JP4124483B2 - ミセル様水性組成物及び疎水性薬物の可溶化方法 - Google Patents
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Description
本発明は、親水基及び疎水基を導入したキトサン誘導体を用いて疎水性薬物を可溶化する技術に関する。
背景技術
従来より、界面活性剤、シクロデキストリン類、その他高分子化合物を用いることによる疎水性薬物の可溶化について報告されている。
そのうち、キトサン誘導体については、特公昭63−28414号公報には、キチン及び/又はキトサンを用いて疎水性薬物の溶出性を改善させた製剤が、特開平2−131434号公報には、低分子量キトサンを用いて疎水性薬物の水に対する溶解性及び溶出性を改善させた製剤が、特開平4−18036号公報には、アルカリ可溶性の低分子量キトサンとアルカリ不溶性の高分子量キトサンとを用いて疎水性薬物の水に対する溶解性及び溶出性を改善させた製剤が開示されている。
しかしながら、前記のキチン又はキトサン類を用いてもミセル様水性組成物を形成させることはできず、それゆえ、疎水性薬物の注射剤としての製剤化は困難である。
また、最近キトサン誘導体で疎水性薬物を可溶化した技術について報告されているが、カルボキシメチル基を導入したキトサン誘導体により疎水性薬物を可溶化した例はない。
発明の開示
本発明の目的はミセル様水性組成物を形成し得る疎水性薬物含有医薬組成物を提供することであり、これにより注射剤では水不溶性のため注射が不可能であった薬物の製剤化、経口剤では溶解性が悪いため吸収性が悪かった薬物についての吸収促進が可能である。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、親水基としてカルボキシ−C1-5アルキル基を、疎水基として炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を導入したキトサン誘導体が疎水性薬物とミセル様水性組成物を形成することを見いだし本発明を完成した。
即ち、本願第1の発明は、(1)疎水性薬物及び(2)次式(I):
(式中、R1は水素原子、アセチル基、炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を示し、R2は水素原子又はカルボキシ−C1-5アルキル基を示す。)
で表され、かつR1で示されるN−アセチル基の脱アセチル化度が70〜100%であり(1単糖につき1個脱アセチル化された場合を100%とする)、R1で示されるアルキル基の置換度が10〜100%であり(1単糖につき1個置換された場合を100%とする)、R2で示されるカルボキシ−C1-5アルキル基の置換度が50〜200%であり(1単糖につき2個置換された場合を200%とする)、更にカルボキシメチルキチン換算分子量が15万以下であるキトサン誘導体又はその塩
を含有する医薬組成物であり、本願第2の発明は、疎水性薬物を可溶化するにあたり、疎水性薬物を前記キトサン誘導体又はその塩と混合しミセル様水性組成物とすることを特徴とする疎水性薬物の可溶化方法である。
本発明において、「カルボキシメチルキチン換算分子量」とは、前記式(I)においてR1で示される炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を導入する前の原料カルボキシメチルキチンの分子量に換算した分子量をいう。
前記式(I)においてR1で示される炭素数9〜21のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状のC9-21アルキル基、即ち、次式:
-(CH2)nCH3(式中、nは8〜20の整数)
で表されるアルキル基、具体的にはノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基が挙げられる。
炭素数9〜21の脂肪族アシル基としては、直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状の飽和C9-21脂肪族アシル基、即ち、次式:
-CO(CH2)nCH3(式中、nは7〜19の整数)
で表されるアシル基、具体的にはノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基(ラウロイル基)、トリデカノイル基、テトラデカノイル基(ミリストイル基)、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基(パルミトイル基)、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基(ステアロイル基)、ノナデカノイル基、エイコサノイル基、ヘンエイコサノイル基が挙げられる。
前記式(I)においてR2で示されるカルボキシ−C1-5アルキル基において、アルキル部分は直鎖状又は分岐状のいずれでもよいが、アルキル部分が直鎖状のカルボキシ−C1-5アルキル基、即ち、次式:
-(CH2)nCOOH(式中、nは1〜5の整数)
で表される基、具体的にはカルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、5−カルボキシペンチル基が好ましい。
本発明に用いるキトサン誘導体は、前記式(I)においてR2で示されるカルボキシ−C1-5アルキル基のカルボキシル部分が塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩を形成してもよい。
本発明に用いるキトサン誘導体は、例えば、次のようにして製造することができる。
先ず、分子量15万以下、好ましくは分子量1000〜10万のキチンを塩基、好ましくは、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物で処理してアルカリキチンを調製した後、これを−40〜0℃で5〜24時間凍結後0〜40℃で融解し、再度−40〜0℃で5〜24時間凍結後0〜40℃で融解する。次いで、これを2−プロパノール等の適当な溶媒中で、
次式: X−C1-5alk−COOH
(式中、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示し、alkはアルキレン基を示す。)
で表されるハロゲン化飽和脂肪酸(例えば、モノクロロ酢酸)と反応させてカルボキシ−C1-5アルキルキチン(例えば、カルボキシメチルキチン)を得る。次いで、これを2−プロパノール等の適当な溶媒中で、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物で処理してカルボキシ−C1-5アルキルキトサン(例えば、カルボキシメチルキトサン)を得る。その後、これを水−メタノール混合溶媒等の適当な溶媒中で、
次式: R3−CHO
(式中、R3は炭素数8〜20のアルキル基を示す。)
で表されるアルデヒド(例えば、ラウリルアルデヒド)と反応させることにより、親水基としてカルボキシ−C1-5アルキル基が、疎水基として炭素数9〜21のアルキル基が導入されたキトサン誘導体(例えば、ラウリル化カルボキシメチルキトサン)を得ることができる。
また、前記カルボキシ−C1-5アルキルキトサン(例えば、カルボキシメチルキトサン)を適当な溶媒中で、
次式: R4−COX
(式中、R4は炭素数8〜20のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す。)
で表される酸ハロゲン化物(例えば、ラウロイルクロリド)、又は
次式: R4−COOR5
(式中、R4は炭素数8〜20のアルキル基を示し、R5は炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
で表されるエステル(例えば、ラウリン酸エチル)と反応させることにより、親水基としてカルボキシ−C1-5アルキル基が、疎水基として炭素数9〜21の脂肪族アシル基が導入されたキトサン誘導体(例えば、ラウロイル化カルボキシメチルキトサン)を得ることができる。
疎水性薬物とは、水への溶解性が悪いため、医薬として用いようとした場合注射剤としての製剤化が不可能な薬物、経口吸収性が不十分な薬物などであり、それらは例えばタキソール、アドリアマイシン等の制癌剤、マクロライド等の抗生物質、その他水への溶解性が悪い抗炎症剤、解熱鎮痛剤、胃腸薬、ビタミン剤等を挙げることができる。
次に、好ましい形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、疎水性薬物と前記キトサン誘導体を含有することを特徴とするミセル様水性組成物又はその乾燥組成物を提供するものである。
ここで本発明でいうミセル様水性組成物とは疎水性薬物が水性溶媒中に均一に分散し肉眼的には澄明又は乳濁状になり、薬物が可溶化した溶液状の組成物を意味する。ここで用いる水性溶媒としては蒸留水等が挙げられる。更に、これに適宜、塩類、糖類、酸等が添加されていてもよく、これらの例として、注射用蒸留水、生理食塩水、糖液、輸液、緩衝液等が挙げられる。更に、前記の水性溶媒は毒性を示さない限り、水溶性有機溶媒、例えば少量のエタノール等を含んでいてもよい。また、その水性組成物を適宜常法の乾燥手段により乾燥したものを乾燥組成物という。
疎水性薬物と前記キトサン誘導体との配合割合は、重量比で、1:0.5〜1:5であることが好ましい。
可溶化に際してその手段は特に限定されないが、キトサン誘導体の膨潤の際は温度をかけた方が好ましく、温度は20〜100℃、更に好ましくは40〜60℃である。薬物を添加しミセルを形成させる際は、超音波処理することが好ましい。溶解量は超音波処理時間に影響され、処理時間は好ましくは10〜120分、更に好ましくは20〜40分である。例えば、キトサン誘導体2重量部を温度をかけて撹拌し高分子を膨潤溶解させる。その後、疎水性薬物を1重量部添加して、超音波処理を施すと薬物が均一に分散したミセル様水性組成物が得られる。注射剤とするには水性組成物等の溶液を調製する際に滅菌状態の溶液、例えば滅菌蒸留水を用い、メンブランフィルターろ過等の滅菌処理を行う。
本発明の医薬組成物はミセル様水性組成物あるいはその乾燥組成物のいずれでもよいが、乾燥組成物は疎水性物質が安定に保存されることからより好ましい。乾燥組成物を得るには、一度水性組成物とした溶液を各種の乾燥手段により、乾燥物とする方法等が挙げられる。乾燥手段としては、凍結乾燥法、スプレードライ法、減圧乾燥法等があるが、特に凍結乾燥法が好ましい。
このようにして得られた本発明のミセル様水性組成物又は乾燥組成物は、注射剤、経口剤、坐剤、経粘膜投与剤及び外用剤等の製剤として使用可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下に製造例、実施例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの記載のみに限定されるものではなく、製造機器、製造手法、薬物の種類及び配合量、高分子の分子量、置換基の種類、置換度、配合量について本明細書に開示した範囲で任意に設定することが可能である。
製造例1
粉砕したキチン(ムラサキイカ甲由来)2gに55%水酸化ナトリウム水溶液(8ml)、8%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(200μl)を加え、4℃で2時間撹拌し、アルカリキチンを調製した。これを−20℃で8時間凍結後室温で融解し、再度−20℃で8時間凍結後室温で融解した。これに2−プロパノール(30ml)を加え、撹拌しながらモノクロロ酢酸を中和するまで加えて粗カルボキシメチルキチンを得た。これをメタノール洗浄、透析、ろ過することで得られた精製カルボキシメチルキチンに45%水酸化ナトリウム水溶液(40ml)、2−プロパノール(40ml)を加え、110℃で1時間還流した。2−プロパノールを除去し、水層を塩酸で中和した後、メタノールで粗カルボキシメチルキトサンを析出させた。これを透析して得られた精製カルボキシメチルキトサンに水(40ml)とメタノール(40ml)を加えた。これにラウリルアルデヒド(ドデカナール)(4g)を加えて、30分間撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウム(1.3g)を加えて、室温で8時間撹拌した。これにアセトンを加えて得られた沈澱をメタノール、ヘキサンで洗浄し、透析、凍結乾燥してラウリル化カルボキシメチルキトサン(0.75g)を得た。
得られたラウリル化カルボキシメチルキトサンの特性は下記表1のとおりであった。
なお、キチン及びその誘導体の物性(分子量、脱アセチル化度、カルボキシメチル化度、ラウリル化度)は、それぞれ次の方法で測定した。
カルボキシメチルキチンの分子量は、井上らの方法(Inoue Y., Kaneko M. and Tokura S., Rep. Progr. Polym. Phys. Jap., 25, 759(1982))で測定した。脱アセチル化度、カルボキシメチル化度、ラウリル化度はキチン及びその誘導体を元素分析計(2400CHN元素分析計 パーキンエルマー社製)で測定し、得られた元素組成から置換度を算出した。
製造例2〜3
反応時間、反応温度等を制御させること以外は製造例1と同様に処理して、ラウリル化度、カルボキシメチル化度及び脱アセチル化度の異なるラウリル化カルボキシメチルキトサンを製造した。
得られたラウリル化カルボキシメチルキトサンの物性は下記表2のとおりであった。
製造例4〜6
製造例1において中間生成物として得られたカルボキシメチルキチン(4g)を濃塩酸(100ml)中、室温で1時間攪拌した。これを中和し、析出した低分子化カルボキシメチルキチンを得た。これを原料として、以下製造例1と同様の方法でラウリル化カルボキシメチルキトサン(0.8g)を得た。
得られたラウリル化カルボキシメチルキトサンの物性は下記表2のとおりであった。
実施例1
アドリアマイシン塩酸塩約10mgを量りとり、水1mlを加え攪拌し溶解した。これに炭酸水素ナトリウム約5mgを攪拌しながら加え、フリーのアドリアマイシン懸濁液を得た。
別に、製造例1で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、R1:ラウリル、R2:カルボキシメチル、ラウリル化度90%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)約10mgを量りとり、0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)9mlを加え、50℃で4〜5時間撹拌しキトサン誘導体を膨潤させた。
これに先に調製したアドリアマイシン懸濁液を全量加え、プローブ型超音波(ブランソン製、sonifier250型、20kHz、20〜30W)にて30分間超音波処理した。沈殿物を除去するため、5μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液について溶解したアドリアマイシンを除去するため、0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)で1晩透析(Molecular Weight Cut Off(MWCO)3500)し、更に沈殿物等を除去するため遠心分離を行い、赤色の乳濁したアドリアマイシン封入ラウリル化カルボキシメチルキトサンのミセル様組成物を得た。
対照例1
アドリアマイシン塩酸塩約50mgを量りとり、水5mlを添加し溶解した。これに炭酸水素ナトリウム約25mgを攪拌しながら加えた。析出した赤色の沈殿物を除去するため、5μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液として微赤色のアドリアマイシン飽和溶液を得た。
対照例2
製造例1で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、R1:ラウリル、R2:カルボキシメチル、ラウリル化度90%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)約10mgを量りとり、0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを加え、50℃で4〜5時間撹拌しキトサン誘導体を膨潤させた。プローブ型超音波(ブランソン製、sonifier250型、20kHz、20〜30W)にて30分間超音波処理した。その後、沈殿物を除去するため、5μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液として、乳濁したラウリル化カルボキシメチルキトサンのミセル様組成物を得た。
実施例1、対照例1及び対照例2で得られた液を限外ろ過膜を装着した遠心分離用チューブ(セントリコン、グレースジャパン製、MWCO10000)で濃縮(3000rpm、20分)した。チューブ上層に限外ろ過膜を通過せずに残った濃縮液を、下層にそのろ液を得た。セントリコンチューブの上層と下層の色からアドリアマイシン封入性の評価を行った。
その結果、対照例1の場合、上層、下層共にアドリアマイシンに基づく微赤色を示した。このことから、溶解しているアドリアマイシンは限外ろ過膜(MWCO10000)を通過することが明らかとなった。
また、対照例2では、上層がミセルに基づく乳白色を示し、下層は無色澄明であった。これより、ミセルは限外ろ過膜(MWCO10000)を通過しないことが明らかとなった。
更に、実施例1では、上層が赤く乳濁した状態を呈し、下層が無色澄明であった。
即ち、アドリアマイシンが分子状態で溶解していれば限外ろ過膜を通過することから、本ミセル溶液中においてはアドリアマイシンは分子状態で溶解することなくミセルに封入されていることが示された。更に、上層の赤色は、対照例1のアドリアマイシン溶液の上層と比較して明らかに濃いことから、アドリアマイシンがラウリル化カルボキシメチルキトサンに封入されることにより飽和溶解度以上に可溶化されたことを確認した。
実施例2
製造例1で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、ラウリル化度90%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)10mgに0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)9mlを加え、50℃で2〜3時間撹拌しキトサン誘導体を膨潤させた。その後、タキソールのエタノール溶液(5mg/ml)を1ml添加した。プローブ型超音波(ブランソン製、sonifier250型、20kHz、20〜30W)にて30分間超音波処理し、可溶化させて若干乳白色を帯びた溶液を得た。次いで、透析(MWCO3500)をリン酸緩衝液(pH7.4)で1晩行い、5μmのメンブランフィルターによりろ過することによりミセル様水性組成物を得た。
実施例3
製造例1で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、ラウリル化度90%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)50mgに0.15Mリン酸緩衝液(pH7.4)9mlを加え、50℃で2〜3時間撹拌しキトサン誘導体を膨潤させた。その後、タキソールのエタノール溶液(30mg/ml)を1ml添加し、以下、実施例2と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
実施例4
製造例2で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、ラウリル化度65%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)を用い、実施例3と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
実施例5
製造例3で得たラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、ラウリル化度19%、カルボキシメチル化度200%、脱アセチル化度90%)を用い、実施例3と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
実施例6
製造例4で得た低分子量ラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量2600、ナトリウム塩、ラウリル化度25%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)を用い、実施例3と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
実施例7
製造例5で得た低分子量ラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量2300、ナトリウム塩、ラウリル化度25%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)を用い、実施例3と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
実施例8
製造例6で得た低分子量ラウリル化カルボキシメチルキトサン(カルボキシメチルキチン分子量2000、ナトリウム塩、ラウリル化度25%、カルボキシメチル化度140%、脱アセチル化度100%)を用い、実施例3と同様に処理しミセル様水性組成物を得た。
対照例3
カルボキシメチルキチン(カルボキシメチルキチン分子量50000、ナトリウム塩、R1=H、R2:カルボキシメチル)を用い、実施例2と同様に処理した。
試験例
定量については、それぞれの製剤の500μlを凍結乾燥し、内標準溶液(フタル酸ジブチルのエタノール溶液20μg/ml)を10ml添加し5分間超音波処理した後、遠心分離(3000rpm、5分)を行い上澄液を試料溶液とした。必要に応じエタノールで希釈後、試料溶液10μlにつき、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてタキソール含量を測定した。
HPLC条件
カラム:内径4.6mm×15cmのステンレス管に直径5μmの液体クロマトグラフ用ODSを充填する。
カラム温度:50℃
充填剤 :ODS80Tm(東ソー)
移動相 :メタノール:水=65:35
検出波長:227nm
流速 :1.0ml/分
注入量 :10μl
実施例2〜8及び対照例3の製剤について粒子径をリン酸緩衝液(pH7.4)で適当に希釈して動的光散乱法で測定した。
粒子径測定条件
装置 :DLS7000(大塚電子)
希釈液:リン酸緩衝液(pH7.4)
積算回数:200回
サンプリング時間:8μsec
解析方法:ヒストグラム法(マルカット法)
分布表示:重量分布
用いたキトサン誘導体を表3にまとめた。結果を表4に示した。
タキソールの飽和溶解度はpH7.4で0.32μg/mlであるのに対し、実施例2〜8では可溶化量が格段に増大した。ミセルの粒度分布は重量分布表示でいずれもほぼ単一なピークを示し、平均粒径は約十nmであり、ミセル様水性組成物を形成することにより、可溶化した。なお、いずれのミセル様水性組成物も澄明もしくは若干乳白色を帯びた溶液となった。
産業上の利用の可能性
親水基としてカルボキシ−C1-5アルキル基を、疎水基として炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を導入したキトサン誘導体を用いることにより、疎水性薬物を可溶化した。特に、タキソールについては飽和溶解度の数千倍可溶化した。本発明は、タキソールに限ることなく他の疎水性薬物にも適用可能であり、これまで水不溶性のため注射が困難であった薬物も注射剤として製剤化でき、経口剤等で溶解性が悪いため吸収性が悪かった薬物についても吸収促進効果が期待できる。
Claims (6)
- (1)疎水性薬物及び(2)次式(I):
(式中、nはカルボキシメチルキチン換算分子量2000〜15万に相当する繰り返し単位数を示し、R1は水素原子、アセチル基、炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を示し、R2は水素原子又はカルボキシ−C1-5アルキル基を示す。)
で表され、かつR1で示されるN−アセチル基の脱アセチル化度が70〜100%であり(1単糖につき1個脱アセチル化された場合を100%とする)、R1で示されるアルキル基の置換度が10〜100%であり(1単糖につき1個置換された場合を100%とする)、R2で示されるカルボキシ−C1-5アルキル基の置換度が50〜200%であり(1単糖につき2個置換された場合を200%とする)、更にカルボキシメチルキチン換算分子量が15万以下であるキトサン誘導体又はその塩
を含有する医薬組成物。 - 疎水性薬物がアドリアマイシン又はタキソールである請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
- ミセル様水性組成物である請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
- 乾燥組成物であり、水性溶媒に溶解した時にミセルを形成する請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
- 疎水性薬物を可溶化するにあたり、疎水性薬物を次式(I):
(式中、nはカルボキシメチルキチン換算分子量2000〜15万に相当する繰り返し単位数を示し、R1は水素原子、アセチル基、炭素数9〜21のアルキル基又は炭素数9〜21の脂肪族アシル基を示し、R2は水素原子又はカルボキシ−C1-5アルキル基を示す。)
で表され、かつR1で示されるN−アセチル基の脱アセチル化度が70〜100%であり(1単糖につき1個脱アセチル化された場合を100%とする)、R1で示されるアルキル基の置換度が10〜100%であり(1単糖につき1個置換された場合を100%とする)、R2で示されるカルボキシ−C1-5アルキル基の置換度が50〜200%であり(1単糖につき2個置換された場合を200%とする)、更にカルボキシメチルキチン換算分子量が15万以下であるキトサン誘導体又はその塩と混合しミセル様水性組成物とすることを特徴とする疎水性薬物の可溶化方法。 - 疎水性薬物がアドリアマイシン又はタキソールである請求の範囲第5項記載の可溶化方法。
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