JP3852356B2 - ディップ成形用組成物、ディップ成形品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はディップ成形用組成物、ディップ成形品およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、ピンホールが極めて少なく、風合い、引張り強度および繰り返し疲労特性に優れるディップ成形品の原料として好適なディップ成形用組成物、ディップ成形品および該成形品を効率よく製造するための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム手袋は、家事用、食品工業や電子部品製造業などの種々の工業用および医療用(特に手術用)など、幅広く使用されている。ゴム手袋には、ピンホールがないこと、長時間にわたり着用しても手が疲れないように、指の動きに合わせて小さな力で手袋が伸びやすいこと(風合いがよいこと)、作業中に破れたりしないこと(十分な引張強度を有すること)、指を動かしながら作業を継続しても、指の股部分に微小亀裂などが発生しないこと(繰り返し疲労特性に優れること)など様々な特性が要求されている。
【0003】
従来、ゴム手袋として、天然ゴムラテックスをディップ成形して得られるものが多用されている。しかし、天然ゴムラテックス製の手袋には、ゴム成分中に微量存在するたんぱく質により、使用者によってはアレルギーを引き起こす恐れがあるため、そのような懸念のない合成ゴムラテックス、たとえば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス製の手袋が提案されている。
【0004】
例えば、米国特許第2,880,189号には、アンモニアで中和された特定のカルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスと水不溶性の多価金属酸化物とを含むディップ成形用組成物が開示されている。このようなディップ成形用組成物から得られるディップ成形品は、アレルギーを引き起こす懸念が極めて少ないが、引張強度や繰り返し疲労特性に劣るため、作業中に破れたり、指を動かしながら作業を継続すると、指の股部分に微小亀裂などが発生して問題が生じる場合があった。
【0005】
また、国際公開WO00/21451号広報には、特定量のカルボキシル基を含有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、極少量の酸化亜鉛、比較的多い量の硫黄、および加硫促進剤からディップ成形された手袋が開示されている。このような手袋は、風合いと引張強度あるいは繰り返し疲労特性とのバランスに劣る場合があった。
【0006】
このように、上記のようなアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス製の手袋は、天然ゴムラテックス中の微量たんぱく質に起因する問題を解決するものではあるが、引張強度に優れたものであっても、繰り返し疲労特性が不十分で、比較的短時間の作業で、指の股部分に微小亀裂が発生し、それ以上使用できなくなる場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、ピンホールが極めて少なく、風合い、引張り強度および繰り返し疲労特性に優れるディップ成形品の原料として好適なディップ成形用組成物、ディップ成形品および該成形品を効率よく製造するための製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、エチレン性不飽和酸単量体を共重合した共役ジエン系ゴムラテックスを構成する共重合体のメチルエチルケトン不溶解分を低くし、さらにそれを含むディップ成形用組成物のpHを制御することにより、通常使用される硫黄や加硫促進剤などを配合せずに、十分な性能が発現するディップ成形品が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明によれば、エチレン性不飽和酸単量体を共重合した共役ジエン系ゴムラテックスを含むディップ成形用組成物であって、ラテックスpH10における該共役ジエン系ゴムラテックスを構成する共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が30重量%以下、ディップ成形用組成物のpHが8.5以上であり、かつ、共役ジエン系ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、それぞれ、含硫黄加硫剤0〜0.4重量部、該加硫剤用の加硫促進剤0〜0.4重量部および酸化亜鉛0〜0.7重量部を含むことを特徴とするディップ成形用組成物が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、該ディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形品であって、該ディップ成形品がラテックス凝固剤である水溶性多価金属塩によって架橋されていることを特徴とするディップ成形品が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、ディップ成形用型に水溶性多価金属塩からなるラテックス凝固剤を付着させた後、該型を前記のディップ成形用組成物に浸漬して型表面上にディップ成形層を形成し、次いでディップ成形層を乾燥した後で型から脱着することを特徴とするディップ成形品の製造方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられる共役ジエン系ゴムラテックスは、エチレン性不飽和酸単量体を共重合したものであって、ラテックスpH10における該共役ジエン系ゴムラテックスを構成する共重合体のメチルエチルケトン不溶解分(以下、「MEK不溶解分」と略することがある。)が30重量%以下のものである。
【0013】
共役ジエン系ゴムラテックスは、共役ジエンとエチレン性不飽和酸単量体とを必須成分とする単量体混合物を重合して得られる共重合体ラテックスであり、好ましくは共役ジエン単量体30〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体0.1〜20重量%およびこれらの単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜69.9重量%からなる単量体混合物を重合して得られる共重合体ラテックスである。(以下、単に「共重合体ラテックス」という場合がある。)
【0014】
共役ジエン単量体は、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及びクロロプレン等を挙げることができる。これらの共役ジエン単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができ、1,3−ブタジエン又はイソプレンが好ましく用いられる。
共役ジエン単量体の使用量は、単量体混合物を基準にして、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%である。この量が少なすぎると風合いに劣る傾向があり、逆に多すぎると手袋としての保形性が得られなくなるとともに、引張強度が低下する傾向がある。
【0015】
エチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもできる。これらのエチレン性不飽和酸単量体は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらのエチレン性不飽和酸単量体のうち、エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、特にメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0016】
エチレン性不飽和酸単量体の使用量は、単量体混合物を基準にして、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜6重量%である。この量が少なすぎると引張強度が低下しすぎて満足なディップ成形品が得られず、逆に多すぎると風合いに劣る傾向がある。
【0017】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらの中でも、エチレン性不飽和ニトリル単量体が好ましく、アクリロニトリルがより好ましく用いられる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体混合物を基準にして、好ましくは0〜69.9重量%、より好ましくは0〜59重量%、特に好ましくは14〜48重量%である。この量が多すぎると風合いに劣る傾向がある。
【0019】
共役ジエン系ゴムラテックスを製造する際の単量体混合物は、1,3−ブタジエン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸からなるものであることが特に好ましく、その組成はそれぞれ、40〜79重量%、20〜45重量%および1〜15重量%の範囲であることが好ましく、54〜73重量%、25〜40重量%および2〜6重量%の範囲であることがより好ましい。
【0020】
ラテックスpH10のおける該共役ジエン系ゴムラテックスを構成する共重合体のメチルエチルケトン不溶解分は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。MEK不溶解分が多いと、繰り返し疲労特性に劣る。
本発明においては、単一のラテックスにおいて共重合体のMEK不溶解分が上記の範囲を満足するものを用いても、複数のラテックスの混合物において全共重合体のMEK不溶解分が上記の範囲を満足するものを用いてもよい。
【0021】
本発明に用いられる共役ジエン系ゴムラテックスは、通常、乳化重合法で製造される。
【0022】
乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸の如き脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適に用いられる。これらの乳化剤は単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、1〜10重量部程度、より好ましくは2〜6重量部である。
【0023】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。なかでも無機過酸化物を用いると、ラテックスを安定して製造することができるので好ましい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、その種類によって若干異なるが、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜1重量部程度である。
【0024】
また、過酸化物は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、例えば、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。還元剤の使用量は、還元剤の種類によって若干異なるが、過酸化物1重量部に対して、0.03〜10重量部程度である。
【0025】
乳化重合を行うに際して、共重合体のメチルエチルケトン不溶解分を調整する為に、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、ジベンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のスルフィド類、α−メチルスチレン2量体、四塩化炭素等が挙げられる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。これらは一種もしくは二種以上組み合わせて使用することが可能である。分子量調整剤の使用量は、共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が所望の範囲となるよう適宜決定すればよいが、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜4重量部である。
【0026】
分子量調整剤の添加方法は、特に限定されず、例えば、分子量調整剤を重合反応器に一括して仕込む方法、分子量調整剤を重合反応器に連続的に添加する方法、分子量調整剤の一部を重合反応器に仕込み、重合を開始した後にその残部を重合反応器に添加する方法が挙げられる。MEK不溶解分をより低く調整でき、ディップ成形品の物性バランスに優れる点で、分子量調整剤の一部を重合反応器に仕込み、重合を開始した後にその残部を重合反応器に添加する方法が好ましく採用できる。
【0027】
分子量調整剤の一部を重合反応器に仕込み、重合を開始した後にその残部を重合反応器に添加する場合、重合に使用する分子量調整剤の好ましくは40〜95重量%、より好ましくは45〜90重量%、特に好ましくは50〜70重量%を重合反応器に仕込み、重合を開始した後にその残部を重合反応器に添加するのが好ましい。
【0028】
分子量調整剤の残部を添加する時期は、重合系内の重合転化率が好ましくは50〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%の範囲にある時である。この範囲で添加することにより、風合いと繰り返し疲労特性のバランスに優れるディップ成形品が得られる。
【0029】
乳化重合する際に使用する水の量は、単量体混合物100重量部に対して、80〜600重量部程度、好ましくは100〜200重量部である。
【0030】
さらに、必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0031】
単量体混合物の添加方法は特に限定されず、単量体混合物を重合反応器に一括して仕込む方法、単量体混合物を重合反応器に連続的に供給する方法、単量体混合物の一部を重合反応器に仕込み、その残りの単量体を重合反応器に連続的に供給する方法等のいずれを採用してもよい。
【0032】
乳化重合する際の重合温度は、通常、0〜95℃、好ましくは5〜50℃、より好ましくは5〜45℃である。
重合時間は5〜40時間程度である。
重合反応を停止する際の重合転化率は好ましくは90〜98重量%、より好ましくは92〜95重量%である。この重合転化率が低すぎると共重合体ラテックスの生産性が低下し、逆に高すぎるとMEK不溶解分を所望の値に調整するのが困難となる傾向がある。
【0033】
乳化重合して得られる共重合体ラテックスの粒子径は、透過型電子顕微鏡で測定した数平均粒子径が、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。なお、この粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどして、所望の値に調整できる。
【0034】
共重合体ラテックスは、所定の重合転化率まで乳化重合した後、所望により重合停止剤を加えて反応を停止し、さらに所望により残存する単量体を除去し、所定の固形分濃度およびラテックスpHに調整することにより得られる。
【0035】
本発明のディップ成形用組成物は、上記の共役ジエン系ゴムラテックスを含み、ディップ成形用組成物のpHが8.5以上、好ましくは9.5〜13、より好ましくは10.5〜12であり、かつ、含硫黄加硫剤、該加硫剤用の加硫促進剤および酸化亜鉛をいずれも実質的に含んでいないことを特徴とする。
ディップ成形用組成物のpHが8.5未満であると、強度が低下しすぎて満足なディップ成形品が得られず、pH13を超える範囲に調整することは、かなりの困難が伴う。
【0036】
本発明のディップ成形用組成物のpHを調整するためには、通常、塩基性物質を添加する。この塩基性物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の水酸化物および/またはアンモニアが好ましく、アルカリ金属の水酸化物がより好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。これらの塩基性物質は、添加の際の凝集物発生を防ぐために、通常、1〜40重量%、好ましくは2〜15重量%の濃度の溶液、好ましくは水溶液の状態で添加する。
【0037】
ディップ成形用組成物のpHを調整する方法としては、予め共役ジエン系ゴムラテックスのpHを調整するか、共役ジエン系ゴムラテックスと所望によりその他の配合剤とを混合した後にpHを調整する方法が挙げられるが、最終的にディップ成形用組成物のpHが所望の範囲になる方法であれば特に限定されない。
【0038】
本発明において、含硫黄加硫剤とは、共役ジエン系ゴムの高分子鎖を網目状に架橋結合しうる物質であり、硫黄はその代表である。含硫黄加硫剤は、無機系加硫剤と有機系加硫剤とに大別され、前者の具体例としては、硫黄(粉末硫黄、硫黄華、脱酸硫黄、沈殿硫黄、コロイド硫黄、高分子性硫黄、不溶性硫黄)、一塩化硫黄が挙げられ、又、後者の具体例としては、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等の熱解離により活性硫黄を放出しうる有機系加硫剤が挙げられる。その他の有機系含硫黄加硫剤の具体例は、社団法人日本ゴム協会編、「ゴム工業便覧 第4版」(平成6年1月、日本ゴム協会発行)III配合薬品 1.加硫剤に記載されている。
【0039】
含硫黄加硫剤が存在すると、ディップ成形品におけるピンホールが多くなる。含硫黄加硫剤は、全く含まないことが特に好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で含まれてもよく、その量は、共役ジエン系ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、0〜0.4重量部、好ましくは0〜0.2重量部、より好ましくは0〜0.1重量部である。
【0040】
本発明において、加硫促進剤とは、含硫黄加硫剤の存在下において、加硫反応を促進することにより、加硫時間の短縮、加硫温度の低下、又は含硫黄加硫剤の減少の効果を有する物質をいう。加硫促進剤の具体例は、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛等のチアゾール系加硫促進剤、ジフェニルチオウレア等のチオウレア系加硫促進剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤、ヘキサメチレンテトラミン等の、アルデヒド・アンモニア及びアルデヒド・アミン系加硫促進剤が挙げられる。その他の加硫促進剤の具体例は、社団法人日本ゴム協会編、「ゴム工業便覧 第4版」(平成6年1月、日本ゴム協会発行)III配合薬品 3.加硫促進剤に記載されている。
【0041】
該加硫剤用の加硫促進剤が存在すると、ディップ成形品におけるピンホールが多くなる。該加硫剤用の加硫促進剤は、全く含まないことが特に好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で含まれてもよく、その量は、共役ジエン系ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、0〜0.4重量部、好ましくは0〜0.2重量部、より好ましくは0〜0.1重量部である。
【0042】
酸化亜鉛が存在すると、ディップ成形品におけるピンホールが多くなる。酸化亜鉛は、全く含まないことが特に好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で含まれてもよく、その量は、共役ジエン系ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、0〜0.7重量部、好ましくは0〜0.3重量部、より好ましくは0〜0.1重量部である。
【0043】
本発明のディップ成形用組成物における全固形分濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%である。この濃度が低すぎると、所望の厚みを有するディップ成形品を得るのが難しくなり、逆に高すぎると、ディップ成形用組成物の粘度が高くなって取り扱いが困難となったり、ディップ成形品の厚みムラが生じ易くなる。
【0044】
本発明のディップ成形用組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において、通常使用される、老化防止剤、分散剤、増粘剤、顔料、充填剤、軟化剤などを配合してもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス等のその他のラテックスを併用することもできる。
【0045】
本発明のディップ成形用組成物は、従来のディップ成形用組成物において通常行われる熟成工程を経る必要がない。この熟成を行わなくとも、十分な強度を有するディップ成形品が得られるので、ディップ成形品の製造は簡便である。
【0046】
本発明のディップ成形品は、前記のディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形品であって、該ディップ成形品がラテックス凝固剤である水溶性多価金属塩によって架橋されており、含硫黄加硫剤、該加硫剤用の加硫促進剤および酸化亜鉛をいずれも実質的に使用せずに成形したものである。
【0047】
本発明のディップ成形品は、ディップ成形型表面上に、水溶性多価金属塩からなるラテックス凝固剤によりディップ成形層を形成し、次いでディップ成形層を乾燥した後、型から脱着して得られる。
【0048】
このディップ成形層は、ディップ成形用型を水溶性多価金属塩からなるラテックス凝固剤液に浸漬して、型表面にラテックス凝固剤を付着させた後、該型を本発明のディップ成形用組成物に浸漬するアノード凝着浸漬法や、ディップ成形用型を本発明のディップ成形用組成物に浸漬して型表面上にディップ成形用組成物皮膜を形成した後、水溶性多価金属塩からなるラテックス凝固剤液に浸漬するティーグ凝着浸漬法などにより形成できる。両者の方法をそれぞれ繰り返したり、交互に繰り返して厚い膜厚を有するディップ成形層を形成することもできる。厚みムラの少ないディップ成形品が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0049】
本発明において使用する水溶性多価金属塩は、周期律表第2、12および13族金属の塩であり、かつ、25℃における水100重量部への溶解度が5重量部以上、好ましくは20重量部以上のものである。この水溶性多価金属塩は、水相中に分散しているラテックス粒子の安定性を低下させ、ラテックス粒子を凝固させる作用を有するのでラテックス凝固剤ともいう。
【0050】
水溶性多価金属塩の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化物;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩などが挙げられる。なかでも、塩化カルシウム、硝酸カルシウムが好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、水溶液の状態で使用することが好ましい。水溶液とした場合の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、通常、5〜70重量%、好ましくは20〜50重量%である。使用する際の水溶液温度は、通常、0〜90℃、好ましくは30〜70℃である。
【0051】
ディップ成形する際のディップ成形用型の型温およびディップ成形用組成物の温度は、通常、室温〜90℃、好ましくは40〜80℃である。アノード凝着浸漬法における、ディップ成形用型をラテックス凝固剤液に浸漬する時間およびラテックス凝固剤が付着したディップ成形用型をディップ成形用組成物に浸漬する時間は、所望の厚みのディップ成形層が得られるように適宜調整すればよい。
【0052】
得られたディップ成形層は、乾燥する前に、水、好ましくは40〜70℃の温水に2〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(例えば、余剰の乳化剤や水溶性多価金属塩など)を除去してもよい。この操作は、ディップ成形層を乾燥した後に行ってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、乾燥前に行うのが好ましい。この操作を行うことで、ディップ成形品の引張強度が向上する。
【0053】
このようにして得られたディップ成形層は、含水率が高いので、乾燥する必要がある。乾燥は、ディップ成形層の含水率が好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下となるように行う。乾燥を行う方法としては、赤外線や熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、熱空気による乾燥が好ましい。乾燥温度は、通常、60〜95℃、好ましくは70〜85℃であり、乾燥時間は、通常、10〜120分程度である。
【0054】
乾燥により、ディップ成形層は、十分な強度を有するようになるので、これをディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形品が得られる。脱着方法は、手で成形用型から剥がしたり、水圧や圧縮空気の圧力により剥がしたりする方法が採用される。
【0055】
脱着する前に、さらに100〜150℃の温度で、10〜120分の熱処理を行ってもよいが、本発明のディップ成形用組成物は、前述の乾燥のみでも十分な強度を有するディップ成形品が得られる。また、脱着後、所望により、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の熱処理を行ってもよい。
【0056】
ディップ成形品の300%伸張時の引張り応力は、好ましくは3.5MPa未満、より好ましくは3.0MPa未満、特に好ましくは2.5MPa未満である。この応力が高すぎると風合いに劣る。
【0057】
ディップ成形品の引張強度は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、特に好ましくは20MPa以上である。
【0058】
本発明のディップ成形品は、手袋を装着する際の手の滑りをよくするなどの目的に応じて、その内側および/または外側の表面に表面処理層を設けてもよい。
【0059】
本発明のディップ成形品は、厚みが約0.1〜約3ミリのものが製造でき、特に厚みが約0.1〜約0.3ミリの薄手のものに好適に使用できる。具体的には、哺乳瓶用乳首、スポイト、導管、水枕などの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具や運動具;加圧成形用バッグ、ガス貯蔵用バッグなどの工業用品;手術用、家庭用、農業用、漁業用および工業用の手袋;指サックなどが挙げられる。特に、薄手の手術用手袋に好適である。
【0060】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0061】
[物性評価方法]
(共重合体ラテックスおよびディップ成形用組成物のpH)
pHメーター(M12:HORIBA社製)を用いて、25℃で測定した。
(共重合体のメチルエチルケトン不溶解分:%)
5%水酸化カリウム水溶液でpH10に、固形分濃度を30%に調整した共重合体ラテックスを枠つきガラス板に流延し、温度23℃、相対湿度50%で48時間放置し、厚み1mmの乾燥フィルムを得た。
この乾燥フィルム0.3gを80メッシュの金網に入れて、それを20℃のメチルエチルケトン100mlに48時間浸漬した。次いで、金網のかごに残るフィルムを100℃で減圧乾燥し、残存率を計算して、メチルエチルケトン不溶解分を求めた。
【0062】
(ディップ成形品の物性評価用試験片の作製)
ASTM D412に準じて、ゴム手袋状のディップ成形品をダンベル(Die−C)で打ち抜いて、試験片とした。
(300%伸張時の応力:MPa)
試験片を、テンシロン万能試験機(RTC−1225A:株式会社オリエンテック製)で、引張速度500mm/分で引っ張り、伸び率が300%の時の引張応力を測定した。この値が小さいほど、風合いに優れる。
(引張強度:MPa)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の引張強度を測定した。
(破断時伸び:%)
試験片を、テンシロン万能試験機で、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の伸びを測定した。
【0063】
(繰り返し疲労特性)
定伸張疲労試験機(FT1501:株式会社上島製作所製)を用い、25℃で、1分間あたり200回、試験片に0%から200%の繰り返し伸張を与え、試験片が破断するまでの繰り返し回数を測定した。1サンプルあたり、10個の試験片で測定し、最小値と最大値とを除き、単純平均した回数で示す。
この繰り返し回数が概ね10万回以下の手袋を着用して、指を動かしながら作業を継続すると、1〜2時間程度で、指の股部分に微小亀裂などが発生して問題が生じる。
【0064】
(ピンホール発生数)
ゴム手袋内に水を満たし、30分経過後に、内部の水が手袋外表面へ漏れ出ている箇所を1個のピンホールとし、ピンホール発生個数を測定した。なお、1サンプルについてゴム手袋を100枚作成し、全数のゴム手袋において発生したピンホールの全個数を測定した。
【0065】
(製造例1)
窒素置換した重合反応器に、アクリロニトリル28部、1,3−ブタジエン66部、メタクリル酸6部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、軟水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.5部,過硫酸カリウム0.3部及びエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.05部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。重合転化率が60%になった時点で、t−ドデシルメルカプタン0.15部を添加して、重合温度を40℃に昇温し、その後、重合転化率が80%になった時点で、t−ドデシルメルカプタン0.15部を添加して重合反応を継続し、重合転化率が94%に達するまで反応させた。その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。
得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去した後、共重合体ラテックスのpH及び固形分濃度を調整して、固形分濃度40%、pH8の共重合体ラテックスAを得た。
共重合体ラテックスAの一部を取り出し、その共重合体のメチルエチルケトン不溶解分を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
(製造例2および3)
表1に示す単量体組成、TDM量およびTDMの添加条件に変更した以外は、製造例1と同様に共重合体ラテックスの製造を行ない、共重合体ラテックスBおよびCを得た。それぞれの共重合体のメチルエチルケトン不溶解分を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
(実施例1)
共重合体ラテックスAを、5%水酸化カリウム水溶液でpH11に、固形分濃度を30%に調製し、これをディップ成形用組成物とした。
水溶性多価金属塩として硝酸カルシウム20部、ノニオン性乳化剤(エマルゲン−810:花王(株)製品)0.05部、および水80部を混合して得たラテックス凝固剤水溶液に、60℃に加温されたディップ成形用手袋型を10秒間浸漬した後、引き上げて60℃で10分間乾燥して水溶性多価金属塩を型表面に付着させた。
次に、この凝固剤の付着した手袋型を、上記のディップ成形用組成物に15秒間浸漬した後、引き上げて、手袋型表面にディップ成形層を形成した。これを40℃の蒸留水に5分間浸漬して水溶性不純物を除去した後、20℃で5分間予備乾燥し、さらに、80℃で20分乾燥後、120℃で20分加熱処理して、手袋型表面に固形皮膜物を得た。最後にこの固形皮膜物を手袋型から剥し、厚みが0.1〜0.2ミリの手袋形状のディップ成形品(以下も同様である。)を得た。このディップ成形品の評価結果を表2に示す。
【0069】
(実施例2)
共重合体ラテックスAに代えて共重合体ラテックスBを使用する以外は、実施例1と同様に行なった。結果を表2示す。
【0070】
(実施例3)
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスAと共重合体ラテックスCとをそれぞれの固形分が90/10の比率になるように混合したものを使用する以外は、実施例1と同様に行なった。結果を表2示す。
なお、上記の混合物中の全共重合体のメチルエチルケトン不溶解分は、5%であった。
【0071】
(実施例4)
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスBと共重合体ラテックスCとをそれぞれの固形分が90/10の比率になるように混合したものを使用する以外は、実施例1と同様に行なった。結果を表2示す。
なお、上記の混合物中の全共重合体のメチルエチルケトン不溶解分は、4%であった。
【0072】
(比較例1)
ジブチルカルバミン酸亜鉛1部、硫黄1部、酸化亜鉛1.5部、40%のβ−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩水溶液0.5部、および水4部をボールミルで混合し、加硫剤分散液を得た。この加硫剤分散液8部と、共重合体ラテックスA250部(固形分100部に相当する。)と混合した後、5%水酸化カリウム水溶液でpH10に、固形分濃度を30%に調整したものを、1日熟成し、これをディップ成形用組成物とした。このディップ成形用組成物を使用し、80℃で20分間の乾燥に代えて120℃で25分間の加熱加硫をする以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0073】
(比較例2)
ジブチルカルバミン酸亜鉛1部、硫黄1部、40%のβ−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩水溶液0.5部、および水2.5部をボールミルで混合し、加硫剤分散液を得た。この加硫剤分散液5部と、共重合体ラテックスA250部(固形分100部に相当する。)と混合した後、5%水酸化カリウム水溶液でpH10に、固形分濃度を30%に調整したものを、1日熟成し、これをディップ成形用組成物とした。このディップ成形用組成物を使用する以外は、比較例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
酸化亜鉛1.5部、40%のβ−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩水溶液0.5部、および水2部をボールミルで混合し、酸化亜鉛分散液を得た。この分散液4部と、共重合体ラテックスA250部(固形分100部に相当する。)と混合した後、5%水酸化カリウム水溶液でpH10に、固形分濃度を30%に調整したものを、1日熟成し、これをディップ成形用組成物とした。このディップ成形用組成物を使用する以外は、比較例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0075】
(比較例4)
共重合体ラテックスCを、5%水酸化カリウム水溶液でpH11に、固形分濃度を30%に調製し、これをディップ成形用組成物とした。このディップ成形用組成物を使用する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0076】
(比較例5)
共重合体ラテックスAを、固形分濃度を30%に、pHを8に調製し、これをディップ成形用組成物とした。このディップ成形用組成物を使用する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。但し、手袋型から手袋形状のディップ成形品を剥す際に、そのディップ成形品が延びたり、破れたりする為、満足な手袋形状を有するディップ成形品を得ることができなかった。
【0077】
【表2】
【0078】
表2から以下のようなことがわかる。
硫黄、加硫促進剤および酸化亜鉛を配合した比較例1のディップ成形品は、風合いに劣り、かつピンホールの発生数が多い。
硫黄および加硫促進剤を配合した比較例2のディップ成形品は、風合いは比較的良好であるものの、ピンホールの発生数が多い。
酸化亜鉛を配合した比較例3のディップ成形品は、風合いに劣り、かつピンホールの発生数が多い。
【0079】
メチルエチルケトン不溶解分が本発明で規定する値より高い共重合体ラテックスCを使用して得られる比較例4のディップ成形品は、ピンホール発生数が少なく、風合いに優れるものの、繰り返し疲労特性に劣る。
ディップ成形用組成物のpHが本発明で規定する値より低い比較例5のディップ成形品は、風合いが良好であるが、引張強度が低すぎて満足なディップ成形品が得られない。
【0080】
これらの比較例に対して、本発明で規定する範囲にある実施例1〜4のディップ成形品はいずれも、ピンホール発生数が極めて少なく、風合い、引張り強度および繰り返し疲労特性に優れる。また、本発明のディップ成形用組成物は熟成しなくても、十分な特性を有するディップ成形品を与える。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、ピンホールが極めて少なく、風合い、引張り強度および繰り返し疲労特性に優れるディップ成形品の原料として好適なディップ成形用組成物、ディップ成形品および該成形品を効率よく製造するための製造方法が提供される。
Claims (4)
- エチレン性不飽和酸単量体を共重合した共役ジエン系ゴムラテックスを含むディップ成形用組成物であって、ラテックスpH10における該共役ジエン系ゴムラテックスを構成する共重合体のメチルエチルケトン不溶解分が30重量%以下、ディップ成形用組成物のpHが8.5以上であり、かつ、共役ジエン系ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、それぞれ、含硫黄加硫剤0〜0.4重量部、該加硫剤用の加硫促進剤0〜0.4重量部および酸化亜鉛0〜0.7重量部を含むことを特徴とするディップ成形用組成物。
- 共役ジエン系ゴムラテックスは、重合に使用する分子量調節剤の40〜95重量%を当初に仕込み、残りを重合転化率が50〜95重量%のときに添加する方法により共重合して得られたものである請求項1に記載のディップ成形用組成物。
- 請求項1記載のディップ成形用組成物をディップ成形してなるディップ成形品であって、該ディップ成形品がラテックス凝固剤である水溶性多価金属塩によって架橋されていることを特徴とするディップ成形品。
- ディップ成形用型に水溶性多価金属塩からなるラテックス凝固剤を付着させた後、該型を請求項1に記載のディップ成形用組成物に浸漬して型表面上にディップ成形層を形成し、次いでディップ成形層を乾燥した後で型から脱着することを特徴とするディップ成形品の製造方法。
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