JP4123465B2 - オレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
オレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体を製造するためのオレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、オレフィン重合体は、チタン化合物と有機アルミニウム化合物からなるチーグラー・ナッタ触媒により重合されている。例えば、オレフィン重合体の一つであるポリプロピレンの製造では、主に、チタン、マグネシウム、塩素及び電子供与性化合物からなる固体触媒成分、助触媒成分としての有機アルミニウム化合物、及び立体規則性向上剤としてのアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物を含む触媒を用いることにより、アイソタクチックポリプロピレンを得ているが、現在、重合時の触媒活性の向上、オレフィン重合体の立体規則性の向上、オレフィン重合体を安定生産するための重合体パウダー形態の改良、及びポリマー中の残留Clの低減等が図られている。
【0003】
ここで、ポリマー中の残留Clが多いと、例えば、射出成型における金型の腐食を引き起こしたり、二軸延伸フィルムや紡糸の際に吸湿して発泡したり、添加剤を含有する異物ができたりして高速成型を困難とするため、上記▲4▼ポリマー中の残留Clを低減することは大きな課題である。
【0004】
さらに、▲4▼ポリマー中の残留Clの課題を解決する手法として、第一に触媒の活性向上させる方法、第二にシリカ等の無機物にマグネシウム化合物を担持させて触媒中の塩化マグネシウム組成、即ちCl組成を実質低減させる方法が一般に行われている。
【0005】
例えば、シリカ、ブチルオクチルマグネシウム、塩化水素ガスを接触させて塩化マグネシウム担持・シリカ担体を生成させ、これをアルコール処理した後に四塩化チタンと電子供与体化合物を担持させる方法(特開昭63−280707号公報)や、シリカ、ブチルオクチルマグネシウムを接触させたものに四塩化ケイ素と三塩化シランの混合物を接触させた後に不活性溶媒で洗浄して塩化マグネシウム担持・シリカ担体を得て、これをアルコール処理した後に四塩化チタンと電子供与体化合物を担持させる方法(特表平4−506833号公報)が知られており、知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法で得られるオレフィン重合体は、一定の性能を有しているものの、特に重合活性、立体規則性、残留Cl等の点で十分に満足しうるものではなかった。
【0007】
本発明は、極めて高活性であり、重合活性が高く、得られる重合体の立体規則性、残留Cl、及びパウダー形態にも優れたオレフィン重合体が得られるオレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合体製造用触媒及びオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法により、固体触媒成分中のアルコキシ基残量を著しく低減させた事を特徴とするオレフィン重合体製造用固体触媒成分が得られ、これにより前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記化合物(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を反応させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分であって、下記化合物(a)に対して水酸基/マグネシウムのモル比が1.0以上で下記化合物(b)を反応させた後、下記化合物(a)に対してハロゲン/マグネシウムのモル比が0.20以上で下記化合物(c)を反応させ、下記化合物(a)、(b)及び(c)の反応物と下記化合物(d)及び下記化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で反応させ、不活性溶媒で洗浄した後、再度、化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で反応させ、不活性溶媒で洗浄して得られるオレフィン重合用固体触媒成分が提供される。
(a)アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素から選択される1種以上の元素の酸化物
(b)アルコール
(c)ハロゲン含有ケイ素化合物
(d)電子供与性化合物
(e)ハロゲン含有チタン化合物
【0010】
このように調製することにより、重合活性が高く、残留Cl量の少ない、立体規則性及びパウダー形態に優れたオレフィン重合体が得られる固体触媒成分を得ることができる。
【0011】
特に、水酸基/マグネシウムのモル比を1.0以上にすることにより、II〜IV族元素の酸化物に担持されたハロゲン含有マグネシウム化合物の結晶性を低下させ、有効な活性種を担持させるための担体の製造が可能となる。
また、ハロゲン/マグネシウムのモル比を0.20以上にすることにより、II〜IV族元素の酸化物に担持されたハロゲン含有マグネシウム化合物と錯化あるいは反応したアルコール成分を固体表面から効率よく抽出することができる。
【0012】
このような調製方法により、化合物(a)と化合物(b)の反応生成物に含まれるアルコールまたはアルコキシ基と、化合物(c)、(e)の反応が促進され、マグネシウム化合物に直接付与したアルコキシ基が低減すると共に、副生するアルコキシチタン等が固体表面から抽出され易くなると考えられる。
ここで、再度とは、1回以上を意味する。即ち、化合物(a)〜(e)を反応させた後に、この反応生成物と化合物(e)をさらに1回以上(例えば、1回、2回等)反応させてもよい。
【0013】
また、一回目の前記化合物(a)〜(e)の反応後の不活性溶媒による洗浄温度が100℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0014】
また、チタン担持量(Ti)に対するアルコキシ基残量(RO)のモル比(RO/Ti)が0.60以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の別の態様は、下記化合物(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を反応させて得られ、チタン担持量(Ti)に対するアルコキシ基残量(RO)のモル比(RO/Ti)が0.60以下であるオレフィン重合用固体触媒成分である。
(a)アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素から選択される1種以上の元素の酸化物
(b)アルコール
(c)ハロゲン含有ケイ素化合物
(d)電子供与性化合物
(e)ハロゲン含有チタン化合物
【0016】
モル比(RO/Ti)を0.60以下にすることにより、重合活性が高く、残留Cl量の少ない、立体規則性及びパウダー形態に優れたオレフィン重合体が得られる固体触媒成分を得ることができる。
【0017】
また、アルコール(b)がエタノールであることが好ましい。
【0018】
また、ハロゲン含有ケイ素化合物(c)が四塩化ケイ素であることが好ましい。
四塩化ケイ素を用いることにより、化合物(a)と化合物(b)の反応生成物の四塩化ケイ素によるハロゲン化・脱アルコキシ反応の速度及び反応率が充分に制御できると考えられる。
【0019】
さらに、モル比(RO/Ti)が0.45以下であることが好ましい。
アルコキシ基残量(RO)が0.40ミリモル/g以下であることが好ましい。
チタン担持量が1.0重量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、下記成分[A]、[B]又は下記成分[A]、[B]、[C]を含むオレフィン重合用触媒である。
[A]上記のオレフィン重合用固体触媒成分
[B]有機アルミニウム化合物
[C]電子供与性化合物
このように触媒を構成することにより、重合活性が高く、残留Clの少ない、立体規則性及びパウダー形態に優れたオレフィン重合体を得ることができる。
また、電子供与性化合物[C]は必要に応じて含むが、この化合物を含むことにより、オレフィン重合体立体規則性及び重合活性を向上できる場合がある。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、上記のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各触媒成分、製造方法、重合方法等について説明する。以下に示すのは好適例であり、本発明は特許請求の範囲の要件を満たす限りそれらに限定されない。
1.触媒成分
[A]オレフィン重合用固体触媒成分
【0023】
(a)アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素の酸化物
II〜IV族元素の酸化物としては、これらの元素を少なくとも1種以上含む固体状酸化物及び固体状複合無機酸化物が挙げられる。II〜IV族元素としては、Mg、Ca、B、Al、Si、Snが好ましく、Al、Siがより好ましく、Siが特に好ましい。
固体状酸化物としては、例えば、MgO,CaO,B2O3,SiO2,SnO2,Al2O3等が挙げられる。
また、固体状複合無機酸化物としては、例えば、SiO2−Al2O3,SiO2−MgO,SiO2−TiO2,SiO2−V2O5,SiO2−Cr2O3,SiO2−TiO2−MgO等が挙げられる。
これらの各種固体状酸化物及び固体状複合無機酸化物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上の固体状酸化物又は固体状複合無機酸化物を同時に併用してもよい。また、固体状酸化物と固体状複合無機酸化物とを同時に併用してもよい。
【0024】
これらの固体状酸化物成分は、触媒担体の基本的要素となるから、担体としての特性面から規定するとすれば、平均粒径D50が0.1〜1000μm、特に5〜100μm、比表面積が10〜1000m2/g、特に100〜800m2/g、細孔容積が0.1〜5cm3/g、特に1〜2.5cm3/gの範囲にあるものが望ましい。ここで、平均粒径(D50)は、重量累積分率が50%に対応する粒子径と定義される。即ち、D50で表される粒子径より小さい粒子群の重量和が全粒子総重量和の50%であることを示している。
尚、固体状酸化物成分の中では、上記特性を備えることが可能なSiO2が特に好ましい。
【0025】
アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等のマグネシウムジハライド、ブトキシマグネシウムクロリド、シクロヘキシロキシマグネシウムクロリド、フェノキシマグネシウムクロリド、エトキシマグネシウムクロリド、エトキシマグネシウムブロミド、ブトキシマグネシウムブロミド、エトキシマグネシウムイオダイド等のアルコキシマグネシウムハライド、アリロキシマグネシウムハライド、ブチルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムイオダイド等のアルキルマグネシウムハライド、アリルマグネシウムハライド等が挙げられ、これらのハロゲン含有マグネシウム化合物の中でも、触媒性能の面から、塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0026】
アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物の組成としては特に限定されないが、マグネシウム/酸化物(a)の重量比で、通常、0.1〜20wt%、好ましくは1〜15wt%、特に好ましくは4〜12wt%であることが活性等の点で望ましい。
【0027】
アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を上記酸化物に担持させる方法としては、固体状酸化物と直接、マグネシウムジハライド、アルコキシマグネシウムハライド、アリロキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムハライド、アリルマグネシウムハライドを接触させる方法や、固体状酸化物とジアルキルマグネシウムやジアルコキシマグネシウムをいったん接触させてから塩化水素等のハロゲン化剤を接触させ、部分的あるいは完全にハロゲン化する方法等を用いることができる。
【0028】
(b)アルコール
アルコールは、炭素数1〜8の低級アルコールを用いることが好ましい。特にエタノールを用いると、触媒性能の発現を著しく向上させる固体生成物が得られるので好ましい。アルコールの純度及び含水量も特に限定されないが、含水量の多いアルコールを用いると、活性等の性能が低下するため、含水量が1%以下、特に2,000ppm以下のアルコールを用いることが好ましい。さらに、より良好な触媒性能を得るためには、水分が少なければ少ないほど好ましく、一般的には200ppm以下が望ましい。
【0029】
(c)ハロゲン含有ケイ素化合物
ハロゲン含有ケイ素化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物を用いることができる。
Si(OR1)rX1 4-r ・・・(I)
【0030】
ハロゲン含有ケイ素化合物(c)を用いることにより、重合時の触媒活性、立体規則性の向上及びオレフィン重合体中に含まれる微粉量を低減することができる場合がある。
【0031】
上記一般式(I)において、X1はハロゲン原子を示し、これらの中で塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。R1は炭化水素基であって、飽和基や不飽和基であってもよく、直鎖状のものや分岐鎖を有するもの、あるいは環状のものであってもよく、さらにはイオウ、窒素、酸素、ケイ素、リン等のヘテロ原子を含むものであってもよい。このうち、炭素数1〜10の炭化水素基、特にアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基及びアラルキル基等が好ましい。OR1が複数存在する場合には、それらは互いに同じでも異なってもよい。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、アリル基、ブテニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。rは0〜3の整数を示す。
【0032】
上記一般式(I)で示されるハロゲン含有ケイ素化合物の具体例としては、四塩化ケイ素、メトキシトリクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン等が挙げられる。これらの中で特に四塩化ケイ素が好ましい。これらのハロゲン含有ケイ素化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(d)電子供与性化合物
電子供与性化合物としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、マロン酸、有機酸又は無機酸のエステル類、モノエーテル、ジエーテル又はポリエーテル等のエーテル類等の含酸素化合物や、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート等の含窒素化合物が挙げられる。これらの中では、多価カルボン酸のエステル類が好ましく、さらに好ましくは、芳香族多価カルボン酸のエステル類である。このうち、重合時の触媒活性の面から、特に芳香族ジカルボン酸のモノエステル及び/又はジエステルが好ましい。また、エステル部の有機基が直鎖、分岐又は環状の脂肪族炭化水素が好ましい。
【0034】
具体的には、フタル酸、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、インダン−4,5−ジカルボン酸、インダン−5,6−ジカルボン酸等のジカルボン酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル等のジアルキルエステルが挙げられる。これらの中では、フタル酸ジエステル類が好ましく、特にエステル部の有機基の炭素数が4個以上の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素が好ましい。この具体例としては、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。また、これらの化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(e)ハロゲン含有チタン化合物
ハロゲン含有チタン化合物としては、下記一般式(II)で表される化合物を好ましく用いることができる。
TiX2 p(OR2)4-p ・・・(II)
【0036】
上記一般式(II)において、X2はハロゲン原子を示し、その中でも塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。R2は炭化水素基であって、飽和基や不飽和基であってもよく、直鎖状のものや分岐鎖を有するもの、あるいは環状のものであってもよく、さらにはイオウ、窒素、酸素、ケイ素、リン等のヘテロ原子を含むものであってもよい。このうち炭素数1〜10の炭化水素基、特にアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基及びアラルキル基等が好ましく、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が特に好ましい。OR2が複数存在する場合には、それらは互いに同じでも異なってもよい。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、アリル基、ブテニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。pは1〜4の整数を示す。
【0037】
上記一般式(II)で示されるハロゲン含有チタン化合物の具体例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のテトラハロゲン化チタン;メトキシチタントリクロリド、エトキシチタントリクロリド、プロポキシチタントリクロリド、n−ブトキシチタントリクロリド、エトキシチタントリブロミド等のトリハロゲン化アルコキシチタン;ジメトキシチタンジクロリド、ジエトキシチタンジクロリド、ジイソプロポキシチタンジクロリド、ジ−n−プロポキシチタンジクロリド、ジエトキシチタンジブロミド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン;トリメトキシチタンクロリド、トリエトキシチタンクロリド、トリイソプロポキシチタンクロリド、トリ−n−プロポキシチタンクロリド、トリ−n−ブトキシチタンクロリド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン等が挙げられる。これらの中で、重合活性の面から、高ハロゲン含有チタン化合物、特に四塩化チタンが好ましい。これらのハロゲン含有チタン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
[B]有機アルミニウム化合物
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物[B]としては、特に制限はないが、アルキル基、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基を有するもの、アルミノキサン及びそれらの混合物を好ましく用いることができる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソプロピルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、ジオクチルアルミニウムモノクロリド等のジアルキルアルミニウムモノクロリド;エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミノキサン等の鎖状アルミノキサン等が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物の中では、炭素数1〜5の低級アルキル基を有するトリアルキルアルミニウム、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらの有機アルミニウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
[C]電子供与性化合物
本発明のオレフィン重合用触媒には、必要に応じて電子供与性化合物[C]が用いられる。このような電子供与性化合物[C]としては、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物及び酸素含有化合物を用いることができる。このうち、特にアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0040】
アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルイソプロピルジメトキシシラン、プロピルイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソブチルジメトキシシラン、t−ブチル(s−ブチル)ジメトキシシラン、t−ブチルアミルジメトキシシラン、t−ブチルヘキシルジメトキシシラン、t−ブチルヘプチルジメトキシシラン、t−ブチルオクチルジメトキシシラン、t−ブチルノニルジメトキシシラン、t−ブチルデシルジメトキシシラン、t−ブチル(3,3,3−トリフルオロメチルプロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルプロピルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシル−t−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルプロピルジメトキシシラン、シクロペンチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(2−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、α−ナフチル−1,1,2−トリメチルプロピルジメトキシシラン、n−テトラデカニル−1,1,2−トリメチルプロピルジメキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルメチルジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルエチルジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルイソプロピルジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルシクロペンチルジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルシクロヘキシルジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルミリスチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、アミルトリメトキシシラン、イソアミルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ノルボルナントリメトキシシラン、インデニルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、メチルシクロペンチル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、イソプロピル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、t−ブチル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、(イソブトキシ)ジメトキシシラン、t−ブチル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルトリメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピルイソプロポキシジメトキシシラン、1,1,2−トリメチルプロピル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフェノキシシラン、メチルトリアリロキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリスアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、このような有機ケイ素化合物としては、Si−O−C結合を有しないケイ素化合物とO−C結合を有する有機化合物を予め反応させるか、α−オレフィンの重合の際に反応させて得られる化合物も挙げることができる。具体的には、四塩化ケイ素とアルコールとを反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0042】
窒素含有化合物の具体例としては、2,6−ジイソプロピルピペリジン、2,6−ジイソプロピル−4−メチルピペリジン、N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の2,6−置換ピペリジン類;2,5−ジイソプロピルアゾリジン、N−メチル2,2,5,5−テトラメチルアゾリジン等の2,5−置換アゾリジン類;N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミン等の置換メチレンジアミン類;1,3−ジベンジルイミダゾリジン、1,3−ジベンジル−2−フェニルイミダゾリジン等の置換イミダゾリジン類等が挙げられる。
【0043】
リン含有化合物の具体例としては、トリエチルホスファイト、トリn−プロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリイソブチルホスファイト、ジエチルn−ブチルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類等が挙げられる。
【0044】
酸素含有化合物の具体例としては、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン、2,2,5,5−テトラエチルテトラヒドロフラン等の2,5−置換テトラヒドロフラン類;1,1−ジメトキシ−2,3,4,5−テトラクロロシクロペンタジエン、9,9−ジメトキシフルオレン、ジフェニルジメトキシメタン等のジメトキシメタン誘導体等が挙げられる。
【0045】
2.[A]固体触媒成分の調製方法
固体触媒成分[A]の調製方法としては、上記のアルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素の酸化物(a)と、特定量のアルコール(b)を接触・反応させた後、特定量のハロゲン含有ケイ素化合物(c)と接触・反応させ、これらと電子供与性化合物(d)及びハロゲン含有チタン化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で反応させ、不活性溶媒を用いて洗浄した後、再度(1回以上)、ハロゲン含有チタン化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で接触・反応させればよく、その他の接触順序については特に問わない。
【0046】
しかし、化合物(a)〜(c)を接触させたものにハロゲン含有チタン化合物(e)を接触させた後、電子供与性化合物(d)を接触させると、重合活性が高くなる場合があることから好ましい。
【0047】
また、これらの各成分は、炭化水素等の不活性溶媒の存在下で接触させてもよいし、予め炭化水素等の不活性溶媒で各成分を希釈して接触させてもよい。この不活性溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、及びクロルベンゼン、テトラクロロエタン、クロロフルオロ炭素類等のハロゲン化炭化水素又はこれらの混合物が挙げられる。これらの中では、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素が特に好ましく使用される。
【0048】
ここで、ハロゲン含有チタン化合物(e)は、上記のハロゲン含有マグネシウム化合物のマグネシウム1モルに対して、通常、0.5〜100モル、好ましくは、1〜50モル使用する。このモル比が前記範囲を逸脱すると触媒活性が不十分となることがある。
【0049】
また、電子供与性化合物(d)は、上記のハロゲン含有マグネシウム化合物のマグネシウム1モルに対して、通常、0.01〜10モル、好ましくは、0.05〜1.0モル使用する。このモル比が前記範囲を逸脱すると触媒活性や立体規則性が不十分となることがある。
【0050】
また、ハロゲン含有ケイ素化合物(c)は、上記のハロゲン含有マグネシウム化合物に対してハロゲン/マグネシウムのモル比で0.20以上、好ましくは0.4〜4.0、さらに好ましくは1.0〜2.5となる量を使用する。この量が前記範囲よりも少なすぎると触媒活性、立体規則性の向上効果が十分に発揮されず、生成ポリマーの微粉量の増加、嵩密度の低下を伴い、多すぎてもこれら改良効果が大きくなることはない。
【0051】
さらに、アルコール(b)は、上記のハロゲン含有マグネシウム化合物に対して水酸基/マグネシウムのモル比で1以上、好ましくは2〜5、さらに好ましくは2.5〜4となる量を使用する。この量が前記範囲よりも少なすぎると触媒活性、立体規則性の向上効果が十分に発揮されず、多すぎてもこれら改良効果は変わらない。
【0052】
上記の化合物(a)〜(e)の接触反応は、これらを全て加えた後、好ましくは120〜150℃、特に好ましくは125〜140℃の温度範囲で行う。この接触温度が前記範囲外では、触媒活性や立体規則性の向上効果が十分に発揮されない場合がある。また、接触は、通常、1分〜24時間、好ましくは、10分〜6時間行われる。このときの圧力は、溶媒を使用する場合は、その種類、接触温度等により変化するが、通常、常圧〜5MPa、好ましくは常圧〜1MPaの範囲で行う。また、接触操作中は、接触の均一性及び接触効率の面から攪拌を行うことが好ましい。尚、これらの接触条件は、2回目以降のハロゲン含有チタン化合物(e)の接触反応についても同様である。
【0053】
ハロゲン含有チタン化合物(e)の接触操作において、溶媒を使用するときは、ハロゲン含有チタン化合物(e)1モルに対して、通常、5,000ミリリットル以下、好ましくは、10〜1,000ミリリットルの溶媒を使用する。この比が前記範囲を逸脱すると接触の均一性や接触効率が悪化することがある。
【0054】
さらに、1回目のハロゲン含有チタン化合物(e)の接触・反応後、100〜150℃、特に好ましくは120〜140℃の温度で不活性溶媒で洗浄することが望ましい場合もある。この洗浄温度が上記範囲外では、触媒活性や立体規則性の向上効果が十分に発揮されない場合がある。この不活性溶媒としては、例えば、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、テトラクロロエタン、クロロフルオロ炭素類等のハロゲン化炭化水素又はこれらの混合物が挙げられる。これらの中では、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく使用される。
【0055】
尚、2回目以降のハロゲン含有チタン化合物(e)の接触・反応後の洗浄温度については、立体規則性の面から100〜150℃、特に好ましくは120〜140℃の温度で不活性溶媒で洗浄した方がよい場合もある。
【0056】
洗浄方法としては、デカンテーション、濾過等の方式が好ましい。不活性溶媒の使用量、洗浄時間、洗浄回数についても特に制限はないが、マグネシウム化合物1モルに対して、通常、100〜100,000ミリリットル、好ましくは、500〜50,000ミリリットルの溶媒を使用し、通常、1分〜24時間、好ましくは、10分〜6時間行われる。この比が前記範囲を逸脱すると洗浄が不完全になることがある。
【0057】
このときの圧力は、溶媒の種類、洗浄温度等により変化するが、通常、常圧〜5MPa、好ましくは、常圧〜1MPaの範囲で行う。また、洗浄操作中は、洗浄の均一性及び洗浄効率の面から攪拌を行うことが好ましい。尚、得られた固体触媒成分は、乾燥状態又は炭化水素等の不活性溶媒中で保存することもできる。
【0058】
このようにして得られた固体触媒成分[A]は、チタン担持量に対するアルコキシ基残量のモル比が0.60以下であることが好ましい。モル比が0.60を超えると、目的とする触媒が得られない場合があるためである。
また、モル比を0.45以下とするのがより好ましく、0.35以下とするのがさらに好ましい。
【0059】
また、アルコキシ基残量(RO)は、0.40ミリモル/g以下であることが好ましい。この理由はアルコキシ基残量が0.40ミリモル/gを超えると、重合活性が低く、触媒コストの増大やパウダー中のCl等の触媒残査が増大して品質を低下させる場合があるためである。
また、アルコキシ基残量を0.25ミリモル/g以下とするのがより好ましく、0.15ミリモル/g以下とするのがさらに好ましい。
アルコキシ基残量は、特定の反応条件下で触媒調製することにより、コントロールできる。このとき、特に各ケミカルの接触順序、化合物(c)の使用量、化合物(e)の反応温度が重要である。
【0060】
また、チタン担持量は、1.0重量%以上であることが好ましい。この理由はチタン担持量が1.0重量%未満になると、チタン当たりの活性が高くても(RO/Tiが低くても)、触媒当たりの活性が低くなる場合があるためである。
また、チタン担持量を1.2重量%以上とするのがより好ましく、1.5重量%以上とするのがさらに好ましい。
チタン担持量は、特定組成の(a)成分を選定したり、特定の反応条件下で触媒調製することにより、コントロールできる。このとき、(a)成分では、酸化物の組成、マグネシウム化合物の量等が重要と考えられる。また、反応条件では、特に化合物(e)の反応温度、化合物(e)の反応後の洗浄温度が重要である。
【0061】
3.オレフィン重合体の製造方法
本発明のオレフィン重合用触媒の各成分の使用量については、特に制限はないが、固体触媒成分[A]は、チタン原子に換算して、反応容積1リットル当たり、通常0.00005〜1ミリモルの範囲になるような量が用いられる。
【0062】
有機アルミニウム化合物[B]は、アルミニウム/チタン原子比が、通常1〜1,000、好ましくは10〜500の範囲になるような量が用いられる。この原子比が前記範囲を逸脱すると、触媒活性が不十分となることがある。
【0063】
また、電子供与性化合物[C]を用いるときは、[C]/[B](モル比)が、通常0.001〜5.0、好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.05〜1.0の範囲になるような量が用いられる。このモル比が前記範囲を逸脱すると、十分な触媒活性及び立体規則性が得られないことがある。ただし、予備重合を行う場合は、電子供与性化合物[C]の使用量をさらに低減することができる。
【0064】
本発明に用いられるオレフィンとしては、一般式(III)で表されるα−オレフインが好ましい。
R3−CH=CH2 ・・・(III)
【0065】
上記一般式(III)において、R3は水素原子又は炭化水素基であって、炭化水素基では飽和基や不飽和基であってもよいし、直鎖状のものや分岐鎖を有するもの、あるいは環状のものであってもよい。具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン等が挙げられる。これらのオレフィンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記オレフィンの中で、特にエチレン、プロピレンが好適である。
【0066】
本発明におけるオレフィンの重合においては、重合時の触媒活性、オレフィン重合体の立体規則性及びパウダー形態の面から、所望に応じ、先ずオレフィンの予備重合を行った後、本重合を行ってもよい。この場合、固体触媒成分[A]、有機アルミニウム化合物[B]及び必要に応じて電子供与性化合物[C]を、それぞれ所定の割合で混合してなる触媒の存在下に、オレフィンを通常1〜100℃の範囲の温度において、常圧〜5MPa程度の圧力で予備重合させ、次いで触媒と予備重合生成物との存在下に、オレフィンを本重合させる。
【0067】
この本重合における重合形式については特に制限はなく、溶液重合、スラリー重合、気相重合、バルク重合等のいずれにも適用可能であり、さらに、回分式重合や連続重合のどちらにも適用可能であり、異なる条件での2段階重合や多段階重合にも適用可能である。
【0068】
さらに、反応条件については、その重合圧は、特に制限はなく、重合活性の面から、通常、大気圧〜8MPa、好ましくは0.2〜5MPa、重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは、30〜100℃の範囲で適宜選ばれる。重合時間は原料のオレフィンの種類や重合温度によるが、通常、5分〜20時間、好ましくは、10分〜10時間程度である。
【0069】
オレフィン重合体の分子量は、連鎖移動剤の添加、好ましくは水素の添加を行うことで調節することができる。また、窒素等の不活性ガスを存在させてもよい。また、本発明における触媒成分については、固体触媒成分[A]、有機アルミニウム化合物[B]及び電子供与性化合物[C]を所定の割合で混合して接触させた後、ただちにオレフィンを導入して重合を行ってもよいし、接触後、0.2〜3時間程度熟成させたのち、オレフィンを導入して重合を行ってもよい。さらに、この触媒成分は不活性溶媒やオレフィン等に懸濁して供給することができる。本発明においては、重合後の後処理は常法により行うことができる。即ち、気相重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマー粉体に、その中に含まれるオレフィン等を除くために、窒素気流等を通過させてもよいし、また、所望に応じて押出機によりペレット化してもよく、その際、触媒を完全に失活させるために、少量の水、アルコール等を添加することもできる。また、バルク重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマーから完全にモノマーを分離したのち、ペレット化することができる。
【0070】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られるオレフィン重合体中の残留Clは、35ppm以下であることが好ましい。この理由は、残留Clが35ppmを超えると、中和剤コストが大きくなるばかりでなく、成形時に金型の腐食や発泡及び遺物の生成を誘引する場合があるためである。
また、残留Cl量を30ppm以下とするのがより好ましく、25ppm以下とするのがさらに好ましい。
【0071】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。尚、酸化物(a)の平均粒径(D50)、固体触媒成分のアルコキシ基残量、Ti担持量、及び重合パウダーの嵩密度、平均粒径(D50)、微粉量、粗粉量、固有粘度[η]、立体規則性[mmmm]、Cl含量は次のようにして求めた。
【0072】
(1)酸化物(a)の平均粒径(D50):酸化物(a)を炭化水素溶媒に懸濁し、光透過法により測定する。この方法で求めた粒径分布を対数正規確率紙上にプロットし、50%粒子径を平均粒径として求めた。
【0073】
(2)アルコキシ基残量:固体触媒成分を十分に乾燥後、これを精秤してバイアル瓶中に密栓し、1.2N塩酸を用いて十分に脱灰した。その後、不溶物を濾過し、濾液中のアルコール量をガスクロマトグラフィーにより定量し、対応するアルコキシ残量を算出した。
【0074】
(3)Ti担持量:固体触媒成分を十分に乾燥後、これを精秤し、3N硫酸を用いて十分に脱灰した。その後、不溶物を濾過し、濾液にマスキング剤としてリン酸を加え、さらに3%過酸化水素水を添加して発色させた溶液の420nmでの吸光度をFT−IRを用いて測定してTi濃度を求め、固体触媒成分中のTi担持量を算出した。
【0075】
(4)嵩密度:重合体をJIS K 6721に準拠して測定した。
【0076】
(5)重合体の平均粒径(D50)、微粉量、粗粉量:篩を用いて測定した粒径分布を対数正規確率紙上にプロットし、50%粒子径を平均粒径として求めた。また、目開きサイズ250μm以下の重量分率を微粉量、目開きサイズ2830μm以上の重量分率を粗粉量と定義し、これらを求めた。
【0077】
(6)重合体の固有粘度[η]:重合体をデカリンに溶解し、135℃で測定した。
【0078】
(7)重合体の立体規則性[mmmm]:重合体を1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶液に溶解し、13C−NMR(日本電子(株)製、商品名:LA−500)を用いて、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定したメチル基のシグナルを用いて定量した。
【0079】
尚、アイソタクチックペンタッド分率[mmmm]とは、エイ・ザンベリ(A. Zambelli)等がマクロモレキュールズ(Macromolecules)誌 第6巻 925頁(1973)で提案した、13C−NMRスペクトルから求められるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位におけるアイソタクチック分率を意味する。
また、13C−NMRスペクトルのピークの帰属決定法は、エイ・ザンベリ(A. Zambelli)等のマクロモレキュールズ(Macromolecules)誌 第8巻 687頁(1975)で提案された帰属に従った。
【0080】
(8)重合体のCl含量:試料を熱プレスしてプレートを作成し、蛍光X線分析法により定量した。
【0081】
実施例1
(1)アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素の酸化物の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタン200ミリリットル、平均粒径D50が50μm、比表面積が300m2/g、細孔容積が1.6cm3/gであるシリカゲル40g(Si:0.666ミリモル)、ブチルオクチルマグネシウム0.166ミリモルを混合し、90℃で1.5時間加熱した。その後、20℃まで冷却し、塩化水素ガス(1.66ミリモル)を通じて、30分間塩素化を行った。その後、脱水ヘプタン200ミリリットで室温洗浄を3回行い、得られた固体成分の組成を調べた所、マグネシウム含量が7.9wt%、塩素含量が22.5wt%であった(Cl/Mgモル比:1.95)。
【0082】
(2)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタンを80ミリリットル、上記(1)で調製した塩化マグネシウムを担持したシリカ担体16g(Mg:0.052モル)を加えた。5℃に冷却し、脱水処理したエタノール9.15ミリリットル(0.156モル)を15分かけて滴下し、80℃で1.5時間加熱した。この懸濁液を40℃まで冷却し、四塩化ケイ素2.97ミリリットル(0.026モル)を加えて4時間攪拌した後、四塩化チタンを77ミリリットル(0.702モル)滴下し、この溶液を65℃まで昇温し、引き続きフタル酸ジ−n−ブチル1.39ミリリットル(0.0052モル)を添加した。その後、内温125℃で、1時間攪拌して接触操作を行い、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水オクタンを加え、攪拌しながら125℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。その後、四塩化チタンを122ミリリットル(1.11モル)加え、内温125℃で、2時間攪拌して接触操作を行った後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を7回行い、固体触媒成分を得た。評価結果を表1に示す。
【0083】
(3)プロピレン重合
内容積1リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、室温で脱水処理したヘプタン400ミリリットルを加えた。トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.25ミリモル、上記(2)で調製した固体触媒成分をTi原子換算で0.0025ミリモル加え、水素を0.1MPa張り込み、続いてプロピレンを導入しながら80℃、全圧0.8MPaまで昇温昇圧してから、1時間重合を行った。その後、降温、脱圧し、内容物を取り出し、2リットルのメタノールに投入し、触媒失活を行った。それを濾別し、真空乾燥して、プロピレン重合体を得た。評価結果を表1に示す。
【0084】
実施例2
(1)固体触媒成分の調製
実施例1(2)において、2回目の四塩化チタンの担持反応後のオクタンによる洗浄温度を室温とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた固体触媒成分を評価した。結果を表1に示す。
【0085】
(2)プロピレン重合
実施例1(3)において、ジシクロペンチルジメトキシシランの代わりにシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.5ミリモル使用し、上記(1)で調製した固体触媒成分をTi原子換算で0.005ミリモル加え、水素を0.05MPa張り込んだ以外は実施例1と同様にプロピレンの重合を行い、得られたプロピレン重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0086】
実施例3
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタンを80ミリリットル、実施例1(1)で調製した塩化マグネシウムを担持したシリカ担体16g(Mg:0.052モル)を加えた。5℃に冷却し、脱水処理したエタノール9.15ミリリットル(0.156モル)を15分かけて滴下し、80℃で1.5時間加熱した。この懸濁液を40℃まで冷却し、四塩化ケイ素2.97ミリリットル(0.026モル)を加えて4時間攪拌した後、四塩化チタンを77ミリリットル(0.702モル)滴下し、この溶液を65℃まで昇温し、引き続きフタル酸ジ−n−ブチル1.39ミリリットル(0.0052モル)を添加した。その後、内温125℃で、1時間攪拌して接触操作を行い、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水オクタンを加え、攪拌しながら125℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。その後、四塩化チタンを122ミリリットル(1.11モル)加え、内温125℃で、2時間攪拌して接触操作を行った後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を7回繰り返した。さらに、四塩化チタンを122ミリリットル(1.11モル)加え、内温125℃で、2時間攪拌して接触操作を行った後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を7回繰り返し、得られた固体触媒成分を評価した。結果を表1に示す。
【0087】
(2)プロピレン重合
実施例1(3)において、上記(1)で調製した固体触媒成分を使用した以外は、実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行い、得られたプロピレン重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
実施例4
(1)固体触媒成分の調製
実施例1(2)において、オクタンの代わりにデカンを用い、担持反応・洗浄温度を135℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られた固体触媒成分を評価した。結果を表1に示す。
(2)プロピレン重合
実施例1(2)において、上記(1)で調製した固体触媒成分を使用した以外は実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行い、得られたプロピレン重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
比較例1
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタンを80ミリリットル、実施例1(1)で調製した塩化マグネシウムを担持したシリカ担体16g(Mg:0.052モル)を加えた。5℃に冷却し、脱水処理したエタノール9.15ミリリットル(0.156モル)を15分かけて滴下し、80℃で1.5時間加熱した。この懸濁液を70℃に冷却し、フタル酸ジ−n−ブチル1.39ミリリットル(0.0052モル)を添加した。この溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを77ミリリットル(0.70モル)滴下し、内温110℃で、2時間攪拌して接触操作を行った。その後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水ヘプタンを加え、攪拌しながら90℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。その後、四塩化チタンを122ミリリットル(1.11モル)加え、内温110℃で、2時間攪拌して接触操作を行い、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。その後、上記のヘプタンを用いた90℃の洗浄操作を7回繰り返し、得られた固体触媒成分を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
(2)プロピレン重合
実施例1(2)において、上記(1)で調製した固体触媒成分を使用した以外は実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行い、得られたプロピレン重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
比較例2
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを80ミリリットル、実施例1(1)で調製した塩化マグネシウムを担持したシリカ担体16g(Mg:0.052モル)を加えた。5℃に冷却し、脱水処理したエタノール9.15ミリリットル(0.156モル)を15分かけて滴下し、80℃で1.5時間加熱した。この懸濁液を40℃に冷却し、四塩化ケイ素0.89ミリリットル(0.0078モル)を加えて40分攪拌した。70℃に加熱し、フタル酸ジ−n−ブチル1.39ミリリットル(0.0052モル)を添加した。この溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを77ミリリットル(0.70モル)滴下し、内温110℃で、2時間攪拌して接触操作を行った。その後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水ヘプタンを加え、攪拌しながら90℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。その後、四塩化チタンを122ミリリットル(1.11モル)加え、内温110℃で、2時間攪拌して接触操作を行い、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。その後、上記のヘプタンを用いた90℃の洗浄操作を7回繰り返し、得られた固体触媒成分を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
(2)プロピレン重合
実施例1(2)において、上記(1)で調製した固体触媒成分を使用した以外は実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行い、得られたプロピレン重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、重合活性が高く、残留Clの少ない、立体規則性及びパウダー形態に優れたオレフィン重合体が得られるオレフィン重合用固体触媒成分、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法を示す模式図である。
Claims (9)
- 下記化合物(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を反応させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分であって、
下記化合物(a)に対して水酸基/マグネシウムのモル比が1.0以上で下記化合物(b)を反応させた後、下記化合物(a)に対してハロゲン/マグネシウムのモル比が0.20以上で下記化合物(c)を反応させ、
下記化合物(a)、(b)及び(c)の反応物と下記化合物(d)及び下記化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で反応させ、不活性溶媒で洗浄した後、
再度、化合物(e)を120℃以上150℃以下の温度で反応させ、不活性溶媒で洗浄して得られ、
チタン担持量(Ti)に対するアルコキシ基残量(RO)のモル比(RO/Ti)が0.60以下であるオレフィン重合用固体触媒成分。
(a)アルコールを含有しないハロゲン含有マグネシウム化合物を担持させたII〜IV族元素から選択される1種以上の元素の酸化物
(b)アルコール
(c)ハロゲン含有ケイ素化合物
(d)電子供与性化合物
(e)ハロゲン含有チタン化合物 - 前記一回目の前記化合物(a)〜(e)の反応後の不活性溶媒による洗浄温度が100℃以上150℃以下である請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- 前記アルコール(b)がエタノールである請求項1又は2に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- 前記ハロゲン含有ケイ素化合物(c)が四塩化ケイ素である請求項1〜3のいずれか一項に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- 前記モル比(RO/Ti)が0.45以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- アルコキシ基残量(RO)が0.40ミリモル/g以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- チタン担持量が1.0重量%以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
- 下記成分[A]、[B]又は下記成分[A]、[B]、[C]を含むオレフィン重合用触媒。
[A]請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン重合用固体触媒成分
[B]有機アルミニウム化合物
[C]電子供与性化合物 - 請求項8に記載のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合するオレフィン重合体の製造方法。
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