JP4129174B2 - 導電性セラミックス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性を有するセラミックス、特に磁気記録装置に組み込まれる静電気除去用のスペーサー、シム、ハブ等や半導体製造装置のシリコンウエハ上に発生する静電気を除去する部材等、主として静電気除去部材として用いられる導電性セラミックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来導電性セラミックスとしては、特許文献1に記載の固体電解質型燃料電池部材、発熱体素子、耐熱電極等に用いられているランタンクロマイト等のペロブスカイト系セラミックスがあり、セラミックヒーターやセラミックセンサー用材料として使用されていた。
【0003】
また、その他には特許文献2〜4のように、電極、ヒーターや各種半導体関連部品に用いる導電性セラミックス材料として周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種を含む化合物とTiO2を含み、これらの少なくとも一部が複合酸化物を形成していることを特徴とする導電性セラミックス材料が提案されていた。
【0004】
更に、特許文献5では各種電子部品や電気材料等に用いる導電性セラミックスとして、酸化物系セラミックスの原料と炭素源とを混合した導電性セラミックスを提案している。
【0005】
また、特許文献6では酸化モリブデン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の金属酸化物と炭素源とアルミナ等の酸化物系セラミックスを混合し、成形、焼成することにより得られる導電性セラミックスが提案されていた。
【特許文献1】
特開1995―149565号公報
【特許文献2】
特開2000―1366号公報
【特許文献3】
特開2000―264720号公報
【特許文献4】
特許第3241350号公報
【特許文献5】
特開2001―199764号公報
【特許文献6】
特開2002―226269号公報
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、特許文献1に示したランタンクロマイト等のペロブスカイト系セラミックスは耐熱性に優れており、固体電解質燃料電池部材やヒーター、その電極等の耐熱性を要求される部材の材料として好適に用いられるものの、材料自体のコストが高いという問題があった。
【0006】
また、特許文献2〜6に示した導電性セラミックスは、何れもその導電性について静電気除去や各種半導体装置部品として好適に用いられる範囲のものであったが、不活性ガス雰囲気中もしくは還元雰囲気中、更には熱間静水圧プレス(HIP)処理を行わなければ緻密質の焼結体が得られず、製造コストがかかるという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑み、MgAl24(スピネル)に酸化鉄を加えた導電性セラミックスにおいて、前記酸化鉄の含有量が15〜45重量%であることを特徴とする導電性セラミックスを提供する。
【0008】
更に、上記導電性セラミックスはX線回折における2θ=18〜19°にあるピークの強度値と、2θ=36〜37°にあるピークの強度値との比が0.13以上であることを特徴とする。
【0009】
更にまた、上記導電性セラミックスは、酸化鉄含有量が15〜35重量%であり、かつ強度が100MPa以上としたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0011】
本発明は、絶縁性のMgAl24(スピネル)に導電性を付与するため酸化鉄を加えた導電性セラミックスであり、酸化鉄の含有量を15〜45重量%とし、所定の導電性を得るようにしてある。
【0012】
従って、MgAl24(スピネル)と酸化鉄の混合比率によって、導電性のレベルを調節することが可能であり、導電性セラミックスとして使用可能なものとするためにはMgAl24(スピネル)が55〜85重量%、酸化鉄が15〜45重量%の割合とすることが好ましい。
【0013】
ここで、MgAl24(スピネル)と酸化鉄を上記重量割合としたのは、酸化鉄を上限値より多く含むと、導電性セラミックス中に存在するボイド(気孔)率が大きくなり、緻密化が困難となるからである。また、酸化鉄が下限値より少ない場合には、酸化鉄の割合が少なくなり、導電性が得られなくなるためである。
【0014】
また、各種の静電気除去用部材や半導体製造装置部品等として用いるには、静電気除去のために1010Ω・cm以下の体積固有抵抗を必要とするが、本発明の導電性セラミックスは上記酸化鉄の重量割合とすることにより、103〜109Ω・cmの範囲の体積固有抵抗が得られ、各種静電気除去用部材等に好適に用いることが可能である。
【0015】
なお、上記の体積固有抵抗については、JIS C−2141−1992に記載の3端子法に準拠して測定を行った。
【0016】
次に図1に本発明の導電性セラミックス焼結体のX線回折におけるスペクトル図の一例を示す。図は、MgAl24を75重量%、酸化鉄を25重量%の比率として本発明の導電性セラミックスを形成したときのX線回折パターンである。図から、主結晶相としてはMgAl24、FeAl24並びにMg(Al,Fe)24の3種類の結晶相のピークが重なった形となっている。
【0017】
そして、本発明者らは鋭意検討の結果、このスペクトル図において、2θ=18°〜19°にあるピークの強度値と2θ=36°〜37°にあるピークの強度値との比が0.13以上であれば、上述した静電気除去用部材などに用いる好適な抵抗値の範囲である103〜109Ω・cmの体積固有抵抗からは劣るものの、104〜109Ω・cmの体積固有抵抗を確保し、且つ100MPa以上の高強度を有する導電性セラミックスとなることを見出したものである。
【0018】
ここで、2θ=18°〜19°にあるピークの強度値と2θ=36°〜37°にあるピークの強度値との比を0.13以上としたのは、0.13より小さくなると、非晶質のガラス成分が増加し強度低下が起こるためである。
【0019】
また、上記2θ=18°〜19°にあるピークの強度値と2θ=36°〜37°にあるピークの強度値との比を0.13以上としたときの酸化鉄の重量割合は、15〜35重量%である。そして、酸化鉄の重量割合を15〜35%の範囲内とすることにより、本発明の導電性セラミックスの強度を100MPa以上とすることが可能であり、各種静電気除去部材や半導体製造装置用部品のうち応力集中等が発生し易く、機械的特性を必要とされる部位にもより好適に用いることができる。
【0020】
ここで、酸化鉄の重量割合を上記範囲としたのは15%より少ない場合には所定の導電性が得られなくなるからであり、35%より多くした場合には焼成した際に強度の低い非晶質のガラス成分が焼結体中に多く残留し強度低下してしまうからである。
【0021】
なお、上記強度はJIS R1601−1995に記載の3点曲げ強度に準拠して測定を行った値である。
【0022】
次に本発明の導電性セラミックスの製造方法について説明する。
【0023】
まず、市販の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)とアルミナ(Al23)、三酸化鉄(Fe23)を本発明範囲内の組成となるように混合・粉砕し、粒度2μm以下とする。混合・粉砕は、スーパーミキサー等の乾式混合攪拌機を用いて3種の原料を混合した後、水、バインダー、分散剤を加えボールミル、ビーズミル等の湿式粉砕機により混合粉砕しても良いし、また上記乾式混合機による混合工程を省きそのまま湿式混合粉砕機による混合・粉砕工程を用いても良い。より製造コストを下げるためには、後者の製法をとることがより好適である。
【0024】
また、混合粉砕後の粒度は、レーザー回折散乱法により測定しその結果平均粒度(D50)が2μm以下となるのが焼結体をより緻密化させるために好適である。
【0025】
なお、上記の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)とアルミナ(Al23)については、あらかじめ仮焼してスピネル(MgAl24)としたものを用いることもできるが、原料コストを抑えるためには好ましくない。
【0026】
そして湿式混合・粉砕した後、上記スラリーをスプレードライヤー等の噴霧造粒機により造粒し、粉体を十分に乾燥させ、それを乾式プレス成形等の成形方法を用いて成形し、大気(酸化)雰囲気中1400〜1700℃の温度範囲で焼成することにより本発明の導電性セラミックスの焼結体を得る。
【0027】
このとき、酸化鉄については、三酸化鉄(Fe23)を用いるのが良いが、他にFeO、Fe34を用いても本発明の導電性セラミックスを製造可能である。そしてこれら三酸化鉄(Fe23)、FeO、Fe34を添加することによって、本発明の導電性セラミックスに所定の導電性を付与することができ、その添加量を15〜45重量%の範囲とすることにより、103〜109の体積固有抵抗を有した本発明の導電性セラミックスを製造することが可能となる。
【0028】
ここで、上記焼成における温度範囲を1400〜1700℃としたのは、1400℃より低い温度では焼結体の密度が向上せず、使用可能な焼結体の機械的特性及び導電性が得られないためであり、1700℃より高い温度では組織が溶融してしまうためである。
【0029】
更に、本発明の導電性セラミックスを高強度化するためには、上述の製造方法のうち、酸化鉄の添加量を15〜35重量%の範囲とし、その後上述の製法と同様の工程を経て成形した後、大気(酸化)雰囲気中1450〜1700℃の温度範囲で焼成すれば、104〜109Ω・cmの体積固有抵抗を有し、かつ100MPa以上の強度を有する導電性セラミックスを製造可能であり、その焼結体のX線回折パターンのスペクトル図における2θ=18°〜19°にあるピーク強度値と2θ=36°〜37°にあるピーク強度値の比は0.13以上の値となる。
【0030】
ここで、上記焼成における温度範囲の下限値が1450℃と高いのは、高強度化のために低融点である酸化鉄添加量を少なくしたためであり、1450℃より低い温度では焼結体の密度が向上しないためである。
【0031】
また、本発明の導電性セラミックスは、大気(酸化)雰囲気中で上記焼成温度範囲内で焼成を行えば、十分に緻密化が可能であり、従来と比較して不活性ガス雰囲気中、還元雰囲気中での焼成や熱間静水圧プレス(HIP)処理を行う必要がなく、焼成工程での製造コストを削減できる。
【0032】
また、上記焼結体中に含まれる不純物としては、SiO2、CaO、Cr23、Na2Oが合計で1重量%以下含まれていても良く、1重量%以下であれば本発明の導電性セラミックスの機械的特性や導電性に影響はない。
【0033】
このようにして製造した本発明の導電性セラミックスは、従来よりも原料、製造コストが安く、不活性ガス雰囲気や還元雰囲気焼成、熱間静水圧プレス成形(HIP)等の焼成方法を用いることなく製造できるために、大幅に製造コストを削減できる。
【0034】
そして上述の導電性セラミックスは各種の導電性が必要とされる部材に適用可能である。特に、本発明の導電性セラミックスの体積固有抵抗値では、磁気記録装置に組み込まれる静電気除去用のスペーサー、シム、ハブ等や半導体製造装置のシリコンウエハ上に発生する静電気を除去する部材等、各種静電気除去用の部材として好適に用いることが可能である。
【0035】
また、本発明は上記実施の形態に示したものだけに限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲内で改良しても良いことは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
【0037】
市販の水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、アルミナ(Al23)、三酸化鉄(Fe23)を表1に記載の試料No.1〜8に示す重量割合となるよう添加量をふり、各試料ごとに水、バインダー、分散剤と共にボールミルに投入して湿式混合・粉砕し、レーザー回折散乱法による粒度D50=2μm以下の粒度のスラリーを得た。しかる後に前記スラリーをスプレードライヤーにより造粒して原料粉体を得た。そして前記原料粉体を乾式プレス成形機により1ton/cm2の成形圧力で所定の形状に成形した後、1500〜1600℃で1〜2時間焼成を行った。
【0038】
次に得られた成形体を横3mm、縦4mm、長さ45mmの寸法に研削加工し、JIS規格に基づき、3点曲げ強度(JIS R1601―1995)、ヤング率(JIS R1602―1995)の測定を実施した。
【0039】
また、それとは別に直径25mm、厚さ2mmの寸法に研削加工して体積固有抵抗の測定を行い導電性について評価した。また、JIS R1618に準拠した熱膨張率の測定も実施した。
【0040】
更に、市販の画像解析装置(ルーゼックス)を用いて試料表面の任意の位置の測定総面積9.0×105μm2中に締めるのボイド(気孔)面積を計10ケ所測定し、ボイド面積/測定総面積の値を算出して各試料のボイド率を求めた。
【0041】
また、X線回折も実施し、そのスペクトル図から2θ=18°〜19°にあるピーク強度と2θ=36°〜37°にあるピークの強度値の比を算出した。
【0042】
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 0004129174
【0044】
表1から試料No.1、2については、ボイド率が他と比較して高く、十分に緻密化していなかった。
【0045】
また、試料No.10については、体積固有抵抗値が1.0×1010と高く導電性が低下する結果となった。
【0046】
それらと比較して、本発明範囲内の試料No.3〜9については、体積固有抵抗(JIS C−2141−1992)が本発明範囲内である103〜109Ω・cmと良好な値を示した。
【0047】
更に本発明範囲内でも酸化鉄の含有量が15〜35重量%であり、ピークの強度値の比が0.13以上である試料No.5〜9については、3点曲げ強度が100MPa以上と高く良好であった。
【0048】
更には、ヤング率については酸化鉄の添加量が多いもの程低下する傾向を示し、熱膨張率については、熱膨張率の高い酸化鉄の添加量が多いもの程、高い値を示す傾向があることが確認された。
【0049】
以上の結果から、本発明範囲内のものであれば静電気除去に必要な導電性を有することから、各種静電気除去用の部材として好適に用いることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の導電性セラミックスは、MgAl24(スピネル)に酸化鉄を加えた導電性セラミックスにおいて、前記酸化鉄の含有量を15〜45重量%としたことから、所定の導電性を得られ、各種静電気除去用の部材として用いることができる。
【0051】
上記導電性セラミックスのX線回折における2θ=18〜19°にあるピークの強度値と、2θ=36〜37°にあるピークの強度値との比が0.13以上としたことから、各種静電気除去用の部材として必要な導電性が得られ、且つ高強度化が可能となる。
【0052】
上記導電性セラミックスの酸化鉄含有量が15〜35重量%であり、かつ強度が100MPa以上としたことから、体積固有抵抗値については104〜109Ω・cmと劣るものの、より高強度化された導電性セラミックスとでき、導電性及び機械的特性をも要求される各種静電気除去用部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る導電性セラミックスのX線回折における結晶ピークを示すスペクトル図である。

Claims (3)

  1. MgAl24(スピネル)に酸化鉄を加えた導電性セラミックスにおいて、前記酸化鉄の含有量が15〜45重量%であることを特徴とする導電性セラミックス。
  2. X線回折における2θ=18〜19°にあるピークの強度値と、2θ=36〜37°にあるピークの強度値との比が0.13以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性セラミックス。
  3. 酸化鉄含有量が15〜35重量%であり、かつ強度が100MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性セラミックス。
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