JP4124288B2 - ビニルアミン系ポリマーの水系分散液及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルアミン系ポリマーの水系分散液及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、排水の凝集剤、汚泥の脱水剤、紙用添加剤として優れた効果を示すビニルアミン系ポリマーの、高濃度であっても低粘度を保ち、自動化、省力化の点でハンドリング性に優れ、油中水型エマルションポリマーのように油を使用することなく、粉末状ポリマーのように粉塵の発生がなく、作業環境改善の点でも優れている安定なビニルアミン系ポリマーの水系分散液及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、汚泥脱水剤などに使用されるカチオン性ポリマーは、主として粉末の形態で商品化され、取り扱われてきた。しかし、粉末状のポリマーは取り扱いに際して粉塵が発生するため作業の安全性に問題があり、また使用形態である水溶液とするための溶解作業に時間と手間がかかるなどの問題から、カチオン性ポリマーの液状製品が要求されている。現在、提案されている液状品としては、例えば、特開平2−105809号公報に提案されているような、ベンジルアンモニウム型カチオン性モノマーを多価アニオン塩水溶液中で重合する方法や、特開平2−222404号公報に提案されているような、N−ビニルアミドを乳化剤存在下で重合及び加水分解して油中水型エマルションを得る方法などがある。しかし、油中水型エマルションは大量の油を使うという問題点がある。
カチオン性ポリマーの中でも、ビニルアミン系ポリマーは排水の凝集剤、汚泥の脱水剤、紙用添加剤としての性能に特に優れるため、従来より開発の努力が続けられている。ビニルアミン系ポリマーは、通常N−ビニルカルボン酸アミドを主成分とするモノマーを重合して母体ポリマーを製造したのち、加水分解するという製造工程がとられている。母体ポリマーは酸又はアルカリによって加水分解することができるが、一般には無機酸が好適であるとされ、工業的には通常は塩酸が用いられている。加水分解により得られたビニルアミン系ポリマー水溶液を水系分散液とするためには、水溶液に無機塩を添加してビニルアミン系ポリマーの溶解度を低下させ、ビニルアミン系ポリマーを水媒体中で粒子状に析出させる必要がある。
しかし、凝集剤、脱水剤などとして有用なビニルアミン系ポリマーは高分子量であることが要求されるため、その高濃度水溶液は極めて高粘度であり、無機塩を添加して均一に混合しビニルアミン系ポリマーを粒子状に析出させて、長期間安定な水系分散液とすることは困難である。これに対し、特開平8−188699号公報には、硝酸塩を含有するビニルアミン系ポリマーの水系分散液が提案されているが、この水系分散液は、N−ビニルカルボン酸アミドを重合又は共重合してポリマー水溶液又は水性分散液とし、さらに加水分解して得られたポリマーをいったん粉末化したのち、ふたたび水溶液として硝酸塩を添加する方法により製造されており、高粘度の水溶液を取り扱う必要がある上に、工程が長いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高濃度であっても低粘度を保ち、自動化、省力化の点でハンドリング性に優れ、安定な分散状態を保つ、ビニルアミン系ポリマーの水系分散液及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ビニルアミン系ポリマーをビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩を溶解した水性媒体中に分散することにより、高濃度であっても低粘度を保つ安定な水系分散液が得られることを見いだし、さらに、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩の存在下に水媒体中で加水分解することにより、該ビニルアミン系ポリマーの水系分散液を容易に製造し得ることを見いだし、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び0.1〜30重量%の硝酸塩を含むことを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液、
(2)N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩の存在下に水媒体中で加水分解することを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(3)N−ビニルカルボン酸アミド又はN−ビニルカルボン酸アミドとこれと共重合し得るモノマーとを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの存在下に水媒体中で重合して得られた水系分散液に、無機塩を添加して加水分解することを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(4)加水分解後の水系分散液中におけるビニルピロリドン単位を有するポリマーの濃度が、0.1〜30重量%である第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(5)ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーに加えて、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ビニルアミン系ポリマー、ポリアクリロアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩若しくは4級アンモニウム塩のホモポリマー又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとアクリルアミドとコポリマーからなる水溶性ポリマーを併用する第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(6)加水分解後の水系分散液中におけるビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーと併用する水溶性ポリマーとの濃度の合計が0.1〜30重量%である第(5)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(7)N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの仕込み量が加水分解後の水系分散液に対して10〜40重量%である第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(8)水系分散液中における無機塩の濃度が、0.1〜30重量%である第(2)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、及び、
(9)加水分解に際して、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーに、炭素数1〜4のアルコールを添加する第(2)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(10)N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーが、ポリ−N−ビニルホルムアミドである第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(11)N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーが、N−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとのコポリマーである第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
(12)ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドン又はビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーである第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、及び、
(13)無機塩が、硝酸塩である第(2)項又は第(3)項記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するN−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーとしては、N−ビニルカルボン酸アミドのホモポリマーのほか、N−ビニルカルボン酸アミドとこれと共重合し得る他のモノマーとのコポリマーを挙げることができる。N−ビニルカルボン酸アミドとしては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルベンズアミドなどを挙げることができるが、これらの中でN−ビニルホルムアミドを特に好適に使用することができる。
N−ビニルカルボン酸アミドと共重合するモノマーには特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドンなどのノニオン性モノマー、(メタ)アクリル酸及びそれらのアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれらのアルカリ金属塩などのアニオン性モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの3級塩及び4級アンモニウム塩などのカチオン性モノマーなどを挙げることができる。これらのモノマーの中で、(メタ)アクリロニトリルは、N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルとのコポリマーの加水分解により、カチオン性ポリマーとして特徴ある性能を発揮するアミジン構造を生成するので、特に好適に使用することができる。
【0006】
本発明において、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを得るための重合方法には特に制限はなく、使用するモノマー及び生成するポリマーの溶解性などに応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを適宜選ぶことができる。これらの重合方法の中で、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの存在下における水媒体中での重合は、重合が進行してポリマーが生成するにともなって水媒体中にポリマーが析出し、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの水系分散液を直接得ることができるので、特に好適に使用することができる。N−ビニルカルボン酸アミド又はN−ビニルカルボン酸アミドとこれと共重合し得るモノマーとを、ビニルピロリドン単位を有するポリマーとともに水媒体に溶解し、雰囲気を不活性ガスにより置換し、所定温度まで昇温したのち水溶性重合開始剤を添加し、重合を行うことによって、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの水系分散液を得ることができる。使用する重合開始剤には特に制限はなく、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビスイソブチルアミド二水和物などを挙げることができる。こららの中で、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を好適に使用することができる。
本発明において、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーは、そのまま引き続いて無機塩を添加し、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩の存在下に水媒体中で加水分解することができる。加水分解により、ポリマーのN−ビニルカルボン酸アミド単位はN−ビニルアミン単位となり、さらにN−ビニルアミン単位に隣接して(メタ)アクリロニトリル単位が存在する場合は、両単位間の反応によりアミジン構造が形成される。
【0007】
本発明において使用するビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンと共重合し得る他のモノマーとのコポリマーを挙げることができる。ビニルピロリドンと共重合し得るモノマーとしては、例えば、ビニルアセテート、スチレン、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの水溶性ポリマーの中で、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーを特に好適に使用することができる。
本発明において、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの全構造単位中に占めるビニルピロリドン単位の割合は、5〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
本発明において、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの水媒体への添加時期に特に制限はなく、N−ビニルカルボン酸アミド又はN−ビニルカルボン酸アミドとこれと共重合し得るモノマーとの重合から、得られるN−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの加水分解までのどの段階においても添加することができるが、重合開始前に水媒体中へ添加することが好ましい。ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーを重合開始前に水媒体に添加することにより、重合から加水分解までを一貫して水系分散液の状態で行うことができる。
本発明において、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの水系分散液中における濃度に特に制限はないが、ビニルアミン系ポリマーの水系分散液の0.1〜30重量%であることが好ましい。ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの水系分散液中における濃度が0.1重量%未満であると、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの水系分散液及びビニルアミン系ポリマーの水系分散液の分散安定性が不十分となるおそれがある。ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの水系分散液中における濃度が30重量%を超えると、水系分散液の粘度が高くなりすぎて、取り扱い上不都合が生ずるおそれがある。
【0008】
本発明においては、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーに加えて、他の水溶性ポリマーを併用することができる。併用する他の水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ビニルアミン系ポリマー、ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩及び4級アンモニウム塩のホモポリマー、又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとアクリルアミドなどとのコポリマーなどを挙げることができる。ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び併用する他の水溶性ポリマーの水媒体中における濃度に特に制限はないが、ビニルピロリドン単位を有するポリマー及び併用する他の水溶性ポリマーの合計の濃度が0.1〜30重量%であることが好ましい。ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び併用する他の水溶性ポリマーとのそれぞれの割合に特に制限はないが、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの割合が10重量%以上であることが好ましい。
本発明において、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマー中のN−ビニルカルボン酸アミド単位の割合は、本発明のビニルアミン系ポリマーの水系分散液を高分子凝集剤として用いるときは、35モル%以上であることが性能上好ましい。しかし、本発明方法は、N−ビニルカルボン酸アミド単位が全構造単位中に占める割合には制限なく実施することが可能であり、安定したビニルアミン系ポリマーの水系分散液を得ることができる。
本発明の水系分散液を構成するビニルアミン系ポリマーは、水系分散液を高分子凝集剤として用いるときは高分子量であることが好ましい。したがって、加水分解に供するN−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーも高分子量であることが好ましく、その分子量の指標となる1N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が1dl/g以上であることが好ましく、3dl/g以上であることがより好ましい。しかし、本発明方法は、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの分子量に制限なく実施することが可能であり、安定したビニルアミン系ポリマーの水系分散液を得ることができる。
【0009】
本発明方法においては、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩の存在下に水媒体中で加水分解する。加水分解に際しては、酸又はアルカリを用いることができる。加水分解に供されるN−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの仕込み量は、加水分解後に得られるビニルアミン系ポリマーの水系分散液の重量に対して10〜40重量%であることが好ましく、15〜40重量%であることがより好ましい。
加水分解に使用する酸には特に制限はなく、例えば、塩酸、硝酸、酢酸などを挙げることができる。加水分解に使用するアルカリには特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを挙げることができる。使用する酸又はアルカリの量は、ポリマー中のN−ビニルカルボン酸アミド単位の0.3〜5モル倍であることが好ましく、1〜3モル倍であることがより好ましい。酸又はアルカリの量が、ポリマー中のN−ビニルカルボン酸アミド単位の0.3モル倍未満であると、加水分解反応の速度が遅くなるおそれがある。酸又はアルカリの量が、ポリマー中のN−ビニルカルボン酸アミド単位の5モル倍を超えると、反応槽などの腐触が進みやすくなるおそれがある。使用する酸又はアルカリの量は、目的とする加水分解率に応じて、上記の範囲で適宜選択することができる。加水分解反応の温度は、40〜100℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。反応温度が40℃未満であると反応速度が遅くなるおそれがある。反応温度が100℃を超えると、加圧反応器が必要となり、反応の制御が困難となるおそれがある。
【0010】
本発明方法において、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを加水分解する際の、水媒体中における無機塩の濃度には特に制限はなく、無機塩の溶解度に応じて適宜選定することができるが、通常はビニルアミン系ポリマーの水系分散液の0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましい。無機塩の濃度が0.1重量%未満であると、加水分解が進むにつれポリマーの溶解が起こり、ポリマー粒子が高粘度のゲル状となるおそれがある。無機塩の濃度が30重量%を超えると、ポリマー粒子が互いに付着し沈殿しやすくなる傾向があり、水系分散液の安定性が損なわれるおそれがある。使用する無機塩は、水溶性のものであれば特に制限はなく、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムなどを挙げることができる。これらの無機塩の中で、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩は、ビニルアミン系ポリマーを析出させる効果が大きいので、特に好適に使用することができる。
本発明方法においては、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを加水分解する際に、炭素数1〜4のアルコールを添加することができる。アルコールの添加により、加水分解の副生成物であるギ酸、酢酸などを、エステル化して効果的に除去することができる。
【0011】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、水系分散液の分散安定性は、40℃において24時間静置後の状態について判定した。
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた2,000mlセパラブルフラスコに、N−ビニルホルムアミド171g(2.4モル)、アクリロニトリル127g(2.4モル)、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマー(モル分率60:40)65g及び水710gを仕込み、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液2.8gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合したところ、白濁した水系分散液が得られた。
重合終了後、撹拌を続けながら70℃まで昇温し、35重量%塩酸250g及びメタノール230gを添加し、さらに3時間後に硝酸ナトリウム240gを添加したのち90℃まで昇温し、2時間かけて加水分解したところ、重合後と同じ状態を保って白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は4〜20μmであり、分散性は安定であった。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの濃度は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例2
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの代わりに、ポリビニルピロリドン40g及びポリビニルアルコール25gを添加した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は20〜100μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールの濃度の合計は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例3
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの代わりに、ポリビニルピロリドン65gを添加した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒子径は20〜200μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ポリビニルピロリドンの濃度は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例4
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた2,000mlセパラブルフラスコに、N−ビニルホルムアミド298g(4.2モル)、ビニルピロリドンとビニルアセテート(モル分率60:40)とのコポリマー65g及び水710gを仕込み、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液2.8gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合したところ、白濁した水系分散液が得られた。
重合終了後、撹拌を続けながら70℃まで昇温し、35重量%塩酸250g及びメタノール230gを添加し、さらに3時間後に硝酸ナトリウム240gを添加したのち、2時間かけて加水分解したところ、重合後と同じ状態を保って白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は4〜20μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの濃度は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例5
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの代わりに、ポリビニルピロリドン40g及びポリビニルアルコール25gを添加した以外は、実施例4と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は20〜100μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールの濃度の合計は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例6
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの代わりに、ポリビニルピロリドン40gとポリエチレングリコール(平均分子量20,000)25gを添加した以外は、実施例4と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は20〜200μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールの濃度の合計は4.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例7
硝酸ナトリウム240gの代わりに塩化ナトリウム240gを添加した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,500gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は20〜150μmであり、分散性は良好で次第に大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は19.9重量%、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーの濃度は4.3重量%、塩化ナトリウムの濃度は16.0重量%である。
実施例8
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた2,000mlセパラブルフラスコに、N−ビニルホルムアミド171g(2.4モル)、アクリロニトリル127g(2.4モル)、ポリエチレングリコール(平均分子量20,000)150g及び水710gを仕込み、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液2.8gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合したところ、白濁した水系分散液が得られた。
重合終了後、ポリビニルピロリドン65gを添加して、撹拌を続けながら70℃まで昇温し、35重量%塩酸250g及びメタノール230gを添加し、さらに3時間後に硝酸ナトリウム240gを添加したのち90℃まで昇温し、2時間かけて加水分解したところ、重合後と同じ状態を保って白濁した水系分散液1,650gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は20〜200μmであり、分散性は良好で一部大きな粒子が沈殿するが、撹拌により容易に再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は18.1重量%、ポリエチレングリコールの濃度は9.1重量%、ポリビニルピロリドンの濃度は3.9重量%、硝酸ナトリウムの濃度は14.5重量%である。
比較例1
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマーを添加することなく、N−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルの共重合を行った。すなわち、撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた2,000mlセパラブルフラスコに、N−ビニルホルムアミド171g(2.4モル)、アクリロニトリル127g(2.4モル)及び水775gを仕込み、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液2.8gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合したところ、ゴム状の塊となったポリマーが得られた。これを、実施例1と同条件で加水分解したが、高粘度のゲル状物となった。
比較例2
実施例8と同様にして、N−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとを、ポリエチレングリコールの存在下に共重合して、白濁した水系分散液を得た。
重合終了後、ポリビニルピロリドンを添加することなく、撹拌を続けながら70℃まで昇温し、35重量%塩酸250g及びメタノール230gを添加し、さらに3時間後に硝酸ナトリウム240gを添加したのち90℃まで昇温したところ、高粘度のゲル状物となった。
比較例3
ビニルピロリドンとビニルアセテートとのコポリマー65gの代わりに、ポリエチレングリコール(平均分子量20,000)300gを添加して、実施例1と同じ操作を繰り返したところ、白濁した水系分散液1,730gが得られた。この水系分散液中のポリマー粒子の粒径は、50〜400μmであり、分散状態としては次第に大きな粒子が沈殿するが、撹拌により再分散した。
この水系分散液に対する、モノマーの仕込み量は17.2重量%、ポリエチレングリコールの濃度は17.3重量%、硝酸ナトリウムの濃度は13.8重量%である。本例においては、実施例3のポリビニルピロリドンと比較して大量のポリエチレングリコールを使用しているが、ビニルアミン系ポリマーの水系分散液はポリマー粒子の粒径の大きいものであった。
比較例4
無機塩を添加することなく、加水分解を行った。すなわち、撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた2,000mlセパラブルフラスコに、N−ビニルホルムアミド171g(2.4モル)、アクリロニトリル127g(2.4モル)、ビニルピロリドンとビニルアセテート(モル分率60:40)とのコポリマー65g及び水950gを仕込み、雰囲気を窒素で置換した。撹拌しつつ60℃に昇温し、2,2'−アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩の10重量%水溶液2.8gを添加し、60℃を保ったまま5時間重合したところ、白濁した水系分散液が得られた。硝酸ナトリウムを添加しない以外は、全て実施例1と同じ操作を繰り返し、加水分解を行ったところ、分散状態にあったポリマー粒子は次第に合着をして、高粘度のゲル状物となった。
実施例1〜8の結果を第1表に、比較例1〜4の結果を第2表に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
【発明の効果】
本発明のビニルアミン系ポリマーの水系分散液は、ビニルアミン系ポリマーが、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩を溶解した水媒体中に分散し、高濃度であっても低粘度であり、ゲル化などを起こすことなく、安定な分散状態を長期間にわたって保つことができる。また、本発明方法によれば、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを水媒体中で重合して水系分散液を形成し、さらに得られた水系分散液の加水分解を行って、ビニルアミン系ポリマーが安定して分散した水系分散液を製造することができる。
Claims (9)
- ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び0.1〜30重量%の硝酸塩を含むことを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液。
- N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマー及び無機塩の存在下に水媒体中で加水分解することを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- N−ビニルカルボン酸アミド又はN−ビニルカルボン酸アミドとこれと共重合し得るモノマーとを、ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーの存在下に水媒体中で重合して得られた水系分散液に、無機塩を添加して加水分解することを特徴とするビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- 加水分解後の水系分散液中におけるビニルピロリドン単位を有するポリマーの濃度が、0.1〜30重量%である請求項2又は3記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- ビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーに加えて、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ビニルアミン系ポリマー、ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの3級塩若しくは4級アンモニウム塩のホモポリマー又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとアクリルアミドとコポリマーからなる水溶性ポリマーを併用する請求項2又は3記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- 加水分解後の水系分散液中におけるビニルピロリドン単位を有する水溶性ポリマーと併用する水溶性ポリマーとの濃度の合計が0.1〜30重量%である請求項5記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーの仕込み量が加水分解後の水系分散液に対して10〜40重量%である請求項2又は3記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- 水系分散液中における無機塩の濃度が、0.1〜30重量%である請求項2記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
- 加水分解に際して、N−ビニルカルボン酸アミド単位を有するポリマーに、炭素数1〜4のアルコールを添加する請求項2記載のビニルアミン系ポリマーの水系分散液の製造方法。
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