JP4128282B2 - 増幅回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流補償回路を設けて、トランジスタのベース電流により入力端子に発生する漏れ電流を低減し、高入力インピーダンスを保持できる増幅回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バイポーラトランジスタから構成されている増幅回路では、入力信号は入力バッファを構成するトランジスタのベースに入力される。このため、信号の入力側にトランジスタのベース電流が発生する。当該ベース電流は入力信号の漏れ電流となり、増幅回路の入力インピーダンスを低下させる原因となるので、通常、電流補償回路を設けて、入力側のトランジスタのベース電流に相当する補償電流を発生し、信号入力端子に帰還させることでベース電流を補償する措置がとられている。
【0003】
図6は、上述した電流補償回路が設けられている増幅回路の一構成例を示している。図示のように、本例の増幅回路は、差動入力端子T1 ,T2 から入力される一対の差動信号SIN1 ,SIN2 を増幅し、増幅信号としてシングルエンド信号SOUT を出力する。
【0004】
図示の増幅回路において、トランジスタQ3とQ4が差動回路を構成し、トランジスタQ1およびQ2は、エミッタフォロワ型の入力バッファを構成している。トランジスタQ1とQ2のベースにそれぞれ入力信号SIN1 とSIN2 が印加され、トランジスタQ1のエミッタに出力される信号はトランジスタQ3のベースに入力され、トランジスタQ2のエミッタに出力される信号はトランジスタQ4のベースに入力される。
【0005】
トランジスタQ11は、トランジスタQ3とQ4からなる差動回路に動作電流を供給する電流源回路を構成し、トランジスタQ5とQ6はカレントミラー回路を構成し、差動回路のダイナミック負荷回路を構成している。トランジスタQ3のコレクタから出力される信号がトランジスタQ18のベースに入力され、トランジスタQ18のコレクタから出力信号SOUT が得られる。
【0006】
図示の増幅回路において、入力バッファとして設けられているトランジスタQ1とQ2は電流増幅率hfeの低いpnpトランジスタが使われる。このため、これらのトランジスタのベース電流Ib は大きい。即ち、入力端子T1 ,T2 の入力漏れ電流が大きく、入力インピーダンスが低下してしまう。ベース電流を補償するため、図示のように、トランジスタQ1に対して、トランジスタQ12,Q13およびQ14からなる電流補償回路が設けられ、同様に、トランジスタQ2に対して、トランジスタQ15,Q16およびQ17からなる電流補償回路が設けられている。なお、これらの電流補償回路にトランジスタQ8からなる電流源により定電流が供給される。
【0007】
トランジスタQ8およびQ10は、マルチコレクタ型のトランジスタであり、それぞれベース側のバイアス条件に応じて両方のコレクタから同じ電流が供給される。
トランジスタQ8のコレクタ電流はそれぞれ電流補償回路を構成するトランジスタQ12およびQ17のエミッタ側に供給され、トランジスタQ10のコレクタ電流はそれぞれトランジスタQ1とQ2のエミッタ側に供給される。ここで、トランジスタQ8とQ10のサイズを同じく設定することにより、トランジスタQ12とQ17のエミッタ電流は、トランジスタQ1とQ2のエミッタ電流と等しくなる。このため、トランジスタQ12のベース電流はトランジスタQ1のベース電流とほぼ一致する。
【0008】
トランジスタQ13とQ14によりカレントミラー回路が構成されているので、トランジスタQ14のコレクタには、トランジスタQ13のコレクタ電流、即ち、トランジスタQ12のベース電流とほぼ同じ電流が流れる。
【0009】
このように、電流補償回路を構成するトランジスタQ14のコレクタには、入力バッファを構成するトランジスタQ1のベース電流とほぼ等しい電流が流れるので、トランジスタQ1のベース電流はトランジスタQ14のコレクタ電流によりほぼ吸収され、入力端子T1 の漏れ電流が抑制される。
【0010】
なお、トランジスタQ2側においても上記と同様に、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ15とQ16のコレクタに、トランジスタQ2のベース電流とほぼ等しい電流が流れるので、トランジスタQ2のベース電流がほぼトランジスタQ15のコレクタ電流により吸収される。
上述した電流補償回路付き増幅回路において、入力バッファを構成するトランジスタのベース電流が補償されるので、増幅回路の入力インピーダンスを高く保持できる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の増幅回路においては、電流補償回路により発生される補償電流が電流源のバイアス条件によって決定されるので、入力信号の全範囲にわたって適切に補償電流を発生することができないという不利益がある。
例えば、図6に示すように、電流源を構成するトランジスタQ8のコレクタ電流はカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7とのサイズの比およびトランジスタQ7のコレクタ側に接続されているバイアス電流源IS1の電流値に応じて設定される。入力信号SIN1 ,SIN2 の電圧が変化してもトランジスタQ8のコレクタ電流は変化しない。このため、電流補償回路により発生した補償電流、例えば、トランジスタQ14またはQ15のコレクタ電流も一定となる。これに対して、トランジスタQ1またはQ2のベース電流は、入力端子T1 ,T2 に入力される信号SIN1 ,SIN2 の電圧変化に応じて変化するので、この電流補償回路によってはトランジスタQ1とQ2のベース電流を完全に補償することができない。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力信号の変化に応じて変化する補償電流を発生する電流補償回路を設けることによって、変化する入力信号に従って補償電流を変化させ、入力信号の全範囲において常に最適な補償電流を生成でき、高精度なベース電流補償を実現できる増幅回路を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の増幅回路は、ベースに入力信号が印加される入力トランジスタを含む入力部と、上記入力トランジスタに対して電流を供給する第1の電流源トランジスタと、上記入力部から出力される信号を増幅する増幅部と、上記入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する電流補償回路と、上記電流補償回路に対して電流を供給する第2の電流源トランジスタと、を有し、上記電流補償回路、上記入力トランジスタのベースに接続されており、上記入力信号に応じた参照電流を発生する参照電流発生部と、上記参照電流に応じた補償電流を発生し、当該補償電流を上記入力トランジスタのベースに供給して上記入力トランジスタの漏れ電流を補償する補償電流発生部とを含み、上記参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第1のトランジスタを含み、上記入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第1のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じである
【0014】
また好適にはベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記入力トランジスタとの間の電流路に挿入されたダイオード接続トランジスタを更に有し、上記参照電流発生部、上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記参照電流を供給する第2のトランジスタを更に含み、上記補償電流発生部、上記参照電流に応じて上記入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記補償電流を生成する電流源回路を含む。
【0015】
更に、本発明の第2の増幅回路は、ベースに第1および第2の入力信号がそれぞれ印加される第1および第2の入力トランジスタを含む差動信号入力部と、上記第1および第2の入力トランジスタに対して電流を供給する第1の電流源トランジスタと、上記差動信号入力部から出力される信号を増幅する増幅部と、上記第1の入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する第1の電流補償回路と、上記第2の入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する第2の電流補償回路と、上記第1および第2の電流補償回路に対して電流を供給する第2の電流源トランジスタと、を有し、上記第1の電流補償回路、上記第1の入力トランジスタのベースに接続されており、上記第1の入力信号に応じた第1の参照電流を発生する第1の参照電流発生部と、上記第1の参照電流に応じた第1の補償電流を発生し、当該第1の補償電流を上記第1の入力トランジスタのベースに供給して上記第1の入力トランジスタの漏れ電流を補償する第1の補償電流発生部とを含み、上記第2の電流補償回路、上記第2の入力トランジスタのベースに接続されており、上記第2の入力信号に応じた第2の参照電流を発生する第2の参照電流発生部と、上記第2の参照電流に応じた第2の補償電流を発生し、当該第2の補償電流を上記第2の入力トランジスタのベースに供給して上記第2の入力トランジスタの漏れ電流を補償する第2の補償電流発生部とを含上記第1の参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第1のトランジスタを含み、上記第2の参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第2のトランジスタを含み、上記1の入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第1のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じであり、上記2の入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第2のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じである
【0016】
また好適にはベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記第1の入力トランジスタとの間の電流路に挿入された第1のダイオード接続トランジスタと、ベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記第2の入力トランジスタとの間の電流路に挿入された第2のダイオード接続トランジスタと、を更に有し、上記第1の参照電流発生部、上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記第1の参照電流を供給する第のトランジスタを更に含み、上記第1の補償電流発生部、上記第1の参照電流に応じて上記第1の入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記第1の補償電流を生成する電流源回路を含み、上記第2の参照電流発生部、上記第のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記第2の参照電流を供給する第4のトランジスタを更に含み、上記第2の補償電流発生部、上記第2の参照電流に応じて上記第2の入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記第2の補償電流を生成する電流源回路を含む。
【0017】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
図1は本発明に係る増幅回路の第1の実施形態を示す回路図である。
図示のように、本実施形態の増幅回路は、入力端子T1 とT2 から入力された一対の差動入力信号SIN1 ,SIN2 を増幅し、シングルエンドの増幅信号SOUT を出力する差動増幅回路である。
【0018】
トランジスタQ1とQ2のベースは、それぞれ入力端子T1 ,T2 に接続され、これらのトランジスタのコレクタは接地され、エミッタにダイオードD1,D2を介して、トランジスタQ10により発生される電流が供給される。トランジスタQ3とQ4のベースは、それぞれトランジスタQ1とQ2のエミッタに接続され、エミッタ同士が駆動電流を供給するトランジスタQ11のコレクタに接続され、コレクタはそれぞれトランジスタQ5とQ6のコレクタに接続されている。即ち、トランジスタQ3とQ4により差動回路が構成されている。なお、トランジスタQ5とQ6は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ3とQ4の負荷回路を構成している。
【0019】
トランジスタQ1のベース電流を補償するために、トランジスタQ12,Q13,Q14,Q20およびQ21により電流補償回路を構成し、同様に、トランジスタQ2のベース電流を補償するために、トランジスタQ15,Q16,Q17,Q22およびQ23により電流補償回路を構成している。
【0020】
トランジスタQ7,Q8,Q9,Q10,Q11およびQ19はpnpトランジスタであり、電流源を構成している。トランジスタQ7のコレクタに電流源IS1が接続されている。当該電流源により供給された定電流Iaに基づき、トランジスタQ8,Q10,Q11およびQ19のコレクタ電流がそれぞれ設定される。トランジスタQ10およびQ11は、マルチコレクタトランジスタであり、トランジスタQ10の2つのコレクタから出力される電流は、それぞれダイオードD1およびD2を介して、トランジスタQ1とQ2のベースに入力される。トランジスタQ8の2つのコレクタから出力される電流は、それぞれ電流補償回路を構成するトランジスタQ20とQ23のエミッタに入力される。
【0021】
トランジスタQ1側の電流補償回路において、トランジスタQ21のベースがトランジスタQ1のベースに接続され、そのコレクタが接地され、エミッタがトランジスタQ20のベースに接続されている。トランジスタQ20のコレクタは、トランジスタQ12のエミッタに接続され、トランジスタQ12のコレクタは接地されている。トランジスタQ13とQ14は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ13とQ14のエミッタが接地され、トランジスタQ13とQ14のベースが接続され、当該ベース同士の接続点はトランジスタQ13のコレクタとともにトランジスタQ12のベースに接続され、トランジスタQ14のコレクタは、トランジスタQ1およびQ21のベースに接続されている。
【0022】
ここで、トランジスタQ1およびQ2のエミッタに接続されているダイオードD1およびD2は、例えば、図2に示すように、ベースとコレクタが共通に接続されているpnpトランジスタにより構成されているとする。
このため、トランジスタQ21とQ1のベース側からみる回路構成は、ほぼ同じとなる。例えば、トランジスタQ1のエミッタはダイオードD1、即ち、一段のpn接合を介して、電流源をなすトランジスタQ10のコレクタに接続され、これとほぼ同じように、トランジスタQ21のエミッタは、トランジスタQ20のエミッタ−ベース間のpn接合を介して電流源を構成するトランジスタQ8のコレクタに接続される。ここで、トランジスタQ1とQ21のサイズが等しく形成されるとすると、ベースに同じ入力信号SIN1 が印加されるこれらのトランジスタのベース電流は、常に等しくなる。
【0023】
以下、図1を参照しつつ、本実施形態の増幅回路に設けられた電流補償回路の動作について説明する。
上述したように、トランジスタQ21のエミッタ電流はそのベース電流に応じて設定され、当該エミッタ電流に応じてトランジスタQ20のエミッタ電流が決まる。即ち、トランジスタQ20とQ12に流れる電流はトランジスタQ21のベース電流に応じて設定される。トランジスタQ12のベース電流は、入力信号SIN1 の変化に従って変化する。カレントミラー回路を構成するトランジスタQ13とQ14において、トランジスタQ14に、トランジスタQ21とQ1のベース電流の合計電流とほぼ等しい補償電流ICO1 が発生される。トランジスタQ14のコレクタは、トランジスタQ1およびQ21のベースに接続されているので、トランジスタQ1およびQ21のベース電流は、ほぼ補償電流ICO1 により吸収される。このため、本例の電流補償回路により、信号の入力側に設けられたトランジスタのベース電流が補償電流により吸収され、信号入力端子の入力インピーダンスは大きい。
【0024】
トランジスタQ2側の電流補償回路は、上述したトランジスタQ1側の電流補償回路と同様な原理に基づき動作する。その結果、トランジスタQ2とQ22のベース電流は、トランジスタQ15のコレクタに発生される補償電流ICO2 により補償される。
【0025】
なお、本発明の増幅回路は、差動増幅回路に限定されることなく、他の増幅回路、例えばシングルエンドの入力信号を増幅する増幅回路においても、上述した回路と同様な原理で入力側のトランジスタのベース電流を補償することが可能である。
【0026】
図3は、本発明の増幅回路における電流補償回路の効果を検証するために用いられた試験回路の一例を示している。当該試験回路において、図1に示す増幅回路AMPが用いられ、増幅回路AMPの入力端子T1 、即ち非反転入力端子に試験信号電圧VINが入力され、増幅回路AMPの入力端子T2 、即ち反転入力端子が出力端子T0 に接続されている。このように、増幅回路AMPによりボルテージフォロワが構成され、出力電圧VOUT はほぼ入力電圧VINに従って変化する。
【0027】
図4には、図3において構成された試験回路の試験結果を示している。図4において横軸は入力電圧VINを示し、縦軸は端子T1 側の漏れ電流、即ち、図1におけるトランジスタQ1のベース側に流れる電流を示している。なお、比較のため、図4には、図6に示す従来の増幅回路における入力端子T1 側のベース電流を点線で示している。ここで、従来の増幅回路は図3と同様にボルテージフォロワを構成して試験を行ったものである。なお、試験の条件として、電源電圧VCCは5.0V、電流源IS1のバイアス電流Iaは50μAにそれぞれ設定されている。
【0028】
理想的に、電流補償回路によりトランジスタのベース電流と全く等しい補償電流を生成することによって、入力端子T1 からみて完全に漏れ電流がないことが望ましい。しかし、実際の電流補償回路において、完全な補償ができず、わずかながら入力端子において漏れ電流が発生する。この漏れ電流が小さいほど回路の入力特性がよい。
図4に示すように、従来の増幅回路に比べて、本発明の増幅回路の漏れ電流は小さい。即ち、本発明の増幅回路において、電流補償回路を改良したことによって、トランジスタのベース電流の大部分が補償され、入力端子の漏れ電流が大幅に低減される。特に入力電圧VINが高いレベル、例えば、3.0V前後においては、従来の増幅回路に比べて、本発明の増幅回路の入力端子の漏れ電流は、半分以下に低減される。
【0029】
図4において、入力電圧VINが0Vに近づくにつれて入力端子に負の方向、即ち、図3の電流Ib を示す矢印と反対の方向に大きな漏れ電流が生じる。これは図1に示すように、入力電圧VINが0Vに近づくと、トランジスタQ1側の電流補償回路においてカレントミラー回路を構成するトランジスタQ14のコレクタ電流が0に近づき、トランジスタQ1とQ21のベース電流が補償されなくなり、これらのトランジスタのベース電流が端子T1 に流れるためである。なお、実際に増幅回路が使用されている場合に、トランジスタQ1およびQ2のベースがある一定の電圧にバイアスされる。即ち、入力端子T1 またはT2 が0Vになることはない。このため、図4にグラフの左端のように大きな負の漏れ電流が発生することを回避できる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、トランジスタQ1のベースに電流補償回路を接続し、入力信号に応じたベース電流が流れるトランジスタQ21のベース電流に応じてトランジスタQ20とQ12の電流を制御し、この電流に応じた補償電流をトランジスタQ14のコレクタに発生する。電流補償回路の各トランジスタのサイズを制御し、トランジスタQ14のコレクタ電流とトランジスタQ1,Q21のベース電流の合計電流とを等しく設定すると、補償電流とトランジスタQ1とQ21のベース電流とが相殺されるので、信号入力端子の漏れ電流を低減でき、高入力インピーダンスの増幅回路を実現できる。
【0031】
第2実施形態
図5は本発明に係る増幅回路の第2の実施形態を示す回路図である。
図示のように、本実施形態の増幅回路は、図1に示す第1の実施形態の増幅回路に比べて、入力端子T1 側において、トランジスタQ20,Q21の代わりにトランジスタQ24が設けられ、当該トランジスタQ24により、入力端子T1 の入力信号SIN1 のレベル変化に従って変化する電流を発生する。入力端子T2 側において、トランジスタQ22,Q23の代わりにトランジスタQ25が設けられ、当該トランジスタQ25により、入力端子T2 の入力信号SIN2 のレベル変化に従って変化する電流を発生する。トランジスタQ1とQ2のエミッタがダイオードを経由せず、直接トランジスタQ10のコレクタに接続されている。上述した以外の構成は、図1に示す増幅回路とほぼ同じであるので、図5では、図1と同じ構成を有する回路素子について、同じ記号を付して表記している。
以下、前記第1の実施形態と相違する部分を中心に本実施形態の増幅回路における補償電流の発生について説明する。
【0032】
トランジスタQ24のベースがトランジスタQ1のベースとともに入力端子T1に接続され、そのエミッタはトランジスタQ8のコレクタに接続されている。トランジスタQ12のエミッタはトランジスタQ24のコレクタに接続され、コレクタは接地されている。
【0033】
トランジスタQ24に流れる電流は入力端子T1 の入力信号SIN1 のレベルに応じて設定される。これと直列に接続されているトランジスタQ12にほぼ同じ電流が流れる。ここで、トランジスタQ12とQ24の電流増幅率を等しいとすると、トランジスタQ12のベース電流は、トランジスタQ24のベース電流とほぼ等しい。
【0034】
さらに、トランジスタQ24と入力バッファを構成するトランジスタQ1を同じ条件、例えば、同じサイズ、同じ不純物濃度で形成すると、これらトランジスタは等しい電流増幅率を持ち、入力信号に応じてほぼ同じベース電流が発生する。カレントミラー回路を構成するトランジスタQ13とQ14のサイズなどを適宜に設定することにより、トランジスタQ12のベース電流のほぼ2倍の補償電流ICO1 をトランジスタQ14のコレクタに発生させることができる。トランジスタQ14のコレクタがトランジスタQ1とQ24のベースに接続されているので、トランジスタQ1とQ24のベース電流が補償電流ICO1 によりほぼ吸収される。
この結果、トランジスタQ1およびQ24のベース電流が補償電流ICO1 によりほぼ相殺され、入力端子T1 における漏れ電流を低減でき、入力インピーダンスを高く保持できる。
【0035】
入力端子T2 側において、ほぼ同じようにトランジスタQ25により、入力信号SIN2 に応じた電流が発生され、これに応じてカレントミラー回路を構成するトランジスタQ15のコレクタに補償電流ICO2 が発生されるので、入力バッファを構成するトランジスタQ2とトランジスタQ25のベース電流が補償され、入力端子T2 における漏れ電流を低減できる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、トランジスタQ24およびQ25を用いて、入力端子T1 およびT2 の入力信号SIN1 ,SIN2 に応じた電流をそれぞれ発生し、発生した電流に応じて補償電流ICO1 およびICO2 がそれぞれ発生されるので、入力端子T1 およびT2 の漏れ電流が低減され、入力インピーダンスが高く保持される。図1に示す本発明の第1の実施形態に比べて、トランジスタQ20,Q21,Q22,Q23の代わりに、トランジスタQ24およびQ25のみで入力信号に応じて変化する電流を発生し、また、入力バッファを構成するトランジスタQ1とQ2のエミッタ側に接続されているダイオードD1とD2が不要となり、回路構成が簡略化される。さらに、図6に示す従来の増幅回路に比べると、トランジスタQ24およびQ25を追加するだけで、入力信号のほぼ全範囲において入力信号の変化に対応した補償電流を発生することができ、回路構成の簡単な変更で入力特性の改善を実現できる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の増幅回路によれば、入力バッファを構成するトランジスタのベースに電流補償回路により生成した補償電流を供給し、当該補償電流によりトランジスタのベース電流を相殺することによって、信号入力端子からみた漏れ電流を抑制でき、高入力インピーダンスの増幅回路を実現できる利点がある。
また、本発明の増幅回路は信号入力側からみた漏れ電流を小さく制限できるので、微小信号増幅用増幅回路として使用可能である。さらに、高インピーダンス信号源へのインターフェース、回路の時定数を増加させるなどの用途にも適用でき、サンプル・アンド・ホールド回路において、精度の高いコンデンサの容量を小さくし、正確な時定数の設定ができる。
さらに、本発明の増幅回路によれば、入力ダイナミックレンジの全範囲にわたって従来の回路より低い入力漏れ電流を実現できるとともに入力電圧変化に対して変化率の低い特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る増幅回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】図1の増幅回路におけるダイオードの構成例を示す図である。
【図3】本発明の増幅回路の入力漏れ電流を検証するための試験回路の回路図である。
【図4】本発明の増幅回路と従来の増幅回路の入力漏れ電流特性を比較するグラフである。
【図5】本発明に係る増幅回路の第2の実施形態を示す回路図である。
【図6】従来の電流補償回路付き増幅回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
Q1,Q2,Q3,Q4,Q7〜Q12,Q17,Q19,Q20,Q21,Q22,Q23,Q24,Q25…pnpトランジスタ、Q5,Q6,Q13,Q14,Q15,Q16,Q18…npnトランジスタ、IS1…電流源、VCC…電源電圧、GND…接地電位。

Claims (4)

  1. ベースに入力信号が印加される入力トランジスタを含む入力部と、
    上記入力トランジスタに対して電流を供給する第1の電流源トランジスタと、
    上記入力部から出力される信号を増幅する増幅部と、
    上記入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する電流補償回路と、
    上記電流補償回路に対して電流を供給する第2の電流源トランジスタと、
    を有し、
    上記電流補償回路
    上記入力トランジスタのベースに接続されており、上記入力信号に応じた参照電流を発生する参照電流発生部と、
    上記参照電流に応じた補償電流を発生し、当該補償電流を上記入力トランジスタのベースに供給して上記入力トランジスタの漏れ電流を補償する補償電流発生部と
    を含み、
    上記参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第1のトランジスタを含み、
    上記入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第1のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じである、
    増幅回路。
  2. ベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記入力トランジスタとの間の電流路に挿入されたダイオード接続トランジスタを更に有し、
    上記参照電流発生部、上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記参照電流を供給する第2のトランジスタを更に含み、
    上記補償電流発生部、上記参照電流に応じて上記入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記補償電流を生成する電流源回路を含む、
    請求項1に記載の増幅回路。
  3. ベースに第1および第2の入力信号がそれぞれ印加される第1および第2の入力トランジスタを含む差動信号入力部と、
    上記第1および第2の入力トランジスタに対して電流を供給する第1の電流源トランジスタと、
    上記差動信号入力部から出力される信号を増幅する増幅部と、
    上記第1の入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する第1の電流補償回路と、
    上記第2の入力トランジスタのベースに対して補償電流を供給する第2の電流補償回路と、
    上記第1および第2の電流補償回路に対して電流を供給する第2の電流源トランジスタと、
    を有し、
    上記第1の電流補償回路
    上記第1の入力トランジスタのベースに接続されており、上記第1の入力信号に応じた第1の参照電流を発生する第1の参照電流発生部と、
    上記第1の参照電流に応じた第1の補償電流を発生し、当該第1の補償電流を上記第1の入力トランジスタのベースに供給して上記第1の入力トランジスタの漏れ電流を補償する第1の補償電流発生部と
    を含み、
    上記第2の電流補償回路
    上記第2の入力トランジスタのベースに接続されており、上記第2の入力信号に応じた第2の参照電流を発生する第2の参照電流発生部と、
    上記第2の参照電流に応じた第2の補償電流を発生し、当該第2の補償電流を上記第2の入力トランジスタのベースに供給して上記第2の入力トランジスタの漏れ電流を補償する第2の補償電流発生部と
    を含
    上記第1の参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第1のトランジスタを含み、
    上記第2の参照電流発生部が、そのベースが上記入力トランジスタのベースに接続されている第2のトランジスタを含み、
    上記1の入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第1のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じであり、
    上記2の入力トランジスタのベース側から上記第1の電流源トランジスタをみた回路構成と、上記第2のトランジスタのベース側から上記第2の電流源トランジスタをみた回路構成とが同じである、
    増幅回路。
  4. ベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記第1の入力トランジスタとの間の電流路に挿入された第1のダイオード接続トランジスタと、
    ベースとコレクタが接続され、上記第1の電流源トランジスタと上記第2の入力トランジスタとの間の電流路に挿入された第2のダイオード接続トランジスタと、
    を更に有し、
    上記第1の参照電流発生部、上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記第1の参照電流を供給する第のトランジスタを更に含み、
    上記第1の補償電流発生部、上記第1の参照電流に応じて上記第1の入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第1のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記第1の補償電流を生成する電流源回路を含み、
    上記第2の参照電流発生部、上記第のトランジスタのベースに流れる漏れ電流に応じた上記第2の参照電流を供給する第4のトランジスタを更に含み、
    上記第2の補償電流発生部、上記第2の参照電流に応じて上記第2の入力トランジスタのベースに流れる漏れ電流と上記第のトランジスタのベースに流れる漏れ電流との和に等しい上記第2の補償電流を生成する電流源回路を含む、
    請求項3に記載の増幅回路。
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