JP2003246671A - 誘電体磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents

誘電体磁器組成物及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉛(Pb)を含有せずに、高周波数帯域で優
れた誘電特性を有し、比較的低温で銀電極などと同時に
加熱焼成が可能な緻密な焼結体が得られる誘電体磁器組
成物およびその製造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 一般式CaTiOで表されるペロブス
カイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対し
て、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、B
をy重量部(1,0≦y≦15.0)を混合し、前記
ガラスは、組成式=aB-bBi-cZnO
で表され、ここに、a、b、cは、モル比で、0.2≦
a≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦c≦0.4、但
し、a+b+c=1の範囲内にあることを特徴としてい
る。少量の前記ガラスとBを添加することで、比
誘電率εr=50〜150,Q=300〜820(周波
数=4.2〜6.7GHzにおいて)の特性を有する緻密
な誘電体磁器を890〜920℃の範囲で加熱焼成する
ことができる。銀電極などと同時に加熱焼成できる本誘
電体磁器組成物は、有害な鉛(Pb)を含んでいない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘電体磁器組成物
に係り、特に、鉛(Pb)を含有せずに高周波特性に優
れ、且つ比較的低温で焼成が可能な誘電体磁器組成物及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、銀(Ag)電極と同時焼成するこ
とができる誘電体磁器組成物が求められている。例え
ば、セラミック・グリーンシートと銀(Ag)電極を8
90〜920℃の温度範囲にて同時に加熱焼成できる誘
電体磁器組成物である。ところで、一般式CaTiO
で表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とする材料
は、1300〜1400℃の高温で加熱焼成され緻密で
あり、比誘電率εr=170,Q=1800(周波数=
2GHzにおいて)と高周波帯域で優れた特性が得られ
るが、1300℃以下の焼成温度では緻密化せずその特
性が劣るという問題がある。
【0003】890〜920℃程度の比較的低温で加熱
焼成するためには、焼成助剤を多用することが必要であ
る。しかし、これは、その特性を大きく変化させて高周
波帯域において優れた高誘電率、高Q値の特性が得られ
なくなってしまう。従来の材料でも、900℃で加熱焼
成され高誘電率、高Q値の特性を満足するものがある。
しかし、それは、焼結助剤として鉛(Pb)を含んだも
のしか確認されていない。
【0004】そこで、人体に有害な鉛(Pb)を含んで
いない誘電体磁器組成物の開発が、多くのユーザから要
求されている。また、環境保全の立場から各方面の関係
者からもその開発が待たれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した事情
に鑑みて為されたもので、鉛(Pb)を含有せずに、高
周波数帯域で優れた誘電特性を有し、比較的低温で銀電
極などと同時焼成可能な緻密な焼結体が得られる誘電体
磁器組成物およびその製造方法を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、本発明の誘電体磁器組成物は、一般式 CaTi
で表されるペロブスカイト型結晶相を主結晶とす
る材料100重量部に対して、ガラスをx重量部(2.
5≦x≦15.0)、Bをy重量部(1,0≦y
≦15.0)を混合して、前記ガラスは、組成式=aB
-bBi-cZnOで表され、ここに、
a、b、cは、モル比で、0.2≦a≦0.5、0.1≦
b≦0.4、0.1≦c≦0.4、但し、a+b+c=1
の範囲内にあることを特徴としている。
【0007】本発明者は、少量の添加で焼成を促進させ
ることのできるガラスを開発し、それとBを併用
することで、比誘電率εr=50〜150,Q=300
〜820(周波数=4.2〜6.7GHzにおいて)の特
性を有する緻密な誘電体磁器を890〜920℃の範囲
で焼成することができることを見いだした。この緻密な
構造により、セラミックの強度が向上し、比誘電率ε
r,Q値の好ましい特性が得られ、バラツキが減少して
安定化するという性能面の改良がある。誘電体磁器組成
物と銀(Ag)電極の同時加熱焼成ができることによ
り、製造工程の短縮と製造コストの削減が達成できると
いう製造上のメリットがある。また、この誘電体磁器組
成物は、人体に有害な鉛(Pb)を含んでいない点が環
境保全から観たメリットである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る誘電体磁器組
成物の実施形態について、表1、図1乃至図3を参照し
てさらに詳しく説明する。
【0009】表1は、22件の試料についての組成と諸
特性のデータをまとめたものである。試料の作製に当た
り、ガラスとBの添加率を変えること、ガラスの
組成を変えること、焼結助剤としてガラスとB
添加の有無、加熱焼成温度などを考慮した。本発明のガ
ラスの組成については、図1に示される。
【0010】(実施例)本発明の出発原料にCaCO
粉末とTiO粉末を用い、CaとTiのモル比が0.
95(Ca/Ti=0.95)になるように所定量秤量
する。この秤量原料をボールミルで18時間湿式混合し
た後、乾燥させて混合粉末を得る。この混合粉末を大気
中において1200℃で仮焼した後、ボールミルで24
時間湿式粉砕して平均粒径0.5μmのCaTiO
末を得る。X線回折パターンにより、該粉末がCaTi
であることが同定できる。(図2を参照。)
【0011】次に、ガラスを作製した。出発原料にB
粉末とZnO粉末とBi粉末を用い、表1に
示した試料組成になるように秤量する。この秤量原料を
乳鉢・乳棒で10分間乾式混合する。混合した粉末をア
ルミナ質のるつぼに入れ、900℃の炉内で30分溶融
させる。その後、炉からるつぼを取り出し、室内にて放
冷してガラスを固化させる。るつぼからガラスだけを取
り出し、自動乳鉢機で1時間粗粉砕する。粗粉砕したガ
ラス粉末をボールミルで8時間湿式粉砕して平均粒径1
μmのガラス 粉末を得る。X線回折パターンにより、
該粉末が非晶質ガラスであることを確認できる。(図3
を参照。)
【0012】CaTiO粉末に表1の試料の組成にな
るようにガラス粉末とBを秤量する。(B
は、HBOで秤量する)。それをボールミルで3時
間湿式混合した後、乾燥させて混合粉末を得る。この混
合粉末にバインダー水溶液を添加して造粒する。この造
粒粉をφ(直径)16.5mmの金型に詰めて、750kgf
/cm2以下の一軸加圧をする。さらにその成形体に対し
て冷間等方プレス(cold isostatic p
ress)を使って1000kgf/cm2の力で2分間等方
加圧して成形する。それを空気中において、890〜9
20℃の温度で2時間加熱焼成し、焼結体を得る。
【0013】両端短絡形誘電体共振器法を使って得られ
た焼結体の比誘電率εrとQの測定データを表1に示
す。
【0014】表1の22件のうち試料11件、即ち、試
料1〜4、試料6、試料8、試料10、試料13,試料
15〜17は、a,b,c,x,yの値が本発明の範囲
にある。即ち、一般式CaTiO で表されるペロブ
スカイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対
して、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、B
y重量部(1,0≦y≦15.0)を混合して焼成
したもので、前記ガラスは、組成式=aB-bB
-cZnOで表され、 ここに、 a、b、c
は、モル比で、0.2≦a≦0.5、0.1≦b≦0.4、
0.1≦c≦0.4、但し、a+b+c=1の範囲内にあ
る。
【0015】試料1〜4、6、8,10は、焼成温度が
917℃であり、試料13は、891℃であり、試料1
5〜17は,焼成温度が917℃である。これら試料1
1件ついては、焼成温度891〜917℃の範囲で緻密
な構造を有する誘電体磁器焼結体が得られている。比誘
電率εrについて、試料1が最高値(εr=148.
9)を有し、試料10が最低値(εr=57.6)を有
している。Q値については、試料1が最高値(Q=82
0[周波数=4.27GHzにおいて])を有し、試料1
0が最低値(Q=311[周波数=6.69GHzにおい
て])を有している。試料11件ついては、表1に示さ
れているように焼結性、比誘電率、Qともに良好なデー
タが得られている。
【0016】(比較例)試料5は、Bの添加率が
下限値1.0重量部より少ないので917℃における加
熱焼成では焼結が不十分で構造が緻密化しない誘電体磁
器組成物となる。試料7は、ガラスを17.5重量部添
加しているがBの添加率が下限値1.0重量部よ
り少ないので917℃における焼成では焼結が不十分で
構造が緻密化しない。試料9と試料11は、B
添加率が上限値15.0重量部を超えているので過焼結
を起こし緻密な構造にならない。試料12は、焼成温度
が870℃と低いので焼結が不十分となり緻密な構造に
ならない。試料14は、焼成温度が高すぎて過焼結を起
こして試料が破損した。試料18は、c=0.5(>0.
4)であり、試料19は、a=0.6(>0.5)であ
り、試料20は、b=0.5(>0.4)である。即ち、
試料18はガラス組成が最適範囲外であるので、917
℃における焼成温度では焼結が不十分となり、緻密な構
造とならない。また、試料19及び試料20はガラス組
成が最適範囲外であるにもかかわらず、焼成温度は不十
分ではないが、Q値が低下する。試料21と試料22
は、前記ガラスとBの添加がない試料である。緻
密な構造を得て、比誘電率εr≧150,Q≧1800
の特性を得るには、試料21に対して焼成温度=120
0℃が必要であり、試料21に対しては焼成温度=13
00℃の高温が必要である。
【0017】表1は、22件の試料について組成と諸特
性のデータをまとめて示したものである。
【表1】
【0018】なお、本発明の誘電体磁器組成物は、上述
の図示例にのみ限定されるものでなく、本発明の要旨を
逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿
論である。
【0019】
【発明の効果】本発明の誘電体磁器組成物は、比誘電率
εr=50〜150,Q=300〜820(周波数=
4.2〜6.7GHzにおいて)の特性を有する緻密な誘
電体磁器を890〜920℃の範囲で焼成することがで
きる。この緻密な構造により、セラミックの強度が向上
し、比誘電率εr,Q値のバラツキが減少して安定化す
る。また、誘電体磁器組成物と銀(Ag)電極を同時に
加熱焼成できることにより、製造工程の短縮と製造コス
トの削減が達成できる。また、この誘電体磁器組成物
は、人体に有害な鉛(Pb)を含んでいないので、環境
保全上、有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のガラスの3元組成図である。
【図2】図2は、粉末がCaTiOであることを示す
X線回折パターン図である。
【図3】図3は、粉末が非晶質ガラスであることを示す
X線回折パターン図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G031 AA04 AA11 AA26 AA28 AA35 BA09 GA11 5G303 AA02 AB06 AB08 AB15 AB20 BA12 CA01 CA02 CB02 CB05 CB06 CB35 CB38 DA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式CaTiOで表されるペロブス
    カイト型結晶相を主結晶とする材料100重量部に対し
    て、ガラスをx重量部(2.5≦x≦15.0)、B
    をy重量部(1,0≦y≦15.0)を混合して加熱
    焼成する誘電体磁器組成物であって、 前記ガラスは、組成式=aB-bBi-cZ
    nOで表され、 ここに、 a、b、cは、モル比で、 0.2≦a≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦c≦0.
    4、 但し、a+b+c=1 の範囲内にあることを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 加熱焼成する温度が、890〜920℃
    の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁
    器組成物。
  3. 【請求項3】 CaTiO粉末に対してガラス粉末と
    を混合した誘電体磁器組成物の製造方法であっ
    て、前記ガラス粉末は、出発原料にB粉末とZn
    O粉末とBi 粉末を用い、それぞれを秤量し
    て、該秤量原料を乾式混合し、該混合した粉末を溶融さ
    せて、放冷してガラスを固化させて、該ガラスを取り出
    して粉砕して得られることを特徴とする誘電体磁器組成
    物の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記ガラス粉末は、組成式=aB
    -bBi-cZnOで表され、 ここに、 a、b、cは、モル比で、 0.2≦a≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦c≦0.
    4、 但し、a+b+c=1の範囲内にあることを特徴とする
    請求項3記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
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