JP4121192B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、そのための環状アジン色素、および環状アジン色素の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状アジン色素およびそれを用いたエレクトロルミネッセンス(EL)素子および環状アジン色素の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、なかでも、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができ、有望な表示素子として注目されている。例えば、有機化合物の蒸着により有機薄膜を形成するEL素子が知られている(アプライドフィジックスレターズ,51巻,913頁,1987年)。上記文献に記載の有機EL素子は、電子輸送材料と正孔輸送材料の積層構造を有し、従来の単層型素子に比べてその発光特性が大幅に向上している。
【0003】
上記積層型EL素子の発光効率を改良する手段として、蛍光色素をドープする方法が知られている。例えば、ジャーナルオブアプライドフィジックス65巻3610頁1989年に記載のクマリン色素をドープした有機EL素子は、ドープしない素子に比べて発光効率が大幅に向上している。
また、蛍光色素をドープすることにより、所望の波長の光を取り出すことが可能である。フルカラーディスプレイおよびバックライトなどに有機ELを適用するためには、適度な波長で発光し、耐久性に優れる蛍光色素開発が必要であり、耐久性、発光効率の点で特に赤色蛍光色素の開発が望まれている。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられている赤色蛍光色素としてはナイルレッドが知られているが、色相が短波であること、および耐久性に優れないなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、適度な波長で発光し、しかも耐久性に優れる赤色蛍光色素を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
本発明の他の目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)に用いることができる、適度な波長で発光し、しかも耐久性に優れる赤色蛍光色素を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、このような赤色蛍光色素を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記〔1〕〜〔4〕の有機エレクトロルミネッセンス素子、環状アジン型色素、および環状アジン色素の製造方法が提供され、上記目的が達成される。
〔1〕電極間に少なくとも一層の有機薄膜を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、下記一般式(1)で表される環状アジン色素群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0007】
【化5】
【0008】
式中、X1は酸素原子、硫黄原子またはN−R19基を表し、R11〜R18および該R19は、同一または異なって、それぞれ水素原子または置換基を表す。但し、X1が酸素原子または硫黄原子のときは、R16とR17が連結して芳香環を形成しない。
〔2〕下記一般式(2)で表される環状アジン色素。
【0009】
【化6】
【0010】
式中、R21〜R29及びRa 、Rb は、同一または異なって、それぞれ水素原子または置換基を表す。
〔3〕下記一般式(3)で表されるフェニレンジアミン誘導体と下記一般式(4)で表されるフェノール誘導体とを、アルカリ性雰囲気下に酸化剤を存在させて反応させることを特徴とする下記一般式(5)で表される環状アジン色素の製造方法。
【0011】
【化7】
【0012】
式中、X2は、酸素原子、硫黄原子またはN−R36基を表し、R31〜R35および該R36は、同一または異なって、それぞれ水素原子または置換基を表し、R41〜R43は、同一または異なって、水素原子または置換基を表し、Y1〜Y4は、同一または異なって、それぞれ水素原子または離脱基を表す。
〔4〕一般式(6)または一般式(7)で表されるアニリン誘導体を、アルカリ性雰囲気下に、酸化剤により酸化反応させることを特徴とする一般式(8)で表される環状アジン色素の製造方法。
【0013】
【化8】
【0014】
式中、X3は、酸素原子、硫黄原子またはN−R69基を表し、R61〜R68および該R69は、同一または異なって、それぞれ水素原子または置換基を表し、X4は、酸素原子、硫黄原子またはN−R79基を表し、R71〜R78および該R79は、同一または異なって、それぞれ水素原子または置換基を表し、Y5〜Y10は、同一または異なって、それぞれ水素原子または離脱基を表す。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明するが、それにより本発明の別の目的、利点および効果が明らかになるであろう。
一般式(1)について説明する。X1は、酸素原子、硫黄原子またはN−R19基を表す。特に好ましくはN−R19基である。R19は、水素原子または置換基を表す。
置換基の例として下記のものを挙げることができる。
アルキル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
アルケニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
アルキニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
アリール基:好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0016】
アシル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
アリールオキシカルボニル基:好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。
アルキルアミノカルボニル基:好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜25であり、例えばエチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基などが挙げられる。
アリールアミノカルボニル基:好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルアミノカルボニルなどが挙げられる。
スルホニル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。
ヘテロ環基:好ましくは5または6員環の単環または縮環構造を有する炭素数3〜30のヘテロ環基(ヘテロ原子としては、例えば、酸素、窒素、硫黄)、例えばイミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノなどが挙げられる。
これらの置換基はさらに置換されてもよい。
【0017】
R19は、R13またはR18と結合して、5または6員環の炭素数3〜20の含窒素ヘテロ環を形成することができる。
R19として、好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換カルボニル基、炭素数1〜20の置換スルホニル基が挙げられ、置換カルボニル基の置換基としては脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、無置換または置換アミノ基、ヒドロキシル基を表し、置換スルホニル基の置換基としては脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、置換または無置換のアミノ基、ヒドロキシル基を表す。また、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基である。
【0018】
R11〜R18は、同一または異なって、水素原子または置換基を表す。
R11,R12の置換基の例としては、前記R19で挙げた置換基が挙げられる。
R13〜R18の置換基の例としては、下記のものを挙げることができる。
アルキル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
アルケニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
アルキニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
アリール基:好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0019】
アミノ基:好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。
アルコキシ基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。
アリールオキシ基:好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。
アシル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0020】
アリールオキシカルボニル基:好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。
アルキルアミノカルボニル基:好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜25であり、例えばエチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基などが挙げられる。
アリールアミノカルボニル基:好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルアミノカルボニルなどが挙げられる。
アシルオキシ基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。
【0021】
アシルアミノ基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。
アルコキシカルボニルアミノ基:好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
アリールオキシカルボニルアミノ基:好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。
スルホニルアミノ基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。
スルファモイル基:好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。
【0022】
カルバモイル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。
アルキルチオ基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
アリールチオ基:好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。
スルホニル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。
スルフィニル基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。
ウレイド基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。
リン酸アミド基:好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。
その他の基:ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノなど)などが挙げられる。
これらの置換基はさらに置換されてもよい。
【0023】
R13〜R18の各置換基は、それぞれ結合して5〜6員環の脂環、ヘテロ環または芳香環を形成することが出来るが、但し、前記X1が酸素原子または硫黄原子のときは、R16,R17が連結して芳香環を形成しない。例えば、置換基R12とR14、R11とR13は結合して5〜6員環の脂環を形成してもよいし、R16とR17は結合して芳香環を形成してもよいが、前記X1が酸素原子または硫黄原子のときは、R16,R17が連結して芳香環を形成しない。
【0024】
R11、R12は好ましくは炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基であり、R11、R12はR13、R14とそれぞれ結合して5〜6員環の脂環を形成してもよく、例えばインドリン環、テトラヒドロキノリン環、ジュロリジン環を形成してもよい。また、R11とR12で連結して環を形成してもよく、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。
R13、R14、R15は、好ましくは水素原子、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の置換または無置換のアルコキシ基、無置換のアミノ基、炭素数1〜20の置換アミノ基であり、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、芳香族ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。
また、特に好ましくは水素原子、炭素数1〜10の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基、炭素数1〜10の置換アミノ基であり、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、芳香族ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。
【0025】
R16,R17として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数0〜30の置換スルホンアミド基、炭素数1〜30のカルボンアミド基、炭素数1〜20のウレイド基が挙げられ、X1がN−R19基の場合は、R16,R17が結合して芳香環を形成してもよく、ベンゾ縮環を形成したものが好ましい。
R18は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数2〜30のヘテロ環基、炭素数1〜30の置換カルボニル基、炭素数0〜30のスルファモイル基、炭素数1〜30のスルホンアミド基、炭素数1〜30のカルボンアミド基、炭素数1〜30のウレイド基が挙げられる。特に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の置換カルボニル基、炭素数1から30のアミド基である。
【0026】
以下に一般式(1)の置換基の好ましい組み合わせについて説明する。
一般式(1)の好ましい組み合わせは、X1 はN−R19基、R19は水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換カルボニル基、炭素数0〜20の置換スルホニル基である。置換カルボニル基の置換基としては脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、無置換または置換アミノ基、ヒドロキシル基を表し、置換スルホニル基の置換基としては脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、置換または無置換のアミノ基、ヒドロキシル基を表す。また、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、芳香族ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基である。R11、R12は炭素数1〜20の無置換または置換のアルキル基であり、R13またはR14とそれぞれ結合して環(好ましくは5〜6員の脂環)を形成してもよく、例えばインドリン環、テトラヒドロキノリン環、ジュロリジン環を形成してもよい。また、R11とR12で連結して環を形成してもよく、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。R13、R14、R15は水素原子、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜20の置換または無置換のアルコキシ基、無置換のアミノ基、炭素数1〜20の置換アミノ基であり、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、芳香族ヘテロ環アミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。R16、R17は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のスルホニルアミノ基、炭素数2〜30のアシルアミノ基、炭素数1〜30のウレイド基であり、R16、R17が結合して芳香環を形成してもよい。R18は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数2〜30のヘテロ環基、炭素数1〜30の置換カルボニル基、炭素数0〜30のスルファモイル基、炭素数1〜30のスルホンアミド基、炭素数1〜30のカルボンアミド基、炭素数1〜30のウレイド基が挙げられる。
【0027】
更に好ましい組み合わせとしては、X1 はN−R19基、R19は水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換カルボニル基である。置換カルボニル基の置換基としては脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、無置換または置換アミノ基、ヒドロキシル基を表す。また、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。
R11、R12は炭素数1〜20の無置換または置換のアルキル基であり、R13またはR14とそれぞれ結合して環(好ましくは5〜6員の脂環)を形成してもよく、例えばインドリン環、テトラヒドロキノリン環、ジュロリジン環を形成してもよい。また、R11とR12で連結して環を形成してもよく、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。R13、R14、R15は水素原子、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換アミノ基であり、置換アミノ基はアルキルアミノ基、アリールアミノ基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基を表す。R16、R17は結合して芳香環を形成しており、R18は水素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換カルボニル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数2〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のウレイド基である。
【0028】
特に好ましい組み合わせとしては,X1 はN−R19基、R19は水素原子、置換または無置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、R11、R12は炭素数1〜12の無置換または置換のアルキル基であり、R13またはR14とそれぞれ結合して環(好ましくは5〜6員の脂環)を形成してもよく、例えばインドリン環、テトラヒドロキノリン環、ジュロリジン環を形成してもよい。また、R11とR12で連結して環を形成してもよく、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。R13、R14、R15は水素原子、炭素数1〜12の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜12の置換または無置換のアルコキシ基であり、R16、R17は結合してベンゼン環を形成しており、R18は水素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換カルボニル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数2〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のウレイド基である。
【0029】
次に、一般式(2)について説明する。なお、一般式(2)で表される環状アジン色素は、一般式(1)で表される環状アジン色素に包含される。
R21,R22は、水素原子または置換基を表し、置換基の例、およびその好ましい範囲は前記R11,R12と同様である。
R23,R24,R25は、水素原子または置換基を表し、置換基の例、およびその好ましい範囲は、それぞれ前記R13,R14,R15と同様である。
【0030】
R26〜R29は、水素原子または置換基を表し、置換基の例としては前記R13〜R18で挙げた置換基の例と同様である。
R26は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1〜30のカルボニルアミノ基(例えばパーフルオロベンゾイルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基)、炭素数1〜20のスルホンアミド基が挙げられる。なかでも、水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のカルボニルアミノ基、炭素数1〜20のスルホンアミド基が特に好ましい。
R27〜R29は、好ましくは水素原子、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、ハロゲン原子であり、水素原子が特に好ましい。
【0031】
Ra は、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルキル基を表し、炭素数1〜30の置換または無置換のアルコキシ基、炭素数1〜30の置換または無置換のアミノ基が好ましい。
Rb は、前記R19と同義である
【0032】
一般式(1)または(2)で表される化合物は低分子量化合物であってもよいし、一般式(1)または(2)で表される残基がポリマー主鎖に接続された高分子量化合物(好ましくは重量平均分子量1000〜5000000、特に好ましくは5000〜2000000、さらに好ましくは10000〜1000000)もしくは、一般式(1)または(2)の骨格を主鎖にもつ高分子量化合物(好ましくは重量平均分子量1000〜5000000、特に好ましくは5000〜2000000、更に好ましくは10000〜1000000)であってもよい。高分子量化合物の場合は、ホモポリマーであってもよいし、他のモノマーとの共重合体であってもよい。
一般式(1)または(2)で表される化合物としては、好ましくは、低分子量化合物である。また、一般式(1)または(2)は便宜的に極限構造式で表しているが、その互変異性体であってもよい。
【0033】
次に、一般式(1)および(2)で表される環状アジン色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
次に、本発明の環状アジン色素の合成法について説明する。
本発明の環状アジン色素は、下記反応式(1)および(2)に従って合成することができる。
【0041】
【化15】
【0042】
まず、反応式(1)による合成法について説明する。
一般式(5)に示す環状アジン色素は、一般式(3)で示されるフェニレンジアミン誘導体またはその塩と一般式(4)で表されるフェノール誘導体を、アルカリ性雰囲気下に酸化剤を存在させて反応させることにより、得ることができる。
反応をアルカリ雰囲気下で行なうには、通常塩基を添加するが、上記の反応原料が十分に塩基性であれば、塩基を添加する必要はない。塩基は、種々の無機または有機塩基を用いることができ、たとえば、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属アルコキシド誘導体、アミン誘導体などを用いることができる。具体的には、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、ナトリウムアルコキサイドなどの使用が好ましい。塩基の量は特に限定しないが、好ましくは、反応基質に対して0.01当量から30当量、特に好ましくは1当量から10当量用いるとよい。(ここで反応基質とはフェノール誘導体を示し、それに対する使用塩基量を当量とする。反応に使用するフェノール誘導体のフェノール性水酸基をすべて解離させるに必要な最低の塩基量を1当量とする。)
【0043】
酸化剤としては、特に限定しないが、無機または有機化合物の酸化剤を用いることができ、たとえば、金属酸化物、過硫酸塩、キノン誘導体などが挙げられる。具体的には、過硫酸アンモニウム、酸化銀、二酸化マンガン、クロラニルなどの使用が好ましい。酸化剤の量は特に限定しないが、好ましくは、反応基質に対して0.01当量から30当量、特に好ましくは1当量から10当量用いるとよい。(ここで反応基質はフェニレンジアミン誘導体を示し、それに対する使用酸化剤量を当量とする。反応に使用するフェニレンジアミン誘導体を2電子酸化するに必要な最低の酸化剤量を1当量とする。)
【0044】
本反応は、溶媒を用いることが好ましい。溶媒として、アルコール系、エーテル系などの種々の有機溶媒、水およびその混合溶媒を用いることができる。なかでも、メタノール、エタノール−水混合溶媒、テトラヒドロフランなどの使用が好ましい。
反応温度は特に限定はないが、−20℃から100℃が好ましく、0℃から50℃が特に好ましい。
【0045】
一般式(3)、(4)について説明する。
X2は、酸素原子、硫黄原子、またはN−R36基を表し、その好ましい範囲は前記X1と同じである。
R31,R32,R33,R34,R35,R36は、前記R11,R12,R13,R14,R15,R19とそれぞれ同義であり、置換基の例、および、その好ましい範囲も同じである。 R41,R42,R43は、前記R18,R17,R16とそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同じである。
【0046】
Y1〜Y4は、水素原子またはカップリングして離脱する基を表す。離脱基としては、特に限定しないが、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキルスルフォニル基(好ましくは炭素数1〜20、例えばメタンスルフォニル基、ブタンスルフォニル基)、アリールスルフォニル基(好ましくは炭素数1〜20、例えばベンゼンスルフォニル基、パラトルエンスルフォニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばメトキシカルボニルメチレンオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばフェノキシ基、シアノフェノキシ基)、含窒素ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、例えばフタルイミド基、ジメチルヒダントイン基、ウラゾリル基、ピラゾリル基、ジメチルオキサゾリジンジオン基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばアセトキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばメトキシカルボニルオキシ基)、アミノカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、ジメチルアミノカルボニルオキシ基、モルフォリノカルボニルオキシ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、例えばフェニルチオ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数6〜20、例えばブトキシカルボニルメチレンチオ基)等が挙げられる。
Y1,Y2は、好ましくは水素原子であり、Y3,Y4は、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子である。
【0047】
次に、反応式(2)で示される合成法について説明する。
一般式(8)で表される本発明の環状アジン化合物は、一般式(6)または一般式(7)で表されるフェノール誘導体に、アルカリ性雰囲気下、酸化剤を作用させて、分子内カップリングさせることにより得ることができる。アルカリ性雰囲気とするために用いることができる塩基、酸化剤および反応条件は前記反応式(1)の場合と同じである。
【0048】
一般式(6)において、X3は、酸素原子、硫黄原子、N−R69基を表し、その好ましい範囲は前記X1と同じである。
R61,R62,R63,R64,R65,R66,R67,R68,R69は、前記R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19とそれぞれ同義であり、置換基の例、および、その好ましい範囲もそれぞれ同じである。
Y5〜Y7は、水素原子またはカップリングして離脱する基を表す。離脱基としては、例えば、前述のY1で挙げた離脱基が挙げられる。Y7は、好ましくは水素原子であり、Y5,Y6は、好ましくは水素原子、炭素数1〜30のアルキルスルフォニル基または炭素数6〜30のアリールスルフォニル基である。
【0049】
一般式(7)において、X4は、N−R79基を表し、その好ましい範囲は前記X1と同じである。
R71,R72,R73,R74,R75,R76,R77,R78,R79は、前記R11,R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19とそれぞれ同義であり、置換基の例、および、その好ましい範囲もそれぞれ同じである。
Y8〜Y10は水素原子またはカップリングして離脱する基を表す。離脱基としては、例えば前述のY1で挙げた離脱基が挙げられる。Y8は、好ましくは水素原子である。Y9,Y10は、好ましくは水素原子、炭素数1〜30のアルキルスルフォニル基、または炭素数6〜30アリールスルフォニル基である。
【0050】
次に、本発明の環状アジン型色素を含有するEL素子に関して説明する。
本発明の環状アジン型色素を含有するEL素子の有機層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法などの方法が用いられ、特性面、製造面で抵抗加熱蒸着、コーティング法が好ましい。
【0051】
本発明の発光素子は、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物薄膜を形成したで素子であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0052】
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、さらに好ましくは100nm〜500nmである。
【0053】
陽極は、通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、通常0.2mm以上、好ましくは0.7mm以上のものを用いる。
陽極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。
陽極は、洗浄その他の処理により、素子の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などが効果的である。
【0054】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの負極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。陰極の材料としては金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)およびそのフッ化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)およびそのフッ化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金またはそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属等が挙げられ、好ましくは仕事関数が4eV以下の材料であり、より好ましくはアルミニウム、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属等である。陰極は、上記化合物および混合物の単層構造だけでなく、上記化合物および混合物を含む積層構造を取ることもできる。陰極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、さらに好ましくは100nm〜1μmである。
陰極の作製には電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。さらに、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
陽極および陰極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0055】
発光層の材料は、電界印加時に陽極または正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであれば何でもよい。好ましくは発光層に本発明の環状アジン化合物を含有するものであるが、他の発光材料を用いることもできる。例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物等が挙げられる。発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、さらに好ましくは10nm〜500nmである。
発光層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などの方法が用いられ、好ましくは抵抗加熱蒸着、コーティング法である。
【0056】
正孔注入層、正孔輸送層の材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー等が挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、さらに好ましくは10nm〜500nmである。正孔注入層、正孔輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
正孔注入層、正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0057】
電子注入層、電子輸送層の材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルビジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられる。電子注入層、電子輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、さらに好ましくは10nm〜500nmである。電子注入層、電子輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子注入層、電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
【0058】
保護層の材料としては水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等の金属酸化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法についても特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法等を適用できる。
【0059】
本発明の一般式(2)で表される化合物は、有機EL用途のほか、写真用色素、インクジェット用色素、印刷用色素、感熱転写記録用色素、カラーフィルター用色素、色変換フィルター用色素、医療用途等に用いることができる。
【0060】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に制限されるものではない。
(合成例)
<化合物(1−1)の合成>
下記に示される方法で、前記化合物(1−1)を合成した。
【0061】
【化16】
【0062】
即ち、上記アミン誘導体(b)1.1gおよびフェノール誘導体(a)1.0gにエタノール5ml、水1mlを加え、室温で攪拌した。これに、炭酸カリウム1.05g、過硫酸アンモニウム1.0gを添加し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル、水を加え、分離した有機層を、一規定塩酸水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、化合物(1−1)の粗結晶を得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル系)で精製し化合物(1−1)の結晶0.4gを得た。(1−1)の酢酸エチル中での吸収スペクトルを測定したところ、λmax=548nm,ε=57000であった。
<化合物(1−11)の合成>
下記に示される方法で、前記化合物(1−11)を合成した。
【0063】
【化17】
【0064】
即ち、上記フェノール誘導体(c)0.5gにエタノール5ml、水を1ml加え、室温で攪拌した。これに、炭酸カリウム0.5g、過硫酸アンモニウム0.5gを添加し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル、水を加え、分離した有機層を水で洗浄した。酢酸エチル/ヘキサン系で晶析し化合物(1−11)の結晶0.17gを得た。酢酸エチル中での吸収スペクトルを測定したところλmax=596nmであった。
【0065】
<化合物(1−19)の合成>
下記に示される合成スキームに従い、前述の化合物(1−1)の合成法と同様の方法で前記化合物(1−19)を2.9g合成した。ジクロロエタン中の吸収スペクトルを測定したところ、λmax=542nmであった。
【0066】
【化18】
【0067】
<化合物(1−20)の合成>
下記に示される合成スキームに従い、前述の化合物(1−1)の合成法と同様の方法で前記化合物(1−20)を0.5g合成した。ジクロロエタン中の吸収スペクトルを測定したところ、λmax=555nmであった。
【0068】
【化19】
【0069】
<化合物(1−24)の合成>
下記に示される合成スキームに従い、前述の化合物(1−1)の合成法と同様の方法で前記化合物(1−24)を3.1g合成した。ジクロロエタン中の吸収スペクトルを測定したところ、λmax=548nmであった。
【0070】
【化20】
【0071】
<化合物(1−36)の合成>
下記に示される合成スキームに従い、前述の化合物(1−1)の合成法と同様の方法で前記化合物(1−36)を2.7g合成した。ジクロロエタン中の吸収スペクトルを測定したところ、λmax=546nmであった。
【0072】
【化21】
【0073】
(EL素子の作製および評価)
実施例1
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで製膜したもの(東京三容真空(株)製)を透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄後、ポリ(N−ビニルカルバゾール)40mg、PBD(2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)12mg、表1記載の化合物1.0mgを1,2−ジクロロエタン3mlに溶解し、洗浄したITO基板上にスピンコートした。生成した有機薄膜の膜厚は、約120nmであった。有機薄膜上にパターニングしたマスクを設置し、蒸着装置内でマグネシウム:銀=10:1を250nm共蒸着した後、銀300nmを陰極に蒸着した。
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社の輝度計BM−8、発光波長を浜松ホトニクス社製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
(*) ○:目視でダークスポットを確認できない
△:ダークスポット少ない
×:ダークスポット多い
【0076】
【化22】
【0077】
比較化合物Bのナイルレッドは16Vで最高輝度110cd/m2 を示した。発光のλmaxは590nmであり発光面にダークスポットが目視された。
表1の結果から明らかなように、本発明の化合物を用いた素子では、比較化合物に比べ、通常発光輝度が低い塗布方式においても低電圧駆動、高輝度発光が可能であり、かつ色純度の高い赤色発光を示した。また、表1の結果から、本発明の化合物を用いた素子は耐久性にも優れることがわかる。
【0078】
実施例2
実施例1と同様にITO基板をエッチング、洗浄後、TPD(N,N' −ビス(3−メチルフェニル)−N,N' −ジフェニルベンジジン)約40nm、表2記載の化合物約20nm、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール約40nmを順に10-5〜10-6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下蒸着した。次いで実施例1と同様に陰極を蒸着し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2の結果から明らかなように、本発明の化合物を用いた素子では、蒸着方式でも比較化合物に比べ、高輝度発光が可能であり、かつ色純度の高い赤色発光を示した。
【0081】
実施例3
実施例1と同様にITO基板をエッチング、洗浄後、TPD約40nm蒸着した後、表3記載の化合物およびAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)をそれぞれ蒸着速度0.04Å/秒、4Å/秒で膜厚約60nmとなるように共蒸着した。次いで実施例1と同様に陰極を蒸着し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【0084】
表3の結果から明らかなように、本発明の化合物を用いた素子では、蒸着方式ドープ系でも比較化合物に比べ、高輝度発光が可能であり、また色純度の高く、面状の優れた赤色発光を示した。かつ、本発明の化合物を用いた素子は耐久性に優れることがわかる。
【0085】
実施例4
実施例1と同様にITO基板をエッチング、洗浄後、TPD約40nm蒸着した後、例示化合物(1−20)を約60nm蒸着した。次いで実施例1と同様に陰極を蒸着した。
作成した素子を評価した結果、12Vで輝度110cd/m2を示した。λmax=625nm、CIE色度(x、y)=(0.66、0.32)の色純度の高い赤色発光が観測され、本発明の化合物が電子注入輸送剤兼発光剤として有効であることがわかった。
【0086】
実施例5
実施例1と同様にエッチング、洗浄したITOガラス基板上に、ポリ(N−ビニルカルバゾール)40mg、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール12mg、テトラフェニルブタジエン10mg、DCM0.5mgおよび本発明の例示化合物1 0.1mgを1,2−ジクロロエタン3mlに溶解した溶液をスピンコートした。次いで実施例1と同様に陰極を蒸着した。
この素子にITO電極を陽極、Mg:Ag電極を陰極として直流電圧を印加して発光特性を調べたところ、16VでCIE色度図上(x、y)=(0.36、0.35)の白色発光(輝度1280cd/m2)が得られ、白色発光に有効であることがわかった。
【0087】
【発明の効果】
本発明の環状アジン化合物を含有する有機EL素子は、従来に比べて高輝度かつ色純度の高い赤色EL発光を可能にし、面状に優れ耐久性に優れる素子を与える。特に通常発光輝度の低い塗布方式でも良好な発光特性が得られ、製造コスト面等で有利な素子作製が可能となる。さらに本発明の化合物は発光材料兼電子注入輸送剤としても機能するものであり、簡便な素子作成が可能となる。
Claims (6)
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