JP4100932B2 - 誘電体磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体磁器組成物に係り、特に、鉛(Pb)を含有せずに高周波特性に優れ、且つ比較的低温で焼成が可能な誘電体磁器組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、銀(Ag)電極と同時焼成することができる誘電体磁器組成物が求められている。例えば、セラミック・グリーンシートと銀(Ag)電極を890〜920℃の温度範囲にて同時に加熱焼成できる誘電体磁器組成物である。ところで、一般式CaTiOで表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とする材料は、1300〜1400℃の高温で加熱焼成され緻密であり、比誘電率εr=170,Q=1800(周波数=2GHzにおいて)と高周波帯域で優れた特性が得られるが、1300℃以下の焼成温度では緻密化せずその特性が劣るという問題がある。
【0003】
890〜920℃程度の比較的低温で加熱焼成するためには、焼成助剤を多用することが必要である。しかし、これは、その特性を大きく変化させて高周波帯域において優れた高誘電率、高Q値の特性が得られなくなってしまう。従来の材料でも、900℃で加熱焼成され高誘電率、高Q値の特性を満足するものがある。しかし、それは、焼結助剤として鉛(Pb)を含んだものしか確認されていない。
【0004】
そこで、人体に有害な鉛(Pb)を含んでいない誘電体磁器組成物の開発が、多くのユーザから要求されている。また、環境保全の立場から各方面の関係者からもその開発が待たれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、鉛(Pb)を含有せずに、高周波数帯域で優れた誘電特性を有し、比較的低温で銀電極などと同時焼成可能な緻密な焼結体が得られる誘電体磁器組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、本発明の誘電体磁器組成物は、一般式 CaTiO で表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対して、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、B をy重量部(1.0≦y≦15.0)を混合して、前記ガラスは、組成式=aB-bBi-cZnOで表され、ここに、 a、b、cは、モル比で、0.2≦a≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦c≦0.4、但し、a+b+c=1の範囲内にあることを特徴としている。
【0007】
本発明者は、少量の添加で焼成を促進させることのできるガラスを開発し、それとBを併用することで、比誘電率εr=50〜150,Q=300〜820(周波数=4.2〜6.7GHzにおいて)の特性を有する緻密な誘電体磁器を890〜920℃の範囲で焼成することができることを見いだした。この緻密な構造により、セラミックの強度が向上し、比誘電率εr,Q値の好ましい特性が得られ、バラツキが減少して安定化するという性能面の改良がある。誘電体磁器組成物と銀(Ag)電極の同時加熱焼成ができることにより、製造工程の短縮と製造コストの削減が達成できるという製造上のメリットがある。また、この誘電体磁器組成物は、人体に有害な鉛(Pb)を含んでいない点が環境保全から観たメリットである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る誘電体磁器組成物の実施形態について、表1、図1乃至図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0009】
表1は、22件の試料についての組成と諸特性のデータをまとめたものである。試料の作製に当たり、ガラスとBの添加率を変えること、ガラスの組成を変えること、焼結助剤としてガラスとBの添加の有無、加熱焼成温度などを考慮した。本発明のガラスの組成については、図1に示される。
【0010】
(実施例)
本発明の出発原料にCaCO粉末とTiO粉末を用い、CaとTiのモル比が0.95(Ca/Ti=0.95)になるように所定量秤量する。この秤量原料をボールミルで18時間湿式混合した後、乾燥させて混合粉末を得る。この混合粉末を大気中において1200℃で仮焼した後、ボールミルで24時間湿式粉砕して平均粒径0.5μmのCaTiO粉末を得る。X線回折パターンにより、該粉末がCaTiOであることが同定できる。(図2を参照。)
【0011】
次に、ガラスを作製した。出発原料にB粉末とZnO粉末とBi粉末を用い、表1に示した試料組成になるように秤量する。この秤量原料を乳鉢・乳棒で10分間乾式混合する。混合した粉末をアルミナ質のるつぼに入れ、900℃の炉内で30分溶融させる。その後、炉からるつぼを取り出し、室内にて放冷してガラスを固化させる。るつぼからガラスだけを取り出し、自動乳鉢機で1時間粗粉砕する。粗粉砕したガラス粉末をボールミルで8時間湿式粉砕して平均粒径1μmのガラス 粉末を得る。X線回折パターンにより、該粉末が非晶質ガラスであることを確認できる。(図3を参照。)
【0012】
CaTiO粉末に表1の試料の組成になるようにガラス粉末とBを秤量する。(Bは、HBOで秤量する)。それをボールミルで3時間湿式混合した後、乾燥させて混合粉末を得る。この混合粉末にバインダー水溶液を添加して造粒する。この造粒粉をφ(直径)16.5mmの金型に詰めて、750kgf/cm2以下の一軸加圧をする。さらにその成形体に対して冷間等方プレス(cold isostatic press)を使って1000kgf/cm2の力で2分間等方加圧して成形する。それを空気中において、890〜920℃の温度で2時間加熱焼成し、焼結体を得る。
【0013】
両端短絡形誘電体共振器法を使って得られた焼結体の比誘電率εrとQの測定データを表1に示す。
【0014】
表1の22件のうち試料11件、即ち、試料1〜4、試料6、試料8、試料10、試料13,試料15〜17は、a,b,c,x,yの値が本発明の範囲にある。即ち、一般式CaTiOで表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対して、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、By重量部(10≦y≦15.0)を混合して焼成したもので、前記ガラスは、組成式=aB-bBi-cZnOで表され、
ここに、 a、b、cは、モル比で、0.2≦a≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦c≦0.4、但し、a+b+c=1の範囲内にある。
【0015】
試料1〜4、6、8,10は、焼成温度が917℃であり、試料13は、891℃であり、試料15〜17は,焼成温度が917℃である。これら試料11件ついては、焼成温度891〜917℃の範囲で緻密な構造を有する誘電体磁器焼結体が得られている。比誘電率εrについて、試料1が最高値(εr=148.9)を有し、試料10が最低値(εr=57.6)を有している。Q値については、試料1が最高値(Q=820[周波数=4.27GHzにおいて])を有し、試料10が最低値(Q=311[周波数=6.69GHzにおいて])を有している。試料11件ついては、表1に示されているように焼結性、比誘電率、Qともに良好なデータが得られている。
【0016】
(比較例)
試料5は、Bの添加率が下限値1.0重量部より少ないので917℃における加熱焼成では焼結が不十分で構造が緻密化しない誘電体磁器組成物となる。試料7は、ガラスを17.5重量部添加しているがBの添加率が下限値1.0重量部より少ないので917℃における焼成では焼結が不十分で構造が緻密化しない。試料9と試料11は、Bの添加率が上限値15.0重量部を超えているので過焼結を起こし緻密な構造にならない。試料12は、焼成温度が870℃と低いので焼結が不十分となり緻密な構造にならない。試料14は、焼成温度が高すぎて過焼結を起こして試料が破損した。試料18は、c=0.5(>0.4)であり、試料19は、a=0.6(>0.5)であり、試料20は、b=0.5(>0.4)である。即ち、試料18はガラス組成が最適範囲外であるので、917℃における焼成温度では焼結が不十分となり、緻密な構造とならない。また、試料19及び試料20はガラス組成が最適範囲外であるにもかかわらず、焼成温度は不十分ではないが、Q値が低下する。試料21と試料22は、前記ガラスとBの添加がない試料である。緻密な構造を得て、比誘電率εr≧150,Q≧1800の特性を得るには、試料21に対して焼成温度=1200℃が必要であり、試料21に対しては焼成温度=1300℃の高温が必要である。
【0017】
表1は、22件の試料について組成と諸特性のデータをまとめて示したものである。
【表1】
Figure 0004100932
【0018】
なお、本発明の誘電体磁器組成物は、上述の図示例にのみ限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0019】
【発明の効果】
本発明の誘電体磁器組成物は、比誘電率εr=50〜150,Q=300〜820(周波数=4.2〜6.7GHzにおいて)の特性を有する緻密な誘電体磁器を890〜920℃の範囲で焼成することができる。この緻密な構造により、セラミックの強度が向上し、比誘電率εr,Q値のバラツキが減少して安定化する。また、誘電体磁器組成物と銀(Ag)電極を同時に加熱焼成できることにより、製造工程の短縮と製造コストの削減が達成できる。また、この誘電体磁器組成物は、人体に有害な鉛(Pb)を含んでいないので、環境保全上、有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のガラスの3元組成図である。
【図2】図2は、粉末がCaTiOであることを示すX線回折パターン図である。
【図3】図3は、粉末が非晶質ガラスであることを示すX線回折パターン図である。

Claims (2)

  1. 一般式CaTiOで表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対して、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、Bをy重量部(1.0≦y≦15.0)を混合して加熱焼成する誘電体磁器組成物であって、
    前記ガラスは、組成式=aB-bBi-cZnOで表され、
    ここに、 a、b、cは、モル比で、
    0.2≦a≦0.、0.1≦b≦0.、0.1≦c≦0.
    但し、a+b+c=1
    の範囲内にあり、
    加熱焼成する温度が、890〜920℃の範囲にあることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. CaTiO粉末100重量部に対してガラス粉末をx重量部(2 . 5≦x≦15 . 0)とBy重量部(1.0≦y≦15 . 0)を混合して加熱焼成する誘電体磁器組成物の製造方法であって、
    前記ガラス粉末は、組成式=aB - bBi - cZnOで表され、
    ここに、 a、b、cは、モル比で、
    . 2≦a≦0 . 5、0 . 1≦b≦0 . 4、0 . 1≦c≦0 . 4、
    但し、a+b+c=1
    の範囲内にあり、
    前記ガラス粉末は、出発原料にB粉末とZnO粉末とBi
    粉末を用い、それぞれを秤量して、該秤量原料を乾式混合し、該混合した粉末を溶融させて、放冷してガラスを固化させて、該ガラスを取り出して粉砕して得たものであり、
    加熱焼成する温度が、890〜920℃の範囲にあることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
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