JP4132949B2 - 曲げ合わせガラスの製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲げ合わせガラスの製造方法並びに製造装置に係り、特に、密着性に優れ、耐久性の高い曲げ合わせガラスの簡易な製造方法並びに製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、曲げ合わせガラスの製造には、2枚の曲面ガラス板の間にポリビニルブチラール(PVB)フィルムを挟み、これを予備圧着し、次いでオートクレーブ中で処理して製造する方法が一般的に用いられている。即ち、PVBフィルムを挟んだ2枚のガラス板を真空袋に入れ、袋内部を排気してガラス板間の空気を除去する。この状態で、ゴム袋を予備圧着装置に入れ、130℃程度の熱風で加熱して仮接着を行う。次に、仮接着したガラス板を、オートクレーブ内で140℃、10〜13kg/cmに加熱、加圧して本接着を行う。その後、冷却して取り出し、曲げ合わせガラスが完成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の曲げ合わせガラスの製造方法は、予備加熱装置及びオートクレーブ等の高圧容器など、高額な設備が必要であるとともに、仮接着及び本接着という2段階の処理が必要で製造工程が多くなり、これらが曲げ合わせガラスの価格を引き上げる原因となっていた。また、上記の製造方法では、ガラス板間に空気が残る場合があり、またガラス板全面にわたり均一な接着強度が得られ難く、長期間の使用により部分的にガラスの浮き、剥離等が起こる場合があり、耐久性に優れた曲げ合わせガラス性を高い歩留まりで製造できる製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
かかる状況において、本発明者は、製造工程中の脱気方法及び加熱方法を総合的に検討する中で、加熱工程を1回とし、加熱に液体を用いることにより、一層均一な接着強度が得られることが分かった。
本発明はかかる知見を基にさらに検討を加え完成したものであり、本発明の目的は、上記従来の曲げ合わせガラス製造方法の問題点を解決し、接着強度がガラス全面で均一で、長期安定性に優れた曲げ合わせガラスを、簡易かつ歩留まり良く製造可能な製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の曲げ合わせガラスの製造方法は、所定の曲面形状を有する2枚のガラス板の間に熱硬化性又は熱溶融性のフィルムを挟む工程と、内部を密封可能な柔軟性を有する袋体に前記ガラス板を入れ、該袋体の内部を排気して真空状態にする工程と、前記袋体を所定の温度に加熱した液体中に浸漬して前記フィルムを加熱硬化又は溶融する工程と、前記袋体を冷却する工程と、からなることを特徴とする。特に、熱硬化性又は熱溶融性のフィルムとしてエチレン酢酸ビニル共重合体フを用いるのが好ましい。
【0006】
このように、加熱液体を用い、1回の加熱処理でガラス板の接着を行うことにより、ガラス板全面にわたり均一な接着強度が得られ、耐久性の高い曲げ合わせガラスを歩留まり良く製造することができる。即ち、加熱液体により、袋体、ガラスを介してエチレン酢酸ビニル共重合体フィルムが均一に加熱され、ガラス面全面にわたり均一に硬化もしくは溶融するため、冷却後は全面にわたり均一な接着強度が得られる。このため、長期にわたり耐久性に優れた合わせ曲げガラスが歩留まり良く得ることができる。また、1回の加熱処理で接着できるため、製造工程の簡略化、短縮化が可能となり、また、高価な装置も必要ないことから、曲げ合わせガラスのコストダウンを達成することができる。
【0007】
前記2枚のガラス板の周辺端面部に突起を有するゴムリングを、該突起が端面に接触するように配置するのが好ましい。突起をガラス端に接触させることにより、前記袋体内部の排気する際に、2枚のガラス板のエッジが互いに接触してガラス板間に空気が残留するという現象を防止することができ、これにより接着強度の均一な曲げ合わせガラスを安定して製造することができる。
【0008】
さらに、前記液体を容器の下方から上方に流れるようにポンプにより循環させ、該容器の下部に配置されたヒータにより所定の温度に保った状態で、前記袋体を前記容器中の前記液体に浸漬して加熱することを特徴とする。
このような構成とすることにより、フィルムは均一に加熱され、フィルムの硬化反応等を均一に行わせることができ、より均一な接着強度を得ることができる。
【0009】
なお、前記液体の温度を100〜140℃とするのが好ましい。液体温度は、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱硬化温度(又は溶融温度)により定められるが、液体温度をかかる温度範囲とすることにより、より安定した接着強度の曲げ合わせガラスを得ることができる。また、前記液体は、160℃で安定な液体が好適に用いられ、洗浄、取扱が容易な、例えば、スピンドル油、焼き入れ用油又は電解質水溶液が用いられる。電解質としては、例えば水酸化ナトリウム等が用いられる。
【0010】
前記フィルムの加熱硬化又は溶融工程の後、前記袋体をスプレー洗浄することを特徴とする スプレー洗浄により、液体を容易に洗浄、除去することができるとともに、袋体内部のガラス及びフィルムを効率よく冷却することができる。
【00011】
本発明の曲げ合わせガラスの製造装置は、所定の曲面形状を有する2枚のガラス板を熱硬化性又は熱溶融性のフィルムを介して接着した曲げ合わせガラスの製造装置であって、前記フィルムを挟んだ2枚のガラス板を挿入した状態で内部を真空状態に排気可能な袋体と、該袋体を循環する液体で加熱するための液体容器であって、下部及び上部にそれぞれ液体導入部及び排出部を備え、該導入部の近傍にヒータを配置した液体容器と、前記液体を循環させるポンプを備えたことを特徴とする。
このような構成とすることにより、工程が簡略化されるとともに、オートクレーブのような高価な装置が不要となるため、製造装置をより小型、安価とすることができる。さらには、歩留まりの高い生産が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の曲げ合わせガラスの製造方法を図1に示す製造装置を参照して説明する。
図1に示すように、製造装置は、真空ゴム袋(袋体)40にガラス板を装填する作業を行う作業台10、加熱装置20、洗浄装置30、真空ゴム袋から接着した曲げ合わせガラスを取り出す作業台10’、及び真空ゴム袋の搬送装置50とから構成される。
【0013】
加熱装置20は、液体25を満たした容器21と、液体循環ポンプ22と、ヒータ24とからなり、液体25はポンプ22により容器底部に送り込まれ上部から排出され、配管23により循環される。又、液体容器の下部に配置されたヒータ24により加熱され所定の温度に保たれる。なお、容器は断熱材で覆われ、保温されている。ここで、液体は100〜140℃程度に加熱できるものであれば特に制限はないが、通常160℃程度で安定な液体、例えばスピンドル油、焼き入れ用油又は電解質水溶液が用いられる。また、容器の材質等は液体に対し安定なもの(例えばステンレス)が用いられる。
【0014】
洗浄装置30は、容器(例えばステンレス製)31の内部に多数のノズル33を取り付けた多数の洗浄液供給管32が配置され、外部から洗浄液供給管32を通して供給される高圧の洗浄液が、ノズル33から真空ゴム袋の両面に全面にわたり噴出される構成となっている。
搬送装置50は、ホイスト52とホイストレール51とからなり、真空ゴム袋40はロープ47がチェーンブロックで保持されて各処理装置間を移動し、昇降して所定の処理が行われる。
【0015】
次に、曲げ合わせガラスの製造工程を説明する。
まず、合わせ処理の前段階として、素板を所望の大きさに切断し、洗浄した後CaCOパウダー打ちを行う。続いて2枚を重ね合わせ生曲げ加工を行い、洗浄する。
【0016】
洗浄後のガラス板を作業台10に運び、図2の概略断面図に示すように、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム2を2枚の曲げガラス板1の間に挟み、周辺のはみ出たフィルムを切断する。続いて、2枚のガラス板の外周部に、部分的に突起45を設けたゴムリング44を取り付け、2枚のガラス板の複数カ所をステンレスの板バネ46で固定する。このようなゴムリングを配置することにより、脱気時のガラスエッジのシールを防止し、ガラス板間の空気を効率よく排気することができる。
【0017】
次に、ゴムリング等を取り付けた図2に示すガラス板を真空ゴム袋40に装填する。この状態を図3(a)(概略平面図)及び3(b)(A−A断面図)に示す。
真空ゴム袋40は、図に示すように、合成ゴム等のシート(例えば、藤倉ゴム株式会社製)41を折り曲げ、3辺を気密ファスナ(例えば、YKK株式会社製オータイト(商標登録))48で閉じ、内部を密閉する構造のものであり、折り曲げ部には、排気用ジグ(吸入管)42が取り付けられ、シール剤43により気密性が保たれている。排気用ジグ42は真空ゴム管を介して真空ポンプ(不図示)と連結される。なお、ゴムシート41の内側には、布が貼り付けてあるため、ガラス板とゴムシートが密着した状態でも布の糸に沿って空気の排出をスムーズに行うことができる。また、折り曲げ部にはロープ47が取り付けられ、チェーンブロックのフックに保持させ袋体の搬送に用いる。なお、真空ゴム袋の材質は、加熱用液体に対し安定で柔軟性を有するものであれば、特に限定するものではない。
【0018】
不図示の真空ポンプにより、真空ゴム袋内部を400Pa程度以下まで排気する。上述したように、ゴムリング44及びゴムシートに貼りつけられた布の作用により、内部の空気は残留することなく速やかに排出され、ガラス板全面が大気圧により均一により押しつけられる。
なお、真空ゴム袋の排気用ジグは、搬送及び加熱処理中も真空ポンプと連結し、常時排気するのが好ましいが、排気用ジグにバルブを取り付け一旦高真空に排気した後バルブを閉じ、真空ポンプを取り外す構成とすることも可能である。
【0019】
チェーンブロックを真空ゴム袋のロープ47に引っ掛けて真空袋40を持ち上げ、加熱処理装置20まで移動させる。ここで、真空ゴム袋を降ろして、液体25中に浸漬する。ここで、液体の温度及び浸漬時間は、フィルムの特性に応じて熱硬化反応が完了する(又は完全に溶融する)温度、時間が選択されるが、通常100〜140℃、30分程度である。
内部に空気が残留せず、ガラス板とゴムシートが密着した状態となっているため、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムは、液体の熱により均一に加熱され均一な熱硬化反応等が起こるため、2枚のガラスは全面強固に接着する。
【0020】
この後、同様にしてチェーンブロックで真空ゴム袋を持ち上げ、洗浄装置に移動し、容器31内に下降させる。真空ゴム袋の両面から40〜50℃の温水を吹きつけ、真空ゴム袋に付着した液体を洗浄、除去するとともに、ガラスを冷却する。
洗浄処理後、真空ゴム袋をテーブル10’に移し、リークして合わせガラスを取り出した後、再び真空ゴム袋をテーブル10に戻し、次のガラス板の合わせ処理を行う。
このようにして、曲げガラスの合わせ処理を連続して歩留まり良く行うことができる。
【0021】
なお、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムとしては、熱硬化性及び熱溶融性のいずれも用いることもできるが、熱溶融性フィルムを用いる場合は、十分冷却されていない状態で真空状態を破ると、接着強度が十分でないため剥離してしまうおそれがあり、取扱いに注意を要する。また、フィルム厚さとしては、0.1〜0.5mm程度のものが好適に用いられる。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、接着強度が均一で長期安定性に優れた曲げ合わせガラスを歩留まり良く製造することが可能となる。また、製造工程が簡略化され、しかも特殊な装置も不要なことから、曲げ合わせガラスのコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曲げ合わせガラスの製造装置の構成例を示す模式図である。
【図2】ガラス板を重ね合わせ、固定した状態を示す概略断面図である。
【図3】真空ゴム袋を示す概略図である。
【符号の説明】
1 曲げガラス、
2 エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、
10,10’ 作業台、
20 加熱装置、
21 容器、
22 循環ポンプ、
23 配管、
24 ヒータ、
25 液体、
30 洗浄装置、
31 容器、
32 洗浄液供給管、
33 ノズル、
40 真空ゴム袋(袋体)、
41 ゴムシート、
42 排気用ジグ(吸入管)、
43 シール剤、
44 ゴムリング、
45 突起、
46 板バネ、
47 ロープ、
48 気密ファスナ部材、
50 搬送装置、
51 ホイストレール、
52 ホイスト。

Claims (9)

  1. 所定の曲面形状を有する2枚のガラス板の間に熱硬化性又は熱溶融性のフィルムを挟む工程と、
    前記2枚のガラス板の周辺端面部に部分的に突起を設けたゴムリングを、該突起が端面部に接触するように配置する工程と、
    内面に布を配設した密封可能で柔軟性を有する袋体に、前記ガラス板を挿入し、内部を排気して真空状態にする工程と、
    前記袋体を所定の温度に加熱した液体中に浸漬して前記フィルムを加熱硬化又は溶融する工程と、
    前記袋体を冷却する工程と、
    を含むことを特徴とする曲げ合わせガラスの製造方法。
  2. 前記フィルムはエチレン酢酸ビニル共重合体のフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の曲げ合わせガラス製造方法。
  3. 前記袋体はゴムシートを折り曲げて、3辺を気密ファスナーで閉じて内部を密閉する構成とし、折り曲げ部に設けた排気用ジグを介して内部を排気することを特徴とする請求項1又は2に記載の曲げ合わせガラスの製造方法。
  4. 前記液体を容器の下方から上方に流れるようにポンプにより循環させ、該容器の下部に配置されたヒータにより所定の温度に保った状態で、前記袋体を前記容器中の前記液体に浸漬して加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の曲げ合わせガラス製造方法。
  5. 前記液体の温度を100〜140℃とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の曲げ合わせガラスの製造方法。
  6. 前記液体は、160℃で安定な液体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の曲げ合わせガラス製造方法。
  7. 前記フィルムの加熱硬化又は溶融工程の後、前記袋体をスプレー洗浄することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の曲げ合わせガラス製造方法。
  8. 所定の曲面形状を有する2枚のガラス板を熱硬化性又は熱溶融性のフィルムを介して接着した曲げ合わせガラスの製造装置において、
    部分的に突起を設け、該突起が前記2枚のガラス板の周辺端面部に接触するように配置されるゴムリングと、
    前記ゴムリングを配置したガラス板を挿入した状態で、内部を真空状態に排気可能な袋体であって、内面に布を配設した柔軟性を有する袋体と、
    該袋体の内部を排気する真空ポンプと、
    該袋体を液体で加熱するための加熱装置と、
    を備え、前記袋体の中で前記2枚のガラス板間の空気を排気した後に、加熱して接着する構成とした 曲げ合わせガラスの製造装置。
  9. 前記袋体はゴムシートを折り曲げて、3辺を気密ファスナーで閉じて内部を密閉する構成とし、折り曲げ部に設けた排気用ジグを介して内部を排気することを特徴とする請求項8に記載の曲げ合わせガラスの製造装置。
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