JP4123313B2 - 負極用炭素材料、その製造方法、ならびにそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負極用炭素材料とその製造方法、この様な負極用炭素材料を使用するリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子機器、情報機器などの携帯用機器類(以下「携帯機器」という)の小型化および軽量化が目覚ましく進行しつつあり、それらを駆動する二次電池が非常に重要な部品となってきている。リチウム二次電池は、軽量かつ高エネルギー密度を有するため、携帯機器の駆動用電源として有望視され、研究開発が活発に進められている。しかしながら、リチウム金属を負極に用いた場合には、充放電サイクルを繰り返すことにより金属リチウム上にデンドライトが生成・成長して、内部短絡を引き起こすため、二次電池化が困難である。また、リチウム金属に代えてリチウム・アルミニウム合金の様なリチウム合金の使用が提案されているが、この場合には、充放電サイクル或いは深い充放電を行うと、合金の偏析などがおこるため、長期的に十分な特性は得られない。
【0003】
そこで、炭素材料をホスト材料とし、リチウムイオンの挿入脱離反応を利用した負極を用いた電池が提案され、研究開発が進められ、実用化されてきている。炭素材料を負極に用いるリチウム二次電池では、サイクル特性、安全性などが改善されるものと期待されている。
【0004】
しかしながら、炭素材料は、黒鉛から無定形炭素までの幅広い構造乃至形態を有するとともに、それらの物性値或いは炭素の六角網面が形成する微細組織が電極の性能を大きく左右するため、物性値或いは微細組織を規定した種々の炭素材料が提案されている。例えば、特開平4-368778号公報、特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報、特開平9-213328号公報などは、芯材となる黒鉛粒子の表面を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を提案している。これらの表面改質黒鉛炭素材料は、電解質の分解を抑制するので、電池容量の増加、サイクル特性の改善などに有効である。
【0005】
例えば、上記の特開平4-368778号公報に記載された技術においては、炭化水素ガスの熱分解により、炭素被覆層を形成しているので、各炭素粒子の融着或いは凝集などは起こらず、性能に優れた炭素材料が得られている。しかしながら、この方法は、量産に適しておらず、コストが高いという問題点を有している。
【0006】
特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報などは、一般に量産性、コストなどの点で有利な液相炭素化による被覆炭素材料の製造方法を開示している。しかしながら、液相の有機化合物と黒鉛粒子とを混合し、焼成する方法によれば、炭素化に際して黒鉛粒子同士が融着・凝集するので、電極作成に先立ち、材料を粉砕する必要がある。この粉砕により、黒鉛の活性な面が新たに露出するので、粉砕粒子の比表面積が増大して、電解液の安定性を阻害するという新たな問題点を生ずる。また、炭化物の粉砕時に不純物が混入したり、工程が複雑であることも、大きな問題である。
【0007】
特開平8-298114号公報は、黒鉛粒子と液相の有機化合物に芳香族系有機溶媒を添加して粘度を調整し、混合し、加熱した後、焼成する方法(以下この方法を「液相法」という)を開示している。この液相法により得られる炭素材料は、上記特開平4-370662号公報、特開平5-94838号公報、特開平5-121066号公報などに記載された炭素材料に比して、電池容量を高めることができ、かつリテンションの低い材料であるが、黒鉛粒子と混合する有機化合物の割合が低いので、黒鉛粒子の細孔が十分に被覆されておらず、被覆材料の比表面積が大きくなり、電解液の安定性を損なう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、リチウム電池電極用炭素材料として、比表面積が小さく、電解液の安定性を阻害することなく、生産コストの低い炭素材料を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような従来技術の現状に留意しつつ、研究を重ねた結果、人造黒鉛および/または天然黒鉛と揮発成分を含有する炭素材料との混合物を焼成することにより得られる炭素材料が、リチウム二次電池の電極用炭素材として有用であって、上記の目的を達成しうるとともに、リチウム二次電池の容量を一層高め得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の負極用炭素材料、その製造方法、ならびにそれを用いたリチウム二次電池を提供するものである。
【0011】
1.人造黒鉛および天然黒鉛の少なくとも1種と揮発成分を含有する炭素材料との混合物の焼成体からなる負極用炭素材料。
【0012】
2.炭素材料表面の少なくとも一部が、揮発成分含有炭素材料に由来する揮発成分焼成物により被覆された構造を有する上記項1に記載の負極用炭素材料。
【0013】
3.揮発成分含有炭素材料が、人造被覆炭素材料である上記項1または2に記載の負極用炭素材料。
【0014】
4.芯材である炭素材料に比して、焼成被覆体の結晶化度が低い上記項1〜3のいずれかに記載の負極用炭素材料。
【0015】
5.人造黒鉛および天然黒鉛の少なくとも1種と揮発成分を含有する炭素材料とを混合し、焼成することを特徴とする負極用炭素材料の製造方法。
【0016】
6.焼成が、炭化焼成である上記項5に記載の負極用炭素材料の製造方法。
【0017】
7.焼成が、黒鉛化焼成である上記項5に記載の負極用炭素材料の製造方法。
【0018】
8.上記項1〜4のいずれかに記載の炭素材料を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【0019】
9.上記項1〜4のいずれかに記載の炭素材料を負極材料とすることを特徴とするリチウム二次電池。
【0020】
10.リチウム二次電池が、非水系リチウム二次電池である上記項8または9に記載のリチウム二次電池。
【0021】
11.リチウム二次電池が、リチウムポリマー二次電池である上記項10に記載のリチウム二次電池。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、人造黒鉛および/または天然黒鉛と揮発成分含有炭素材料との混合物を焼成する際に、揮発成分含有炭素材料に由来する揮発成分が、人造黒鉛および/または天然黒鉛の表面の全部或いは一部を被覆するか、或いは表面の全部或いは一部に付着する。この様な焼成体の表面構造は、表面および/または内部に揮発成分を有する炭素材料の揮発成分の一部が、気化した後、人造黒鉛および/または天然黒鉛の表面の少なくとも一部を被覆するか、或いは人造黒鉛および/または天然黒鉛の表面の少なくとも一部付着することにより、形成されるものと推測される。すなわち、本発明においては、人造黒鉛および/または天然黒鉛に対する揮発成分の被覆或いは付着は、気相状態で行われるものと考えられる。従って、人造黒鉛/天然黒鉛と揮発成分含有炭素材料とを出発原料とする本発明焼成体においては、人造黒鉛/天然黒鉛部分と揮発成分含有炭素材料部分とは、ほぼ同様な表面構造を備えている。
【0023】
以下においては、人造黒鉛/天然黒鉛/炭素材料表面にこの様な揮発成分が付着した材料および人造黒鉛/天然黒鉛/炭素材料表面がこの様な炭素材料により被覆された全体としての材料を「被覆炭素材料」という。
【0024】
負極材料としての人造黒鉛および天然黒鉛は、他の黒鉛系炭素材料に比して、電池容量を高めることができるものの、比表面積が大きいので、電解液に対する安定性が劣るという問題がある。しかるに、本発明において、上述の「部分気相法」により、人造黒鉛/天然黒鉛を被覆する場合には、均一でかつ非常に薄い被覆が形成されるので、人造黒鉛/天然黒鉛の比表面積を減少させつつ、人造黒鉛/天然黒鉛の有する優れた特性を最大限に活用できる。従って、得られた被覆炭素材料をリチウム二次電池の負極材料として採用する場合には、高容量(重量あたりおよび体積あたり)で且つ安全性の高いリチウム二次電池を得ることができる。
【0025】
前述の公知の液相法により被覆炭素材料を直接製造する場合に、被覆厚を薄くしようとすると、被覆層がはがれたり、或いは均一な被覆が形成され難い。その結果、薄くかつ均一な被覆は得られず、比表面積が大きくならざるを得ない。
【0026】
揮発成分を有する炭素材料(これを「揮発成分含有炭素材料」という)としては、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズの炭化品および黒鉛化品、カーボンファイバーの炭化品および黒鉛化品、メソフェーズピッチの炭化品および黒鉛化品、等方性ピッチの炭化品および黒鉛化品、樹脂類の炭化品および黒鉛化品などの炭素材料粒子(芯材)表面の一部または全部が重質油に由来する揮発成分により被覆されているか或いは芯材が重質油に由来する揮発成分を含有している炭素材料(以下「人造被覆炭素材料」ということがある);およびメソカーボンマイクロビーズ、カーボンファイバー、メソフェーズピッチ、等方性ピッチ、樹脂類(これらは、未熱処理品である)などがあげられ、これらは、単独で使用しても良く、或いは2種以上を併用しても良い。これらの中では、コストの点では、人造被覆炭素材料がより好ましい。また、比表面積をより低減するためには、メソカーボンマイクロビーズが好ましい。以下においては、揮発成分含有材料の代表例として、主に人造被覆炭素材料に関して説明する。
【0027】
人造被覆炭素材料は、公知の液相法に従って、人造黒鉛、天然黒鉛、上記のメソカーボンマイクロビーズなどの炭化品/黒鉛化品などの炭素材料粒子(芯材)をタール、ピッチなどの石炭系および石油系重質油の少なくとも1種に10〜300℃程度(より好ましくは50〜200℃程度)で浸漬した後、芯材を重質油から分離し、これに有機溶媒を加え、10〜300℃程度(より好ましくは10〜150℃程度)で洗浄することにより、得られる。芯材の著しい融着或いは凝集が生じない場合には、有機溶媒による洗浄を省略することもできる。
【0028】
芯材の粒径は、特に限定されるものではないが、通常0.1〜200μm程度であり、より好ましくは0.5〜150μm程度である。また、芯材の中心粒径(D50)は、通常1〜50μm程度であり、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0029】
人造被覆炭素材料においては、下式により定義される被覆比を通常0.01以上、より好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.05〜0.3程度とする。この場合、揮発成分は、芯材表面の一部または全部を被覆している量と芯材内部に含有している量との合計量を意味する。この値は、人造被覆炭素材料を溶剤分析に供して、キノリン可溶分を測定して得た値である。
【0030】
被覆比=揮発成分重量/(芯材重量+揮発成分重量)
人造被覆炭素材料の被覆比が小さ過ぎる場合には、後述する人造黒鉛および/または天然黒鉛との混合状態での焼成時に、揮発成分の気化量が少ないため、人造黒鉛および/または天然黒鉛に対する揮発成分の被覆或いは付着が十分に行われない。これに対し、被覆比が大きすぎる場合には、芯材により達成されるべき低電位部分での容量が減少するので、リチウム二次電池を作成した場合に、十分な容量を得ることが困難となる。
【0031】
人造黒鉛および天然黒鉛の粒径は、特に限定されるものではないが、通常0.1〜200μm程度であり、より好ましくは0.5〜150μm程度である。また、人造黒鉛および天然黒鉛の中心粒径(D50)は、通常1〜50μm程度であり、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0032】
人造黒鉛および/または天然黒鉛と人造被覆炭素材料などの揮発成分含有材料との混合操作は、両者を混合し、撹拌処理することにより、行われる。撹拌は、特に限定されず、例えば、ナウタミキサー、リボンミキサー、V型ミキサー、万能ミキサーなどを使用する機械的撹拌方法により、行うことができる。
【0033】
人造被覆炭素材料と人造黒鉛および/または天然黒鉛との混合割合は、前者の揮発成分含有量にも依存するが、通常前者100重量部を基準として、後者10〜1000重量部程度、より好ましくは後者10〜300重量部程度、特に好ましくは、10〜100重量部程度とする。人造被覆炭素材料に対する人造黒鉛/天然黒鉛の混合量が少なすぎる場合には、高容量化に寄与する人造黒鉛/天然黒鉛の絶対量が少ないので、電池容量の高容量化が十分に達成できない。これに対し、人造黒鉛/天然黒鉛の混合量が多すぎる場合には、焼成時に人造被覆炭素材料から気化する揮発成分の量が十分でなくなるので、人造黒鉛/天然黒鉛の被覆が不十分となり、比表面積の増大を招く。
【0034】
本発明においては、上記の様にして得られた混合物を炭化焼成或いは黒鉛化焼成する。混合物の焼成においては、600〜2000℃程度(より好ましくは900〜1300℃程度)で炭化焼成するか、或いは2000〜3000℃程度(より好ましくは2500〜3000℃程度)で黒鉛化焼成する。
【0035】
混合物の焼成は、還元雰囲気中、不活性ガス気流中、不活性ガス充填密閉空間中、真空乃至減圧下などの非酸化性雰囲気中で行う。焼成は、揮発成分が滞留して、人工黒鉛/天然黒鉛に対する揮発成分の被覆或いは付着を生じやすい還元性ガス或いは不活性ガスの密閉雰囲気中で行うことが、好ましい。なお、真空下での焼成は、揮発成分が雰囲気中に気相状態で滞留しにくいという難点があるが、人造黒鉛/天然黒鉛の表面官能基を除去してリテンションを低減しうるという効果が達成できる。
【0036】
本発明は、さらに、上記の被覆炭素材料を構成要素とするリチウム二次電池用負極材料、この負極材料を使用するリチウム二次電池、およびこの負極材料を使用する非水系リチウム二次電池をも提供する。
【0037】
上記の被覆炭素材料をリチウム二次電池電極用炭素材料として使用する場合には、必要に応じ、黒鉛の活性表面が過度に露出させない様に留意しつつ、分散、解砕、分級などの処理に供した後、適当な粒度に調整する。
【0038】
本発明による被覆炭素化/黒鉛化炭素材料をリチウム二次電池負極材料として使用する場合には、容量のより高いリチウム二次電池を得ることができる。また、電解質と有機溶媒との反応が抑制されるので、電解液の分解、炭素材料の破壊などを生じにくくなる。その結果、充放電効率が向上し、電池の安全性も改善されるという利点が得られる。
【0039】
電極は、公知のバインダーなどと混合した後 集電体上に活物質層を形成する。バインダーとしては、特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。この場合のバインダーの量としては、活物質100重量部に対して、通常3〜50重量部程度の範囲であり、より好ましくは5〜20重量部程度であり、さらに好ましくは5〜15重量部程度である。バインダーの量が多すぎると、電極中の活物質の密度が低下するため、好ましくない。また、バインダーが少なすぎると、電極中の活物質を保持する能力が十分得られず、電極の安定性が低下するため、好ましくない。また、電極を形成する方法としては、活物質とバインダーとを混合したペーストを作製し、ドクターブレード、バーコーターなどにより集電体上に活物質層を形成する方法、或いは活物質とバインダーとを混合したものを成型器などに入れ、プレスなどにより成形体とする方法などが挙げられる。
【0040】
また、本願発明によるリチウム二次電池の電解質としては、公知の有機電解液、無機固体電解質、高分子固体電解質などを用いることができる。
【0041】
これらの中でも、イオン伝導度の観点から、有機電解液が特に好ましい。有機電解液用の溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの置換テトラヒドロフラン;ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどが例示され、これらを単独でまたは混合して使用することができる。また電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、6フッ化燐酸リチウム、6フッ化砒酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、塩化アルミン酸リチウムなどのリチウム塩などが例示され、これらの1種或いは2種以上を使用することができる。有機電解液は、上記の溶媒に電解質を溶解することにより、調製される。なお、電解液を調製する際に使用する溶媒および電解質は、上記に例示されたものに限定されないことはいうまでもない。
【0042】
無機固体電解質としては、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物などが挙げられ、より具体的には、Li3N、LiI、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li4SiO4、Li2SiS3などが例示される。
【0043】
有機固体電解質には、上記の電解質と電解質の解離を行う高分子とから構成された物質、高分子にイオン解離基を持たせた物質などがある。電解質の解離を行う高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体および該誘導体を含むポリマー、リン酸エステルポリマーなどがある。上記の非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性極性溶媒との混合物、電解液にポリアクリロニトリルを添加した材料も、使用可能である。さらに、無機固体電解質と有機固体電解質とを併用することも、可能である。
【0044】
本発明のリチウム二次電池における正極としては、常法に従って、例えばリチウムを含有する酸化物を正極活物質として用いることができる。正極活物質の具体的な例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、これらの類縁化合物であるLixMyNzO2(ここでMはFe、Co、NiおよびMnのいずれかであり、Nは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiMn2O4、その類縁化合物であるLiMn2-xNyO4(ここでNは遷移金属、4B族金属或いは5B族金属を表す)、LiVO2などが挙げられ、これに導電材、バインダーおよび場合によっては、固体電解質などを混合して、正極が形成される。これら各材料の混合比は、活物質100重量部に対して、導電材5〜50重量部程度、バインダー1〜30重量部程度とすることができる。この様な導電材としては、特に制限されず、公知のカーボンブラック(アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなど)などの炭素類、グラファイト粉末、金属粉末などを用いることができ。また、バインダーとしても、特に限定されず、公知のポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー;合成ゴム類などを用いることができる。正極の作製に際しては、結着性を改善するために、各バインダーの融点近傍の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0045】
また、電解液を保持するためのセパレーターとしては、公知の電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維などの不織布あるいは織布、アルミナなどの粉末の成形体などが挙げられる。これらの中でも、合成樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの不織布が品質の安定性などの点から好ましい。これら合成樹脂の不織布には、電池が異常発熱した場合に、セパレーターが熱により溶解して、正極と負極との間を遮断する機能を付加したものがあり、安全性の観点から、これらも好適に使用することができる。セパレーターの厚みは、特に限定されず、必要量の電解液を保持することが可能であり、かつ正極と負極との短絡を防ぐことができればよく、通常0.01〜1mm程度であり、好ましくは0.02〜0.05mm程度である。
【0046】
集電体としては、公知の銅、ニッケル、ステンレス、アルミ、チタンなどの金属の箔状体、メッシュ体、多孔質体などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【発明の効果】
本発明においては、揮発成分を含有する人造被覆炭素材料と人造黒鉛/天然黒鉛とを混合し、焼成することにより、サイクル性、安全性などの諸特性に優れ、かつ高容量のリチウム二次電池用負極材料を製造することができる。
【0048】
また、本発明により得られる被覆炭素材料を使用して、非水系二次電池或いはポリマー電池を作製する場合には、高容量で、充放電特性と安全性とに優れた電池を製造することが可能となる。
【0049】
さらに、本発明によれば、安価な天然黒鉛、人造黒鉛などを使用し、その製造方法も簡単であり、量産性にも非常に優れているので、より安価な高性能リチウム二次電池用負極材料を得ることができる。
【0050】
【実施例】
以下実施例により、発明を具体的に説明する。なお、以下の各実施例における各種の測定は、以下の様にして行った。
【0051】
1.粒径の測定
日機装株式会社製「FRA9220マイクロトラック」を用いて、粒子の中心粒径および粒度分布を測定した。
【0052】
2.被覆比の測定
焼成前の人造被覆炭素材料の芯材周囲を覆っている重質油由来の炭素成分については、JIS K2425に規定されている方法に準じて溶剤分析を行って、キノリン不溶分(%)を測定し、「100-(キノリン不溶分)」によりキノリン可溶分(%)を算出した。このキノリン可溶分の量が、被覆部分の量である。
【0053】
被覆部分/(芯材+被覆部分)の重量比(=先に定義した「被覆比」)は、前述の方法で算出した。
【0054】
3.比表面積の測定
カンタークローム社製「NOVA2000/窒素吸着BET比表面積測定装置」を用いて比表面積を測定した。
【0055】
4.非水系電池の作製ならびに電池特性および極板密度の測定
正極は、一般的には正極材料と導電材およびバインダーとを混合することにより作製される。この場合、導電材としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料類または金属粉末、金属ウールなどの金属材料などが適宜使用される。バインダーは、粉末のまま混合することもできるが、分散性をより高め、結着性を向上するために、溶液に分散させたものや、溶解したものを混合する場合もある。また、このようにして溶液に分散或いは溶解したものを用いた場合には、真空処理あるいは熱処理などの手段によって溶液を取り除く必要がある。さらにバインダーの種類によっては、融点付近の温度で熱処理することにより、さらに結着性を高めることも可能である。
本願実施例では、正極材料にLiCoO2100重量部を用い、導電材としてのアセチレンブラック10重量部およびバインダーとしてPTFE粉末10重量部を混合したものを直径10mmの電極に成形し、正極体を得た。
【0056】
負極体は、本願実施例では、次の様にして作製した。まず、人造黒鉛および天然黒鉛の少なくとも1種と揮発成分を含有する人造被覆炭素材料との混合物を窒素雰囲気中1000℃で1時間焼成し、炭化した。この焼成体炭素材料95重量部とPVDF(アルドリッチ社製)5重量部とを混合し、液相で均一に撹拌した。得られたスラリーを銅箔上に塗布し、80℃で乾燥した後、この箔をプレス機により成型し、10mm×10mmの負極体を作製した後、200℃で6時間真空乾燥した。
【0057】
セパレーターとしては、ポリプロピレン不繊布を用いた。
【0058】
電解液は、1moldm-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(体積比で1:1)を用いた。
【0059】
上記のようにして得られた正極体、負極体、セパレーターおよび電解液を用いて作製したコイン型リチウム二次電池の放電特性を測定した。測定は1mA/cm2の定電流充放電下で実施し、放電容量は電池電圧が1.2Vに低下するまでの容量とした。
【0060】
5.ポリマー電池の作製および電池特性の測定
負極板は、上記4.と同様にして作製した。
【0061】
ポリエチレンオキシド(分子量60万)とLiClO4とをアセトニトリルに溶解させ、この溶液をアルゴン雰囲気のグロ−ブボックス中でPTFE膜(デュポン社製「テフロン」)上にキャスティングした後、グローブボックス中25℃で放置して溶媒を蒸発させ、さらに乾燥して固体電解質の(PFO)8・LiClO4を調製した。
【0062】
上記で得られた負極体としての炭素材料、正極体としてのLiCoO2および固体電解質としての(PFO)8・LiClO4を用いて、フィルム型リチウム二次電池を作製した。
【0063】
上記で得られたリチウム二次電池の放電特性を測定した。測定は、1mA/cm2の定電流充放電下で実施し、放電容量は電池電圧が1.2Vに低下するまでの容量とした。
【0064】
実施例1
人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)100gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、200℃、常圧で2時間攪拌混合し、粗製ピッチコーティング黒鉛を得た。得られた粗製ピッチコーティング黒鉛1部に対しトルエン1部を加え、攪拌下に80℃で1時間線上処理した後、濾過して、揮発成分を含有する人造被覆炭素材料を得た。
【0065】
得られた人造被覆炭素材料のキノリン可溶分の測定値が9.8%であることから、この炭素材料の被覆比は、0.098である。
【0066】
この人造被覆炭素材料100重量部に対し、人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0067】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0068】
さらに、同じ炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、固体電解質としてリチウムポリマーを使用する二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を後記表2に示す。
【0069】
実施例2
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、10torrの真空下1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、真空炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0070】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0071】
実施例3
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度300℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0072】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0073】
実施例4
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、リードハンマー炉(還元雰囲気、昇温速度5℃/hr以下)において1200℃で1時間焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0074】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0075】
実施例5
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)10重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0076】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0077】
実施例6
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)30重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度300℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0078】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0079】
実施例7
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)300重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0080】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0081】
実施例8
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)1000重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0082】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0083】
実施例9
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「SFG-44」、中心粒径D50=19.6μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=130nm、La=150nm、比表面積=5.1m2/g、R値=0.20、真比重=2.25g/cm3)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0084】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0085】
さらに、同じ炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、固体電解質としてリチウムポリマーを使用する二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を後記表2に示す。
【0086】
実施例10
実施例1と同様にして得られた炭化ピッチ被覆黒鉛100重量部と中国産天然黒鉛(中心粒径D50=19.6μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=130nm、La=150nm、比表面積=5.1m2/g、R値=0.20、真比重=2.25g/cm3)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の被覆比の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0087】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0088】
さらに、同じ炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して、負極を作製し、固体電解質としてリチウムポリマーを使用する二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表2に示す。
【0089】
実施例11
人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)5gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、200℃、10torrで蒸留した。タール中油を回収した後、蒸留を中止し、ピッチコーティング黒鉛を得た。
【0090】
得られた人造被覆炭素材料のキノリン可溶分の測定値が6.8%であることから、この炭素材料の被覆比は、0.068である。
【0091】
この人造被覆炭素材料100重量部に対し、人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0092】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0093】
実施例12
人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)200gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、200℃、常圧で2時間攪拌混合し、粗製ピッチコーティング黒鉛を得た。
【0094】
得られた粗製ピッチコーティング黒鉛1部にトルエン1部を加え、攪拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過し、精製ピッチコーティング黒鉛を得た。
【0095】
得られた精製ピッチコーティング黒鉛のキノリン可溶分の測定値が20.1%であることから、この炭素材料の被覆比は、0.201である。
【0096】
この人造被覆炭素材料100重量部に対し、人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0097】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0098】
実施例13
人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)50gと予め一次QIを除去した軟化点80℃のコールタールピッチ(キノリン不溶分トレース、トルエン不溶分30%)200gとを500mlのセパレルフラスコに入れ、200℃、常圧で2時間攪拌混合し、粗製ピッチコーティング黒鉛を得た。
【0099】
得られた粗製ピッチコーティング黒鉛1部にトルエン0.5部を加え、攪拌下に80℃で1時間洗浄処理した後、濾過し、精製ピッチコーティング黒鉛を得た。
【0100】
得られた精製ピッチコーティング黒鉛のキノリン可溶分の測定値が28.5%であることから、この炭素材料の被覆比は、0.285である。
【0101】
この人造被覆炭素材料100重量部に対し、人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部を混合し、窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成し、炭化した。得られた炭化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0102】
この炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0103】
実施例14
メソカーボンビーズ未焼成品(大阪ガス(株)製、「MCMB-6-G」、中心粒径D50=6.5μm、粒度分布0.1〜50μm)100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)100gとを混合し、窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成し、黒鉛化した。得られた黒鉛化ピッチ被覆黒鉛の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0104】
この黒鉛化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0105】
比較例1
実施例1と同様にして得られた人造被覆炭素材料50gを窒素雰囲気中1200℃で1時間(昇温速度50℃/hr)焼成した。
【0106】
得られた炭化ピッチ被覆黒鉛を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に示す。
【0107】
比較例2
人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、中心粒径D50=20.1μm、粒度分布0.1〜150μm、d002=0.336nm、Lc=110nm、La=105nm、比表面積=8.2m2/g、R値=0.23、真比重=2.25g/cm3)を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0108】
比較例3
比較例1と同様にして得られた炭化ピッチコーティング黒鉛100重量部と人造黒鉛(ロンザ社製「KS-44」、性状は上記に同じ)100重量部とを混合した。非焼成の混合物の中心粒径と比表面積を表1に示す。
【0109】
この非焼成炭素材料混合物を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0110】
比較例4
メソカーボンビーズ未焼成品(大阪ガス(株)製、「MCMB-6-G」、中心粒径D50=6.5μm、粒度分布0.1〜50μm)を窒素雰囲気中2800℃で1時間焼成し、黒鉛化した。得られた黒鉛化物の中心粒径および比表面積を表1に示す。
【0111】
この黒鉛化物を使用して負極を作製し、電解液として1moldl-3のLiClO4を溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比で1:1)を用いて、非水系二次電池を作製した。その充放電特性測定結果を表1に併せて示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【実施例および比較例で得られた結果についての考察】
表1および表2に示す結果から、人造黒鉛および/または天然黒鉛に対し揮発成分を含む人造被覆炭素材料を混合し、焼成して、「部分気相法」による被覆処理を行う本発明によれば、炭素材料の比表面積を増大させることなく、リチウム二次電池負極の放電容量を著しく増大させることができる。
Claims (11)
- 人造黒鉛および天然黒鉛の少なくとも1種と揮発成分含有炭素材料である人造被覆炭素材料とを、後者100重量部を基準として、前者10〜1000重量部の割合で混合した混合物の焼成体からなる非水系二次電池の負極用炭素材料。
- 炭素材料表面の少なくとも一部が、揮発成分含有炭素材料に由来する揮発成分焼成物により被覆された構造を有する請求項1に記載の負極用炭素材料。
- 揮発成分含有炭素材料である人造被覆炭素材料における下記式により定義される被覆比が、0.05〜0.3である請求項1または2に記載の負極用炭素材料。
被覆比=揮発成分重量/(芯材重量+揮発成分重量) - 芯材である炭素材料に比して、焼成被覆体の結晶化度が低い請求項1〜3のいずれかに記載の負極用炭素材料。
- 人造黒鉛および天然黒鉛の少なくとも1種と揮発成分含有炭素材料である人造被覆炭素材料とを、後者100重量部を基準として、前者10〜1000重量部の割合で混合し、焼成することを特徴とする非水系二次電池の負極用炭素材料の製造方法。
- 焼成が、炭化焼成である請求項5に記載の負極用炭素材料の製造方法。
- 焼成が、黒鉛化焼成である請求項5に記載の負極用炭素材料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素材料を構成要素とすることを特徴とするリチウム二次電池。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の炭素材料を負極材料とすることを特徴とするリチウム二次電池。
- リチウム二次電池が、非水系リチウム二次電池である請求項8または9に記載のリチウム二次電池。
- リチウム二次電池が、リチウムポリマー二次電池である請求項10に記載のリチウム二次電池。
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