の共重合体ラテックスAおよびBを使用すると、いずれも風合いと引張強度に優れるディップ成形物が得られる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、風合いに優れ、かつ十分な引張強度を有するディップ成形物が得られる。
Claims (2)
- 共役ジエン単量体50〜89.5重量部、エチレン性不飽和ニトリル単量体10〜40重量部、エチレン性不飽和酸単量体0.5〜10重量部および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜20重量部からなる単量体混合物100重量部を共重合して得られるディップ成形用ラテックス、該ディップ成形用ラテックスの固形分100重量部に対して1〜10重量部の硫黄、および、該ディップ成形用ラテックスの固形分100重量部に対して0.1〜10重量部の加硫促進剤を含有してなるディップ成形用ラテックス組成物であって、
該ディップ成形用ラテックスは、重合に供するエチレン性不飽和酸単量体の全量の67〜75重量%、並びに、重合に供する共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体のそれぞれ全量を含む単量体混合物を用いて重合を開始し、その後に、重合反応系内の重合転化率が40〜60重量%の範囲にあるときに残余のエチレン性不飽和酸単量体を一度に重合反応系に添加して二段階で共重合して得られたものであることを特徴とするディップ成形用ラテックス組成物。 - 請求項1記載のディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形物。
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