JP4123569B2 - 懸垂式昇降装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,基台(例えば移動台車)から懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置に係り,詳しくは,上記昇降部の振れ速度に応じた制振信号に基づいて上記懸垂材を水平方向に位置決めすることにより上記昇降部の制振制御が行われる懸垂式昇降装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば工場内などでは,荷物の搬送装置として,天井近くに配設されたレール上を走行する移動台車から懸垂材によりハンド付昇降部を昇降可能に吊り下げ,上記ハンドにより荷物を把持して搬送する懸垂式昇降装置(いわゆるクレーン)が,近年特に注目されている。このような懸垂式昇降装置の最大の問題点として挙げられるのが,吊り下げられた上記昇降部の揺れである。上記移動台車の停止直後などで上記昇降部が大きく揺れている間は,所定位置に置かれている荷物を正確に把持することができなかったり,或いは把持している荷物を所定位置に正確に載置することができない。しかしながら,昇降部の揺れの自然減衰を待って荷物の把持/載置作業を行っていたのでは,作業効率は極めて悪くなる。そこで,上記昇降部の揺れを積極的に減衰させる制振制御を行うことが有効となる。このような制振制御を行う懸垂式昇降装置が,本出願人によって既に出願されている(特願平10−088743号)。以下,図8及び図9を用いてこの懸垂式昇降装置の一例である搬送装置A0について簡単に説明する。
図8に示すように,搬送装置A0は,天井51に配設されたレール52に沿って移動する移動台車53と,上記移動台車53の下部に取り付けられた位置決めアクチュエータ54及び上板55と,上記上板55から垂下された懸垂材56と,上記懸垂材56の下端部に取り付けられ,荷物Wを把持可能なハンド57aが一体的に取り付けられた昇降部57と,上記昇降部57上から発せられた光を上記上板55側の受光部で受光し,その受光位置に基づいて上記昇降部57の上記移動台車53に対する相対位置を検出する光学式位置検出装置58と,上記光学式位置検出装置58の出力に基づいて上記位置決めアクチュエータ54の動作を制御することによって上記位置決めアクチュエータ54の位置決め及び上記昇降部57の制振制御を行う昇降部位置制御装置60とを具備して構成されている。上記懸垂材56は,例えば上記上板55側に取り付けられた図外の巻き取りドラムにより巻き取り/巻き出しが行われ,これにより上記昇降部57の上昇/下降が行われる。また,上記位置決めアクチュエータ54は,上記上板55を上記移動台車53に対して水平方向及び鉛直軸回りに相対移動させるものであり,上記昇降部位置制御装置60からの推力指令により動作する。
上記昇降部位置制御装置60は,図9に示すように,上記位置決めアクチュエータ54,位置決めコントローラ63,微分器61,及び振れ止め補償部62により構成されている。
上記位置決めコントローラ63は,更に,上記位置決めアクチュエータ54に対する位置指令(位置目標値)と実変位(実位置)との偏差に基づいて速度指令を出力する位置補償部63aと,上記位置補償部63aから出力された上記位置決めアクチュエータ54に対する速度指令と実速度との偏差に基づいて上記位置決めアクチュエータ54に対して推力指令を出力する速度補償部63bと,上記振れ止め補償部62から出力される制振信号を位相反転して上記速度補償部63bから出力された推力指令に加算する加算手段63cとを具備している。
また,上記振れ止め補償部62は,比例要素62aとフィルタ62bとで構成されており,上記光学式位置検出装置58から出力された上記昇降部57の振れ位置(水平方向位置xc,yc,及び鉛直軸回りの回転角θs)を上記微分器61で微分して得られた振れ速度に基づいて制振信号を出力する。尚,上記フィルタ62bは,観測ノイズを除去して上記観測ノイズによるサーボ系の発振を防ぐために設けられたローパスフィルタである。
【0003】
以上のような昇降部位置制御装置60による上記昇降部57に対する位置決め及び制振制御動作について説明する。
上記移動台車53が目的位置に停止すると,上記昇降部位置制御装置60に対して,上記位置決めアクチュエータ54を例えば所定の原点位置(上記移動台車53と上記上板55との相対位置関係から決まる)に制御するための位置指令が与えられる。上記位置指令は,上記位置決めアクチュエータ54の実変位との偏差(位置偏差)がとられ,上記位置補償部63aに入力される。上記位置補償部63aからは,上記位置偏差を0にするような速度指令が出力され,更にこの速度指令は上記位置決めアクチュエータ54の実速度との偏差(速度偏差)がとられ,上記速度補償部63bに入力される。上記速度補償部63bからは,上記速度偏差を0にするような推力指令が出力される。
また,それと同時に,上記振れ止め補償部62には,上記光学式位置検出装置58で得られた上記昇降部57の振れ位置を上記微分器61で微分して得られた振れ速度が入力される。上記振れ止め補償部62では,上記比例要素62aにより上記昇降部57の振れ速度に応じた推力が出力され,更に上記フィルタ62bにより観測ノイズが除去されて制振信号として上記位置決めコントローラ63に対して出力される。
上記振れ止め補償部4から出力された上記制振信号は,上記位置決めコントローラ63において,位相反転した後で上記速度補償部63bから出力された推力指令に加算され,該推力指令は上記位置決めアクチュエータ54に入力される。上記位置決めアクチュエータ54では,入力された推力指令に応じた動作が行われる。
以上の制御により,上記昇降部57に振れがある場合には,上記位置決めアクチュエータ54は,振れの周波数が速度制御周波数に比べて十分低い場合に,等価的に上記昇降部57の振れ速度に比例して変位する。ここで,上板55と昇降部57との間に相対変位が生じると昇降部57にはそれに比例した力が働くため,上記昇降部57には自分自身の振れ速度に比例した力が減衰力として与えられることになり,上記昇降部57の振動は短時間で減衰する。また,上記振れ止め補償部62から出力された上記制振信号は上記速度補償部63bから出力された推力指令に外乱の形で加算されるため,上記位置決めアクチュエータ54は,上記位置補償部63aによる位置制御ループにより,上記昇降部57の振動の減衰と共に正確に目標位置に位置決めされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,上記搬送装置A0においては,上記昇降部57を昇降させることによって上記懸垂材56の吊り長さが変化すると,当然ながら振り子バネの固有振動数が変化し,上記振れ止め補償部62の比例要素62aの最適値も変化する。従って,図10に示す根軌跡より明らかなように,上記比例要素62aの大きさが一定であれば,吊り長さが短くなるに従って制振制御は不安定側に向かう。具体的には,吊り長さが比較的長い場合には,図11(a)に示すように位置決めアクチュエータ54の安定的な動作により昇降部57の振れは安定的に減衰するが,吊り長さが短くなると,図11(b)に示すように位置決めアクチュエータ54の動作は不安定となり,昇降部57の振れの減衰時刻暦も同様に不安定となる。
また,上記搬送装置A0では光学式位置検出装置58を使用しているため,吊り長さが長くなると上記昇降部57上の発光部と上記上板55上の受光部との距離が長くなり,上記受光部の受光量が減少してノイズが多くなり,制振制御に悪影響を及ぼすことが懸念される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,昇降部の吊り長さが変化しても常に安定的な制振制御を行うことが可能な懸垂式昇降装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は,基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され,その懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって,入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと,上記支持部に対する上記昇降部の振れ速度を検出する振れ速度検出手段と,上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償手段と,上記アクチュエータに対し,上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令と上記振れ止め補償手段から出力される上記制振信号とを加算して得られる推力指令を出力することにより上記支持部の位置決め制御を行う位置決めコントローラと,上記昇降部の吊り長さを検出する吊り長さ検出手段と,上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが長くなるほど,上記振れ止め補償手段を構成する比例要素の大きさを大きな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を低い値に設定し,上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが短くなるほど,上記比例要素の大きさを小さな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を高い値に設定する比例要素調整手段及びフィルタ周波数調整手段と,を具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置として構成されている。
このとき,上記比例要素調整手段は,例えば上記昇降部の吊り長さに応じた上記比例要素の最適値を予め記憶した比例要素テーブルに基づいて上記比例要素の調整を行うように構成できる。
更に,上記フィルタ周波数調整手段は,例えば上記昇降部の吊り長さに応じた上記ノイズ除去フィルタの周波数の最適値を予め記憶したフィルタ周波数テーブルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行うように構成できる。或いは,上記フィルタ周波数調整手段を,上記振れ速度検出手段で得られる上記昇降部の振れ速度に含まれるノイズレベルを検出するノイズレベル検出手段で得られたノイズレベルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行うように構成すれば,より正確な調整が可能となる。
尚,上記吊り長さ検出手段は,例えば上記昇降部の昇降制御を行う昇降制御手段の制御量に基づいて上記昇降部の吊り長さを検出するように構成したり,或いは光学式センサにより構成することが可能である。
【0006】
【作用】
本発明に係る懸垂式昇降装置によれば,例えば予め昇降部の吊り長さに応じた比例要素の最適値が記憶された比例要素テーブルを用いて,吊り長さ検出手段で得られた昇降部の吊り長さに応じて,最適な比例要素の大きさが設定され,それに基づいて制振制御が行われる。従って,上記昇降部の吊り長さが変化して振り子バネの固有振動数が変化しても,常に最適な制振制御が可能となる。
更に,例えば予め昇降部の吊り長さに応じたノイズ除去フィルタの周波数の最適値が記憶されたフィルタ周波数テーブルを用いて,吊り長さ検出手段で得られた昇降部の吊り長さに応じて,最適なフィルタ周波数が設定され,それに基づいて制振制御を行うようにすれば,例えば光学式変位センサを使用している場合のように昇降部の吊り長さが長くなるほど光量が減少してノイズが多くなるような場合でも,ノイズの大小に応じた最適なフィルタ周波数を設定でき,常に最適な制振制御が可能となる。尚,フィルタ周波数の最適値は昇降部の吊り長さが長くなるほど低い値に,吊り長さが短くなるほど高い値に設定されるため,固有振動数が低くなるにつれてフィルタ周波数を低く設定することとなり,フィルタ周波数を低く設定することによる制振制御への悪影響は無視できる。
また,上記フィルタ周波数テーブルと吊り長さ検出手段によってフィルタ周波数の設定をする代わりに,昇降部の振れ速度に含まれるノイズレベルを検出するノイズレベル検出手段で得られたノイズレベルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行えば,より正確な調整が可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して,本発明の実施の形態及び実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態及び実施例は本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係る搬送装置A1の概略構成を示す模式図,図2は上記搬送装置A1の昇降部位置制御装置60′の概略構成を示すブロック図,図3は昇降部の吊り長さの長短と,固有振動数,比例要素,ノイズ,フィルタ周波数のそれぞれの関係を示す対応表,図4は上記搬送装置A1による制振制御を行った場合の昇降部の振動減衰時刻暦と位置決めアクチュエータの動作履歴を示すグラフ,図5は光学式位置検出装置58の概略構成を示す模式図,図6は上記光学式位置検出装置58の演算部11及びその関連部分の概略構成を示すブロック図,図7は上記光学式位置検出装置58のタイミング信号発生部16から発せられるスタート信号SSと保持信号SHa,SHb,及び発光制御部7から発せられる点灯信号Ea,Ebの動作タイミングチャートである。
【0008】
本実施の形態に係る搬送装置A1は,本発明に係る懸垂式昇降装置を上記従来の搬送装置A0と同様の形で具現化した一例であり,上記搬送装置A0と共通する要素については同符号を用いて原則として詳細な説明は省略する。
図1及び図2に示すように,本実施の形態に係る搬送装置A1は,昇降部位置制御装置60′内に,昇降部57の吊り長さに応じて比例要素62aの最適値とローパスフィルタ62b(ノイズ除去フィルタの一例)の周波数の最適値とを予め記憶した参照テーブル2(比例要素テーブル,及びフィルタ周波数テーブルの一例)と,光学式位置検出装置58で得られた昇降部57の吊り長さに基づいて上記参照テーブル2から上記比例要素62aの大きさ及び上記ローパスフィルタ62bの周波数の最適値を取り出し,これら最適値により上記比例要素62aと上記ローパスフィルタ62bの調整を行う調整部1(比例要素調整手段,及びフィルタ周波数調整手段の一例)とを具備している。
上記参照テーブル2に記憶される昇降部57の吊り長さに応じた比例要素及びフィルタ周波数の最適値は,図3に示すような関係に基づいて設定される。まず,比例要素については,昇降部57の吊り長さが短くなるほど振り子バネの固有振動数が高くなるため,比例要素の大きさの最適値は昇降部57の吊り長さが短くなるほど小さな値に設定される。尚,比例要素の最適値については根軌跡より求めることができる。また,フィルタ周波数については,昇降部57の吊り長さが長くなるほどノイズが多くなるため,フィルタ周波数の最適値は昇降部57の吊り長さが長くなるほど低い値に,吊り長さが短くなるほど高い値に設定される。尚,このような設定により,固有振動数が低くなるにつれてフィルタ周波数を低く設定することとなるため,フィルタ周波数を低く設定することによる制振制御への悪影響は無視できる。
【0009】
続いて,上記光学式位置検出装置58の概略構成,及び位置検出動作について説明する。
図5に示すように,上記光学式位置検出装置58は,上記昇降部57上に設置される2つの発光ダイオード(以下,LEDという)71a,71b,及びそれら2つのLED71a,71bの発光制御を行う発光制御部75と,上記上板55側に設置され,上記LED71a,71bから発せられた光を集光する集光レンズ72と,上記集光レンズ72で集光された光を受光してその受光位置を検出する半導体位置検出素子(以下,PSDという)73と,上記発光制御部75によって制御される上記LED71a,71bの発光タイミングと上記PSD73による受光位置信号取得のタイミングの同期を図りつつ,上記PSD73で検出された受光位置に基づいて上記昇降部57の上記上板55に対する水平方向位置,鉛直方向位置,及び鉛直軸回りの回転角を演算する演算部74とを具備して構成されている。
【0010】
更に,図6に示すように,上記演算部74は,光スポット位置演算部81と,記憶素子82a,82bと,位置姿勢演算部83と,タイミング信号発生部84とで構成されている。
上記光スポット位置演算部81では,上記PSD73の出力信号に基づいて上記PSD73上の光スポットの座標値が演算され,出力される。上記光スポット位置演算部81で出力された座標値データは,上記LED71aからの光に対応するものが記憶素子82aに,上記LED71bからの光に対応するものが記憶素子82bにそれぞれ記憶される。
上記タイミング信号発生部84は,上記発光制御部75にスタート信号を一定周期で出力するとともに,上記記憶素子82a,82bにデータ保持信号を出力する。これらの動作を図7に示すタイムチャートを用いて説明する。上記タイミング信号発生部84から上記発光制御部75に対してスタート信号SSが出力されると,上記発光制御部75からは上記LED71a,71bをそれぞれ点灯させる点灯信号Ea,Ebが時間をずらして交互に出力され,これに基づいてLED71a,71bが順次点滅する。このとき,上記タイミング信号発生部84では,LED71aが点灯している間に上記記憶素子82aに対して保持データを更新させる保持信号SHaを送出し,LED71bが点灯している間に上記記憶素子82bに対して保持データを更新させる保持信号SHbを送出する。これにより,上記記憶素子82a,82bにはそれぞれ上記LED71a,71bに関する上記PSD73上での光スポット位置の座標値データが順次保持される。尚,上記記憶素子82a,82bにそれぞれ記憶される座標値データは,同じ時刻での上記LED71a,71bそれぞれに関する光スポット位置の座標値データとして用いられるが,上記LED71a,71bの発光時刻には実際にはΔtの差がある。しかしながら,上記LED71a,71bの発光間隔Δtを,上記昇降台57の揺れの周期に対して十分高速(例えば数KHz以上)に設定すれば,上記時間差Δtは無視できる。
上記位置姿勢演算部83では,上記記憶素子82a,82bにそれぞれ記憶された上記LED71a,71bに関する上記PSD73上での光スポット位置の座標値データに基づいて,例えば次式により上記昇降台57の上記上板55に対する水平方向位置xc,yc,鉛直方向位置zc,及び鉛直軸回りの回転角θsが算出される。
【数1】
Figure 0004123569
ここで,(xa ,ya ),(xb ,yb )はそれぞれLED71a,71bの集光スポットの座標値,LsはLED71a,71b間の設置距離,fe は集光レンズ72とPSD73との距離である。
このように,昇降台2上の異なる2つの位置における移動台車1に対するズレ量を用いることにより,昇降台2の鉛直方向位置(吊り長さ)zcが,例えば機械的な誤差の影響を受ける懸垂材56の送り出し量から検出する場合などに比べて高精度で検出できる。
【0011】
以上のようにして上記光学式位置検出装置58で求められた上記昇降台57の水平方向位置xc,yc,及び鉛直軸回りの回転角θsに基づいて,上述した昇降部位置制御装置60による上記昇降台57の制振制御が行われると共に,上記鉛直方向位置zcが昇降部57の吊り長さとして上記調整部1に入力され,比例要素62a及びローパスフィルタ62bの調整に用いられる。
図4に,本搬送装置A1で制振制御を行った結果として得られた昇降部57の変位減衰時刻暦の一例を示す。条件(昇降部の初期変位,吊り長さ,制振制御開始時刻など)は,図11(b)の場合と共通である。従来の搬送装置A0の場合(図11(b))と比べて位置決めアクチュエータ54の動作が安定し,昇降部57の振れも短時間で減衰していることがわかる。
以上説明したように,本搬送装置A1では,上記のような参照テーブル2と光学式位置検出装置58で得られた昇降部57の吊り長さとに基づいて,調整部1により上記比例要素62aと上記ローパスフィルタ62bが常に昇降部57の吊り長さに応じた最適値に設定されるため,昇降部の吊り長さが変化しても常に安定的な制振制御を行うことが可能となる。
【0012】
【実施例】
上記実施の形態において,上記ローパスフィルタ62b,或いは上記調整部1による上記ローパスフィルタ62bの調整は必須ではない。例えばノイズの影響が無視できるような場合や,フィルタ周波数一定で十分な効果が得られる場合には,上記ローパスフィルタ62bを省略したり,或いは上記調整部1による上記ローパスフィルタ62bの調整を省略することもできる。
また,上記実施の形態では,上記調整部1によって比例要素62aの大きさを調整するように構成したが,これは一例に過ぎず,例えば比例要素62aを省略して上記微分器61を調整するようにしてもよい。
また,上記調整部1で用いられる上記昇降部57の吊り長さは,上記のような光学式位置検出装置58で検出することにより極めて高精度で検出できるが,例えば上記昇降部57の昇降を制御する昇降制御手段(不図示)の制御量を用いるなど,他の方法で検出してもよい。
また,図2に示した制御ブロック図についてもあくまでも一例であり,例えば上記位置決めコントローラ63の構成などは適宜偏光可能であることは言うまでもない。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明は,基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され,その懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって,入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと,上記支持部に対する上記昇降部の振れ速度を検出する振れ速度検出手段と,上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償手段と,上記アクチュエータに対し,上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令と上記振れ止め補償手段から出力される上記制振信号とを加算して得られる推力指令を出力することにより上記支持部の位置決め制御を行う位置決めコントローラと,上記昇降部の吊り長さを検出する吊り長さ検出手段と,上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが長くなるほど,上記振れ止め補償手段を構成する比例要素の大きさを大きな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を低い値に設定し,上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが短くなるほど,上記比例要素の大きさを小さな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を高い値に設定する比例要素調整手段及びフィルタ周波数調整手段と,を具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置として構成されているため,昇降部の吊り長さが変化して振り子バネの固有振動数が変化しても常に安定的な制振制御を行うことが可能となる。
更に,特に光学式変位センサを使用しているような場合には,昇降部の吊り長さが長くなるほど光量が減少してノイズが多くなるが,ノイズの大小に応じた最適なフィルタ周波数を設定でき,常に最適な制振制御が可能となる。尚,フィルタ周波数の最適値は昇降部の吊り長さが長くなるほど低い値に,吊り長さが短くなるほど高い値に設定されるため,固有振動数が低くなるにつれてフィルタ周波数を低く設定することとなり,フィルタ周波数を低く設定することによる制振制御への悪影響は無視できる。
このとき,上記フィルタ周波数調整手段は,例えば上記昇降部の吊り長さに応じた上記ノイズ除去フィルタの周波数の最適値を予め記憶したフィルタ周波数テー ブルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行うように構成できるが,上記フィルタ周波数調整手段を,上記振れ速度検出手段で得られる上記昇降部の振れ速度に含まれるノイズレベルを検出するノイズレベル検出手段で得られたノイズレベルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行うように構成すれば,より正確な調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る搬送装置A1の概略構成を示す模式図。
【図2】 上記搬送装置A1の昇降部位置制御装置60′の概略構成を示すブロック図。
【図3】 昇降部の吊り長さの長短と,固有振動数,比例要素,ノイズ,フィルタ周波数のそれぞれの関係を示す対応表。
【図4】 上記搬送装置A1による制振制御を行った場合の昇降部の振動減衰時刻暦と位置決めアクチュエータの動作履歴を示すグラフ。
【図5】 光学式位置検出装置58の概略構成を示す模式図。
【図6】 上記光学式位置検出装置58の演算部11及びその関連部分の概略構成を示すブロック図。
【図7】 上記光学式位置検出装置58のタイミング信号発生部16から発せられるスタート信号SSと保持信号SHa,SHb,及び発光制御部7から発せられる点灯信号Ea,Ebの動作タイミングチャート。
【図8】 従来技術に係る搬送装置A0の概略構成を示す模式図。
【図9】 上記搬送装置A0の昇降部位置制御装置60の概略構成を示すブロック図。
【図10】 昇降部の吊り長さを変化させた場合の根軌跡。
【図11】 上記搬送装置A0による制振制御を行った場合の昇降部の振動減衰時刻暦と位置決めアクチュエータの動作履歴を示すグラフ(吊り長さが長い場合(a)と短い場合(b))。
【符号の説明】
1…調整部(比例要素調整手段,及びフィルタ周波数調整手段の一例)
2…参照テーブル(比例要素テーブル,及びフィルタ周波数テーブルの一例)
53…移動台車(基台の一例)
54…位置決めアクチュエータ(位置決め手段の一例)
56…懸垂材
57…昇降部
58…光学式位置検出装置(吊り長さ検出手段の一例)
62…振れ止め補償部

Claims (6)

  1. 基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され,該懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって,
    入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと,
    上記支持部に対する上記昇降部の振れ速度を検出する振れ速度検出手段と,
    上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償手段と,
    上記アクチュエータに対し,上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令と上記振れ止め補償手段から出力される上記制振信号とを加算して得られる推力指令を出力することにより上記支持部の位置決め制御を行う位置決めコントローラと,
    上記昇降部の吊り長さを検出する吊り長さ検出手段と,
    上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが長くなるほど,上記振れ止め補償手段を構成する比例要素の大きさを大きな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を低い値に設定し,上記吊り長さ検出手段で得られた上記昇降部の吊り長さが短くなるほど,上記比例要素の大きさを小さな値に設定すると共に,上記振れ止め補償手段を構成するノイズ除去フィルタの周波数を高い値に設定する比例要素調整手段及びフィルタ周波数調整手段と,
    を具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置。
  2. 上記昇降部の吊り長さに応じた上記ノイズ除去フィルタの周波数の最適値を予め記憶したフィルタ周波数テーブルを具備し,上記フィルタ周波数調整手段が,上記フィルタ周波数テーブルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行う請求項記載の懸垂式昇降装置。
  3. 上記振れ速度検出手段で得られる上記昇降部の振れ速度に含まれるノイズレベルを検出するノイズレベル検出手段を具備し,
    上記フィルタ周波数調整手段が,上記ノイズレベル検出手段で得られたノイズレベルに基づいて上記フィルタ周波数の調整を行う請求項記載の懸垂式昇降装置。
  4. 上記昇降部の吊り長さに応じた上記比例要素の最適値を予め記憶した比例要素テーブルを具備し,
    上記比例要素調整手段が,上記比例要素テーブルに基づいて上記比例要素の調整を行う請求項1〜のいずれかに記載の懸垂式昇降装置。
  5. 上記吊り長さ検出手段が,上記昇降部の昇降制御を行う昇降制御手段の制御量に基づいて上記昇降部の吊り長さを検出する請求項1〜のいずれかに記載の懸垂式昇降装置。
  6. 上記吊り長さ検出手段が,光学式センサにより構成される請求項1〜のいずれかに記載の懸垂式昇降装置。
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