JP4122836B2 - 車両の乗員保護装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突時の前後加速度および横加速度を検出して乗員を保護するようにした車両の乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両としては、例えば特開平6−239195号公報に開示されるように前突用エアバッグと側突用エアバッグとを設けて、前面衝突や側面衝突、更には斜め衝突にも対応させるようにしており、これら各エアバッグが展開されることにより乗員を拘束して保護するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の乗員拘束装置では、斜め衝突時には前突用エアバッグと側突用エアバッグとを単に時間差をもって展開させるのみであるため、衝突状況によっては最適な制御を行うことが困難になってしまうという課題があった。
【0004】
そこで、本発明は車両衝突時の衝突形態を緻密に判断して、その衝突形態に応じて最適な状態で乗員拘束することにより、乗員の拘束性能を高めるようにした車両の乗員保護装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明にあっては、減速度センサーによって車両前後方向に発生する前後減速度および車両左右方向に発生する横減速度をそれぞれ検出し、衝突形態判定手段によってこれら減速度センサーにより検出された前後減速度および横減速度を、それぞれ前後減速度および横減速度に対して設定したしきい値と比較して車両の衝突形態を判定し、判定された衝突形態に応じて乗員保護手段を作動するようにしている。ここで、前記衝突形態判定手段は、前記しきい値として、前後減速度に対して設定される第1しきい値と、横減速度に対して設定される第2しきい値と、前後減速度が前記第1しきい値以上のときに横減速度に対して設定され、前記第2しきい値よりも低い値である第3しきい値とを有し、前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値以上で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第3しきい値未満のときに前面衝突と判定し、前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値未満で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第2しきい値以上のときに側面衝突と判定し、前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値以上で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第3しきい値以上のときに斜め衝突と判定することを特徴としている。
【0006】
【発明の効果】
本発明の車両の乗員保護装置によれば、前面衝突、側面衝突および斜め衝突等の複数の衝突形態を、前後減速度に設定した第1しきい値、横減速度に対して設定した第2,第3しきい値によって精度良く判別することができるとともに、このように判別した衝突形態に対応して乗員保護手段を作動させることが可能となり、各種衝突形態に応じて発生する乗員の挙動をそれぞれ適正な状態で拘束できて、乗員の拘束性能を高めることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
図1〜図22は本発明にかかる車両の乗員保護装置の一実施形態を示し、まず、図1〜図13によって乗員保護装置の全体構成を説明する。
【0009】
図1は衝突時の車両挙動を順を追って示す平面図、図2は衝突時の乗員挙動を示す正面図、図3は前後減速度および横減速度と各しきい値との関係を示すマップ、図4は衝突時に前後方向および横方向に発生する減速度波形のイメージ図、図5は衝突形態を判定するためのフローチャートを示す説明図、図6は斜め衝突時の乗員挙動を順を追って示す平面図、図7は斜め衝突時の乗員下肢の挙動を簡易的に示す正面図、図8〜図12は乗員下肢の挙動に対する足部の内外転を抑制する手段を簡易的にそれぞれ示す正面図、図13は脚部拘束手段の取付け状態を示す要部断面正面図である。
【0010】
この実施形態の乗員保護装置を備えた車両1には、図1に示すように車両前後方向に発生する前後減速度を検出する前後減速度センサー11と、車両左右方向に発生する横減速度を検出する横減速度センサー12と、これら両減速度センサー11,12の検出信号に基づいて衝突形態を判定するとともに、後述する乗員保護手段に作動信号を出力する衝突形態判定手段としてのコントローラ13を設けてある。
【0011】
乗員保護手段としては、図2に示すように前面衝突時に乗員Pの前屈を拘束する前後拘束デバイスとしての前突エアバッグ20と、側面衝突時に乗員Pの横倒れを拘束する左右拘束デバイスとしての側突エアバッグ21とが用いられる。また、斜め衝突時には、乗員Pの斜め方向の倒れ込みを拘束するために、前記前突エアバッグ20が作動した後に一定時間後に前記側突エアバッグ21が作動するようにしている(斜め衝突用デバイス)。また、斜め衝突時に乗員の脚部を拘束する脚部拘束手段22も設けられている。
【0012】
この場合、図2に示すように乗員Pは、シートクッション30a、シートバック30bおよびヘッドレスト30cからなるシート30に着座した状態にあり、前記前突エアバッグ20はステアリングホイール31に格納状態で設けられ、前記側突エアバッグ21はシートバック30bの側部若しくはドアトリム1aの内部または表面に格納状態で設けられる。
【0013】
コントローラ13は、図5に示すフローチャートに従って前面(正面)衝突、側面衝突、斜め衝突、軽衝突等の衝突形態を判定するようにしており、このときの衝突形態の判定に図3に示すマップが用いられる。
【0014】
このマップは横軸に前後減速度G1を取り、縦軸に横減速度G2を取って衝突形態別の領域を示し、前後減速度G1の第1しきい値α以上が前面衝突領域A1となり、横減速度G2の第2しきい値β以上が側面衝突領域A2となる。
【0015】
斜め衝突時に車両に発生する減速度波形は図4に示すようになり、図1に示すように自車両1が相手車両2に斜め衝突すると、衝突直後には前後減速度G1が発生し、一定時間t0の後に自車両1の横並進移動に伴って横減速度G2が発生する。
【0016】
従って、斜め衝突は前後減速度G1が発生した後に横減速度G2が発生するので、図3に示すように第1しきい値α以上で、第2しきい値β以下の領域に斜め衝突領域A3が形成され、このとき、斜め衝突を判定する横減速度G2レベルは衝突直後の前後減速度に連動して決定され、側面衝突の判定基準となる第2しきい値βより低く設定される第3しきい値γ以上としてある。
【0017】
このとき、横減速度G2のしきい値β,γは、初期に発生する前後減速度G1に連動して可変とすることが望ましい。
【0018】
また、前述した前面衝突領域A1、側面衝突領域A2および斜め衝突領域A3以外は乗員保護手段が作動しない軽衝突領域A4となる。
【0019】
図1(a)に示すように斜め衝突した自車両1は、相手車両2からの反力を受けて前後方向の減速により前後減速度G1が発生し、その結果、乗員Pは図6(a)に示す衝突前の状態から同図(b)に示すように前方移動し、その後に車両1の横並進挙動に伴って同図(c)および図2に示すように乗員Pの上半身は横倒れする。
【0020】
この横倒れ発生時の乗員Pの下肢の挙動を図7に拡大して簡易的に示したが、上半身の横倒れに伴って大腿部P1(右,左大腿部P1a,P1b)および脛部P2(右,左脛部P2a,P2b)の移動を伴って、乗員Pの足部P3(右,左足部P3a,P3b)に生ずる内外転を前記脚部拘束手段22によって抑制するようにしている。
【0021】
このとき、右,左足部P3a,P3bに生ずる内外転は、大腿部P1と脛部P2に対して足部P3の足裏に発生する摩擦力F0によって、脛部P2の重心P2gと足部P3の重心P3gとで相対変位が生じて起きる現象であり、また、内外転した状態では足首の角度はθ1となっている。
【0022】
前記コントローラ13は図5に示すフローチャートに従って制御を実行し、衝突形態を判定するとともに、その衝突形態に応じて前突エアバッグ20、側突エアバッグ21を選択して作動するようになっている。
【0023】
即ち、前記フローチャートは所定の短時間毎に処理され、まず、ステップS1によって前後減速度センサー11および横減速度センサー12で検出した前後減速度G1および横減速度G2を読み込み、ステップS2では前後減速度G1と図3のマップの第1しきい値αとを比較して前面衝突であるかどうかを判定し、前面衝突である場合(YES)はステップS3によって前突エアバッグ20を作動する。
【0024】
一方、前記ステップS2で前後減速度G1が第1しきい値αよりも小さいと判断した場合(NO)はステップS4に進み、横減速度G2と第2しきい値βとを比較して側面衝突であるかどうか判定し、側面衝突である場合(YES)はステップS5によって側突エアバッグ21を作動する。
【0025】
また、前記ステップS4で横減速度G2が第2しきい値βよりも小さいと判断した場合(NO)はステップS6によって軽衝突であると判断し、乗員保護手段を非作動状態とする。
【0026】
ところで、前面衝突と判定して前突エアバッグ20を作動する(ステップS2,S3)と、ステップS7によって側突エアバッグ21を作動する横減速度G2の判定レベルを前記第2しきい値βよりも低い第3しきい値γに下げ、ステップS8ではこの第3しきい値γと横減速度G2とを比較する。
【0027】
そして、横減速度G2が第3しきい値γ以上であると判断した場合(YES)は斜め衝突であると判定し、ステップS9によって斜め衝突用デバイスとなる側突エアバッグ21を作動するようになっており、この側突エアバッグ21の作動は、前記前突エアバッグ20が作動した後に一定の時間後に作動されるようになっている。
【0028】
図8〜図12は脚部拘束手段22の各種類(サポータ22a〜22c)をそれぞれ示し、それらの具体例を以下に説明する。
【0029】
図8の第1具体例は、大腿部P1にサポータ22aを設けるとともに、足部P3にサポータ22cを設け、これらサポータ22a,22cによって脚部拘束手段22を構成して、大腿部P1および足部P3が横倒れ方向に移動するのを拘束するようにしている。
【0030】
図9の第2具体例は、脛部P2にサポータ22bを設けるとともに、足部P3にサポータ22cを設け、これらサポータ22b,22cによって脚部拘束手段22を構成して、脛部P2および足部P3が横倒れ方向に移動するのを拘束するようにしている。
【0031】
図10の第3具体例は、大腿部P1のみにサポータ22aを設けて、このサポータ22aによって脚部拘束手段22を構成して、大腿部P1が横倒れ方向に移動するのを拘束するようにしている。
【0032】
図11の第4具体例は、脛部P2のみにサポータ22bを設けて、このサポータ22bによって脚部拘束手段22を構成して、脛部P2が横倒れ方向に移動するのを拘束するようにしている。
【0033】
図12の第5具体例は、大腿部P1にサポータ22aを設けるとともに、足部P3の載置部分に摩擦力F0を低減する足部摩擦低減部材30を設けて脚部拘束手段22を構成し、サポータ22aによって大腿部Pが横倒れ方向に移動するのを拘束するとともに、足部摩擦低減部材30によって足部P3に内外転を無くすようにしている。
【0034】
ところで、前記大腿部P1のサポータ22a,脛部P2のサポータ22b,足部P3のサポータ22cは、図13に示すようにドアトリム1aに突出部として形成することができる。
【0035】
以上の構成になる本実施形態の乗員保護装置は、衝突時に検知した前後減速度G1および横減速度G2を、第1しきい値α、第2しきい値βおよび第3しきい値γと比較して衝突形態を判定するようにしてあるので、この衝突形態を精度良く判別できるとともに、このように衝突形態が精度良く判別されることにより、乗員保護手段を適正かつ適時に作動させることができるため、衝突時の乗員Pの挙動をそれぞれ適正な状態で拘束できるようになり、乗員Pの保護性能を高めることができる。
【0036】
このとき、横減速度G2のしきい値β,γを、初期に発生する前後減速度G1に連動して可変とすることにより、側突エアバッグ21の展開(膨張)タイミングを、前後減速度G1を基にして精度良く制御できるとともに、判定および作動を確実なものとすることができる。
【0037】
また、乗員保護手段を、前面衝突時には前突エアバッグ20が作動し、側面衝突時には側突エアバッグ21が作動し、斜め衝突時には前突エアバッグ20および側突エアバッグ21が作動するように構成してあるので、各衝突形態に応じた乗員Pの拘束を適正に行って、乗員の保護性能を更に高めることができる。
【0038】
更に、前面衝突の判定によって前突エアバッグ20が作動した後、斜め衝突が判定された場合に、側突エアバッグ21を一定の時間後に作動させるようにしたので、斜め衝突直後に発生する乗員Pの前方移動および一定時間後に発生する乗員Pの上半身の横倒れ挙動も同時に抑制することができる。
【0039】
更にまた、斜め衝突時に乗員の脚部を拘束する脚部拘束手段22を設けて、乗員Pの足部P3の足首と脛部P2との相対変位を低減して、踵の内外転角を略一定に保持するようにしたので、斜め衝突時に発生する下肢の足首の内外転を抑制し、図2に示すように足首に発生する曲げモーメントMを低減することができる。
【0040】
ここで、図8に示す第1具体例では、足部P3の内外転を抑制するために大腿部P1にサポータ22aを設けるとともに、足部P3にサポータ22cを設けてあるため、車両1の側方移動に伴って大腿部P1には荷重F2、足部P3には荷重F1が作用し、膝下から足部P3までが一体となって横移動することになる。
【0041】
つまり、脛部P2と足部P3との間の足首の角度をθ2とすると、脛部P2の重心P2gの速度V1’と足部P3の重心P3gの速度V2’とを略等しく(V1’≒V2’)することができる。
【0042】
その結果、脛部P2の重心P2gと足部P3の重心P3gとの間に相対変位が生ずるのを防止し、前記足首の角度θ2は衝突前に比較して変化しないため、内外転の発生を阻止することができる。このとき、初期状態で足首に回転が起きていなければ、θ2≒180゜(>θ1)となる。
【0043】
本実施形態では膝部P2から足部P3までが一体で拘束されるため、足裏に生ずる摩擦力F0の影響を受けずに確実に挙動をコントロールすることができる。
また、大腿部P1にサポータ22aを設定したので、制御荷重F2を大腿部P1の広い面積に負荷できるので、単位面積当たりの荷重が小さくなり、乗員Pへの負荷を低減できるとともに、足部P3と大腿部P1との離れた2点間で挙動制御するため、制御荷重F2とF1とのアンバランスに対する感度を小さくでき、安定性を高くすることができる。
【0044】
図9に示す第2具体例では、脛部P2にサポータ22bを設けるとともに、足部P3にサポータ22cを設けたので、脛部P2に制御荷重F4が作用し、足部P3に制御荷重F3が作用することになり、この場合、脛部P2から足部P3までを一体にコントロールできるため対象の有効マスが小さくなり、制御に必要な荷重を小さくできる。
【0045】
図10に示す第3具体例では、大腿部P1のみにサポータ22aを設けて、この大腿部P1に制御荷重F5を作用させるようになっており、また、図11に示す第4具体例では、脛部P2のみにサポータ22bを設けて、この脛部P2に制御荷重F6を作用させるようになっており、これら第3,第4具体例では、足裏に生ずる摩擦荷重F0とのバランス設定が必要であるが、制御箇所を1箇所にできる利点がある。
【0046】
図12に示す第5具体例では、大腿部P1にサポータ22aを設けるとともに、足部P3の載置部分に摩擦力F0を低減する足部摩擦低減部材30を設けるようになっており、この場合、大腿部P1の一箇所に制御荷重F7が作用することになるが、足部摩擦低減部材30により足裏に生ずる摩擦荷重F0を小さくして、前記制御荷重F7と足裏に生ずる摩擦荷重F0とのバランス設定が不要となるため、確実性と安定性を向上することができる。
【0047】
ところで、脚部拘束手段22は、少なくとも大腿部P1を拘束可能に設けることができ、この場合、大腿部P1を中心に下肢の挙動制御を行うことで、制御荷重を作用させる面積を大きくできるので、制御時に乗員Pに加わる単位面積当たりの荷重(面圧)を小さくすることができる。
【0048】
また、脚部拘束手段22は、少なくとも脛部P2を拘束可能に設けることができ、この場合、脛部P2を中心に下肢の挙動制御を行うことで、制御対象となる下肢の有効マスが小さくなるため、制御時に必要なコントロールを小さくすることができる。
【0049】
更に、脚部拘束手段22を、少なくとも脛部P2と足部P3との2箇所を拘束可能に設けることにより、膝下から足部P3まで一体に拘束制御できるため、確実性を高めることができる。
【0050】
更にまた、脚部拘束手段22を、少なくとも大腿部P1と足部P3との2箇所を拘束可能に設けることにより、膝下から足先まで一体となって確実に挙動をコントロールできるため、効果を確実なものとすることができ、かつ、大腿部P1と足部P3との制御荷重のアンバランスに対する感度を小さくして安定性を高くすることができる。
【0051】
図14〜図22は脚部拘束手段22に設けられる足部挙動制御手段としての第1足置きパッド40を示し、図14は乗員Pの着座状態を示す斜視図、図15は乗員Pの着座状態を示す側面図、図16は図15中A部の拡大断面図、図17は第1足置きパッド40の拡大透視斜視図、図18は第1足置きパッド40の作動状態を示す拡大透視斜視図、図19は衝突により乗員Pが前屈した状態を示す側面図、図20は第1足置きパッド40に圧縮力が付加された場合の荷重と変形量との関係を示す特性図、図21は図18中B−B線に沿った拡大断面図、図22は図18中C−C線に沿った拡大断面図である。
【0052】
図14,図15に示すように乗員Pの足部P3を第1足置きパッド40に載置するようになっており、この第1足置きパッド40は前後減速度により足部P3に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に足裏全体が陥没して、足部P3の左右方向を拘束する第1足部挙動制御手段としての機能と、前後減速度により足部P3に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に足先部が踵部よりも下方に陥没して、足首を前屈させる第2足部挙動制御手段としての機能とを兼備するようにしている。
【0053】
図14,図15に示すようにシート30に着座した乗員Pの前方から下方には、ダッシュアッパパネル32、ダッシュロアパネル33およびフロアパネル34が配置され、乗員Pはシートベルト35を着用している。
【0054】
ダッシュロアパネル33の上面には前記第1足置きパッド40が設置され、乗員Pの右,左足部P3a,P3bを第1足置きパッド40の上面に乗せるようになっている。
【0055】
第1足置きパッド40は前方に行くに従って除々に厚肉化され、図15,図16に示すように第1足置きパッド40の上面の傾斜角θaは下面、つまりダッシュロアパネル33の傾斜角θbより大きく形成されている。
【0056】
図17に示すように、第1足置きパッド40の内部には前後方向に延びる複数の前後リブ41と左右方向に延びる複数の横リブ42とが格子状に組み合わされ、その格子構造の上側をフロアカーペット43で覆うようになっている。
【0057】
前後リブ41および横リブ42は、図18に示すように上方から所定以上の圧縮力が付加された場合に撓み変形するように、ある程度の剛性を備えた可撓性部材、例えば可撓性の合成樹脂によって形成してある。
【0058】
従って、図19に示すように衝突時に車両前方から荷重F8が作用すると、前後減速度により乗員Pが前方移動し、その際に乗員Pは下肢を踏ん張るため足部P3から第1足置きパッド40に圧縮力F9が付加されることになり、第1足置きパッド40には図20に示す特性をもって負荷が作用する。
【0059】
第1足置きパッド40の特性は規定値の荷重まではたわみ変形が発生せず、この規定値を超えるとたわみ変形を開始して一定量が陥没した後に底付きし、その後、再度荷重が上昇することになる。
【0060】
このとき、図20に示す第1足置きパッド40の荷重の規定値を、乗員Pの前方移動によって足部P3から第1足置きパッド40に生じた荷重F9以下に設定してあるので、図21,図22に示すように足部P3が第1足置きパッド40のリブ41,42の圧壊に伴ってフロアカーペット43とともに陥没する。
【0061】
前記第1足置きパッド40は、図21に示すように足部P3の圧縮荷重によってリブ41,42が圧壊して陥没する際に、バッド40の上面の傾斜角θaはダッシュロアパネル33の傾斜角θbよりも大きく形成してあるので、足部P3の先端部のほうが踵部よりも下方に大きく下方移動する。
【0062】
このため、足部P3は前屈して脛部P2と成す角度がθ4となり、これは衝突前の角度θ3(図16参照)よりも大きくなる。つまり、乗員Pの腰部が前方移動して足部P3が背屈する動きに対して、足首角度を衝突前の角度θ3に保持する方向に作用する。
【0063】
一方、図22に示すように足部P3が陥没した結果、フロアカーペット43に食い込んだ状態となるため左右方向が拘束(サポート)された状態となる。
【0064】
従って、前記第1足置きパッド40では乗員Pの前方移動により足部P3が前屈することで足首を負担軽減することができるとともに、足部P3の左右方向のサポートとともに、前述した図8,図9に示した足部P3の内外転を抑制するのに必要な足部P3を拘束することができる。
【0065】
また、このように第1足置きパッド40を用いることにより、図5のフローチャートのステップS9に示した斜め衝突用デバイスの作動信号を受けることなく足部P3の保護が可能となる。
【0066】
図23〜図29は足部挙動制御手段の他の実施形態を示し、前記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0067】
図23〜図29は脚部拘束手段22に設けられる他の足部挙動制御手段としての第2足置きパッド50を示し、図23は乗員Pの着座状態を示す斜視図、図24は第2足置きパッド50の拡大斜視図、図25は図24中D方向からの矢視図、図26は図24中E方向からの矢視図、図27は図23中F−F線に沿った拡大断面図、図28は作動状態の図27に対応した拡大断面図、図29は図28中G部分の拡大断面図である。
【0068】
図23,図27に示すように乗員Pの足部P3を第2足置きパッド50に載置するようになっており、この第2足置きパッド50は前後減速度により足部P3に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に、足部P3と載置部分との間の左右方向の摩擦力を低減する第3足部挙動制御手段としての機能と、前後減速度により足部P3に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に、足部P3と載置部分との間の前後方向の摩擦力を増大する第4足部挙動制御手段としての機能とを兼備している。
【0069】
前記第2足置きパッド50は、図23に示すように前記実施形態同様にダッシュロアパネル33に設置され、図24〜図29に示すように、ファイバー繊維51で連結した上層52と下層53とからなる2層構造として構成される。
【0070】
上層52の裏面には多数の球状ビーズ54が設けられるとともに、下層53の上面には車両左右方向に延びて前記球状ビーズ54を転動させる多数条の溝部55が形成されている。
【0071】
従って、図27に示す通常走行状態では乗員Pは第2足置きパッド50に足部P3を載置した状態にあり、この状態で衝突すると図28に示すように前方から荷重F8が作用することにより、前後減速度G1により乗員Pが前方移動する。
【0072】
すると、この前方移動に伴って第2足置きパッド50の上層52には足部P3から圧縮力F10が負荷し、その結果、ファイバー繊維51にも大きな圧縮力が作用して底付きするまで変形する。このとき、前記ファイバー繊維51の限界圧縮強度を乗員Pの前方移動によって足部P3から生ずる荷重F10以下に設定してある。
【0073】
従って、衝突時には図29に示すように、圧縮過程においてファイバー繊維51が座屈破損して上層52と下層53とが分離する一方、これら上層52が下層53に底付きする段階では、球状ビーズ54が溝部55に当接して自由に転動する状態となるため、溝部55に沿った左右方向の摩擦力が低減するとともに、前後方向の摩擦力を増大することができる。
【0074】
このため、足部P3の足裏の前後方向の摩擦力が高い状態で左右方向の摩擦力を低くできるので、足部P3が前方移動してダッシュアッパパネル32やダッシュロアパネル33の変形に伴う荷重を受けることなく、足部P3の内外転を抑制するための乗員Pの下肢の挙動コントロールを確実なものとすることができる。
【0075】
また、この実施形態の第2足置きパッド50は、前記実施形態の第1足置きパッド40と同様に図5に示した斜め衝突用デバイスの作動信号による作動指令を受けることなく足部P3を保護できる。
【0076】
図30,図31は脚部拘束手段の他の実施形態を示し、前記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0077】
図30はシートに着座した乗員の下肢部分の正面図、図31は脚部拘束手段の作動状態を示す図30に対応した正面図である。
【0078】
この実施形態ではシートクッション30aの中央部分に脚部拘束手段としてのセンターエアバッグ60を設けてあり、このセンターエアバッグ60は斜め衝突時に大腿部P1の内側を拘束可能となっている。
【0079】
前記センターエアバッグ60は、図30に示すように通常時は折り畳まれてシートクッション30aに格納されており、図5のフローチャートに示したステップS9の斜め衝突用デバイスの作動信号によって図31に示すように展開するようになっている。
【0080】
従って、前記センターエアバッグ60は、図30に示すように通常時は格納しているため乗員Pは普段通りに着座することができる一方、斜め衝突時には図31に示すように右大腿部P1aと左大腿部P1bとの間で展開して膨張するため、車両移動速度V3とともにシートクッション30aを介して左大腿部P1bの内側に制御荷重F7を生成できるため、足部P3の内外転を抑制するように下肢の挙動をコントロールすることができる。
【0081】
ところで、本発明の車両の乗員保護装置は前記各実施形態に例をとって説明したが、勿論、これら各実施形態に限定されるのもではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種実施形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における衝突時の車両挙動を順を追って示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態における衝突時の乗員挙動を示す正面図。
【図3】本発明の一実施形態における前後減速度および横減速度と各しきい値との関係を示すマップ。
【図4】本発明の一実施形態における衝突時に前後方向および横方向に発生する減速度波形のイメージ図。
【図5】本発明の一実施形態における衝突形態を判定するためのフローチャートを示す説明図。
【図6】本発明の一実施形態における斜め衝突時の乗員挙動を順を追って示す平面図。
【図7】本発明の一実施形態における斜め衝突時の乗員下肢の挙動を簡易的に示す正面図。
【図8】本発明の一実施形態における足部の内外転を抑制する手段の第1具体例を簡易的に示す正面図。
【図9】本発明の一実施形態における足部の内外転を抑制する手段の第2具体例を簡易的に示す正面図。
【図10】本発明の一実施形態における足部の内外転を抑制する手段の第3具体例を簡易的に示す正面図。
【図11】本発明の一実施形態における足部の内外転を抑制する手段の第4具体例を簡易的に示す正面図。
【図12】本発明の一実施形態における足部の内外転を抑制する手段の第5具体例を簡易的に示す正面図。
【図13】本発明の一実施形態における脚部拘束手段の取付け状態を示す要部断面正面図。
【図14】本発明の一実施形態における乗員の着座状態を示す斜視図。
【図15】本発明の一実施形態における乗員の着座状態を示す側面図。
【図16】図15中A部の拡大断面図。
【図17】本発明の一実施形態における第1足置きパッドの拡大透視斜視図。
【図18】本発明の一実施形態における第1足置きパッドの作動状態を示す拡大透視斜視図。
【図19】本発明の一実施形態における衝突により乗員が前屈した状態を示す側面図。
【図20】本発明の一実施形態における第1足置きパッドに圧縮力が付加された場合の荷重と変形量との関係を示す特性図。
【図21】図18中B−B線に沿った拡大断面図。
【図22】図18中C−C線に沿った拡大断面図。
【図23】本発明の他の実施形態における乗員の着座状態を示す斜視図。
【図24】本発明の他の実施形態における第2足置きパッドの拡大斜視図。
【図25】図24中D方向からの矢視図。
【図26】図24中E方向からの矢視図。
【図27】図23中F−F線に沿った拡大断面図。
【図28】本発明の他の実施形態における作動状態を示す図27に対応した拡大断面図。
【図29】図28中G部分の拡大断面図。
【図30】本発明の更に他の実施形態におけるシートに着座した乗員の下肢部分の正面図。
【図31】本発明の更に他の実施形態におけるセンターエアバッグの作動状態を示すシートに着座した乗員の下肢部分の正面図。
【符号の説明】
1 車両(自車両)
2 相手車両
11 前後減速度センサー
12 横減速度センサー
13 コントローラ(衝突形態判定手段)
20 前突エアバッグ(乗員保護手段)
21 側突エアバッグ(乗員保護手段)
22 脚部拘束手段(乗員保護手段)
22a,22b,22c サポータ(脚部拘束手段)
30 足部摩擦低減部材
40 第1足置きパッド(足部挙動制御手段)
50 第2足置きパッド(足部挙動制御手段)
60 センターエアバッグ(脚部拘束手段)
P 乗員
P1 大腿部
P2 脛部
P3 足部
G1 前後減速度
G2 横減速度
α 第1しきい値
β 第2しきい値
γ 第3しきい値

Claims (13)

  1. 車両前後方向に発生する前後減速度および車両左右方向に発生する横減速度をそれぞれ検出する減速度センサーと、
    前記減速度センサーにより検出された前後減速度および横減速度を、それぞれ前後減速度および横減速度に対して設定したしきい値と比較して車両の衝突形態を判定する衝突形態判定手段と、
    判定された衝突形態に応じて作動する乗員保護手段と、を備え、
    前記衝突形態判定手段は、
    前記しきい値として、前後減速度に対して設定される第1しきい値と、横減速度に対して設定される第2しきい値と、前後減速度が前記第1しきい値以上のときに横減速度に対して設定され、前記第2しきい値よりも低い値である第3しきい値とを有し、
    前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値以上で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第3しきい値未満のときに前面衝突と判定し、
    前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値未満で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第2しきい値以上のときに側面衝突と判定し、
    前記減速度センサーにより検出された前後減速度が前記第1しきい値以上で、且つ、前記減速度センサーにより検出された横減速度が前記第3しきい値以上のときに斜め衝突と判定することを特徴とする車両の乗員保護装置。
  2. 前記乗員保護手段として前突エアバッグおよび側突エアバッグを備え、
    前記衝突形態判定手段により前面衝突と判定された場合は前突エアバッグが作動し、前記衝突形態判定手段により側面衝突と判定された場合は側突エアバッグが作動し、前記衝突形態判定手段により斜め衝突と判定された場合は前突エアバッグおよび側突エアバッグが作動することを特徴とする請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
  3. 前記衝突形態判定手段により斜め衝突と判定された場合に、前突エアバッグが作動してから一定の時間後に側突エアバッグが作動することを特徴とする請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
  4. 斜め衝突時に、乗員の足首と脛部との相対変位を低減して、踝の内外転角を略一定に保持する脚部拘束手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
  5. 前記脚部拘束手段は、斜め衝突時に少なくとも乗員の大腿部を拘束可能に設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
  6. 前記脚部拘束手段は、斜め衝突時に少なくとも乗員の脛部を拘束可能に設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
  7. 前記脚部拘束手段は、斜め衝突時に少なくとも乗員の脛部と足部との2箇所を拘束可能に設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
  8. 前記脚部拘束手段は、斜め衝突時に少なくとも乗員の大腿部と足部との2箇所を拘束可能に設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
  9. 前記脚部拘束手段は、斜め衝突時に少なくとも乗員の大腿部の内側を拘束可能に設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
  10. 前記脚部拘束手段は、乗員の足部の載置部分に設けられ、前後加速度により足部に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に足裏全体が陥没して、足部の左右方向を拘束する第1足部挙動制御手段を有することを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
  11. 前記脚部拘束手段は、乗員の足部の載置部分に設けられ、前後加速度により足部に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に足先部が踵部よりも下方に陥没して、足首を前屈させる第2足部挙動制御手段を有することを特徴とする請求項4乃至10のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
  12. 前記脚部拘束手段は、乗員の足部の載置部分に設けられ、前後加速度により足部に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に、足部と載置部分との間の左右方向の摩擦力を低減する第3足部挙動制御手段を有することを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
  13. 前記脚部拘束手段は、乗員の足部の載置部分に設けられ、前後加速度により足部に付加する圧縮荷重が所定値を越えた際に、足部とその載置部分との間の前後方向の摩擦力を増大する第4足部挙動制御手段を有することを特徴とする請求項4乃至9または12のいずれか1項に記載の車両の乗員保護装置。
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