JP4126735B2 - 特定の酸化防止剤を含む絶縁樹脂を用いた多層配線板の製造方法 - Google Patents

特定の酸化防止剤を含む絶縁樹脂を用いた多層配線板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線板の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、層間絶縁層をビルドアップ方式で形成する多層配線板の絶縁樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常の多層配線板は、内層回路を形成した絶縁基板上に、プリプレグと称するガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にした材料を銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化した後、ドリルで層間接続用のスルーホールをあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行い、さらに必要に応じて電解めっきを行って必要な厚さの回路導体とした後、不要な銅を除去して多層配線板を製造する。 近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。これらに対応し、多層配線板は、電子部品の実装密度を向上するために、微細配線化の開発が進められている。しかしながら、配線幅の縮小には技術的に限界があり、現在量産可能な配線幅は75〜100μmである。このため、単に配線幅を縮小するだけでは大幅な配線密度の向上が達成しにくい。また、配線密度向上の隘路となっているのが、直径300μm前後の面積をしめるスルーホールである。このスルーホールは、一般的にメカニカルドリルで形成されるために比較的に寸法が大きく、このため配線設計の自由度に乏しくなる。
これらの問題を解決するものとして、感光性を付与した絶縁樹脂を回路形成した絶縁基板上に形成し、フォトプロセスにより絶縁樹脂に微少なバイアホールを形成して層間接続する方法が、特公平4−55555号公報や特開昭63−126296号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記した様に、フォトプロセスによって形成した微少なバイアホールで層間接続する多層配線板は、従来抱えていた多層配線板の配線密度向上の問題に関して大きく寄与するものである。このフォトプロセスによって形成するバイアホールは、小径であればある程配線設計の自由度が増す点で有利である。しかしながら、微小なバイアホールを得るために絶縁層は親水性を増した材料設計とする必要がある。樹脂自体の親水性を増すことは、樹脂に親水基を付加させることなどから容易にできる。しかし、親水性を増すことは吸水率を上げることと同様であることから、絶縁層の吸水特性すなわち加湿状態での耐熱性や絶縁信頼性が低下しやすくなることは言うまでもない。したがって、絶縁層としての特性を維持しながらバイアホールの小径化を実現させることは容易ではない。
本発明は、このような点を解決したものであり、特定の酸化防止剤を添加することにより絶縁層として必要な特性を維持したまま、容易にバイアホールの小径化を実現できる手法を見出したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、絶縁層を形成し、絶縁層に第1の回路と接続するためのバイアホールを形成し、銅めっきによって絶縁層表面に第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行って多層化する配線板の製造方法において、絶縁層が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を必須に含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した絶縁樹脂を用いるものである。
そして本発明は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2′-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-(4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシルフェニルプロピオネート]メタンの群から選ばれる少なくとも一つ以上を用いると好ましい多層配線板の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、何種類かを併用しても良く、その配合量は、酸化防止剤を除いた絶縁樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満では、バイアホールの小径化すなわち解像性向上に効果がなく、5重量部を超えると光硬化性が充分でなくなるために、絶縁特性やはんだ耐熱性が低下する傾向を示す。
【0006】
本発明で用いる感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した絶縁樹脂としては、光によって架橋可能な官能基を有した共重合体あるいは単量体を含んだ組成物または光の他に熱で架橋可能な官能基と熱開始剤を混合した組成物であれば何れも使用可能である。上記成分と共に用いることができる他の樹脂成分として挙げられる第一の群としては、エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ゴム分散エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂またはビスフェノール−A系エポキシ樹脂及びこれらエポキシ樹脂の酸変性物が挙げられる。特に光照射を行って光硬化を行う場合にはこれらエポキシ樹脂と不飽和酸との変性物が好ましい。
不飽和酸としては無水マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらはエポキシ樹脂のエポキシ基に対し当量もしくは当量以下の配合比率で該不飽和カルボン酸を反応させることによって得られる。
このほかにもメラミン樹脂、シアネートエステル樹脂のような熱硬化性材料、も好ましい適用例の一つである。
他には可とう性付与材の使用も好適な組み合わせであり、その例としてはブタジエンアクリロニトリルゴム、天然ゴム、アクリルゴム、SBR、カルボン酸変性ブタジエンアクリロニトリルゴム、カルボン酸変性アクリルゴム、架橋NBR粒子、カルボン酸変性架橋NBR粒子等が挙げられる。
このような種々の樹脂成分を加えることで光硬化性、熱硬化性という基本性能を保持したまま硬化物に色々な性質を付与することが可能になる。
【0007】
ゴム成分を配合した時には硬化物に強靭な性質を与えると共に、酸化性薬液による表面処理によって硬化物表面の粗化を簡単に行うことが可能になる。
本発明の感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂を用いる硬化性組成物においては通常使用される添加剤(重合安定剤、レベリング剤、顔料、染料等)を使用してもよい。またフィラーを配合することもなんら差し支えない。フィラーとしてはシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、アエロジル、炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機微粒子、粉末状テフロン粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理を施して有ってもよい。これらの分散はニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法によって達成される
【0008】
以上説明した絶縁層組成物を用いて、図1に示した工程で多層配線板を製造する。図1に示した工程に従い詳しく説明する。
先ず、第1の回路を形成した絶縁基板を用意する(図1−(a))。この絶縁基板は特に限定するものではなく、ガラス布−エポキシ樹脂、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙−エポキシ樹脂等通常の配線板に用いる絶縁基板が使用できる。第1の回路を形成する方法としては、銅箔と前記絶縁基板を張り合わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、前記絶縁基板の必要な個所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、通常の配線板の製造法を用いることができる。次に、第1の回路を形成した回路表面上に前記絶縁層を形成する(図1−(b))。この形成方法は、液状の樹脂をロールコート、カーテンコート、ディプコート等の方法で塗布する方式や、前記絶縁樹脂をフィルム化してラミネートで張り合わせる方式を用いることができる。次に、絶縁層に、第1の回路と接続するバイアホールを形成するためにフォトマスクを介して露光し(図1−(c))、未露光部分を現像液により食刻する方法によって絶縁層に第1の回路と接続するバイアホールを形成する(図1−(d))。露光は、通常の配線板のレジスト形成方法と同じ手法が用いられる。また、未露光部分を現像液により食刻する現像液としては、絶縁層に用いた樹脂組成物をどのような現像タイプにするかで決定され、アルカリ現像液、準水系現像液、溶剤現像液など一般的なものを用いることができる。
次に、絶縁層を酸化性粗化液で処理した後、絶縁層上に銅めっきを析出させて第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行う(図1−(e))。この場合、絶縁層を紫外線及び紫外線と熱で硬化させてから酸化性の粗化液に浸漬する手法を用いることもできる。
酸化性粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などを用いることができる。さらに第2の回路を形成する方法としては、粗化した絶縁層表面に無電解めっき用の触媒を付与して全面に無電解めっき銅を析出させ、更に必要な場合には電解めっきによって回路導体を必要な厚さにして、不要な箇所をエッチング除去して形成する方法や、めっき触媒を含有した絶縁層を用いて、めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法及びめっき触媒を含有しない絶縁層を粗化し、めっき触媒を付与した後めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法等を用いることができる。
本発明を多層化する場合には、以上の方法(図1−(b)〜図1−(e))を繰り返し行い多層化する(工程:図1−(f)〜図1−(h))。この際、好ましくは、次の回路層を支持する絶縁層を形成する前に、その下になる回路層導体表面を粗化して凹凸を形成したり、従来の多層配線板に用いられるように回路層導体表面を酸化して凹凸を形成したり、酸化して形成した凹凸を水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等のアルカリ性還元剤を用いて還元して層間の接着力を高めることができる。
【0009】
本発明は、特定の添加剤を絶縁層樹脂組成物に加えることで、層間接続に必要なバイアホールの小径化が可能なビルドアップ方式で多層化する配線板の製造方法であり、高密度化に優れた多層配線板を提供することができる。以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0010】
【実施例】
(実施例1)
(1)18μmの両面粗化箔を両面に張り付けた銅張りガラス布エポキシ樹脂積層板であるMCL−E−67(日立化成工業株式会社製商品名)を用い、不要な箇所の銅箔をエッチング除去して、第1の回路を形成した(図1−(a)に示す)。
(2)この表面の片面に、下記組成の絶縁樹脂をロールコーターを用いて塗布し、80℃−10分間乾燥して膜厚50μmの絶縁層を形成した(図1−(b)に示す)。
Figure 0004126735
(3)バイアホールとなる部分に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して、露光量300mJ/cm2の紫外線を照射して(図1−(c)に示す)、さらに未露光部分を、2、2−ブトキシエタノールを10vol%、4硼酸ナトリウム8g/lを含んだ現像液で30℃−1分間スプレー処理をしてバイアホールを形成した。
(4)紫外線2J/cm2を絶縁層に照射して後露光を行った。
(5)150℃−1時間後加熱を行った。
(6)絶縁層を化学粗化するために、粗化液として、KMnO4:60g/l、NaOH:40g/lの水溶液を作製し、50℃に加温して5分間浸漬処理する。KMnO4浸漬処理後は、SnCl2:30g/l、HCl:300ml/lの水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和し、粗化凹凸形状を形成した(図1−(d)に示す)。
(7)第1の絶縁層表面に第2の回路を形成するために、まず、PdCl2を含む無電解めっき用触媒であるHS−202B(日立化成工業株式会社製商品名)に、室温で10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっきであるL−59めっき液(日立化成工業株式会社製商品名)に70℃で30分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行って、絶縁層表面上に厚さ20μmの導体層を形成した。
次に、めっき導体の不要な箇所をエッチング除去するためにエッチングレジストを形成し、エッチングし、その後エッチングレジストを除去して、第1の回路と接続したバイアホールを含む第2の回路形成を行った(図1−(e)に示す)。
(8)さらに、多層化するために、第2の回路導体表面を、亜塩素酸ナトリウム:50g/l,NaOH:20g/l、リン酸三ナトリウム:10g/lの水溶液に85℃で20分間浸漬し、水洗して、80℃で20分間乾燥して第2の回路導体表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
(9)(2)〜(8)の工程を繰り返して3層の多層配線板を作製した(図1−(f)〜図1−(h)に示した)
【0011】
(実施例2)
実施例1における4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)の代わりに、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンを0.5重量部配合した。その他は、実施例1と同様な手法で行った。
【0012】
(実施例3)
実施例1における4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)の代わりに、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシルフェニルプロピオネート]を0.5重量部配合した。その他は、実施例1と同様な手法で行った。
【0013】
(比較例1)
実施例1において、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして多層配線板を作製した。
【0014】
以上のようにして作製した多層配線板の特性を、表1に示した。なお、測定は、下記のようにして行った。
ビアホール解像性:バイアホール直径が異なるフォトマスクを用いて露光、現像した基板のバイアホール形成部を金属顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いて、バイアホール底部の樹脂残りとビアホール形状を観察して評価した。ビアホール底部に樹脂残りがなく、また、剥がれやへこみのないビアホールが形成できる最低の直径をバイアホール解像性とした。
ピール強度:JIS C6481に準じ、めっき銅を90度方向に10mm幅で剥離した際の接着力を求めた。
288℃はんだ耐熱性:実施例及び比較例で作製した3層の多層配線板を25mmに切断し、288±1℃に調整したはんだ浴に60秒間浮かべ、ふくれ等の異常の発生の有無を調べた。ふくれ等が発生したものを有、発生しないものを無として評価した。
260はんだ耐熱性(40℃−90%RH2日処理):実施例及び比較例で作製した3層の多層配線板を25mmに切断し、40℃、90%RHに調整した恒温恒湿槽に入れ2日間処理した。処理後、室温に1時間放置した後に、260±1℃に調整したはんだ浴に30秒間浮かべふくれ等の異常の発生の有無を調べた。ふくれ等が発生したものを有、発生しないものを無として評価した。
層間絶縁抵抗:第1の回路と第2の回路から各々リード線をはんだ付けで取り出し、室温下で第1の回路と第2の回路間に100V、1分間直流電圧を印加した際の抵抗を求めた。
【0015】
【表1】
Figure 0004126735
【0016】
表1より、本発明の感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合した実施例1〜3は、酸化防止剤を含まない比較例1よりバイアホールの解像性に優れる。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加したにも係わらず288℃での耐熱性や40℃−90%RHの条件下に2日処理した後のはんだ耐熱性、層間絶縁抵抗においても無添加の比較例1と同等以上であり他の特性を劣化させることがない。
【0017】
【発明の効果】
以上のことから、本発明の絶縁樹脂組成物を用いることで、小径のバイアホール形成性に優れたビルドアップ方式の多層配線板を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(h)は、本発明を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1.絶縁基板 2.第1の回路
3.第1の絶縁層 4.フォトマスク
5.紫外線 6.バイアホール
61.バイアホール 7.粗化面
71.粗化面 8.第2の回路
9.第2の絶縁層 10.第3の回路

Claims (2)

  1. 第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、絶縁層を形成し、絶縁層に第1の回路と接続するためのバイアホールを形成し、銅めっきによって絶縁層表面に第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行って多層化する配線板の製造方法において、絶縁層が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を必須として含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した絶縁樹脂を用いることを特徴とした多層配線板の製造方法。
  2. ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2′-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-(4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシルフェニルプロピオネート]メタンの群から選ばれる少なくとも一つ以上である請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
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