JP4122571B2 - エンジン始動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジン始動装置に関し、特に低温時のエンジン始動性を改善したものである。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
バッテリーの電力をスターターモーターに供給して駆動し、エンジンを始動するエンジン始動装置が知られている。
【0003】
低温時にはバッテリーの出力が低下するので、エンジンを始動できなくなることがある。また、低温時にバッテリー出力の低下によりエンジンの始動回転数が低いか、あるいはエンジンがほとんど回転しない場合には、乗員がエンジン始動不能と簡単にあきらめてしまう。
【0004】
本発明の目的は、低温時のエンジンの始動性を向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態の構成を示す図1および図2に対応づけて本発明を説明すると、
(1) 請求項1の発明は、バッテリー15から始動用モーター1へ電力を供給してエンジン2を始動するエンジン始動装置に適用される。
そして、エンジン2の始動可否を判定する始動可否判定手段16と、エンジン始動指令に応答して、エンジン始動可能の判定がなされるまでバッテリー15から始動用モーター1へ電力を供給して駆動し続け、エンジン始動可能の判定がなされると燃料噴射装置30によりエンジン2へ燃料を供給してエンジン2の発火運転を起動する始動制御手段16と、バッテリー15の温度と充電状態を検出するバッテリー状態検出手段21、23と、バッテリー15の温度と充電状態に基づいてエンジン2の始動時間を予測する始動時間予測手段16と、予測始動時間を表示する表示手段32とを備えることにより、上記目的を達成する。
(2) 請求項2のエンジン始動装置は、始動可否判定手段16によって、始動時のエンジン回転速度が所定値以上であれば始動可能と判定するようにしたものである。
(3) 請求項3のエンジン始動装置は、バッテリー15から始動用モーター1へ供給される電力を調節する電力調節手段11を備え、始動制御手段16によって、エンジン始動可能の判定がなされるまで電力調整手段11によりバッテリー15の最大出力を始動用モーター1へ供給するようにしたものである。
(4) 請求項4のエンジン始動装置は、エンジン始動可能の判定がなされるまでバッテリー15が暖機中であることを表示する表示手段32を備える。
【0006】
上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の効果】
(1) 請求項1の発明によれば、低温時にバッテリーの昇温動作が自動的に行われ、エンジンの始動性を向上させることができる上に、エンジンの始動時間を正確に予測でき、この始動待ち時間を知らせることによって乗員に安心感を与え、バッテリーの昇温途中で早まってキースイッチを切るようなことを避けることができる。
(2) 請求項2の発明によれば、始動時のエンジン回転速度のみにより簡単にエンジンの始動可否を判定することができる。
(3) 請求項3の発明によれば、バッテリーの昇温速度が速くなり、エンジン始動時間を短くすることができる。
(4) 請求項4の発明によれば、エンジンの始動待ち中であることを知らせることによって乗員に安心感を与えることができ、バッテリーの昇温途中で早まってキースイッチを切るようなことを避けることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明をハイブリッド車両に適用した一実施の形態を説明する。なお、本発明はハイブリッド車両に限定されず、従来のエンジン車両を含む、バッテリーの電力により始動用モーターを駆動してエンジンを始動するあらゆる車両に適用することができる。
【0009】
図1は一実施の形態の構成を示す図である。図において、太い実線は機械力の伝達経路を示し、太い破線は電力線を示す。また、細い実線は制御線を示し、二重線は油圧系統を示す。
この車両のパワートレインは、モーター1、エンジン2、クラッチ3、モーター4、無段変速機5、減速装置6、差動装置7および駆動輪8から構成される。モーター1の出力軸、エンジン2の出力軸およびクラッチ3の入力軸は互いに連結されており、また、クラッチ3の出力軸、モーター4の出力軸および無段変速機5の入力軸は互いに連結されている。
【0010】
クラッチ3締結時はエンジン2とモーター4が車両の推進源となり、クラッチ3解放時はモーター4のみが車両の推進源となる。エンジン2および/またはモーター4の駆動力は、無段変速機5、減速装置6および差動装置7を介して駆動輪8へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から圧油が供給され、ベルトのクランプと潤滑がなされる。油圧装置9のオイルポンプ(不図示)はモーター10により駆動される。
【0011】
モータ1,4,10は三相同期電動機または三相誘導電動機などの交流機であり、モーター1は主としてエンジン始動と発電に用いられ、モーター4は主として車両の推進と制動に用いられる。また、モーター10は油圧装置9のオイルポンプ駆動用である。なお、モーター1,4,10には交流機に限らず直流電動機を用いることもできる。また、クラッチ3締結時に、モーター1を車両の推進と制動に用いることもでき、モーター4をエンジン始動や発電に用いることもできる。
【0012】
クラッチ3はパウダークラッチであり、伝達トルクを調節することができる。なお、このクラッチ3に乾式単板クラッチや湿式多板クラッチを用いることもできる。無段変速機5はベルト式やトロイダル式などの無段変速機であり、変速比を無段階に調節することができる。
【0013】
モーター1,4,10はそれぞれ、インバーター11,12,13により駆動される。なお、モーター1,4,10に直流電動機を用いる場合には、インバーターの代わりにDC/DCコンバーターを用いる。インバーター11〜13は共通のDCリンク14を介してメインバッテリー15に接続されており、メインバッテリー15の直流充電電力を交流電力に変換してモーター1,4,10へ供給するとともに、モーター1,4の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリー15を充電する。インバーター11〜13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモーターにより発電された電力をメインバッテリー15を介さずに直接、力行運転中のモーターへ供給することができる。なお、この明細書では電池とバッテリーとを同義として用いる。
【0014】
コントローラー16は、マイクロコンピューターとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、エンジン2の回転速度、出力およびトルク、クラッチ3の伝達トルク、モーター1,4,10の回転速度およびトルク、無段変速機5の変速比、メインバッテリー15の充放電などを制御する。
【0015】
コントローラー16には、図2に示すようにキースイッチ20、バッテリー温度センサー21、エンジン回転センサー22、バッテリーSOC検出装置23、燃料噴射装置30、点火装置31、ディスプレイ32などが接続される。
【0016】
キースイッチ20は、車両のメインキー(不図示)がON位置またはSTART位置に設定されると閉路する。以下、スイッチの閉路をオンまたはON、開路をオフまたはOFFと呼ぶ。バッテリー温度センサー21はメインバッテリー15の温度Tbを検出し、エンジン回転センサー22はエンジン2の回転速度Neを検出する。バッテリーSOC検出装置23は、メインバッテリー15の充電状態SOC(State of Charge)を検出する。また、燃料噴射装置30は、コントローラー16の燃料噴射指令にしたがってエンジン2への燃料の供給、停止、噴射量を制御する。さらに、点火装置31は、エンジン2の点火指令にしたがって点火プラグを駆動して点火する。
【0017】
図3は、メインバッテリー15の温度特性を示す。ここでは、25℃において25kwの出力が得られるリチウム・イオン電池の初期品の、出力時間10secの特性を例に上げて説明するが、他の種類の電池も同様な特性を有している。
電池は、SOCを一定とすると温度が低下するほど出力が低下するので、低温になるほど所定の出力を得るためには大きなSOCが必要となる。例えば、モーター1によりエンジン2を始動するのに必要な電池出力(目標値)を5kwとすると、−20℃ではSOCが25%もあれば始動可能であるが、−30℃になるとSOCが75%も必要になる。
【0018】
一般に、電池は、放電の進行にともなって電池自体の温度が上昇し、それにより出力も増加する。そこで、この実施の形態では、電池の温度が低くて所定の出力が得られない場合は、所定の出力が得られるまで電池を放電させて電池の温度を上げる。
【0019】
図4は一実施の形態のエンジン始動処理を示すフローチャートである。このフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。
コントローラー16は、車両運行開始時にエンジン2の温度(エンジン冷却水温度)が所定値以下の場合、エンジン2の駆動力による走行モードへ移行する場合、運行中にメインバッテリー15のSOCが所定値を下回ってモーター1による発電が必要になった場合など、エンジン2の始動条件が成立するとこの制御プログラムを実行してエンジン2の始動処理を行う。ステップ1において、モーター1を駆動してエンジン2のクランキングを開始する。この時、メインバッテリー15の温度を早く上げるために、最大出力で放電させることが望ましい。なお、始動時にメインバッテリー15からモーター1へ供給される電力は、コントローラー16の指令にしたがってインバーター11により調節される。
【0020】
続くステップ2で、エンジン回転センサー22により検出されたエンジン回転速度Neに基づいて、エンジン始動不能か否かを確認する。エンジン2は、始動可能な所定速度以上で回転している時に燃料が噴射されて発火されると、発火運転に移行して始動する。ところが、メインバッテリー15のSOCが低く、エンジン2の回転速度が始動可能な所定速度に達しない場合は、エンジン2は始動しない。この実施の形態では、始動時のエンジン回転速度Neに基づいて始動可否を判定する例を示すが、始動可否の判定方法はこの実施の形態に限定されず、例えばエンジンの吸気圧などに基づいて始動可否を判定するようにしてもよい。エンジン回転速度Neが始動可能な所定速度以上の場合は、エンジン始動可能としてステップ3へ進み、燃料噴射装置30により燃料を噴射するとともに、点火装置31により点火してエンジン2の発火運転を起動し、エンジン始動処理を終了する。
【0021】
エンジン回転速度Neが始動可能な所定速度に達しない場合は、エンジン始動不能と判断してステップ4へ進み、キースイッチ20がオフされたか否かを確認する。キースイッチ20がオフされた時はエンジン始動処理を終了する。キースイッチ20がオフされていない時はステップ5へ進み、ディスプレイ32に”バッテリー暖機中”と表示して途中でキースイッチ20をオフさせないようにする。
【0022】
ステップ6において、エンジン始動完了までの始動待ち時間を予測し、ディスプレイ32に表示する。始動待ち時間は、バッテリーSOC検出装置23で検出されるSOCとバッテリー温度センサー21で検出されるバッテリー温度Tbとに基づいて、予め測定したバッテリー温度特性(図3参照)から現在の電池出力を求め、予め測定したバッテリー出力特性(図5参照)から電池出力がエンジン始動可能な目標値に達するまで時間を予測する。図5に示す特性は、電池の最大出力で放電した時の放電時間に対する電池出力を表す。この実施の形態では、バッテリーの温度とSOCに基づいてエンジンの始動待ち時間を予測する例を示すが、始動待ち時間の予測方法はこの実施の形態に限定されない。例えば、エンジン始動時のエンジン回転速度と始動待ち時間との関係を予め測定し、クランキング開始後のエンジン回転速度に基づいて始動待ち時間を予測するようにしてもよい。
【0023】
ステップ7で、エンジン2の回転速度が始動可能な所定速度に達したか、すなわちエンジン始動可能か否かを確認し、始動可能であればステップ8へ進み、燃料噴射装置30と点火装置31を駆動してエンジン2の発火運転を起動する。一方、エンジン2の回転速度が所定速度に達せず、エンジン始動不能の場合はステップ9へ進み、キースイッチ20がオフされていないかどうかを確認する。キースイッチ20がオフされている場合はエンジン始動処理を終了し、そうでなければステップ5へ戻ってメインバッテリー15の暖機を続ける。
【0024】
以上の一実施の形態の構成において、メインバッテリー15がバッテリーを、モーター1が始動用モーターを、エンジン2がエンジンを、コントローラー16が始動可否判定手段、始動制御手段および始動時間予測手段を、ディスプレイ32が表示手段を、バッテリー温度センサー21およびバッテリーSOC検出装置23がバッテリー状態検出手段をそれぞれ構成する。
【0025】
なお、上述した一実施の形態ではガソリンエンジンを例に上げて説明したが、例えばディーゼルエンジンなどの他の種類のエンジンに対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1に続く、一実施の形態の構成を示す図である。
【図3】バッテリーの温度特性を示す図である。
【図4】エンジン始動処理を示すフローチャートである。
【図5】バッテリーの出力特性を示す図である。
【符号の説明】
1 モーター
2 エンジン
3 クラッチ
4 モーター
5 無断変速機
6 減速装置
7 差動装置
8 駆動輪
9 油圧装置
11〜13 インバーター
14 DCリンク
15 メインバッテリー
16 コントローラー
20 キースイッチ
21 バッテリー温度センサー
22 エンジン回転センサー
23 バッテリーSOC検出装置
30 燃料噴射装置
31 点火装置
32 ディスプレイ
Claims (4)
- バッテリーから始動用モーターへ電力を供給してエンジンを始動するエンジン始動装置において、
前記エンジンの始動可否を判定する始動可否判定手段と、
エンジン始動指令に応答して、エンジン始動可能の判定がなされるまで前記バッテリーから前記始動用モーターへ電力を供給して駆動し続け、エンジン始動可能の判定がなされると燃料噴射装置により前記エンジンへ燃料を供給してエンジンの発火運転を起動する始動制御手段と、
前記バッテリーの温度と充電状態を検出するバッテリー状態検出手段と、
前記バッテリーの温度と充電状態に基づいて前記エンジンの始動時間を予測する始動時間予測手段と、
前記予測始動時間を表示する表示手段とを備えることを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項1に記載のエンジン始動装置において、
前記始動可否判定手段は、始動時のエンジン回転速度が所定値以上であれば始動可能と判定することを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項1または請求項2に記載のエンジン始動装置において、
前記バッテリーから前記始動用モーターへ供給される電力を調節する電力調節手段を備え、
前記始動制御手段は、エンジン始動可能の判定がなされるまで前記電力調整手段により前記バッテリーの最大出力を前記始動用モーターへ供給することを特徴とするエンジン始動装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のエンジン始動装置において、
エンジン始動可能の判定がなされるまで前記バッテリーが暖機中であることを表示する表示手段を備えることを特徴とするエンジン始動装置。
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