JP3859030B2 - 多層配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線板の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、層間絶縁層をビルドアップ方式で形成する多層配線板の絶縁樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常の多層配線板は、内層回路を形成した絶縁基板上に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にしたプリプレグを銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化した後、ドリルで層間接続用のスルーホールをあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行い、必要により更に電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとした後、不要な銅を除去して多層配線板を製造する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。この為、多層配線板は、電子部品の実装密度を向上するために、微細配線化の開発が進められている。しかしながら、配線幅の縮小には技術的に限界があり、現在量産可能な配線幅は75〜100μmである。この為、単に配線幅を縮小するだけでは大幅な配線密度の向上が達成しにくい。
また、配線密度向上の隘路となっているのが、直径300μm前後の面積をしめるスルーホールである。このスルーホールは、一般的にメカニカルドリルで形成されるために比較的に寸法が大きく、この為配線設計の自由度が乏しくなる。
これらの問題を解決するものとして、感光性を付与した絶縁樹脂を回路形成した絶縁基板上に形成し、フォトプロセスにより絶縁樹脂に微少なバイアホールを形成して層間接続する方法が、特公平4−55555号公報や特開昭63−126296号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
感光性絶縁樹脂組成としては、コストや特性面からエポキシ樹脂を主成分とするのが一般的である。この場合、感光性絶縁樹脂の特性として、めっき銅との接着性や絶縁性の他に基板に塗布・乾燥後の状態で粘着性がないことが要求される。これは、液状系のワニスを用いてバイアホールを形成する場合には、溶剤を飛散させ塗膜を形成した絶縁樹脂層表面にフォトマスクを直接おいて紫外線露光するが、この際にフォトマスクと絶縁樹脂層間の粘着による作業性低下や粘着成分の付着によるフォトマスクの汚れなどを引き起こさせないためである。
また、フィルム状感光性絶縁樹脂の場合はカバーフィルムを剥がさない限り絶縁樹脂層表面とフォトマスクは直接接着はしないため液状系感光性絶縁樹脂ワニスほど問題とはならない。しかし、キャリアフィルムに絶縁樹脂ワニスを塗布・乾燥した後に絶縁樹脂層表面の粘着性が強い場合、巻しわやカバーフィルム剥離の際のしわ発生などが生じる。これらを解決するためには、絶縁樹脂成分において融点が高い材料を用いること、すなわち高分子量材料とする方法が一般的に用いられる。しかしながら、高分子材料を用いることは、めっき銅との接着性という点で不利になる。これは、高分子材料ほど粗化液に溶解しづらくなり安定的な粗化形状を得にくくなるためである。また、高分子材科は他材料との相溶性が悪く使用できる材料が限定されてしまう欠点を有する。
本発明は、上記した様な材料変更を行わずにしかも特性低下を引き起こさずに絶縁樹脂層表面を非粘着性とする感光性絶縁樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂を用いた多層配線板を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、絶縁層を形成し、絶縁層に第1の回路と接続するためのバイアホールを形成し、銅めっきによって絶縁層表面に第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行って多層化する配線板の製造方法において、絶縁層に、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂を用いる多層配線板の製造方法である。また、本発明は、前記シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂の全固形分中に5〜30重量%含有させた絶縁層であると好ましいものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるシリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーとしては、東亜合成化学工業株式会社製の商品名サイマックシリーズを用いることができ、具体的には、US‐120,US‐150,US‐210,US‐270,US‐300,US‐350(以上商品名)等である。その配合量は、感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂の全固形分中に5〜30重量%となるように含有させることが好ましい。より好ましくは、7〜20重量%の範囲である。シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーが5重量%未満では、絶縁樹脂層表面の非粘着化が十分でなくフォトマスクとの粘着が若干起こる。また、30重量%を超えるとめっき銅との接着性の低下が生じてくる。
シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含有するベースとなる感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂としては特に限定するものではなく、光によって架橋可能な官能基を有した共重合体あるいは単量体を含んだ組成物若しくは光の他に熱で架橋可能な官能基と熱開始剤を含んだ組成物または光と熱で架橋可能な組成物であれば何れも使用可能である。
【0006】
また、本発明の絶縁層組成物には、微粉末シリカ、水酸化アルミニウム、シリカ、ケイ酸ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の無機充填剤を混入すれば化学粗化した際の粗化凹凸を形成しやすいためめっき銅との接着力向上の点から好ましく、塗膜補強の点でも良い結果が得られる。
以上説明した絶縁層組成物を用いて、図1に示した工程で多層配線板を製造する。図1により製造工程を以下に説明する。
先ず、第1の回路を形成した絶縁基板を用意する(図1(a))。
この絶縁基板は特に限定するものではなく、ガラス布エポキシ樹脂、紙フェノール樹脂、紙エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙エポキシ樹脂等通常の配線板に用いる絶縁基板が使用できる。本発明の第1の回路を形成する方法としては、銅箔と前記絶縁基板を張り含わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、前記絶縁基板の必要な箇所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、通常の配線板の製造法を用いることができる。
次に、第1の回路を形成した回路表面上に前記絶縁層を形成する(図1(b))。絶縁層の形成方法は、液状の樹脂をロールコート、カーテンコート、ディプコート等の方法で塗布する方式や、前記絶縁層となる絶縁樹脂ワニスをフィルム化してラミネートで張り合わせる方式を用いることができる。
次に、絶縁層に、第1の回路と接続するバイアホールを形成するためにフォトマスクを介して露光し(図1(c))、未露光部分を現像液により食刻する方法によって絶縁層に第1の回路と接続するバイアホールを形成する(図1(d))。露光は、通常の配線板のレジスト形成方法と同じ手法が用いられる。
また、未露光部分を現像液により食刻する現像液としては、絶縁樹脂組成物をどのような現像タイプにするかにより決定されるが、アルカリ現像液、準水系現像液、溶剤現像液など一般的なものを用いることができる。
次に、絶縁層を酸化性粗化液で処理した後、絶縁層上に銅めっきを析出させて第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行う(図1(e))。この場合、絶縁層を紫外線及び紫外線と熱で硬化させてから酸化性の粗化液に浸漬する手法を用いることもできる。
酸化性粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などを用いることができる。
さらに第2の回路を形成する方法としては、粗化した絶縁層表面に無電解めっき用の触媒を付与して全面に無電解めっき銅を析出させ、必要な場合には電解めっきによって回路導体を必要な厚さにして、不要な箇所をエッチング除去して形成する方法や、めっき触媒を含有した絶縁層を用いて、めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法、及びめっき触媒を含有しない絶縁層を粗化し、めっき触媒を付与した後めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法等を用いることができる。
本発明を多層化する場合には、以上の方法(図1(b)〜図1(e))を繰り返し行い多層化する(工程:図1(f)〜図1(h))。この際、好ましくは、次の回路層を支持する絶縁層を形成する前に、その下になる回路層導体表面を粗化して凹凸を形成したり、従来の多層配線板に用いられるように回路層導体表面を酸化して凹凸を形成したり、酸化して形成した凹凸を水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等のアルカリ性還元剤を用いて還元して層間の接着力を高めることができる。
【0007】
本発明は、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂という特定の絶縁層を層間絶縁層に用いてビルドアップ方式で多層化する配線板の製造方法であり、絶縁樹脂層表面が非粘着性化されるため作業性に優れしかもフォトマスクを汚すおそれもない。従来のように粘着性のある絶縁層と接触するフォトマスクには、使用の都度、粘着剤が移行し表面が粘着性を帯びてゴミ、異物などを付着して露光時のパターン形成に悪影響をしてきたが、本発明により配線間のショートや断線といった影響を解消することができる。また、絶縁層が非粘着性なので、フォトマスクの位置合わせが容易となりまた、絶縁層とフォトマスクの間に空気が散在しパターンをぼけさせるおそれもなくなる。しかも、本発明に係わる絶縁層は、めっき銅との接着カが高く、又現像液溶解性に優れ、しかも絶縁性、耐熱性に優れた多層配線板を提供することができる。以下実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0008】
【実施例】
(実施例1)
(1)18μmの両面粗化箔を用いたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張り積層板であるMCL−E−67(日立化成工業株式会社製、商品名)を用い、不要な箇所の銅箔をエッチング除去して、第1の回路を形成した(図1(a)に示す)。
(2)この第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、下記組成の絶縁樹脂ワニスをロールコートにより塗布し、80℃−10分間乾燥して膜厚60μmの絶縁層を形成した(図1(b)に示す)。
上記組成をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解、分散し、さらにボールミルにより、30分間混合、分散させ40重量%の絶縁樹脂ワニスとした。
【0009】
(3)バイアホールとなる部分に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して、露光量600mJ/cm2の紫外線を照射して(図1(c)に示す)、さらに未露光部分を、20重量%のジエチレングリコールモノブチルエ−テル水溶液の現像液で30℃−2分間選択的に除去してバイアホールを形成した。
(4)紫外線2J/cm2を絶縁層に照射して後露光を行い、さらに150℃・60分間後加熱した。
(5)絶縁層を化学粗化するために、粗化液として、KMnO4:60g/l、NaOH:40g/lの水溶液を作製し、50℃に加温して5分間浸漬処理した。KMnO4浸漬処理後は、SnCl2:30g/l、HCl:300ml/lの水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和し、粗化凹凸形状を形成した(図1(d)に示す)。
(6)第1の絶縁層表面に第2の回路を形成するために、まず、PdCl2を含む無電解めっき用触媒であるHS−202B(日立化成工業株式会社製、商品名)に、室温で10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっきであるL−59めっき液(日立化成工業株式会社製、商品名)に70℃で30分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行って、絶縁層表面上に厚さ20μmの導体層を形成した。
次に、めっき導体の不要な箇所をエッチング除去するためにエッチングレジストを形成し、エッチングし、その後エッチングレジストを除去して、第1の回路と接続したバイアホールを含む第2の回路形成を行った(図1(e)に示す)。
(7)さらに、多層化するために、第2の回路導体表面を、亜塩素酸ナトリウム:50g/l,NaOH:20g/l、リン酸三ナトリウム:10g/lの水溶液に85℃−20分間浸債し、水洗して、80℃−20分間乾燥して第2の回路導体表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
(8)(2)〜(7)の工程を繰り返して3層の多層配線板を作製した(図1(f)〜図1(h)に示した)。
【0010】
(実施例2)
実施例1で示した絶縁樹脂組成物を下記組成に変更した他は、実施例1と同様の方法で多層配線板を作製した。
【0011】
(実施例3)
実施例1で示した絶縁樹脂組成物を下記組成に変更した。また、現像液は、エチルエトキシプロピオネート:1000ml/lの溶剤系現像液を用いて、30℃−5分間現像し、粗化前に、紫外線2J/cm2を照射し、150℃−30分間の熱硬化を行った。その他は、実施例1と同様の方法で行った。
【0012】
(比較例1)
実施例1において、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを用いない組成系とした。その他は同様の方法で行った。
以上のようにして作製した多層配線板の特性を、表1に示した。
【0013】
【表1】
【0014】
なお、試験方法は以下のようにして行った。
粘着力:回路表面上に絶縁樹脂をロールコートで形成後、80℃−10分間乾燥した。この絶縁樹脂付基板を25mm幅に切断し、絶縁樹脂表面に25mm幅のPETフィルムを空気が入らないように均一に押し合わせた。この基板を用いて,PETフィルムを90度方向に剥離し接着力を求めた。
フォトマスクとの非粘着性:回路表面上に絶縁樹脂をロールコートで形成後、80℃−10分間乾燥した。この絶縁樹脂表面にフォトマスクを置き、真空下で絶縁樹脂とフォトマスクとを10秒間密着させ剥離した。この際の絶縁樹脂とフォトマスク間の粘着力を評価し、粘着しないものを○で、粘着するものを×で示した。
150μφのバイアホール形成性:バイアホール部の断面を金属顕微鏡で観察し、絶縁樹脂層が現像されずに残ることによる導通不良やバイアホール形状の不具合によるめっき付き回り性を評価した。
回路導体との接着強度(kN/m):JIS C6481に準じ、めっき銅を90度方向に10mm幅で剥離した際の接着力を求めた。
耐電食性:ライン/スペース:0.1/0.1mmで形成した第2の回路及び第3の回路に第2の回路をマイナス側、第3の回路をプラス側となるように、100Vの直流を印加した。この基板を85℃−85%RHの条件下で処理し、室温で100V−1分間印加したときの絶縁抵抗が108Ω以下となる時間を測定した。
288℃はんだ耐熱性:JIS C6481に準じ、25mm角に切断しためっき銅付き基板を288℃±2℃に調整したはんだ浴に浮かべふくれが発生するまでの時間を求めた。
【0015】
表1より、本発明の実施例では、シリコンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを配合したので、それを配合しない従来の比較例に比べ粘着力が低下し、フォトマスクとの粘着性が大幅に抑制されている。しかも、シリコンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを配合したにもかかわらず従来の絶縁層と同様なめっき銅との接着強度、層間耐電食性、はんだ耐熱性を劣化させることなく同等な特性を有する。
【0016】
【発明の効果】
本発明による絶縁層を用いることで、めっき銅との接着性や絶縁性及び耐熱性を損なわずに絶縁樹脂層表面を非粘着性化することができ、粘着に起因する作業性の低下が解消され、またフォトマスクの汚れによるゴミ、異物の付着、それによる配線間のショートや断線を防止でき微細配線が可能となり、高密度なビルドアップ方式の多層配線板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)〜(h)は、本発明を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1.絶縁基板 2.第1の回路
3.第1の絶縁層 4.フォトマスク
5.紫外線 6.バイアホール
61.バイアホール 7.粗化面
71.粗化面 8.第2の回路
9.第2の絶縁層 10.第3の回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層配線板の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、層間絶縁層をビルドアップ方式で形成する多層配線板の絶縁樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常の多層配線板は、内層回路を形成した絶縁基板上に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にしたプリプレグを銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化した後、ドリルで層間接続用のスルーホールをあけ、スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行い、必要により更に電解めっきを行って回路導体として必要な厚さとした後、不要な銅を除去して多層配線板を製造する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進みその形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。この為、多層配線板は、電子部品の実装密度を向上するために、微細配線化の開発が進められている。しかしながら、配線幅の縮小には技術的に限界があり、現在量産可能な配線幅は75〜100μmである。この為、単に配線幅を縮小するだけでは大幅な配線密度の向上が達成しにくい。
また、配線密度向上の隘路となっているのが、直径300μm前後の面積をしめるスルーホールである。このスルーホールは、一般的にメカニカルドリルで形成されるために比較的に寸法が大きく、この為配線設計の自由度が乏しくなる。
これらの問題を解決するものとして、感光性を付与した絶縁樹脂を回路形成した絶縁基板上に形成し、フォトプロセスにより絶縁樹脂に微少なバイアホールを形成して層間接続する方法が、特公平4−55555号公報や特開昭63−126296号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
感光性絶縁樹脂組成としては、コストや特性面からエポキシ樹脂を主成分とするのが一般的である。この場合、感光性絶縁樹脂の特性として、めっき銅との接着性や絶縁性の他に基板に塗布・乾燥後の状態で粘着性がないことが要求される。これは、液状系のワニスを用いてバイアホールを形成する場合には、溶剤を飛散させ塗膜を形成した絶縁樹脂層表面にフォトマスクを直接おいて紫外線露光するが、この際にフォトマスクと絶縁樹脂層間の粘着による作業性低下や粘着成分の付着によるフォトマスクの汚れなどを引き起こさせないためである。
また、フィルム状感光性絶縁樹脂の場合はカバーフィルムを剥がさない限り絶縁樹脂層表面とフォトマスクは直接接着はしないため液状系感光性絶縁樹脂ワニスほど問題とはならない。しかし、キャリアフィルムに絶縁樹脂ワニスを塗布・乾燥した後に絶縁樹脂層表面の粘着性が強い場合、巻しわやカバーフィルム剥離の際のしわ発生などが生じる。これらを解決するためには、絶縁樹脂成分において融点が高い材料を用いること、すなわち高分子量材料とする方法が一般的に用いられる。しかしながら、高分子材料を用いることは、めっき銅との接着性という点で不利になる。これは、高分子材料ほど粗化液に溶解しづらくなり安定的な粗化形状を得にくくなるためである。また、高分子材科は他材料との相溶性が悪く使用できる材料が限定されてしまう欠点を有する。
本発明は、上記した様な材料変更を行わずにしかも特性低下を引き起こさずに絶縁樹脂層表面を非粘着性とする感光性絶縁樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂を用いた多層配線板を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、絶縁層を形成し、絶縁層に第1の回路と接続するためのバイアホールを形成し、銅めっきによって絶縁層表面に第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行って多層化する配線板の製造方法において、絶縁層に、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂を用いる多層配線板の製造方法である。また、本発明は、前記シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂の全固形分中に5〜30重量%含有させた絶縁層であると好ましいものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるシリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーとしては、東亜合成化学工業株式会社製の商品名サイマックシリーズを用いることができ、具体的には、US‐120,US‐150,US‐210,US‐270,US‐300,US‐350(以上商品名)等である。その配合量は、感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂の全固形分中に5〜30重量%となるように含有させることが好ましい。より好ましくは、7〜20重量%の範囲である。シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーが5重量%未満では、絶縁樹脂層表面の非粘着化が十分でなくフォトマスクとの粘着が若干起こる。また、30重量%を超えるとめっき銅との接着性の低下が生じてくる。
シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含有するベースとなる感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂としては特に限定するものではなく、光によって架橋可能な官能基を有した共重合体あるいは単量体を含んだ組成物若しくは光の他に熱で架橋可能な官能基と熱開始剤を含んだ組成物または光と熱で架橋可能な組成物であれば何れも使用可能である。
【0006】
また、本発明の絶縁層組成物には、微粉末シリカ、水酸化アルミニウム、シリカ、ケイ酸ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の無機充填剤を混入すれば化学粗化した際の粗化凹凸を形成しやすいためめっき銅との接着力向上の点から好ましく、塗膜補強の点でも良い結果が得られる。
以上説明した絶縁層組成物を用いて、図1に示した工程で多層配線板を製造する。図1により製造工程を以下に説明する。
先ず、第1の回路を形成した絶縁基板を用意する(図1(a))。
この絶縁基板は特に限定するものではなく、ガラス布エポキシ樹脂、紙フェノール樹脂、紙エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙エポキシ樹脂等通常の配線板に用いる絶縁基板が使用できる。本発明の第1の回路を形成する方法としては、銅箔と前記絶縁基板を張り含わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、前記絶縁基板の必要な箇所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、通常の配線板の製造法を用いることができる。
次に、第1の回路を形成した回路表面上に前記絶縁層を形成する(図1(b))。絶縁層の形成方法は、液状の樹脂をロールコート、カーテンコート、ディプコート等の方法で塗布する方式や、前記絶縁層となる絶縁樹脂ワニスをフィルム化してラミネートで張り合わせる方式を用いることができる。
次に、絶縁層に、第1の回路と接続するバイアホールを形成するためにフォトマスクを介して露光し(図1(c))、未露光部分を現像液により食刻する方法によって絶縁層に第1の回路と接続するバイアホールを形成する(図1(d))。露光は、通常の配線板のレジスト形成方法と同じ手法が用いられる。
また、未露光部分を現像液により食刻する現像液としては、絶縁樹脂組成物をどのような現像タイプにするかにより決定されるが、アルカリ現像液、準水系現像液、溶剤現像液など一般的なものを用いることができる。
次に、絶縁層を酸化性粗化液で処理した後、絶縁層上に銅めっきを析出させて第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行う(図1(e))。この場合、絶縁層を紫外線及び紫外線と熱で硬化させてから酸化性の粗化液に浸漬する手法を用いることもできる。
酸化性粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などを用いることができる。
さらに第2の回路を形成する方法としては、粗化した絶縁層表面に無電解めっき用の触媒を付与して全面に無電解めっき銅を析出させ、必要な場合には電解めっきによって回路導体を必要な厚さにして、不要な箇所をエッチング除去して形成する方法や、めっき触媒を含有した絶縁層を用いて、めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法、及びめっき触媒を含有しない絶縁層を粗化し、めっき触媒を付与した後めっきレジストを形成して必要な箇所のみ無電解めっきにより回路形成する方法等を用いることができる。
本発明を多層化する場合には、以上の方法(図1(b)〜図1(e))を繰り返し行い多層化する(工程:図1(f)〜図1(h))。この際、好ましくは、次の回路層を支持する絶縁層を形成する前に、その下になる回路層導体表面を粗化して凹凸を形成したり、従来の多層配線板に用いられるように回路層導体表面を酸化して凹凸を形成したり、酸化して形成した凹凸を水素化ホウ素ナトリウムやジメチルアミンボラン等のアルカリ性還元剤を用いて還元して層間の接着力を高めることができる。
【0007】
本発明は、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂という特定の絶縁層を層間絶縁層に用いてビルドアップ方式で多層化する配線板の製造方法であり、絶縁樹脂層表面が非粘着性化されるため作業性に優れしかもフォトマスクを汚すおそれもない。従来のように粘着性のある絶縁層と接触するフォトマスクには、使用の都度、粘着剤が移行し表面が粘着性を帯びてゴミ、異物などを付着して露光時のパターン形成に悪影響をしてきたが、本発明により配線間のショートや断線といった影響を解消することができる。また、絶縁層が非粘着性なので、フォトマスクの位置合わせが容易となりまた、絶縁層とフォトマスクの間に空気が散在しパターンをぼけさせるおそれもなくなる。しかも、本発明に係わる絶縁層は、めっき銅との接着カが高く、又現像液溶解性に優れ、しかも絶縁性、耐熱性に優れた多層配線板を提供することができる。以下実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0008】
【実施例】
(実施例1)
(1)18μmの両面粗化箔を用いたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張り積層板であるMCL−E−67(日立化成工業株式会社製、商品名)を用い、不要な箇所の銅箔をエッチング除去して、第1の回路を形成した(図1(a)に示す)。
(2)この第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、下記組成の絶縁樹脂ワニスをロールコートにより塗布し、80℃−10分間乾燥して膜厚60μmの絶縁層を形成した(図1(b)に示す)。
上記組成をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解、分散し、さらにボールミルにより、30分間混合、分散させ40重量%の絶縁樹脂ワニスとした。
【0009】
(3)バイアホールとなる部分に遮蔽部を形成したフォトマスクを介して、露光量600mJ/cm2の紫外線を照射して(図1(c)に示す)、さらに未露光部分を、20重量%のジエチレングリコールモノブチルエ−テル水溶液の現像液で30℃−2分間選択的に除去してバイアホールを形成した。
(4)紫外線2J/cm2を絶縁層に照射して後露光を行い、さらに150℃・60分間後加熱した。
(5)絶縁層を化学粗化するために、粗化液として、KMnO4:60g/l、NaOH:40g/lの水溶液を作製し、50℃に加温して5分間浸漬処理した。KMnO4浸漬処理後は、SnCl2:30g/l、HCl:300ml/lの水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和し、粗化凹凸形状を形成した(図1(d)に示す)。
(6)第1の絶縁層表面に第2の回路を形成するために、まず、PdCl2を含む無電解めっき用触媒であるHS−202B(日立化成工業株式会社製、商品名)に、室温で10分間浸漬処理し、水洗し、無電解銅めっきであるL−59めっき液(日立化成工業株式会社製、商品名)に70℃で30分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行って、絶縁層表面上に厚さ20μmの導体層を形成した。
次に、めっき導体の不要な箇所をエッチング除去するためにエッチングレジストを形成し、エッチングし、その後エッチングレジストを除去して、第1の回路と接続したバイアホールを含む第2の回路形成を行った(図1(e)に示す)。
(7)さらに、多層化するために、第2の回路導体表面を、亜塩素酸ナトリウム:50g/l,NaOH:20g/l、リン酸三ナトリウム:10g/lの水溶液に85℃−20分間浸債し、水洗して、80℃−20分間乾燥して第2の回路導体表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
(8)(2)〜(7)の工程を繰り返して3層の多層配線板を作製した(図1(f)〜図1(h)に示した)。
【0010】
(実施例2)
実施例1で示した絶縁樹脂組成物を下記組成に変更した他は、実施例1と同様の方法で多層配線板を作製した。
【0011】
(実施例3)
実施例1で示した絶縁樹脂組成物を下記組成に変更した。また、現像液は、エチルエトキシプロピオネート:1000ml/lの溶剤系現像液を用いて、30℃−5分間現像し、粗化前に、紫外線2J/cm2を照射し、150℃−30分間の熱硬化を行った。その他は、実施例1と同様の方法で行った。
【0012】
(比較例1)
実施例1において、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを用いない組成系とした。その他は同様の方法で行った。
以上のようにして作製した多層配線板の特性を、表1に示した。
【0013】
【表1】
【0014】
なお、試験方法は以下のようにして行った。
粘着力:回路表面上に絶縁樹脂をロールコートで形成後、80℃−10分間乾燥した。この絶縁樹脂付基板を25mm幅に切断し、絶縁樹脂表面に25mm幅のPETフィルムを空気が入らないように均一に押し合わせた。この基板を用いて,PETフィルムを90度方向に剥離し接着力を求めた。
フォトマスクとの非粘着性:回路表面上に絶縁樹脂をロールコートで形成後、80℃−10分間乾燥した。この絶縁樹脂表面にフォトマスクを置き、真空下で絶縁樹脂とフォトマスクとを10秒間密着させ剥離した。この際の絶縁樹脂とフォトマスク間の粘着力を評価し、粘着しないものを○で、粘着するものを×で示した。
150μφのバイアホール形成性:バイアホール部の断面を金属顕微鏡で観察し、絶縁樹脂層が現像されずに残ることによる導通不良やバイアホール形状の不具合によるめっき付き回り性を評価した。
回路導体との接着強度(kN/m):JIS C6481に準じ、めっき銅を90度方向に10mm幅で剥離した際の接着力を求めた。
耐電食性:ライン/スペース:0.1/0.1mmで形成した第2の回路及び第3の回路に第2の回路をマイナス側、第3の回路をプラス側となるように、100Vの直流を印加した。この基板を85℃−85%RHの条件下で処理し、室温で100V−1分間印加したときの絶縁抵抗が108Ω以下となる時間を測定した。
288℃はんだ耐熱性:JIS C6481に準じ、25mm角に切断しためっき銅付き基板を288℃±2℃に調整したはんだ浴に浮かべふくれが発生するまでの時間を求めた。
【0015】
表1より、本発明の実施例では、シリコンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを配合したので、それを配合しない従来の比較例に比べ粘着力が低下し、フォトマスクとの粘着性が大幅に抑制されている。しかも、シリコンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを配合したにもかかわらず従来の絶縁層と同様なめっき銅との接着強度、層間耐電食性、はんだ耐熱性を劣化させることなく同等な特性を有する。
【0016】
【発明の効果】
本発明による絶縁層を用いることで、めっき銅との接着性や絶縁性及び耐熱性を損なわずに絶縁樹脂層表面を非粘着性化することができ、粘着に起因する作業性の低下が解消され、またフォトマスクの汚れによるゴミ、異物の付着、それによる配線間のショートや断線を防止でき微細配線が可能となり、高密度なビルドアップ方式の多層配線板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)〜(h)は、本発明を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1.絶縁基板 2.第1の回路
3.第1の絶縁層 4.フォトマスク
5.紫外線 6.バイアホール
61.バイアホール 7.粗化面
71.粗化面 8.第2の回路
9.第2の絶縁層 10.第3の回路
Claims (2)
- 第1の回路を形成した絶縁基板の回路表面上に、絶縁層を形成し、絶縁層に第1の回路と接続するためのバイアホールを形成し、銅めっきによって絶縁層表面に第2の回路形成及びバイアホールの層間接続を行って多層化する配線板の製造方法において、絶縁層が、シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを含む感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂であることを特徴とする多層配線板の製造方法。
- シリコーンモノマーとアクリルモノマーを共重合した櫛形グラフトポリマーを感光性樹脂または感光性と熱硬化性を併用した樹脂の全固形分中に5〜30重量%含有させた絶縁層である請求項1に記載の多層配線板の製造方法。
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