JP4128024B2 - 失透性の改良された人工毛髪用繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、かつら、ヘアーピース、ブレード、エクステンションヘアー、人形用頭飾等に用いられるアクリル系人工毛髪用繊維に関し、従来のアクリル系毛髪用繊維に比べ、耐失透性に優れた新規な人工毛髪用繊維及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にかつら、ヘアーピース、人形用頭飾等に用いられる人工毛髪用繊維として、アクリル系繊維、塩化ビニル系繊維、塩化ビニリデン系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維等があるが、中でもアクリル系繊維は、触感、艶及びボリューム感が人毛に良く似ており、且つ櫛通りが良いといった長所を有している為、毛髪用繊維として非常に優れた特性を具備している。この人毛ライクな特徴を生かして従来から頭飾製品に幅広く利用されて来たが、一方で、人工毛髪用に適した太い繊度のアクリル系繊維は、非常に失透し易いという欠点が有る。さらに、頭飾用途の場合には人毛に近づけるべく艶消し操作や色付け操作を施すのが一般的で、例えば特公昭56−44164号や特開昭56−309号、特開昭56−311号に記載されている酢酸セルロースや酸化チタン、水酸化アルミニウム等の金属化合物を添加して艶消し操作を行った場合は、その添加剤の親水性などの影響で、繊維の凝固時にボイドが形成され易い。又後染め加工による方法で繊維を着色した場合は、染色時の沸騰水中で再びボイドが再発し、その後の乾燥過程である程度ボイドは消失するものの、完全には消失しきれない。その結果長期に亘って高温多湿下の環境に暴露された場合や、80℃程度の比較的緩やかな温水処理であっても失透を引き起こし易く、結果透明感が失われ、色相が変化するという問題があり、未だ十分満足のゆく繊維が得られていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来失透し易かったアクリル系の人工毛髪用繊維の失透性の問題を解決し、高温多湿環境下での長期保存時や80℃程度の温水処理でも失透しない品質の優れた繊維を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題改良の為、鋭意検討の結果、アクリル系繊維の製造段階で予め繊維を着色化し、更には、特定の熱処理を施す事で動的粘弾性のtanδ値の小さい繊維を得る事が出来、本発明に到達した。
【0005】
即ち、本発明は、アクリロニトリルを35重量%以上含有するアクリル系共重合体を主成分とし、繊維製造段階で予め染料及び/又は顔料で着色されたアクリル系合成繊維であって、湿式紡糸され、1.5倍以上で熱延伸され、125〜180℃の乾熱又は湿熱で弛緩熱処理後、前弛緩熱処理温度より5℃以上高い温度で且つ緊張状態で熱処理されることにより、単糸繊度が25〜75dtexで、且つ80℃に於ける繊維の動的粘弾性のtanδ値が0.3以下である人工毛髪用繊維に関する。
【0006】
その好ましい実施態様としては、顔料が該アクリル系共重合体100重量部に対して0.05〜5重量部の割合で含有されている事が好ましく、あるいはグリシジルメタクリレートの重合体又はその共重合体がアクリル系共重合体100重量部に対し、0.2〜20重量部の割合で含有されているのが好ましい。
【0007】
又、本発明は、アクリロニトリルを35重量%以上含有するアクリル系共重合体を主成分とする樹脂組成物を染料及び/又は顔料により着色したものを、湿式紡糸し、水洗、乾燥処理し、その後、1.5倍以上の熱延伸を施し、そして125〜180℃の乾熱又は湿熱で弛緩熱処理後、前弛緩熱処理温度より5℃以上高い温度で且つ緊張状態で更に熱処理することにより、単糸繊度が25〜75dtexで、且つ80℃に於ける繊維の動的粘弾性のtanδ値が0.3以下である人工毛髪用繊維を得ることを特徴とする人工毛髪用繊維の製造方法に関する。その好ましい実施態様としては、アクリル系共重合体が溶解された紡糸原液中に、染料及び/又は顔料を添加して着色する上記製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細説明する。
【0009】
本発明で使用するアクリル系共重合体とは、アクリロニトリルを35重量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体を含む共重合体である。ここで共重合可能な単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビリル、臭化ビニリデン;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらのモノ又はジアルキル置換体;スチレン若しくはスチレンのα,β置換体;ビニルアセテート;ビニルピロリドン、ビニルピリジン若しくはそれらのアルキル置換体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、パラスチレンスルホン酸、2・アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸、パラメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸若しくはこれらの金属塩若しくはアミン塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明の人工毛髪用繊維を構成する上記共重合体は、アクリロニトリルを35重量%以上含有している事が必要である。アクリロニトリルが35重量%未満では繊維の耐熱性が低い為に、目的とする失透性の優れたものが得られない。
【0011】
本発明の特徴は、予め繊維製造段階で着色し、更に紡糸後の熱処理工程で特定の条件で熱処理を施す事で、繊維の動的粘弾性のtanδ値の小さい繊維を得る所にある。
【0012】
繊維製造段階で予め繊維を着色化させておく事で、ボイドの再発の原因となる染色加工工程が不要となり、又着色剤の存在による光散乱作用の影響等により、高温多湿環境下での長期保存時や温水処理時でも色相変化の少ない繊維が得られる。
【0013】
本発明に使用する染料又は顔料などの着色剤は、紡糸原液に用いられる溶剤に可溶な染料を用いても良く、カーボン等の無機顔料や他の有機顔料を用いてもよく、またそれらを組み合わせて使用しても良い。その中でも、光散乱作用の大きい無機又は有機顔料を用いるのが好ましい。顔料を用いる場合は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.05〜5重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0014】
本発明において繊維製造段階で着色化する手段としては、アクリル系共重合体に直接染料又は顔料を添加してもよいし、共重合体を溶解した紡糸原液に添加してもよいし、送液の工程で混合しても良い。また湿式紡糸で糸条を形成後、浴槽内で着色しても良いが、より安定した色相を得る為には、後述するように紡糸原液に着色剤を添加して着色するのが好ましい。
【0015】
本発明でいう動的粘弾性とは、繊維の弾性値(E″)を繊維の粘性値(E′)で割った数値の事で、tanδで表される。このtanδ値が大きくなる程アクリル系重合体の分子鎖が動き易くなる事を意味し、この数値が大きい程、温水又は沸騰水処理した時に失透を引き起こし易くなると考えられる。
【0016】
この動的粘弾性は、熱分析測定装置(セイコー電子製SSC/5200)を使い、振動数0.05Hz,荷重2g±1g,昇温速度2℃/minの条件下により測定されるものである。
【0017】
本発明において、繊維の動的粘弾性のtanδが0.3を越えると繊維が失透し易く、それ以下では極めて失透しにくくなる事が見い出された。動的粘弾性のtanδが0.3以下の繊維は、後述する特定の熱処理を施す事によって得られるが、他の方法で得られたものであっても構わない。
【0018】
本発明の人工毛髪用繊維の単糸繊度は25〜75dtexである。繊度が25dtex未満であると軟らか過ぎて腰がなく、頭飾製品として好ましくなく、一方、75dtexを超えると繊維が剛直となり、繊維の触感を著しく低下させる。適切な繊度を有する事が重要で、好ましくは、30〜70dtexが良い。
【0019】
本発明においては、グリシジルメタクリレート重合体又はその共重合体を、上記アクリル系共重合体100重量部に対して、0.2〜20重量部の割合で含有させるのが、失透防止の面で好ましい。0.2重量%未満では失透改良効果が少なく、20重量%を超えると、頭髪用繊維としての性能が薄れるばかりでなく、コストも高くなり、好ましくない。これらグリシジルメタクリレート重合体又はその共重合体は、紡糸原液に添加するのが好ましいが、それに限定されるものではない。ここで、グリシジルメタクリレートの共重合体を用いる場合、その共重合成分は特に限定されないが、メタアクリル酸やメチルメタクリル酸等が挙げられる。
【0020】
また繊維製造段階で着色化する手段としては、アクリル系重合体を溶解する溶剤で溶解された紡糸原液に対し、攪拌混合によって混合しても良いし、送液の工程で静止型ラインミキサーにて混合しても良い。また湿式紡糸で糸条を形成後、浴槽内で着色しても良いが、より安定した色相を得る為には、紡糸原液に着色剤を添加して着色するのが好ましい。
【0021】
次に本発明の人工毛髪用繊維の製造方法について説明する。
【0022】
本発明のアクリル系共重合体の共重合方法は、通常知られているビニル系単量体の重合方法であれば何れでも良い。例えば、懸濁重合法や溶液重合法、乳化重合法等を挙げる事が出来る。
【0023】
次に、このアクリル系共重合体、またはアクリル系共重合体を主成分としその他の樹脂成分や添加剤を混合した樹脂組成物を溶解して紡糸原液を調整する。ここで、紡糸原液に使用される溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル等を使う事が出来る。
【0024】
紡糸原液のアクリル系共重合体濃度が高ければ高い程、凝固時のボイド形成が少なくなり好ましいが、通常その濃度は25〜35重量%が現実的である。
【0025】
この共重合体溶液は、そのまま紡糸原液として使用しても良いが、通常は光沢を調整して人毛光沢に近づける為、艶消し剤を添加する。使用する艶消し剤としては、酸化チタン及び水酸化アルミ、酸化アルミ、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属化合物や酢酸セルロース等のセルロース誘導体等を用いる事が出来る。又必要に応じて失透を損なわない他の添加剤を添加しても差しつかえない。他の添加剤としては、例えば、着色安定剤、光安定剤、難燃剤、防錆剤、制電剤、抗菌剤等を挙げる事が出来る。
【0026】
また本発明においては、繊維製造段階で着色化する手段のひとつとして、この紡糸原液中に、染料又は顔料を添加して着色するのが好ましく、染料又は顔料は攪拌混合によって混合しても良いし、送液の工程で静止型ラインミキサーにて混合しても良い。
【0027】
この様にして調整された紡糸原液は、通常の湿式法により紡糸される。紡糸口金より凝固浴中に導き糸条を形成させ、次いで一般的な条件で、水洗、延伸、乾燥する。
【0028】
その後、本発明における特定の熱処理が施される。具体的には、1.5倍以上の熱延伸を施し、そして125〜180℃の乾熱又は湿熱で弛緩熱処理後、前弛緩熱処理温度より5℃以上高い温度で且つ緊張状態で更に熱処理する。
【0029】
この様に、熱処理工程である特定の熱処理を施す事により、動的粘弾性の小さい繊維が得られる。特に、125〜180℃の乾熱又は湿熱雰囲気下で通常の弛緩熱処理を施した後、更に前弛緩熱処理より5℃以上高い温度で、しかも緊張状態で2段熱処理するという工程が重要である。一方、熱処理温度が125℃未満のものや1段階の弛緩熱処理のみの場合は、動的粘弾性のtanδ値も大きく、耐失透性の優れた繊維は得られず、目的とする繊維は得難い。又熱処理温度が180℃を超えると、繊維の融着等の問題が発生する為好ましくない。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。実施例の記載に先立ち、失透性の評価方法について説明する。失透性評価は高温多湿環境下を想定したヒューミディティーテストと80℃温水処理テストの2通りを行った。
【0031】
(ヒューミディティーテスト)
実施例や比較例で得られた繊維を用いて、長さ10cm、重さ5gの繊維束を作成し、50℃、湿度80%の条件下で加熱加湿器(TABAI製ヒューミディティーキャビネット)内で2ヶ月間吊るし、処理前の繊維と比較して視覚的観点から5名の判定者による官能的評価を行い、以下の基準で変色度合いを評価した。
5級:全く変色なく、極めて良好
4級:殆ど変色なく良好
3級:僅かに変色が認められるが合格レベル
2級:未処理品と比べて変色あり
1級:変色度合いが極めて著しい
(温水処理テスト)
実施例や比較例で得られた繊維を用いて、長さ10cm、重さ5gの繊維束を作成し、80℃の温水ポット中に30分間浸漬し、50℃で2時間乾燥後、処理前の繊維束と比較して視覚的観点から5名の判定者による官能的評価を行い、上記基準に従いランク付けした。
【0032】
(実施例1)
アクリロニトリル52重量%、塩化ビニリデン47重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%からなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、アクリル系共重合体100重量部に対し、ポリグリシジルメタクリレート1重量部、及び0.23重量部の液体タイプのイエロー染料(Cathilon Yellow RLH)及び0.03重量部の液体タイプのレッド染料(Cathilon Red T-BLH)及び0.04重量部の液体タイプのブルー染料(Cathilon BlueT-BLH)を添加、混合して紡糸原液を作成した。この紡糸原液をノズル孔径0.4mm、孔数100ホールズのノズルを用いて、20重量%のアセトン水溶液中へ押出し、水洗しながら1.6倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後、2.5倍で熱延伸後、150℃の乾熱雰囲気下で0.9倍の弛緩熱処理を行い、更に160℃の乾熱雰囲下で、且つ緊張状態で2段熱処理を行った。
【0033】
得られた繊維は、断面形状がまゆ型で、単糸繊度は45dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性のtanδ値は0.26であった。
【0034】
(実施例2)
実施例1の紡糸原液に、更に艶消し剤である酢酸セルロースをアクリル系共重合体100重量部に対して1重量部の割合で添加混合した紡糸原液を作成し、以降実施例1と同様の方法で繊維を作成した。
【0035】
得られた繊維の80℃に於ける動的粘弾性のtanδ値は0.26であった。
【0036】
(実施例3)
アクリロニトリル52重量%、塩化ビニリデン47重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%からなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、アクリル系共重合体100重量部に対し、ポリグリシジルメタクリレート1重量部、及び酢酸セルロース1重量部及び0.3重量部のカーボンブラック及び0.3重量部の液体タイプのイエロー染料(CathilonYellow RLH)及び0.1重量部の液体タイプのレッド染料(CathilonRed T-BLH)を添加、混合して紡糸原液を作成した。この紡糸原液をノズル孔径0.4mm、孔数100ホールズのノズルを用いて、20重量%のアセトン水溶液中へ押出し、水洗しながら1.6倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2.5倍で熱延伸後、150℃の乾熱雰囲気下で0.9倍の弛緩熱処理を行い、更に160℃の乾熱雰囲下で、且つ緊張状態で2段熱処理を行った。
【0037】
得られた繊維は、断面形状がまゆ型で、単糸繊度は45dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.26であった。
【0038】
(実施例4)
アクリロニトリル52重量%、塩化ビニル47重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%からなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、アクリル系共重合体100重量部に対し、ポリグリシジルメタクリレート1重量部、及び酢酸セルロース1重量部及び0.3重量部のカーボンブラックと0.2重量部の不溶性モノアゾ系有機顔料(C.I.PigmentYellow128、C.I.PigmentRed208:Ciba-Geigy社製)を添加、混合して紡糸原液を作成した。
【0039】
この紡糸原液をノズル孔径0.4mm、孔数100ホールズのノズルを用いて、20重量%のアセトン水溶液中へ押出し、水洗しながら1.6倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2.5倍で熱延伸後、150℃の乾熱雰囲気下で0.9倍の弛緩熱処理を行い、更に160℃の乾熱雰囲下で、且つ緊張状態で2段熱処理を行った。
【0040】
得られた繊維は、断面形状がまゆ型で、単糸繊度は45dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.26であった。
【0041】
(実施例5)
アクリロニトリル58重量%、塩化ビニリデン41重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%よりなるアクリル系共重合体を、DMF(N,Nジメチルホルムアミド)に樹脂濃度で26重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、実施例3と同様の方法及び割合で酢酸セルロース及び着色剤を添加、混合して紡糸原液を作成した。この紡糸原液をノズル孔径0.35mm、孔数100ホールズのノズルを用いて50重量%のDMF水溶液中に押出し、水洗しながら2倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2倍で熱延伸後、165℃の飽和水蒸気雰囲気下で0.85倍の弛緩熱処理を行い、更に180℃の飽和水蒸気雰囲下で、且つ緊張状態で2段熱処理を行った。
【0042】
得られた繊維は、断面形状はほぼ円形を有し、単糸繊度は55dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.19であった。
【0043】
(実施例6)
アクリロニトリル70重量%、塩化ビニル29重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%よりなるアクリル系共重合体をDMAc(ジメチルアセトアミド)に樹脂濃度で27重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、実施例1と同様の方法及び割合で着色剤を添加し、更に酢酸セルロース1重量部を添加、混合して紡糸原液を作成した。この原液をノズル孔径0.35mm、孔数100ホールズのノズルを用いて55重量%のDMAc水溶液中に押出し、水洗しながら2倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2倍で熱延伸後、125℃の加圧水蒸気雰囲気下で0.75倍の弛緩熱処理を行い、更に125℃の加圧水蒸気雰囲下で、且つ緊張状態で2段熱処理を行った。
【0044】
得られた繊維は断面形状がほぼ円形を有し、単糸繊度は60dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.13であった。
【0045】
(比較例1)
アクリロニトリル52重量%、塩化ビニリデン47重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%からなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるよう溶解し、紡糸原液を作成した。この紡糸原液を用いて、実施例1と同様の方法で、ノズル孔径0.4mm、孔数100ホールズのノズルを用いて、20重量%のアセトン水溶液中へ押出し、水洗しながら1.6倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2.5倍で熱延伸後、150℃の乾熱雰囲気下で0.9倍の弛緩熱処理を行った。次いでこの繊維を下記方法で紡糸後に後染め加工により着色した。
【0046】
後染め加工方法は、カチオン染料(Maxilon Yellow 2RL 0.55%owf、Maxilon Red GRL0.25%owf、Maxilon Blue GRL0.30%owf:何れもCiba−Geigy社製)と助剤として、酢酸及び酢酸ナトリウム及び陰イオン系分散剤2%owf(LevenolWX:花王社製)、促染剤0.4%owf(ラウリル硫酸ナトリウム)を用い、浴比1:25で1時間常圧沸騰させ、水洗、乾燥後、こげ茶色の色相を有する繊維を得た。
【0047】
得られた繊維の単糸繊度は45dtexで、動的粘弾性値のtanδ値は0.35であった。
【0048】
(比較例2)
アクリロニトリル58重量%、塩化ビニリデン41重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%よりなるアクリル系共重合体を、DMF(N,Nジメチルホルムアミド)に樹脂濃度で26重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、酢酸セルロースをアクリル系共重合体100重量部に対して1重量部の割合で添加、混合して紡糸原液を作成した。この紡糸原液をノズル孔径0.35mm、孔数100ホールズのノズルを用いて50重量%のDMF水溶液中に押出し、水洗しながら2倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2倍で熱延伸後、160℃の飽和水蒸気雰囲気下で0.85倍の弛緩熱処理を行った。次いでこの繊維を比較例1と同様の処方、方法で紡糸後に後染め加工により着色し、試料を作成した。
【0049】
得られた繊維は、断面形状はほぼ円形を有し、単糸繊度は55dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.32であった。
【0050】
(比較例3)
アクリロニトリル52重量%、塩化ビニリデン47重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1重量%からなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるよう溶解し、次いでこの紡糸原液に、アクリル系共重合体100重量部に対して、酢酸セルロース1重量部及び0.23重量部の液体タイプのイエロー染料(Cathilon Yellow RLH)及び0.03重量部の液体タイプのレッド染料(Cathilon Red T-BLH)及び0.04重量部の液体タイプのブルー染料(Cathilon Blue T-BLH)を添加、混合して紡糸原液を作成した。この紡糸原液をノズル孔径0.4mm、孔数100ホールズのノズルを用いて、20重量%のアセトン水溶液中へ押出し、水洗しながら1.6倍に延伸し、ゲル膨潤糸条を得た。次いで120℃の乾燥温度で乾燥させた後2.5倍で熱延伸後、120℃の乾熱雰囲気下で0.95倍の弛緩熱処理を行った。
【0051】
得られた繊維は、断面形状がまゆ型で、単糸繊度は45dtexであった。又この繊維の80℃に於ける動的粘弾性値のtanδ値は0.42であった。
【0052】
実施例及び比較例の失透性の評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明の人工毛髪用繊維は、人毛ライクなアクリル系本来の特徴を保持しながら、耐失透性に優れた繊維であり、かつら、ヘアーピース、ブレード、エクステンションヘアー、人形用頭飾等として広範囲に利用する事が出来る。
Claims (5)
- アクリロニトリルを35重量%以上含有するアクリル系共重合体を主成分とし、繊維製造段階で予め染料及び/又は顔料で着色されたアクリル系合成繊維であって、
湿式紡糸され、1.5倍以上で熱延伸され、125〜180℃の乾熱又は湿熱で弛緩熱処理後、前弛緩熱処理温度より5℃以上高い温度で且つ緊張状態で熱処理されることにより、
単糸繊度が25〜75dtexで、且つ80℃に於ける繊維の動的粘弾性のtanδ値が0.3以下である人工毛髪用繊維。 - 顔料が、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部の割合で含有されている請求項1に記載の人工毛髪用繊維。
- グリシジルメタクリレートの重合体又はその共重合体が、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.2〜20重量部の割合で含有されている、請求項1又は2に記載の人工毛髪用繊維。
- アクリロニトリルを35重量%以上含有するアクリル系共重合体を主成分とする樹脂組成物を染料及び/又は顔料により着色したものを、湿式紡糸し、水洗、乾燥処理し、その後、1.5倍以上の熱延伸を施し、そして125〜180℃の乾熱又は湿熱で弛緩熱処理後、前弛緩熱処理温度より5℃以上高い温度で且つ緊張状態で更に熱処理することにより、
単糸繊度が25〜75dtexで、且つ80℃に於ける繊維の動的粘弾性のtanδ値が0.3以下である人工毛髪用繊維を得ることを特徴とする人工毛髪用繊維の製造方法。 - アクリル系共重合体が溶解された紡糸原液中に、染料及び/又は顔料を添加して着色する、請求項4に記載の人工毛髪用繊維の製造方法。
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