JPH05319921A - 低温焼成用誘電体磁器組成物 - Google Patents

低温焼成用誘電体磁器組成物

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JPH05319921A
JPH05319921A JP4276595A JP27659592A JPH05319921A JP H05319921 A JPH05319921 A JP H05319921A JP 4276595 A JP4276595 A JP 4276595A JP 27659592 A JP27659592 A JP 27659592A JP H05319921 A JPH05319921 A JP H05319921A
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dielectric ceramic
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真博 阿部
Tsutomu Nanataki
七瀧  努
Shinsuke Yano
信介 矢野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い比誘電率、大きな無負荷Qで、共振周波
数の温度係数が小さな誘電体磁器を与える、低温焼成用
誘電体磁器組成物を提供する。 【構成】 一般式:x〔(1−a−b)BaO・aSr
O・bCaO〕・yTiO2 ・z〔(1−c)RE2
3 ・cBi23 〕(RE:希土類金属)で表わされ、
且つ次式:0.10≦x≦0.20,0.60≦y≦
0.75,0.10≦z≦0.25,x+y+z=1,
0≦a≦0.40,0≦b≦0.20,0≦c≦0.3
0,及び0<a+bを満足する組成物を主成分とし、該
主成分組成物の100重量部に対して、所定のZnO−
23 −SiO2 系ガラスを、副成分として、0.1
重量部以上、(18−62.5c)重量部以下(但し、
c≦0.20のとき)または5.5重量部以下(但し、
0.2<c≦0.3のとき)の割合で含有せしめた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、低温焼成用誘電体磁器組成物に
係り、特にトリプレート構造のストリップライン型フィ
ルタ等の、内層導体を有する誘電体共振器の製造に好適
に用いられる、低温焼成の可能な高周波用誘電体磁器組
成物に関するものである。また、本発明は、そのような
誘電体磁器組成物を用いて得られた誘電体共振器若しく
は該共振器の複数から構成される誘電体フィルター、更
にはそれら誘電体共振器若しくは誘電体フィルターの有
利な製造手法に関するものである。
【0002】
【背景技術】今日、携帯電話や自動車用電話等では、高
誘電率磁器組成物を使用した同軸型誘電体フィルタが広
く用いられているが、かかる同軸型誘電体フィルタは、
筒形状の誘電体ブロックの内周面と外周面に、それぞ
れ、内部導体と外部導体とが設けられてなる同軸型の共
振器を複数個結合して、構成されてなるものであるとこ
ろから、その小型化には限度があり、そのために誘電体
内に導体を内層してなるトリプレート構造のストリップ
ライン型のものが検討されている。このストリップライ
ン型フィルタにあっては、板状の誘電体内に導体が所定
パターンで配列されて、一体的に設けられ、複数の共振
器を構成せしめた構造であるところから、フィルタの高
さ(厚さ)を低くすることが出来、以てその小型化が可
能となるのである。
【0003】而して、かかるストリップライン型フィル
タの如き内層導体を有する誘電体フィルタを作製するに
際しては、内層導体と誘電体磁器組成物の同時焼成が必
要となるが、従来からの誘電体磁器組成物は、その焼成
温度が著しく高いものであるところから、内層導体とし
て使用可能な導体材料に制約を受け、導通抵抗の低いA
g系材料を用いることは困難であった。例えば、内層導
体としてAg−Pd系合金またはAg−Pt系合金を使
用するには、誘電体磁器組成物の焼成温度は1000℃
以下とする必要があり、特に導通抵抗の低いAgを単体
にて使用するには、誘電体磁器組成物の焼成温度は90
0℃前後とする必要がある。このため、そのような低い
焼成温度で焼結可能であり、高周波特性に優れた誘電体
磁器組成物が必要とされているのである。
【0004】一方、従来から、誘電体磁器組成物に関し
ては、種々なる組成のものが提案されており、中でもB
a−Ti−RE−Bi系酸化物(REは希土類金属)に
て構成される誘電体磁器組成物は、比誘電率が高く、且
つ無負荷Qが大きく、更に共振周波数の温度係数が小さ
い材料として知られており、また特開昭62−2161
07号公報や特開平1−275466号公報等において
は、そのような組成系に、更にSrOを導入することに
より、比誘電率の向上、共振周波数の温度係数の増大を
図っているが、それら誘電体磁器組成物においては、何
れも、その焼成温度が1300℃〜1400℃と高いと
ころに問題があり、そのために、Pb酸化物等を添加す
ることにより、その焼成温度の低下を図る試みが為され
てきている。
【0005】例えば、米国特許第3811937号明細
書においては、酸化バリウム、酸化チタン、及び酸化レ
アアースの仮焼粉砕物に、CdO−PbO−Bi23
系ガラスを8〜30重量%の割合で配合してなる組成物
が明らかにされており、そのような組成物は、982℃
〜1150℃程度の温度で焼成が行なわれている。ま
た、特開昭59−214105号公報においては、Ba
O−TiO2 −Nd23 系組成物に対して、PbO,
Bi23 ,SiO2 及びZnOの各粉末を混合して、
1050℃〜1150℃の温度で焼成することが明らか
にされている。更に、特開昭60−124306号公報
には、BaTiO3 −Nd23 −TiO2 −Bi2
3 系組成物に対して、Pb34 ,B23 ,SiO
2 ,ZnOのそれぞれを所定量配合してなる誘電体磁器
組成物が明らかにされ、それは、1000〜1050℃
の焼成温度で焼成し得ることが明らかにされている。更
にまた、特開平2−44609号公報には、BaTiO
3 ,Nd23 ,TiO2 ,Bi23 ,及びPb3
4 からなる組成物に対して、2CaO・3B23 ,S
iO2 ,及びZnOを添加した誘電体磁器組成物が示さ
れ、それは、1000〜1050℃の焼成温度で焼結す
ることが明らかにされている。
【0006】しかしながら、これら低温焼成が可能とさ
れている従来の誘電体磁器組成物にあっても、その焼成
温度は未だ1000℃以上と高く、導通抵抗の低いAg
単体やAgを主体とする合金材料を内部導体として用い
ることが出来ない。そのために、導通抵抗の大きなPd
の含有量を高めた、Ag−Pd系合金しか用いられ得な
いのが実情である。しかも、それら従来の低温焼成用誘
電体磁器組成物においては、Pb酸化物を多量に添加せ
しめたものであるところから、Pb酸化物の毒性に鑑
み、その取り扱い上においても問題のあるものであっ
た。このように、誘電体磁器組成物の焼成温度を100
0℃前後まで低下させる先行技術は幾つか知られている
が、Agの融点:962℃以下、望ましくは950℃以
下、更に望ましくは900℃前後で焼成可能とする技術
については、未だ、知られてはいないのである。
【0007】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背
景にして為されたものであって、その課題とするところ
は、高い比誘電率を有し、また無負荷Qが大きく、共振
周波数の温度係数が小さな誘電体磁器を与える、962
℃(Agの融点)以下の焼成温度で、好ましくは900
℃前後の焼成温度で焼結が可能であり、また多量のPb
酸化物を含有せしめる必要のない低温焼成用誘電体磁器
組成物を提供することにある。また、本発明の他の課題
とするところは、そのような誘電体磁器組成物を用いて
得られた誘電体共振器若しくは該共振器の複数から構成
される誘電体フィルター、更にはそれら誘電体共振器若
しくは誘電体フィルターの有利な製造手法に関するもの
である。
【0008】そして、かかる課題を解決するために、本
発明者等が種々検討を重ねた結果、BaO−SrO−C
aO−TiO2 −RE23 −Bi23 系の誘電体磁
器組成物に対して、所定のZnO−B23 −SiO2
系ガラスの少量を含有せしめることにより、その優れた
特性を確保しつつ、その焼成温度を有利に低下せしめ得
る事実を見い出したのである。
【0009】
【解決手段】すなわち、本発明は、かかる知見に基づい
て完成されたものであって、その特徴とするところは、
一般式:x〔(1−a−b)BaO・aSrO・bCa
O〕・yTiO2 ・z〔(1−c)RE23 ・cBi
23 〕(但し、REは希土類金属を示す)で表わさ
れ、且つ該一般式中のx,y,z並びにa,b,cが、
それぞれ、次式:0.10≦x≦0.20,0.60≦
y≦0.75,0.10≦z≦0.25,x+y+z=
1,0≦a≦0.40,0≦b≦0.20,0≦c≦
0.30,及び0<a+bを満足するように構成され
た、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウ
ム、酸化チタン、酸化レアアース、及び酸化ビスマスか
らなる組成物を主成分とし、該主成分組成物の100重
量部に対して、一般式:k(重量%)ZnO・m(重量
%)B23 ・n(重量%)SiO2 (但し、30≦k
≦85,5≦m≦50,2≦n≦40,k+m+n=1
00)にて表わされる組成のZnO−B23 −SiO
2 系ガラスを、副成分として、0.1重量部以上、(1
8−62.5c)重量部以下(但し、c≦0.20のと
き)または5.5重量部以下(但し、0.2<c≦0.
3のとき)の割合において含有せしめてなる低温焼成用
誘電体磁器組成物にある。
【0010】また、本発明は、誘電体磁器と、該誘電体
磁器と同時焼成することにより該誘電体磁器内に形成さ
れた導体パターンを有する誘電体共振器若しくは該共振
器よりなる誘電体フィルターにおいて、該誘電体磁器
を、前記請求項1に記載の誘電体磁器組成物を焼成して
得られる誘電体磁器にて構成する一方、前記導体パター
ンを、Ag単体若しくはAgを主成分とする合金材料に
て形成したことを特徴とする誘電体共振器若しくは該共
振器よりなる誘電体フィルターをも、その要旨とするも
のである。
【0011】さらに、本発明は、誘電体磁器と、該誘電
体磁器内に設けられた導体パターンとを有する誘電体共
振器若しくは該共振器よりなる誘電体フィルターを製造
するに際して、前記誘電体磁器を与える、前記請求項1
に記載の誘電体磁器組成物よりなる成形体若しくはその
仮焼物に、前記導体パターンを与える、Ag単体若しく
はAgを主成分とする合金材料にて形成される導体層を
設け、それを同時焼成せしめることを特徴とする誘電体
共振器若しくは該共振器よりなる誘電体フィルターの製
造方法をも、その要旨とするものである。
【0012】なお、本発明にあっては、かくの如き低温
焼成用誘電体磁器組成物を製造するに際して、前記主成
分組成物を与える原料組成物を1050℃以上の温度で
仮焼せしめ、次いでその得られた仮焼物を平均粒径が
0.8μm以下となるように微粉砕した後、前記副成分
たるZnO−B23 −SiO2 系ガラスを配合するこ
とにより、かかる低温焼成用誘電体磁器組成物を製造す
る手法が、有利に採用されるものであり、このような製
造工程を採用することによって、かかる誘電体磁器組成
物の焼成温度の低下が著しく促進され、しかも比誘電率
の向上や無負荷Qの増大も有利に達成され得ることとな
る。
【0013】また、かかる低温焼成誘電体磁器組成物を
製造するに際しては、前記主成分組成物を与える原料組
成物から、その構成成分たる酸化ビスマスの少なくとも
一部を除いたものを、仮焼して粉砕する一方、かかる除
かれた酸化ビスマスを、前記副成分たるZnO−B2
3 −SiO2 系ガラスと共に、該仮焼粉砕物に配合せし
める手法も、有利に採用され、このような構成に従って
製造することにより、焼成温度の著しい低下が促進され
得るのである。
【0014】さらに、本発明において、前記主成分組成
物を与える原料組成物から、その構成成分たる酸化ビス
マスの少なくとも一部を除いたものを、1050℃以上
の温度で仮焼した後、得られた仮焼物を平均粒径が0.
8μm以下となるように微粉砕する一方、かかる除かれ
た酸化ビスマスを、前記副成分たるZnO−B23
SiO2 系ガラスと共に、該仮焼粉砕物に配合せしめる
ようにして、誘電体磁器組成物を製造するようにすれ
ば、上記した二つの製造手法における作用・効果を相乗
的に享受することが出来るのである。
【0015】
【具体的構成】ところで、かかる誘電体磁器組成物にお
いて、x〔(1−a−b)BaO・aSrO・bCa
O〕は、主成分の一つたるBaOの一部がSrO及び/
又はCaOにて置換されることを示しており、それらB
aO,SrO,CaOの合計の含有量が10モル%より
も少なくなると(x<0.10)、得られる誘電体磁器
の比誘電率が低くなってしまう問題があり、一方、20
モル%を越えるようになると(x>0.20)、共振周
波数の温度係数が大きくなり過ぎてしまうという問題を
惹起する。
【0016】なお、このBaOの一部置換は、SrO及
びCaOの少なくとも一方にて実施され、例えばBaO
の一部をSrOにて置換すると、その置換に伴い、高い
誘電率を維持したまま、無負荷Qを向上し、共振周波数
の温度係数を小さくすることが出来る。しかし、その置
換割合が0.40より多くなると(a>0.40)、誘
電率や無負荷Qが共に劣化してしまう問題を生じる。ま
た、BaOの一部をCaOにて置換した場合には、高い
誘電率及び無負荷Qを維持したまま、共振周波数の温度
係数を大きくすることが出来るが、その置換割合が0.
20より多くなると(b>0.20)、無負荷Qが急速
に劣化してしまう問題を惹起する。従って、これらSr
O,CaOの添加により、共振周波数の温度係数の制御
が有利に実現されるのである。
【0017】また、TiO2 については、その含有量が
60モル%未満となると(y<0.60)、焼結が困難
となって、緻密な焼結体が得られなくなるのである。一
方、75モル%を越えるようになると(y>0.7
5)、共振周波数の温度係数が正の方向に大きくなり過
ぎてしまうという問題を惹起する。
【0018】さらに、RE23 とBi23 の合計量
に関して、換言すれば〔(1−c)RE23 ・cBi
23 〕の値については、その合計の含有量が10モル
%よりも少なくなると(z<0.10)、共振周波数の
温度係数が正に大きくなり過ぎてしまい、一方、25モ
ル%を越えるようになると(z>0.25)、焼結性が
悪く、比誘電率が小さくなってしまう問題を惹起する。
【0019】なお、本発明において、RE23 におけ
るRE(希土類金属)としては、Nd,Sm,La,C
e,Pr等であり、中でも、有利にはNdまたはNdと
共にSm及び/又はLaが組み合わせて用いられる。N
dと共にSm及び/又はLaを組み合わせて用いる場合
にあっては、高い誘電率、無負荷Qを保ったまま、温度
係数を制御することが出来る。しかしながら、そのよう
なSm及び/またはLaを組み合わせる場合にあって
は、RE全体に占めるSm又はLaの割合を20モル%
以下にすることが望ましく、それを越えると、共振周波
数の温度係数が負または正に大きく変化する問題を生じ
る。なお、REとして、CeやPrを用いる場合にあっ
ては、三価の原子に換算して、導入されることとなる。
【0020】また、Bi23 にてRE23 を置換す
ると、比誘電率が増加せしめられ、共振周波数の温度係
数を小さくすることが出来る。特に、このBi23
よる充分な置換効果を得るには、5モル%以上(c≧
0.05)の置換が望ましい。しかしながら、Bi2
3 の置換量が15〜20モル%以上に至ると、温度係数
が増加し始めるのであり、またBi23 の置換量が増
えるにつれ、無負荷Qが減少していくことから、Bi2
3 の置換量は、実用的には30モル%以下(c≦0.
30)が適切である。
【0021】本発明は、上記の如き割合において、酸化
バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化
チタン、酸化レアアース及び酸化ビスマスにて構成され
る磁器組成物を主成分とするものであって、このような
主成分組成物に対して、後述の如く、所定の副成分を配
合含有せしめるようにしたものであるが、また、そのよ
うな主成分磁器組成物に対して、無負荷Qの向上や共振
周波数の温度係数を補正する等の目的で、酸化アルミニ
ウム、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化亜鉛、
酸化錫、酸化ジルコニウム等の金属酸化物を添加したり
することも、何等差支えない。
【0022】また、かかる本発明に従う主成分磁器組成
物に対して、副成分として含有せしめられるZnO−B
23 −SiO2 系ガラスは、30〜85重量%の酸化
亜鉛(ZnO)と、5〜50重量%の酸化ホウ素(B2
3 )と、2〜40重量%の酸化珪素(SiO2 )とか
ら構成される必要がある。即ち、酸化亜鉛、酸化ホウ素
及び酸化珪素のそれぞれの含有量をk重量%、m重量%
及びn重量%とすると、次のような式:30≦k≦8
5,5≦m≦50,2≦n≦40,k+m+n=100
を満足させる必要があるのである。特に、このようにZ
nO,B2 3 ,SiO2 をガラスにして添加すること
により、焼成温度を効果的に下げることが可能となるの
であり、また、かかるガラスを構成する成分のうち、S
iO2 成分はガラスを作製する上において極めて重要で
あり、ガラス化を容易にするだけではなく、安定なガラ
スを得ることが出来る。
【0023】ところで、ZnOの含有量(k)が30重
量%未満の場合にあっては、ガラス化が困難となるので
あり、一方85重量%を越えるようになると、ガラス化
が困難となる他、目的とする誘電体磁器組成物の焼成温
度が高くなる問題を惹起する。また、B23 の含有量
(m)が5重量%未満の場合には、ガラス化が困難とな
ると共に、誘電体磁器組成物の焼成温度が高くなる問題
があり、一方50重量%を越えるようになると、無負荷
Qが小さくなる問題を惹起する。更に、SiO2 の含有
量(n)が40重量%を越えるようになると、ガラス化
が困難となることに加えて、目的とする誘電体磁器組成
物の焼成温度が高くなる問題を惹起する。また、このS
iO2 をガラス成分の一つとすることにより、ガラス化
が容易となり、以て誘電体磁器組成物の低温焼成化に有
利に寄与し得るのであり、更に無負荷Qの向上にも寄与
することが出来る。
【0024】なお、かかるZnO−B23 −SiO2
系ガラスの好ましい組成範囲としては、ZnOの含有量
(k)が40〜75重量%、B23 の含有量(m)が
10〜40重量%、SiO2 の含有量(n)が5〜30
重量%である。また、かかる副成分としてのガラスに
は、各種金属酸化物の如き不純物の含有が許容され得る
が、そのような不純物の含有量は、一般に、ガラスに対
して10重量%までの割合とされるべきである。更に、
この本発明にて用いられるZnO−B23 −SiO2
系ガラスとしては、全体が均一にガラス化したものばか
りでなく、実質的にガラス状態となっておれば、相分離
したものであっても、また原料が部分的に残っていたり
或いは部分的に結晶化していたりするものであっても、
同様に使用可能である。
【0025】そして、このような組成のZnO−B2
3 −SiO2 系ガラスは、副成分として、前記した主成
分磁器組成物の100重量部当たり、0.1重量部以
上、(18−62.5c)重量部以下(但し、c≦0.
20のとき)または5.5重量部以下(但し、0.20
<c≦0.30のとき)の割合において含有せしめら
れ、以て目的とする誘電体磁器組成物の焼成温度が10
00℃以下、好ましくは900℃前後まで低下せしめら
れ得るのである。これに対して、かかる副成分としての
ガラスの含有量が、0.1重量部に満たない場合にあっ
ては、そのような副成分の添加による焼成温度の低下の
充分な効果が得られず、またc≦0.20のときに(1
8−62.5c)重量部を越えて、或いは0.20<c
≦0.30のときに5.5重量部を越えて添加した場合
にあっては、得られる誘電体磁器の無負荷Qが小さくな
り過ぎ、実用的でなくなってしまう問題がある。なお、
かかるZnO−B23 −SiO2 系ガラスの好ましい
含有量としては、1〜3重量部程度である。
【0026】ところで、本発明に従う誘電体磁器組成物
は、前記した主成分磁器組成物に対して、上記の如きZ
nO−B23 −SiO2 系ガラスを副成分として配合
せしめて製造されるものであるが、かかる副成分たるZ
nO−B23 −SiO2 系ガラスの配合に先立って、
前記した主成分磁器組成物は、その組成を与える原料組
成物を仮焼せしめ、そして粉砕することによって準備さ
れることとなる。そして、その仮焼に際して、900℃
以上の仮焼温度を採用すると、仮焼温度の高温化に伴な
う誘電体磁器組成物の焼成温度の低下、比誘電率及び無
負荷Qの増加が認められるのである。特に、1050℃
以上の仮焼温度で、その効果が顕著であるところから、
本発明にあっては、好適には、1050℃以上の温度で
仮焼が行なわれる。しかしながら、仮焼温度が1350
℃を越えるようになると、仮焼後に仮焼物の硬化が著し
く、取り扱い上において問題を生じるので、好ましくは
1100℃〜1300℃の仮焼温度が有利に採用される
こととなる。
【0027】また、このようにして仮焼して得られた仮
焼物を粉砕するに際しては、その粉砕物の平均粒子径が
細かくなるほど、誘電体磁器組成物の焼成温度の低下が
促進され、比誘電率及び無負荷Qを増加することが可能
となる。従って、本発明にあっては、有利には、0.8
μm以下の平均粒子径となるように仮焼物が粉砕される
こととなる。しかしながら、仮焼粉砕物の平均粒子径が
0.1μmよりも小さくなると、得られる誘電体磁器組
成物の成形性が低下し、例えば、通常のドクターブレー
ド法等によるテープ成形が困難となるところから、仮焼
粉砕物の平均粒子径は0.1〜0.8μm程度に制御す
ることが望ましい。なお、このような微細な粉砕物の粒
子径は、一般に、レーザー回折散乱法を用いて測定され
ることとなる。
【0028】また、本発明に従う誘電体磁器組成物を製
造するに際しては、その主成分組成物を構成する酸化ビ
スマスの少なくとも一部を、副成分たるZnO−B2
3 −SiO2 系ガラスと共に、後添加するようにするこ
とも出来る。即ち、前記の如き主成分組成物を与える原
料組成物から、その構成成分たる酸化ビスマスの少なく
とも一部を除いたものを、仮焼して粉砕する一方、かか
る除かれた酸化ビスマスを、副成分たるZnO−B2
3 −SiO2 系ガラスと共に、仮焼粉砕物に配合せしめ
るものであって、これにより、得られる誘電体磁器組成
物の焼成温度の有効な低下が可能となるのである。そし
て、この酸化ビスマスの後添加割合が増加するにつれ
て、焼成温度の低下が促進されるが、酸化ビスマスの後
添加割合が50重量%を越えるようになると、無負荷Q
の減少が惹起されるようになるところから、酸化ビスマ
スの後添加割合は、50重量%以下とすることが望まし
い。即ち、主成分組成物を構成する酸化ビスマスの50
重量%までの量において、後添加されるのである。
【0029】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本
発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明
が、そのような実施例の記載によって何等の制約をも受
けるものでないことは言うまでもないところである。ま
た、本発明には、以下に示される実施例の他にも、本発
明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基
づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであ
ることが理解されるべきである。
【0030】実施例 1 高純度の炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カル
シウム、酸化チタン、酸化ネオジム、酸化サマリウム、
酸化ランタン及び酸化ビスマスを用い、それら成分を、
下記表1において示される各種のx,y,z,RE,
a,b,c値を与えるようにそれぞれ秤量して、ポリエ
チレン製ポットの中に、ジルコニア玉石と共に投入し
て、純水を加え、湿式混合せしめた。そして、その得ら
れた混合物を、ポットから取り出して乾燥した後、アル
ミナ製坩堝に入れ、1250℃の温度で、4時間、空気
雰囲気下に仮焼を行なった。次いで、その仮焼物を解砕
し、再び、ポリエチレン製ポットの中にジルコニア玉石
と共に投入して、レーザー回折散乱法を利用して測定さ
れる平均粒子径が0.8μm以下になるまで、粉砕を行
ない、各種の仮焼粉砕物を得た。
【0031】一方、高純度の酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸
化珪素を用い、それらをZnO:63重量%、B2
3 :29重量%、SiO2 :8重量%の比率のガラスA
若しくはZnO:65重量%、B23 :25重量%、
SiO2 :10重量%の比率のガラスBを与えるように
秤量し、そしてポリエチレン製ポットの中にアルミナ玉
石と共に投入して、乾式混合せしめた。その後、その得
られた混合物を、シャモット坩堝の中で融解させ、水中
に急冷して、ガラス化した。得られたガラスを、アルミ
ナ製ポットの中にアルミナ玉石と共に投入し、エタノー
ル中で平均粒子径が4μm程度になるまで粉砕した。
【0032】次いで、かくして得られた各種の仮焼粉砕
物100重量部と、組成:AまたはBのガラスの所定量
(表1に示される量)とを、アルミナ玉石と共にポリエ
チレン製ポットの中に投入し、純水を加えて、湿式混合
せしめた。その際、バインダーとして、PVAを1重量
%加えた。得られた混合物を乾燥した後、目開き:35
5μmの篩を通して、造粒した。
【0033】かくして得られた造粒粉体を、プレス成形
機を用いて、面圧:1ton/cm2 にて成形し、20
mmφ×15mmt の大きさの円板状の試験片を得た。
そして、この得られた試験片を、空気中において、90
0℃の温度で2時間、焼成することにより、各種の誘電
体磁器サンプルを作製した。更に、この焼成して得られ
たサンプルを16mmφ×8mmt の大きさの円板状に
研磨し、それぞれ、その誘電体特性を測定した。なお、
比誘電率(εr)と無負荷Qは、平行導体板型誘電体共
振器法によって測定し、また共振周波数の温度係数(τ
f)は、−25℃〜+75℃の範囲で測定した。測定周
波数は、2〜4GHzであった。得られた結果を、表1
に示した。
【0034】
【表1】
【0035】実施例 2 実施例1においてNo.7として得られた仮焼粉砕物を
用い、それと、組成:BのZnO−B23 −SiO2
系ガラス粉末、ポリビニルブチラール(外配8重量
部)、可塑剤及び解膠剤を、ジルコニア玉石と共に、ア
ルミナ製ポットの中に投入し、更にトルエンとイソプロ
ピルアルコールの混合溶液を加えて、湿式混合せしめ
た。
【0036】次いで、かかる混合物を、脱泡した後、ド
クターブレード法により厚さ:250μmのグリーンテ
ープに成形した。そして、この得られたグリーンテープ
に、印刷用Agペーストを用いて、900MHz帯3段
バンドパスフィルタの導体パターンを印刷した。次い
で、この導体パターンを印刷したグリーンテープを挟み
込むように、12枚のグリーンテープを、温度:100
℃、圧力:100 kgf/cm2 の条件で積層した。そし
て、その積層物を切断した後、空気中において900℃
の温度で2時間焼成することにより、ストリップライン
型フィルタを作製した。
【0037】かくして得られたストリップライン型フィ
ルタについて、ネットワークアナライザーを用い、その
フィルタ特性を測定した結果、中心周波数:930MH
z、挿入損失:2.8dBであった。
【0038】実施例 3 実施例1において試料No.7として調製された主成分
組成物(仮焼粉砕物)を用いる一方、下記表2に示され
る組成のガラスC〜Hを、それぞれ、実施例1と同様に
して調製した。
【0039】
【表2】
【0040】次いで、それぞれ粉砕された主成分組成物
の100重量部及び各ガラスの2.5重量部を、ポリエ
チレン製ポットの中にアルミナ玉石と共に投入し、更に
純水を加えて、湿式混合せしめた。そして、実施例1と
同様な造粒操作を施した後、その得られた各種の造粒物
から、実施例1と同様にして、サンプルをプレス成形せ
しめ、更に空気中で、900℃×2時間焼成して、誘電
体磁器サンプルをそれぞれ作製し、更にその誘電体特性
を評価して、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従う誘電体磁器組成物は、酸化バリウム(BaO)、
酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(Ca
O)、酸化チタン(TiO2 )、酸化レアアース(RE
23 )、及び酸化ビスマス(Bi23 )を主成分と
し、それら各成分が、それぞれ、特定量において含有せ
しめられていると共に、副成分として、特定組成のZn
O−B23 −SiO2系ガラスの所定量が含有せしめ
られていることにより、962℃(Agの融点)以下の
焼成温度で、好ましくは900℃前後の焼成温度で焼結
することが可能であり、これによって、導通抵抗の低い
Ag単体やAgを主成分とする合金材料を、内層導体と
して有するストリップライン型フィルタ等の誘電体フィ
ルタを有利に製造し得ることとなったのであり、しかも
得られる誘電体磁器は、高い比誘電率を有し、また無負
荷Qが大きく、更に共振周波数の温度係数が小さい特徴
を備えているのである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:x〔(1−a−b)BaO・a
    SrO・bCaO〕・yTiO2 ・z〔(1−c)RE
    23 ・cBi23 〕(但し、REは希土類金属を示
    す)で表わされ、且つ該一般式中のx,y,z並びに
    a,b,cが、それぞれ、次式:0.10≦x≦0.2
    0,0.60≦y≦0.75,0.10≦z≦0.2
    5,x+y+z=1,0≦a≦0.40,0≦b≦0.
    20,0≦c≦0.30,及び0<a+bを満足するよ
    うに構成された、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、
    酸化カルシウム、酸化チタン、酸化レアアース、及び酸
    化ビスマスからなる組成物を主成分とし、該主成分組成
    物の100重量部に対して、一般式:k(重量%)Zn
    O・m(重量%)B23 ・n(重量%)SiO2 (但
    し、30≦k≦85,5≦m≦50,2≦n≦40,k
    +m+n=100)にて表わされる組成のZnO−B2
    3 −SiO2 系ガラスを、副成分として、0.1重量
    部以上、(18−62.5c)重量部以下(但し、c≦
    0.20のとき)または5.5重量部以下(但し、0.
    2<c≦0.3のとき)の割合において含有せしめてな
    ることを特徴とする低温焼成用誘電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 誘電体磁器と、該誘電体磁器と同時焼成
    することにより該誘電体磁器内に形成された導体パター
    ンを有する誘電体共振器若しくは該共振器よりなる誘電
    体フィルターにおいて、該誘電体磁器を、前記請求項1
    に記載の誘電体磁器組成物を焼成して得られる誘電体磁
    器にて構成する一方、前記導体パターンを、Ag単体若
    しくはAgを主成分とする合金材料にて形成したことを
    特徴とする誘電体共振器若しくは該共振器よりなる誘電
    体フィルター。
  3. 【請求項3】 誘電体磁器と、該誘電体磁器内に設けら
    れた導体パターンとを有する誘電体共振器若しくは該共
    振器よりなる誘電体フィルターを製造するに際して、前
    記誘電体磁器を与える、前記請求項1に記載の誘電体磁
    器組成物よりなる成形体若しくはその仮焼物に、前記導
    体パターンを与える、Ag単体若しくはAgを主成分と
    する合金材料にて形成される導体層を設け、それを同時
    焼成せしめることを特徴とする誘電体共振器若しくは該
    共振器よりなる誘電体フィルターの製造方法。
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