JP4123570B2 - 懸垂式昇降装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,基台(例えば移動台車)から懸垂材を介して昇降可能に吊り下げられた昇降部を有し,上記昇降部の位置調整のために、上記昇降部の速度を外乱として加えると共に、位置調整開始時に、不要な衝撃が基台や搬送物に与えられるのを防止できるようにした懸垂式昇降装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば工場内などでは,荷物の搬送装置として懸垂式昇降装置(いわゆるクレーン)を搭載した搬送装置が用いられることが多い。このような搬送装置の一例を図4及び図5に示す。
図4に示す搬送装置A0は,天井51に配設されたレール52に沿って移動する移動台車53と,上記移動台車53の下部に取り付けられた位置決めアクチュエータ1及び上板2と,上記上板2から垂下された懸垂材54と,上記懸垂材54の下端部に取り付けられ,荷物59を把持可能なハンド55aが一体的に取り付けられた昇降部55と,該昇降部55に設けられ、上記位置決めアクチュエータ1の位置決め動作を制御することによって上記昇降部55の制振を行う昇降部位置制御装置10(図5参照,詳細は後述する)とを具備して構成されている。上記懸垂材54は,例えば上記上板2側に取り付けられた図外の巻き取り装置により巻き取り/巻き出しが行われ,これにより上記昇降部55の上昇/下降が行われる。上記位置決めアクチュエータ1は,上記上板2を上記移動台車53に対して上記レール52と直角な水平方向に相対移動させるものであり,上記昇降部位置制御装置10からの推力指令により動作する。上記位置決めアクチュエータ1の実位置(実移動量)及び実速度は該位置決めアクチュエータ1に設けられた図外のセンサにより検出される。また、上記昇降部55の振れ速度は、該昇降部55に設けた速度センサ3により検出される。 続いて,上記昇降部位置制御装置10の構成及び制御動作について,図5に示す制御ブロック図を用いて説明する。
上記昇降部位置制御装置10は,図5に示すように,上記位置決めアクチュエータ1に対する位置指令(位置目標値)と実変位(実位置)との偏差に基づいて位置補償部11により速度指令を出力する位置制御ループと,上記位置補償部11から出力された上記位置決めアクチュエータ1に対する速度指令と実速度との偏差に基づいて速度補償部12により上記位置決めアクチュエータ1に対して推力指令を出力する速度制御ループと,上記速度センサ3で検出された昇降部55の振れ速度に基づいて上記位置決めアクチュエータ1に対する制振信号を出力し,上記制振信号を位相反転した後に上記速度補償部12から出力された推力指令に加算する振れ止め補償部4とで構成されている。
上記振れ止め補償部4は,比例要素4aとフィルタ4bとで構成されている。上記比例要素4aは上記昇降部55の停止高さに応じて設定されている。また,上記フィルタ4bは,観測ノイズを除去して上記観測ノイズによるサーボ系の発振を防ぐために設けられたローパスフィルタである。尚、上記振れ止め補償部4からの信号経路には、制振許可信号により閉じるスイッチSWが設けられている。上記スイッチSWは、昇降部55を下降させ始める時に出される制振許可信号により閉じられ、制振制御が開始される。
【0003】
以上のような昇降部位置制御装置10では、上記移動台車53が目的位置に停止すると,上記昇降部位置制御装置10に対して,上記位置決めアクチュエータ1を例えば所定の原点位置(上記移動台車53と上記上板2との相対位置関係から決まる)に制御するための位置指令と、上記スイッチSWに対する制振許可信号が与えられる。上記位置指令は,上記位置決めアクチュエータ1の実変位との偏差(位置偏差)がとられ,上記位置補償部11に入力される。上記位置補償部11からは,上記位置偏差を0にするような速度指令が出力され,更に上記速度指令は上記位置決めアクチュエータ1の実速度との偏差(速度偏差)がとられ,上記速度補償部12に入力される。上記速度補償部12からは,上記速度偏差を0にするような推力指令が出力される。
また,それと同時に,上記振れ止め補償部4には,速度センサ3からの振れ速度が入力される。上記振れ止め補償部4では,上記比例要素4aにより上記昇降部55の振れ速度に応じた推力が出力され,更に上記フィルタ4bを介して制振信号として出力される。上記振れ止め補償部4から出力された上記制振信号は,位相反転した後で上記速度補償部12から出力された推力指令に加算され,該推力指令は上記位置決めアクチュエータ1に入力され,所定の動作が行われる。 以上の制御により,上記昇降部55に振れがある場合には,上記位置決めアクチュエータ1は,振れの周波数が速度制御周波数に比べて十分低い場合に,等価的に上記昇降部55の振れ速度に比例して変位する。ここで,上板2と昇降部55との間に相対変位が生じると昇降部55にはそれに比例した力が働くため,上記昇降部55には自分自身の振れ速度に比例した力が減衰力として与えられることになり,上記昇降部55の振動は短時間で減衰する。また,上記振れ止め補償部4から出力された上記制振信号は上記速度補償部12から出力された推力指令に外乱の形で加算されるため,上記位置決めアクチュエータ1は,上記位置制御ループにより,上記昇降部55の振動の減衰と共に正確に目標位置に位置決めされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の懸垂式昇降装置では、前記したように、荷降ろしする位置に到着した時点で、昇降部55の下降を開始すると共に、 通常はそれと同時にスイッチSWを閉じて上記昇降部の速度外乱を導入することによる制振動作を開始するが、この制振信号は前記のように速度センサ3からの昇降部55の速度信号に基づくものであるため、昇降部55が早い速度で振れている時には制振信号も大きくなり、突然大きい外乱が速度補償部12からの信号に加えられたのと同じ状態となり、昇降部55や、そこから釣り下げた荷物に過大な衝撃が加えられ、荷物に被害をもたらす危険性がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記したような従来技術の問題点を解決する事を目的としてなされたもので、請求項1記載の発明は、その要旨とするところが、レールに沿って移動する基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され、該懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって、入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと、上記アクチュエータに対し、上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令を出力して上記懸垂材の位置を調整する事により上記昇降部の位置決めを行う位置決め制御装置と、上記昇降部の振れ速度を検出する速度センサと、上記速度センサで検出された上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償部と、上記基台が停止した後,上記昇降部が振れの端部に到着して該昇降部の速度が0になってから、上記振れ止め補償部から出力される上記制振信号を上記推力指令に加算する位置決めコントローラとを具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置として構成されている
【0006】
【実施の形態】
続いて本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。ここに図1は、本発明の一実施の形態に用いる懸垂式昇降装置のハード構成の概念を示す概念図、図2は、同懸垂式昇降装置の制御ハードブロック図、図3は、同実施形態における効果を示すグラフである。
この実施形態が前記従来技術に示した懸垂式昇降装置と異なるところは、図1及び図2に示すように、速度センサ3からの振れ速度信号が、所定の小さい値、特に有利な値の一例としては、0になった事を検出するゼロ検出部13が、上記速度センサ3の出力部に接続され、該ゼロ検出部13の出力部に、ゼロ検出信号が入力された時に制振許可信号を出力するフリップフロップ回路14が接続され、更にこのフリップフロップ回路14が前記スイッチSWを駆動するように構成されている点である。
移動台車53がレール52に沿って走行し、所定の荷降ろし位置に来ると、移動台車53が停止すると共に制振許可信号がフリップフロップ回路14に入力される。しかしながら、上記の構成により、フリップフロップ回路14は、ゼロ検出部13が速度センサ3からの昇降部55の振れ速度が0である事を検出してゼロ速度信号をフリップフロップ回路14に出力するまで、スイッチSWの駆動信号を出力しない。従って昇降部55が振れの端部に到着してその速度が0になって始めてスイッチSWが閉じられ、制振動作が開始される。上記制振信号は前記した位置フィードバックループ及び速度フィードバックループに対して外乱として作用するので、突然伝達された制振信号が大きい値である場合には、位置決めアクチュエータ1に衝撃を与えるが、この実施形態のように制振信号が0から始まるように構成されている場合には、位置決めアクチュエータ1には衝撃は加わらず、従って荷物にも衝撃が加わる事が無い。
図3(a),(b),(c)は、それぞれ昇降部55の速度が0の時、最大速度の2分の1の時、及び最大速度の時に制振動作を開始した時の位置決めアクチュエータ1に生じる加速度、即ち衝撃力を測定したものである。これらのグラフから明らかなように、昇降部55の速度が小さい時に制振動作を開始する程、位置決めアクチュエータ1に生じる衝撃は小さなものになる事が明瞭に理解される。
【0007】
【実施例】
上の実施形態では、速度センサ3が昇降部55に設けられているが、例えば位置決めアクチュエータ1の下部に設けた上板2に設けた受光部57によって、昇降部55の上部に設けた投光部56からの光線を検出し、該光線の変位から昇降部55の速度を検出するようにしてもよい。
【0008】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、レールに沿って移動する基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され、該懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって、入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと、上記アクチュエータに対し、上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令を出力して上記懸垂材の位置を調整する事により上記昇降部の位置決めを行う位置決め制御装置と、上記昇降部の振れ速度を検出する速度センサと、上記速度センサで検出された上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償部と、上記基台が停止した後,上記昇降部が振れの端部に到着して該昇降部の速度が0になってから、上記振れ止め補償部から出力される上記制振信号を上記推力指令に加算する位置決めコントローラとを具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置であるから、制振動作を開始した時点における位置決め手段に生じる衝撃を小さく出来、荷物の振れを少なく出来、そのショックを最も小さくする事ができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る懸垂式昇降装置の概略構成を示す模式図。
【図2】 上記懸垂式昇降装置の制御回路の一部の変形例ブロック図。
【図3】 上記実施の形態にかかる懸垂式昇降装置の効果を示すグラフ。
【図4】 従来の懸垂式昇降装置A0の概略構成を示す模式図。
【図5】 従来の懸垂式昇降装置A0の制御回路の概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1…位置決めアクチュエータ
4…振れ止め補償部
4a…比例要素
4b…フィルタ
10…昇降部位置制御装置
11…位置補償部
12…速度補償部
13…ゼロ検出部
14…フリップフロップ回路

Claims (1)

  1. レールに沿って移動する基台に取り付けられた支持部から懸垂材が垂下され、該懸垂材により昇降部を昇降可能に吊り下げた懸垂式昇降装置であって、
    入力された推力指令に応じて上記支持部を上記基台に対して水平方向に相対移動させるアクチュエータと、
    上記アクチュエータに対し、上記支持部の変位及び速度に応じた推力指令を出力して上記懸垂材の位置を調整する事により上記昇降部の位置決めを行う位置決め制御装置と、
    上記昇降部の振れ速度を検出する速度センサと、
    上記速度センサで検出された上記振れ速度に応じた制振信号を出力する振れ止め補償部と、
    上記基台が停止した後,上記昇降部が振れの端部に到着して該昇降部の速度が0になってから、上記振れ止め補償部から出力される上記制振信号を上記推力指令に加算する位置決めコントローラと、
    を具備してなることを特徴とする懸垂式昇降装置。
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